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11)ビワ=枇杷
ビワはバラ科ビワ属の常緑高木で高さ10m に達する。四国、九州などの暖地では 石灰岩地帯の山野に自生するものもあるが、多くは果樹として栽培される。長楕円形の 葉は、葉脈が窪み葉身が膨らんで凹凸が多く、長さは15~20cm にもなる。初冬の頃、 白い小さな5 弁花を開く。しかし誰も花が咲いたことに気づかずに春を迎えてしまい、 この木のことは忘れしまう。ところが初夏になると果実は黄色に色づいて、この実と この木の存在を改めて認識する。学名は『Eriobotrya japonica』で、属名は白い軟毛 が密生した果実が房になることを意味している。和名のおこりは葉の形と実の形が 楽器の琵琶に似ているためとも、この木で琵琶を作ると最高の音色になるからとも いわれている。またヒロハ(広葉)が詰まったものだという説もある。中国名も『枇杷』 で、俗に『盧橘』などともいう。このためイギリスでは『loquat』といい、これは 盧橘の発音に近いものとなっている。原産地は中国で日本に伝来したのは奈良時代 の後期か平安時代の初め頃で、『本草和名』(ホンゾウワミョウ)や『倭名類聚鈔』 (ワミョウルイジュショウ)、『正倉院の文書』などにもその名が見られる。しかし 現在食用としているものは、中国で改良された『唐枇杷』の流れを汲むものと思われ、 これは江戸時代に日本に渡来した。最近ではこれをもとに更に品種改良が進められ、 甘味の強い品種が作り出されている。 インドの古い経典には枇杷の木を『大薬王樹』、枇杷の葉を『無憂扇』として、万病 を治すと記されており、3,000 年以上も前から仏経医学では広く利用されてきた。 最近では特に『枇杷温灸』が見直され、これは「結石」やガン細胞の抑制効果があると いう。枇杷の葉には、「サポニン」「アミダグリン」「ビタミンB1」「オレアノール酸」 「ウルソール酸」「タンニン」などが含まれており、民間では浴湯料として用いられてきた。 特にアミダグリンは『青酸配糖体』ともいわれ、癌に有効に作用し、オレアノール酸 やウルソール酸は癌ウィルスの活性化を抑える作用のあることも確認されている。 確かに枇杷は昔から薬用の効果が知られていた。 漢方では葉を『枇杷葉』(ビワヨウ) と呼び、煎じて鎭咳、去痰、下痢止めなどさまざまに用い、この葉を乾燥させた ものは『枇杷茶』といい、暑気払いの飲物として古くから売られていた。これは 『枇杷葉湯』(ビワヨウトウ)と呼ばれるもので、初夏の枇杷葉湯売りの独特のかけ声は、 夏の風物詩の一つともなっていたのである。 ところで一つだけ気になることがある。それは枇杷の果実が楽器の琵琶に似ている から名付けられたという説である。だとすると枇杷の木はビワと呼ばれるまで、なん と呼ばれていたのだろうか。同じ意味で名付けられた琵琶湖は、それ以前は淡海、 近江之湖などと呼ばれていたわけで、枇杷の木だって同じように別の名前があった はずで、これが『盧橘』であるならそれはそれで理解できる。しかし枇杷の木より も以前に、楽器の琵琶が存在したかどうかは疑問がないでもない。漢方では枇杷は花の縁02-05-11 2 3,000 年も前から枇杷葉だったはずだし、そもそも漢方薬の名前がそうそう簡単に変 わるものではない。そこで楽器の琵琶の歴史を紐解いてみると、日本には奈良時代 に中国から伝来した。その起源はペルシャにあると考えられている。 つまりササン朝 ペルシャ(226~642 年)にあった『barbat』(バルバット)という木製の『曲頚洋梨形胴』 の弦楽器が進化して、イスラム時代には『ウード』となり、アラビア商人やイスラム 教の拡大とともに、広く世界の国々にまで広まることとなった。これはヨーロッパでは 『リュート』となってギターのもととなる。スペインのギターとその名曲は、トレド やセビリヤが8 世紀の初頭に、サラセン帝国の支配下になって以来の伝統があった のである。一方アジアに伝わったものは琵琶となったが、その語源はこのバルバットの 発音であるとも、弦を動かすときの往復運動をあらわす漢語であるともいわれている。 それでは枇杷と琵琶とではどちらが先になるのであろうか? 日本に伝わった琵琶は正倉院に5 つ保存されている。このうち 4 つが 4 弦のもの であり、1 つだけが 5 弦でこの形状は『直頚洋梨形胴』をしている。また「曲頚」の ものはイラン起源で、「直頚」のものはインド起源といわれている。それぞれ違うルート を経由して日本に入ったものであろう。また他にも4 弦で『直頚円形胴』のものが 2 つあり、これは『阮咸』(ゲンカン)と呼ばれ、唐代以前には秦琵琶(シンビワ)と 呼ばれていた。正倉院に保存されている琵琶はいずれも撥面にはゾウやラクダといった 動物をモチーフとした模様などが刻まれている。また朝鮮半島に伝わった琵琶は3 種類 あり、その第一は 4 弦曲頚洋梨形胴のもので、新羅が半島を統一した頃に唐から 伝わったと考えられている。第二のタイプは5 弦で直頚洋梨形胴のもので、主に高麗朝 の頃に用いられた。このことは日本に残されている琵琶は、最終的には朝鮮半島を 経由して渡来したことを暗示している。そして朝鮮の第三のものは月琴であって、 これは日本に残存する琵琶とはかなり異なるものなので、とりあえず置いておこう。 何が言いたかったかといえば、どのルーツをたどっても琵琶の歴史はそうそう古い ものではなく、枇杷の木の名称の起源には遠く及ばないということである。つまり 枇杷の実に似ていることによって、楽器の琵琶は琵琶と名付けられたものと思えるの である。そしてもう一つ忘れてはならないことは、人間がデザインする場合、多くの 場合、手本は自然界に存在するという点である。魚のエイから生まれたという超音速機 や戦闘機、楓の実が回転して落ちるところから生まれたプロペラ、蜂の巣の構造から 生まれた六角形のハニカム構造など、自然は何よりもデザインの先生なのだ。枇杷 の木から、楽器の琵琶が生まれたと考えるほうが自然なのである。 枇杷の果実を甘く作るにはかなりの手入れが必要である。しかし果物の場合、甘味 もさることながら、いくぶん酸味のある瑞々しさが、疲れを癒してくれることも多い。 庭に実った枇杷は、果物屋さんのものよりも新鮮な分ずっとおいしい。しかし人間様 よりも早起きの小鳥がやって来て、先に食べられてしまうこと多い。残念!無念!
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リュートはギターの前身の楽器だが、あちこちに装飾的な細工が残っている(坂根進氏遺品)。 故坂根進氏に関しては(01-03-10-8)(04-02-04)(05-02-26)を参照。
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開花したばかりのビワの花、ビワは夏の果物であるが、花を知る人はまずいない。12 月の 初めごろこんな花をひっそりと咲かせるのである(栃木県足利市)。
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