1 章 これか らの健康増進
田原 靖昭
湯川 幸一
第 1章では,ウエルネス運動の中核 としての健康運動の意義 と注意事項を概 説 し,大島町住民と伊王島町住民への質問紙調査結果か ら住民の健康運動に対 する意識 と要望を分析 し,地域における健康運動の生活化のための方策を検討 する。
1 節 健康づ くりと身体運動
ウエルネス運動はアメリカ合衆国を中心に 1 9 6 0 年代に生まれ, 日本には 1 9 8 0 年代に紹介 され,今 日にいたっている。 ウエルネス ( we l l ne s s ) とは 「 健康 づ くりのための琴養,運動,休養のバランスを考えた健康的なライフスタイル を自らがつ くりあげること」と言えよう 。 ウエルネスは,ヘルス ( he al t h) が狭義の健康として捉 らえ られがちになり一般に疾病/病気 ( di s e as e ) の反 対の状態と考え られるようになったことを避け,生活上の不都合であるイルネ ス ( i l l nes s ) の反対の状態 としてのウエルネスを目標概念としようとする運 動によって広まった。ウエルネスは 「 健康づ くりのための栄養,運動,休養の バランスを考えた生活」によって保証,実現される。古川の 『ウエルネスライ フのすすめ』によるとそこには 6 つの指針があると言われている ( 表 1‑ 1) 。
ウエルネス運動は健康づ くりのための身体運動に限ったことではな く,広 く 生活全般に及ぶ ものであるが,それで もウエルネス運動の中心は健康づ くりの ための身体運動の習慣化,生活化であると我々は考えている。健康づ くりのた めの運動には表 1‑2 に示すような効果があることが知 られている。まず,運 動することの直接的効果として心肺機能,筋力 ・脚力,骨,柔軟性,バランス
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表 1‑ 1 ウエルネスライフの 6指針
1 )ウエルネスとは選ぶ ものであ る。
い くつかの選択肢があ り自らの責任,興味, 自分の健康状態で選択で きること が永続的な力 となる。
2 ) ウエルネスとは一つの生 き方である。
自分 自身の生 き方であ る。なにが幸福か, その人の価値観が左右す る。 自分 な りの健康で幸福 な生 き方を持つ ことが必要 になろ う。
3 ) ウエルネスとは一つの プロセスであ る。
心身の健康は 「 生か ら死」まで継続的であ る。健康 と幸福の実現 に向か って人 は生 きて いる。 その 自分の求 め るものを得 るために,そ こに至 る過程 (プロセ ス)を大切 にす るか どうか。旅の 目的が 目的地のみな らず、 その途中 ( 旅程 ) を大切 にす るの と同様 である。
4) ウエルネスとはエネルギーを効果的に送 ることである。
自分が こうあ りたい と望むエネルギー (こうしたいと思 う力 ・願望)を 自分 の 意志で その健康や幸福 の願望の実現のために必要 なプ ロセ スでエネルギーを効 果的に送 ることであ る。
5 ) ウエルネスとは心 と身体の統合である。
「 心身‑ 如 」 と言 う言葉がある。心 と身体 は高 い相関関係 にあ る。病気 になれ ば気持 ち も消極的にな りやすい。 自らの健康 と幸福の実現のために心 と身体 を 高い レベルで統合 させ ることが重要 とな る。
6 ) ウエルネスとは自分 自身をいとお しみ受 け入れ ることであ る。
健康 と幸福の実現のために 自分 自身を知 り, 自己受容か ら出発 し,自分を大切 に し,自分をかわい く思 う気持ちが大切 となる。 そのために , 「自らは何をなす べきか」を考 え。実行す る事が重要 とな る。
出所 :古川文隆 『ウエルネスライフのすすめ』
感覚が維持 ・強化 され,エネルギーが消費 され,運動 に必要 な体力が向上す る。 また,関節の訓練,廃用性老化が防止 される。 さらに発汗 し新陳代謝が促 進 し,ス トレスが解消される。
次 に,疾病や疾病 リスクの予防 ( 免疫効果) ,症状改善,治療効果 と して,
肥満,高血圧,耐糖能低下 ( 糖尿病) ,高脂血症の予防 ・治療効果等がある。
1章 これか らの健康増進
虚血性心疾患の危険因子の三大危険因子は,高血圧,高 コレステロール, タ バ
コ ( 喫煙)と言われている。有酸素運動は,血清脂質の改善効果,降圧効果, さらに体重減少 ( その多 くは体脂肪減少)効果による血清脂質改善効果,降圧 効果が報告 されてお り,虚血性心疾患の予防効果があることは明 らかである。
また,運動す ることにより血中グルコースが筋肉中で消費されるために血糖値 が低下する。継続的な運動によって組織のインス リン感受性が高進 し,その結 果 グルコース代謝が改善する。
運動の効果 として最後にメンタルヘルス改善が知 られている。運動中や汗を かいた後の 「 快適さ」の増加やランニ ングハイがその直接的例である。さらに 運動の行動 ・社会的効果 として,精神的若さと積極性を維持させ,社会参加 と
表 1‑2 運動 の健康 増進効 果 ( 田原 ,門 司)
1 )直接 的効果 : ① 心肺機 能 の活性化 ( 塾 エ ネルギーの支 出
③ 筋 肉,骨 の強化 ・老 化 防止 ( 参 発 汗,新陳代謝促進
⑤ ス トレス解 消
⑥ 関節 と筋 肉の柔軟性 とバ ラ ンス感覚 の維 持
⑦ 運動体 力の向上
2 )疾病 や疾病 リス ク予 防/治療効 果
① 虚血性心疾 患 の予防
② 降圧,軽度 高血圧 の予 防,症状改善
③ 糖 代謝 改善
④ 減量 と肥満予 防 ( 9 精 神的諸症状 の改善
⑥ 骨 そ しょう症 防止
⑦ 腰痛,肩 こ りの予防 ,症状 改善 ( 参 防衛体 力 向上
3 )行動 ・社会的効果
① 精神的若 さ と積極性 の維持
( 診 「閉 じこもり」予防 ,社会参 加促進 ( 卦 仲 間づ くりの効 果
( 参 「ぼけ」 の予 防
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仲間づ くりを促進す る。連動をグループで継続的に行 う時に仲間ができること が多い。それ は今回の運動教室で も実感 された。仲間がで きることによって
「 閉 じこもり 」 を減 らし,「 ぼけ」予防や 「 ぼけ」による精神症状の出現を減 少 させることが可能である。
このように健康運動には様々なポジティブな面が存在するが,運動にはけが や身体の突然の変調の危険が伴 うため,基礎的な注意事項を遵守すべ きであ る。
まず,健康に対す る基礎的知識 と自己の健康に対する十分な情報をもつこと が大切である。そのために定期健康診断を受け,その結果を理解す る必要があ る。運動はあ くまで自己責任において行な うことが原則であるので,専門家の 意見を聞きなが ら, 自分の体調に気をつけて,自ら判断を くだす必要がある。
高血圧の人などは,運動以前に血圧を測定 し,平常よりもかなり高い場合は運 動を控えるべ きである。また連動中の体調の変化に気を付けて異常を感 じた ら
中断する,急激に激 しい運動を しない,ウォー ミングア ップ, クールダウン, ス トレッチ体操に十分の時間をとる,急激ではな く徐々に強度や継続時間を増 加 させ る, 日頃か ら体調維持に気をつけることなどが必要である。
次に訓練を受けた指導者とともに運動をすること 。 効果的で安全な運動の強 皮, 1回の時間,頻度などは年齢差,男女差,体力差,その他の個人差が関係 す るので指導者の配慮が必要である。 ウォーキ ングな どでは特に問題 はない が,新 しい運動種目に挑戟する場合や,強度を増す場合には,指導者 と相談 し なが ら健康運動をすすめることが大切である。健康運動は継続することが重要 である。そのためには指導者 と仲間の力が必要である。
運動種目であるが,地域での運動教室ではどの種 目が最 もよいかは一概には 言えない。体重が重い人や膝に痛みのある場合には膝や腰に負担がかかるラン ニ ングよりもエアロバイク ( エルゴメーター)こぎゃ水泳が適 しているなどと いうことはあるが,それぞれの好みの問題があり,色々挑戟 して自分に適 し, 継続できそうな連動種 目や運動スタイル ( 頻度,強度,場所,実施時刻)を決 定すればよい。今回,伊王島町,大島町で実施 された水泳 ・水中エアロビク
ス,エアロビックダンス, ミニバ レーボールについて述べてみたい。
水中エアロビクスではまず中高年の女性に水着を購入 して もらうことか ら姶
1 章 これか らの健康増進
めた。最初 は水着を着 ることに抵抗があったが, プロのインス トラクターや保 健婦の上手な指導で,皆が水着 となって楽 しく水中エアロピックスをすること がで きるよ うにな った。 これは伊王島町では民間の温水 プールが利用 しやす か ったという条件に も恵まれたか らであった。
ェアロビックダンスはプロのインス トラクターの指導で全員一同に実施 し, ウォーキ ングとは違 った身体の動 きをす ることもあ り,特に女性 には好評で あ った。大島町では主に ミニバ レーボールを実施 した。最初はボールに触 った こともな く多 くの参加者が危なげであったが, 1 年後の観察では全員が楽 しく 参加 し,技術 も上達 していた。 これは町の体育指導委員の指導の成果であ り, かな りの高齢者であ って も競技的要素のあるスポーツを楽 しめることが確認で
きた。
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