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(1)

認知症高齢者の列車事故と不法行為責任・成年後見 制度のあり方 : 「JR東海列車事故第一審判決」が もたらすもの (佐藤信一先生・田中克志先生退職記 念号)

著者 宮下 修一

雑誌名 静岡大学法政研究

18

3‑4

ページ 576‑532

発行年 2014‑03‑31

出版者 静岡大学人文社会科学部

URL http://doi.org/10.14945/00007885

(2)

認知症高齢者の列車事故と不法行為責任.成年後見制度のあ

'方

―「JR東海列車事故第一審判決」がもたらすもの一

 

認知症高齢者の列車事故 と 不法行為責任・成年後見制度のあ り方

―「JR東海列車事故第一審判決」がもたらすもの 一

 本稿の目的と構成

本稿 の 目的

本稿 の構成

 認知症高齢者 による鉄道事故 と家族 に対す る損害賠償 請求の増加

認知症高齢者 による列車事故の増加

損害賠償 請求への家族 の対応  JR東海列車事故第一審判決 の概要

事案 の概要

判 旨

 JR東海列車事故第一審判決 の法的問題点

諸論

介護への関わ り方 と遺族 の責任 のあ り方

3 Y3の 「事実上の監督者」責任

4 Y3に よる 「事実上 の成年後見」

5 Ylの 「通知義務」違反

過失相殺  むす びにかえて

R東海列車事故第一審判決 に対 す る疑問一― まとめ

現実社会 との大 きな「溝」の広が リーー 「24時間見守 りなんて無理J

‑31(576)一

(3)

法政研究

本稿 の 目的 と構成 本稿の目的

わが国では、高齢イヒ率 (65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)

が年々上昇を続け、1970(昭 )年には7%を超えて「高齢化社会」 1994(平6)年には14%を超えて「高齢社会」、そして2007(平19) 年には21%を超えて、一般 には「超高齢社会」 と呼ばれる「本格的な高 齢社会」に突入 した1。 現在 もなおその数値は上昇 してお り、2012(平 20年には21%に達 し、実に国民の4分1が高齢者 となっている2。

このような状況の中で、認知症を患う高齢者の数も増加の一途をたどっ ている。例え│ま 厚生労働科学研究費補助金・認知症対策総合研究事業 の「都市部における認知症有病率 と認知症の生活機能障害への対応」 と 題する報告書によれば、2010(平22)年段階での65歳以上の高齢者の 認知症有病率の推定値は15%、 認知症有病者数は約439万人であると推計 されている(2012〔平成2〕 年段階では、462万人に及ぶ と推計されてい )。 また、将来的に認知症になる可能性がある軽度認知障害 (MCI)

の有病率の推定値は13%、 MCI有病者数は約380万人 と推計されている (2012〔平成24〕 年段階では、40万人に及ぶ と推計されている3)。 この 調査に関する新聞報道によれlよ65歳以上の4人1人が認知症 とその

予備軍"となる計算」であるという4。

1内閣府編「平成20年 高齢社会自書J(内 閣庶 2008年)2頁 2内閣府編「平成25年 高齢社会自書J(内 閣府、2013年)2〜3頁 。

3障生労働科学研究費補助金・ 認知症対策総合研究事業「都市部 における認知症有 病率 と認知症の生活機能障害への対応」平成23年度〜平成24年 総合研究報告書

(研究代表者・朝田隆)J(2013年)7〜9頁 。なお本報告書は、筑波大学付属病院精 神神経科のホームページで関覧可能である(http′/wwsukuba psycllla●メゅ‐

content/uploads/2013/06/H24Report Partl pdf〔 2014年 3月 1日現在〕)。

4日本経済新聞平成25年 6月 2日 付朝刊30面

- 32 (575) -

(4)

認知症高齢者のanl車事故と不法行為責任・成年後見制度のあり方―「JR東海列車事故第一審判決」がもたらすもの一 また、別 の新間では、2012(平24)年には認知症高齢者数が約550万 人、MCIの高齢者 が約310万人 と推計 されるとい う推計が報 じられてい

5。

このほか、2012(平 成24)年に厚生労働省老健局高齢者支援課認知症・

虐待防止対策推進室が公表 した「『認知症高齢者の日常生活 自立度』II以 上の高い者数について」によれば、介護保険制度 を利用 している認知症 の高齢者数は、平成22(2010)年度には280万人 と推計され、2015(平 27)年度には345万人、2020(平32)年度には410万人 と増加する見込 みであるとされている6。

以上のように、「超高齢社会」がよリー層進行する中で、まさにその

「超高齢社会」に突入 した2007年に発生 したのが、JR東海列車事故」で ある。 この事故は、91歳の認知症の男性がJR東海の管理する線路内に 立ち入って列車にひかれて死亡 したというものである。その後、2010(平 22)年になって、JR東海が男性の遺族に対 し、その事故処理により 発生 した費用に関して不法行為責任に基づ く損害賠償 を求めて訴訟を提 起 したところ、2013(平25)年 8月 9日 に名古屋地裁で下された第一 審判決において遺族に約720万円の損害賠償 を命ずる判決が下された(以

下では、この判決を「JR東海列車事故第一審判決」という 〔文脈 によっ て明 らかに同判決を指す場合には、「本判決Jと表現する場合 もある〕)7。

5読売新聞平成25年12月 11日付夕刊 1面 。なお、 この統計は、九州大学大学院医学 研究院が50年以上にわたって福岡県久山町で実施 している疫学調査 の一環 として調 査されたものである(現在は清原裕教授が主宰)。 認知症 に関する調査は、1985年 らほぼ 7年 ごとに行われている。調査の状況については、九州大学大学院医学研究 院環境医学分野・久山研究室のホームページを参照(ア ドレス:http″n曜lllmed med ttushu u ac」ノ 〔2014年3月 1日現在〕)。

6厚生労働省老健局高齢者支援課認知症・虐待防止対策推進室 「『認知症高齢者の日 常生活 自立度J II以上の高齢者数についてJ(2012年 8月24日公表)(アドレス:htt,〃

wwwmHwgOjp/stf houdo″ 2r9852000002iaul at′ 219852000002iavi pdf〔2014年 3月 1日現在〕)。

7名古屋地判平成25年 8月 9日判時2202号 68頁

(平22年 (フ)第819号)。

‑33(574)一

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法政研究 (2014年)

本判決 は、 当初 はあま り報道 されなかったものの、認知症 の男性 を介 護 していた長男 について成年後見人 と同視 しうる事実上 の監督者である にもかかわ らず 「目を離 さず に見守 ることを怠 った過失 」力`あった とい う厳 しい判断を下 した こともあって、次第 に地元紙等 を中心 に大 きな報 道がなされ るようにな り8、 社会問題化することになった。

法律 の面か らみて も、本判決で展開 された不法行為責任 に関する論理 構成やその結論の妥当性 には、後述す るようにい くつかの疑間が存在す る。 そこで本 稿では、 まず この「JR東海列車事故第一審判決」につい て、 そこで展 開された論理構成 について民法学 の立場 か ら検証す るとと もに、判決 を取 り巻 く状況 をふ まえて同判決の導 いた結論の妥当性 を検 討す ることにしたい。 また、 その検討 を前提 として、同判決 が不法行為 責任や成年後見制度 のあ り方 に与 える影響 についても考察 することにし

よう。

2.本稿 の構成

本稿では、 まず二 において認知症高齢者 の立 ち入 りによる列車事故の 増加 とそれ を理 由 とする遺族 に対する損害賠償請求訴訟 の増加 の現状 に ついて紹介 す る。

続 いて三 において 「JR東海列車事故第一審判決Jの概要 について紹 介す るとともに、四 においてその論理や結論 をめ ぐる法的な問題点 につ いて検証 する。 その うえで、最後 の五では、本判決が今後 の介護や成年 後見の現場等 に与える社会的影響 について も考 えてみ ることに したい。

8例えば、中 日新聞2013年 8月29日付朝刊23面 。

‑34(573)一

(6)

認獅症高齢者の列車事故と不法行為責任 成年後見制度のあり方―「」R東海列車事麟 一審判渕 がもたらすもの一

認知症高齢者による鉄道事故 と家族に対する損害賠償請求の増加 認知症高齢者による列車事故の増加

―で述べたように、認知症を患った高綸者 の数が増加するのに比例 し て、 これらの高齢者が事故に巻き込 まれるケースも増えてきている。

ある新聞報道によれば、認知症またはその疑いのある者の鉄道事故は、

2005(平17)年から2012(平24)年にかけての8年間で149件発生 し てお り、それによって115名が死亡 している。その中で、鉄道会社が事故 によって生 じた営業上の損害について遺族に対 して損害賠償請求をした ケースも増加 してきている。例え│よ 同報道で把握された10件の事故の うち、損害賠償 の請求をしなかったものが5作存在するが、逆 にしたも のも5件存在する (【表】を参照)。 具体的な損害の内容は、事故処理に あたった社員の時間外賃金あるいは振替輸送費などである9。

これから検討する「JR東海列車事故第一審判決」は、 この種の事案 で最初に公表 された裁判例であるばか りではな く、他の事件に くらべる と損害賠償の請求額が多い うえにそれが全額認容されたという点からも 非常に注 目さ才じる。

9以上の記述については、毎 日新聞平成26年 1月12日付朝刊 1面 による。

‑35(572)一

(7)

表】認知症の人の事故と鉄道会社の対応例

JR>

※いずれも遺族や関係者への取材による。請求額 と影響人員は概数。

R東海の事故は、同社が遺族に賠償を求めて提訴 し係争中。

事故年月 鉄道会社 遺族への請求額 運休本数 影響人員 20074F12月 R東 720万 円 34本 2万7,400人

2009左F5月 R九 請求な し 6本 1,200人

2010左F9月 R東日本 請求な し 8本 1,900人

2011年 1月 R西日本 請 求 な し 30冽 1万7,000人 2011年 7月 R北海道 請求 な し 37イ 1フ500ノ

くその他>

事故年月 鉄道会社 遺族への請求額 運休本数 影響人員 2005年12月 80万 円 12本 5,000ノ 2009年11月 請求な し 3体 9万3,000人 2011年6月 16万 円 6本 3,900人 2012年3月 137万 円 52月 2万1,000人 2013年 1月   80万 33冽 1万5,000人

法政研究 (2014年)

(上記の表は、毎 日新聞平成26年 1月12日付朝刊1面に掲載された表 の体裁を修正 したものである。)

‑36(571)一

(8)

認知症高齢者のall車事業と不■行為責任 鰤 度のあり方―fJ R東海列車事故第一審判測 がヽたらすもの一

損害賠償請求への家族 の対応

1でと りあげたの と同 じ新間 に掲載 された記事 によると1。、本稿 で と りあげる」R東海 の列車事故以外 の4件の事件 では、いずれ も遺族 が損 害賠償金 を支払ってい る (ただ し、 うち2件は双方の協議 で減額 されて い る)。

例 えば記事 の中では、2012(平24)年3月 6日 に東武東上線で認知 症 の女性 (75歳)がはね られて死亡 したが、 その2カ月後、東武鉄道 か 137万円余 の損害賠償 を求める連絡があった とい うケースが紹介 されて いる。 この事案で は、間 に入 った弁護士が尽力 した結果、最終的 には鉄 道会社 が事故処理 の人件費 な ど自社分 の請求 を放棄 し、遺族 が代替輸送 分 の63万 円余 を支払 うことで和解 が成立 した との ことである。

損害賠償金 を支払 った他 の3件の事案 については、新聞報道 か らは最 終 的に和解 で処理 したのか否 かは判然 としない ものの、おそ らく和解 が 成立 しているのではないか と推測 され る。 その意味でも、最後 まで鉄道 会社 と遺族が争 った 「JR東海列車事故第一審判決」のケース は、異例 の展開 をた どって きた とい うこともで きるであろう。

  R東海 列 車事 故 第 一審 判決 の概 要

それでは、社会的にも注 目を集めている」R東海列車事故第一審判決 は、どのような事件であったのだろうか。事案も判決理由も複雑なため、

やや長 くなるがそれらを順に説明することにしたい。

Ю毎 日新聞平成26年 1月12日付朝刊1面お よびる面。

‑ 37 (570)一

(9)

法政研究 (2014年

事案 の概 要

図】事案の概要(人物関係)

本判決の事案は、以下の通 りである(登場人物の関係 については 【図】

を参照)。 解説の僣官に供するため、それぞれの時間 ごとに丸数字を付し たうえで、重要な事実については下線を付すことにしたい。

①かつて不動産会社を営んでいたAは、妻のYlと の間に、長女B・ Y2・ 長男Y3・ 三女Y4・ 次男Y5の 5名 の子 どもを設けたが、いず れも独立 したため、1982(昭 和57)年以降は、自宅のある愛知県でYl

2人で暮 らしていた。

2000(平12)年に、84歳になったAは認知症を発症 した。

2002(平14)年3月 に、Yl・ Y3・ Y4の 3名の子 とY3のCは Aの介護について話 し合いを行つた(判決では、これを「家族会議IJ と称する)。 なお、CはY4の同級生である。話 し合いの結果、当時 80歳Ylが1人で介護するのは困難なことから、ホームヘルパーの

X(」 R東)

くり 「損害賠償請求

C===Y3  Y5 B

(長)

すでに 死亡

Y2

(二)

Y4

(三)

(Yo (長)(二)

高校の同級生

‑38(569)一

(10)

認知症高齢者の列車事故と不法行為責任城年後見制度のあり方―「JR東海列車事故第一審fll決」がもたらすもの一 研修 を受 けて介護施設 に勤 めるY4の意見 もふ まえ、C(自 らも困難

な病 を抱 える)が単身 でA・ Yl宅の近 くに転居 して介護 す ることに 決定 した。 なお、 5人の子の うち、Y2は、愛知県 内の別 の市 に居住 してお り、 A・ Ylと 月 に1回食事会 をす ることはあったが、介護 に は関与せず、上記 の会議 には参加 していなか った。 また、Y5はヽ上 記 の会議開催時 には関東地方、後述す る事故時 には ドイツにそれぞれ 在住 していた こともあ り、や は り介護 には関与せず、会議 にも参加 し ていなかった。

2002(平14)年 8月に、Aは「要介護1」 に認定された。 また、同 年の8月 から9月 にかけて腕の骨折が原因となった慢性心不全の悪化 により入院 したが、その結果、認知症の悪化をうかがわせ る症状がみ られるようになった。結局、9月 に退院 したが、月1回病院へ通院す るとともに、週6回介護施設に通所するようになった。その後、12月 になって、Aは「要介護2」 に変更されることになった。2003(平 15)年に入ると、Aには人物の見当識障害が現れるとともに、外出を したがるようになった。2005(平17)年8月 に入って以降、Aは 1

人で外出し、徘徊 して行方不明 とな り、保護 されることもあった。

⑤2003(平 成15)年12月 に、Cはホームヘルパー2級の資格を取得 した。

また、翌2004(平16)年 3月 には、Y4が介護福祉士の資格を取得 し、週2回程度、Aの介護を行 うようになった。

⑥ さらに、Ylも麻痺拘縮などがみられ、 またときお りひどい物忘れを することもあって、2006(平18)年 1月 には、今度 は■1が「要介 lJに認 定 され た。

⑦その後 も、Aは徘徊 を繰 り返 した。Aと Ylの居住する建物は、 自宅 とかつてAが経営 していた不動産会社の事務所がつながって7D・り、入 日は自宅 と事務所 に2カ 所存在する。その後、ェ3は、 自宅の玄関に センサーを設置するとともに、Aが外出しないように、建物 と門扉の

‑ 39 (568)一

(11)

隙間 を波 トタ ンでふ さい だ り、門扉 に施錠 した りしたが、門扉 を激 し く揺 す った り、足 をか けて乗 り越 え ようとした りして危 険 なので施錠 は とりやめた。 もっ とも、事務所側 の出入 回は、 日中は開放 されてお り、かつ、以前か ら設置されていた来客用のセンサーの電源が切 られて いたため、Aが事務所 の出入日から出入 りすることもしばしばみ られた。

2007(平19)年 2月 に、Aは「要介護4」 に認定 されるとともに、

「認知症高齢者 自立度 Ⅳ」 と判定 された。後者の判定は、日常生活 に支 障 を来す ような症状・ 行動や意思疎通の困難 さが頻繁 にみ られ、常 に 介護 を必要 とす る、常 に目を離す ことがで きない状態 の場合 に行われ る。 これを受 けて、Y3・ Y4・ Cの3名Aの介護 に関す る話 し合い がもたれた (判決 では、 これ を「家族会議 Ⅱ」 と称 す る)。 この話 し合 いでは、Bを特養 (特別養護老人ホーム)に入所 させ ることも検討 さ れた。 しか しなが ら、「特養 に入 れればAの混乱 はさらに悪化する。A

は、家族 の見守 りのもとで、自宅です ごす能力 を十分 に保持 している。

特養 は入居希望者 が非常 に多いため、入居 までに少 な くとも2〜 3年 はかかる」 とい うY4の意見 をふ まえて、Aを引 き続 き在宅で介護す る ことに決定 した。 もっ とも、Y3ら は、ホームヘルパーの依頼 を検 討す ることな どは特 に しなかった。

2007(平19)年12月 7日 の16時半 ころ、Aは介護施設か ら送迎車で 帰宅 した。 その後、事務所 でCやYlと休憩 したが、17時くらい まで の間 に、Cが自宅玄関先 でAが排尿 したダンボール を片付 け、Yl至

まどろんでい る隙 に、Aは外 出 した。CとYlは、 自宅 の周囲 を探す が、最寄 りの甲駅 まではAを探 しに行 かなかった。 その後、Aは、甲 駅の隣の乙駅で、X(JR東 )の運行する列車 にはね られて死亡 し た。

⑩2008(平 成20)年5月 になって、Xは、Aの 遺族に宛てて損害の処理 について話 したい旨の書簡を送付した。その後、同年6月 Aの遺族

- 40 (567) -

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認知症高齢者列 車事故と不法行為責任 成年後見制度のあ,方―「JR東悔列車事故第一審判決J力

'もたらすもの一

の弁護士か らXに宛てて、Aが事理弁識能力 を欠いていた旨の返書 と 意思伝達能力 を欠 く旨の医師の診断書が送付 された。

2008(平20)年10月に、Aの相続人の間で遺産分割協議が成立 した。

遺産は、不動産を除 く金融資産の額面だけで5,000万円を超えるもので あ り、Ylは もっぱら不動産 を、Y3は主 として不動産 を、Y5はもっ ぱら金融資産 を、Y2と Y4は金融資産 と不動産をそれぞれ取得するこ とになった。

⑫事故か ら3年近 くを経過 した2010(平22)年になって、XはYl

Y5の 5名を次 の2つの理 由で提訴 した。

[1]Ylらが事実上 の監督者 にあた ることを理 由 とす る民法714条 (責 任無能力者の監督者責任)または709条 (一般不法行為責任)に づ く損害賠償請求 (以下、半」例 を引用す る場合 を除 き、特 に断 りの ない限 り、条数のみ を示 している場合 には民法 の条文 を指す)

[2]Aに発生 した709条に基づ く損害賠償請求権 をYlらが相続 した こ とを理 由 とした損害賠償請求

判 旨

本判決 の判 旨は多岐 にわ たるが、いずれ も重要 な判断 を含んでい るの で、若千 の解説 を加 えつつ、項 目ごとに紹介 してい くこととしよう。

(1)Aに発生 した709条に基 づ く損害賠償請求権 をYIらが相続 した こと を理 由 とした損害賠償請求 (l⑫の請求 [2]に関連)=[亙]

本判決で は、Aは、事故 当時、鉄道 の線路内に立 ち入 ることが 「法律 上違法 なもの として非難 され法的責任 を負わ され得 るものであることを 弁識する能力 を有 していなかった」 として、Aの責任能力が否定 された。

そのため、A本人 は不法行為責任 を負 わ ないため、 それ をYlらが相続

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(13)

法政研究 (2014年)

す る こ ともない と して、Aの主 張 を排斥 した。

9)事実上の監督者責任 (714条 2項準用/1⑫の請求 [1]に関連)

=Y3は肯定

0)で述べたように、A本人の不法行為責任は否定されたが、それ とは 別に、Ylらが本人 とは別 に独 自に負 う義務に違反 したことを理由 とす る不法行為責任の可否が問題 とな りうる。本判決では、まず中心的に介 護を行っていたY3について、714条 2項」の代理監督者の規定を準用し て事実上の監督者責任 を課すという判示をした。以下では、そのような 判示がなされるにいたった論理の展開を確認 しておこう。

(i)家族会議によるAの状態の把握 とY3による介護方針の決定 まず本判決は、Aには、事故当時、責任能力はなかったが、その基礎 となった「諸事実に係 る情報は、……家族会議Iが行われた平成14年3

Cにとどまらず、Y3及Y4においても基杢的に人有 していたJと指摘 する。

その うえで、この家族会議I・ Ⅱの内容やY3の供述 をふ まえると、「家

の もの として尊重 しつつ も、Y3において最終的 に方針 を決断 し決 定 し たものであった とみ ることがで きるJとい う。

このよ うに、中心的 に介護 を行 って きたY3はAの状態 を把握 した うえで、 その介護方針 について自らが決断 していた とい うことを強調す る。

CD「事実上の成年後見Jの存在

続いて本判決は、Aは成年後見制度に関する手続 は受けていないもの

- 42 (565) *

(14)

認知症高齢者列 車事まと不法行為責任.成年後見制度のあ,方―「」R東海列車事故第一審判渕 がヽたらすもの一 の、Y3が Aの「事実上の成年後見」 を行 い、財産管理 をしていた と指 摘 す る。実際 に、Aが自宅以外 に「不動産 と多額 の金融資産 を有 して」

お り、「その中には、コンビニエ ンスス トアのフランチ ャイザーに賃貸 し ている土地や、平成15年Y3及Ylの共有名義の建物 が建築 された敷 Jも存在する。「しか しなが ら、認知症の症状 が進行 していたAに委任 や同意 をす るための意思能力があった とは認 め難 いか ら、 これ らのA名

義 の財産や収入 をYlら において適切 に管理 す るためには、本来 は成年 後見 の手続 が執 られて しかるべ きであった といえるが、本件 においては、

成年後見 の申立てがされ ることがない まま、実質的にはその手続 が執 ら れているの と同様 にAの財産 が管理 されていたもの とみ ざるを得 ない。」

さらに、上述の状況 をふ まえれば、「Aの重要 な財産 の処分や方針 の決 定等 をす る地位・立場 は、Aの認知 症発症後 はA本人か ら長男であるY3

に事実上 引 き継 がれたもの と考 えることになる」 とい う。

llul「事実上 の監督者」論

上記 の(1)・li)の状況 をふ まえて、本判決 では、Y3が責任無能力者 の 監督者責任 を定 めた714条 1項にい う監督者 と同視 しうる「事実上の監督 者」であった ことを強調す る。

「本件事故当時の工3は、社会通念上、民法714条 1項の法定監督義務 者 や同条2項の代理監督者 と同視 し得 るAの事実上 の監督者 であった と 認 める ことがで き、 これ ら法定監督義務者 や代理監督者 に準ずべ き者 と してBを監督す る義務 を負 い、 その義務 を怠 らなかった こと又 はその義 務 を怠 らな くても損害 が生ずべ きであった ことが認 め られ ない限 り、 そ の責任 を免れない と解 す るのが相 当である。J

その一方で、Y3以外の子やYlは「いずれ も上記 のようなAの事実上 の監督者 であった と認 めることはで きないか ら、同条 に基づ く責任 を負 わせ ることはで きない」 と判示す る。

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(15)

法政研究 (2014年)

llll Y3の 免責可能性

仮 に、「事実上の監督者」 とい う形で714条 1項が適用 され る可能性が ある場合であつても、同項 ただ し書に基づ き、監督 (義)者が 「その

義務 を怠 らなかった とき」 または 「その義務 を怠 らな くても損害が生ず べ きであった とき」は免責される。本判決の事情の もとで問題 となるの

は、Ylらが監督義務 を怠 らなかった といえるか否 かである。

ここで本判決 は、la)事故の予見可能性 と(bl事故 を避 けるための適切な 介護 の実現可能性 の有無 を検討 している。lb)について は一種 の結果回避 義務違反 とい うことがで きよう。その意味では、監督義務違反の有無は、

通常の過失 (=行為義務違反)の有無の判断 と同様 の形 で行われている と考 え られる。

予見可能性

まず、 この(→予見可能性については、次のように述べて具体的な予見 までは不要 とする。

「そもそも過失が認められる前提 となる予見可能性は、諸般の学晴を考 慮 して、他人の生命、身体、財産 に危害を及ぼす危険を具体的に予見す ることが可能であれば足 り、線路内に立ち入って電車にひかれるという 具体的な本件事故の態様 そのものについて予見することができなかった としても、直ちに責任を免れることにはならないというべきである」。逆 に、Y3と してはヽ本件各徘徊後 に玄関セ ンサー を設置 した としても、

その他 は単 にC及YlにAの様子 を見守 らせ てお くとい うだけでは、堂 に目を離す ことがで きない状態 とされているAがC及Ylの目を離 し た間 に自宅か ら外 出 して徘徊 し、 その結果、A自身 の生命や身体の危険 はも とよ り、Aが本件事故の ように線路 内に侵入 した り、他人 の敷地内 に侵入 した り、公道上 に飛 び出 して交通事故 を惹起 した りなどして、他 人の生命、議ヽ 、財産 に危害 を及 ぼす危険性 を具体 的に予見す ることは

‑44(563)一

(16)

認知症高齢者の列車事故と不法行為責任 成年後見制度のあ)方―「JR東海列車事故第一審判決J力iもたらすもの一 可能 で あ った とい うべ きで あ る。J

lb)適切 な介 護 の実 現 可能性

次 に、0適切 な介護 の実現可能性 について は、本判決 ではその ような 文言 は直載 には用い られていないが、Aが誰 も知 らない間 に外出す るこ とを防止す るための適切 な介護 が実現で きていたか否 かが検討 されてい る。 ここでは、Aの経済的 な事情 も考慮す る と、在宅介護 の態勢 を強化 す る可能性 があった とい うことを理 由 として、次のような形で否定する。

「工0と しては、なお も在宅介護 を続 けるのであれば、A宅の近 くに住 み、介護保険福祉士 として登録 されていたY4にA宅を訪間す る頻度 を 増やす よ う依頼 した り、民間のホームヘルパ ーを依頼 した りす るな ど、

Aを在宅介護 してい く上で支障がない ような対策 を具体 的に とることも 考 えられたのに、その ような措置 も何 ら講 じられていない。そして、■1

らがAから多額 の相続 を受 けてい ること……か らも明 らかな とお り、本 件事故当時 におけるAの経済状態 は、民間の介護施設やホームヘルパー を利用す るな どして も十分 に余裕 があったものであ り、経済面での支障 は全 くうかがわれない。J

l■)結

以上の点 を考慮 して、本判決 は次 の ように結論づ ける。

Y3が Aを監督 す る義務 を怠 らなかった と認 めることはで きない し、

Y3が同義務 を怠 らな くて も損害 が生ずべ きであった と認 め ることもで きないか ら、Y3はヽ その他原告が主張す る注意義務違反 について判断 す るまで もな く、民法714条2項の準用 によ り、本件事故 によるXの損害 を賠償 す る責任 があるとい うべ きである。J

‑45(562)―

(17)

0)一般不法行為責任 (709条/1⑫の請求 [1]に関連)一 Ylは肯定 2)で述べた「事実上の監督者責任」が成立 しない場合であっても、709 条にいう一般の不法行為責任の成否が問題 となる (X側からは、むしろ 714条よりも先に709条に基づ く責任の有無が主張されている)。 本判決で は、714条2項に基づ く責任が認められたY3以外の家族、すなわち妻の Ylと子のY2・ Y4・ Y6について、709条に基づ く責任の有無が検討さ れてお り、そのうちYlについては責任が肯定された。いずれの者につ いても、709条の要件のうち、過失―― より具体的にいえば、Aの他害行 為を防止する注意義務――の有無が問題 となっている (他の権利・利益 侵害、損害の発生および因果関係の有無については、特に論 じられてい ない)。 以下では、それぞれの者に対する判示内容について検討すること としよう。

(i)Ylの一般 不法行為責任 =匿

まず、本判決 は、妻 であるYlについて、Aの他 害行為 を防止す る注 意義務 を怠 った過失があるとして、709条に基づ く責任 を肯定 した。 ここ で本判決 は、la)事故 の予見可能性 とlb)「徘徊防止義務」。「通知義務」 と もい うべ き義務 の違反 の有無 を検討 している。(blについては一種 の結果 回避義務違反 とい うことがで きよう。 その意味では、不法行為の枠組み の中で通常行 われる過失 (=行為義務違反)の有無 の判断がなされてい るといえるが、714条ただ し書のY3に関する監督義務違反 の半U断とパ ラ ンル になっているとい うこともで きるであろ う。

la)予見可能性

本判決は、 この①の予見可能性 について、YlはAの徘徊 とそれによ る事故の惹起 (さ らにそれに伴 う権利侵害)を予見することができたと

‑46(561)一

(18)

認知F■高齢者の列車事故と不法行為責任 成年後見制度のあり方―「JR東海列車事故第一審判決」力'もたらすもの一 して、次 の通 り判示 している。

Ylにおいては、 日中の本件事務所 な どの外部 に開放 されてい る場所 Aと二人 だけでいるときに自分 がAから目を離せ ば、Aが独 りで外 出

して徘徊 し、本件事故の ように線路内に侵入 した り、他人 の敷地内 に侵 入 した り、公道上 に飛 び出 して交通事故 を惹起 した りな どして、第二者

の権利 を侵害す る可能性 があることを予見 し得 た といえる。J

(b)「徘徊 防止義務J違反 。「通知義務」違反

本判決 ではさらに、0の存在 を前提 として、Ylに対 して、 いわ ばA

に関す る(b)「徘徊防止義務Jあるいは「(Cに対す る)通知義務Jがある とした うえで、それをいずれ も怠 った としてその違反 が肯定 されてい る。

 「徘徊防止義務J

まず、本判決は次のように述べて、YlにAの動静 を注視 して徘徊 を防止する義務、いわば「徘徊防止義務Jがあるとしたうえで、事故当 日にまどろんで目を離 したことによりそれを怠った過失があるという。

Ylには、少なくともA宅の外部に開放されている場所にAと二人だ けでいるとい う場面においては、Aの動静を注視 した上、Aが独 りで外 出してタイ回しそうになったときは、 自らにおいてこれを制止するか又は Aに付 き添つて外出するなどの対応をするか、仮 にそれが困難であれば、

CらAの状況を速やかに伝えて上記のような対応をすることを求める などの、Aが独 りで徘徊することを防止するための適切 な行動をとるベ き不法行為法上の注意義務が存 したというべきである。

「それにもかかわ らず、‐……Ylは、本件事故当日、AがEから帰宅 し た後で事務所出入口に施錠等がされる前の時間帯において、Cが自宅玄 関先で段ボール箱を片付けていて、本件事務所内において自己とAと 二人だけになっていた際に、 まどろんで目をつむ り、Aから目を離 して

‑ 47 (560)一

(19)

法政研究 (2014年

いたのであるか ら、上記注意義務 を怠 った過失があるといわ ざるを得な い。」

 通知義務違反

これに対 して、Ylは、事故当時は85歳の高齢で自らも要介護 1の 認 定受 けていたことからAの行動 を静止することは不可能であ り、かつ、

最大でも6〜 7分程度Aの行動から目を離 したことをもって過失 という ことはできないと主張 した。しかしながら、本判決は次のように述べて、

Ylは、少な くともAの状況 をCに伝えることがで きたとして、いわば

「通知義務」違反が存在 したと判示する。

「そもそも本件におけるAの介護体制は、介護者が常にAから目を離さ ないことが前提 となっていたものである……から、AがD(介護施設―

一筆者注)から帰宅 した後事務所出入口が施錠されるまでの間で、かつ、

Cが本件事務所 内 にいないにもかかわ らず、ェ1がAから目を離 したこ とはその前提 に反す るものであった といわざるを得 ない し、……Ylは Aに外出願望が生 じた際 にCがその場 にいない ときは、Cにその旨伝え ていたのであるか ら、

ない として も、A力S外出・ 徘徊 しようとしてい ることをCに伝 えること は容易 にで きた と考 え られ るのであ り、 それを怠 った以上、Ylには過 失がある といえるか ら、上記主張 も採用 で きない。」

(D Y4の一般不法行為責任=匿

続いて、Y3や Cと ともにAの介護に深 く関わったY4の不法行為責任 の有無が論 じられている。本判決は、(a)実際の介護 にあたるY4の役割 は大 きく、その対応が結果 として適切性 は欠いていたものの、6)Y4は 介護体制を決定するY3への情報提供 と助言をしていたにとどまり、自

らは介護体制を決定する立場になかったことから、そもそもAの他害行

‑48(559)一

(20)

認知症満 の列車事故と不法行為責任.成年後見制度のあ

'方

[JR東海列車事故第一審判決J力

'もたらすもの一 為 に関す る注意義務が存在 しない として、 その責任 を否定 している。以 下、該当す る判示部分 を引用 してお くことに しよう。

(al 介護 におけるY4の役割 の重要性 お よび対応 の適切性 の欠如

Y4はBの三女であ りかつ介護 の現場や実務 に精通 してい る者 とし て、家族会議 Iに 参加 して今後 のAの介護 についてY3ヽ C及Ylと し合 い、 さ らに、介護保険制度 を利用す ることやAを F病院のG医師に 受診 させ ることを助言 し、Aの認知症 が悪化 し、要介護4の認定 を受 け た後 に行 われた家族会議IIにおいては、Aを特養 に入所 させ るか在宅介 護 を続 けるかについての意見 を述べ るなどしてお り、Aの介護 のあ り方 を取 り決 めるに当たって重要 な役割 を果 た していた ことが認 め られ る。J

「そして、……Y4はヽ介護 に職業 として携わってい る者 として、認知 症患者が徘徊 して行方不明 となる事例 が多い ことを認識 し、徘徊 中に交 通事故等の事故 に遭 った事例 も何件 か見聞 きしていた こと、家族会議 Ⅱ においてAを特養 に入所 させ るかが話題 に上 った際 には、特養 の問題点 を指摘 して在宅介護 を勧 めなが ら、 自己がAの介護 によ り深 く関与 す る ことも、民間のホームヘルパーを依頼するな どしてAを在宅で介護 して い く上で支障がない ような具体的な改善策 を助言することもなかったこ と、 また、AがDから帰宅 してか ら後 も事務所 出入 日の事務所 センサー に電源 が入れ られていない ことを認識 していたのに、少 な くとも上記時 間帯 には電源 を入れ る等 の徘徊防止策 を講 じてお くべ きと助言すること もなかった ことな どが認 め られ るところ、仮 に これ らの点でY4の対応 が異 なっていれば、

どした結果、本件事故 の発生 を防止 し得 たのではないか とも考 え られ る ところで あって、Y4の現実 の対応 が結果的 に適切 さを欠 いた ことは否 定 で きない。」

‑49(558)一

(21)

(bl 注 意義務 の不存 在

Aの介護体制はAの長男たるY。が判断し決定 していたものであって、

4の立場は、Y3の決断の参考 となるように情報提供 と助言をしていた にとどまるし、実際の介護への参加についても、月2回ほどA宅を訪間 してCらによる介護を補助する程度にとどまっていたものである。そう だとすれば、工4において、Bが自宅から独 りで外出・徘徊 して第二者 の権利を侵害することのないような介護体制を整えてお くべき不法行為 法上の注意議 を負っていたということまではできない。そうすると、

Y4にAの他害行為を防止する義務を負わせ る根拠は見当たらない とい うべきであるから、Y4に民法709条により本作事故による原告の損害を 賠償する責任 を認めることはできない。

 Y2およびY5 般不法行為責任=[蚕

二女のY2と次男のY5については、すでにl③で述べた ように、Aの 介護 についてY3ら と相談 した ことがない ことか ら、仮 に両者 がAに する877条 1項の扶養義務 を負 っていた としても、Y2に Aの他害行為を 防止す る義務 を負わせ る根拠 はない として、 その責任 を否定 している。

に)過失相殺=匿

Ylら は、X側について も、駅 の係員 が金銭 も切符 ももたないのに声 をかけた り制止 した りもせずに漫然 と改オL内に進入 させ、 また容易 に線 路上 に下 りられる状態 に していた ことな どを理 由に過失がある と主張 し た。 しか し本判決 は、次 のように述べて、Xが上記 の ような対応 をする のは不可能 を強いるものであるとして、その主張が全面的に否定 された。

「そもそもAがどのようにして本件事故現場 に至 ったのかは本件全証拠 によって も不 明であるか ら、Ylらの上記主張 はその前提 を欠 くとい う べ きであ る し、Xに対 し、線 路 上 を常 にXの職 員 が監 視 す る こ とや 、人

‑50(557)一

(22)

認知症筒師者のll車事故と不法行為責任 成年後見制度のあ)方―「JR東海列車事故第一審判決J力

'もたらすもの一 が線 路 に至 る こ とが で き ない よ うな侵 入 防止 措 置 を あ まね く講 じて お く ことな どを求 めることは不可能 を強いるもので相 当でない とい うべ きで あるか ら、原告 に注意義務違反 を認めることはで きない。

  R東海 列 車 事 故第 一 審 判 決 の 法 的 問 題 点

諸論

以上で詳 しく紹介 したように、JR東海列車事故第一審判決 では、Y3

について714条2項に基 づ く責任、 またYlについて709条 に基づ く責任 を肯定 してい る。 もっ とも、 その論理構成 には、従来 の学説等の展開か らして も違和感 あるいは疑間がある ところも少 なか らず存在す る。

そこで以下では、 それ らの違和感や疑間のある点 について、判示 内容 を検証 しなが ら検討 してい くことにしたい。

介護への関わ り方 と遺族の責任 のあ り方

0)介護 の関わ り方 の軽重 と遺族 の責任 の有無

JR東海列車事故第一審判決 では、Aに対 す る介護 の関わ り方 に応 じ て、遺族 ごとに責任 のあ り方が異 なっている。換言すれ ば、 その関わ り 方が深 けれ ば深 いほ ど、 その責任 が加重 されてい るといえる。

具体的にいえ│よ 後 の4で詳述す るように、長男のY3については、ま ず事実上 の財産管理 を行 ってい ることをふ まえて 「事実上 の成年後見」

を行 っている とした うえで、3および4で詳述す るように、介護 の方針 を自 らが決定 し、妻 のCをAやYlに同居 させ るな どしてい ることか ら、

「事実上の監督者Jであるとして、714条 2項の責任 を認 めてい る。

また、Ylについては、「事実上 の監督者Jではない として714条2項

‑51(556)一

参照

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