• 検索結果がありません。

地上波広告放送市場をめ ぐる実証分析の展望

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "地上波広告放送市場をめ ぐる実証分析の展望"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

経営 と経済 84巻 第4 20053 87

地上波広告放送市場をめ ぐる実証分析の展望

学 ‡

Abstract

lnthispaper,Wewillsurveyrecentpapersonempiricaleconomic analysisWithrespecttoterrestrialbroadcastingindustry.Therearefour relatedmarkets;(a)contents,(b)advertiser'sgoods,(C)TV (or radio)advertisement,(d)program supply.Here,wefocusontwo markets,(C)and (d).

Whenweanalyzedeterminantsofprofitinterrestrialbroadcastingin‑

dustry,wemustpayattentiontotwocharacteristics;(i)oligopoly

structureineachmarket,(ii)costsavingadvantagebynetworkaffil ation.AftermakingabriefsuⅣey,wepresentre‑estimationresultof oureconometricmodelconsideringthesetwopoints.

Intheshortrun,programschedulingcanbemoreimportantstrategic parameter.Weshow thiskindofanalysishasbeendevelopedinthe fieldofbusinessadministrationaswellaseconomics.Further,wein‑

troduceempiricalpapersonPay‑TV (includingcabletelevision,com‑

municationsatelliteetc.)andpublicbroadcasting,andpointoutthatwe mustalsoconsideradequatedivisionofrolesbetweenthem.

Key words:TerrestrialBroadcastingIndustry,01igopoly,Network Affiliation,Program Scheduling,CableTelevision,Communication Satellite,PublicBroadcasting.

(2)

1.問題の所在

近年の放送産業を取 り巻 く環境の変化は著 しく,ブロー ドバン ド化の進展 BS/CS/ケーブルテレビの普及発達等により,視聴者が情報を得 る手段が 多様化 している。地上波テレビ局や FM/AM ラジオ局,公共放送まで含め た事業者数は相当な数にのぼる (図表 1参照)0

図表 1 日本における放送事業者の鳥撤図

20025月現在

広 告 放 有 料 放 送

NHK TV2ch ラジオ4c3chh

lIl WOWOW,St.GⅠGA 2 BSアナログ テレビ

ラジオ

デー lI:l 9:58WOWOW,スターチャンネルSt.GⅠGA 3 B Sデジタル

l l l

ll 112104/128 11181 CSデジタ

(出典):総務省資料お よびみずほコーポレー ト銀行(2002)を元 に作成

この ようなメデ ィアの多様化にもかかわ らず,現在 も伝統的な地上波テレ ビ放送が最 も基幹的なメディアであ り続けていることが,我が国放送産業の 大 きな特徴である と言 えよう。地上波放送局全体の営業収入は増加し続けて お り (図表2),長期不況に悩む 日本経済の中にあ って も,業界全体 として は順調 に推移 している様子が伺 える。 しかし放送局総数の増加により1,1 局あた りの営業収入は必ず しも増加 していない (図表 3)。低位安定成長へ

総務 省情報通 信政 策研 究所

1 平成元 (1989)年 以降 の新局設立 は24社 に ものぼ り,全127社 中の19%を 占め るに至 っ ている。

(3)

地上波広告放送市場 をめ ぐる実証分析 の展望 89

の移行 によ り今後 もパ イ全体の劇的 な増加が期待で きない中2,地上波放送 局の将来的役割を懸念する声は多い。加えて,地上波デジタル化の設備投資 負担が重 くの しかかって くる。現有設備の新 旧や放送 カバーエ リアの広狭等 で異なるが,デジタル化の費用負担 は1局あた り30‑100億 と言 われ, これ は新規開局に匹敵する規模 となる事 が指摘 されている。 こうした中,政策当 局 も 「マスメデ ィア集中排除原則」の再検討 を行 うな ど,環境変化 に対応 し た規制方式の見直 しを始 めている3。 この ように 日本 におけ るメデ ィアの多 様化が進み劇的な変化 が予想 される中,適切な制度設計を行 うための前提 と

して必要 と考 えられる数量的な裏付けは乏 しい と言わざるを得ない。

図表 2 民放全社の営業収入及び 図表 3 その他地区の 1局あた り

営業利益率の推移 テ レビ営業収入の推移

' 霊 ヨ

30000

25.000

20.000

15000

10.000

5000

(億 円) 12,000

10.000

8、000

6000 20%

a0% 4,000

1973 1977 1981 1985 1989 1993 1997 2001 1980 1985 1990 1995 2000

注)営業収入及び営業利益率は地上波民放全体 (189社 , 注)関東広域圏以外の地区の地上波放送局を対象 とした

テレビ ・ラジオ含む)ベース ベース

荏)影付 き部分は景気後退期

注)2001年度はみずほコーポレー ト銀行産業調査部予測 (出所)日本民間放送連盟資料をもとにみずほコーポレ‑

(出所) 日本民間放送連盟資料 よりみずほコーポレー ト 銀行産業調査部作成

ト銀行産業調査部作成

2 地上波民放局の主た る収入源はスポンサー企業か らの広告収入である。 日本の広告費 総衝は約6兆 円 (2001年)で,これは GDPの約1.2%の規模に相当する。広告は経済活 動の中で行われるものであるか ら経済規模や商習慣 に左右 されるため,各国ご とに安定 した水準を保 つことが知 られてお り,対 GDP比約1%という水準は今後 も維持 されるだ ろうと推測されている。

3 20032月に総務省がま とめた報告書では,当該原則 を緩和 し,隣接す る2つの地方 局の合併や経営破綻 した放送局の子会社化を認める方針を示 している。

(4)

放送」 とい う行為 自体は言論 ・思想 ・表現の 自由等 と密接 に関連するた め,本来 メデ ィア論やジャーナ リズム論の一部 としてこそ考 えるべきとい う 主張が一方 にあ り, 日本では実際にその ような側面 か らの研究が多 く蓄積 さ れて きた。後 に述べるように,本稿で展望す る経済学的分析には限界があ り, 放送業の一面のみを捉 えた ものであることも否めない。 しかし他方,放送市 場 には原則競争の原理 が働いていることも事実であ り,競争の成果 としての 収益/利潤 に着 目した研究を展望す るこ とには一定の意味があろ う。また, 規制はその導入趣 旨を問わず放送事業者の競争形態 に確実に影響 を与 えるか ,放送産業 にかけ られている政府規制 は社会的規制であって経済的規制 とは趣 旨が異なる」 という批判 も,経済学的分析の価値 を低める根拠 として は乏 しい。事実,諸外 国においては以前か ら経済学的視点か らの研究が積み 重 ね られて きてお り,また近年流行 の規制影響分析 (RegulatoryImpact Analysis)において も,数量分析が推奨 されてい る4。 この ような問題意識

か ら,本稿では,主 として供給 (‑事業者)側の観点か ら,内外の放送産業 に関する実証論文 (特 にマイクロデータを用いた分析)に焦点を当てて検討 し,地上波広告放送市場の特徴 を明 らかにしたい。

以下,第 2節では放送局利潤/収入 との関係 に関する先行研究 を,最近句 ものを中心 に,放送業 に特徴的な産業構造の観点か ら分類 ・整理する。 この 際, 日本の放送市場のデータを用いて,簡単な再推計を試みる。続 く第3章 では,投入要素 としての 「番組」の編成行動 について考 える。以上は,地上 波広告放送市場 における産業構造 を中心に見 るため,テレビ局 とともにラジ オ局 に関す る分析 も重要な考察対象 となる。続 く第 4章 では,CATVや衛 星を含む有料放送市場,および公共放送 との関係について考 える。最後にま

とめを述べ る。

4 オース トラ リアにおけるSenateEnvironment,Communications,InformationTechnol ogyandtheArtsLegislationCommittee (2002)が,典型的な事例である。 ここでは社 会的規制 の側面が強 い 「マスメデ ィア集 中排除原則」の導入に関する費用便益分析を行

っている。

(5)

地上波広告放送市場 をめ ぐる実証分析 の展望 91

2.産業組織上の特徴と利潤との関係 2.1 分析対象とする市場

まず,地上波広告放送市場の産業組織 について確認 しておこう。地上波広 告放送 は,制作/伝送/分配/広告/受信部門か ら構成 されている (図表4)0

「市場」 とい う観点か ら見 ると,(a)コンテンツ市場,(b)広告主の財の 市場,(C)広告市場, (d)番組供給市場の4つを想定で きるが,本稿で考 察するのは 「地上波広告放送局を中心に据 えた広告主 と視聴者 との関係」, 即 ち (C)お よび (d)の市場であ る。 (b)については,伝統的な産業組織 論の枠組みの中で,膨大な量の理論的 ・実証的研究が存在する5。逆 に (a) については検討されるべき課題が多 く残 されているが,近年研究の必要性が 強 く認識されている ところである6。

対象市場 を (C)および (d)に限定 した場合,端的に言 えば,多 くの視 聴者に番組 を見て もらうほど高い広告料を獲得で きることか ら,視聴率 ×対 象世帯数で定義 され る 「リーチ」 が大 きいほ ど,地上波広告放送局の収入 (費用を一定 とした場合,利潤 も同様)は大 き くなる。従 って1局あた り対 象世帯数が放送局利潤の環境要因 として強力な説明力を持つこととなる。 こ の事実を利用 して実証分析を行 った初期の例がGreenberg (1969)に見 られ る。彼 は196062年のデータか ら,放送局利潤は,市場規模 ・ネ ットワーク 5 小 田切 (2001)第8章は,重要な論点をコンパ ク トに説 明 している。地上波広告以外 にも新聞 ・雑誌等のメデ ィアによる方法 もあるが,広告費のウェイ トはマスコミ4媒体 の中約58.3%を占める (2001年)0

6 政府 による実態面での検討過程は 「ブロー ドバン ド時代における放送番組制作 に関す る検討会 (H14.10‑H16.3)」 (http://www.soumu.go.jp/joho̲tsusin/policyreports/ chousa/broadband/index.html)等を参照。現状では下請構造や著作権な どの制度的課題 の検討に とどまっているが,仮に制度面での課題をすべてクリアで きた として も,番組 品質 および獲得視聴率が放映 されるまで分か らない とい う情報の非対称性の問題が理論 的に発生す る。 この問題に対する解決策は仮定に大 きく依存するが,例 えば伊藤 (2003)

7.1節のCaseHIのモデルで近似できるかもしれない。

(6)

図表4 地上波広告放送の産業組織 番組制 [制作]

(C)広告市場】

(出典):菅谷 ・中村(2000)3,11章 よ り作成。

加入および当該市場で操業する放送局数 と正の相関を持つことを示 した。更 ,FCCの周波数免許政策の是非 を論 じるために UHF (UltraHighFre quency)VHF (VeryHighFrequency)の費用的優劣を分析 しているが, 明確な結果は得 られていない7

7 UHF/VHF問題 は,デジタル化を控 えた現在の 日本で も依然 として問題 となる可能性 を含んでいる。 もともと民放 テレビ用電波 として割 り当て られたのはVHF帯だったが, 難視聴地域 を解消す るため, よ り高域な周波数帯である UHF帯の利用 が図 られて きた とい う経緯がある。政府はデジタル化にあたってテレビをすべてUHFに替えVHFを別 途利用す る構想を抱いてお り,開局が早 くVHF帯を利用 して きた局はデジタル化 と同時 UHF帯へ乗 り換 えることも迫 られている (鈴木 (2004))。ただ しこれは一部の局の みに限定 された問題 であるので,本稿では これ以上立ち入った議論 を行わない。

(7)

地上波広告放送市場 をめ ぐる実証分析の展望 93

これ以降多 くの実証分析が行われて きたが,初期の論文が対象世帯数や所 得等の比較的単純な環境変数を利用 した利潤 との関係を問題 に していたのに 対 し,近年では,地上波広告放送市場の産業組織 に特徴的な点,則ち,①周 波数の希少性を主た る理 由 とした政府の参入規制 により各市場が寡 占構造 と なっていること,お よび②多 くの放送局がキー局 を中心 としたネ ットワーク に加盟 していること,を反映 した分析に焦点が当て られて きている。① につ いては2.2節で,② については2.3節で,関連す る研究事例 を整理する。

2.4節では, これ らの特徴 を踏 まえたモデルを用いて, 日本の地上波広告 放送市場について再推計 した結果を報告する。

なお,利潤の決定要 因を考 える際 に費用関数を用いたアプローチを とるこ とも考 えられ,日本で も トランスログ型可変費用関数を用いた植 田他 (2004) の分析がある。理論的な双対関係を利用することにより詳細な費用構造 を分 析で きる点で有効だが,反面,以下で見 るような産業構造の特徴を明示的に 考慮 しに くい点が短所 で もあるため,ここでは扱わない こととする。

2.2 寡占構造 と利潤

放送市場 における寡 占的な市場構造は免許制 に起因するものだが, これが 放送局 に市場支配力を付与するか,また結果 として利潤 にどの ように影響を 与 えるかを考察す る場合,2つの方 向が考 えられ る。 1つは他産業 と比べた 場合の利潤率に関す る論点であ り, もう 1つは各放送市場間で利潤格差が存 在するか否 か とい う論点である。前者 については,Nolletal.(1973)が米 国市場 において'50年代か ら利潤率 が高かった事実 を報告 している。 また 日 本において も図表 2や図表3か ら比較的容易に推察で き,木村 (1998)な ど に同様の指摘 もあるため,ほぼ異論 がない もの と言 えよう。そ こで以下では, 各寡 占市場間で異な る放送局数や 「市場集中度」が,市場間での利潤格差 に 寄与 しているか否かに焦点を当てた分析を概観す る。

市場構造の指標た る集中度を測定す る場合に用い られ る尺度 として,(i)

(8)

企業をシ ェアの大 きい順 に k社分合計 した k社集中度 と,(ii)全企業のシ ェアの二乗和 として表 される Hirfindah1Hirschman指数 (以下 HHI」 と 表記する)がある。集中度が高い場合,少数の企業が市場で共謀 した動 きを

とることによって高い利潤率を不当に享受する可能性があるため,公正有効 競争を担保するために監視することが必要 となる。

(i)を用いた研究にFournier(1986)がある。彼は,米国の産業全般に ついて市場 に存在する企業数が少数の場合 にプライス ・コス ト ・マージン8

が有意に高 くなる事実 (Kwoka(1979))に着 目した。実際,米国の各市場 における放送局数は2‑4程度であることか ら,Fournier(1986)はデータ が得 られた394の放送局 について,利潤 および広告販売価格を被説 明変数 と した関数 を加重最小二乗法によって推計 した。「集中度」の代理変数 として は,当該放送局が営業を行 う市場において上位2社が占める獲得視聴者数を 用いている。彼は,ネ ットワーク加盟の有無や放送局規模をコア トロール し た推計を幾つか試みた結果,集中度」の相違は利潤率の高低に対 し殆 ど影 響を与えていない との結果を得ている。

一方 (ii)の HHIについては,企業合併 によって市場の競争環境が損な われないか どうかを判断す る基準 として,米 国司法省が採用 している。

HHIは理論的に 0から10000の値を とりうるが,一般の産業では1800超であ れば集中度が高い とされる。放送産業の場合は寡 占的な特徴に配慮 し,2750

超を高集中度 とするガイ ドラインを発表 している。

実際の計算 にあたっては,広告市場 (2.l節句 (C))に関するデータを使 う方法 と,Fournier(1986)の ように番組供給市場 (2.l節句 (d))に関す るデータ (‑視聴率データ)を使 う方法 とが考 えられる。Bates(1993)は,

'77/'87/'92年のデータを用いて HHIを算 出しているが,地上波広告放送 市場ではいずれ も高めの値が得 られている。ただ し視聴者データを用いると

8 価格 と限界費用 との差 を価格で除 した比率の ことで,この比率が高いほど利潤率は大 きい とされる。

(9)

地上波広告放送市場をめぐる実証分析の展望 95

平均 が2582‑2634程度 なの に対 し,広 告収 入デー タを用 い る と40694913とな り,得 られ る数値 にば らつ きが見 られ る ようであ る9

HHIを用 いた最近 の研究 として,Ekelundetal.(2000a)があ る。彼 らは 被説 明変数 を'95‑'96年 の米 国 ラジオ局 の広告販売価格 (549サン プル)とし, 全広告市場 お よび番組供給市場両方 のデー タを用 いた 「集 中度」 との関係 を Heckman2段階推 計法 を用 いて実証 的 に検証 して い る。彼 らはその他 に も,デモグ ラフ ィックな要 因か ら推 計 され る期待 HHIや局 の所 有者数 か ら 計算 され る HHIについて も推計 してい るが,いずれの指標 について も集 中 度 と利潤 とは有意 な相 関関係 にはな い との結果 を得 てい る。

2.3 ネ ッ トワーク系列 と利潤

地上波広告放送 は魅 力的 な番組 を用意 す るこ とで,広告放送枠 の販売価格 を高 め るこ とがで きる。他方 ,番組 制作 は労働集約 的で初期投資 が大 きい反 面 限界的 な再生産費用 が小 さいため ,規模 の経済性 が強 く働 くとい う特性 を 持 つ。 この ような費用 負担 を回避 ・分散化 し効率的 に費用 を回収 す るため, ネ ッ トワー ク系列化 す る こ とが個別放送局 に とって最適 な戦略 とな る。 テ レ ビ放 送 では,米 国で 4 (ABC,NBC,CBS,FOX), 日本 で 5 (NNN, JNN,FNS,ANN,TXN)の主要系列 が存在 してい る。

こうしたネ ッ トワー ク加盟 が利潤獲得 に関 して有利 に働 くか否 か とい う問 題 については,古 くか ら多 くの研究 が蓄積 されて きてい る。最 もシン プル な

9 広告放送収入データを用いた場合にHHIの数値が高くなるのはある意味で当然とも言 える。 というのも,雑誌や新聞といった他の広告媒体と区分した市場として計算されて いるためであり,「マスメディア主要4媒体の広告市場」 というように市場を幅広 く捉え て計算すればもう少し低 く算出されることが予想される.一方視聴者データを用いた場 合,地上波広告放送以外の有料放送視聴まで含む 「多メディア化の影響を反映した」値 としての視聴率が用いられることから,集中度は低 く計算される。おそらく後者の方が より実態を反映した基準 と考えられ,これが第4節で述べる需要側分析の必要性および 合理性の一つの論拠となるものである。

(10)

のは系列 加盟 の有無 について ダ ミー変数 を用 い るタイプの もの (Besen (1976),Fournier(1986)な ど)であるが,番組制作費用に焦点を当てた もの (Crandall(1972))や,加盟局/独立局別のサブサンプルに分割 して利 潤を比較 した もの (Fisheretal.(1980)),自主制作番組比率を用いたもの (安 田 (2000))の ように,幾つかのバ リエーシ ョンが存在する。計測結果 ははば共通 してお り,ネ ットワーク加盟によって費用節約 ・高利潤率を獲得 できるという予想を裏付けるもの となっている。

ネ ットワーク化の影響 として,異 なる視点か らの興味深い分析 もある。

Ekelundetal.(1999)は,米国の地上波 ラジオ放送市場が 「地域的に分断 された」市場か否かを検証 した。即ち,ある市場での広告価格上昇は,相対 的に広告価格が低下する他地域の広告需要を増加 させる可能性があるが,独 立局の場合,他地域の番組 に魅力があるか という別の問題が発生する。 とこ

ろが系列化 していれば同じ番組が放送 されている可能性が高 く,そのため他 地域への広告需要シフ トもよりスムーズに行われ るだろうことが予想 され る。彼 らは,被説明変数を当該市場 における放送局全体の売上高合計 とし, 説明変数を自局の広告価格および代替的広告媒体 (新聞やラジオ)の価格 と

して,操作変数法および一般化最小二乗法による実証分析を行 った。その結 莱, 自己価格弾力性が負,即ち 自局の広告価格が上昇することにより広告が 他地域へ逃げ総収入が減少するとい う結論を得ている。同様の結果はテレビ 放送市場 を扱 ったEkelundetal.(2000b)でも確認 されている。 この ような 結果は,仮に免許制による参入規制 によって市場が形式的に分断されていた としても,隣接市場間の リンクが強い広告放送市場では独 占力の発揮にはつ なが らないことを示唆 している。前節で見た集中度指標 との関連が薄い理由 を,別の側面か ら補完する結果 といえよう。

2.4 日本の地上波テ レビ放送市場に関する再推計

春 日 ・宍倉 (2004)は, 日本の地上波 テ レビ放送市場 について2.1‑

(11)

地上波広告放送市場をめ ぐる実証分析の展望 97

2.3節 で論 じて きた特徴 を考慮 した推計を行 っているが,現行の参入規制 と世帯数や県民所得等の環境要因 との関係に主た る関心があ り,本稿で説 明 して きた ような産業構造の観点か らの位置づけは必ず しも明確 になっていな かった。 また,利用デー タは1998‑2000年度の3年 間のパネルデー タだが, 市場間の相違 に焦点を当てた分析を行 うために局数 ダミーを用いた分析を行 ってい る。 しか しパ ネル デー タの特性 を よ り活 かすため には,固定効果 (FixedEffect)/変量効果 (Random Effect)の各モデルを推計 し,個別企 業 に特有の影響 を考察す ることが有効である。そ こで ここでは固定/変量効 果モデルの推計を試みたい。なおモデルの導 出過程等の詳細 については,秦

日 ・宍倉 (2004)を参照 されたい。

まず どち らのモデル を採用す るか検定す るため に Hausmanテス トを行 う。以下の ような線型回帰モデルを考 える。

yita+X'ifb+uit, i‑1,...,N, i1,...,T,

ただ し,iは個別主体を,tは時間を示す。また,aはスカラー,b Kxl ベ ク トル,XifはK個の説明変数のit番 目の観測値 を表す。 ここで,誤差項 uifが,

uit=FLi+右+ L'it

とい う構造を している と想定 しよう。 これは個別効果 と時間効果の2要素を 考慮 しているため,twofactormodelと呼ばれる事がある。ただ しFLiは観 測 されない個別効果, ltは観測 されない時間効果 を,レifは標準的線型回 帰モデルの仮定 を満たす誤差項を表わす とする。即ち,以下の式が成立する。

E(it)‑0, V(it)‑E(諺)‑qe,

Cov(it,js)‑E(itUjs)‑0,for i≠j, t≠S

この とき,誤差項 uiiと説明変数 Xiiの相関の有無 により,採用すべ きモ デルが異 なる。即ち, もし Cov(uii,Xii)‑0な らば変量効果モデルが,他方

(12)

Coy(uii,Kit)≠0な らば固定効果モデルが採用 され それぞれ一致性を有 Lか つ有効性 もある推定を行 うことがで きる。

変量効果モデルが採用 された場合,一般化最小二乗法 (GeneralizedLeast Squares)による推定が BLUEを満 たす。 この推計値 を bGLS と表わそ う。

他方,固定効果モデルが採用 された場合,元の式 か ら各平均値 を引いた 「 均 か らの偏差」 を とった変数 について推計す るグループ内推定量 (within‑

groupestimator)を得 ることが望ま しい。 この推計値 を bmihinと表わそ う。

この とき,

帰無仮説 Ho:Coy(uii,Kit)‑0の下での推定量 bGLS

対立仮説 Hl:Coy(uii,Kit)0の下での推定量 bmihin

とする と, この時両者の差‑bGLS‑bwithinは,帰無仮説H.の下で,確率 極限plim奇‑0となる。 また 奇の分散 V(奇)‑V(bGLS)‑(bwithin)を考える と,

m‑奇ilVar(Gl)]1el

は,帰無仮説の下 で 自由度 kの x2分布 に従 う。Hoが棄却 されなければ変量 効果モデルが,棄却 されれば固定効果モデルが採用 される。

また利潤 と集中度HHI,産業全体の産 出水準X と地域特性を示す指標 Y とには,

7T‑HHI(jojl)xjl+1Yj2

という関係が得 られることか ら,推計式は以下の ように定式化 される。

ln打i‑lnαo11nRATEi+α21nHHIli+α31nASEETi+α41n(HH/N)i 51nY+α61nSELFi+lnei

RATEi :局別年間平均視聴率

HHIll :i番 目の放送局が事業を営む市場でのハーフイソダール指数 (視聴率を用いて計算) ASSETl :i番 目の放送局が有する総資産額

(1tH/N)i:i番 目の放送局が事業を営む市場での 1放送局あた り世帯数 Yi :i番 目の放送局が事業を営む市場での 1世帯あた り所得 SELFi :i番 目の放送局が 自社制作で番組を賄えるか否かを示す変数

(13)

図表 5 利潤/収入の決定要因に関する再推計結果

被説 明変数

説明変数 1n(7ri):SrJ# ln(Ri):収入 ln(打i):利潤 ln(7Ei):利

地 ̲ 三大都市圏除外 三大都市圏.基幹局除外

OLS OLS OLS OLS OLS OLS OLS

(i) (i)' (i)" (ii) (ii)' (iii) (iV) lnRATE 0.767 ★★★ 0.618 0.292 0.263 0.815 1.195

3.539 3.235 4.564 8.850 2.918 3.197 lnHHⅠ1 0.387 0.063 0.028 0.068 0.280 0.576

1.440 0.260 0.365 1.808 0.922 1.532 ln(HH/N) 1.046 0.999 0.715 0.727 0.738 ★★★ 1.288 ★★★ 1.429 ★★★

7.454 7.314 6.716 16.309 47.604 6.862 5.076 lnY 1.068 ★★★ 0.954 0.798 0.083 0.169 1.137 ★★★ 1.197

3.404 3.150 2.585 0.435 2.193 3.117 2.591

hSELF 0.186 0.182 0.123 0.081 ★★★ 0.087 0.205 ★★★ 0.210

3.153 3.078 2.133 5.214 12.966 3.080 2.855 lnASSET 0.392 0.440 ★★★ 0.595 ★★★ 0.362 0.339 0.340 0.214 3.498 4.117 6.084 ll.034 21.424 2.560 1.374

定数項 ll.927 ‑10.130 ★★★ 7.081 (omit) (Omit) ‑13.959 ★★★ ‑15.715

6.034 6.577 4.871 4.687 3.846 R2 0.707 0.702 0.690 0.986 0.999 0.401 0.451 AdjustedR2 0.700 0.697 0.685 0.979 0.999 0.385 0.433

サンプル数 282 282 282 282 282 240 189

WuHausmanTest 5.462 3.133 0.980 ll.401 ll.401 4.857 4.857 (p‑Value) 0.486 0.679 0.964 0.077 0.077 0.434 0.434 固定効果/変量効果 Random Random Random Fixed(noweight) Fixed(CSweight) Random Random

★ ★ ★ :1%水準で有意

★ ★ :5%水準 で有意

:10%水準 で有意

t簿a;碑q)

(14)

再推計結果は図表5に示 されてい る.市場集中度 を表す変数HHIliは有意 ではない一方,SELFiは有意 に負 となってお り,番組 をネ ッ トワークか ら 調達 している割合が高い放送局ほどに利潤が高い とい う結果が出ている。 こ れ らは先行研究 と整合的な結果 とな っている。

固定効果モデル/変量効果モデルについて見 ると,収入/利潤に関する推計 式は操業 エ リアを変更 した上で幾 つか推定 しているが,利潤 に関する方程式 ではいずれ も変量効果モデルが適 している との結果を得た。一方,収入に関 す る方程式 に関 しては,いずれ も固定効果モデルが採択 され る結果 とな っ 10。収入 について固定効果モデル が採択 され る とい う結果 は, (特定の放 送局または時間について)何 らかの特有な効果が観測 されることを意味 して いる。地上波民放局ではキー局を中心 とした相互依存体制が指摘 されるとこ ろであ るが,ここでの結果はその ような状況を示唆 しているのか もしれない。

ただ し,特定の県 ・放送系列に関 して特筆すべ き傾 向は見 られなかったため, 個別の固定効果 に関する数値は報告 していない。

一方,利潤ベースでは変量効果モデルがいずれのケースで も採用 された事 は,費用面 まで考慮 した場合,競争 の結果や経常戦略の相違 を反映 して個別 局 ご とに,また時点ご とに, ドラステ ィックに変動 している事実を反映 して いると考 え られる。今回の推計では,ラジオ ・その他関連事業 に関する収益 ・ 費用を除外 した数値 を用 いている事実をあわせて考 える と,「テ レビ局は予

算制度 に準 じた経営を行 っている」 とする通説 に関 して も, もう少 し慎重に 検討す る余地があろう。

10 なお,表 中の CS(CrossSection)weight」 とは,グループによって誤差項の分散が 異なることを考慮 して分散でウ ェイ ト付け して推定 した結果を意味 している。

図表 4 地上波広告放送の産業組織 番組制 作 [ 制作] ( C) 【 広告市場】 ( 出典) :菅谷 ・中村 ( 2 000 ) 第 3 , 1 1 章 よ り作成。 加入および当該市場で操業する放送局数 と正の相関を持つことを示 した。更 に ,FCC の周波数免許政策の是非 を論 じるために UHF ( Ul t r aHi ghFr e ‑ q ue nc y) と VHF ( Ve r yHi ghFr e q ue nc y) の費用的優劣を分析 しているが, 明確な結果は得 られていない 7
図表 5 利潤/収入の決定要因に関する再推計結果

参照

関連したドキュメント

現状の課題及び中期的な対応方針 前提となる考え方 「誰もが旅、スポーツ、文化を楽しむことができる社会の実現」を目指し、すべての

地震の発生した午前 9 時 42 分以降に震源近傍の観測 点から順に津波の第一波と思われる長い周期の波が

名の下に、アプリオリとアポステリオリの対を分析性と綜合性の対に解消しようとする論理実証主義の  

2 つ目の研究目的は、 SGRB の残光のスペクトル解析によってガス – ダスト比を調査し、 LGRB や典型 的な環境との比較検証を行うことで、

Instagram 等 Flickr 以外にも多くの画像共有サイトがあるにも 関わらず, Flickr を利用する研究が多いことには, 大きく分けて 2

 中世に巡礼の旅の途上で強盗に襲われたり病に倒れた旅人の手当てをし,暖かくもてなしたのがホスピスの

FSIS が実施する HACCP の検証には、基本的検証と HACCP 運用に関する検証から構 成されている。基本的検証では、危害分析などの

※証明書のご利用は、証明書取得時に Windows ログオンを行っていた Windows アカウントでのみ 可能となります。それ以外の