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(1)

電空変換器による空気圧シリンダの制御

長田佐 豊田秀樹 山本晃

(昭和55年8月31日受理)

The Control of Air Cylinder by means of

Electro-Pneumatic Transducer

TasukuOSADA HidekiTOYODA AkiraYAMAMOTO

       AbStract  Speeding up of automation demands increse of accuracy. In this paper, an electro− pneumatic transducer.ith greater accuracy is developed. The transducer is composed of fluid logics and ultrasonic vibrator. Halfway positioning of a pneumatic cylinder is an example of practical apPlication.  The main features are as follows;  (1) Operation is simpler the traditional one.  (2) The delay time response is made smaller.  (3) Positioning accuracy is within±1・Omm at 60mm stroke at mean velocity about    600mm/s.

1.まえがき

 空気圧は,その簡易性,経済性から比較的中荷重, 軽荷重作業分野での自動化に適している。しかし空気 圧シリンダは,ストローク調整や,中間位置停止など を必要とするとき,圧縮性のために,電気や,油圧方 式に比べると,停止精度や,停止位置の調整が困難と されている。現在空気圧シリンダの制御は機械的なブ レーキ,あるいは絞り機構による流量制御,および圧 力制御,または方向弁による制御等がある。とくに制 御性の優れる流量制御は,空気が絞り機構を移動する とき摩擦による圧力ロスが生じ,エネルギの損失と なる。方向制御弁による方式は,高速応答の切換弁 や,電磁バルブの開発が遅れているためいま一歩とい うところである。また機械的なブレーキやクラッチを 用いると寿命や信頼性で問題がある。  本研究では,電気・空気変換器を開発し,それを応 用することにより,前述した方式によらない,空気圧 シリンダの制御に関するものである。 2. 目的と特徴  電歪振動子から発生する超音波により,乱流形流体 論理素子を制御する電気・空気変換器(電空変換器) を開発し,その特性や性能試験を行い,また電空変換 器の応用として,空気圧シリンダの中間停止や,位置 決め制御を目的とした。次に特徴を記する。  1) 電空変換器は,電歪振動子に交番電圧を与え,   超音波を発生させるもので,電気エネルギを音響   エネルギに変換し,このとき発生する音圧によ   り,乱流形流体論理素子を制御している。  2) 電歪振動子の共振周波数は,20kHz近傍の可   聴領域外とした。  3) 電歪振動子は,可動部分が全くない構造のため   遅れ時間の最大は2msである。

(2)

4)電磁バルブなどのコイルをもつ電空変換器は,  コイルから発生する起電力によりスパークなど発  生する恐れがあるが,電歪振動子による変換器は  素子に10Vの交番電圧を印加するだけでよく,  しかも電歪振動子の性質から,消費電流は数mA  となる。 5)従来,空気圧シリンダの中間停止や,位置決め  は,流量制御や,クラッチ・ブレーキ方式である  が,本研究は,電空変換器により,パルス化した  空気圧でシリンダの加速,減速が容易に実現でき  た。 3.電歪振動子  電歪振動子の材料は,コバルトニオブ酸鉛系のもの である。外径φ14mm,厚さ0.5mmで,電歪振動子 と振動板(金属薄板)とを,はり合わせた一体構造で ある。振動板と接続されているリード線と,電歪振動 子のもう一方の端面と接続されているリード線に交番 電圧を印加すると電歪振動子は伸縮し,金属薄板と接 着されているため,電歪振動子の伸縮は,全体とし て,たわみ振動をおこし音波を発する。電歪振動子と 振動板とは,はり合わせた構造の複合体であり,この 複合体を含あた固有振動数で共振する。共振周波数 は,複合体の寸法や,支持方法および周囲の音響効果 により変化する。  図一1は,実験に使用した電歪振動子を,超音波送 波器として示す。このような形にすると,当然である が,支持方法が固定となり,発振周波数は固定でき る。図中の②および⑤に交番電圧を与える。 ① 冒

②一6ク

ゴ諺

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⑤一あ

⑦一一〇

一φ18 ⑥一一一      t

   総1よ

9 ①ネジ ②(一)端Jr ③セットボルト ④絶縁体 ⑤(+)端子 ⑥ケーZ ⑦電歪振動子

図一1超音波送波器

4.乱流形流体論理素子とその特性  純流体論理素子は,機械的な可動部がなく,しかも 電気的接点で問題とされるスパークによる発火の心配 もない。その原理は,同軸に対向した供給口P・,出力 口P・,とこれらの軸と垂直な制御口Pcがあり,制御 口R,からの噴流がないとき,供給口Psからの噴流 を出力口R。で受けると平均流速の大きさにより,層 流と乱流の2つの流れの状態が生じる。乱流域では, 流れが乱れて不規則のため回復率は低い。層流状態に おいて制御口Pcからの噴流を次第に大きくすると, 出力圧力は次第に減少する。この動作は・NOT機能 となる。電空変換器に用いた4入力NOR素子を図一5 (b)に示す。素子は通常の使用方法ではないが・ベン トに超音波を与えた。したがってNOT素子と呼ぶ。  特性)電空変換器は超音波送波器と流体論理素子 とで構成している。送波器からの超音波を,NOT素

子のベントに与えて,このNOT素子出力を,電空

変換器の出力とする。空気圧シリンダの制御にはシリ ンダロッドの前進,後退と2素子が必要であり,2素 子それぞれの特性を図一2に示す。素子1,素子2と もにほぼ同一特性であった。図示したように供給圧力 を増加すると,出力P。も比例して増加する層流領域 (0.5∼2.0×10−2kgf/cm2G)と,供給ノズルにおける レイノルズ数がある限界に達し,層流領域から遷移領 域(2.5∼5.0×10”2kgf/cm2G)を経て乱流領域に変 わる。使用したNOT素子の,供給圧力は0.5∼2.0 ×10−2kgf/cm2Gで,層流領域を用いている。 5.電空変換器の特性  電空変換器は,超音波送波器と流体論理素子とで構 成した。ここで電空変換器の特性について述べる。測 100 ◎ 菅 旦 疋 50 £  No.1 △No.2       10  供給圧力Ps(kg/cm2 G)

図一2NOR素子の特性

(×10−2)

(3)

定方法は送波器からの超音波をNOT素子のベント

に与え,素子出力をマノメータで測定する。なお送波 器の電歪振動子に与える交番電圧の周波数を可変と

し・その振幅は一定,NOT素子の供給圧力を100

mmH20としたときの測定結果を図一3に示す。図示 したように・共振点(約20kHz)において,出力は85

mmH20から40mmH20に急激な低下を示す。これ

は電歪振動子が共振周波数に達すると,振動子の出力 圧が最大となり・NOT素子出力を制御したものであ る。  つぎに電空変換器の応答周波数,おくれ時間につい て測定した。この測定ブロック線図を図一4に示す。 発振回路からの励振は,マイコン(TK−80)から出力 されるパルス周期により制御され,増幅回路で電歪振 動子を駆動する。したがって,パルス周期と同期し た超音波が発生する。この超音波により制御された NOT素子の出力口における圧力変化をマイクロフォ ンで測定した。電空変換器から出力圧が得られる応答 領域は直流から200Hzであった。なおマイコンから のくり返し周波数のデュティファクタは50%。写真一1 は,パルス幅4msを電空変換器の入力としたときの 入出力波形で,上側が入力パルス,下側が変換器の出 力を示す。遅れ時間は約1.8msである。  つぎに超音波送波器からの超音波の効果は,静的な  80 §

E70

3

ぱ 60 目 茎50 40      10     20     30×102          周波数(Hz) 図一3 電空変換器の周波数と出力圧の関係

   ∩

      ㎜

    AT AM。  4マイク・フ・ン

       互皿        NOT素子

   ㎜   〒鯉

      最 図一4電空変換器の試験ブロック線図 空気圧としてどの位の値に相当するかを実験によって 求めた。図一5(a)に実験方法を示す。図示したNOT 素子のベント中央の位置にビニール配管,内径φ2.5 およびφ4.0により,空気を噴流し,NOT素子の出 力をマノメータで測定した。図一6にその結果を示す。 ビニール配管からベントに噴流する空気圧が15mm

H20から40mmH20の間で出力は,約70mmH20

変化した。また噴流口の有効面積の小さい方が,素

1直i■■ti−■■ii

F,・・ms−} 一寸,。ど

  写真一1 電空変換器のおくれ時間 供 給 ll 入力 ht力 100 (b) 図一5 実験方法と素子の外観 峯

7

イ タ 50      100 制御圧力P。(mmH20) 。φ4.0 ・φ2.5 図一6 ビニール配管による噴流と素子出力の関係

(4)

子の出力は低い値を示す。いま図一6における出力圧 40mmH20を図一3の出力圧と比較検討すると,制御

圧力20mmH20から40mmH20に相当している。

したがって一応の目安として,超音波送波器からの出

力圧は,空気圧に換算すると20から40mmH20であ

ると推測できる。 6.電空変換器およびインターフェースバルブ   によるシリンダ駆動

A)減速駆動

 空気圧シリンダの停止のためのエネルギおよび停止 時間を最小にする有効手段は,減速しながら移動する ことである。図一7にその駆動のブロック線図を示す。 マイコンによる前進,減速命令により,それぞれの電 空変換器をON−OFF制御し,その変換器出力は,薄 膜形のインター一フェースバルブを経て,前進ポート, 後退ポートに空気圧を供給している。シリンダロッド の前進ポートF,後退ポートRとしたとき,図一8に 示すパルス幅TWiを電空変換し, Fポートに空気圧 を供給すると,この空気圧に対応してシリンダロッド が前進する。同様にTw2では後退する。 TωiとTw2 の関係は,TWi>Tw2では前進, TWi<Tw2では後 退,ただしこのTw1, Tw2の時間は,厳密には後述 する圧力係数比による。また同時に両ポートに加わる

匡憂「rGATE

マイコン前進 TK−80後退  ヒ  

 「

 1 _一」

  GATE

電空 変換器 インター フェース ハルフ シリンダ Fポートに

㌶二・リ・ダ

バルブ  Rポートに

と停止。ここで図示したパルス幅Twと周期Trの

比を圧力係数K,と呼び(1)式とする。   Kρ =Tw/Tr       (1)  このKpを可変として, Fポート, Rポートに交 互に空気圧を供給して,シリンダロッドがわずかずつ 前進,後退する範囲を実験により求めた結果を図一9 に示す。図示した安定動作とは,円滑にシリンダロッ ドが移動することを指し,不安定動作領域とは,シリ ンダロッドが移動中に停止したり,前進中に後退する などの不安定動作である。図は(1)式の圧力係数Kp を,前進圧力係数と後退圧力係数の比で表わしたもの で,圧力係i数比が0.38から0.57の範囲が安定動作と なる。この動作を容量型変位計で測定し,ビジグラフ に記録した速度と変位の関係を図一10に示す。図示し たように加速,減速が交互に行われている。また, Tωの最小値は30msである。  B) 始動時圧力供給時間  停止状態にあるシリンダロッドは,静摩擦が大きく 始動するまで空気圧を供給し続けなけれぽならない。 安定 電苫 変換器 不安定

l z

%〃”   ‘

不錠綱域

S定動

羅磁綱域

0 0.38   0.5 0.57      1.0        圧力係数比 図一9 圧力係数比とシリンダ動作の関係 図一7 シリンダ駆動プロヅク線図

トT,−a

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図一8 パルス幅と周期の関係 図一10

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 1 一IT:§

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==1:LT=        一ll O.1・ト シリソダロヅドの加速と減速

(5)

100 80 盲 5 60 謹

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訟 20 シリンダ平均速度 @   600mm/s 一’‥一 『一 一一一一一〉ぶ} 

  05101520×10−2

     圧力供給時間(sec) 図一11 始動時の圧力供給時間と移    動距離の関係 反面,中間位置停止を必要とするとき,空気圧の供給 時間が長いと,シリンダロヅドは全ストローク移動し て目的を達せられない。ここで,始動時圧力供給時間 と移動距離について実験した。実験条件はインターフ ェースバルブの供給圧を一定とした,このときのシリ ンダ平均速度600mm/sであった。始動時圧力供給時 間と移動距離の関係について,実験結果を図一11に示 す。その結果,移動距離は始動時圧力供給時間とほぼ 比例している。この時間の最小値は100msであった。

7.応用実験

 A) シリンダの低速作動  空気圧シリンダにおいて低速作動を行わすと,ステ ックスリップ現象を現わす。普通いわれているのは 50mm/s程度から速度が低下すると,シリンダによ って異なるが,ステックスリップが発生する可能性が 高くなる。それは,その原因の大半がパッキンの影響 によることで知られている。ここでは電空変換器を応 用して,加速,減速をくり返しながらシリンダの低速 作動について実験した。シリンダロッドは,前進方向 だけとし,前進の圧力係数Kp=0.64,減速のための 後退圧力係数Kp=0.36で圧力係数比0.56のとき, この実験結果を図一12に示す。図は,シリンダロッド 120mmの全ストロ 一一クについて変位と時間を表わし ている。図が示すように,シリンダの平均速度32mm /sとなり,この速度ではステックスリップ現象は発 生していない。  B) シリンダの中間位置停止  空気圧シリンダの中間位置停止は,停止位置精度を        0.1sec 図一12 シリンダロヅドの低速作動における変位    と速度の関係 どの程度に押えるかということが大きな問題である。 精度は,シリンダのスピードや,使用条件により異な るもので,空気圧のみによる中間位置停止は困難とさ れている。ここで,電空変換器による中間位置停止に (+) 2.0  1.0!言 旦   0 練 誌 1.0 2.0 (一) シリンダ平均速度 @ 600mm/sec     40   60   80   100      停止位置(mm)

図一13停止位置誤差

一1二・1’・: 一一r一  」−」…   トニ       ^1−一一 k  (a)     ;=. _.:寸二二=i ::::.:=二二   ’一←Q_一 ,_  1   _ 一一一一一

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一r−} 一  一一一 . → 」 』一         0.lsec 図一14 速 度 勾 配

(6)

ついての実験結果を述べる。中間位置停止設定は,原

点から40,60,80,100mmの4ポジションとし,

シリンダの平均速度は600mm/sとした。なおシリン ダは両ロッド形である。前述の始動時圧力供給時間と 移動距離の関係から,設定値近傍まで始動時圧力供給 時間により,シリンダロッドを前進移動させ,前進圧 力係数Kp=0.67,減速圧力係数Kp=0.33の加減速 を3回くり返したのち,シリンダの前進,後退ポート に同時に,空気圧を供給し停止させる。図一13に結果 を示す。図は平均値からの最大誤差を表わしたもの で,およそ±1.Omm以内である。加減速のくり返し 回数は,シリンダ平均速度600mm/sにおいて,実験 により3回の加減速が最適であることが分かった。こ のシリンダの運動を図一14に示す。図は,速度制御し ない場合の勾配を(a)に示す。このときのシリンダ 速度は,約550mm/sである。また減速した場合の勾 配を(b)に示す。この速度は,約180mm/sである。 以上の結果,電空変換器によるシリンダ速度制御は有 効で,中間位置停止の精度向上に寄与している。

8.考

察  電空変換器は,電磁バルブで代表されるが,近年マ イクロコンピュータの発達にともなって,省エネルギ 化,小形化,高速化などの要求が高まってきた。この ような状況に対応するべき,新しい方式による電空変 換器を試作し,その特性と応用例について述べてき た。その結果,電空変換器としての特徴を次に掲げ る。  1)電空変換器の変換時間は,2msec以内と高速   で行われている。  2)超音波送波器からの超音波の制御効果は,およ

  そ20から40mmH20であり,ベローズやダイヤ

  フラム形薄膜素子を十分に作動させる。 電空変換器の応用として,空気圧シリンダの低速作動 と,中間位置停止についてその特徴を次に掲げる。  3) シリンダロッドが,低速で安定に移動するため   の,前進パルスと後退パルスの圧力係数比は,   0.4から0.6の範囲である。  4) シリンダは,低速作動においても,ステックス   リップ現象が発生しない。  5) シリンダ平均速度600mm/sのとき,ストロー

  ク40,60,80,100mmの各位置で,停止誤差

  の最大は±1・Omm以内である。 以上,電空変換器の試作と応用を述べたが,制御はオ ープンループで行った。しかしシリンダロッドの変位 を検出し,設定値と変位との差に応じた,クローズル ープ制御にすることにより,負荷の変動や,圧力の変 動に左右されない,より高精度の中間位置停止につい ては引き続き実験する。  本研究に際して,有益な助言を頂いた精密工学科相 羽三良教授,山藤和男助教授に深謝いたします。

参考文献

1) 田中哲郎:チタン酸バリ=一ムとその応用(オ   ーム社) 2)藤森聰雄:やさしい超音波の応用(産報)

参照

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