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パイプライン方式サイクリック A/D 変換器における高精度化の研究

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修士論文要旨 (2016 年度)

パイプライン方式サイクリック A/D 変換器における高精度化の 研究

A research on high precision conversion in pipeline cyclic A/D converter

電気電子情報通信工学専攻 森川 逸太 Hayata Morikawa

1 はじめに

 現在プロセス微細化に伴いパイプライン A/D 変換 器よりも逐次比較型 (SAR)A/D 変換器が汎用的に用い られてる。そこで我々の研究室では高精度かつ小面積を 実現できるパイプラインアーキテクチャを用いた 14bit 精度のサイクリック A/D 変換器を設計した。本研究で は設計した A/D 変換器を実測し、その評価を行うこと でより高い精度を達成するために回路を解析すること を目的とする。

2 サイクリック A/D 変換器の構成

図 1 にサイクリック A/D 変換器のブロック図を示す。

アナログ部では、1.5 bit のディジタルコードの出力と ディジタル判定結果と入力信号の誤差を 2 倍化した信 号を次段へ出力する機能を持つビットブロック回路のサ イクルを n 回繰り返すことで、n bit 精度の A/D 変換を 実現する。ビットブロック回路に要求される速度は全体 の出力 bit 数×サンプリング周波数となる。同一のビッ トブロック回路を使い回して変換を行うため、サイク リック A/D 変換器は小面積で高精度な特性を実現する ことができる。図 2 にビットブロック回路の構成を示 す。スイッチ、キャパシタ、オペアンプから成るスイッ チトキャパシタ回路で構成される。サンプルモードで2 つのキャパシタに入力電圧を充電し、ホールドモードで 片方のキャパシタをオペアンプの帰還路に接続し、もう 片方のキャパシタを基準電圧に接続することで信号の二 倍処理を行う。このときの理想的な入出力特性は式 (1) で表される。

V out = 2V in V da (1)

3 オペアンプの構成

まずオペアンプの直流利得の目標値の算出を行う。図 3 にビットブロック回路の模式図を示す。

bitblock S/H

Analog Input

˜P

3P 3P

Digital Correction

Digital Output nbit

Latch Latch Latch

3 3 3 3

˜2

Vin Vout

subDAC subADC

1.5bit(00, 01, 10)

ࠕ࠽ࡠࠣㇱ

࠺ࠖࠫ࠲࡞ㇱ

図 1: サイクリック A/D 変換器

+

- -

+

outp

outn Vcom

sw2p (ck11)

sw2n (ck11) sw4n (ck11)

sw4p (ck11) sw5p (ck21)

sw5n (ck21) sw3p (ck21)

sw3n (ck21) Digital Out

ck22 ck21

sw7p (ck21)

sw7n (ck21) sw1p (ck22)

sw6p (ck22)

sw1n (ck22) sw6n (ck22)

subDAC subADC

2p 2p 2p 2p

KPR

KPP

CMFB

図 2: ビットブロック回路の構成

オペアンプが有限の利得Gを持つとするとビットブ ロックの入出力特性の式は

V out = 2

1 + G 2 V in 1

1 + G 2 V da (2) となり静的誤差を生む。ここで誤差が nbit 精度以内に 収まる為の条件は G > 2 n+2 となり、14bit 精度に収束 する為の条件は G > 96dB と求まる。

オペアンプの帯域幅はビットブロック出力の収束時間 に関係し、動的誤差を左右する。ビットブロックの出力

8KP 8Z

8FC 8QWV

5CORNGOQFG *QNFOQFG

%

% %

%

図 3: ビットブロック回路の模式図

1

(2)

電圧が nbit 精度に収束する為の時間 t の式は t > (n + 1) ln2

βω u (3)

で表される。β はホールドモードにおけるオペアンプ の帰還率であり、ω u = 2πf uf u はオペアンプの 利得が 1 倍になる周波数であるユニティゲイン周波数 を表す。ここで、C 1 = C 2 より β = 0.5, n=14bit, t=10nS(CLK=50MHz の半周期) で動作させるとする と、必要となるユニティゲイン周波数 f u

f u > 330M Hz (4) と求まる。

㧝Ბ⋡ 㧞Ბ⋡ 㧟Ბ⋡

outp

(12.5/0.18)

㬍㪉

(16/0.18)

㬍12

1.616p 10/0.36

(8/0.36)

㬍6

10/0.36 (10/0.18)

㬍3

10/0.36 inp (10/0.28)

㬍8

(17.5/0.18) CMFB

㬍4

inn

(10/0.28)

㬍4

(10/0.28)

㬍8

(17.5/0.18)

㬍4

(15/0.28)

㬍3

Vbp1

VDD = 1.8V

outn

(15/0.28)

㬍3

Vbp1

Vbp1

Vbn1 Vbn2

(10/0.18)

㬍8

(10/0.18)

㬍8

/Z

/ /

/Z

/ / /

/ /

/R

/R /R /KR /TR

/R /HR

ǡ

ǡ R

図 4: オペアンプ回路

100

100

1k

1k

10k

10k

100k

100k

1M

1M

10M

10M

100M

100M

1G

1G

10G

10G

100G 100G

HERTZ(Hz) (log) -40

0 40 100

-150

-100

-50

0

50

100

150

1:435M 2:417M 2:-115

1:435M 2:417M 2:-115

1:435M 2:417M 2:-115

#F$ RJCUGFGITGG

図 5: 周波数特性

今回用いたオペアンプの構成を図 4、得られた周波数 特性を図 5 に示す。オペアンプを多段に縦続接続するこ とで高い利得を実現する構成となっている。設計したオ ペアンプは直流利得 109dB、帯域幅 435MHz、位相余 裕 65 度を実現した。

4 試作チップの評価

4.1 試作チップと測定回路

 図 6 に試作したサイクリック型 A/D 変換器のチッ プ写真を示す。図 7 に A/D の AC 特性の測定回路を示 す。左中央にある回路がサイクリック型 A/D 変換器の

アナログ部である。中央にアナログ電源 AVDD ライン があり、 AVDD ラインを中心に対象になるようにブロッ クが配置されている。アナロググラウンド AGND ライ ンの周りにはガードリングを敷き、デジタル部からのノ イズがアナログ部に付加されないようにしてある。右側 中央と下部にあるのがクロックドライバ回路とディジタ ルコレクション回路である。アナログ部へのノイズを考 慮し、デジタル電源 DVDD としてアナログ部の電源と 分離している。 図 7 に A/D の AC 特性の測定回路を 示す。チップ左辺では、入力信号、リファレンス電圧、

アナログ用電源、アナロググラウンドが入力される。入 力信号は信号発生器からバランを経て差動信号に変換 し、チップ内へ入力される。アナログ部のリファレンス 電圧はアナログ電源 AVDD を抵抗分圧したものを入力 する。チップ右辺では、クロックドライバの基準クロッ クと、デジタル用電源電圧、デジタルグラウンドが入力 される。下辺ではディジタルコレクション回路の出力端 子が 14 ピン用意されている。これらの出力をディスク リートの DAC に入力し、その出力を FFT 処理するこ とで測定を行う。

ࠕ࠽ࡠࠣㇱ

࠺ࠫ࠲࡞ࠦ࡟࡚ࠢࠪࡦ

ࠢࡠ࠶ࠢ࠼࡜ࠗࡃ࡯

図 6: レイアウト図

Ꮕേᄌ឵

#8&&

#8&&

#8&&

#8&&

#8&&

#8&&

ǡ

ǡ

KPR

KPP

&#%

EMKP

&)0&

&)0&

#)0&

&8&&8

&8&&8

&#%A&8&&8

&#%A#8&&8

&8&&

#8&&

+QWV#

ENM

8%1/

'5&A8&&

8 84'(2 84'(0 +00 +02

#8&&

#8&&

#)0&

#)0&

#)0&

#)0&

8DP

&)0&

&)0&

&)0&

&8&&

&8&&

&8&&

&8&& &8&&

%-176&#%+

%-176&#%

EMKP

$+6$+6$+6

$+6$+6

$+6$+6

$+6$+6$+6

$+6$+6

$+6$+6

#)0& '5&A)0&'5&A8&&

$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6$+6 ǡ

ǡ

ǡ Mǡ

࡮࡮࡮࡮࡮࡮࡮࡮

˜

&8&&

&)0&

Mǡ ǡ

ǡ

+QWV$

ǡ ǡ

ǡ ǡ

ǡ

ǡ

ǡ ǡ

ǡ

ǡ ǡ

ǡ

ǡ

ౝㇱ8TGH8࿕ቯ 5RGEVTWO #PCN[UGT

ࠟ࡯࠼࡝ࡦࠣ

ࠟ࡯࠼࡝ࡦࠣ

QWVRADKVADWH QWVPADKVADWH

8 8

ǡ

#&%

ENQEMKP

図 7: 測定回路

2

(3)

出力波形と SFDR の測定

測定条件は、入力周波数 f in = 100kHz, 動作周波数 50MHz, サンプリング周波数 f s = 3.57MHz、入力フル スケール電圧 V f s = 0.8V の sin 波とした。DAC の出力 波形を図 8 に、その時のスペクトラムを図 9 に示す。

図 8: 出力波形

F$

図 9: スペクトラム波形

SFDR とは基本波から最も大きい高調波のパワーを 引いたものであり、図より、3 次高調波歪が最も高い歪 レベルであり SFDR は 49dB であることが分かった。

4.2 DNL INL の測定

次に 8bit 精度で DNL、INL を測定した。図 10 に DNL、図 11 に INL をそれぞれ示す。

㪄㪈 㪄㪇㪅㪌 㪇 㪇㪅㪌 㪈 㪈㪅㪌

㪎 㪌㪎 㪈㪇㪎 㪈㪌㪎

㪉㪇㪎

㫆㫌㫋㫇㫌㫋㩷㪺㫆㪻㪼

㪛㪥㪣㪲㪣㪪㪙㪴

図 10: DNL

㪄㪏 㪄㪋 㪇 㪋 㪏

㪌㪇 㪈㪇㪇 㪈㪌㪇 㪉㪇㪇 㪉㪌㪇

㫆㫌㫋㫇㫌㫋㩷㪺㫆㪻㪼

㪠㪥㪣㪲㪣㪪㪙㪴

図 11: INL

DNL を見ると± 1/4Vref 付近で誤差が大きいことか らこの付近の入力に対しミスコードなどが生じ、直線性

は悪いと言える。

5 評価結果の解析

5.1 直線性の確認

A/D 変換器の直線性を 8bit の精度で測定を行うため に入力周波数 f in = 6.975kHz、動作周波数 50MHz、サ ンプリング周波数 f s = 3.57MHz、入力フルスケール電 圧 0.8V の三角波を入力した。このときの DAC の出力 波形を図 12 に示す。出力電圧 V f s は 2.16V である。こ の時、± 1/4Vref 付近に出力波形の不連続点が確認でき た。± 1/4Vref 付近をを拡大すると図 13 のようになり、

出力波形の不連続点は δ = 22.4mV の電圧ギャップであ ることが分かる。± 1/4Vref 付近に誤差が生じ変換特性 が悪くなっていることからこの誤差をなくすためにビッ トブロック回路について解析を行った。

8HU

8TGH

8TGH

図 12: 出力波形

ǬO8

図 13: 拡大図

5.2 ビットブロック回路の解析

本研究におけるビットブロック回路の理想的な動作に ついて述べるサンプル時とホールド時のビットブロック 回路の状態を図 14 に示す。

サンプルモードでは入力電圧 Vinp1.3V、 Vinn0.5V と Vcom0.9V の電圧差 0.4V がキャパシタにそれぞれ充電 され、オペアンプは全帰還となっている。ホールドモー ドでは片方のキャパシタがオペアンプの帰還容量とな り、もう片方のキャパシタは subDAC の出力に接続さ れそれぞれ Vrefp1.3V、Vrefn0.5V となっている。一連

8

8 8TGHR8

8 5WD&#%QWV

8TGHP8 5WD&#%QWV

ࡎ࡯࡞࠼ࡕ࡯࠼

8EQO8

8 8 8KPR

8KPP

ࠨࡦࡊ࡞ࡕ࡯࠼

8

8

8

8 8

8

8

8

8QWVRADKV

8QWVPADKV

図 14: ビットブロック回路の動作

3

(4)

の動作を式(2.6)に代入すると出力 Voutp bit は 1.3V、

Voutn bit は 0.5V となり、各サイクルで全く誤差が乗 らない理想の状況では出力の時間変化は図 15 となる。

࡮࡮࡮

࡮࡮࡮

࡮࡮࡮

DKV DKV DKV DKV DKV

8QWVRADKV

8QWVPADKV 8

8

8

ᤨ㑆 㔚࿶

5 * 5 * 5 * * 5 * 5 * 5 5ࠨࡦࡊ࡞

*ࡎ࡯࡞࠼

図 15: ビットブロック回路の出力の時間変化 実測において動作周波数を 5MHz とし Vinp に 1.3V、

Vinn に 0.5V 直流電圧を入力した。その時のビットブ ロックの出力波形を図 16 に示す。

DKV DKV

DKV ࡮࡮࡮

DKV

QWVRADKV QWVPADKV

図 16: 出力波形

1bit 目以降の出力値が下がっていく様子が確認でき た。このことから 1bit 目の出力がフルスケール出力さ れていない可能性があると考えられる。そこで、出力波 形がちょうどクリップするかしないかの入力電圧を加え た。そのときの入力電圧を入力のフルスケール電圧とし 出力電圧を出力のフルスケール電圧として考える。この 条件で動作周波数 5MHz とし入力 Vinp を 1.31V から 0.49V まで、Vinn を 0.49V から 1.31V まで差動入力し ビットブロック回路の 1bit 目における入出力特性を実 測で得た。理想的な入出力特性では傾きは理想的には 2 であり、式 (1) の Vin の係数にあたる。実測で得た入出 力特性は図 17 に示す。実測において、傾きを算出する と 1.96 となり理想通りの特性を得られなかった。

この実測結果で得られた傾きが実際に 1.96 であるか を検証するために理想状態から傾きが 1.96 になると仮 定するとどの程度の誤差が生じるかを求めた。傾きが 1.96 となった場合の理論式による入出力特性を図 18 に 示す。

㫆㫌㫋㫇㪶㪹㫀㫋

㪄㪈㪉㪇 㪄㪈㪇㪇 㪄㪏㪇 㪄㪍㪇 㪄㪋㪇 㪄㪉㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪈㪉㪇

㪇㪅㪋㪐 㪇㪅㪍㪐 㪇㪅㪏㪐 㪈㪅㪇㪐 㪈㪅㪉㪐

౉ജ㔚࿶㪲㪭㪴

಴ജ㔚࿶㪲㫄

㫆㫌㫋㫇㪶㪹㫀㫋

㫆㫌㫋㫅㪶㪹㫀㫋

㪄㪈㪉㪇 㪄㪈㪇㪇 㪄㪏㪇 㪄㪍㪇 㪄㪋㪇 㪄㪉㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪈㪉㪇

㪇㪅㪋㪐 㪇㪅㪍㪐 㪇㪅㪏㪐 㪈㪅㪇㪐 㪈㪅㪉㪐

౉ജ㔚࿶㪲㪭㪴

಴ജ㔚࿶㪲㫄

㫆㫌㫋㫅㪶㪹㫀㫋

O8 O8

R஥಴ജ P஥಴ജ

O8

O8

図 17: 入出力特性

Vin +Vref

Vout

-Vref

-Vref +Vref

00 01 10

+Vref/4 -Vref/4

௑߈

௑߈ Ǭ

Ǭ Ǭ

Ǭ

図 18: 理論式による入出力特性

± 1/4Vref での誤差δ 1+δ 2 はフルスケール電圧を 167mV としたとき 3.34mV であった。各領域の遷移点 ではフルスケールの 1/2 の電圧で折り返すので折り返

し電圧は 83.5mV である。この理想値から誤差を引い

た値が実測においても確認できれば傾きが 1.96 に落ち ているという仮定は正しいといえる。実測においてこ の遷移点での折り返し電圧を測定すると p 側出力、n 側 出力ともに 80.2mV であった。理想値から誤差を引くと 80.16mV となり実測値と理想値は 8bit 精度の測定にお いて一致した。したがって傾きは 1.96 に落ちていると いえる。

6 結論

本論文ではサイクリック A/D 変換器の実測とその高 精度化についての研究を行った。以前設計された A/D 変換器を実測したところ目標とする特性を得られなかっ た。そこで原因の一つをオペアンプと仮定し、利得を大 きくするように再設計し A/D 変換器を試作した。新た に試作した A/D 変換器では± 1/4Vref 付近での不連続 点について解析し、変換誤差が生じる原因の一つを特定 した。

参考文献

[1] Chi-Chang Lu, “A 1.2V 10-bit 5 MS/s CMOS Cyclic ADC,” 2013 IEEE International Symposium on Cir- cuits and Systems (ISCAS2013), pp. 1986-1989, April 2013.

4

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