細則様式第1-2号
学位請求論文の内容の要旨
領 域 健康支援科学 分 野 老年保健学
氏 名 奈川英美
(論文題目)
脳卒中患者に対する歩容評価と身体機能,歩行との関係
主 査 高見 彰淑
副 査 中村 敏也
副 査 若山 佐一
副 査 對馬 栄輝
本研究の目的は,①歩容評価表の信頼性を確認すること,②歩容評価表と身体機能,
歩行との関係を明らかにすること,③歩行パラメーターや患者満足度との関係から理学 療法士が臨床で観察可能かつ重要な歩容観察項目を明らかにすることである.
【歩容評価表の信頼性】
自らが考案した歩容評価表における検者間・検者内信頼性を確認する.理学療法士4 名を検査者,脳卒中患者14名を被験者とし,撮影した被験者の歩行映像を検査者に観 察させて歩容評価表を採点させた.まず被験者4名分の歩行映像で歩容評価表の使用手 順を練習してもらい,残る被験者10名分の採点結果で検者間信頼性を確認した.1か月 の期間をあけて再度これを実施し,検者内信頼性も確認した.
その結果,各項目の検者間信頼性はケンドールの一致係数で0.49~1,κ係数で0.46~
1であった.合計点の検者間信頼性は級内相関係数(ICC)で0.82~0.87であった.検 者内信頼性は,各観察項目はκ係数で0.38~1,合計点はICCで0.82~0.98であった.
さらに,採点者から判断に迷う項目と意見のあった7項目を改変し,再度検者間信頼性 を確認した.検者間信頼性は,各観察項目はケンドールの一致係数で0.41~1,κ係数 で0.43~1であった.合計点はICCで0.84であった.
【歩容評価表と身体機能,歩行との関係】
観察による歩容の逸脱の多さと,身体機能,歩行能力との関連を明らかにすることを 目的とした.回復期病棟に入院している脳卒中患者で,装具・補助具の使用を問わず歩
(注)論文題目が外国語の場合は,和訳を付すこと。
【細則様式第1-2号続き】
行自立~近位監視で20m以上連続歩行が可能な57名(男性37名,女性20名)を対象と した.歩容の評価は,筆者が作成した歩容評価表を用いた.歩容評価表は25項目で構 成され,1項目の選択肢は2~3である.合計点数は25~72点となり,点数が高い程正 常からの逸脱が多いと判断する.観察項目は,初期接地の膝関節/足接地,荷重応答期
~立脚中期(MSt)での膝関節,MStでの体幹/骨盤/膝関節,立脚終期での股関節
/足関節/慎重さ,麻痺側の立脚時間,麻痺側への重心移動量,遊脚初期(ISw)~
遊脚中期(MSw)での膝関節, ISwでの外旋, MSw~遊脚終期(TSw)の体幹(前後・
側方)/骨盤挙上/分回し/足関節/非麻痺側への重心移動量,TSwでの骨盤,非麻 痺側/麻痺側の歩幅,麻痺側のクリアランス,杖の使用,歩隔とした.身体機能は,
下肢麻痺,感覚障害,下肢筋の痙性,ROM,下肢筋力,下肢荷重量,バランスをもっ て評価した.歩行能力は,10m歩行秒数を評価した.歩容評価表合計点に影響する変 数を求めるために変数増減法による重回帰分析を行い, 10m歩行秒数(標準偏回帰係数 0.68)と麻痺側股関節外転筋力(-0.23),足関節底屈筋の痙性(0.18),非麻痺側最大荷重 率(0.16)が選択された(R
2=0.80).歩容の正常からの逸脱の多さは,身体機能や歩行能 力と関連することが明らかとなった.10m歩行秒数は,歩容評価表合計点と最も関連 が強い.つまり,歩容の逸脱が多いほど,歩行速度は遅くなる.歩容評価表は,歩行 速度低下に関連する歩容をよく捉えてしていた.股関節外転筋は,前額面上で左右の 重心移動に関与し,10m歩行時間とは別に歩容に影響する変数として選択された.足 関節底屈筋の痙性は,関節運動の逸脱に影響する.痙性を有する患者は随意性の低下 もみられた.下肢装具を着用していても随意性の低下が歩容に影響した.非麻痺側最 大荷重率について,麻痺側下肢機能の低下(痙性,筋力低下,感覚障害など)が大き い対象者は,非麻痺側最大荷重率が少ない場合,監視~自立歩行に至らず,対象から 除外されているのではないかと考える.今後,非麻痺側最大荷重率の歩容への影響を みる上では,発症からの時期と重症度から対象者の層別化が必要となる.
【理学療法士が臨床で重要な歩容観察項目】
歩行時間に影響する歩容の観察項目を明らかにするために,脳卒中患者46名を対象 とした.歩行映像から,動画解析ソフトを用いて,歩行路5m間に要した時間を計測し,
5m歩行時間とした.さらに歩行映像を観察し歩容評価表を採点した.重回帰分析の結 果, 5m歩行時間に影響する歩容の観察項目は,TStの慎重さ(標準偏回帰係数b=0.3
3),非麻痺側歩幅(0.27),麻痺側歩幅(0.25),杖の使用(0.31)であった.R
2は0.86であった.
立脚時間・遊脚時時間の左右対称性に影響する歩容の観察項目を明らかにするため に,脳卒中患者56名を対象とした.歩行映像から,動画解析ソフトを用いて,立脚時 間と遊脚時間を測定し,麻痺側の時間を非麻痺側の時間で除し,立脚時間比と遊脚時 間比とした.立脚時間比に影響する歩容の観察項目は,ISw~MSwの膝関節屈曲(標 準偏回帰係数:-0.45),立脚時間(-0.25),MSw足関節底屈(0.23),TSt足関節底 屈(-0.29)が選択された.続いて,遊脚時間比に影響する歩容の観察項目は,TSt慎 重さ(0.41),立脚時間(0.42),ISw外旋(0.24),MSw足関節底屈(-0.13)が選 択された.それぞれR
2は0.75,0.85となった.
回復期病棟に入院している脳卒中患者における歩行の満足度に対し,関連する歩容 の観察項目を明らかにすることを目的とした.脳卒中患者57名を対象とし,歩行の満 足度をVASによって測定し,歩行満足度を従属変数,歩容の観察項目を独立変数とし た変数増減法による重回帰分析を行った.歩行の満足度に影響する歩容の観察項目は,
麻痺側歩幅(標準偏回帰係数:-0.31)とTStの股関節伸展(-0.27)が選択された.決 定係数R
2は0.198であり,回帰式の予測精度は低い結果であった.
【細則様式第1-2号続き】
【細則様式第1-2号続き】