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〈 論 説 〉
文書偽造 罪 にお ける有形偽造 の概念
佐 瀬 恵 子
目 次
1序 論
2文 磐 偽 造 罪 の意 義 (D文 轡 偽造 罪 の 保護 法 益 (2)有 形 偽造 ・無 形 偽造 の 概念 (3)作 成 者'・名 義 人 の意 義
3作 成者 と名 義 人 の 「 人 格 的 同一 性 」 に つ いて (1)判 例検 討
(2)代 理 権 の 冒 用(逸 脱 及 び濫 用)の 場 合 (3)私 見
4結 論
1.序 論
近 年 、 文rl"k偽 造 罪 の基 本 的 理 解 に 関 す る問 題 が 議 論 に あ げ られ て い る。 これ まで 文 害 偽 造 罪 に 関 して は 、 文 書 の意 義 、 電 磁 的 記 録 ・コ ピー の 偽 造 に よ る文 書 偽 造 罪 の 成 否 とい っ た 問題 が 議 論 され て き たが 、 近 年 に な っ て 、 文 書 偽 造 罪 の 「 有 形 偽 造 」 を判 断 す る上 で 重 要 とな る 「 名 義 人 」 及 び 「 作 成 者 」 の概 念 に 対 す る解 釈 につ い て 議 論 が な され て い る。
文 書 偽 造 罪 は、 文 書 に対 す る公 共 の信 用 を 保 護 す る もの で あ る。 社 会 生 活 に
お い て、 文轡 は、 権 利 ・義 務 関係 の 存 在 、 また 、 社 会 生 活 上 ・法 律 上 重 要 な 廓
実 関 係 の存 在 を示 し、証 明 す る手 段 とな っ て い る。 つ ま り、 文 轡 は 公 衆 に 対 し
て信 用 を与 え る もの で あ る こ とか ら、 文 書 を偽 造 ・変 造 す る こ とは 、 公 衆 の 文
害 に 対 す る信 用 が 害 さ れ 、 社 会 生 活 にお け る文 書 に よ る取 引 の 安 全 が 侵 害 さ れ
る こ と に な る。 そ こで 、 刑 法 は各 種 文 書 偽 造 の 罪 を規 定 し、 罰 則 規 定 を置 い て
z
い る。
しか しな が ら、 文 書 偽 造 罪 は文 書 の虚 偽 内 容 を総 じて処 罰 す る もの で は な い。
文 書 偽 造 罪 の 罰 則 は、 「 文書 の 作 成 者e名 義 人 で あ る こ とにつ い て の信 用 性 を担 保 す るた め の もの で あ る」 と言 わ れ て い る よ う に、 そ の文 書 に虚 偽 の 内容 が 記
け
載 され て い た と して も、 作 成 者 と名 義 人 が 同 一 で あ る場 合 に は適 用 され な い 。 これ は、 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 が 同 一 で あ れ ば 、 文 書 内 容 を追 求 す る人 物 が 特 定 され て い るの で 、 虚 偽 の 内容 に 対 して の 責 任 を表 示 の 名 義 人 に帰 属 せ し め る こ とが可 能 とな るか らで あ る。 つ ま り、 内 容 虚 偽 の 文 書 に よ り生 じた信 用 の 侵 害 は 民事 的 解 決 な ど に委 ね られ 、 文 書 偽 造 罪 と して 処 罰 す べ き対 象 とは され な い。 この よ うな理 解 に立 っ て 、 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 が 異 な る場 合 は 「 有 形 偽 造 」 、 文 書 の作 成 者 と名 義 人 が 同 一 で 、 内 容 虚偽 の文 書 で あ る場 合 は 「 無 形 偽 造 」
と称 し、 文 書 偽 造 罪 は基 本 的 に 「 有形 偽 造 」 を処 罰 す る もの と解 され て い る。
しか し、 近 年 、 裁 判 所 にお い て 、 従 来 の 「 有形 偽 造 」 の 概 念 に新 た な解 釈 が 用 い られ て い る。 従 来 の判 例 ・学 説 は、 有 形 偽 造 を 「 文 書 の 名 義 人 以 外 の者 が 、
'L)権 限 な しに 、 そ の名 義 を用 い て文 書 を作 成 す る こ と」 と解 して い た の に対 し、
近 年 、 多 くの 裁 判 所 に お い て 、 有 形 偽 造 は 「 文 書 の作 成 者 と名 義 人 の 間 の 人 格
3)
的 同 一 性 の 齪断 」 が あ る こ と と鰐 され る よ う に な っ て い る。 これ は 同 じ実 体 を
指 す と理 解 で き る もの で は あ るが 、 詳 細 にみ る と二 つ の定 義 に は相 違 点 が 存 在
す る。 前 者 の定 義 は 「 名 義 人 以 外 の者 」 が 文 書 を 作 成 す る とい う、 名 義 人 で は
な い 「 別 の 人 物 」 に よ る文 書 の 作 成 こ そ 「 有 形 偽 造 」 で あ る こ とを 明 らか に し
て い るの に対 し、 後 者 の 定 義 は 、作 成 者 が 名 義 人 以 外 の 「 別 の人 物 」 で あ る こ
とを 明 示 して お らず 、 単 に 「 人 格 的 同一 性 」 に齪 酷 が あ れ ば よい とい う もの と
な って い る。 後 者 の定 義 に よれ ば 、 例 え ば 、 実 際 の 作 成 者 が 資 格 や 肩 書 を 有 し
て い な い に もか か わ らず 、 文 書 に表 示 さ れ た 名 義 人 は 資 格 や 肩 書 を有 して い る
と理 解 され る よ うな 文 書 で あ っ た 場 合 、 作 成 者 と名 義 人 は人 物 と して は 同 一 で
あ っ た と して も、 作 成 者 と名 義 人 の 人格 的 同一 性 に 翻 断 が あ る と解 す る こ とが
で き る。 こ の た め 、 有 形 偽 造 に 「 作 成 者 と名 義 人 の 人 格 的 同 一 性 」 の 定 義 を用
い る こ とに よ って 、 「 無 形 偽 造 」 と して 処 罰 の対 象 とな って い な い 内容 虚 偽 の 文
書 作 成 行為 を 「 有 形 偽 造 」 に含 め て 処 罰 す る こ とが 可 能 とな るの で あ る。 近 年 、
資 格 ・肩 書 の 冒 用 の場 合 、 代 理 名 義 の 冒用 の 場 合 な どが 問 題 とな る判 例 に お い
文書偽造罪における有形偽造の概念 3
て 、 この 「 文 轡 の作 成 者 と名 義 人 の 間 の 人 格 的 同一 性 」 と い う定 義 が 採 用 さ れ 、 有 形 偽 造 と して 処 罰 さ れ る事 案 が 増 えて い る現 状 に あ る。
「 人 格 的 同一 性 」 の 齪 歯 吾を基 礎 と した新 た な 「 有形 偽 造 」 の 概 念 を 明 らか に す る た め に は 、 この 定 義 に お け る 「 名 義 人 」 と 「 作 成 者 」 の 概 念 は 何 か 、 また 、 この定 義 に基 づ き 「 有 形 偽 造 」・「 無 形 偽 造 」 の 判 断 は どの よ うに 行 わ れ るべ き か に つ い て 検 討 を 加 え る必 要 が あ る と思 われ る。 ま た、 そ れ と同様 に、 これ ま で も議 論 の 対 象 と な っ て い た 「 代 理 権 の 冒用 」 に つ き、 い か に解 す るか に つ い て も検 討 す べ き必 要 が あ るで あ ろ う。
本 論 文 で は、 文 害 偽 造 罪 に お け る肩 書 の 冒用 が 問 題 とな っ た 近 時 の 裁 判 例 を 参 考 と しな が ら、 「 文 書 の作 成 者 と名 義 人 の 間 の人 格 的 同一 性 の 翻 画 吾」 を基 礎 と
した 新 た な 「 有 形 偽 造 」 の概 念 につ い て 考 察 を行 っ て い くもの と した い 。
2.文 書偽 造 罪の 意 義
(1)文 書 偽 造 罪 の保 護 法 益
文書 偽 造 罪 の 保 護 法 益 は 、 「 文 書 の信 用 と法律 的 取 引の 安 全 」 と考 え られ て い る。 また 、 文 害 偽 造 罪 の客 体 と して の 文 書 は、 「 一 般 に、 文 字 又 は これ に 変 わ る べ き可 視 的 符 号 に よ り、 一 定 期 間永 続 す べ き状 態 に お い て 、 あ る物体 の上 に記 載 した人 の 意 思 ・観 念 の表 示 」 で あ り、 「 そ の名 義人 が 認 識 可 能 」 な の もの を指
4)
す と解 され て い る。 文 書 偽 造 罪 で は 、 立 法 主 義 に 基 づ き 、 文 書 に対 す る公 共 の
5)
信 用 を保 護 す る内 容 につ き2つ の見 解 が 存 在 す る。 これ らは 、 文 轡 偽 造 罪 に お い て 「 形 式 的 側 面 に お け る真 正 性 」 を保 護 す べ きか 、 あ るい は 「 実 質 的 側 而 に お け る真 正 性 」 を保 護 す べ きか 、 とい う点 で 異 な る見 解 を 示 して い る。
文 書 で は 、 「 文 書 の名 義 人 の部 分 が 文 書 の 形 式 的側 而 で あ り、 意 思 表 示 の 内容 部 分 が 実 質 的 側 面 」 と い え る。 文 書 偽 造 罪 で は、 形 式 的 側 面 に お け る真 正 性 を 保 護 す べ きか 、 実 質 的側 面 に お け る真 実 性 を保 護 す べ きか で 見 解 の対 立 が あ り、
G)
前者 を形 式 主 義 、 後 者 を 実 質 主 義 とよん で い る。 形 式 主 義 は、 作成 名 義 の 真 正
性 を 保 護 す る もの で あ るた め 、作 成 権 限 の な い 者 が 他 人 の 名 義 を 冒 用 して 文 害
を作 成 す る行 為 を罰 す べ きで あ る とす る。 これ に対 し、 実 質 主 義 は 、 文i内 容
の真 実性 を保 護 す る もの で あ る た め 、 内 容 が 虚 偽 で あ る文 書 を作 成 す る行 為 を
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処 罰 す べ き で あ る と して い る。
の
わ が 国 の刑 法 は形 式 主 義 を基 調 と して い る。 文 書 に 対 す る公 共 の信 用 は、 作 成 権 限 者 に よ っ て真 正 に そ の 文書 が 作 成 され た か ど うか に 向 け ら れ 、 文 書 は 名 義 人 の 意 思 に 反 して 作 成 さ れ て は な らな い 。 した が って 、 内 容 が 真 実 で あ る と して も、 名 義 人 で な い 者 が 権 限 な く名 義 を 冒 用 して 文 書 を作 成 す る行 為 は禁 止 す る必 要 が あ る。 こ う い っ た 見 地 か ら文 書 偽 造 罪 は 、 文 書 か ら認 識 可 能 な真 正 の 「 名 義 人 の 意 思 ・観 念 の表 示 を証 明 す る証 拠 」 と して保 護 の 対 象 と され て い る。 故 に 、刑 法 は形 式 主 義 に 基 づ き、 私文 書 偽 造 罪(刑 法159条)に 関 して は 、 原 則 と して 有 形 偽 造 の み を処 罰 す る こ と と して い る。 有 形 偽 造 の み を 処 罰 の 対 象 と して い る の は 、 有 形 偽 造 の 場 合 、 作 成 名 義 が 偽 られ る こ とに よっ て 、 文 書 の 受 取 手 に お い て 作 成 者 が 誰 で あ るか を 知 る こ とが で きな くな り、 事 後 的 に 作 成 者 の 責 任 を追 及 す る こ とが 困 難 とな る た め で あ る。 これ に対 し、 文 書 内 容 の 真 実 性 に虚 偽 が あ る に過 ぎな い 「 無 形 偽 造 」 の場 合 に は 事 後 的 に 作 成 者 の 責 任 を追 及 す る こ とが 可 能 で あ る とい う点 か ら、 無形 偽 造 よ りも有 形 偽 造 の 当 罰 性
8)
が よ り高 い と考 え られ て い る。 しか し、 こ こ にお い て 、 資 格 ・肩 書 を偽 っ た 内 容 の 文書 を 「 有 形 偽 造 」 と解 す る こ とは可 能 か が 問題 と され て い る。 なぜ な ら、
文 書 の 作 成 権 限 ・資 格 を 偽 っ た場 合 や 、 肩 書 を偽 っ た 場 合 は 、 文 書 の 名 義 人 が 特 定 され て い る 内容 虚 偽 の 文 書 とい う こ と に な る た め 、 本 来 「 無 形 偽 造 」 に該 当 す る こ と とな る か らで あ る。 この よ うな 問 題 を 受 け、 文 書 に対 す る公 衆 の信 用 は、 内容 の 真 実 に も向 け られ る こ とが あ るか ら、 資 格 ・肩書 を偽 っ た 内容 で あ る場 合 も 「 有 形 偽 造 」 と して 処 罰 す べ きで あ る との 意 見 が あ る。 確 か に 、公 文 害 ・特 殊 な私 文 書 につ い て は、 記 載 内 容 の 真 実 性 を確 保 す る た め 、 虚 偽 の 記 載 を処 罰 す る規 定 が お か れ て い るが(刑 法156条 ・160条)、 あ くまで も この 規 定 は特 殊 な 文 書 に 限 られ る もの で あ り、 立 法 者 は 「 公 文 書 ・私 文 書 を通 じて形 式 主 義 を採 用 し、 内 容 の真 実 性 が 証 明 手 段 と して 重 要 性 を 有 す る公 文 書 ・及 び 診 断 書 等 の 特 別 の 私 文 書 に 限 って 実 質 主 義 を採 用 した」 と考 え られ る た め 、 基 本
9)
的 に 文 書 偽 造 罪 は名 義 人 の 真 正 性 を 保 護 す る もの で あ る と解 す べ きで あ る。 そ
して 、 そ の上 で 、 資 格 ・肩 書 を偽 っ た場 合 が 、 どの よ う な観 点 か ら名 義 人 の真
正 性 を害 す る もの で あ るか 検 討 す べ き必 要 が あ る と思 わ れ る。
文書偽造罪における有形偽造の概念 S
(2)有 形 偽 造 ・無 形 偽 造 の 概 念
文 書 偽 造 の概 念 に は 、狭 義 の 意 義 と広 義 の 意 義 が あ る。 狭 義 の 意 義 に お け る 文 轡 偽 造 と は、 「 文 害 の作 成 そ の もの を偽 る こ と、 す な わ ち、 他 人 の作 成 名 義 を
にの
冒用 して 文 書 を 作 成 す る こ と」 で あ る。 これ は 「 有 形 偽 造 」 とい わ れ る もの で あ る。 これ に 対 し、 広 義 の意 義 に お け る文 書 偽 造 は、 有 形 偽 造 の ほ か 、 「 無 形 偽 造 」 を含 む も の を 指 す 。 つ ま り、 広 義 の 意 義 に お け る文irk偽造 は 、他 人 の名 義 を 冒用 して 文 書 を 作 成 す る 「 有 形 偽 造 」 と、 本 人 が 内 容 虚 偽 の 文 轡 を 作 成 す る
「 無 形 偽造 」 とが あ る 。 そ して 、 わ が 国 にお いて 、 有 形 偽 造 は 、 公 文 書 ・私 文 書 を通 じて原 則 と して 処 罰 の 対 象 とな っ て い る の に 対 し、 無 形 偽 造 は 内 容 の 真 実 性 が 重 視 さ れ る種 類 の 文 書 に関 して処 罰 され て い るに 過 ぎ な い もの で あ るた め 、 通 常 、 「 文 書 偽 造 」 とい う と き は有 形 偽 造 を指 す も の で あ る。
既 に述 べ た よ うに 、 「 無 形 偽 造 」 で あ って も内 容 の 真 実 性 が重 視 され る文 轡 に 関 して は 処 罰 され るべ きで あ るた め、 公 文 害 に関 して は、 刑 法156条 で 広 範 囲 に 無 形 偽 造 が 処 罰 の 対 象 とな っ て い る。 これ に対 し、 私 文 書 に関 して は 、刑 法160 条 に お け る、 「 医 師 が 公 務 所 に提 出 す べ き診 断書 、 検 案 害 又 は死 亡証{!}」 に限 っ
て処 罰 され て い る。 この こ とか ら、 特 に 私 文̲lk偽造 に お い て は特 殊 な場 合 に限 っ
II)
て 無 形 偽 造 を 処 罰 し て い る こ と が 理 解 さ れ る 。 こ の た め 、 私 文IT偽 造 罪 に お い て 名 義 人 の 資 格 ・肩trcを 偽 る と い っ た よ う な 、 資 格 ・肩 書 の 冒 用 に よ っ て 文 轡 を 作 成 し た 場 合 、 こ れ を 「 有 形 偽 造 」 と み る べ き か 「 無 形 偽 造 」 とみ る べ き か に つ い て は 学 説 上 争 い が あ る 。 ま た 、 資 格 ・肩 書 の 冒 用 と並 ん で 、 代 理 名 義 又 は 代 表 名 義 の 冒 用 に よ っ て 、 代 理 文 書 又 は 代 表 文 書 を 作 成 す る 行 為 も ま た 、 有 形 偽 造 とす べ き か 無 形 偽 造 とす べ き か が 問 題 と な っ て い る 。 近 年 の 裁 判 所 の 判 断 や 学 説 は 、 資 格 ・肩 害 の 冒 用 や 代 理 ・代 表 名 義 の 冒 用 の 事 案 を 有 形 偽 造 と し て 処 嗣 す る 傾 向 に あ る 。
有 形 偽 造 と な る か 、 無 形 偽 造 と な る か に つ い て 、 近 年 、 裁 判 所 や 多 くの 学 者 が 、 当 該 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 と の 「 人 格 的 同 一 性 に っ い て のKVILIWII(1'auschung uberdieIdentitatderPerson,Identitatstauschung)」 と い う定 義 を 用 い
iz)
て 、 判 断 を行 っ て い る。 こ こで い う 「 人 格 的 同 一性 」 とは、 「 氏 名 その 他 称 号 の 同 一 性 の こ とで は な く、 氏 名 とか 称 号 を通 して 知 り得 られ る人 格 的 同 一性 」 を
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指 す も の とい わ れ て い る。 現 在 、 わ が 国 の判 例 も多 くが こ の定 義 を採 用 し、 有
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形 偽 造 か 無 形 偽 造 か の 判 断 を行 っ て い る(な お、 「 人 格 的 同一 性 」 を 用 いて 有 形 偽 造 か無 形 偽 造 か に 関 す る判 断 を加 えて い る判 例 に つ い て は後 述 す る もの とす
る)。
(3)作 成 者 ・名 義 人 の意 義
文 書 と認 め るた め に は 、 文 書 に 記 載 さ れ る意 思 ・観 念 の 担 い 手 が 誰 で あ るか を 、 文 書 か ら読 み 取 る こ とが で きな くて は な ら な い。 文 書 の意 思 ・観 念 の 担 い 手 は 「 名 義 人 」 と呼 ば れ て い る。 そ して 、 文 書 の 作 成 者 とは 、 文 書 を表 示 した 者 を 指 す 。 作 成 名 義 の な い文 書 や 出 所 不 明 の 文 書 は 、 一 般 的 に 信 用 を 受 け る も の で は な い。 したが っ て 、 作 成 名 義 の な い 文 書 の 内 容 が 虚 偽 で あ っ て も そ の偽 造 を 文 書 偽 造 罪 と して 処 罰 す るに 足 りる もの とは考 え な い。 作 成 者 と名 義 人 が 一致 す る文 書 は、真正 に作成 した文書 であ るか ら真 正文書 と呼 ばれ 、両者 が一 致 しな い 文書 は不 真 正 文 書 と呼 ばれ る。 不 真 正 文 書 の 作 成 は 、 他 人 名 義 の 冒用 で あ り、 文 書 偽 造 行 為 とな る。 こ の た め 、 文 書 偽 造 罪 と して 処 罰 さ れ る行 為 か を判 断 す る上 で 、名 義 人 及 び 作 成 者 の 意 義 を明 確 にす る こ とが 重 要 で あ る。
文 書 の 作 成 者 と名 義 人 との 区 別 に つ い て は争 い が あ り、 作 成 者 の 意 義 に お い
ia) の
て い くつ か の 学 説 が 存 在 して い る。 第 一 は観 念 説 と呼 ば れ る学 説 で あ る。 観 念 説 とは 、 文 書 の 作成 者 は文 書 に お け る思 想 の表 示 者 で あ り、 そ れ は つ ま り文書 の名 義 人 に ほ か な ら な い とい う学 説 で あ る(又 は精 神 性 説 と呼 ば れ る)。 第 二 は
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衷 実 説 と呼 ば れ る学 説 で あ る。 事 実 説 とは、 名 義 人 は 思 想 の主 体 で あ り、 作 成 者 は 名 義 人 の思 想 を文 書 に 事 実 上 記 載 した者 で あ る とい う学 説 で あ る(又 は物
m
体 化 説 と呼 ば れ る)。 第 三 は 効 果 説 と呼 ば れ る学説 で あ る。 効 果 説 とは 、 作 成 者 は文 書 か ら生 じ る効 果 を 帰 属 し う る者 で あ る とい う学 説 で あ る。 最 後 は 法 的 責
is)
任 説 と呼 ば れ る学 説 で あ る。 法 的 責 任 説 とは 、 作 成 者 は文 書 作 成 にっ い て の 法 的貴 任 を負 う者 で あ る と い う学 説 で あ る。 これ らの学 説 は 、他 人 に執 筆 を依 頼 して 文 書 を 作成 させ る場 合 に お い て 、 執 筆 者 を作 成 者 とす るか 、 執 筆 依 頼 者 を 作成 者 とす るか で 見 解 が 分 か れ て い る。 執 筆 者 を作 成 者 とす る見 解 は 事 実 説 、 執 筆 依 頼 者 を作 成 者 とす る説 は 観 念 説 で あ る。 さ ら に効 果 説 で は、 文 書 の 効 果 が 帰 属 さ れ る主 体 が 作 成 者 とな るの で 、 作 成 者 は執 筆 依 頼 者 とな り、 また 、 法 的 責 任 説 で は、 作 成 者 は法 的 責 任 追 及 が 可 能 な者 と な る の で 、 執 筆 依 頼 者 とな
る。
文書偽造罪における有形偽造の概念 7
事 実 説 に よ る とき は 、 他 人 に依 頼 して 文 書 を作 成 す る場 合 、 た とえ ば、 依 頼 人 が 作 成 者 に 文 書 の代 筆 を依 頼 す る場 合 な どに お い て は 、 作 成 者 と名 義 人 の一 致 しな い不 真 正 文 書 が 作 成 され る と解 され るた め 、 文 害 偽 造 行 為 に 当 て は ま る
こ とに な る。 しか し、他 人 に依 頼 して 文rfを 作成 す る こ とは 日常 的 に 通 常 行 わ れ て い る こ とで あ る か ら、 事 実 説 の よ うな理 論 構 成 は 日常 感 覚 に合 致 しな い も の で あ る とい え よ う。 次 に 効 果 説 で あ るが 、 効 果 説 は 以 下 の 点 で 妥 当 性 に 欠 け る こ とが 指 摘 され て い る。 第 一 に 、 自己 名 義 で 作 成 した 文 轡 で あ っ て も公 序 良 俗 違 反 に よ り法 的 効 果 が 作 成 名 義 人 に婦 属 しな い 場 合 が 問 題 とな る こ と、 第 二 に 、 事 実 証 明 文*fkuに つ い て 、 文 書 内 容 に対 応 した 法 律 効 果 が 作 成 名 義 人 に帰 属 す る とい う こ とは問 題 とな らな い こ と、 第 三 に 、 法 律 効 果 は 文 轡 内 容 にか か わ る こ とな の で 、 文 書 の証 拠 性 と直 接 関 係 が な く、 「 作成 名 義 人 か ら授 与 され た 作 成 権 限 を逸 脱 して 文 沓 が 作 成 さ れ た ときで も、 民 法 上 の 善 意 者 保 護 規 定 に よ り 文'Pk内容 に対 応 した 法 的 効 果 を追 及 で き る場 合 に は有 形 偽 造 が 否 定 され る こ と
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に な る」 とい う点 で あ る。 こ こ で指 摘 され て い る よ うに 、 文 轡 は意 思 ・観 念 の 表 示 を証 明 す る もの と して 保 護 の対 象 とされ て い る こ とを 考 慮 す れ ば 、 意 思 観 念 の 表 示 の証 拠 と して 使 用 で き るか とい う問 題 と、 証 拠 に よ り証 明 され る べ き 実 態 関 係 に対 応 す る法 的 効 果 が 肯 定 され るか とい う問 題 を 区 別 す べ きで あ るた
2n)
め 、 この 意 見 に は賛 成 で あ る。 最 後 の 法 的 責 任 説 で あ る が 、 この 学 説 にお け る 文 轡 の 法 的 責 任 が 何 に基 づ くも の か が 明 確 に な っ て い な い た め、 採 用 す る こ と は で きな い もの と思 われ る。 以.ヒに よ り、 作成 者 の 概 念 は観 念 説 が 妥 当 で あ る。
しか し、 観 念 説 を採 用 す る上 で注 意 を しな け れ ば な らな い の が 代 理 権 の 冒用 の場 合 で あ る。 代 理 権 の 冒用 に は、 無 権 代 理 の よ う に、 代 理 権 が 全 くな い者 が 代 理 権 を 冒用 す る場 合 や 、代 理 権 者 が代 理 権 を逸 脱 す る場 合 、 ま た、 代 理 権 者 が 代 理 権 を濫 用 す る場 合 が 考 え られ る。 た とえ ば 、 無 権 代 理 に よ る文i'tki ̲t偽造 は 、 代 理 権 の な い 乙 が 甲 代 理 人 乙 名 義 の文 書 を作 成 す る場 合 で あ るが 、 観 念 説 か ら す る と、 こ こに お け る文 書 の 思 想 の表 示 者 は代 理 権 の な い 乙 で あ り、 文 書 名 義 人 は 甲 の 代 理 権 を 有 す る 乙 と解 す る こ とが で き る。 これ は 、本 人 に あ た る 甲が 実 際 に 乙 に 対 し文 書 作 成 を依 頼 した わ け で は な く、 乙 が 甲 の代 理 権 を勝 手 に 冒 用 した例 で あ るた め 、 文 書 の 作 成 者 が 代 理 権 の な い 乙 とい うこ とが理 解 され る。
しか し、 そ れ に対 して 、 代 理 権 の 逸 脱 ・濫 用 の 場 合 に お い て は 、 本 来 甲 の 代 理
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人 た る乙 が そ の権 限 を逸 脱 ・濫 用 した 文書 を作 成 す る とい う こ とに な る た め 、 その 文 書 の 思想 の 表 示 者 は本 人 た る甲 と理 解 され る こ と とな る。 こ こ にお いて 、 少 な くと も 乙 は 甲 の 代 理 権 を 有 す る代 理 人 で あ るた め 、 乙 が 文 書 を 作成 す る場 合 は 、 甲 の 依 頼 に 基 づ い て行 わ れ て い る と解 さ れ るか らで あ る。 しか し、 この よ うに解 す る こ とは 、 民 法 の 規 定 に照 ら して妥 当 で は な い よ う に思 わ れ る。 代 理 権 の逸 脱 ・濫 用 の 場 合 に お いて は 、 乙 が 甲 の代 理 権 を有 して 甲代 理 人 乙名 義 の文 書 を 作 成 して い る な らば 、 そ の作 成 者 は本 人 で は な く、 あ くま で も 「 権 限 を逸 脱 した(濫 用 した)甲 代 理 人 乙」 と理 解 し、 そ こで 名 義 人 と して 理 解 さ れ る 「 甲代 理 人 乙 」 との 人 格 的 同 一 性 の 齪 酷 が あ るか ど うか検 討 を行 っ て い くべ
まけ
きで あ る と思 わ れ る。
同様 に、 文 書 の 名 義 人 の 意 義 に つ い て も問 題 が あ る。 まず 、 作 成 名 義 の あ る 文 書 と は、 氏 名 又 は称 号 の 記 載 が あ る文 書 とい う こ とで は な く、 氏 名 、 称 号 、 筆 跡 、 内 容 な ど に よ っ て 作成 者 た る人 格 が 知 られ うる文 書 を い う。 つ ま り、 こ
zz)
こで の 氏 名 や 称 号 は人 格 を特 定 す る人 格 形 成 要 素 に過 ぎ な い も の で あ る。 そ し て、 その 符 号 に 基 づ き 、 一 般 人 が 認 識 し うる文 書 の 意 思 ・観 念 の担 い手 を 名 義 人 と して い る。 名 義 人 を特 定 す る場 合 に問 題 とな る の が 、 た とえ ば、 依 頼 者 が 、 代 理 人 又 は代 表 者 を して 代 理 文 書 又 は代 表 文書 を作 らせ る場 合 で あ る。 この 場 合 、 依 頼 者 本 人 が 名 義 人 で あ るの か 代 理 人 又 は代 表 者 が 名 義 人 で あ る の か が 問 題 と な る。 裁 可 名 義 人説 は、 名 義 人 を、 思 想 内 容 の帰 属 者 、 文 書 の 効 果 の 帰 属 主 体 と して 理 解 し、 裁 可 者 こそ が 名 義 人 で あ る とす る立 場 か ら、 代 理 文 書 又 は
代 表 文 書 の 名 義 人 は本 人 で あ る とす る。 通 説 も法 的効 果 が 直 接 に本 人 に 帰 属 す る とい う理 由 か ら、 本 人 名 義 の 文 書 と解 して お り、近 年 有 力 な 学 説 も、 名 義 人 は文 書 の 作成 につ い て 責 任 を 負 うべ き者 で あ る とい う理 由 か ら、 本 人 名 義 の 文
24)
書 と解 して い る。 しか し、 名 義 人 の 概 念 は 、 法 的 効 果 の 帰 属 主 体 で は な く、 意
思 ・観 念 の 表 示 主 体 と して理 解 す べ き で あ り、 ま た 、 代 理 文書 ・代 表 文 書 は代
理 人 又 は 代 表 者 が 、 本 人 の た め に、 自己 の 意 思 ・観 念 を表 示 して い る文 書 で あ
る と考 え られ る こ とか ら、代 理 文 書 又 は 代 表 文 書 の 名 義 人 を本 人 とす る こ とに
つ い て は 問 題 が あ る。 こ の 問 題 につ い て は、 基 本 的 に代 理 文 書 の名 義 人 は代 理
人 で あ る と解 す べ きで あ るが 、 そ の 際 に は、 代 理 ・代 表 資 格 を 冒用 ・逸 脱 ・濫
用 す る場 合 な ど、 そ れ ぞ れ に お い て検 討 され るべ き問 題 が あ る。 また 、 有 形 偽
文書 偽造罪における有形偽造 の概念 9
造 を判 断 す る上 で 採 用 さ れ て い る 「 作 成 者 と名 義 人 との 人 格 的 同 一 性 の 齪 齪}」
とい う判 断 基 準 を も って 、 代 理 権 の 冒用 ・逸 脱 ・濫 用 に お け る有 形 偽 造 の 判 断 につ い て も詳 細 に検 討 を行 う必 要 が あ るた め 、 別 途 後 述 して い きた い と思 う。
3.作 成 者 と 名 義 人 の 「 人 格 的 同 一 性 」 に つ い て
(1)判 例 検 討
か つ て、 文 害 偽 造 罪 にお け る有 形 偽 造 及 び無 形 偽 造 の判 断 は、 「 文̀1'kiuの 名 義 人 以 外 の 者 が 、 権 限 な しに、 そ の 名 義 を用 い て 文 害 を作 成 す る こ と」 で あ る と さ
'L5)
れ て い た。 そ の 後 、現 在 で も多 く用 い られ て い る 「 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 との 間 の 人 格 的 同 一 性 を 偽 る こ と」 と い っ た 有形 偽 造 の概 念 が 定 着 を 見 せ る よ う に な るの だ が 、 この 有 形 偽 造 の概 念 を始 め て明 言 した の は、 最 高 裁 昭 和59年2月 171.1の判 決 で あ る。 これ は、 被 告人 が 他 人Aの 氏 名 を通 称 と して 用 い 、A名 義
26)
で 文 書 を作 成 ・提 出 した 事 案 で あ る。 そ して 、 その 後 の 文 割 為造 罪 が 問 題 とな る判 例 にお いて も、 文 書 偽 造 の 本 質 は、 「 文 書 の 作成 者 と名 義 人 の間 の 人格 的 同 一 性 に齪 麟 を 生 じさせ た 」 点 に あ る と して本 判 決 を 引用 し 、 私 文 轡 偽 造 罪 を 肯 定 した 判 例 が 多 く見 られ る よ うに な った 。 例 え ば、 弁 護 士 資格 の な い被 告 人 が 、 同 姓 同 名 の 弁 護 士Aの 存 在 を利 用 して 、 弁 護 士 で あ る よ う に偽 り文ikを 作 成 し
n>
た 事 案 や 、 他 人Bの 名 義 を 用 い て 、 虚 偽 の生 年 月 日 ・住 所 ・経 歴 等 を 記 載 し、
被 告 人 の顔 写 真 を は りつ け た履 歴 書 ・雇 用 契 約 書 を作 成 ・行 使 した 蕩 案 な どが
ふ
あ げ られ る 。
以 上 の よ うに 、 近 年 、 名 義 人 が資 格 や 肩 書 を 冒 用 して 内 容 虚 偽 の 文 轡 を 作成 した 場 合 で あ って も、 文 書 の 性 質 や 文 書 が 与 え る社 会 的僑 用 性 の 程 度 が 高 い場 合 は 、 有 形 偽造 と して処 罰 す る傾 向 とな っ て い る。 そ して 、 その 際 に 用 い られ る概 念 が 「 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 との 間 の人 格 的 同 一 性 を偽 る こ と」 で あ る。
この概 念 を用 い て 判 断 を行 った 最 も新 しい最 高 裁 の 決 定 が あ るの で 、 本 決 定 に っ き検 討 を加 え て い き た い と思 う。
そ れ は、 最 高 裁 平 成15年10月6日 の決 定 で あ る。 本 事 案 は 、 「 国際 旅 行 連 盟
(ITA)」 な る団体 が発 給 者 と して表 示 され た 国際 運 転 免 許 証 様 の文 欝 を作 成 した
こ とに つ き、 有 印 私 文 警 偽 造 罪 で 起 訴 され た 衷 案 で あ る。 私 文i̲f偽造 罪 におい
/0
て は 、 基 本 的 に有 形 偽 造 が 処 罰 の 対 象 とな り、 無 形 偽 造 は不 処 馴 とな る と考 え られ て い る こ とか ら、 本 事 案 は 、 有 形 偽 造 か 無 形 偽 造 か を判 断 す る た め に必 要 で あ る 「 文 書 の 名 義 人 の特 定 ・限 定 」 が 問 題 とさ れ た 。 そ こで 、 弁 護 人 は 、 「 国 際 旅 行 連 盟 」 は メ キ シ コ に実 在 す る民 間 団体 で あ り、被 告 人 は 同 団 体 か ら本 件 文 書 の 作 成 を 委 託 され て い た もの で あ るか ら、 作 成 名 義 に偽 りの な い 内 容 虚 偽 の 文 書 を 作成 した に す ぎず 、無 形 偽 造 で あ る と して 私 文 書 偽 造 罪 は成 立 しな い と主 張 した 。 この よ うな事 案 に つ き、第 一審 の 東 京 地 裁(東 京 地 判 平 成13・12・
25)は 、 「 私 文 書 偽 造 罪 の 本 質 は 、 文書 の 作 成 者 と名 義 人 の 間 の 人格 的 同 一 性 を 偽 る こ と に よ っ て 、 文 書 に対 し社 会 一 般 が 抱 く公 共 の 信 用 を 害 す る こ と に あ る と解 され る(最 決 平 成5・10・5刑 集47巻8号7頁 参 照。)か ら、 問 題 とな る文 轡 の 名 義 人 を決 定 す る に 当 た って は、 文書 に記 載 され て い る団 体 名 や個 人 名 等 の ほ か 、 文=ixの形 状 や 記 載 内 容 、 更 に は 文 書 か ら窺 わ れ る使 用 目的 な ど も考 慮 した 上 で 、 そ の文 書 か ら認 識 され る 人格 主 体 は 誰 か を判 断 す るの が相 当 で あ る」
との 判 断 を行 った 。 さ らに、 本 件 に つ い て 、 「 本 件 国 際運 転 免許 証 様 の 物 の名 義 人 は 、上 述 した よ うに、 『ジ ュネ ー ブ条 約 に基 づ き 国 際運 転 免許 証 を発 給 す る権 限 を有 す る団 体 と して のITA』 と解 さ れ る と ころ、 その よ う な団 体 が 実 在 しな い 以上 、 それ は弁 護 人 が 主 張 す るITAな る団体 とは別 の人 格 主 体 と言 うべ きで あ るか ら、 被 告 人 が 上 記 白 色 冊 子 型 の 台 紙 に ゴム 印 等 を使 用 して 判 示 行 為 に及 び 本 件 国 際 運 転 免 許 証 様 の 物 を作 成 した 行 為 は 、 架 空 団体 名 義 に よ る文 書 を偽 造 した 行為 に当 た る と解 す る こ とが で き る。 」 と して 私 文 書 偽 造 罪 の成 立 を 肯 定 し た 。
以 上 の よ う な第 一 審 判 決 を不 服 と して被 告 人 ・弁 護 人 か ら控 訴 が な さ れ た の だ が 、 そ の後 、 第 二 審 た る東 京 高 裁 は第 一 審 判 決 を 踏 襲 して 以 下 の よ うに 判 示 した(東 京 高 判 平 成14・5・28)。 名 義 人 の 特 定 に つ い て は、 「 単 に名 義 人 記 載 部 分 だ け を 局 所 的 に取 り上 げ て判 断 す るの で は な く、 公 共 の信 用 の 観 点 か ら、
文 番 全 体 の 記 載 や 形 状 、 及 び 、 これ らの 点 か ら窺 わ れ る当 該 文 書 の 機 能 、 性 質 等 を も含 め 、 総 合 的 か つ 合 理 的 に 判 断 す 」 べ き で あ る と し、本 件 に つ い て は、
「 被 告 人 が 、 い わ ゆ る虚 無 人 名 義 の文 書 を、 その 名 義 人 が実 在 し、 真 正 に作 成 し
た と誤 信 させ る よ うな も の と して 作 成 した こ とに帰 す る」 と し、 第 一 審 と同様
の 理 由 に よ り、 第 一 審 判 決 を 維 持 して 文書 偽 造 罪 の 成 立 を 肯 定 した 。
文RSIJ偽 造 罪 に お け る有 形偽 造 の概 念 ii
これ に対 し、 被 告 人 側 か ら上 告 が な さ れ た 最 高 裁 は 、 最 終 的 に 以 下 の よ うに 判 示 した。 「(本件 文 書 の)形 状 、 記 載 内容 等 に 照 らす と、 本 件 文 書 は、 一 般 人 を して 、 ジ ュネ ー ブ条 約 に基 づ く国 際 運 転 免 許 証 の 発 給 権 限 を有 す る団 体 で あ る国 際 旅 行 連 盟 に よ り作成 され た 正 規 の 国 際 運 転 免 許 証 で あ る と信 用 させ る に 足 り る もの で あ る」 と し、 「 本件 文書 の記 載 内容 、性 質 な どに照 らす と、 ジ ュネ ー ブ条 約 に基 づ く国 際 運 転 免 許 証 の 発 給 権 限 を 有 す る 団体 に よ り作 成 され て い る とい う こ とが 、 正 に本 件 文 書 の社 会 的 信 用 性 を 基 礎 付 け る も の とい え る か ら、
本 件 文 轡 の 名 義 人 は、 『 ジ ュネ ー ブ条 約 に基 づ く国 際 運 転 免 許 証 の発 給 権 限 を 有 す る団 体 で あ る国 際 旅 行 連 盟 』 で あ る と解 す べ きで あ る。 そ うす る と、 国 際旅 行 連 盟 が 同条 約 に塞 づ きそ の 締 約 国 等 か ら国 際 運 転 免 許 証 の 発 給 権 限 を与 え ら れ た 衷 実 は な い の で あ るか ら、 所 論 の よ うに 、 国 際 旅 行 連 盟 が 実 在 の 団 体 で あ り、被 告 人 に本 件 文 書 の 作 成 を委 託 して い た との 前 提 に 立 っ た と して も、 被 告 人 が 国 際 旅 行 連 盟 の 名 称 を 用 い て本 件 文 書 を 作成 す る行 為 は 、 文 磐 の 作 成 者 と 名 義 人 との 間 の 人 格 的 同一 性 を偽 る もの で あ る とい わ ね ば な らな い 」 と して 、 被 告 人 に対 し有 印 私 文 書 偽 造 罪 の成 立 を認 め た原 判 決 の判 断 を正 当 と して上 告
29)
を棄 却 した。
最 高 裁 は 「 国 際 旅 行 連 盟 」 を実 在 の 団 体 と して 認 識 し、被 告 人 は実 在 の 団体 か ら文 欝 の 作 成 を 委 託 され て い た と解 して い る。 この た め 、 本 件 は 当 該 団 体 が そ もそ も文 書 の 作 成 権 限 を有 して い な い とい う 「 資 格 冒用 の事 例 」 と考 え られ 、 有 形 偽 造 に お け る名 義 人 の特 定 に つ き問題 が 生 ず る もの とな っ た。 これ に よ り、
本 決 定 は 、 「 資 格 冒用 の事 例 」 に お け る名 義 人 の特 定 に つ い て 、 最 高 裁 と して初 め て の 判 断 を示 した とい う点 に お い て重 要 な意 義 を もつ もの で あ る とい わ れ て
:so) い る。
本 件 につ いて 最 高 裁 は 、 「 国 際旅 行 連 盟 」 は実 在 す る団体 で あ り、被 告 人 は 「 国
際 旅 行 連i」 か ら文 書 作 成 の 委 託 が な され て い た との 理 解 に 立 っ て い る。 この
よ うに考 えれ ば 、 作 成 者 は作 成 名 義 の 冒用 が な く、 国 際 旅 行 連 盟 が 国 際運 転 免
許 証 を発 給 す る権 限 が な い の に あ る よ うに 装 っ た 「 資 格 ・肩 轡 の 冒用 」 と して
無 形 偽 造 と解 す る こ と も可 能 とな る。 しか し、 最 高 裁 は 、 私 文{堀 為造 罪 に お け
る 「 有 形 偽造 」・「 無 形 偽 造 」 の 区 別 のた め の名 義 人 の 特 定 を 、 昭 和59年 の 最 高
裁 判 決 にお いて 示 さ れ た 「 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 との 間 の 人 格 的 同 一 性 の齪 臨 」
iz
の 有 無 に 基 づ い て 判 断 を行 う こ と と し、 国 際 運 転 免 許 証 とい う文 書 の性 質 や 社 会 的 信 用 性 に言 及 し、 当該 文 書 の 名 義 人 を単 に 「 国 際 旅 行 連 盟 」 とい う実 際 の 団 体 で は な く、 「 国際 運 転 免許 証 の 発 給 権 限 を有 す る国 際旅 行連 盟 」 と解 して い る。 この よ うに解 す れ ば 、 当 該 作 成 者 と名 義 人 との 間 に は 「 国 際 運 転 免 許 証 の 発 給 権 限 を有 しな い国 際 旅 行 連 盟 」 と 「 発 給 権 限 を 有 す る 国 際 旅 行 連 盟 」 とい うよ うに 人 格 的 同 一 性 に齪 齢 が 生 じて い る こ と とな り、 有形 偽 造 と して 処 罰 す
3U
る こ とが 可 能 とな る。
しか しな が ら、 「 作 成 者 と名 義 人 との 間 の人 格 的 同一 性 の 齪 飴 」 とい っ た判 断 基 準 を広 く適 用 して しま う と、 従 来 基 本 的 に不 可 罰 で あ る と解 さ れ て き た 「 資 格 ・肩 書 の 冒用 」 の 事 例 が 有 形 偽 造 と解 され 、 処 罰 範 囲 が 拡 大 さ れ て し ま う こ と も否 定 で き な い 。 こ うな って し ま う と、 文 書 偽 造 罪 の 過 度 の 犯 罪 化 を もた ら す お そ れ が あ るた め、 当 該 判 断 基 準 を 用 い る際 に は、 当 該 文 書 が資 格 ・肩 書 が な け れ ば 作 成 す る こ との許 され な い性 質 を有 して い る こ とや 、 名 義 人 の 特 定 に 関 す る記 載 内 容 や 文 書 が 利 用 され る際 の 状 況 、 事 後 的 な 責 任 追 及 性 な ど、 文 書 の性 質 や 文 書 か ら生 ず る社 会 的信 用 性 の 内容 か ら名 義 人 を 特 定 し、 そ の実 質 的
32)
違 法 性 を検 討 す る こ とが 重 要 で あ る と考 え られ る。
これ を本 件 につ い て み る に、 当 該 国 際 運 転 免 許 証 様 の 文 書 は、 一 般 人 を して 、 ジ ュネ ー ブ条 約 に基 づ く国 際 運 転 免 許 証 の 発 給 権 限 を 有 す る 団 体 で あ る国 際 旅 行 連 盟 に よ り作 成 さ れ た 、 正 規 の 国 際 運 転 免 許 証 で あ る と信 用 させ るに 足 りる もの で あ り、 そ の文 書 の 性 質 か ら も高 い社 会 的 信 用 性 を有 す る もの で あ る とい え る。 この こ とか ら、 最 高 裁 決 定 が 、 国 際 運 転 免 許 証 の 性 質 及 び 社 会 的 信 用 性 も考 慮 した上 で、 「 文 書 の 作 成 者 と名 義 人 との 問 の 人 格 的 同一 性 」 とい っ た判 断 基 準 を用 い て 、 作 成 者 と名 義 人 との間 の 人 格 的 同一 性 に齪 鶴 あ り と判 断 し、 私 文 書 偽 造 罪 成 立 を 肯 定 した こ とは妥 当 で あ っ た と思 わ れ る 。
こ の と き、 も し も、 文 書 自体 が 資 格 ・肩 書 が な けれ ば作 成 す る こ との で き な い性 質 の 文 書 で は な く、 そ こか ら生 じ る一 般 的 な社 会 的信 用 性 の程 度 も低 い場 合 で あ る な らば 、 当 該 文 書 偽 造 行 為 は 「 作 成 者 と名 義 人 の 人 格 的 同 一 性 に翻 臨 が あ る」 有 形 偽 造 と して 、 文 書 偽 造 罪 の 構 成 要 件 に該 当 す る も の で あ っ て も、
文 書 偽 造 罪 の保 護 法 益 を著 し く侵 害 す る も の で は な く、 また 、 処 罰 に値 す べ き
違 法 性 を備 え て い る行 為 で あ る とは い え な い可 能 性 が 生 ず る こ とに 注 意 しな く
文書偽造罪における有形偽造の概念 /3
て は な らな い 。 こ の よ うな 場 合 で あ る な らば 、 当 該 行 為 は有 形 偽 造 と して 文書 偽 造 罪 の構 成 要 件 に該 当 す る と して も、 違 法 論 にお い て 可 罰 的違 法 性 に欠 け る
もの で あ る と理 解 され う る。 つ ま り、 そ の よ うな 有 形 偽 造 は、 文 書 偽 造 罪 が予 定 して い た程 度 の 可 嗣 的 違 法 性 を 有 しな い もの で あ る こ とか ら、 処 罰 す べ き違 法 は な く、 不 可 罰 とな る と解 す べ きで あ ろ う。
(2)代 理 権 の 冒 用(逸 脱 及 び 濫 用)の 場 合
資 格 ・肩 書 の 冒 用 の 問題 と並 ん で 、代 理 名 義 又 は 代 表 名 義 の 冒用 に よ っ て代 理 文 轡 又 は代 表 文 書 を作 成 す る行 為 が 、 有 形 偽 造 と な る か無 形 偽 造 とな るか に つ い て 問 題 が 生 じて い る。 代 理 名 義 ・代 表 名 義 の 冒 用 の 場 合 は、今 日、無形偽 造 と して 不 可 罰 とす る見 解 や判 例 は み られ ず 、 有 形 偽 造 と解 釈 して処 罰 の 対 象
とな っ て い る。
代 理 名 義 ・代 表 名 義 の 冒用 を 有 形 偽 造 と解 す る見 解 の 中 で 、 通 説 的 な 見 解 と して 本 人 名 義 人 説 が あ る。 本 人 名 義 人 説 は 、 代 理 文 書 又 は代 表 文 害 は 、本 人 の た め に作 成 され た もの で あ り、 その 文 書 の 法 律 効 果 が 直 接 本 人 に帰 属 す るか ら、
代 理 文 書 又 は代 表 文 書 の 名 義 人 は 本 人 で あ り、 代 理 資 格 又 は代 表 資 格 を もた な い 者 が そ の 資 格 を 冒用 して 代 理 文 書 又 は代 表 文liYを作 成 す る行 為 は、 作 成 権 限 が な い の に他 人 名 義 を 冒 用 して 文 書 を作 成 す る こ と とな るた め 、 有形 偽 造 に 当
;i7)
た る とされ て い る。 しか し、 この 見 解 は民 法99条1項 「 代 理 人 が その 権 限 内 に お い て 本 人 の た め に す る こ とを示 して した意 思 表 示 は 、本 人 に対 して 直 接 に そ
34)
の効 力 を生 ず る 」 と い う規 定 と矛 盾 が 生 じる もの で あ る。 民 法99条1項 の規 定 に従 え ば、 代 理 人 は そ の権 限 に基 づ き 自 ら代 理 文 書 を作 成 し、 自身 の 意 思 表 示 を な す こ とが可 能 で あ る と考 え られ るた め、 代 理 文 書 ・代 表 文 轡 の名 義 人 は代 理 人 と解 す べ きで あ る よ うに思 わ れ る。 こ こで 、 代 理 ・代 表 資 格 の 冒用 につ き、
有 形 偽 造 の 判 断 に 「 作 成 者 と名 義 人 の人 格 的 同一 性 の 祖 語 」 の 定 義 を採 用 しな が らい か に 解 す べ きか に つ い て 検 討 を行 って い き た い 。
代 理 ・代 表 名 義 に 関 す る 問題 は、 以下 の3つ の場 合 に分 け る こ とが 可 能 で あ
る。 第 一 に代 理 ・代 表 資 格 の 冒用 の場 合(無 権 代 理 の 場 合)、 第 二 に代 理 ・代 表
資 格 の 逸 脱 の場 合 、 第三 に代 理 ・代 表 資 格 の濫 用 の場 合 で あ る。 第 一 の 「 代 理 ・
代 表 資 格 の 冒 用 の場 合 」 は、 代 理 資 格 を全 く有 しな い 者 が 他 人 の 代 理 人 と して
意思 表 示 を す る こ とで あ り、 す なわ ち、無 権 代 理 を指 す もので あ る。 第 二 の 「 代
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理 ・代 表 資 格 の 逸 脱 の 場 合 」 は 、 代 理 資 格 を有 す る代 理 人 が 、 その 権 限 を超 え て代 理 人 と して 意 思 表 示 す る場 合 を指 す もの で あ る。 第 三 の 「 代 理 ・代 表 資 格 の濫 用 の 場 合 」 は、 資 格 を有 す る代 理 人 又 は代 表 者 が 、 そ の権 限 内 の 事 項 に つ
き、 権 限 を与 え られ た 趣 旨 に反 して 文 書 を 作 成 す る場 合 を指 す もの で あ る。
第 一 の 、代 理 ・代 表 資 格 を 冒用 して文 書 を作 成 す る場 合 、 た とえ ば 、 代 理 資 格 又 は代 表 資 格 を 有 しな い 乙が 、 「 甲代 理 人 乙 」 又 は 「 甲代 表 者 乙 」 と記 載 した 代 理 文 書 又 は 代 表 文 害 を 作 成 した 場 合 で あ るが 、 そ こ に お い て の 「 甲 代 理 人 」
とい う表 示 は、 一 つ の 資 格 を 示 す い わ ば 「 肩 書 」 で あ っ て 、 作 成 名 義 そ の もの で は な い と解 す る こ とが 可 能 で あ る。 した が っ て 、 「 肩 書 」 の 中 に他 人 の氏 名 を 冒用 した と して も、 これ は む しろ無 形 偽 造 と考 え る こ と もで き よ う。 しか し、
代 理 資 格 を全 く有 しな い者 が 代 理 人 を偽 っ て代 理 文 書 を作 成 す る行 為 が 処t?7か ら免 れ る とい うの も妥 当 で は な い。 この た め、 わ が 国 の判 例 ・学 説 で は これ を 有 形 偽 造 と して い る。
これ を 有形 偽 造 とす る考 え方 に は い くつ か の 学 説 が 存 在 す る。 第 一 の 学 説 は 、 代 理 人 の 作 成 す る文=書に お い て は 、 文 書 の 作 成 者 は代 理 人 で あ るが 文 書 の 名 義 人 は本 人 で あ る との 見 地 に立 ち、 代 理 資 格 に本 人 の 名 義 を 冒用 して 文 書 を 作 成
す るの は 有形 偽 造 で あ る と解 す る もの で あ る(裁 可 名 義 人 説)。 この説 は 、 代 理 文 書 にお け る文 書 の 作 成 者 は代 理 人 で あ るが 、 文 書 の 名 義 人 は代 理 人 で は な い とい う判 断 を 行 って い る。 こ の説 に よれ ば 、 第 一 の 「 代 理 ・代 表 資 格 冒用 の 場 合 」 も、 第二 の 「 代 理 ・代 表 資 格 逸 脱 の場 合 」 も、 名 義 人 は本 人 で あ る甲 で あ り、 乙 は そ の 代 理 ・代 表 の 資 格 が 全 くな い者 、 あ るい は代 理 ・代 表 権 限 を 越 え て しま っ て い る者 で あ る た め 、代 理 ・代 表 文 書 を作 成 す る こ と は、 代 理 ・代 表 資 格 に本 人 甲の 名 義 を 冒用 して 文 書 を偽 造 す る こ と とな り、 ど ち ら も有 形 偽 造
とな る と解 して い る。
第 二 の 学 説 は 、代 理 人 が作 成 す る文 書 に お い て は 、 代 理 人 と本 人 との 合 一 し
た も の が そ の 名 義 人 で あ る と解 す る もの で あ る。 この 説 に よれ ば、 第 一 の 「 代
理 ・代 表 資 格 冒用 の 場 合 」 も、 第 二 の 「 代 理 ・代 表 資 格 逸 脱 の 場 合 」 も、 文 轡
の作 成 者 は代 理 人 で あ る が 名 義 人 は代 理 人 並 び に 本 人 で あ り、 こ こで は、 作 成
名 義 の 一 部 た る本 人 名 義 の 冒 用 が あ るか ら有 形 偽 造 とな る と解 す る。 本 人 が代
理 人 と合 一 さ れ て 名 義 人 とな る こ との 理 由 と して 、 ① 代 理 人 の作 成 す る文 害 に
文L(偽 造 罪 に お け る有 形偽 造 の概 念 /S
お い て は代 理 人 の 氏 名 よ り も代 理 資 格 が 取 引 上 重 要 性 を持 つ こ と、② 代 理 人 が 代 理権 限 以 外 の 事 項 に つ い て の 文?1'tを 作 成 す る とき に は 、 常 に本 人 の 作 成 名 義 を 冒用 した 有形 偽 造 とな り、 全 く権 限 を有 しな い 者 が 他 人 の 代 理 名 義 を 冒用 す
3G)
る こ と は、 当 然 に 本 人 名 義 の 有 形 偽 造 とな る こ とが あ げ られ て い る。
しか し、 上 記 、 有 形 偽 造 の 二 つ の学 説 と も、名 義 人 を本 人 、 あ るい は本 人 と 代 理 人 の 合 一 と解 す る こ と に は疑 問 が残 る。 民 法99条1項 に あ る よ う に、 代 理 人 が 本 人 の た め に 代 理 文 書 を 作 成 す る場 合 、 そ の 代 理 文1!の 名 義 人 を本 人 と解 す る こ とは 難 しい よ う に思 わ れ る。 代 理 人 が 本 人 の 意 恩 表 示 を代 筆 す るだ けの 存 在 と考 え る な らば 、 名 義 人 が 本 人 で あ る と解 す る こ とは間 違 い で は な い と思 わ れ る が 、 一 般 的 に 、 代 理 人 が 代 理 文 書 を 作 成 す る場 合 は、 代 理 人 自 身 の 意 思 表 示 を文 轡 に記 載 す る場 合 が 多 い。 故 に 、 一 律 に代 理 文 轡 の 名 義 人 を本 人 と解 す る こ とに は賛 成 しが た い。 代 理権 冒用 の事 例 で あ っ て も、 す べ て 当 然 に 「 本 人 名 義 」 の 冒 用 とす る こ とは妥 当 で は な い よ う に思 わ れ る。 た だ し、 第 二 の 学 説 に お け る 「 本 人 と代 理 人 の 合 一 」 の 意 義 が 、 文 書 の 法 的 責 任者 と して 「 本 人 」
と 「 代 理 人 」 を合 一 した とい う意 味 で は な く、 代 理 人 の 人 格 形 成 を 明 らか に す るた め に 「 甲 」 の 代 理 人 と い う要 素 が 必 要 で あ る とい う意 味 で あ れ ば 、 そ の見 解 は 妥 当 な もの で あ る と思 わ れ る。 そ こ に い う 「 甲」 は 「 乙 」 の 背後 に い る法 的責 任 の 追 及 先 を明 らか に して い るの で は な く、 あ くま で も名 義 を 明 らか に す る上 で の 乙 の人 格形 成 要 素 の 一 つ で あ る と解 す る。 つ ま り、 名 義 人 は 「 甲代 理 人 で あ る 『 乙』」 とな り、 この 意 味 にお いて 「 甲 と代 理 人 の合 一 」 した もの と解
して い るの で あ れ ば 、 そ の見 解 は評 価 す べ き もの で あ る。
代 理 ・代 表 資 格 の 冒用 ・逸 脱 ・濫 用 に つ い て は 、 まず 、 作 成 者 及 び名 義 人 の 意 義 を明 らか に した 上 で 、 「 作 成 者 と名 義 人 の 人 格 的 同一 性 」 の概 念 に 基 づ き判 断 す る の が 妥 当 で あ る よ うに 思 わ れ る。 この よ うな見 解 に基 づ く と、 第 一 の 代 理 ・代 表 資 格 を有 しな い 作 成 者 が 代 理 ・代 表 文 書 を作 成 す る場 合 で は、資格 ・ 肩 轡 を 冒用 す る場 合 と同 様 に考 え る こ とが可 能 で あ る。 代 理 ・代 表 資 格 を 冒用 す る場 合 、 文 書 の作 成 者 は 、本 人 甲か ら依 頼 され た もの で は な い か ら、 「 代 理権 又 は 代 表 権 を 有 しな い 乙 」 とな り、 名 義 人 は 、 文 書 に お け る意 思 ・観 念 の 主 体 で あ る 「 代 理 権 又 は代 表 権 を 有 す る乙 」 で あ る とい え る。 この よ うに 考 え る と、
そ こに は作 成 者 と名 義 人 の 間 に人 格 的 同 一 性 が存 しな い か ら、 有 形 偽 造 と解 す
i6
こ とが 可 能 で あ る。
第 二 の 、代 理 ・代 表 資 格 を有 す る乙 が 代 理 権 又 は代 表 権 を逸 脱 して 「 甲 代 理 人 乙 」 又 は 「 甲代 表 者 乙」 と記 載 した 代 理 文 書 又 は代 表 文7xを 作 成 す る場合 は 、 当 該 代 理 文 書 又 は代 表 文 書 に お い て 「 代 理 権 又 は代 表権 を有 しな い 乙」 が 作 成 者 で あ り、 意 思 ・観 念 の 表 示 主 体 と して の 名 義 人 は 「 代 理 権 又 は代 表 権 を有 す
37)
る乙 」 で あ る と解 す る こ とが で き る。 この よ うに考 えれ ば両 者 の 人 格 的 同 一 性 は認 め られ ず 、 そ の 行 為 は 有形 偽 造 で あ る とい え る。 こ れ に 対 し、 有 形 偽 造 と
して 処 罰 され るべ き は 「 代 理権 を有 す る他 人 の作 成 した文 書 と信 じ させ る文 轡
3N)
を作 成 した 場 合 に の み 」 限 るべ き で あ る との意 見 が あ る。 た しか に 、 た とえ ば 代 理 権 限 を越 えた 事 項 につ き文 書 を 作成 す る行 為 が あ っ た 際 に 、 そ の 文 轡 か ら、
一 般 的 に作 成 者 は代 理 権 を 有 す る 「 甲 代 理 人 乙 」 で あ る と信 じさせ る場 合 もあ りえ よ う。 例 えば 、 会 社 の 取 締 役 や 支 配 人 の よ う に代 表 権 限 の 広 い 者 が 、代 表 権 限 を越 え た 事 項 に っ い て 文 書 を 作 成 した場 合 、 一 般 的 に 作 成 者 は 会 社 の 取 締 役 ・支 配 人 で あ り、名 義 人 も 「 会 社 の 取 締 役 ・支 配 人 」 と考 え られ 、 全 く権 限 が な い人 物 に よ り作 成 され た文 書 と信 じ る可 能 性 は低 い とい え る。 しか し、 こ の場 合 で も、 会 社 の取 締 役 ・支 配 人 の権 限 を越 え た 事 項 に つ き文 害 が 作 成 され て い るの で 、 作 成 者 は 「 そ の範 囲 内 に つ い て は権 限 の な い取 締 役 ・支 配 人 」 で あ り、 文 書 か ら認 識 され る 「 権 限 の あ る取 締 役 ・支 配 人 」 とは 人 格 的 同 一 性 に 齪 画 吾を認 め 、処 罰 の 対 象 とな る有 形 偽 造 と解 す べ きで あ る。 た だ し、 その 上 で 、
当該 有 形 偽 造 が 文 書 の 公 共 の 信 用 及 び 文 書 に よ る取 引 の安 全 を害 す べ き違 法 な 有 形 偽 造 か ど うか は、 違 法論 に お い て 検 討 す べ きで あ る。 この と き、 も し、 社 会 一 般 に 「 会 社 の 取 締 役 ・支 配 人 」 と して 権 限 外 の 内容 に つ き文 書 を作 成 した こ とが 、 取 引 の 安 全 を害 す る程 度 が 低 く、 文 書 の 信 用 を 不 当 に害 す る こ とが な い の で あ れ ば 、 それ は可 罰 的 違 法 性 に欠 く行 為 で あ るた め 、 処 罰 は免 れ る もの と解 す べ きで あ る。
最 後 に 、 第 三 の、 代 理 資 格 又 は代 表 資 格 を 有 す る乙 が 、 代 理 権 又 は代 表 権 の
範 囲 内 に お いて 権 限 を濫 用 して 「 甲代 理 人 乙 」 又 は 「 甲代 表 者 乙」 と記 載 した
代 理 文 書 又 は代 表 文 書 を作 成 した 場 合 で あ るが 、 この 場 合 、 作 成 者 は 「 代 理 資
格 又 は代 表 資 格 を 有 す る 乙 」 で あ り、 名 義 人 も 「 代 理 資 格 又 は代 表 資 格 を有 す
る 乙 」 で あ る と解 す る こ とが で き るか ら、 そ の行 為 は真 正 文 書 の作 成 で あ り有
文 書 偽 造 罪 に お け る有 形 偽 造 の概 念 17
形 偽 造 で は な い 。 これ は 、 代 理 人 が 独 立 して 自 らの 意 思 表 示 を示 し、 文 害 の作 成 を行 って い る場 合 と認 め られ るか らで あ る。 判 例 も、 以 前 は代 理 権 濫 用 の事 案 を処 罰 の 対 象 と して い た が 、 そ の後 、 本 人 の 利 益 の た め に した と き は文 害 の 偽 造 で は な い と し、 さ らに 、 権 限 内 の 事 項 に 関 す る限 り、権 限 の 濫 用 が あ っ て も文 書 偽 造 罪 を構 成 しな い もの と判 断 して い る。 裁 判 所 の 判 断 の 傾 向 か ら も、
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以 上 に よ うに解 す る こ とが 妥 当 で あ る よ うに思 わ れ る。
(3)私 見
有 形 偽 造 と無 形 偽 造 の 区 別 の 基 準 を 「 作 成 者 と名 義 人 の 人 格 的 同一 性 」 に求 め る場 合 、 まず 、 第 一 に作 成 者 と名 義 人 の 意 義 を明 確 に す る こ とが璽 要 で あ る。
作 成 者 と名 義 人 が 人 格 的 に 同 一 で あ るか 否 か を判 断 す る た め に は、 両 者 の 意 義 が 明 確 に され る こ とが 必 須 で あ るか らで あ る。 そ の 際 に、 作成 者 の概 念 に は観 念 説 を採 用 し、 文 書 の 作 成 者 は 文 書 に お け る意 思 ・観 念 の表 示 者 で あ る と解 す る。 観 念 説 を採 用 す れ ば 、依 頼 を受 け て依 頼 者 名 義 の 文 書 を 作 成 す る場 合 、 そ の 文 書 の 作 成 者 は依 頼 を受 け た 者 で は な く依 頼 者 とな る た め 、 そ こ に両 者 の 人 格 的 同一 性 の 爵噛吾は 生 じな い こ とに な る。 ま た、 名 義 人 の概 念 は 、 文 轡 に お い て 氏 名 、称 号 、 筆 跡 、 印 章 、 内 容 な どの 人格 を構 成 す る要 素 を も って 知 り うる 人 格 の こ と を指 す。 この よ うな 見 解 に基 づ き、 作 成 者 と名 義 人 の 意 義 を定 めた 上 で 、 両 者 の 人 格 的 同 一 性 に齪 隔 が 生 じて い る場 合 を 有 形 偽 造 と解 す べ きで あ
る。
「 人 格 的 同一 性 の 齪 齢 」 は 、 これ ま で の 有形 偽 造 の 判 断 と して用 い られ た 「 他 者 の 名 義 を 冒用 す る」 定 義 とは 異 な り、 他 人 物 の 名 義 を 冒 用 す る こ とに 限 定 さ れ て い る もの で は な い。 た とえ、 作 成者 と名 義 人 が 自然 的 に見 て 同一 人 物 で あ っ た と して も、文 書 に記 載 され た人 格形 成 要 素 に よ っ て全 く別 人 格 を 作 り出 して
し まっ た よ うな 場 合 は 、 「 人 格 的 同 一 性 の 齪 薗 吾」 が認 め られ る。
人 格 的 同一 性 の 齪 酷 の概 念 を採 用 す る上 で 、 第 二 に重 要 と な る の が 、 有 形 偽 造 と して 処 罰 す べ き違 法 性 を有 して い るか 否 か を 法 益 保 護 の 見 地 か ら検 討 を行 う こ とで あ る。 従 来 は、 作 成 者 と名 義 人 が 自然 的 に見 て 同一 人 物 で あ る場 合 は、
他 人 の 名 義 を 冒用 して い るの で は な く、 内 容 虚 偽 の 文 書 を 作成 して い る に過 ぎ な い と して無 形偽 造 に よ り不処 罰 と考 え られ て い たが 、 「 他 者 の名 義 を 冒用 す る」
定 義 に変 わ っ て 「 人格 的 同一 性 の齪 賠 」 の定 義 が 用 い られ る よ うに な り、 「 資 格 ・
IS
肩 書 の 冒用 」 な ど、 本 来 不 処 罰 と され て い た 無 形 偽 造 を処 罰 の 対 象 で あ る有 形 偽 造 へ と変 容 させ て しま う可 能 性 が 生 ず る こ と とな った 。 こ のた め、 「 人 格 的 同 一 性 の 齪 鶴 」 に よ り処 罰 され る有 形 偽 造 の範 囲 が 拡 大 す る とい う新 た な 闇 題 を 検 討 す る必 要 性 が 生 まれ た 。 だ が 、 これ に つ いて は 「 可 罰 的違 法 性 の理 論 」 を 採 用 す る こ とに よ っ て 、 問 題 に一 応 の 解 決 を はか る こ とが 可 能 で あ る と思 わ れ る。 「 人 格 的 同 一性 の 齪 鶴 」 の定 義 を用 い る こ とに よ っ て拡 大 して しま った 有 形 偽 造 に、 文 書 偽 造 罪 の 予 定 す る可 罰 的 違 法 性 が あ るか 否 か で 、 処 罰 す べ き有 形 偽 造 か 否 か を 検 討 す べ きで あ る。 可 罰 的違 法 性 の 有 無 を判 断 す る基 準 は 、 その 人格 的 同一 性 の 齪 歯吾が 、 文 書 との 関 係 で 、 文 書 の 信 用 性 に対 し どれ ほ どの 影 響 を与 え る もの か で 判 断 す べ き で あ ろ う。 これ は、 文 書 の 性 質 に よ っ て も変 化 す る もの で あ ろ う と思 わ れ る。 こ こで は、 本 稿 で 引用 した 最 高 裁 の 判 断 を用 い て 、 当 該 文 書 が 資 格 ・肩 書 ・権 限 が な けれ ば作 成 す る こ との 許 され な い性 質 を有 し て い る こ と、 名 義 人 の 特 定 に 関 す る記 載 内 容 や 、 文 書 が 利 用 され る 際 の 状 況 、 事後 的 な 責 任 追 及 性 な ど、 文 書 の 性 質 や 文 書 か ら生 ず る社 会 的 信 用 性 の 内 容 等 を検 討 した 上 で 、 人 格 的 同一 性 の 鶴 飴 が 、 文 書 が 発 す る信 用 性 に対 しわ ず か ば か りの影 響 しか もた ら さ な い もの で あ れ ば 、 そ の 違 法 性 は 文 書 偽 造 罪 に よ っ て 罰 す べ き程 の 実 質 的 違 法 性 を 兼 ね 備 え て い な い と理 解 す る こ とが で き るた め 、 可 罰 的違 法 性 を 欠 き処 罰 を受 け な い もの と解 すべ きで あ る。
こ の よ う な理 解 に 立 っ た 上 で 、 これ まで 議 論 の 対 象 とな って い た 「 代 理 権 の 冒用(逸 脱 ・濫用)」 に対 して 再 考 察 を 行 う と以 下 の よ うに解 す る こ とが で き る。
無 権 代 理 の よ うな 場 合 で あ る代 理 権 の 冒用 の 事 例 に お け る有 形 偽 造 の 判 断 は 、 資 格 ・肩 書 を 冒用 す る場 合 と同様 に考 え られ る。 こ こで は 、 代 理 権 を有 して い な い作 成 者 が 、 あ た か も他 人 の 代 理 権 を 有 す る よ うな名 義 で 文 書 を 作 成 す る こ と とな るた め、 作 成 者 と名 義 人 の 間 に 人 格 的 同 一 性 の齪 騙 が 認 め られ 、 有 形 偽 造 で あ る と解 さ れ る。 た だ し、 代 理 文 書 は資 格 ・肩 害 を 冒 用 す る文 書 よ り も法 律 行 為 にか か わ る内 容 の 文 書 で あ る こ とか ら、 代 理 文 書 を偽 造 す る行 為 の 可 罰 的違 法 性 は資 格 ・肩 書 を 冒 用 して偽 造 す る行 為 よ り も高 い も の と理 解 さ れ るた め 、 そ の 処 罰 範 囲 は広 い と考 え られ る。
次 に 、 代 理 権 の 逸 脱 及 び 濫 用 の 場 合 で あ るが 、 この 場 合 は 、 本 人 の代 理 権 を
有 して い る者 が その 権 限 を逸 脱 ・濫 用 して文 書 を作 成 す る行 為 で あ る た め 、 文
文ti!F偽 造 罪 に お け る有 形 偽造 の概 念 /9
害 の 作 成 者 は依 頼 者 で あ る本 人 で あ る と解 さ れ る場 合 も考 え られ る。 しか し、
民 法99条1項 に 基 づ き、 代 理 人 の 意 思 表 示 は社 会 生 活 上 や 、取 引 上 に お い て も 代 理 人 の 意 思 表 示 と して 重 要 性 を もつ も の で あ る と考 え られ る こ とか ら、 代 理 人 が 代 理 文 書 を 作 成 す る場 合 、 通 説 の よ うに 、 そ の 作 成 者 及 び名 義 人 を一 律 に 本 人 で あ る と解 す る こ とに は疑 問 が 生 じ る。 乙 が 甲の 代 理 権 限 を 有 し、 甲代 理 人 乙 と して 代 理 文 書 を作 成 す る場 合 は 、 作 成 者 は 「 甲代 理 人 乙」 で あ り、 そ の 文 害 か ら表 示 さ れ る名 義 人 も 「 甲代 理 人 乙」 と解 す べ きで あ る。 しか し、 この とき 、 観 念 説 を採 用 す る の で あれ ば 、 乙 は 甲 の代 理 権 を有 す る者 で あ るか ら、
文 書 の 作 成 を依 頼 した 甲 こそ が 文 書 の 作 成 者 と解 され るた め 、 文 書 の 作 成 者 を
「 甲代 理 人 乙」 と解 す る こ とはで きな い との 指摘 が な され る で あ ろ う と思 われ る
。 確 か に 、 観 念 説 に よれ ば 、一 見 、 代 理 権 の 逸 脱 ・濫 周 の場 合 の 作 成 者 は 甲本 人 と解 さ れ る よ うに 感 じる が 、 その よ うに 解 す る こ と は民 法 の 規 定 か ら も相 容 れ な い もの で あ る こ と を考 慮 す る と、 代 理 人 は独 立 して 文 書 の 作 成 を して い る の で あ る か ら、 依 頼 に よ る文 書 作 成 の場 合 に つ い て の 観 念 説 を適 用 す る必 要 は な
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い と考 え るべ き で あ る。 あ くまで も代 理 人 は独 立 して 文 轡 を 作 成 して い る者 で あ り、 作 成 者 は 「 甲代 理 人 乙 」 と解 す べ き で あ る。 そ う した 理 解 に立 っ た 上 で 、 代 理 権 の逸 脱 ・濫 用 の 場 合 を い か に解 す べ きか で あ るが 、 代 理 権 の 逸 脱 の 場 合 に は 、 作 成 者 は 「 代 理 文?i'k内 容 に つ き代 理 権 を有 しな い 乙」 と な り、 代 理 権 の 濫 用 の 場 合 に は、 代 理 権 を有 す る 乙が 代 理 権 の 範 囲 内 にお い て権 限 を濫 用 した 場 合 で あ るた め、 「 甲 代 理 人 乙」 とい う こ とに な る。 そ の上 で、 文 書 か ら理 解 さ れ る名 義 人 は 、 「 甲 代 理 資 格 を 有 す る乙 ・甲代 理 人 乙 」 とい う こ とに な る た め 、
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前者 の代理権 逸脱の場合 は有形偽 造、後者 の代理権濫用 の場合 は無 形偽造 と解
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す る こ とが で き る。 そ して 、 代 理 権 逸 脱 の場 合 につ き 、文 書 偽 造 罪 と して処a,,;
す べ き実 質 的 違 法 性 を有 して い るか につ い て は 、 代 理 権 逸 脱 文 轡 が 社 会 的 な 信
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