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香 川 大 学 経 済 論 叢 第 8 1 巻 第 3 号 2 0 0 8 年 1 2 月 209‑225

研究ノート

日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート

井 上 信 一 '

はじめに一問題の意図と限定

中国(本土)における外資系企業への経済面での改革開放は, 1992 年の登〖小平の

「南巡講話」以来急速に進展した。その結果製造基地としての中国(本土)の役割は 急速に高まり,「世界の工場」の中国化がいわれて久しい。それ以降も中国経済の高 度成長は継続し止まることなく進展し,現在に至っている。これまで北京オリンピ;;

ク ( 2 0 0 8 ) と上海万博 ( 2 0 1 0 ) という経済発展のランドマークと相まって,中国経済 は「世界の工場から世界の市場へ」としての経済的な重要性が一段と高まってきてい る。中国政府の外資政策もこのような世界経済における中国経済,企業のプレゼンス の増大を意識した政策展開がみられ,また外資系企業の直接投資への政策も,それを 意識した国家政策,法制度及び投資環境の整備が急速に行われてきている。

このような中国経済のこれまでの急速な成長,発展を意識しながら,本稿では,中

(!) 

国に進出している外資系企業,なかでも日系企業を中心に,中国進出の動向と展開の 全体像を把握することを主たる目的としている。そのため,最初にグローバルな視点 からみて,日系企業はどのような地域 国々に,あるいはどのような産業に,海外進 出を多く行っているか,世界的な視点から,その多国籍化のパラダイムの理解を最初 の課題としている。

(1)  なおここで日系企業とは,東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 年)に基づき,「日本企業の出賽

比率が合計で 10% 以上(現地法人を通した間接出賽も含む)の日系現地法人」をいう定

義に従っている。なおこの定義は, JEIRO『在アジア日系製造企業の経営実態調査

( 2 0 0 6 ) 』などでも,同様の定義がなされている。

(2)

‑210‑ 香川大学経済論叢

次にグローバルな枠組みの中で,アジア地域(東アジア,東南アジア)における日 本企業の海外進出状況を,中国を意識しながら,国別,業種別にその特徴を同様に具 体 的 に 検 討 , 分 析 を 行 い た い 。 そ し て 第 3 に,中国(本土)と共に,香港,台湾,シ ンガポールというグレーター中国(大中華圏)を意識しながら,日系企業の中国(本 土)進出の動向を把握したい。中国の広大な国土(地理)と悠久の歴史と,同時に「特 色 あ る 社 会 主 義 市 場 経 済 」 を 意 識 し な が ら , 中 国 沿 海 部 ( 渤 海 湾 , 長 汀 デ ル タ , 珠 海 デルタ(広東省)),中部,東北部,西部地域に分け,中国における経済発展と外資系 企業の進出動向のなかで, 日系企業の中国進出の多様性と広がりを一瞥することを課 題 と し て い る 。 最 後 に , 外 賓 企 業 の 中 国 経 済 に 占 め る 存 在 感 と 日 系 企 業 の 定 着 率 の 特 質をほかの外資系企業との比較において検討する。

第 1 節 日系企業のグローバル展開と地域別,産業別の特徴

こ の 節 で は , 世 界 に 展 開 し て い る 日 系 企 業 の 分 布 状 況 を , 地 域 別 と 産 業 別 に わ け て,その概況と特徴を一瞥する。

1  ‑1  地 域 別 の 分 布

地球規模での日系企業の世界的な分布状況は,地域別には,表 1‑1 のとおりであ

る 。 2 0 0 5 年現在の,東洋経済新報社の調査(『海外進出企業総壁(国別編)』,東洋経

済新報社, 2 0 0 6 年 ) に よ る と , 全 世 界 で , 全 産 業 ベ ー ス で 3 5 , 0 2 5 社 で あ る 。 地 域 別

に最も多いのはアジア地域であり, 1 7 , 5 7 0 社 と 過 半 数 を 超 え て い る 。 そ れ に 次 い で

多いのは,北米地域であり, 7 , 6 9 1 社 (220%) を占めている。また欧州地域も 6 , 0 5 5

杜 ( 1 7 . 3 % ) と第 3 位を占めている。アジア, ヨーロ;;パ,北米の 3 地 域 で 日 系 企 業

の 海 外 進 出 総 数 の 8 9.   5% . と,全体の 9 割 近 く を 占 め て お り , 日 系 企 業 の 海 外 進 出 の

主要地域であることが理解できる。とりわけ最近の増加傾向が著しいのは,アジア地

域 で あ る 。 そ れ 以 外 に は , 中 南 米 地 域 が 1 , 9 1 4 社 (5 2%),  オ セ ア ニ ア 地 域 が 1 , 2 0 9

社 (3 5%) と い う 分 布 状 況 に な っ て い る 。 ア フ リ カ , 中 近 東 地 域 へ の 日 系 企 業 の 進

出 は , 現 時 点 で は 石 池 プ ラ ン ト な ど ご く 限 ら れ た 業 種 の 企 業 が 進 出 し て い る に す ぎ

ないことがわかる。

(3)

4 3 5   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート 表 1‑1 世界の日系企業(単位 社 )

地域別 合 計

全 冊 界 3 5 , 0 2 5   ( 1 0 0 . 0 % )  

ア ジ ア

1 7 , 5 7 0   (50.16)  中 近 東 2 0 2   ( 0     01)  . . ヨーロ;;パ 6 , 0 5 5   (17.29)  北 米 7 , 6 9 1   (ZL  96)  中 南 米 1 , 9 1 4   (5.46) 

ア フ リ カ

3 8 4   (0.01) 

オセアニア

1 , 2 0 9   (3.45)  出所 東洋経済新報社 ( 2 0 0 6 年版)。

1‑2  日系企業の産業別分布

‑211‑

日系企業のグローバル展開を,業種別に考察すると,表 1‑2 のとおりになる。業 種別に多いのは,製造業であり最も多く 1 3 , 4 2 8 社 ( 3 8 ,3%) を占め,世界に進出し ている日系企業全体の 4 割近くを占めている。日本企業の海外進出の特徴である「モ ノづくり(製造業)」を中心とした海外進出という,これまでの日本企業のグローバ ル展開の特徴がここにもみられる。

2 番目に海外進出の多い業種は商業であり, 1 0 , 5 3 0 社 ( 3 0 .0%) を占めている。

製造業と商業を合わせると,全産業の 6 8 ,3% と,全体の 7 割 近 い 企 業 が 製 造 業 と 商 業(卸売業,小売業,商社等)からなっていることがわかる。それ以外には,サービ ス業 (8 8%) や金融保険業 (42%) の進出がある程度みられる。それ以外の企業で

表 1‑2 日系企業の海外進出(業種別)の特徴 業種別 日系企業数(社) 構成比(%)

I)

造 業 1 3 , 4 2 8   3 8 . 3  

商 業 1 0 , 5 2 0   3 0

O 金 敵 保 険 業 1 , 4 7 1   4 . 2   サ ー ビ ス 業 3 , 0 8 7   8 . 8   そ の

6 , 5 1 9   1 8 . 6  

ムロ

計 3 5 , 0 2 5   1 0 0 . 0  

出所 東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 年版)より作成。

(4)

ある「その他」の業種には,運輸業,証券,投資,株式保有,建設業,不動産業,鉱 業,農林水産業なとの業種が含まれ分類されている。

なお現時点 ( 2 0 0 5 年度)でも,海外進出を行っている企業の多い業種は,製造業 ( ' 0 5  :  1 8 5 社 /405 社),卸売業 ( ' 0 5 •• 100/  4 0 5 ) ,   運輸業 ( ' 0 5 .• 60/  4 0 5 ) が,近年 の海外進出の多いトソプ 3 の業種であることが理解できる。

第 2 節 製 造 業 に お け る 日 系 企 業 の 海 外 進 出

この節では,日系企業の海外進出で最も多い製造企業のアジア地域における展開状 況を,国別にその特徴を考察する。

2‑1  日系製造企業の地域別分布(世界)

グローバル展開している日系企業のうち, 3 8.   3% . を占める製造企業の地域別の海外 進出状況は,表 2‑1 のとおりである。

製造企業では,表からわかるように,アジア地域が 6 , 6 0 4 社 ( 7 3 ,1  %)を占めてお り,海外進出企業のうち 7 割以上がアジア(中国,タイ,マレーシア,台湾,韓国な ど)に進出しているという特徴が浮かび出てくる。

それに対して,第 2 位は北米(アメリカ合州国,カナダ)であり, 1 , 2 1 9 社 (135% :  USA 1 , 1 3 5 社,カナダ 8 4 社)と米国中心に進出している。第 3 位はヨーロ;;パであ

り , 7 9 1 社 (8.8%) を占めている。その国別の内訳は,多い順に,イギリス, ドイ

表 2‑1 日系製造企業の地域別分布 地域別 日系企業数(社) 構成比(%)

ア ジ ア 6 , 6 0 4   7 3 . 1   中 近 東 1 8   0 . 0   ヨーロ;;

Jゞ

7 9 1   8 . 8   北 米 1 , 2 1 9   1 3 . 5   中

米 2 8 5   3 . 2   ア フ リ カ 2 5   0 .  0  オ セ ア ニ ア 9 1   0 . 1  

世界合計 9 , 0 3 3   1 0 0 . 0  

出所 東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 ) , (掲載ベース)。

(5)

4 3 7   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート ‑2]3‑

ツ,フランス,オランタ,スペイン,イタリアという旧西欧諸国への進出を中心に広 く進出していることが理解できる。

以 上 3 地 域 へ 進 出 し て い る 日 系 製 造 企 業 数 は , 世 界 全 体 の 95% 以 上 を 占 め て お り,日系製造企業はアジア,北米,ヨーロソパに大部分の場合進出していることが理 解 で き る 。 そ れ 以 外 で は , オ セ ア ニ ア 地 域 ( オ ー ス ト リ ア , ニ ュ ー ジ ラ ン ド ) は 9 1 社 (01  % ) を 占 め て い る が , 中 近 東 , ア フ リ カ は , 非 常 に 限 ら れ た 製 造 企 業 し か 進 出していないことも窺える。

2‑2  日系製造企業のアジア地域における分布

製造企業の世界進出のうち, 7 3.   1% . を占めるアジアヘの進出を,国別に分類したの が,表 2‑2 で あ る 。 ア ジ ア で は , 中 国 ( 本 土 ) へ の 進 出 が 3 , 5 8 5 社 (39.6%) と 4 割 近 く を 占 め 圧 倒 的 な 数 値 に な っ て い る 。 中 国 の 高 度 成 長 が 1 9 9 2 年 の 改 革 開 放 以 来 長期にわたり継続し,日本企業も,香港,台湾企業や欧米企業(米国,英国,フラン ス , ドイツ等)と共に,中国へ先陣を争って進出している実態が窺える。

表 2‑2 製造業の海外進出(アジア:国別)

国 名 企業数(構成比)

ア ジ ア . 合 計 9 , 0 4 2   ( 1 0 0 . 0 % )  

国 6 0 1   (6. 7%)  中 国(本土) 3 , 5 8 5   ( 3 9 ,  7%)  香 港(中国) 3 8 2   (4. 2%)  マカオ(中国) 4 (0.0%) 

湾 7 7 8   (8. 6%) 

ナ ム 2 0 4   (2.3%) 

イ 1 , 1 3 5   (12 6%) 

シ ン ガ ポ ー ル 4 3 2   ( 4   8%) 

マ レ ー シ ア 6 9 6   (7. 7%) 

フ ィ リ ピ ン 3 5 4   (3. 9%) 

イ ン ド ネ シ ア 6 3 0   (7.0%) 

イ ン ド 1 7 5   (19%) 

そ の

6 6   (0,1%) 

出所 東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 ) , (掲載ベース)。

(6)

次に日系製造企業の進出が多い国は,これまで伝統的に日本の製造基地としての役 割を果たしてきたタイであり, 1 , 1 3 5 社 (126%) を占めている。第 3 位は台湾であ

, 7 7 8 社 ( 8.   6%) . を占め,マレーシアが第 4 位で, 6 9 6 社 ( 7 ,7%),  インドネシア が 6 3 0 社 (7.0%) という順番になっている。それ以外の国は,韓国 6.   6%,  . シンガ ポール 4 . , 8 % , フィリピン 3.   9% . という順に,日系製造企業はアジア地域へ進出し,

製造活動を行っていることが理解できる。

第 3節 商 業 に お け る 日 系 企 業 の 海 外 進 出

ここでは商企業の海外進出の実態を,まずグローバルなレベルで地域別の特徴を検 討してみる。次にアジア地域における日系企業の国別の進出状況について,その特徴 を検討する。

3‑1  日系商企業の地域別進出状況(世界)

商業における日系企業の世界への進出状況を,表 3‑1 により考察してみる。地域 別の日系企業の進出状況は,製造業の場合と同様にアジアが, 3 , 1 2 8 社 ( 4 7 ,2%) と 最も多くなっているが,製造企業ほとにはアジアだけにシフトしているわけではな い。アジアは製造。輸出基地としての意味合いがとりわけ強く,ヨーロソパや北米な とはある程度は製造基地としての進出もみられるが,むしろ消費地(マーケソト)と しての販売市場を目指した進出が,それら地域に多くなっているのが特徴である。

表 3‑1 日系商企業の地域別分布 地域別日系企業 日系企業数(社) 構成比(%)

ア ジ ア 3 , 1 2 8   4 7 . 2  

近 東 5 4   0 . 1   ヨーロ;;パ 1 , 7 1 0   2 5 . 8   北 米 1 , 2 1 9   1 8   4   . .

中 南

米 2 8 5   4    5  . . ア フ リ カ 4 6   0    1  . . オ セ ア ニ ア 2 1 5   3 . 2  

世界合計

6 , 6 2 5   1 0 0 . 0  

出所 東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 ) , (掲載ベース)。

(7)

4 3 9   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート ‑215‑

ヨーロ;;パでは,日系商企業は 1 , 7 1 0 社 (258%) を占め,アジアに次いで 2 番目 に販売会社の数が多く,販売市場を目指した進出が多くなっており,販売会社の数は 北米を抜いて第 2 位になっている。その理由は,欧州には多くの企業が法制度なとの 諸問題があり, EUを中心にヨーロ;;パ各国ごとに販売会社を設けてきている。 EU 拡大によりその傾向は少し緩和されボーダーレス化してきているが,未だに各国のそ れぞれの法律,制度に対応(拘束される)する必要もあり,各国ごとに独立の会社を 設立する必要性も高く,それだけ日系の販売会社の数も多くならざるを得ない面がみ られる。そのことは,ヨーロ;;パでの日系企業への面談調査などにより現地の経営者 からよく聞いた理由であり,これまでは EU地域における販売会社の多い理由の一つ であったことが推測される。

第 3 位は北米地域であり,日系商企業の数は 1 , 2 1 9 社 ( 1 84%) と,北米,特にア メリカ合州国は,人口,購買力などと共に市場規模も最も大きく,日本企業にとって は,現時点では最も魅力的な市場である。今後中国が製造基地としてだけでなく「世 界の市場」として,どこまで伸びてくるかという点は不確実であるが,中産階層の急 速な形成により,電気機械,一般機械,電子部品,輸送用機械などの製品消費市場と

して, 日本経済,日系企業への影響も大きくなることが予測される。

以上 3 つの地域を合計すると,海外進出企業(商業)の 91.4% と , 9 割以上の企 業になり,製造企業の 95% には及ばないが,商業においても上述の 3 地域は日系企 業にとって販売拠点として重要性が非営に高いことは,変わらない事実である。

3‑2  アジアにおける日系商企業の分布(国別)

世界進出している日系商企業のうち,アジア地域は 4 7 , 2% と,全体の半分近くを 占めている。そこにおける商企業 3 , 1 2 8 社の国別の分布状況を,表 3‑2 により,そ の特徴を分析してみよう。

まず中国(本土)が, 2 4.   5% . と,全体のほぼ 1/4 を占めているが,製造業ほどの

進出状況(集栢)にはなっていない。これは,中国政府の最近までの外資系商業に対

する政府規制が大いに影孵しており,また国内販売への外査企業の進出は,最近まで

ごく限定的な進出しか許可されてこなかったことが最も大きな理由であろう。すなわ

(8)

ち製造業の場合は,いわゆる加工貿易型の進出が大いに奨励され,中国経済の発展に 大きく寄与すると共に,中国の製造企業への技術移転,屈用の確保,労働者の訓練

(熟練の移転)など外国製造業の果たしてきた役割が顕著であった。そのため中国政 府,省,特別市政府(上海,北京等)は,外賽企業への誘致奨励策として,すなわち 外資系企業の積極的誘致のため投資環境の整備と共に,租税を始めとする様々な優遇 政策が外資系企業のためにとられ,活用されてきた。商業にも同様の奨励策,優遇策 がとられるようになったのは最近のことであり,一部の世界の先進的な企業(商業)

にパイロット的に試行させ,上手く行けばそれを制度化し,広く沿岸綿を中心に中国 全土にも拡大・実施して行くという方策を,あらゆる業種の外資尊入で,中国政府は とってきているようである。このことは製造業(食品業,電気機械製造業,自動車製 造業等)だけでなく,最近の商業(卸売業

商社,ス•ーパー,コンビニ等),物流業,

金融保険業(銀行,保険等)の場合にも同様であり,これが中国式の「外資導入のや り方」であり,これまでの中国での面談調査で多くの経営者から同様の説明を聞く機 会があった。

ただ中国(本土)と共に,香港(中国)も 1 9 ,5%  ( 第 2 位)を占め,それに台湾 1 0 . .   7% を加えると 55.0% になり,やはり中華圏で過半数を占めていることが窺える。

表 3‑2 商企業の海外進出(国別)

国 名 合 計

ア ジ ア 3 , 1 2 8   (100  0%) 

国 2 1 6   (6.  9%)  中 国(本土) 7 7 5   (24.8%)  香 港(中国) 6 1 1   (19.5%) 

湾 3 3 6   ( 1 0 .  7%) 

ナ ム 1 3   ( 0   0%) 

イ 3 5 0   (11.2%) 

シ ン ガ ポ ー ル 4 8 0   (15.3%) 

マ レ ー シ ア 1 7 1   (5.5%) 

フ ィ リ ピ ン 6 4   (2.0%) 

イ ン ド ネ シ ア 6 5   ( 2   1  %) 

イ ン ド 3 3   (11%) 

出所 東洋経済新報社編 ( 2 0 0 6 ) , (掲載ベース)。

(9)

4 4 1   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート ‑2]7‑

中国(本土)に次いで多いのは,前述の香港(中国) 2 位であり,いわゆる「広 東型加工貿易」の拠点であることも大きな理由の一つであると思われる。第 3 番目に 多いのは,シンガポールで 15.3% を占めている。第 4 位は台湾が 1 0.   7% . を占めてい る。第 5 位はタイで, 1L2% になっている。それ以外には,韓国、: 6    9%,  . . マレーシ ァ ・ 5.   5% . が目立つ数字であるといえる。

第 4 節 中国進出の外資企業と日系企業の分布

この節では,中国(本土)に進出している外資企業の分布の概要と,日系企業は中 国本土の中でどのような地域,都市に広く進出しているか,またどのような産業,業 種が多く中国に進出しているかを,烏廠的に明らかにする。

4‑1  中国進出の外資系企業の地域別分布

まず最初に,中国(本土)に進出している外資企業の全体像を,表 4‑ 1  (地域別)

と表 4‑2  (国別)により,確認しておこう。

まず地域別の特徴は,アジア地域からの外資企業が 7 4.   3% . と,非常に多いことで ある。このことは,地理的な近接性(香港,台湾,日本,韓国等)と同時に屁史的な 事情(香港,台湾,シンガポール等)があげられる。次は北アメリカ(特にアメリカ 合州国)からの疸接投資が多く, 11.5% を占めている。第 3 位は,欧州からの直接投

表 4‑1 中国進出外資系企業の分布(地域別)

地域 企業数(社) 構成比(%)

ア ジ ア 1 7 9 , 9 7 1   7 4 . 3   欧 1 1 1   1 3 , 5 5 9   5 . 6   南 ア メ リ カ 1 1 , 3 8 1   4 . 7   北 ア メ リ カ 2 7 , 3 8 5   1 1 . 3   オ セ ア ニ ア 6 , 3 5 0   2 . 6  

,6. 

計 2 4 2 , 2 8 4   1 0 0 . 0  

出所 稲垣清他著『中国進出企業地図(改訂版)』行々社,

2 0 0 6 年。このデータは, 2 0 0 4 年末現在の数値であ

る。なお合計は,上記地域以外の地域も含まれるの

で,全体の合計とは一致しない。

(10)

資であり, 5.5% に達している。 4 番目に多いのは,南アメリカであるが,国別の表 からもわかるように,バージン諸島からの直接投賽であり,これは法制度などの事情 から,台湾企業が間接的な迂回投資を行っているという事情が窺える。

4‑2  中国進出の外資系企業の分布(国別の特徴)

以上の地域別の特徴を,国別に詳細に検討すると,容易に推測できるように最も多 いのは,香港であり 39.5% で,第 1 位 に な っ て い る 。 次 に 多 い の は , 台 湾 で あ り 1 1 .  3% を占めている。第 3 拉はアメリカ合州国であり 9.   5% . で,中華圏以外,いわゆ る「純粋」の外資企業としては,最も多くなっている。アメリカ企業のグローバル展 開の一端がここにも窺える。第 4 位は日本 8.2% であり,そして韓国は 7 , . 7 % と,地 理的な近接性と中国の経済発展が相まった実態が窺える。以上香港,台湾を別にする と,アメリカ合州国,日本,韓国が,いわゆる外資企業として直接投資の多い国である。

逆に,ヨーロ;;パ系外資企業は,ヨーロ;;パ ( E U ) 全体では 5.6% と,ある程度 の企業数を占めているが,国別には,イギリス 1.3%, ドイソ 0.9%, そしてフラン ス 0.   . 6% と,いわゆる伝統的なヨーロ;;パの経済大国でも,地政学(距離)的な事情

表 4‑2 中国進出外資系企業の分布(国別)

国別分布 企業数(社) 構成比(%)

香 港 9 5 , 7 7 8   3 9 . 5  

湾 2 7 , 3 8 6   1 1 .  3  アメリカ合州国 2 2 , 4 4 5   9 . 5   日

1 9 , 7 7 9   8 . 2  

国 1 8 , 7 6 0   7 .  7  シンガポール 7 , 2 2 4   3 . 0   イ ギ リ ス 2 , 7 7 8   1 . 2   ド イ ソ 2 , 0 8 3   0 . 9   フ ラ ン ス 1 , 4 2 4   0 . 6   バ ー ジ ン 諸 島 8 , 8 0 7   3  7 

合 計 2 4 2 , 2 8 4   1 0 0 . 0   出所 稲垣清他著『中国進出企業地図(改訂版)』密々社,

2 0 0 6 年。なお表中の国は,主要な国であり,それら

の数値と合計とは一致しない。

(11)

4 4 3   日系企業のクローバル展開と中国進出に関するノート ‑219‑

を反映してか,それぞれの国を代表するグローバル企業の進出は多くみられるが,企 業数としては 1% 前後と限定的である。

4‑3  中国(本土)での日系企業の地域別分布(中国:本土への進出状況)

広い国土を持つ中国(本土)を,大きく 5 つにわけてと のような地域に多く日系企 業が進出しているか,表 4‑3 により検討してみる。まず地域分類は, a ) 渤海湾, b ) 長江デルタ, c )華南地域, d ) 中部地域,及び e )西部地域にわける。 5 つの地域(渤 海湾,長江デルタ,華南地域,中部地域と西部地域)の具体的な内訳は,以下のよう な諸都市からなっている。渤海湾地域には,北京市,天津市,河北省,山東省,遼寧 省が含まれている。長江デルタ地域には,上海市,江蘇省,浙江省が含まれる。華南 地域には,広東省,福建省,広西チュワン自治区,海南省が含まれる。中部地域に は,山西省,内モンゴル自治区,吉林省,黒砲汀省,安徽省,江西省,河南省,湖北 省,湖南省が含まれている。西部地域には,重慶市,四川省,負州省,雲南省,チ ベソト自治区,映西省,甘粛省,青海省,寧夏回族自治区,新彊ウイグル自治区が含 まれている。

ま ず 日 系 企 業 が 最 も 多 く 進 出 し て い る 地 域 は , 長 汀 デ ル タ 地 域 で あ り , 全 体 の 4 4 , . 6 % を占めている。 2 番目に多いのは渤海湾地域で,全体の 313% を占め,次に華 南地域で 1 6 ,9% を占めている。以上 3 つの地域は何れも中国沿海部の中心地域であ るが,それを合計すると 92.8% と,日系企業の中国本土進出の 9 割を超える数字に

表 4‑:3 地域別日系企業の分布状況

地域名 日系企業数(社) 日系企業(構成比.%)

渤 海 湾 地 域 1 , 6 7 8   3 1 . 3   長江デルタ地域 2 , 3 8 6   4 4 .  6  華 南 地 域 9 0 6   1 6 .  9  中 部 地 域 2 3 9   4 . 5   西 部 地 域 1 4 5   2 . 7   合計(全国) 5 , 3 5 4   1 0 0 . 0  

出所: TETRO 著『中国進出日系企業の実態と地域別投賽環境満足度

評価

( 2 0 0 3 年)』日本貿易振興会, 2 0 0 4 年 。

(12)

なっている。多くの日系企業は,渤海湾,長江デルタ,珠海デルタ(華南地域)の沿 海(岸)都市を中心に中国に進出しているといえる。

4‑4  日系企業の沿海部を中心にした地域別分布(都市別,省別)

以上において,中国本土における地域別の日系企業の進出状況について考察してき た。その結果,最も多いのは成長著しい長汀デルタ圏(上海市,蘇州市,無錫市を含 む江蘇省,浙江省等)であり,それにつづいて渤海湾圏(北京市,天津市,大連市 等),そして伝統的にこれまで香港をベースに投資が集中していた華南地域(珠海デ ルタ:・ 広州,珠海,東莞,深訓等)であった。

そこで,ここでは 2000 年代になって,沿岸部の経済発展を代表する諸都市(省,

特別区)における日系企業の進出の実態と動向について,表 4‑4により,少し詳し く分析してみよう。

まず表を一瞥して明らかなことは,長江デルタ圏,とりわけ上海市,江蘇省への日 系企業の進出企業数が著しく増加していることである。それは,この 5 年間に,それ ぞれ 2 .5 倍に急増していることからも窺える。また企業数では,長江デルタ圏ほどで はないが,広東省(珠海デルタ:香港,広朴 , I 東莞,深訓等)への日系企業の進出も 顕著であり,この 5 年間で進出企業数が 4 , . 3 倍に急増していることである。それ以外 にも,北京市では 3 ,1 倍,青島市で 2 .5 倍と,中国全体の伸び率 2   1 . . 倍を遥かに上

表 4‑4 中国進出日系企業の地域別比較(都市間) (件数,倍率)

2 0 0 0 年 2 0 0 1 年 2 0 0 2 年 2 0 0 3 年 2 0 0 4 年 ' 0 4 / ' 0 0 :   倍 大 連 市 1 8 5   2 1 1   2 6 9   3 3 1   3 3 3   1 . 8   北 京 市 5 2   8 0   9 5   8 9   1 5 8   3 . 1   天 津 市 47  5 7   8 7   1 1 6   1 4 7   2 . 0   青 島 市 1 0 6   1 0 1   1 5 5   1 9 9   2 1 2   2 . 5   上 海 市 2 8 7   3 4 2   4 6 7   7 8 8   7 3 0   2 . 5   江 蘇 省 2 5 9   3 6 2   5 9 5   6 7 0   6 4 7   2 . 5   広 東 省 5 1   8 6   1 3 7   1 3 2   2 2 0   4.3  中 国 計 1 , 6 1 4   2 , 0 1 9   2 , 7 4 5   3 , 2 5 4   3 , 4 5 4   2 . 1   出所 稲垣清他著『中国進出企業地図(改訂版)』,荘々社, 2 0 0 6 年。なお最後の列は, 2 0 0 0

年に対する 2 0 0 4 年の倍率を示している。

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4 4 5   日系企業のグロ・ーバル展開と中国進出に関するノート ‑221‑

回っている。天津市 2 . 1 倍や大連市 LS 倍は,平約値あるいは平均よりも幾分低いレ ベルにあるが絶対数ではかなり高いことが窺える。そのことは,中部地域の日系企業 数が中国本土全体の 4.   5% . に過ぎず,また西部地域の日系企業は 2 ,7% を占めている に過ぎないことからも,沿海部中心に日系企業は進出しているという特徴が窺える。

4‑5  中国進出日系企業の業種別分布

業種別の特徴は, TETRO 『中国進出日系企業の実態と地域別投資環境満足度評価 ( 2 0 0 3 ) 』によると,回答企業数による比率しかわからないが,製造業(食品加工から その他の製造業まで)と,非製造業(金融・ 保険),小売・卸売,物流,情報処理,

ソフトウエア,通信,コンサルタント,飲食 ホテル,駐在員事務所,統括会社,そ の他のサービス業が TETRO の調査対象の業種に含まれている。その結果,製造業が 1 , 0 2 0 社 : : 76"7%,  非製造業が 3 1 0 社 : 2 3

、,

33% という割合になっている。

調査時点での製造業における進出企業数の多い業種は,電機,,電子工業; 27.2%,  化学"石油: 10.1%,  アパレル・ 9 .2%,  一般機械 8.9%, 輸送用機械; 7.0%,  食 品加工,: 6"6%,  金属製品 5"8%,  精密機械: 5    1% . . という業種であり,上述のいず れの産業も構成比が 5% を上回っている。

非製造業での構成比は,最も多いのは,小売,卸売業: 2 9 ,  0%,  物流業: 1 4   5%,   . . 駐在員事務所'. 12.6%,  情報処理。ソフトウエア 10"3% などが多くなっている。な おその他はサービス業,, 1 6 ,8% と多くなっている。また回答企業の規模別の分布は,

大 企 業 54.1%, 中 小 企 業 が 4 5.   9% . になっている。設立年別には, 1 9 9 0 年 以 前 は 6 ,  5%,  1 9 9 1 年から 9 5 年 :45.   5%,  1 . 9 9 6 年から 2 0 0 0 年::  32.7%,  そ し て そ れ 以 降

( 2 0 0 1 年から 2 0 0 3 年)は 1 5 ,3% と,大部分は 1 9 9 0 年代以降の進出になっている。

進出(賽本出資)の形態は,独資企業が 53.2%, 合 弁 企 業 37"8%, 合 作 企 業 が

2 .  5%,  その他が 6.   5% . の割合になっている。販売形態は,輸出型(加工貿易)進出

が 5L2%, 内販型(国内市場)進出が 3 6 .9%,  両方(輸出型+内販型)が 1 2 ,0% と

いう比率になっている。(詳細は, TETRO ( 2 0 0 3 年),同上書, pp 8 ‑ 9 などを参照の

こと。)

(14)

第 5 節 中国経済における外資企業の役割と日系企業の特徴

それでは 1 9 9 2 年の経済の改革開放以来,外資系企業の中国経済に占める役割,す なわち外資系企業の中国経済に果たす機能は,との様に変化してきているのであろう か。輸出,輸入別に, 1 9 9 3 年から最近までの動向を,表 4‑5により検討してみる。

外 資 系 企 業 の 中 国 経 済 に 占 め る 輸 入 比 率 の 動 向 を , ま ず 見 て み よ う 。 1 9 9 3 年に は,外資系企業の割合は 4 0 ,2% であったが, 1 9 9 6 年には 5 4 ,5% になり, 2 0 0 4 年には 5 7 , . 8 % ,   そして 2 0 0 5 年には 58.   7% . と,若干の波動はあるが, 1 2 年間に外国からの輸 入に占める外資系企業の比率は 1 8.   5% . 増加しており, 60% 近 く の 輸 入 は 外 資 企 業 依 存になっていることがわかる。このことは,中国経済の発展(輸入)が外資依存型の 経済活動(輸入)であることを示している。

また逆に輸出比率に占める外資企業の割合は, 1 9 9 3 年には 27.5% と 3 割弱に過ぎ なかったのが, 1 9 9 6 年 に は 4 0 .1  %と 4 割を超え, 2002 年 に は 5 2 .2% と 5 割 を 超 え , 2005 年には 5 8 .3% と,輸入割合とほぼ同様の比率であり,ほぼ 6 割近い数字に なっている。輸出においても輸入の場合と同様に,外資企業に依存する比率が益々高 くなっており,中国経済は現時点では,外資依存型の経済活動,経済発展になってい ることが理解できる。

このように外資系企業の中国経済における存在感が益々重きをなす中において,そ れら外資企業の国別(出身)の定着率はどのようになっているのであろうか,興味あ

表 4‑5 中国経済(輸出,輸入)に占める外資系企業の割合 外筏企業の輸入に 外賽企業の輸出に

占める割合 ( % )   占める割合 ( % )  

1 9 9 3 年 4 0 . 2   2 7 . 5  

1 9 9 6 年 54 5  4 0 .  1 

1 9 9 9 年 5 1 .  8  4 5 . 5  

2 0 0 0 年 52 1  4 7 . 9  

2 0 0 2 年 5 4 . 3   52 2 

2 0 0 4 年 5 7 . 8   5 7 . 1  

2 0 0 5 年 5 8 .  7  58 3 

出所 稲垣渭他著『中国進出企業地図(改訂版)』行々社, 2 0 0 6 年 。

(15)

4 4 7   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート ‑223‑

る課題である。それを示す興味深い資料が表 4‑6 である。

そこでは,定着率は,「継続率」という言葉で表され(以下「定着率」と呼ぶ),そ の逆は「挫折率」という言葉で説明されている。なお「継続率」の定義は,「累積認 可件数でもって,当期年度に継続している企業数を割って,それを比率(%)に直し たもの」である。また「挫折率」の定義は,逆に,「 1‑ 継続率」として定義されて いる。

この表からわかる興味深い点は,まず外資系企業の定着率は,全体的にも,また 個々の外資企業にとっても,何れの外国の企業の場合も,傾向的には低くなっている ことである。全体的には,定着率は 2000 年の 49.6% から 2 0 0 4 年の 4 7.   6% . と,相対 的には 2 % 程度低下している。国別には,その低下傾向の割合が高いのは,台湾 (10 0%),  香港と米国(いずれも 8.8%)であり,日本 ( 8 .0%),  そして韓国は 5.2%

と相対的に低くなっている。現時点での定着率(絶対値)は,日本が最も高く,つい で韓国,米国,台湾,香港という順番になっている。

また外資企業の定着率は,何れの年度においても,日本企業が最も高く,韓国企 業,米国企業,台湾企業,香港企業という順に,低くなっていることが窺える。又全 体的には,日本企業の定着率が最も高く,次いで韓国企業というのは,両国の中国進 出が製造業中心の進出であることと,両国のビジネス,カルチャーの特性がよく似て いることによるのでなかろうか。逆に第 3 位はアメリカ,次いで台湾,そして香港と いう順位は,業種のタイプと共に,各国の文化的なバック・グラウンドの相違など が,定着率(継続率,挫折率)に影孵を与えていることが窺え,興味ある数字である。

今後,中国の開発区,企業への面談調査を始め,日系企業への面談調査をさらに分析

表 4‑6 外資系企業の定着率の推移 ( % )  

世界 香港 台湾 米国 日本 韓国

2 0 0 0 年 4 9 .  6  4 8 , 8   5 2 .  7  58 4  7 0 .  1  62 5 

2 0 0 1 年 4 5 , 8   4 3 . 4   4 9 . 2   5 5 . 5   6 7 .  7  6 0 . 6  

2 0 0 2 年 4 9 , 0   4 0 . 2   4 6   0  .  . 5 2 . 0   6 4 . 6   5 8 . 6  

2 0 0 3 年 4 8 . 6   3 9 . 1   4 4 . 8   5 1 .  3  6 3 . 9   6 0 . 5  

2 0 0 4 年 4 7 . 6   40 0  4 2 . 7   49 6  6 2 . 1   5 7 . 3  

出所 稲垣消他著『中国進出企業地図(改訂版)』莉々社, 2 0 0 6 年 。

(16)

することにより,このような日系企業の特徴をより深く理解出来ると思われる。

第 6 節 結 び に 代 え て

以上第 1 節では,世界における日系企業の展開について,グローバルな視点からそ の全体的な動向とアジアに占める重要性を指摘した。第 2 節では,アジアにおける日 系企業の展開の実態と動向を,その中心である製造業と商業を中心に明らかにし,そ こにおける中国ビジネスの展開と日系企業の進出の実態の一端を明らかにした。

第 3 節と第 4 節では,中国(本士)に進出している日系企業を,渤海湾,長江デル タ,華南地域,中部地域と西部地域の 5 つの地域に分類し,その経済発展の特徴が,

沿海部を中心にした発展であり,とりわけ長江デルタ地域の上海,蘇州,無錫などの 諸都市を先頭(龍頭)に,珠海デルタそして渤海湾の諸都市が,現在の中国経済発展 の中心パワーとして,中国経済を牽引しているマクロ的な経済発展の一端が明らかに なった。

また第 5 節では,中国経済に占める外資系企業の動向の変化と,外資系企業の中に おける日系企業の定着率の特徴を比較してみた。その結果,日系企業は外資系企業の 中では現地に最もとけ込む方向で努力しており,長期的な視点から中国経済,企業の 発展に寄与しており,外資系企業の中では定着率が最も高いという文化的な特徴も明 らかになった。ただ同時に,これはすべての外資企業についていえることであるが,

外資企業の増大につれて,外資企業の定着率は,年数を経ると共に低下傾向にあるこ とも同時に明らかになってきた。

ただ中国政府(中央,省,特別市を含む)の経済政策は,これまでの経済開発区で の外資優遇政策(とりわけ税制上の優遇政策)からの転換を 2 0 0 7 年 3 月の全国人民 大会で決定し, 2 0 0 8 年 1 月から新しい「企業所得税法」をはしめとする政策がすで に施行されている。そこでは,外資系企業と国内企業も同様に扱うという内外企業を

「公平性の原則」に従い処遇するという段階に移行している。外資系企業に対しても,

I T 技術や環境配慮に対応する企業への優遇政策と従来型企業を選別する政策が盛り

込まれている。そのためこれらまでの加工貿易型の企業は選別され,さらなる内陸部

や東南アジアヘの再移転などを政府から促されており,中国政府は産業のハイテク化

(17)

4 4 9   日系企業のグローバル展開と中国進出に関するノート ‑225‑

への転換を志向している。

日系企業をはじめとする外資系企業も,このような中国政府の産業政策の高度化,

ハイテク化への対応と共に,沿海部における熟練人材の不足と人件費の高騰に対処す ることがますます要請されている。その対応策は, WTO加盟による中国経済の改革 開放の進展と産業構造の高度化と共に,チャイナ+ワン(例えばベトナムヘの進出等)

などの対策として表れ始めている。このように沿海部を中心にした中国本土における 産業,企業の展開は非常に急速であり,このような市場環境,産業構造への適切かつ 絶え間ない対応が日系企業にも益々要請されている。このような中国政府の外資政 策,経済構造のスピーディな変化にどのように対応していこうとしているか,日系企 業にとって非常に重要かつ緊急に解決をせまられる課題であるが,今後の研究課題と

したい。

(本稿は,平成 1 6 年度〜平成 1 9 年度科学研究費補助金(基盤研究 B ) 代表者:井上 信一,課題番号 1 6 4 0 2 0 2 3 , 研究課題:「世界の工場」の中国化と日系企業の管理会 計,原価管理の現地適用と現地適応,による研究成果の一部に加筆修正したものであ

る 。 )

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