雑誌名 三重医学
巻 53
号 1‑4
ページ 15‑26
発行年 2010‑03‑04
その他のタイトル The 37 th Mie Meeting of Dentistry and Oral Surgery, Abstracts
URL http://hdl.handle.net/10076/11349
1. 扁平上皮癌 KB 細胞での Cationic Liposome を用いた Bax mRNA 導入に よる抗腫瘍効果
〜Caspase-3 活性と Apoptosis の誘導 についての検討〜
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学 国立病院機構 三重病院 歯科口腔外科*
○ 竹岡高志, 奥村健哉*, 乾真登可 田川俊郎
Bax は Caspase-3 の活性化により Apoptosis が誘導される. 一方, plasmid から mRNA に替 えて lipofection を応用することにより高い導入 効率が期待できる. そこで, 扁平上皮癌 KB 細胞 に 対 し て Cationic liposome を 用 い た Bax mRNA の導入を行い, 抗腫瘍効果について検討 を行った. 【材料】細胞:KB;ヒト口底部由来 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株 . Liposome : DOPE と DOTAP により作製. Bax plasmid:pcDNA 3.1 (+) -Bax. Bax mRNA:Bax plasmid より作 製. 【方法】導入効率測定は GFP-assay, Bax タンパク発現は Western Blotting, Caspase-3 活 性は Colorimetric assay, Apoptosis は TUNEL assay で評 価 . 【 結 果 】 mRNA の 導 入 効 率 は 77.0%で, plasmid の約 4.2 倍に向上した. Bax mRNA の導入により Bax タンパク発現はさら に増強し, Caspase-3 活性は Bax plasmid の約 1.24 倍に上昇した. Apoptosis 細胞の占める割合 は 38.0%で, Bax plasmid 群の約 1.7 倍であった.
【考察】KB 細胞へ Bax mRNA を導入すること により多くの Bax タンパクが発現し, Caspase- 3 の活性化を経て, Apoptosis が多く誘導された と考えられ, 本療法は従来の plasmid を用いた 遺伝子治療より高い抗腫瘍効果が期待できる.
2. マウス悪性黒色腫細胞での
Phosphodiesterase の役割
榊原温泉病院歯科・口腔外科
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学*
○ 渡邉由裕, 清水香澄*, 村田 琢* 田川俊郎*
【目的】悪性黒色腫は予後不良な疾患であるこ とから, 診断法や治療法の更なる開発が急務で, 分子機構の解明が重要な研究対象となっている.
phosphodiesterase (PDE) は, 11 種類 (PDE 1 か ら PDE 11) が 報 告 さ れ て お り , 細 胞 内 の cAMP 等を分解することで様々な生理作用を調 節している. これまでにわれわれは, cAMP- PDE シグナルが細胞増殖に関与し, PDE 1, PDE 7, PDE 10, PDE 11 のいずれかの作用によ るものである可能性を報告した. そこで, 今回わ れわれはマウス B 16-F 10 メラノーマ細胞での PDE 7 の役割について検討したので報告した.
【方法】細胞はマウス B 16-F 10 メラノーマを, PDE 7 特異的阻害剤として N, N, 2-Trimethyl- 5-nitro-benzenesulfonamide を使用した. 細胞 を 96-well plate に 1 x 102播種し,阻害剤を 6 日 間作用させ増殖試験を行った.【結果】細胞増殖 は PDE 7 特異的阻害剤により抑制されなかった.
【まとめ】以上より PDE 1, PDE 10, PDE 11 のいずれかが細胞増殖に関係する可能性が示唆さ れた.
第 37 回 三重歯科・口腔外科学会抄録
The 37 th Mie Meeting of Dentistry and Oral Surgery, Abstracts
日 時:平成 21 年 12 月 13 日 場 所:三重県口腔保健センター
3. ヒト口蓋由来悪性黒色腫細胞での cGMP-stimulated phosphodiesterase の発現とシークエンス
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 森田 寛, 清水香澄, 村田 琢 田川俊郎
【目的】phosphodiesterase (PDE) は,細胞内 の セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー で あ る cAMP や cGMP を分解し, 様々な生理作用を調節してい る. しかし, 悪性腫瘍での発現や作用はほとんど 不明である. これまでにわれわれは, PDE 2 A がヒト口蓋悪性黒色腫由来 PMP 細胞の増殖と浸 潤を抑制し, 運動能には影響しないことと, 発現 しているスプライシングバリアントは PDE 2 A 2, PDE 2 A 3 であることを報告した. そこで今回, これらの遺伝子変異の有無を検討した. 【材料お よび方法】当教室で樹立・継代しているヒト口蓋 悪性黒色腫由来 PMP 細胞より RNA を抽出後, cDNA を作成しシークエンス反応を行った. シー クエンス反応には, DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit を使用し, ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer で 94 bp から 505 bp まで を解析した. 【結果および考察】PMP 細胞で発 現している PDE 2 A 2 と PDE 2 A 3 には, 検討 した範囲内では遺伝子変異はなかった. 今後, DNA の全長と, もう一つの PDE 2 バリアント である PDE 2 A 4 について検討する予定である.
4. 三重病院神経内科病棟での口腔ケア への取り組み−第 2 報−
国立病院機構三重病院歯科口腔外科 国立病院機構三重病院神経内科*
○ 奥村健哉, 馬路朋美, 後藤優子 中山茂穂*, 町野由佳*
当院神経内科病棟ではパーキンソン病:38.6%, 筋萎縮性側索硬化症:20.5%と多くを占めている.
また, 看護必要度の高い患者が多いため (看護度 A:72.7%) , 口腔ケアが充分に行われていない.
そこで神経内科病棟の口腔ケアに歯科口腔外科が
介入し, その効果について検討を行った. 【対象 および方法】当院神経内科病棟に長期入院してい る経管栄養患者のうち, 歯科口腔外科が口腔ケア に介入し, 1 年以上継続して行った患者 9 例を対 象に, 1 年間の発熱状況, WBC, CRP について 調査し, 介入前後で比較検討した. 【結果】37℃
以上の平均年間発熱日数は介入前後で 30 日減少 (介入前:135 日, 介入後:105.9 日) しており, 9 例中 6 例で前年より改善していた. 平均白血球 数は介入前後でわずかに減少 (介入前:8477, 介 入後:7841) しているだけであったが, 9 例中 6 例で前年より改善していた. 平均 CRP 値は介入 前に比べ介入後に有意に減少 (介入前:2.5, 介 入後:1.8) しており, 9 例中 8 例とほとんどの 患者が前年より改善していた. 【考察】神経内科 病棟で歯科が口腔ケアに介入することは, 誤嚥性 肺炎などの呼吸器感染症の防止に寄与できること が示唆された.
5. 当科における口腔ケアの近況
三重大学医学部附属病院歯科・口腔外科
○ 小田仁美, 渡辺恵美子, 河宮和世 小林 香, 坂口幹子, 中村真之介
口腔ケアは口腔機能の維持増進だけでなく, 疾 患やその合併症の予防・改善等にも有用とされて いる. 近年, 高齢者や要介護者に対する口腔ケア が注目を集めており, 急性期病院でも医療の質向 上のために口腔ケアの取り組みがなされている.
当科でも平成 18 年 7 月より入院患者への専門的 口腔ケアを開始しており, 今回その概要について 報告した.
平成 18 年 7 月から平成 21 年 11 月までに口腔 ケアを施行した患者は全 58 例, 性別は男性 39 例, 女性 19 例と男性が多かった. 病棟あるいは外来 での口腔ケアかどうかは, 病棟 47 例, 外来 11 例 と往診した患者が約 8 割を占めた. 年齢分布は 12 歳から 92 歳で平均年齢は 64.2 歳であった. 50 歳代から 70 歳代が多く, 全体の約 4 分の 3 を占 めた. 入院診療科は脳神経外科が 19 例と多く, 次に皮膚科 7 例の順であった. 基礎疾患は脳血管 障害が最も多く 16 例, 続いて悪性腫瘍 13 例の順
であった.
当院では, 嚥下機能低下の患者に対して嚥下リ ハビリテーションを行っており, 我々は, 院内嚥 下チームの一員としても口腔ケアを担当しており, 院内チーム医療の一翼を担う活動を今後も発展さ せていきたいと考えている.
6. 教育制度変更後の歯科衛生士教育の 方向性と展望
三重県立公衆衛生学院 歯科衛生学科
○ 堀せつ子, エィガン直美, 岡村哲子 下村真理, 濱口文香
平成 22 年 4 月より, 歯科衛生士の修業年限が 延長されるにあたり, 「歯科診療補助業務の現状」
と 「教育への要望」 を調査し, 今後の養成方策を 検討した.
【対象】
対象者は三重県立公衆衛生学院卒業後 1〜10 年 目の歯科衛生士 133 名であり, 直筆式質問形式に より回答を得た.
【結果および考察】
教育への要望は 「医療人としての教養・義務と 責任・専門知識・専門技術」 など 5 項目で 80.7
%をしめ, 槇田らによる 「衛生士への要望事項」
と一致した.新課程においては, 自主的な取り組 みを支援するシステムを構築し, 意志決定・問題 解決を重視した教育編成が望まれている.
また情報収集及び歯周病の診療補助は, 80%以 上の者が日常業務として実施しており, 専門技術 と管理能力を兼ね備えた専門職の養成が必要であ る.
相対的医療行為 (保存補綴分野) レベルⅡの業 務は, 教育延長後能力の向上により歯科衛生士に 任される分野と考えられるので, 学内実習への導 入が示唆された.
7. 学生の臨床実習におけるヒヤリ・ハッ ト事例の検討II
伊勢保健衛生専門学校
○ 前田香代子, 東谷志保, 浜口美香 萩 則子, 中西康裕
臨床実習時にヒヤリ・ハットに気づく感性・注 意力を養うことを目的に, 1 年時 2 年時を通じヒ ヤリ・ハット検討実習を行わせた 2 年生 23 名を 対象に, この実習を行っていなかった学年と比較 し, 以下の結果を得た.
1, 検討実習を行った学年では, ヒヤリ・ハッ トを経験した者, 1 期 78%, 2 期 48%, 3 期 52%, 4 期 35%, 5 期 28%であった.
2, 検討実習を行っていなかった学年でのヒヤ リ・ハット経験数は, 1 期 80%, 2 期 80%, 3 期 63%, 4 期 60%, 5 期 35%であった.
以上の結果より, ヒヤリ・ハット検討実習を行っ た学生と行わなかった学生を比較すると, 検討実 習を行った学生は, ヒヤリ・ハット経験数が減少 し, また原因・防止策を検討することにより, 事 故防止についての意識が高まり, 注意力が向上し たものと考えられる.
8. 松阪市民病院における口腔ケアの取 り組み
松阪市民病院歯科口腔外科
〇 宮崎くみ子, 中西香織, 川合幸代
仲田美樹, 原 浩子, 須藤結美, 速水 毅 幸治泰洋, 村田明代, 野中計宏
中村泰士, 松山博道, 中橋一裕
松阪市民病院歯科口腔外科では 2001 年より口 腔ケア導入に向けて始動した.口腔ケア推進委員 会を立ち上げ, 病棟看護師の口腔ケアへの関心と 意識の向上, 手技の向上と統一化について, 2002 年病棟往診口腔ケア開始から, 現在に至るまでの 取り組みについて報告した. 2001 年病棟看護師 へのアンケート配布, アセスメントシート作成.
2002 年往診口腔ケア開始. 2004 年口腔ケアマニュ アル作成. 2006 年電子カルテに移行. アンケー
ト結果からは歯科衛生士による口腔ケアが強く求 められていると考えられた. 往診口腔ケアの導入 により, 口腔ケア依頼件数の増加からも, 看護師 の口腔ケアへの関心や意識が向上したといえる.
アセスメントシートの導入により, 現在は電子カ ルテを使用し, 情報の共有化が図られ, 看護師, 衛生士の連携が取れるようになった. 口腔ケアの 方法については, 口腔ケアマニュアルの使用によ り, 看護師間の連携が密になり, 新採研修や病棟 別勉強会, 相互実習を繰り返すことで, 看護師の 日常的な口腔ケアのスキルアップに繋がった. 今 後の課題としては, 看護師と歯科衛生士の協働体 制の強化, 歯科衛生士の知識手技の向上が必要で あると考える.
9. 学生の喫煙に対する意識と受動喫煙 の評価
ユマニテク医療専門学校歯科衛生学科 愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科* 金城学院大学生活環境学部食環境栄養学科**
コスミックコーポレーション技術部***
○ 渡瀬恵子, 岩浩美, 後藤澄代 北川順子, 高阪利美*, 稲垣幸司* 丸山智美**, 花田祥子***
【目的】歯科医療において, 歯科衛生士が禁煙 教育・支援やその活動が期待される. そこで, 学 生の喫煙に対する意識, 唾液および尿中コチニン による受動喫煙の評価を試みた. 【対象・方法】
6 期生〜8 期生の 65 名について食生活, SDS, 喫 煙状況・受動喫煙・禁煙講義前後の KTSND の 結果, さらに唾液および尿中コチニン濃度を検討 した. 統計解析は Kruskal Wallis 検定, Mann- Whitney の U 検定, Wilcoxon 符号付順位検定, Pearson の相関係数を用いた. 【結果】KTSND 得点は講義前に比べ講義後は有意に低下した.
SDS と KTSND との間には有意な関連はみられ なかった. 尿中コチニンおよび唾液コチニンによ る受動喫煙の影響も検出された. 尿中コチニンに より判定した受動喫煙の有無では, 食習慣, 食生 活得点では, 無い者が高くなった. 【結論】喫煙 の害を過小評価し, タバコを容認する態度等を示
唆する KTNSD 得点のい学生もみられた. 受 動喫煙の正確な把握には尿中コチニンのようなバ イオマーカーを併用する必要性が示唆された. 今 後, 繰り返し脱タバコに関する啓発を続け喫煙者 への禁煙支援を行っていく予定である. なお, 本 研究の一部は, 平成 19 年度と 20 年度厚生労働科 学研究 (H 18―がん臨床―若手―004) の補助に よって行った.
10. 喉頭直達鏡手術時の歯牙保護床作製
三重大学医学部附属病院歯科・口腔外科
○ 岩中義幸, 矢野聖敏, 加藤英治 中村真之介
耳鼻咽喉・頭頸部外科では喉頭部の手術時に直 達鏡を使用することがあり, 歯牙損傷の可能性が あるため歯牙の保護が必要となる場合がある. 当 科では平成 21 年 6 月末より, 術前に依頼のあっ た患者に対して歯牙保護床の作製を開始した.
喉頭直達鏡は全体が金属製で, 上顎前歯部への 接触や持続圧により, 歯牙の破折や脱臼を招くこ とがある. 実際, 手術時に歯牙脱臼し, 手術場で 連続歯牙結紮して暫間固定した症例を認めたため, 術前に歯牙保護床を作製することとした.
作製方法は患者の上顎を印象採得して作業模型 を作製し, ブロックアウトを行う. 次に 2 mm 厚のジスクを軟化して模型に圧接後, 歯列に沿っ てジスクをくり抜いて保護床とする.
当院耳鼻咽喉・頭頚部外科における平成 20 年 度の直達鏡による手術は 24 例で, 平成 21 年度は 11 月末までの 5 か月で 23 例と増加傾向にあった.
この内 16 例に対して歯牙保護床を作製したが, 現在まで歯牙損傷を認めていない. また, 初期に 使用していたマウスガードタイプよりもスプリン トタイプの方が強固に固定され, 有用であると思 われた. 今後は全身麻酔の挿管に対しても, 患者 の希望をとり, 保護床を作製していく予定である.
11. 全身麻酔時に用いる歯牙保護用マウ スピースの臨床的検討
山田赤十字病院歯科
○ 宮原香織, 成田 素, 平野吉雄
緒言:全身麻酔を行う際, 気管挿管は避けては 通れない操作である. しかし中には思わぬ挿管困 難症例もあり, 歯牙損傷をきたす例は後を絶たな い. 目的:当院では, 挿管および抜管時に発生す る歯牙損傷を予防するため, 術前に全身麻酔時に 用いる歯牙保護用のマウスピース作製を試みた.
作製方法:マウスピースの作製は, 患者口腔内よ り採取した石膏模型を用いた. 模型のアンダーカッ ト部をリリーフし, 厚さ 1 mm のブラキシズム スプリントを用い, バキュームアダプタ−で加熱 吸引し作製した. 一部の歯牙は歯面の最大豊隆部 にとどめ, それ以外の部分は, 歯肉の一部を覆う ように設計した. マウスピース装着までの流れ:
①各手術担当科の医師により手術および日程を決 定. ②マウスピース作製について説明と同意. ③ 口腔内診査, X 線検査. ④抜歯 (必要時), スケー リング・ブラッシング指導, マウスピース作製の ための印象採得. ⑤マウスピース装着. まとめ:
平成 21 年 2 月から 9 月までの 8 ヶ月間で, 176 症例に対しマウスピースを作製した. 依頼数は毎 月増加傾向にあり, マウスピースを装着した患者 では, 全身麻酔中のトラブルの報告はなく, 麻酔 担当医からのクレームもない.
12. 舌痛を主訴とした鉄欠乏性貧血の 2 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 山口晋司, 竹岡高志, 野口佳澄 乾眞登可
今回, 我々は舌の痛みを訴え来科し, 舌痛症と 診断し, 初診時検査で極度に鉄欠乏性貧血を認め, 鉄剤の投与により舌痛が著明に改善した 2 例を経 験したので報告した. (症例 1) 患者:50 歳女性.
主訴:舌の痛み. 現病歴:3 か月前より舌のヒリ ヒリ感および口腔乾燥感があり, 1 か月前より鋭 い痛みを覚えるようになったため来科した. 匙状
爪はみられなかった. 既往歴:貧血. 処置および 経過:初診時, 舌に器質的変化は認めなかったが, 極度の鉄欠乏性貧血を認めたため, ポラプレジン ク, 硫酸鉄水和物を投与した. 約 36 日後に症状 の改善を認め, 貧血も著明に改善していた. (症 例 2) 患者:42 歳女性. 主訴:舌の痛み. 現病歴:
1 か月前より舌に痛みを覚え, 1 週間前から痛み が増強してきたため, 某歯科を受診, 紹介により 来科した. 匙状爪は見られなかった. 既往歴:貧 血, 頸部リンパ節炎. 処置および経過:初診時, 舌には器質的変化を認めなかったが, 血液検査で 極度の鉄欠乏性貧血を認めた. ポラプレジンク, 硫酸鉄水和物を投与し, 20 日後の再診時に症状 の改善を認め, 同時に貧血の著明な改善が見られ た. 鉄欠乏性貧血の改善により鋭い舌痛は消失し た.
13. HCV 関連口腔扁平苔癬の臨床的検討
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 朝倉那菜, 田中宏明, 野口佳澄 乾眞登可
目的:口腔扁平苔癬の原因は不明であり, 細菌 やウィルスによる感染, 薬物, 歯科用金属アレル ギー, ストレスなどが考えられており, 高血圧症, 肝炎, 糖尿病等の関与も報告されている. 今回, われわれは HCV 陽性患者に認められた扁平苔癬 に対して臨床的検討をくわえ, 治療経過中に扁平 上皮癌を発症した 1 例を供覧した.
方法:対象患者は, 過去 7 年間に当科を受診し, 扁平苔癬と診断され, HCV 陽性であった 19 例.
検討項目:部位, 血液検査, 悪性化率について調 査した.
結果:両側頬粘膜に男性 4 例・女性 9 例であり, 片側頬粘膜は女性 2 例と頬粘膜が約 8 割を占めた.
貧血は無く, 血小板数で 124200/μl と低値を示 した. 男女ともに肝機能の亢進を見たが, 男性の ほうでより高かった. 悪性化率は, 男女各 1 例に みられ, それぞれ頬粘膜, 舌に発生し, 悪性化率 は 10.5%であった.
結論:HCV 陽性患者においても, 口腔扁平苔 癬は女性に多く, また両側頬粘膜に好発すること,
また, 肝機能の亢進とともに, 血小板数の低値を 認めた. 口腔扁平苔癬からの癌化率は約10.5%で あるため, HCV 患者では長期の緊密な経過観察 が必要だと考える.
14. 多発性含歯性嚢胞の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 加藤英治, 松浦里奈, 松村佳彦 野村城二
含歯性嚢胞は顎骨に発生する歯原性嚢胞の一つ で同一口腔内に多発することは稀である. 今回, 右側下顎臼歯部にみられた多発性含歯性嚢胞の 1 例を経験したので概要を報告した. 【患者】16 歳, 男性. 【主訴】右側下顎 6 遠心部の腫脹.
【現病歴】初診 1 か月前より同部の腫脹を自覚し, 近医を受診したところ, X 線検査にて右側下顎 臼歯部に広域の透過像を指摘され来科した. 【現 症】右側耳下腺咬筋部を中心にび慢性の腫脹を認 め, 口腔内では右側下顎 6 遠心部の腫脹がみられ た. 【画像所見】右側下顎臼歯部から下顎枝, 下 顎切痕部に至り, 右側下顎 7 および 8 を含む, 境 界明瞭な多房性の透過像を認めた. 【処置および 経過】臨床診断を下顎良性腫瘍疑いのもとに, 全 身麻酔下にて右側下顎 78 を含め摘出術を施行し た. 各歯冠を内包したそれぞれの組織は骨壁によ り明確に隔離され連続性はなく, 内溶液はともに 乳白色の嚢汁様であった. 病理組織学的には両組 織とも重層扁平上皮に裏打ちされた嚢胞壁を認め, 炎症細胞浸潤, 肉芽形成, 線維化がみられ, 腫瘍 所見は認めなかった. 術後経過は良好で某口腔外 科にて経過観察中である. 【最終診断】多発性含 歯性嚢胞
15. 正中下顎嚢胞の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 稲垣俊弘, 岩崎佳見, 佐藤 忠 清水香澄
正中下顎嚢胞は, 以前は比較的まれな顔裂性嚢
胞であるとされていた. 1971 年以降 WHO の分 類では顔裂性嚢胞からは除外された. しかし, そ の後も歯原性嚢胞と考えるのが困難な症例が報告 されている. 今回われわれは, いわゆる正中下顎 嚢胞の 1 例を経験したのでその概要を報告した.
【症例】43 才, 男性. 【主訴】21 根尖部透過像 精査. 【既往歴】痛風【家族歴】父が前立腺癌
【現病歴】初診 6 か月前に近歯科医院を受診した 際に, X 線写真にて 21 根尖部 X 線透過像を指摘 され, 紹介により来科. 【口腔内所見】口腔内に 腫脹等特記すべき肉眼的所見はみられなかった.
【X 線所見】パノラマ X 線写真にて 21 根尖部に 境界明瞭な透過像がみられた. 【CT 所見】下顎 部正中部に境界明瞭で単房性の透過像が認められ た. 【処置および経過】歯根嚢胞の臨床診断の下, 初診約 3 ヶ月後に全身麻酔下にて嚢胞摘出術を施 行した. 下顎嚢胞は一塊として摘出し, その際嚢 胞と歯根の連続性はみられなかった.
1 は失活歯であったが嚢胞は下顎正中部に存在し, 手術時の所見で歯根尖と嚢胞間に骨の介在を認め たことから, 正中下顎嚢胞であると最終診断した.
16. 骨延長器が関与して歯肉に生じた粘 液嚢胞の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 中西 睦, 佐藤 忠, 清水香澄 村田 琢
今回われわれは骨延長器が関与して生じたと考 えられる下顎歯肉粘液嚢胞の 1 例を経験したので その概要を報告した.
【症例】78 歳, 男性【主訴】左側下顎歯肉の 腫脹【既往歴】3 年前, 左側下唇扁平上皮癌. 2 年前, 右側下顎歯肉扁平上皮癌【現病歴】インプ ラント前処置として骨延長器設置術を施行. 延長 開始から 24 日目に左側下顎小臼部歯肉に弾性軟 の腫瘤を認めた. 【口腔内所見】左側下顎小臼歯 部歯肉に小豆大, 境界明瞭, 弾性軟, 正常粘膜色 の腫瘤を認めた. 【X 線所見】同部の硬組織に 明らかな異常所見は認めなかった. 【処置および 経過】局所麻酔下にて摘出術を施行. 臨床所見, 病理所見より溢出型粘液嚢胞と最終診断した. 術
後経過は良好で再発等は認めていない.
歯肉に発生した粘液嚢胞の報告例は非常にまれ である. 本症例の場合, 下顎骨区域切除後の為, 解剖学的形態が変化し口唇腺や小唾液腺が移動骨 片の直上に存在し, 移動骨片により傷害された唾 液腺から唾液が後方の結合組織に溢出して歯肉に 粘液嚢胞が生じたと考えられた. 組織欠損が大き く付着歯肉の喪失が考えられる部位に骨延長器を 使用する際には注意が必要である.
17. 保存的療法を行った小児下顎骨骨折 の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 松浦里奈, 加藤英治, 松村佳彦 野村城二
今回, ゴム牽引併用の FKO 型床装置を用いて 保存的療法を行った小児下顎骨骨折の 1 例を経験 したのでその概要を報告した. 【症例】9 才, 男 児. 【主訴】咬合不良. 【現病歴】初診前日交通 事故にて, 近総合病院へ救急搬送された. レント ゲンにて下顎骨骨折を認め, 咬合不全と強度の開 閉口時痛のため来科した. 【現症】右側頬部の腫 脹がみられ, 開咬と両側下顎 1 の不完全脱臼を認 めた. また開口量は約 1.5 横指であった. 【X 線 所見】頭部 AP, パノラマ X 線で左下 34 間及び 右下 7 遠心に骨折線を認めた. 【処置及び経過】
受傷 4 日後 FKO 型床装置とゴム牽引用のブラケッ トを右下臼歯部に装着し, 中央骨片の上後方への 牽引を開始した. 6 日間牽引後, 咬合の回復を確 認した後, 19 日間固定, FKO 型床装置除去後は, リテーナーを装着した. その後開口量の回復と, 開閉口時痛のないことを確認の上, 受傷 38 日後 退院した. 術後 6 カ月を経過した現在, 治癒状態 は良好で, 骨折線上にあった左下 3 の萌出も問題 ない. 【まとめ】自験例のように骨片の偏位が著 しい例においても, ゴム牽引併用の FKO 型床装 置を用いることで, 観血的処置を回避することが 可能であると考えられた.
18. 口腔ケアにおけるカンジダ菌培養検 査について
済生会松阪総合病院歯科口腔外科
〇 福山結香, 岸田奈緒子, 鈴木康昭 上田貴史, 佐藤耕一
口腔衛生状態を知る一つの指標として, カンジ ダ菌培養検査が用いられる. 口腔ケアを行う中で, カンジダ菌検出の有無と見た目の衛生状態が必ず しも合致しない患者を経験する. そこで, これま でに口腔ケアを行った患者のカンジダ菌培養検査 結果と患者の背景となる項目について検討した.
対象患者はカンジダ菌培養検査に同意の得られた 57 名のうち, 50 日以上の入院で継続して口腔ケ アを行えた 9 名. 検討した項目は, 主病名, 年齢, 残存歯数, 口腔内乾燥状態, 口腔ケアの頻度, 栄 養状態, 栄養摂取法. これら項目とカンジダ菌培 養検査結果との関連について検討した. その結果, 口腔内の乾燥状態が著しいとカンジダ菌が検出さ れやすい傾向にあった. しかしながら, 口腔内が 不衛生で乾燥が強い状態であっても, カンジダ菌 が検出されない患者もみられた. カンジダ菌培養 検査の結果を口腔内衛生状態の指標の一つとして 用いることは有用ではあるが, これら患者の検討 を通じて, 口腔ケアプランを立案するに際しては, やはり全身状態や口腔内環境を把握することがよ り大切であることをあらためて認識した.
19. 志摩市における保育所フッ化物洗口 事業のう蝕予防効果
三重県伊勢保健福祉事務所
○ 石濱 信之
全国的にフッ化物洗口 (F 洗口) が広がりつつ ある中で, 三重県内で行われている保育所・幼稚 園のみの F 洗口がう蝕予防に有効か否かを検討 するために, 小学校歯科検診結果を用いて保育所 での F 洗口の評価を行った.
平成 18 年度志摩市旧磯部内小学校 1・2 年生を 対象に上下顎第一大臼歯および上顎中切歯の診査 を行った. 同年度の 1・2 年生が 4・5 歳のとき全
町立保育所 (3/3) では希望者に対して集団で F 洗口を実施していたが, 町立幼稚園 (1/1) では 行っていなかった. F 洗口に参加した児童を F 群 (61 名) , 不参加の児童を N 群 (61 名) とし たとき, F 群 (平均 DF 歯数 0.25 歯, 平均う蝕 歯面数 0.31 面) と N 群 (平均 DF 歯数 0.64 歯, 平均う蝕歯面数 0.82 面) の間には有意な差が認 められた.
多重ロジスティックモデル分析においては, F 洗口経験の有り無しで有意な差が認められた (オッ ズ比:2.78,p=0.027) . このことから, 伊勢地域に おいても, 保育所・幼稚園ベースの F 洗口が早 期に口腔内に萌出する永久歯のう蝕予防に効果が あることが示された.
20. 小児に見られた舌背部の平滑筋過誤 腫の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 井村紘子, 加藤英治, 松村佳彦 野村城二
過誤腫は組織奇形の一種で, 口腔領域ではまれ な疾患である. 今回われわれは小児の舌背にみら れた平滑筋過誤腫の 1 例を経験したのでその概要 と若干の文献的考察を加え報告した. 【患児】3 歳, 男児.【既往歴】1 年前より喘息.【現病歴】
1 歳時に, 母親が舌背の腫瘤に気づき近小児科を 受診, 経過観察していたが, 腫瘤の消失を認めな いため精査目的に紹介来科した. 【現症】全身的 に異常はなく, 口腔内では分界溝前方の舌背正中 部に約 1 cm 大, 粘膜色, 弾性軟の腫瘤がみられ た. 【処置および経過】全身麻酔下に摘出術を施 行した. 摘出物の割面は充実性で黄白色, 皮膜は みられなかった. 病理組織学的には粘膜上皮下結 合組織内に紡錘形細胞の小塊状, 結節状の増生と 脂肪組織や小唾液腺組織が見られた. また免疫組 織染色では vimentin, α-SMA に陽性, S-100 に 陰性を示し, 以上より平滑筋過誤腫と診断された.
現在, 再発はなく経過良好である. 【まとめ】本 邦での口腔領域での過誤腫の報告例は自験例を含 め 29 例のみでまれな疾患であると考えられた.
21. 下顎埋伏第三大臼歯部に発生した歯 原性線維腫の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 田中宏明, 西浦美貴, 野口佳澄 中村真之介
歯原性線維腫は歯乳頭, 歯小嚢あるいは歯根膜 に由来する良性腫瘍で比較的まれな歯原性腫瘍で ある. 今回, 我々は下顎埋伏第三大臼歯部に発生 した本腫瘍の 1 例を経験したので報告した. 【患 者】29 歳, 男性. 【主訴】口腔内精査. 【現病 歴】近歯科医院の X 線写真にて, 歯冠を含む X 線透過像を認め当科受診. 【X 線写真】・歯冠 を含む境界は比較的明瞭, クルミ大で単房性の透 過像を認めた. 【CT 画像】歯冠から前方に 27×
12 mm 大で辺縁はやや不整, 歯根に至る骨吸収 像を認めた. 【処置及び経過】含歯性嚢胞あるい は腫瘍性疾患の臨床診断下に, 摘出術を施行. 病 変は歯根と連続していた. 3 カ月経た現在, 再発 を認めていない. 【摘出物】乳白色, 表面は滑沢, 弾性軟, 充実性であった. 【病理所見】ほとんど が線維性組織からなっていた. その中に小さな歯 原性上皮塊が散在し, その上皮組織はマラッセの 上皮遺残に類似していた. 以上より歯根膜由来の 中心性歯原性線維腫と最終診断した. 本邦では過 去 20 年間に中心性歯原性線維腫は渉猟し得た限 り自験例を含め 9 例であった. 男性に多く, 15〜74 歳にみられ, 平均年齢は 35.3 歳であった.
発生部位は下顎臼歯部に最も多かった.
22. 口唇に生じた多発性線維腫の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 岩崎佳見, 佐藤 忠, 清水香澄 村田 琢
今回われわれは口腔内に多発した線維腫の 1 例 を経験したので報告した. 【症例】58 歳, 男性
【主訴】左側口角部腫瘤【既往歴】両眼白内障 (左眼失明), 嗄声 (原因不明) 【家族歴】特記事 項なし【現病歴】初診約 5 年前から左側口角部腫 瘤が存在していたが放置. 今回, 家人のすすめに
より近医を受診したところ当科を紹介され来科.
【口腔内所見】左側口角部に直径約 11 mm 大の 赤色, 弾性軟の腫瘤を認め, 上唇中央部に直径約 15 mm 大の腫瘤を 2 カ所に認めた.【X 線所見】
パノラマ X 線写真にて多数のう歯を認めた.
【MRI 所見】T 2 強調像で左側口角部に皮膚と 同等の信号を呈する腫瘤を認めた. 上唇の腫瘤は 画像上, 同定困難であった. 【処置および経過】
初診 24 日後に静脈鎮静麻酔下に摘出術を施行.
病理組織検査では上唇粘膜部の腫瘤は上皮下に, 左側口角皮膚部の腫瘤は表皮下に膠原線維と線維 芽細胞の増生を認めた. 以上より線維腫と確定診 断した. 【まとめ】多発性線維腫の報告例は自験 例を含めて 4 例と稀である. 本症例の場合, 原因 として, う歯による刺激が考えられるが, 患者は 歯科受診が困難な僻地に居住しており歯科治療を 中断している. 今後, 僻地での歯科医療にも目を 向ける必要がある.
23. 頬部に発生した血管平滑筋腫の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 西浦美貴, 野口佳澄, 中村真之介 乾眞登可
血管平滑筋腫は血管壁の平滑筋由来の良性腫瘍 で, 口腔領域では比較的稀な疾患である. 今回我々 は, 頬粘膜に発生した血管平滑筋腫の 1 例を経験 したので, その概要を報告した. 患者は 55 歳女 性, 右側頬部の腫瘤を主訴に来科した. 既往歴と して左耳下腺多型性腺腫, 膀胱腫瘍, 虫垂炎, 胃 潰瘍, 痔疾があった. 平成 16 年頃に右頬部の腫 瘤を自覚するが, 大きさに変化がなかったため放 置していたが, 歯科治療のため近歯科を受診した 際, 同腫瘤を指摘され, 精査, 加療目的に当科受 診となった. 腫瘤は右側下顎骨外側に位置し, 直 径 15 mm 大, 球状で, 可動性を有していた. 軽 度の圧痛を認めたが自発痛, 知覚障害は認めなかっ た. MRI で腫瘤は T 1 強調画像で低信号を示し, T 2 強調画像で高信号を示し, 腫瘤と連続する栄 養血管と思われる索状像を認めた. 血管腫の疑い で, 全身麻酔下に口腔内より腫瘤摘出術を施行し た. 腫瘤は動脈を巻き込んでいたため結紮し, 共
に切除した. 病理組織学的所見で腫瘤は小型血管 の周囲に紡錘形の平滑筋様の腫瘍細胞が増生し, 境界明瞭な結節を形成していた. 以上より, 血管 平滑筋腫と診断した. 術後の経過は良好で現在再 発は認めていない.
24. 膠原病患者の歯科疾患に関する統計 的検討
三重中央医療センター歯科・口腔外科
○柳瀬成章, 鋤崎文子, 中谷智子 下田澄代
膠原病患者は免疫系に異常があり, 種々の薬剤 が投与されているため, 歯および歯周組織に何ら かの影響が生じている可能性がある. そこで, 膠 原病患者の歯科疾患に関して検討を行い, その概 要を報告した. 対象は 44 例 (男性 6 例, 女性 38 例), 平均年齢は 60.2 歳 (23〜84 歳) であった.
膠原病の疾患別罹患率は, 関節リウマチが最多で 58.6%, 次いで SLE 22.7%, シェーグレン症候 群 18.2%の順だった. 患者の 88.6%にステロイ ドが投与され, 免疫調節薬が 27.3%に, 免疫抑 制薬が 45.5%に, 生物学的製剤が 6.8%に投与さ れていた. また, ビスホスホネート剤が 47.5%
に投与されていた. う蝕罹患率は 100%で, 処置 完了者は 22.8%, 処置歯・未処置歯の併有者は 75.0%, 未処置者は 2.3%だった. 歯周組織は 15〜24 歳では正常だったが, 55 歳以降では CPI:
3, CPI:4 の者が 80%以上を占めた. 平成 17 年 の三重県民の歯科疾患実態調査の結果と比較して, 膠原病患者では, う蝕, 歯周疾患の罹患率が高く, 要因として関節の変形等による四肢の機能低下や 全身状態不良により口腔清掃が適切に行われてい ないことや, 投与薬剤が影響している可能性が考 えられた.
25. 咀嚼筋腱・腱膜過形成症と診断した 1 例
松阪市民病院 歯科口腔外科
○ 中村泰士, 松山博道, 中橋一裕
咀嚼筋腱・腱膜過形成症は, 咬筋や側頭筋など の腱や腱膜に起因すると考えられる開口障害を呈 する全く新しい概念の疾患である. 今回われわれ は, 咀嚼筋腱・腱膜過形成症の概念に適合すると 考えられる症例を経験したので報告した. 患者は 31 歳女性, 4 年前から開口障害を自覚していた.
1 年前に近医で歯科治療を受けた際に開口障害の 指摘を受け, 顎関節症の診断下にスプリント療法 が行われたが症状が改善しないため, 当科を受診 した. 初診時の現症として, 下顎角部の張りが著 明な square mandible 顔貌を呈しており, 最大 開口量が上下中切歯間で 21 mm の開口障害が認 められた. また, 両側顎関節部に運動痛, 圧痛は 無かったが, 両側咬筋前縁部に軽度の圧痛が認め られた. MRI, CT 撮影にて顎関節症, 筋突起過 形成症などの他の顎関節疾患も否定的であること から, 除外診断的に咀嚼筋腱・腱膜過形成症と診 断し, 全身麻酔下で筋突起切離術を行った. 術後 4 日目から開口訓練を開始し, 手術直前の開口量 17 mm に対して, 術後は自発開口量 36 mm, 強 制開口量 38 mm と開口域の改善が得られ, 術後 1 年経過した現在でも後戻りは認めていない.
26. ビスホスフォネート製剤投与患者に おける抜歯の検討
市立四日市病院 歯科口腔外科
○ 今川直樹, 長谷川正午, 町田純一郎 木村将士, 小牧完二
【緒言】ビスホスフォネート製剤 (以下 BP) は, 骨吸収を来す疾患の治療薬として広く用いら れている. 近年, BP 製剤投与患者の中で抜歯 等の外科処置に関連する顎骨骨髄炎および顎骨骨 壊死 (以下 BRONJ) の発症が報告されている.
今回われわれは, 当科で経験した BP 製剤関連顎 骨骨髄炎について, 統計的検討を行ったのでその
概要を報告する. 【対象及び方法】2008 年 2 月 から 2009 年 11 月に, 当科及び近医で抜歯を行っ た BP 製剤投与患者で, 経過を追跡し得た 15 症 例. 以上 15 症例につき顎骨骨髄炎の発症に関与 する因子について統計解析を行った. 【結果】15 症例のうち 8 例 (53.3%) に骨髄炎を認めた. 骨 髄炎 8 例のうち 2 例に BRONJ を認めた. 骨髄 炎の発症に抜歯前抗菌薬投与の有無で, 有意差を 認めた (P 値 0.0001) . BP 製剤の種類, 投与期 間 3 年以上ないしは 3 年未満, 全身疾患の有無, 喫煙習慣の有無, 抜歯前 BP 製剤休薬の有無で は有意差を認めなかった. 【考察】BP 関連顎骨 骨髄炎の予防には, 抜歯前抗菌薬の投与が有用で あることが示唆された. BP の休薬期間と骨髄炎 の発症に有意差を認めなかったことから, 抜歯前 抗菌剤の投与が可能であれば, BP の休薬が不可 能な症例に対しても抜歯施行の可能性が示された.
27. 高度歯周疾患に対する総義歯治療の 臨床報告
〜リンゴ丸かじりの総義歯補綴〜
カワラダ歯科・口腔外科 諏訪歯科診療所*
長島中央病院歯科室**
㈲ケイケイデンタルサービス***
○ 川原田幸司, 諏訪若子, 諏訪裕彦* 大西裕子**, 山口久和***
川原田美千代***, 川原田幸三
全顎的かつ高度な歯周疾患を有する患者に遭遇 することは少なくない. 歯槽骨が吸収し, 歯が動 揺し, 長期の保存が不可能になれば, 欠損補綴が 必要になり, 欠損が多数歯に及べば有床義歯とな る.
一般に有床義歯は咀嚼能率の低いものとされて いるが, 我々は総義歯において全体に過不足のな い床を製作し, 粘膜に適合させ, 適正な咬合位と 人工歯排列を与えることで, 天然歯に劣らない咀 嚼機能を有する総義歯製作法をこれまでに報告し てきた.
今回, 多数歯が高度な歯周疾患を発症した症例 について, 総義歯製作の概要も含め報告した.
暫間義歯を用い抜歯を行い, 全ての抜歯が終了 した時点で治療用義歯を製作, 粘膜調整や咬合調 整, 義歯床縁の辺縁封鎖など, 義歯に改良を加え, 粘膜調整材による動的機能印象完了時に水圧加熱 精密重合器 重合くん を用いて最終義歯を完成 させ, リンゴの丸かじりなどによる総義歯の咀嚼 能力の判定を行い, また山本式総義歯咀嚼能率判 定表を用い, 義歯の咀嚼の改善度も評価したとこ ろ良好な結果が得られたので報告した.
28. 当科における粘表皮癌の臨床病理学 的検討
市立四日市病院 歯科口腔外科 市立四日市病院 病理部*
○ 木村将士, 長谷川正午
町田純一郎, 今川直樹, 小牧完二 奈良佳治*
【緒言】粘表皮癌は, 唾液腺原発悪性腫瘍の中 で最も高頻度に認められ, 病理組織学的には, 扁 平上皮様細胞, 粘液産生細胞, 中間細胞の存在を 特徴とし, それらの細胞比率に伴い, 多彩な病理 組織像を示すとされている. 今回われわれは, 当 科における粘表皮癌症例について, 臨床病理学的 検討を行ったのでその概要を報告する. 【対象】
2000 年 1 月から 2009 年 11 月の間に当科を受診 し, 一次治療を行った粘表皮癌患者 6 例. 性別は, 男性 4 例, 女性 2 例であり, 年齢分布は 54 歳〜
78 歳であった. 【方法】Goode らの粘表皮癌 Grade 分類を用いて組織学的悪性度を評価し, 性別, 年齢, 発生部位, 頸部リンパ節転移の有無, 局所再発の有無, 生存率との関連について統計学 的に検討を行った. 【結果】組織学的悪性度は, High Grade 3 例 , Intermediate Grade 2 例 , Low Grade 1 例であった. 組織学的悪性度は, 局 所 再 発 の 有 無 に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た (p=0.02) . 頸部リンパ節転移, 及び累積 5 年生 存率については, 有意差は認められなかったが, High Grade 症例において, 予後不良となる傾向 が認められた.
29. 舌に見られた紡錘形細胞癌の 1 例
三重大学医学部口腔・顎顔面外科学
○ 中西 康, 松村佳彦, 野村城二 田川俊郎
紡錘形細胞癌は扁平上皮癌成分と紡錘形細胞主 体の肉腫様成分を同一組織内に含んだ扁平上皮癌 の亜型であり, 悪性度は高いとされている. 口腔 内での発生は稀であるが, 今回われわれは舌に見 られた紡錘形細胞癌の 1 例を経験したので概要を 報告した. 【症例】47 歳, 女性【主訴】左側舌 縁部接触痛【既往歴】高血圧症【現病歴】初診約 4 か月前より左側舌縁部に腫瘤および疼痛が生じ, 某病院口腔外科にて生検術を施行された. 病理結 果は低分化型扁平上皮癌で治療目的にて当科を紹 介された. 【現症】左側舌側縁部に 15×18 mm の周囲に硬結を伴った潰瘍性病変を認めた. 【画 像所見】MRI では左舌縁部から正中付近に浸潤 した病変を認めた. 【処置および経過】術前化学 療法後, 舌悪性腫瘍切除術を施行した. 術後さら に化学療法および放射線治療を追加したが, 治療 後の生検により上皮内癌を認め追加切除を行った.
【病理組織所見】病巣深部に核の多形成を伴う紡 錘形細胞の浸潤増殖が認められ, 免疫染色にてサ イトケラチン, ビメンチンで陽性を示し, 紡錘形 細胞癌の診断を得た. 【まとめ】紡錘形細胞癌は 悪性度からも扁平上皮癌との鑑別は重要であり, 免疫染色による診断が有用である.
30. 診断が困難であった下顎骨骨髄炎の 1 例
市立伊勢総合病院 歯科口腔外科
○ 桂木明子, 木下靖朗, 前多雅仁
慢性顎骨骨髄炎は, 抗生物質の発達, 口腔衛生 指導の向上などにより, 比較的減少しているが, 臨床経過が長期におよぶ場合があり, 難治性の感 染症として認識されている.
今回われわれは, 下顎骨骨髄炎の典型的な所見 を示さず診断が困難であり, 良性腫瘍を疑った下 顎骨骨髄炎の 1 例を経験したので, その概要につ いて報告した.
患者は 60 歳の男性で, 齲蝕治療を目的に近歯 科医院を受診し, パノラマ X 線写真にて左側下 顎大臼歯骨体部に透過性病変を認め, 紹介にて当 科に来科した.
初診時, 左側下顎第 2 大臼歯の軽度の打診痛以 外に異常所見は認めなかった. 画像所見にて, 左 側下顎臼歯骨体部の下歯槽管の下方に比較的境界 明瞭な X 線透過性病変と, 下歯槽管より上方で は歯槽骨の骨硬化を認めた. また左側下顎第 2 大 臼歯根尖部に小豆大の透過性病変を認めたが, 骨 体部の病変との連続性は, 下歯槽管の存在により 判断が困難であった.
良性腫瘍の診断の下, 全身麻酔下に左側下顎第 2 大臼歯を抜歯し骨削除したところ, 左側下顎第 2 大臼歯根尖部の病巣と連続した暗赤色を呈する 泥状組織を認めた.
病理組織学的診断:慢性骨髄炎.
31. 下顎の歯性感染症から側頭部膿瘍を 生じたと思われる 1 例
紀南病院組合立紀南病院歯科・口腔外科
○ 平本憲一, 糸川美智子, 南 奏子 野口 孝
近年では抗菌薬の発達により重症歯性感染症は 減少し, 側頭部にまで波及することは比較的まれ である. 今回, 下顎の歯性感染症に起因し, 顎下 部から側頭部に及ぶ膿瘍を形成したと思われる 1 例を経験したのでその概要を報告する.【患者】
88 歳, 女性. 【主訴】右側下顎疼痛.【既往歴】
高血圧症, 陳旧性心筋梗塞, 認知症.【現病歴】
初診 3 日前より発熱, 右側下顎の疼痛が出現し, 近診療所にて抗菌薬の内服処方, および近歯科医 院にて右側下顎第 2 大臼歯残根周囲の消毒処置が 行われたが, 全身の震えが出現したため救急搬送 され, 入院後当科受診となった. 【口腔外所見】
右側顎下部に腫脹, 圧痛を認めた. 体温 39.2℃.
【口腔内所見】右側下顎第 2 大臼歯残根は脱落し, 同部より排膿を認めた. 【血液検査所見】白血球 数:13000/μl, CRP:18 以上. 【処置・経過】
入院当日より抗菌薬の投与, 瘻孔からの洗浄を行っ たが, 3 日目に側頭部の腫脹が出現し, CT 所見
にて側頭部から顎下部に及ぶ咀嚼筋間隙を通じ連 続する膿瘍を認めた. 同日側頭部および口腔内に 切開・排膿, ドレナージを施行し, 連日の洗浄お よび抗菌薬の投与により炎症所見は 33 日目には 消失した.