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(1)

サンゴ礁海域における磯漁の実態調査中間報告(2) : 石垣市登野城地区漁民社会の潜水漁法

著者 須藤 健一

雑誌名 国立民族学博物館研究報告

巻 3

号 3

ページ 535‑556

発行年 1979‑01‑23

URL http://doi.org/10.15021/00004577

(2)

須藤  サンゴ礁海域における磯漁 の実態調査中間報告(2)

サ ン ゴ礁海 域 にお け る磯 漁 の 実 態 調 査 中 間報 告(2) 石垣市登野城地区漁民の潜水漁法一

一*

Preliminary Report on the Dive Fishing Technique in Okinawa (2) Culture and Techniques of Coral Reef

Fishing at Tonoshiro, Ishigaki City.-

Ken-ichi SUDO

The Yaeyama islands of the Ryukyus are located at the southern extreme of the Japanese archipelago. The shorelines of the islands are bordered by coral reefs, where various fishing techniques such as the use of nets, hand-lines and diving have been, practiced.

This paper studies change in the use of techniques and their accompanying material culture. The diVing activities of Tonoshiro district, Ishigaki City, are limited to within the barrier reefs, where octopus, lobster, seaweed and sh ellfish are exploited. Such species are categorized by local fishermen through their habitats, fishing seasons and other factors.. A variety of traditional fishing gear has been developed.

.は じめに

.漁

.漁 業暦 1.季 節 風 と漁期

2.海 産生 物 の 回游,成 長 と漁 期 3.潮 の干 満 の サ イ クル

.潜 水 漁法

1.タ コ 突 漁 2.貝 類 採 集 漁 3.海 藻 類 採 集 漁 4.イ カ 漁

.タ コ と り の1日Ⅵ .お わ り に

*国 立民族学博物館第3研 究部

(3)

国立民族学博物館研究報 告   3巻3号

Lは

  本 稿 は,サ ン ゴ礁 の 海 域 で 営 ま れ る漁撈 活 動,と りわ け伝 統 的 な 潜 水漁 法 につ い て の 調査 報 告 で あ る。

  沖縄 の糸 満 漁 民 は,南 西諸 島 を は じめ西 南 日本,南 方 は フ ィ リピ ンや イ ン ドネ シ ア 方 面 に まで 進 出 して,追 い込 み 漁 や 潜 水 漁 な どの漁撈 活 動 に 従事 して き た[羽 原

1963:159]。 本 稿 の調 査 地,沖 縄 県 石 垣市 登 野城 地 区 に は,糸 満 系 漁 民 の移 住 に よ っ て形 成 され た"漁 民社 会"が あ る。 石 垣 島へ の 糸 満 漁 民 の移 住 は 明 治10年 代 に 開始 さ れ る が,登 野城 地 区 に く アガ リグ ヤ>1)(東 小 屋)と 呼 ば れ る漁 民 部 落 が 形 成 され た の は,明 治30年 代 に な っ て で あ る[喜 舎場   1975:405;牧 野1975:34648]。 そ れ以 後,糸 満 に限 らず,宮 古 島,沖 縄 本 島 国頭 地 方,奄 美 諸 島 な どか らの来 島者 が 続 き, 漁 民 部 落 と して 発 展 した 。

  糸 満 漁 民 に 関す る研 究 は,漁 業 経済 史 や家 族 内 にお け る分業 体 系 な どの 視 点 か ら進 め られ て き て い る[河 上   1921;河 村   1939;仲 松   1944;羽 原   1963;野 口  1967, 1969]。 そ れ に比 べ,漁撈 活 動 にお ける漁 具,漁 法 な どの 技 術 的分 野 に 関す る研 究 は, 近 年 に い た る まで あ ま りと り上 げ られ て こな か った と い え よ う[前 川 ・上 江洲   1974;

野 ロ  1975;口 蔵   1977]。 しか しなが ら,昭 和40年 代 か らは漁 業 の近 代 化 が急 激 に                              進 み,追 い込 み漁 を は じめ伝 統 的 な潜 水

表1  登 野城 地 区 出 身地 別 人 口(1973年3月) (牧 野1975:26よ り)

出 身 地 別 旧 石 垣 市 宮 古 群 島 富 町

人 口 数

沖 縄 群 島 旧 大 浜 町 与 那 国 町

構 成 比

漁 法 は衰 退 の一 途 を 辿 る傾 向 が顕 著 に な って きて い る。 登 野 城 地 区 に お いて も, 潜水 漁 法 を営 ん で きた 漁 民 の な か か ら, 沖 合 で の一 本 釣 り漁 や 延 縄 漁 な ど へ と漁 法 の 転 換 を試 み る人 々が 出 現 して きて い

る。

  本 稿 で は,こ の よ う な事 態 を考 慮 して, わ ず か2週 間 とい う調 査 日数 で はあ った が,潜 水漁 法 の技 術 的 側 面 に焦 点 を あ て て 記 述 す る こ とにす る。 こ こで い う技 術 的 側 面 とは,漁 師 の海 の 地 形,海 産生 物 の 生 態 や 習性 に対 す る知 識,漁 場 の選 定 1)方 名の 表 記 は 〈  〉を 使 用す る。

(4)

須藤  サ ンゴ礁海域における磯 漁の実態調査中間報告(2)

方 法,お よ び そ れ らに基 づ い て な され る漁 法,用 い られ る漁 具 を さす 。

  調 査 は,昭 和51年11月10日 か ら25日 に か けて,端 信行(国 立 民族 学 博 物 館 第 三研 究 部)と 共 同 で お こな った。 こ こで あ つ か った基 礎 資 料 は,両 者 の 観察 と面 接 調 査 に基 づ いて い る。

  な お,本 報 告 は 「日本 の村 落 社 会 に お け る物 質 文化 の 地 域 的 比 較研 究 」(昭和51年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助金,一 般 研 究A  代 表 者:梅棹 忠 夫)の 報 告 の 一部 を なす もの で あ る。

Ⅱ .漁 場

  登 野 城地 区で 伝 統 的 な 潜水 漁 を営 む 漁 師 の活 動 海 域 は,石 垣 島 と西 表 島 の あい だ に 広 が るサ ン ゴ礁 の堡 礁(barrier  reef)で 囲 ま れ た 内海 で あ る(図1参 照)。 この 内 海

の水 深 は50mに もお よぶ と ころ もあ るが,漁 場 とさ れ る の はせ いぜ い 水深20mま

1.竹 富 島   2.黒 島   3.新 城 島   4.小 浜 島   5鳩 間 島    ・… ・… ・・サ ン ゴ 礁

図1活 海 域

537

(5)

国立民族学博物館研究報告3巻3号 で で あ る 。 主 に 漁 場 と さ れ る の は 島 の 周 囲 に 張 り 出 した 礁 湖(lagoon)お よ び堡礁 付 近 で あ る2)。 こ の 海 域 は サ ン ゴ の 発 達 が 顕 著 で,魚 介 類 や 海 藻 類 の 生 息 に 適 して お り, 漁 師 か ら く ク ウ ェ ー ミ〉(海 産 物 の 豊 富 な 海)と 呼 ば れ て い る 。 ま た,「 八 重 山 の 海 は お そ ろ し い,漁 師 を 食 わ せ て くれ る 」 と い う こ と ば か ら も う か が え る よ う に,こ の 内 海 は 漁 師 に と っ て 好 漁 場 と な っ て い る 。

  漁 師 の 活 動 海 域 は 次 の よ う に 分 類 さ れ て い る 。 サ ン ゴ 礁 が 外 洋 と境 界 を な す堡礁 の こ と は く ヒ シ 〉,外 洋 に 向 っ て お ち こ ん で い る 傾 斜 面(reef  slopc)は く シ ン ク チ 〉 と 呼 ば れ て い る 。 塗 礁 に あ る 外 洋 と 礁 湖 と を つ な ぐ水 路 は,〈 ク ム リ ィ ー 〉 と 名 付 け ら れ て い る 。 そ し て 墾 礁 か ら島 に か け て の 礁 湖 は く イ ノ ー 〉,堡礁 か ら礁 湖 に 張 り 出 し た 瀬 や 礁 湖 内 に点 在 す る 瀬,す な わ ち 礁 原 な い し礁 湖 礁(reef  fiat)は く ハ ン タ グ ワ ー 〉 と呼 ば れ て い る。 礁 原 か ら礁 湖 底 に か け て の傾 斜 面(lagoon  slope)は く ア ン ナ ゴ ワー 〉 と 名 付 け ら れ て い る 。 さ ら に,広 い 礁 湖 内 で,礁 原 が 隆 起 して な く,海 底 が 砂 地 で お お わ れ た 深 い 部 分 は 〈 チ ブ グ ワー 〉,そ れ に 対 して,海 岸 に 近 か っ た り,比 較 的 浅 い 部 分 は く ハ ー ガ イ 〉 と そ れ ぞ れ 区 別 さ れ て い る 。 前 者 は 干 潮 に な っ て も 水 が た ま り,水 深4〜5ヒ ロ(約9m)以 上 の 個 所 と さ れ て い る3)。

  こ の よ う に,漁 師 は 漁 場 と な る べ き 活 動 海 域 を堡礁 く ヒ シ 〉 を 境 に して,外 洋 く シ ン ク チ 〉 と 礁 湖 く イ ノ ー 〉 に 大 別 し,礁 湖 内 を 水 深 に よ っ て く チ ブ グ ワ ー 〉 と く バ ー

図2海

2)サ ン ゴ礁 の 海 域 に 関 す る 英 語 の 用 語 は,[WIENS  1962]に 基 づ く。

3)〈 チ ブ グ ワ ー 〉,〈 ハ ー ガ イ 〉 を こ こ で は,礁 湖 溜,干 上 り 礁 と そ れ ぞ れ 表 記 す る 。

(6)

須藤   サンゴ礁海域 におけ る磯漁の実態調査 中間報告(2) ガ イ 〉 と に細別 して い る(図2参 照)4)。

  石 垣 島 か ら西 表 島 に か けて の 広大 な礁 湖 で,登 野 城 の 漁 師 の活 動 範 囲 は,動 力 つ き の く サバ ニ 〉 で,片 道 の 所要 時 間 が,1〜1.5時 間 以 内 に 限 定 さ れて い る。 そ の 海 域 は ほ ぼ,小 浜 島 と新 城 島 を結 ぶ線 よ り石 垣 島側 で あ るが,と くに,竹 富 島や 黒 島 周 辺 は複 雑 に隆 起 した礁 原 が広 が って い る た め に,主 な 漁 場 と され て い る。 また,潜 水 に よ る突 漁 く アナ クジ ー 〉 の場 合,特 定 の地 形 を した 海 域 が 漁 場 とさ れ,漁 師 個 々人 が 既 に知 って い る岩 礁 を巡 回 す る とい う点 に漁 場 選 定 の 特 徴 が あ る とい え よ う。

Ⅲ .漁 業 暦

 八 重 山 諸 島 に お い て 海 に 関す る1年 は,旧 暦(太 陰 暦)で 数 え られ る。漁撈 活 動 も そ れ に基 づ き,風 位,潮 の千 満,海 産動 物 の 回游 な ど の諸 条 件 との関 連 で展 開 され る 。 漁 師 は魚 類 の時 期 的 な移 動 や生 息地,潮 のサ イ クル,季 節 風 な ど につ い て の 知識 を伝 承 的 ・経 験 的 に得 て い る。 これ らの知 識 に よ って,漁 法,漁 期,漁 場 が 決 め られ る の で あ り,1年 の漁 業 暦 は そ れ らの諸 要 因 を前 提 に して規 定 さ れて くるの で あ る(図3, 表2参 照)。

1.季 節 風 と 漁 期

漁 師 は漁 期 を風 との 関 係 で 次 の よ うに把 握 して い る。 旧 暦2月 に く ニ ング ァチ カ ジ 表2一 昭和50年度 月別水揚高(石 垣市役所水産課資料 より)

シ ヤ コ ガ ク ロ チ ョウ ガ イ マ ガ キ ガ カ セ ウ ガ

4)外 洋 を 表 わ す 方 名 に つ い て,口 蔵[1977=316]は くシ ン ク チ 〉 を く ア シ 〉 と くダ イ カ イ 〉 と に 細 分 して い る 。

(7)

国立民族学博物 館研究報告   3巻3号

図3漁

マ ー イ 〉 と 呼 ば れ る 北 か ら の 突 風 が 吹 く。 こ の 風 は 新 暦 の3月 中 旬 に,朝 な い で い て も風 向 き が 南 か ら 北 へ と急 変 し,1〜2時 間 で 天 気 が 崩 れ て 大 し け に な る た め 恐 れ ら れ て い る 。 し か し こ の 風 が 吹 き 始 め る と 漁 師 は 春 漁 の シ ー ズ ン の 訪 れ を 感 じ と る と い わ れ る 。 旧3月3日 は く ハ マ オ リ 〉 の 行 事 が お こ な わ れ る 。 こ の 日 の 干 潮 時 間 が 最 も 長 く,人 々 は 午 後 か ら 干 上 った 浅 瀬 づ た い に く ヒ シ 〉 の 先 ま で 出 か け て,貝 拾 い や ア オ ノ リ採 りを す る 。 旧4月 に 吹 く風 は く フ チ ャ ー ギ ン 〉 と い わ れ,高 い 波 を 伴 な う 。 旧5月 か ら は く ヘ ー ン カ ジ 〉(南 風)に 変 り,こ の 風 が 強 い と 風 下 の 島 影 に な っ た と こ ろ の 波 が 高 くな り漁 に 出 られ な い が,夜 は な ぎ の 日 が 続 く。 旧5月4日 の く ハ ー リ ー 〉 行 事 が 終 り6月 に 入 る と,「 鼻 の 穴 の 小 さ い 人 は 息 もで き な い 」 と い わ れ る ほ ど,

(8)

須藤   サ ンゴ礁海域 における磯漁の実態調査 中間報告(2)

〈 マ グ リ〉(べ た な ぎ)の 日が続 く。 この こ ろか ら夏 漁 の 時期 で く ア ギ ャー 〉 と呼 ば れ る伝 統 的 な追 い込 み漁 が最 盛 期 を む か え る 。

  また,〈 ハ チ ガ チ ター チ ャ〉 とい わ れ て,8月15夜 の2回 あ る年 は閏年 で,<ユ ジ キ 〉(同 じ月)と も呼 ば れ,海 の獲 物 が 多 い年 だ と漁 師 に 喜 ば れ る 。

  〈 ミー ニ シ 〉(新 しい 北風)が 吹 き始 め る旧8月 中旬 に な る と夏 漁 の シー ズ ン も終 り,旧10月 に は出漁 中 に 突然 台 風 の と き と同 じよ うな うね りが起 こる。 この く トビナ ミ〉(飛 び波)の 出現 が 冬漁 へ の前 ぶ れ とな る。 冬 季 に吹 く風 は,時 計 の針 と 同 じ く カ ジ マ ー イ 〉(風 廻 り)で,朝 方 に南 西 の海 上 に 白波 が 立 つ と,午 後 に は西 北 の 海 が荒 れ て漁 に は 出 られ な い 。11〜3月 は 北 風 の吹 く日が 多 く,こ の 時期 は礁 湖 外 の 漁 業 に適 さず,底 釣 り,延 縄 を専 門 にす る漁 師 が 出漁 で き る 日は1カ 月 の う ち12〜13日 だ とい わ れ る。

  以 上 で み た よ うに漁 師 は1年 の漁 期 を季 節 風 と波 を 目安 に3期 に設 定 して い る 。次 に これ らの漁 期 が海 産 生 物 の 回 游 ・成 長 とど の よ うな関 係 に あ るの か を み る こ とに し よ う。

2.  海 産 生 物 の 回 游,成 長 と漁 期

  当海 域 で 潜 水 漁 法 の捕 獲 対 象 とな る獲 物 は,そ の生 息状 態 に よ って 定 着 性 の 強 い も の と移 動 性 の もの とに分 け られ る。前 者 に は,タ コ,エ ビ,ウ ニ,貝 類,海 藻 類 な ど が,後 者 に は,イ カ と魚 類 が含 まれ る。 イ カの う ち,季 節 的 に礁 湖 内へ 回 游 して くる の は シ ロイ カ(ア オ リイ カ)と コ ウ イ カの2種 で あ る。 シ ロイ カ は5月 こ ろ礁 湖 に入 って海 底 近 くに産 卵 す る 。 この小 イ カ は7〜9月 こ ろ に は10‑20cmぐ らい に成 長 し,

〈 ク ワー イ カ 〉 と呼 ば れ て,夏 漁 の追 い込 み漁 の捕 獲 対 象 とな る。 コ ウイ カ も同 様 に, 11〜3月 に か けて,放 卵 す べ き特 定 の サ ンゴ を求 めて 礁 湖 内 を遊 泳す る。 冬 漁 は この

コ ウイ カ 突 きが主 要 な漁 とな る。

  この よ うな 回游 に よ る もの の ほ か に,定 着 性 の もの で もウ ニや モズ クな ど の よ うに, 乱 獲 防 止 の た め に禁 漁 期 間 を 指 定 さ れ た もの が あ る5)。 上 記 以 外 の定 着性 の 強 い海 産 生 物 に 関 して は,1年 中漁 が 可 能 とな る が,漁 師 は1種 類 の獲 物 を周 年専 門 に 捕獲 す る こ とは な い 。 夏漁 や冬 漁 の 期 間 中,回 游 して くる魚 類 の捕 獲 を専 門 に して い る漁 師 で も,海 上 の 状 態 や 潮 の サ イ クル を 考 慮 して,定 着性 の タ コ突 漁 や シ ャコ貝 採 集漁 に 従 事 す る こ とが あ る。

5)禁 漁 期 間 は 次 の と お り で あ る(1976年11月)。 ウ ニ:11月1日 〜3月 末 日,モ ズ ク:8月1日

〜2月 末 日,カ イ ジ ン ソ ウ:4月1日 〜7月 末 日,キ リ ン サ イ:1月1日 〜7月 末 日,ヒ トエ グ サ:7月1日 〜9月10日

(9)

                                    国立民族学博物館研究報告  3巻3号   した が って,漁 業 暦 は,漁 師 が移 動 性 と定 着 性 の 捕獲 対 象 物 を どの よ うに 組 み合 わ せ る か に よ って 決 定 され る と もい え よ う。 つ ぎに,漁 期 と密 接 に関 連 す る 潮 の 干満 に

つ い て み る こと に しよ う。

3.潮 の 干 満 の サ イ ク ル

  漁 師 が把 握 して い る暦 と潮 の 干 満 の 関係 に つ いて 述 べ る と,旧 暦 の1日 と15日 は 大 潮 で 潮 の 干 満 の差 が最 も大 き く,回 游 性 の 魚 類 を捕 獲 す るの に適 した時 期 で あ る。 夏 漁 で イ カの 追 い込 み をす る こ ろの 大 潮 の と きは,午 前10時 前 後 が大 干潮 とな る た め, 朝5時 に 出漁 して 昼 ま で に は帰 る。 イ カ は満 潮 の と き は余 り動 か ず,潮 が 引 い た と き に よ くとれ る。 そ れ は 引 き潮 の と き に礁 湖 溜 に 集 ま る か らで あ る。

  ま た,11月 か ら3月 に か けて コ ウ イ カ突 漁 の 時 期 は大 干潮 が夜 中 にな るた め,そ の 前 後 の数 日間 は くデ ン トウモ グ リ〉(懐 中電 灯 を 用 い る潜 水 漁)を く シ ン クチ 〉で お

こな う。

  これ らに比 べ て,タ コ突漁,ウ ニ や貝 類 の採 集 漁 は,潮 の 干満 とは さ ほ ど関 係 な く な され る。 そ のた め夏 漁 で イ カ の追 い込 み をす る時 期 は,大 潮 と小 潮 の それ ぞれ 前後 数 日間 は,追 い込 み 漁 と タ コ突 漁 が1週 間 ご とにお こな わ れ る。

  この よ うに,潜 水 漁 に従 事 す る漁 師 は,各 漁 期 に その 日の 潮 の干 満 の サ イ クル を 見 て,漁 の組 み たて を 決 定 す る 。

.潜

  〈 ス モ グ リー 〉 と 呼 ば れ る 伝 統 的 な 潜 水 漁 は,捕 獲 の 対 象 と な る 海 産 生 物 の 種 類 に よ って 多 様 な 形 態 を と る 。 現 在,石 垣 島 の 漁 師 が 営 ん で い る もの は,チ ー ム を 組 ん で お こ な う共 同 の 追 い 込 み 漁(〈 チ ナ カ キ ヤ ー 〉,〈 ア ギ ヤ ー 〉),敷 網 を 用 い る カ ツ オ の マ キ 餌 漁   (〈 ジ ャ コ トウ エ ー 〉)か ら,個 入 で お こ な う1本 ヤ ス を 用 い る 突 漁

(〈 ア ナ ク ジ ー 〉),さ らに,貝 類 や 海 藻 類 の 採 集 漁 な ど で あ る 。

  こ の う ち,登 野 城 地 区 の 漁 師 は,5〜6人 で お こ な う小 規 模 な 追 い 込 み 漁,タ コ や コ ゥ イ カ の 突 漁,ウ ニ,シ ャ コ ガ イ,モ ズ ク の 採 集 漁 な ど を 専 門 と して い る 。 こ れ ら の 漁 に 用 い られ る 舟 は,杉 板 を 張 り 合 わ せ た く サ バ ニ 〉 で あ る 。

  こ の 章 で は,潜 水 漁 の 実 態 を,魚 類 の 習 性 と生 息 地,漁 具,漁 法 に 焦 点 を あ て て 記 述 す る。

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須藤  サ ンゴ礁海域 におけ る磯漁の実 態調査 中間報告(2)

1.タ

  潜 水 漁 の 捕獲 対 象 と され る く タ ク ゥ〉 は,マ ダ コ(Octopus  vulgaris)で あ る。登 野 城 の 漁 師 が タ コ漁 をす る区 域 は,石 垣 島 の南 部 か ら竹 富 島,小 浜 島,黒 島 にか け て 広 が る礁 湖 内 や堡 礁付 近 で あ る。 タ コは岩 礁 の上 部 や 側面 に あ る穴 に生 息 す る習 性 を も つ 。 漁 師 は この穴 を探 し出す こ とが最 初 の仕 事 とな るが,広 い海 域 に は無 数 の穴 が あ るわ けで,そ れ らのす べ て に タ コが入 る と は 限 らな い 。

  彼 らは〈 タ ク ヌヤ ー 〉(「タ コの家 」)と 呼 ば れ る タ コの 入 りそ うな穴 を経 験 的 に 知 って お り,そ れ は岩 礁 の か っこ う(形 状),岩 礁 の ひ だ や穴 の形,穴 の 中 の様 子,海 藻 類 の 生 え 具 合 な ど で見 分 け られ る とい う。 「良 い 」 タ コ穴 の 条件 は つ ぎ に あげ る よ

うな もので あ る。

  ① 周 囲 が 砂 地 で,そ の 中 につ き出 て い る岩 礁 。   ②   入 口が 狭 くて 奥 が 広 くな って い る穴 。   ③ 海 水 の 出 入 りが良 く 「清 潔 」 な穴 。   ④ 長 い 海 藻 類 で お お わ れて ない 岩 礁 。

  ⑤   と くに,ま わ りに新 しい貝 や カ ニな どの殻 が散 在 して い る穴 。

この うち,④ と⑤ に関 して は,12月 〜2月 頃 にか けて 顕 著 にな る とい わ れ る。

  これ らの 知 識 に よ って見 つ け 出 した タ コ穴 は覚 え て お か な けれ ば な らな い。 タ コ の 習 性 で,タ コが 入 った こ との あ る穴 に は次 々 に別 の タ コが入 る傾 向 が あ る。 タコ穴 の 場 所 を覚 えて さ えい れ ば,定 期 的 に見 回 るだ けで タ コを捕 え る こ とが で きる か らで あ る。 この穴 を 確 認 す る 方法 が<ヤ マ ア テ グ ワー>(ヤ マア テ)一で あ る。 ヤ マア テ は岬, 山,木,岩 な ど の 目標 物 を 設 定 し,そ れ らの相互 関係 で海 上 の 自 己の 位 置 を は か り,

目的 個 所 を 探 りあて る技術 で あ る。 タ コ穴 探 しに用 い られ る 目標 物 は3点 を基 準 と し て な され る6)。 それ らの点 の設 定 の しかた は漁 師 に よ って 異 な り,た とえ ば石 垣 港 に 停 泊 中 の船 の マ ス トに1点 を あ て た た め に,次 に ヤ マ ア テを した ら船 が 出港 して しま って 場所 がわ か らな くな った とい う例 もあ る。 ま た,潮 の干 満 で 海 面 の 様子 が変 る の で,海 上 や 海 岸 の岩 を 目標 点 に 選 ん だ と き は,必 ず岩 と同 じ位 置 関 係 に あ る陸地 の 目 標物(木 な ど)に も合 わせ て お く。

  漁 師1人 が知 って い る タ コ穴 は300以 上 に もお よぶ が,ヤ マ ア テの 対 象 とな るの は 岩 礁 単位 で な され る。特 定 の岩 礁 の タ コ穴 を1個 記憶 してお けば,そ の 周辺 の タ コ穴 6)タ コ突 漁 で と られ るヤ マ ア テ は,外 洋 での 底 釣 り漁 にお け る それ と比較 す る と,目 標 物 を 至 近 距離 の もの に 設定 す る特徴 が あ る。 これ は,活 動範 囲 が礁 湖 内 とい うこ とに もよ るが,漁 師 が 海底 の地 形 を 経験 的 に知 って い るか らで あ る。 ま た,「 ヤ マ ア テ帳」 な ど とい う,ヤ マ ア テ に関 す る一 定 の技 術 を 伝 達す るた め の方 法 を と らな くて も,個 々人 の 知識 で 修 得 可能 で あ る。

(11)

国立民族学博物 館研究報告   3巻3号 はそ の穴 と の位 置関 係 で 探 し出せ る。 そ の た め,タ コ穴 の数 だ けヤ マ ア テ の 目標 点 を 設 定 す る 必要 は な く,中 心 とな る穴 を船 上 で お さ え れ ば,あ と は海 中 で岩 礁 の形 状 や 海 底 の 様 子で 近 辺 の穴 が わ か って くる。 タ コ穴 は個 人 の 占有 と され,他 入 に教 え る こ とは な い 。 た と え,親 子 ・兄弟 で 出漁 して も詳 し くは教 えず,個 人 の 力 で体 得 して ゆ

く性 質 の もの だ とい われ る。

  使 用 され る漁 具 は<イ ーグ ン>と 呼 ばれ る1本 ヤ ス で あ る。 これ に は 刃先 にか え し の あ る もの とな い もの とが あ り,前 者 が<カ ブ イー グ ン>,後 者 が<シ ー メー>で,                                   い ず れ も金 属 製 の 刃 に竹 の把 手

図4  〈イ ー グ ン 〉

が 装 着 さ れ て い る 。 タ コ漁 に 用 い ら れ る の は<シ ー メ ー>で, 全 長 は2〜3mで あ る 。 金 属 部 の 長 さ は 約70cmで,手 で 曲 げ られ る よ う に 柔 ら か くな っ て い る7)。 こ れ は 複 雑 な 形 の 穴 に 差 し 込 む た め の 工 夫 で,上 か ら 覗 い た だ け で は タ コ の 存 在 が 確 か め られ な い 場 合 で も使 用 で き る(図4参 照)。

  タ コ は 岩 礁 や サ ン ゴ と 同 じ色 を して い た り,穴 か ら手 や 眼 だ け を 出 して い た り,ま た 穴 に 出 口 が 何 個 所 か あ っ た りで,人 の 眼 を く ら ま す こ と が あ る 。 し か し,ど ん な 穴 に い る タ コ で も ヤ ス で 刺 さ れ れ ば,ヤ ス に か ら み つ き,ヤ ス を 入 れ た 穴 の 方 向 か ら逃 げ よ う と す る た め に 出 て く る 習 性 が あ る と い わ れ る 。 そ の と き,刺 し た ヤ ス を 引 い て タ

7)〈 カ ブ イ ー グ ン〉 の長 さ は,2〜3・8mと 巾 が あ り,使 用 され る地形 や捕獲 対象 物 に よ って 異 な る。 この ヤ スは,サ ンゴや 溝 に 入 った 魚 類 を突 いて 引 き 出す た め の もの で,刃 の 部 分 の長 さ は 〈シー メ ー 〉に較 べ て短 い(45〜55cm)。 把 手 の端 に ゴ ムの 輪 を つ けて 推 進力 を 強 め る工 夫 を こ ら した の もあ る。

(12)

須藤  サ ンゴ礁海域 におけ る磯漁の実態調査 中間報告(2)

コ の 頭 の 部 分 を つ か ん で タ コ の 歯(ト ン ビ)を ヤ ス で 砕 き な が ら 海 上 に あ げ,眼 と 眼 の 間 を 歯 で か み 切 る と タ コ は 逃 げ る 気 を 失 う と い う。 この 最 後 の ト メ が 難 し く,失 す る と 顔 や 手 に 吸 い つ か れ,漁 師 は 海 中 で タ コ と 「格 闘 」 す る 破 目 に な る 。 と き に は,

<

ミズ カ ガ ン>(水 中 メ ガ ネ)を 壊 さ れ た り,歯 で 傷 つ け ら れ た り もす る 。

  漁 師 は タ コ の 生 態 や 習 性 に つ い て い ろ い ろ 知 っ て お り,そ れ ら の 知 識 に 基 づ い て 突 漁 を す る 。 タ コ は 寒 く な る と 浅 い と こ ろ へ 移 動 し敏 感 に な る 。 そ れ に 反 し,他 の 海 生 動 物 の 動 き が に ぶ く な る た め,タ コ は エ ビ,カ ニ,小 魚,貝 な ど を エ サ と して 捕 え や す く な り,穴 の ま わ り に 食 べ 殻 を た く さ ん 散 ら し て お く と い う 。 ま た 冬 場 は,岩 に 付 着 して い る 海 藻 が 切 れ る 時 期 で も あ り,漁 師 に と って は タ コ 穴 を 見 つ け や す い 。 礁 湖 内 の タ コ の 腕 は き れ い に 揃 って い る が,外 洋 か ら 来 た タ コ の は 切 れ た も の が 多 り 。3 月 こ ろ の 春 先 に な る と 交 尾 が 始 ま り,オ ス と メ ス が 一 緒 に い る 場 合 が 多 い 。 こ の タ コ を<サ ガ ヤ ー タ ク ゥ>と い い,一 度 に2匹 捕 え られ る 。 こ の 場 合,オ ス が オ ト リに な

っ て メ ス を 逃 そ う と す る 習 性 が あ る と い う。 タ コ は 礁 原 の 側 面(<ハ ン タ グ ワー>) に 産 卵 し,そ の 卵 は ブ ドウ の 房 の 形 を し て い る 。 ま た,タ コ は 台 風 な ど で 海 が し け た 後 は 穴 に 良 く入 っ て い る 。

  礁 湖 の 外,4〜5ヒ ロ(約9m)よ り深 い と こ ろ に い る タ コ は,巣(タ コ 穴)を た な い で エ サ を 探 し て 遊 泳 して い る 。 この タ コ は 重 さ が4.5kgも あ り大 き い 。 礁 湖 内 で 獲 れ る タ コ の 重 さ は3kgど ま りで あ る 。

  タ コ の 値 段 は1年 中 ほ ぼ 一 定 で,1斤(6009)が250円 前 後 で あ る 。 冬 場 は1日 均10〜15匹 の 漁 獲 量 で あ る一

  以 上 み た よ う に,タ コ 漁 は 水 深5m以 内 の 礁 湖 を 主 な 漁 場 と して お り,用 い られ る 漁 具 は 水 中 メ ガ ネ と1本 ヤ ス で あ る 。 タ コ が 礁 湖 内 の 岩 礁 に 生 息 す る 習 性 か ら,こ の 漁 法 に お い て,タ コ穴 を 発 見 し,記 憶 す る と い う知 識 が,一 定 の 漁 獲 を 得 る た め に 不 可 欠 な 要 因 と な っ て い る 。

  マ ダ コ の 他 に 捕 獲 対 象 と な る タ コ に イ イ ダ コ(OctoPus  ocellatu∫)が あ る 。<ウ ム ザ ナ ー>と 呼 ば れ る この タ コ の 漁 法 に は3種 類 あ る 。 干 潮 の と き,干 上 っ た 瀬 に あ る 直 径2〜3㎝ の 穴 を 対 象 に な さ れ る 。

  ①   2〜3本 の ワ ラの 基 部 に 貝 や カ ニ の 肉 片 を つ け て 穴 に 入 れ て お く。 タ コ が 肉 片     に 食 い つ け ば ワ ラ が 動 き,タ コの い る こ と が 判 明 す る 。 穴 に ヤ ス を 差 し込 ん で タ     コ を 捕 獲 す る。

  ②   ニ コ チ ンを ビ ン に つ め,水 と 混 ぜ て 液 体 に す る 。 タ コ の い る 穴 に そ れ を 流 し込     む と タ コ が 出 て 来 る 。 そ の タ コ を 手 で つ か む 。 満 潮 の と き は,

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(13)

国立民族学博物 館砺究報告  3巻3号  ③ チ ョウセ ンフデ ガ イ を テ グ スや 細 紐 の 先 に つ け て,穴 の まわ りを 引 き まわす と     タ コが食 いつ く。 そ れ を 海面 に た ぐり寄 せ て手 で つ かむ 。

  な お,こ れ らの イイ ダ コ漁 は潜 水 漁 を 専 門 とす る漁 師 に限 らず,農 民 に よ って も盛 ん に な され る漁 法 で あ る。

2.貝 集 漁

  礁 原 や堡 礁,礁 湖 底 で の 貝 類 採 集 漁 は,シ ャ コ ガ イ,サ ラサ バ テ ィ,ヤ コ ウ ガ イ, ク ロ チ ョ ウ ガ イ な ど が 対 象 と な る 。 こ の う ち 周 年 漁 の 対 象 と な る の は シ ャ コ ガ イ で, 漁 獲 高 に お い て も貝 類 の 大 部 分 を 占 め る(表2参 照)。

  1) シャコ ガ イ

  こ の 海 域 で 漁 師 に よ っ て 分 類 さ れ る シ ャ コ ガ イ(<ギ ィ ー ラ>)は7種 類 に の ぼ る 。 こ の う ち,主 に 採 集 対 象 と な っ て い る の は4種 類 で,<ニ ー グ ゥ>,<ニ ー ワ ー>,

<

ス ー ク ワー>,<ウ ル ギ ィ ー ラ>と 呼 ば れ る 。 シ ャ コ ガ イ は 以 前 か ら潜 水 漁 の 主 要 な 漁 獲 物 と な っ て い た が,本 土 復 帰(1972年)以 後,と く に 需 要 が 増 加 した と い わ れ る 。 以 前 は 礁 湖 内 の 水 深4〜5mの と こ ろ で 採 集 さ れ た が,現 在 は,深 く潜 る 必 要 か

ら く フー カ ー>(潜 水 器)を 着 け る よ う に な っ た 。 漁 師 は シ ャ コ ガ イ が1年 にlcm ぐ らい し か 大 き く な ら な い か ら,こ の ま ま で は 全 滅 し て し ま うだ ろ う と 心 配 し て い る 。   シ ャ コ ガ イ は 種 類 に よ っ て 生 息 状 態 が 異 な る 。

  ① 岩 礁 に 基 部 か ら3/4ほ ど 埋 って い る も の 。<ニ ー グ ゥ>。

  ② 岩 礁 や 砂 地 に 基 部 の み が 付 着 し て い る も の 。<ニ ー ワ ー>,<ス ー ク ワー>,      <ウ ル ギ ィ ー ラ>。

  採 集 に用 い られ る漁 具 は,ゲ ン ノー(小 型 ハ ンマ ー)と バ ール(鉄 製 の ヘ ラ)で あ る。① の採 集 に は周 囲 の 岩 を 砕 くた め に,ゲ ンノ ーの 打 つ 面 が方 形 に な っ て い る 。

② の 場 合 はバ ー ル が多 用 され た が,現 在 で は ゲ ンノー を 改 良 して用 いて い る。 ゲ ンノ ニの 片 方 を平 た く して,シ ャコガ イ の 基部 に 当 て て,テ コの 作 用 で 岩 礁 か らは がす

(図5)。

  海 中 で の作 業 は労 力 が必 要 と され る た め に,ゲ ンノ ー にい ろい ろ な工 夫 が こ らさ れ て い る。 まず,そ の大 き さ は個 人 の体 力(腕 力)に 合 わ せ て決 め られ る。 大 き け れ ば 大 き い ほ ど,海 中 で の能 率 が あが る とい わ れ る が,腕 力 と同 時 に水 抵 抗 が 問 題 に な る。

打 つ面 を 方 形 にす る か 円形 にす る か で,水 抵 抗 が相 当違 い,後 者 の方 が少 な い が・ 反 面 岩 を砕 く場 合 は方 形 が適 して い る。 ま た,木 製 の把 手 の 先端 を,金 属 部 中 央 に差 し 込 む か,金 属 部 に 装着 す る個 所 を つ け る か に よ って も,把 手 の 強 さ が異 な る。潜 水 器

(14)

須藤  サンゴ礁海域に おける磯 漁の実態調査中間報告(2)

図5ゲ

を つ け る 人 と ス モ グ リの 人 と で は 用 い る ゲ ン ノ ー の 大 き さ が 異 な り,前 者 の 方 が 大 き い 。 こ の よ う に,シ ャ コ ガ イ 採 取 に 用 い られ る 漁 具 は,貝 の 種 類 に よ っ て,ゲ ン ノ ー と バ ー ル 併 用 か ら ゲ ン ノ ー 専 用 と い う具 合 に,漁 師 の 選 択 に よ って 変 化 し て き て い る 。   岩 か らは が し た 貝 を 入 れ る の に,直 径70cmの 竹 製 の カ ゴ(<バ ー キ>)が 用 い

られ る 。 古 タ イ ヤ の チ ュ ー ブ を 利 用 した ウ キ に こ の カ ゴ を の せ,綱 で 腰 に 結 ん で 海 中 の 作 業 中 曳 行 す る 。 殻 の つ い た ま ま採 集 さ れ た 貝 を こ の 中 に 集 め,船 ま で 運 ぶ の で あ る 。 港 に 帰 っ て 船 を 陸 揚 げ して か ら,貝 の 身 を 取 り 出 す 仕 事 が 始 ま る 。・ナ イ フ で 貝 柱 を 殻 か ら 切 り 放 し,臓 物 を 除 去 す る この 仕 事 は,妻 の 役 目 と さ れ て い る 。

 <ニ ー グ ゥ>は 以 前 か ら薬 用 と さ れ,ま た く ウ ル ギ ィ ー ラ>は 殻 が 碁 石 の 材 料 用 に 多 く採 られ て い た 。 現 在 で は,ビ ン詰 め の 塩 カ ラや 砂 糖 漬 け の 加 工 技 術 が 発 達 し た た め に,全 種 類 が 同 じ値 段 で 取 り 引 き され る 。 シ ャ コ ガ イ は 手 の か か る 作 業 の た め,最 近,専 門 に 採 集 す る 人 は い な く な っ た と い わ れ る 。

  シ ャ コ ガ イ は,1斤1,200円 の 値 段 が つ け ち れ て い る 。

547

(15)

国立民族学 博物館研究報告  3巻3号  2)  サ ラサ バ テ ィ(高 瀬貝)

 <ソ ー ム ン>な い しく チ ビ トガ ヤ ー>と 呼 ば れ,堡 礁 の 外 縁 部(<シ ンク チ>)に 生 息 して い る。 小 さい 貝 は 礁湖 内 の礁 原 な どに い るが,出 荷 対 象 に は な らな い。高 瀬 貝 は戦 前 か ら昭 和30年 こ ろま で は,ボ タ ンの 原 料 と して 多 く産 出 され た。 登 野 城 に限 らず 八 重 山諸 島 の 潜 水 漁 を専 門 とす る漁 師 は,船 団 を組 ん で フ ィ リピ ン,イ ン ドネ シ ア方面 に採 集 に 出か けて い た。 現 在 は装 飾 用 や建 材 の材 料 と して 台湾 に 輸 出 され て い る。4〜5ヒ ロの 水 深 まで潜 って手 で採 集 して い る。

  3)ヤ コ ウガ イ

 <ヤ クゲ ェー>と 呼 ば れ,塗 礁 の お ち こん だ 岩肌 に付 着 して い る。 この貝 が生 息 し て い る と こ ろは,緑 色 を お び た岩 の 周辺 に決 ま って い る。 水 深7〜8ヒ ロで,ス モ グ リで は 難 し く潜 水 器 が 用 い られ る。 大 き な の に な る とlkgも あ り,殻 も身 も出荷 さ れ る。 生 の ま ま ブ タを と らな け れ ば な らず,そ の方 法 は ブタを 紐 で 結 び,紐 の端 に お も りを つ けて下 に 向 けて 下 げ る。数 時間 た つ と巻 貝状 に な って い る殻 の 中 か ら身 が 出 て くる。 殻 も装 飾 品 と して 価 値 が あ るた めゆ で た りは しな い。 身 は1斤1,000円   4)マ ガ キ ガ イ

 <ピ ラ ジ ャー>と 呼 ばれ,礁 湖 の 砂地 に生 息 す る。小 型 の金 属 製 熊 手 で 採 集 。 ゆ で て 身 を と り出 し,身 だ けを 出 荷 。 陸 揚 げ され た貝 は海岸 に 臨時 に作 られ た 炉 で,半 分 に切 られた ドラム罐 を鍋 代 りに して ゆ で られ る。 全 長4〜5cmの 貝 か ら針 で 身 を と り 出す 作 業 は手 間 が か か り,家 族 総 出 で な され る。 この貝 が 出荷 さ れ る よ う にな った の は こ こ数 年 の こ とで,身 だ けで な く殻 の利 用 につ い て も検 討 されて い る段 階 で あ る 。 漁 師の な かで も採 集 が 簡 単 な こ とか ら,ウ ニ漁 の あ との冬 場 の漁 と して この貝 の 採 集

を専 門 にす る者 もでて きて い る。

5)  ク ロチ ョウガ イ

 <ヒ ィー ンク ゥ>と 呼 ばれ,礁 湖 や堡 礁付 近 の礁 原 に付 着 して い る。 生 息 区 域 が シ ャ コガ イ や タ コ とほ ぼ 同 じた め に,そ れ らの漁 の副 産物 と して採 集 され る。 漁 具 は シ ャ コガ イ採 集 用 の ゲ ンノ ーが 用 い られ る。 採 集 され た 貝 は一 定 の量 に な る まで 舟 だ ま り近 くの海 中 に生 か して お き,真 珠 養 殖 の母 貝 と して 出荷 され る。

  以 上 で み た よ う に貝類 採 集 漁 に おい て は,高 瀬員 か らシ ャ コガ イ,さ らに マ ガ キガ イ へ とい う採 集 対 象 物 の時 代 的推 移 が,ま ず特 徴 と して あ げ られ る 。 この背 景 に は八 重 山 海 域 に お け る海 産 資源 の枯 渇 化 とい う要 因 が あ る。 同 時 に,漁 場 が浅 海 か ら深 海 へ と拡 大 さ れ る につ れ て,ス モ グ リか ら潜水 器 を着 用 す る よ う にな って き た。 また, シ ャ コ ガイ採 集 の 盛 期 に お い て は漁 具 で あ る採貝 具 の改 良 も進 め られ た。

(16)

須藤  サンゴ礁海域における磯漁の実態調査中間報告(2)

いず れ にせ よ貝 類 の 採 集 は,資 源 の枯 渇 化 と新 種 類 の 開拓 とい う方 向 に 進 む傾 向 が う か が わ れ る。

  また,貝 類 の 場 合 は出 荷 す る ま で に多 くの人 手 を 必 要 とす る。 た とえ ば,海 中 で の 採 貝,陸 揚 げ して か らの 貝 殻 か ら身 の剥 離,臓 物 の 除 去 とい う作 業 が 伴 う シ ャ コガ イ の 場 合 の よ うに,家 族(主 に 妻)の 手 助 け を必 要 とす る。

  3.海 藻 類 採 集 漁

  登 野 城 地 区 の 漁 師 が 採 集 対 象 と し て き た 海 藻 は,モ ズ ク,キ リ ンサ イ,ヒ トエ グ サ, カ イ ジ ン ソ ウで あ る 。 現 在,最 も 水 揚 高 が 多 い の は モ ズ ク で あ る が,昭 和3b年 こ ろ ま で は,キ リ ン サ イ や カ イ ジ ン ソ ウ の 採 集 が 盛 ん で あ っ た 。 当 時,漁 師 は 八 重 山 群 島 の 海 域 は い う に お よ ば ず,南 方(フ ィ リ ピ ン,イ ン ドネ シ ア 方 面)に 船 団 を 組 ん で 出 か け た と い わ れ る 。 こ れ ら の 海 藻 は 高 瀬 員,ヒ ロ セ ガ イ と な らん で,南 方 に お け る 主 要 な 漁 獲 物 と な っ て い た 。 しか し,最 近 そ れ ら の 用 途 が 限 定 さ れ,値 段 も 引 き合 わ な く な って き た た め に,出 荷 を 対 象 に 採 集 す る 漁 師 は い な く な った 。 黒 島 や 小 浜 島 で は, 農 家 の 人 々 に よ っ て 農 閑 期 の 副 作 業 と し て 採 集 さ れ て い る 。

  そ れ に 対 し,こ こ10年 間 に モ ズ ク の 需 要 が 高 ま っ て き た 。 春 漁 の 対 象 と し て,相 の 漁 獲 高 と な っ て い る 。 前 に ふ れ た よ う に,海 藻 類 は す べ て 禁 漁 期 間 が 設 定 さ れ て い る 。

  1)モ   ズ   ク

  沖 縄 地 域 で 採 集 さ一れ るモ ズ ク は<ス ー 二>と 呼 ば れ,別 名 リユ ウ キ ュ ウ フ トモ ズ ク で あ る 。 本 土 の よ り太 くて 柔 らか い た め に 需 要 が 多 い と い わ れ る 。3月1日 に解 禁 さ れ7月31日 ま で が 漁 期 と な っ て い る が,3〜4月 の2カ 月 間 で 八 重 山 海 域 の モ ズ ク は 採 りつ く さ れ て し ま う。

  モ ズ ク は 水 深5m以 内 の サ ン ゴ 礁 の 岩,海 藻 の な か や 砂 地 に は え る 。 あ る 場 所 に は 群 生 して お り,潜 って 手 で す く う 。 潜 水 漁 法 の な か で 最 も 楽 な 仕 事 だ と い わ れ る 。 モ ズ ク の は え る 場 所 は,大 体 決 ま っ て い る た め,採 集 箇 所 を 記 憶 して お く必 要 が あ る。

陸 揚 げ さ れ た モ ズ ク は,他 の 海 藻 な ど の 混 り物 を 除 去 し,1斗 カ ン に 塩 漬 け に して 出 荷 さ れ る 。 値 段 は1カ ン2,500〜3,000円 で あ る 。

  2)キ リ ン サ イ

  〈 ブ ゥ ー ト ゥ>と 呼 ば れ,カ タ メ ンキ リ ン サ イ の1種 類 で あ る 。 生 き た サ ン ゴ に は       ダ

つ かず,潮 の流 れ の 激 し くな い,浅 い砂 地 や 岩 の 上 に は え る。 採 藻 の 最 盛 期 は夏(8

〜9月) 。 海 中 で は赤 褐 色 を して お り,手 袋 を つ け て ひ き ち ぎ る。 生 の う ちは柔 らか       549

(17)

国立民族学博物館研究報告  3巻3号 い が,船 着 場 な ど の コ ン ク リー トの 上 で 日 干 しに す る と硬 く な り,白 色 に 変 わ る 。   最 近 で は 黒 島,鳩 間 島,小 浜 島 な ど で 養 殖 もな さ れ て い る 。 漁 期 の 前 に,ホ ウ シ の つ い た 石 を 移 植 した り,生 き た サ ン ゴ を 壊 して ホ ウ シ を つ け た り して,繁 殖 の 場 所 を 作 っ て や る 。 ゼ リ ー を 固 め る菓 子 の 原 料,カ ン テ ン,ビ ー ル 製 造 時 の 材 料 と して 用 い られ る が,専 門 の 漁 師 に は 採 算 が 合 わ ず,農 家 の 人 々 が 農 閑 期 を 利 用 して 採 藻 し て い る 。

  3)  ヒ トエ グ サ

 <ア ー サ>(海 藻 の 総 称)と 呼 ば れ,ア オ ノ リの 一 種 。 干 上 が っ た サ ン ゴ 礁 の 岩 に 付 着 し て お り,全 長3〜4cm。1〜4月 が 採 藻 期 で,潮 が 引 い た と き に 指 で つ ま む 。 石 垣 島 に は 少 な く,竹 富 島,黒 島,小 浜 島 に 多 い 。 密 集 し て い る た め に 採 集 し に く く, 黒 島 で は,年 輩 の 女 性 が 一 日 が か りで,小 さ い カ ゴ に1杯 ぐ ら い し か と れ な い 。 ム シ

ロ の 上 に 広 げ,天 日 で 自 然 乾 燥 す る と 鮮 や か な 緑 色 に な る 。 雨 に あ て る と 白 い 斑 点 が で き て,味 も落 ち る と い わ れ る 。

  お 祝 い の 料 理 に は 欠 か せ な い 材 料 で,ト ー フ と と もに す ま し 汁 の 具 と して 食 用 に さ れ る 。 ま た,内 地 へ は ノ リの つ くだ 煮 の 原 料 と して 出 荷 さ れ て い る 。

  4)  カ イ ジ ン ソ ウ

 <ナ チ ャ ー ラ>と 呼 ば れ,浅 い 砂 地 に は え,1本 の 根 か ら上 部 は40‑50cmの き さ に 広 が る 。 採 藻 期 は と く に な く,手 袋 を は め て 採 集 す る 。 以 前 は 回 虫 除 去 の 虫 下 し と して 需 要 も 多 か っ た が,現 在 は 自 家 用 に 各 家 で と られ る だ け で 商 品 に は な っ て い な い 。

4.イ

  八 重 山 の 海 域 に は,1年 の 決 ま っ た 時 期 に 礁 湖 や 墨 礁 の 近 辺 を 遊 泳 す る イ カ が い る 。 潜 水 漁 法 の 捕 獲 対 象 と さ れ る の は,シ ロ イ カ と コ ウ イ カ の2種 類 で あ る 。 前 者 は 外 洋 の 水 深20m内 外 の 岩 礁 の 周 辺 を 遊 泳 して い る が,5〜6.月 に 礁 湖 に 入 って 海 底 に 放 卵 す る 。 後 者 は 産 卵 の た め に10〜11月 こ ろ 礁 湖 に 入 っ て く る 。

  1)  シ ロ イ カ 追 い 込 み 漁

  シ ロ ィ カ(ア オ リィ カ)は 産 卵 後1〜2カ 月 で 体 長12〜13cmに 成 長 す る 。 こ の 小 イ カ は<ク ワ ァ ー イ カ>(小 さ い イ カ)と 呼 ば れ,7月 中 旬 に な る と50〜100匹 と 群 れ に な り,飛 行 機 の よ う な 編 体 を くん で 礁 湖 内 を 遊 泳 す る 。 こ の 群 れ を 捕 獲 す る 漁 法 は       へ

く アギ ャー>と い わ れ る伝 統 的 な 追 い 込 み漁 で あ る が,現 在 この方 法 で イ カを 捕 獲 す る組 は登 野 城 地 区 に3組 しか ない 。 そ の う ちの1組 の漁 法 を 紹 介 す る こ とに しよ う。

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須藤  サ ンゴ礁海域 における磯漁の実態調査中間報告(2)

  1そ う の く サ バ ニ 〉 に6名 が 乗 り くみ,イ カ の 群 れ を 探 す8)。 イ カ は 潮 の 流 れ に の っ て 泳 ぐ た め に,潮 の 動 く と き が 漁 期 と し て 良 い 。 と く に 引 き 潮 の こ ろ,イ カ は 海 水 の た く さ ん あ る く チ ブ グ ワ ー 〉 に 集 る 習 性 が あ る 。 イ カ の 群 れ を 見 つ け る と,潮 の 流 れ を 考 慮 し て,網 を 設 置 す る場 所 を 決 め る 。5人 が 海 水 に 飛 び 込 み,1人 が 舟 を 操 作 して 網 を 張 る 。 舟 を 潮 の 流 れ て ゆ く前 方 に 係 留 さ せ,イ カ の 後 方 に 回 っ て,網 の 方 向 に 追 い 込 む 。 イ カ に 限 らず 海 の 動 物 は 海 の 経 験 が 浅 くて"弱 い 人"の 方 を 襲 っ て 逃 げ よ う と す る と い わ れ る 。 そ の た め 追 い 込 み の と き は 必 死 に な る 。 ま た 追 い 込 む 人 と 人 の 間 か ら も逃 げ よ う と す る の で,そ の 間 に 小 石 を 投 げ て お ど し な が ら輪 を せ ば め て ゆ く。 イ カ は 潮 の 流 れ る 方 向 に 進 む 習 性 が あ る た め,網 に か か る と 難 な く捕 獲 で き る 。 し か し,こ の 漁 は イ カ と の 知 恵 く らべ の よ う な も の で,イ カ の こ と を 知 ら な い と"バ カ に さ れ る"と い う 。

  イ カ の 追 い 込 み 漁 は 夏 場 の2カ 月 間 に お こ な わ れ る が,そ の 期 間 中,潮 の 干 満 の 差 の 大 き い 大 潮 の 前 後3日 間 が 最 適 で あ る 。 こ の 漁 に 従 事 す る 人 々 は,残 り の 日 は タ コ 漁 を す る の で,夏 漁 は 追 い 込 み と タ コ と り を1週 間 ご と に 繰 り返 す こ と に な る 。<ク

ワ ァ ー イ カ 〉 も9月 こ ろ に な る と20cmに 成 長 し,〈 ア カ ガ イ カ 〉 と 呼 ば れ る 。 こ の 時 期 に な る と く ミー ニ シ 〉 が 吹 き 始 め て,追 い 込 み 漁 も 終 り と な る 。

  追 い 込 み 漁 に よ る 漁 獲 物 の 分 配 法 は,〈 ア ミ ヌ モ ー キ 〉(網 主 分),〈 フ ニ ヌ モ ー キ 〉(舟 主 分),参 加 員 の 配 当 分 に3等 分 さ れ る の が 普 通 で あ る 。 こ の 組 の 場 合 は,長 兄 が 舟 と 網(ナ イ ロ ン製)を 提 供 し て い る の で,売 り 上 げ 金 か ら燃 料 費 を 差 し引 い て ・ 残 りを8等 分 し,長 兄 が 舟 主 分,網 主 分 を 加 え て3人 前,残 り の 各 人 が1人 前 ず つ と い うふ う に 話 し合 い で 分 配 して い る 。10年 前 ぐ ら い ま で は,5〜6そ う の 舟 と30〜40 人 の 参 加 に よ る 追 い 込 み 漁 も お こ な わ れ て い た が,最 近 は キ ョ ウ ダ ィ で 組 ま な い と 追 い 込 み 漁 は うま くや っ て ゆ け な い と い わ れ る。

  2)コ ウ イ カ

  コ ウ ィ カ は 毎 年 礁 湖 内 の 特 定 の 場 所(テ ー ブ ル サ ン ゴ)に 産 卵 す る 習 性 が あ る 。 そ の た め 良 い 場 所 を 知 っ て い る 人 は 貯 金 箱 を 持 っ て い る よ う な もの で,1匹12〜13kgの イ カ を 一 日 に5〜6匹 も捕 獲 す る 人 もい る と い わ れ る 。 放 卵 場 所 は 個 人 の 占 有 で 絶 対 他 人 に は 教 え な い 。 出 漁 の 際,誰 か に 跡 を つ け られ て い る こ と が 判 る と,別 の 方 向 に 行 って そ の 場 所 を ご ま か す 。 漁 期 は11〜3月 こ ろ ま で 続 く。 用 い られ る 漁 具 は,〈 カ ブ イ ー グ ン 〉 と呼 ば れ る 刃 先 に カ エ シ の つ い た ヤ ス で あ る 。 刃 の 部 分 の 長 さ45〜55cm, 把 手 部 は 竹 で 全 長2.5m内 外 で あ る 。

8)こ の くア ギ ャ ー 〉 の グ ル ー プ は,4人 の キ ・ ウ ダ イ と 彼 らの2人 の オ イ よ り構 成 さ れ る 。

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国立民族学博物 館研究報告   3巻3号

図6  タ コ突漁 の活 動範 囲

  3)  シ ロ イ カ 釣 り

  シ ロ イ カ が 体 長20cmぐ ら い に 成 長 す る8月 こ ろ か ら,月 夜 の 晩 に 礁 湖 で く イ カ ビ キ 〉 が な さ れ る 。 漁 期 は 夏 は8〜10月,冬 は12〜3月 に か け て で あ る 。 舟 の トモ に 1mぐ らい の く ツ リ ゾ ー 〉(釣 り樟)を 立 て て,そ の 先 か ら7〜8ヒロ(約12m)

の テ グ ス を た ら して 先 端 に 木 製 の く イ カ ギ ー 〉(イ カ の 擬 似 鉤)を つ け て 引 く。 擬 似 鉤 に は,エ ビ型 と魚 型 の2種 あ り,目 に ビ ー ズ 玉 を 入 れ た り,彩 色 した り し て 工 夫 が こ ら さ れ る 。 海 面 下20cmの あ た り に 沈 む よ う に 引 き 回 る 。 潮 の 動 き の あ る 大 潮 の と き が 良 く,と く に 満 潮 か ら干 潮 に か け て の 引 潮 時 に イ カ が 礁 湖 溜 に 集 る 。 そ こ を 舟 を 走 らせ て 釣 る の が コ ッ だ と い う。

  イ カ 釣 り の 技 術 は,明 治 期 に 鹿 児 島 か ら伝 え ら れ た と い わ れ る が,擬 餌 鉤 を 用 い て

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須藤  サ ンゴ礁海域における磯 漁の実態調査中間報告(2)

の漁 法 は戦 後 か ら発 達 した 。 イ カ釣 りは,潜 水 漁 を 営 む漁 師 よ りは,底 釣 りや延 縄 漁 を専 門 とす る漁 師 のあ い だ で お こなわ れて い る。

 以 上 で み た よ うに潜 水 漁 の 捕獲 対 象 と な る イ カは,追 い込 み に よ る シ ロ イ カ と突 漁 に よ る コ ー イ カで あ る。 コー イカ は冬 漁 の 主 要 な 漁 獲対 象 とな って い る。 ま た シ ロイ カ は,登 野 城 地 区 で 現 在,追 い込 み漁 の 唯 一 の 対 象 とさ れて い る。

V.  タ コ と り の1日

  11月16日 潜 水 漁 法 に よ る タ コ と りの実 態 を 同行 観察 す る機 会 を得 た 。 そ の と きの様 子 を記 述 す る こ とにす る(図6参 照)。

  船 揚 場 に 引 き あ げて あ る舟 を海 に降 ろす 作 業 か ら始 ま る。 潮 の干 満 の 加減 で,海 面 と船 揚 場 の高 さ との 差 が 大 き くて 船 の上 げ 降 ろ しが不 可 能 にな る時 間 が あ る。16日 の 朝 は干 潮 に あ た る た め,舟 は前 夜 の うち に降 ろ され て い た。

  午 前7時45分 出発 。 〈サ バ ニ 〉 に動 力 を つ けた舟 で約30分 後 に最 初 の漁 場 に着 く。

竹 富 島 の北 東 の沖 合 約300m。 ここを 選 ん だ 理 由 は南 西 の風 が 強 か った こと と,そ の時 間 は潮 が止 ま り,こ こで漁 をす る人 が い な い か らだ とい う。 ヤ マ ア テ を して 舟 の 位 置を 決 め,投 錨 。 朝 食 を とる。 漁 師 は皆,沖 で 朝 食 を と る習 慣 が あ る。 この 時 期 の 海 は,礁 湖 の 外 海 で は うね りが大 きい とき で も,礁 湖 内 は小 さな波 の 日 が あ る とい う。

  8時30分,第1回 目の潜 水 開始 。ウ ェ ッ トス ー ツ をつ け た上 に,12〜13kgの 鉛 の 帯 状 お も りを 腰 に しめ,足 に ヒ レを は く。水 中 メ ガ ネの くも りを 防 ぐた め に し ょう油 を ガ ラ ス部 分 に塗 る。 海 面 に古 タイ ヤの チ ュー ブ を ふ く らませ た 浮 き の上 に カ ゴを の せ, ゲ ンノ ー,ナ イ フを 入 れ る。 そ の浮 きに約10mの 紐 を つ けて 腰 に結 ぶ 。 右 手 に〈 シ ー メ ー 〉を 持 ち

,1本 の く イ ー グ ン〉 を カ ゴ に突 き刺 す 。 準 備 が完 了 す る と海 中 へ 飛 び込 み,ま ず 舟 の 周 囲 の岩 礁 に あ る タ コ穴 を チ ェ ックす る。往 路 は海 岸 に並 行 して 獲 物 を探 して 舟 か ら離 れ る。 そ の 行 動距 離 は舟 か ら約100mに 及 び,復 路 は往 路 の 沖 合 を帰 って くる。 全 長 約50cmの タ コ1匹 を捕 獲 し,第1回 目の作 業 時 間 は40分 。 舟 に上 が り,竹 富 島 の 海岸 と石 垣 島 側 の 目標 物 を 目 あて に5分 ば か り舟 を移 動 させ 投 錨 。

  9時20分,第2回 目の 潜 水 作 業 に か か る。舟 のす ぐ側 で タ コを 捕 え る。ヤ ス に刺 した タ コを 海 面 に上 げ,ヤ ス か ら外 して タ コの眼 と眼 の間 を 歯 で か み切 る。 そ の作 業 は タ コ の吹 き 出 した ス ミで一 面 が黒 くな った海 面 で お こなわ れ る。 元気 の な くな った タ コ を カ ゴの 中 に入 れ て,次 の獲 物 を求 め て 泳 ぐ。 行 動 距 離 は舟 か ら約50m,所 要 時 間

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国立民族学 博物 館研究報告   3巻3号 35分 で捕 獲 数2匹 。第3回 目は30分 の 作業 で タ コ1匹 。 この よ うに して竹 富 島 の 沖合

い を徐 々 に西 方 へ移 動 し,午 前 中5回 の潜 水 作 業 を試 み る。1回 の平 均 潜 水 作 業 時 間 は約35分,捕 獲 総数 は5匹 。11時30分 に昼 食 。

 12時5分,午 後 の 作業 を始 め る。 午 後 の 作業 は小 き ざみ に舟 を動 か しなが ら潜 水 を 繰 り返 す 。1回 の 作 業 数 カ所 の タ コ穴 を 見 回 る だ けで あ る。竹 富 島 の 北西 端 まで 達 す る と作 業 は終 了(図 中6の 位 置)。 そ の時 刻 は1時30分 で,そ れ ま で の潜 水 回 数 は 約 10回,捕 獲 数1匹 で あ る。

  帰 港 の途 中,今 日の 漁獲 が少 ない とい う こ とで 石 垣 港 の 防波 堤 で 潜水 を始 め る(図 中7の 位 置)。 舟 を係 留 させ,ヤ ス の み を持 って 飛 び込 み,防 波 堤 の波 打 ち ぎわ で作 業 を お こな う。 小 さい タ コを3匹 捕 獲 す る。所 要 時 間40分 。

  タ コ突 き漁 の作 業 にお い て,次 の こ とが 指摘 さ れ る。 午 前 中 の 潜水 と午 後 の そ れ と で は活動 範 囲や 作 業 内容 が異 な る。 午 前 中 は舟 を投 錨 した位 置 か ら50〜100mの 範 囲 内 の タ コ穴 を チ ェ ックす るの に対 し,午 後 は舟 を移 動 させ な が ら数 個 所 の穴 を 重 点 的 に見 て 回 わ る。 そ の 日の漁 獲 が予 期 した量 よ り少 ない と,特 定 の場 所 での 捕 獲 を 試 み る。 ま た,用 い られ る漁 具 は く シー メー>1本 の みで あ る。

VI.お

  サ ン ゴ礁 の海 域 で 営 まれ る漁撈 活 動 を,伝 統 的 な潜 水 漁 法 に み られ る技 術 的 側 面 か ら考 察 して きた 。今 回 の 調査 は短 期 間 で,し か も共 通語 を 使 用 して のデ ー タ収 集 とい う こ とで,予 備 調 査 の 域 を 出 る もの で は な い。 そ の た め こ こで は,次 の2点 を 指 摘 し て お くに と ど めた い。

  第1は,当 地 域 の 漁掛 活動 が,漁 期 に 制約 の あ る捕獲 対 象物 とそ うで な い もの との 組 み 合 わせ,お よび 潮 の干 満 のサ イ クル に よ って展 開 され て い る とい う点 で あ る。 し た が って,そ れ らの海 産生 物 の 生 息 地 や習 性 につ い て の 知識 を修 得 す る こ とが 一 定 の 漁 獲 を得 るた めの 前 提 とな って い る。 特定 の生 息 地 を 記 憶 ・発 見 す る技 術 と して ヤ マ ァ テが用 い られ る。生 息地 や ヤ マア テ の技 術 は,各 人 の 能 力 に よ って開 発 ・修 得 され る傾 向 が 強 く,個 人 の 占有 と され て い る 。 これ は活 動範 囲 が主 と して 礁 湖 内 に 限 られ て い る点 で,沖 合 い で の漁 業 にお け るヤ マ ア テ の内 容 とは性 格 を異 にす る。

  第2は,潜 水 漁 法 に 用 い られ る漁 具 の種 類 お よび そ の数 が少 な い とい う点 で あ る。

これ は捕 獲 対 象 物 の種 類 数 と も関 連 して い る が,獲 物 と捕 獲 者 との水 中 で の 距 離 を, 潜 水技 術 に よ って 比 較 的 自由 に保 て るか らで あ る。 そ の た め,特 殊 な装 置 や 補 助 具 を

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