井上 信一先生を送る
経 済 学 部 長
藤 井 宏 史
井上信一先生は,2010(平成22)年3月31日をもって,本経済学部を定年 により退職されました。先生は,香川大学にご着任以来,32年にわたり会計 情報システムの分野で研究教育を続けてこられました。香川大学は,先生の在 任中の多大なるご功績に対し,本年4月に香川大学名誉教授の称号をお贈りし ました。
先生は,1945(昭和20)年12月に徳島県板野郡栄村でお生まれになり,1964 年3月に徳島県立徳島商業高校ご卒業後,1965年4月に香川大学経済学部経 営学科に入学されました。そして本経済学部を1969年3月にご卒業後,1970 年4月に神戸大学大学院経営学研究科修士課程(経営学専攻),1972年4月に 同研究科博士課程(経営学専攻)に進学されました。
1976(昭和51)年3月に当該博士課程を単位修得満期退学の後,同年4月 に広島経済大学経営学科に講師(経営政策担当)として着任され,2年間勤務 されました。香川大学経済学部には,1978年4月に管理科学科の講師(会計 情報システム,機械化会計担当)として着任され,同年6月に助教授,1990 年4月に教授に昇進され(1998年には学部改組で経営システム学科に配置 換),定年で退職されるまでの32年間,本学の研究・教育・社会貢献及び管理 運営の活動において多大なるご貢献をいただきました。
その中でも特筆すべきは研究活動です。先生は,「わが国企業の管理会計・
原価管理とそのグローバル化に関する実証研究」をテーマに,海外進出した日 本企業が,日本で運用してきた管理会計システムを文化や信条の異なる従業員 を抱えた現地の支社ないし支店でどのように適用及び適応しているかに関する 調査研究を一貫して続けてこられました。具体的には,質問票調査やインタ
ビューの手法を用いて,アメリカ合衆国,ヨーロッパ,東南アジア,中国を中 心とした東アジアにおける「日系企業のグローバル化と管理会計の対応」に関 する調査研究です。質問票調査やインタビューといった手法を用いた実証研究 は,現代の会計学研究の分野では一般的な手法のようですが,先生は20年以 上も前から,実際にアメリカ・イギリス・オーストラリア・中国等の諸外国に 出向いて調査を行ってこられました。しかもそうした海外での研究のほとんど は,文部科学省在外研究員・国際交流基金派遣研究員,そしてフルブライト研 究員として,学外の諸機関からの命を受けた長期間にわたる滞在型の研究であ り,そのこと自体が,研究の先見性と社会貢献の大きさを示しています。この ような研究成果は,国内外で著書・論文という形で纏められ公表されていま す。例えば,1990年にはアメリカで
Japanese Management Accounting
を,1994 年にはイギリスでManagement Practices and Cost Management Problems in Japanese-affiliated Companies in the United Kingdom
を公刊されています。また 研究成果は,連合王国をはじめ,オーストラリア・ニュージーランド・台湾・香港等の諸外国のビジネス・スクールや学会で報告されています。地方国立大 学で,内外から研究資金を確保して研究成果を内外に発表するという国際標準 の研究スタイルを貫いている研究者は多くはありませんが,先生は間違いなく そうした数少ない研究者の中のお一人です。
教育面では,「機械化会計」「会計情報システム」をはじめ,会計学のコア科 目である「管理会計基礎論」「管理会計論」「コストマネジメント論」や「コス トマネジメント論特殊講義」をご担当いただき,管理会計の理解に不可欠な基 礎的な知識と考え方を学生に熱心に教授されてこられました。また授業科目「演 習」においても非常に熱心に学生の教育指導に当たられ,累計で200名を超え る学生を社会に送り出していただきました。卒業生は,会計専門職をはじめ,
公務員,金融業,製造業,サービス業,情報産業などの幅広い分野で活躍され ています。
社会貢献の面では,日本学術振興会科学研究費補助金審査委員会委員,フル ブライト奨学生選考委員会委員を始め,放送大学や他大学の非常勤講師,面談
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調査研究や共同研究による世界の実務家や諸外国の大学との交流を長年継続さ れており,研究・実務の両面で国際交流にも尽力されてこられました。
管理運営面では,情報管理学科長を2度(1996年度,2000年度),経営シス テム学科長を2度(2004年度,2006〜2007年度)務められたほか,管理運営 委員会委員長(1998〜1999年度)や入学試験委員会委員長(2002〜2003年度)
といった各種委員会の委員長の重責も果たされ,学部運営に多大なる貢献をい ただきました。
以上のように,本学の研究・教育・社会貢献・管理運営の活動に多大な貢献 をいただいた先生を,定年退職とはいえ,失うことは大変残念でなりません。
とりわけ,20年以上前から国際標準の研究スタイルを貫いてこられた先生が 去られるのは学部として大きな損失です。退職後も引き続きご活躍・ご健勝を 祈念いたしますとともに,私ども後輩のために,今後ともご指導・ご鞭撻下さ いますよう宜しくお願い申し上げます。
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