米国私営退職年金制度の基本的諸事項(三)
その他のタイトル Basic Features of Private Pensions in America (3)
著者 川元 英二
雑誌名 關西大學商學論集
巻 4
号 2
ページ 79‑94
発行年 1959‑06‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021766
被用者の負担金についてー事情の如何に拘わらず被用者自らの負担金は利息付または無利息で返還される︒
②
これは同制度の基本的原則の︱つである︒この場合︑古い制度の多くは無利息であるが︑適当な利息をつけること が今日の傾向となっている︒被保険式では被用者は通常返還金をもらうか︑標準退職年令で支給開始の年金を受け るかの選択権を持っている︒この場合負担金を保険会社へ存置することにしたときでも︑年金開始前いつでも返還
(a)
米国私営退職年金制度の基本的諸事項曰
1離職給付
︵川
元︶
の外に年金制度自身の終了について付記した︒
退職年金制度は元来退職年金を与えるために設定されるのであるが︑比較的小さい割合ながら退職まで麗主の下 に留っていない人もあるということを認めねばならない︒それで退職年令前に種々なる事情で会社との関係を絶つ に至る被用者の権利について述べる必要がある︒これ等の事情は離職・死亡・廃疾の三項目に分けられる︒なおこ
ー
五 離 職
・ 死 亡
・ 廃 疾 給 付 お よ び 制 度 の 終 了
J I I 米国私営退職年金制度の基本的諸事項
元
国
英
でき
る︒ (b)
米国忠営退職年金制度の基本的諸事項回
四支給形態の点からは雇主負担金の 金として引出し得る権利を保留している︒なお個別年金︵或いほ保険年金︶契約団体取扱或いは団体保険年金制度では被用者はその負担金で離職のときまでに購入した年金額を保持できるのみでなく︑その契約の保険料払込を継続することによって上記年金額を増すこともできる︒また自家年金では被用者は通常ただ返還金の形だけで自己の負担金をもらうことができる︒
雇主の負担金についてー雇主負担金に対する被用者の権利は年金協約におけるその権利帰属の規定による︒
権利帰属
( v e s t i n g
) の語は雇主負担金に対する被用者所有の権利に関してのみ用いられる︒この規定ではい時の
点からは即時権利帰属とすることもできるし︑或る年令と勤務年数の条件が充足されるまで帰属を延期することも
回金額の点からは雇主負担金の全部帰属のこともあれば一部帰属のこともある︒多くの制度では甚本的
条件を充たすときには全部帰属のことになっている︒若干の制度ではいわゆる段階式帰属法︑すなわち条件充足の
程度に従い帰属の割合を異にするスライド式逓増法が採られている︒例えば一0年勤務後には四0彩帰属︑二五年
勤務後には全額帰属(‑五年勤務後且つ五五才到達のときも同様︶となる︒
一括払を含み種々のものがある︒なかには無返還据置年金に限定するものもある︒
最後に権利帰属が絶対的なりや条件的なりやの区別がある︒絶対的帰属とは少なくとも理論的には基本的条件が
充たされたときは何時でも全部的に一雇主負担金に対して権利帰属が生ずるものである︒その権利帰属は雇用終了の
事情︑すなわち離職・死亡・廃疾の如何を問わず生ずる︒他方条件的帰属はただ或る事情︑通常離職の場合だけ権
利帰属になるものである︒事実上この種の条件的帰属の規定は非常に広く採用されているので︑権利帰属の語は普
通被用者の離職の場合にのみ用いられている︒またこの語は上記の意味以上に広く用いられることもあるので︑こ
︵ 川
元 ︶
2死亡給付 ことであろう︒
( J l l
元 ︶
れを規定に使用するに際してはこの語の下に起ることになっている事柄を明確に指示する必要がある︒
条件的帰属ではいま︱つの条件の形が︑大多数の団体年金を含み多数の制度に︑見出される︒それは離職に際し て被用者が自らの負担金を一括金でなく︑据置年金で受取ることを選択した場合のみ︑雇主の負担金も被用者に帰
③
大多数の年金制度で離職のとき何等かの形で権利帰属を認める規定があるが︑重要な例外は団体交渉型である︒
この場合早期退職規定の下に利用し得る帰属以外は一切与えられない︒もっとも将来はこの方面も改善されて行く 権利帰属は実際上ほとんどつねに勤務年数或いは勤務年数と年令との結合が条件になっている︒そして全部即時
帰属は頗る稀である︒年令だけの条件による帰属も極く少数である︒勤務年数の観点から最も普通の要求は五年
‑0
年一五年或いは二0
年であって︑この場合後の方の期間が最も広く用いられている︒年令の条件としては四五︑
五0︑五五或いは六0オが普通用いられている︒
B a n k e r s T r u s t C o .
が最近行った慣習型についての二つの調査
に基づき︑婦属規定の概要を統計的に示したものが第
6表
であ
る︒
権利帰属規定の挿入は年金コストの増加を来すことは勿論である︒もっとも年令と勤務期間の条件は大いにコス トを減少する︒これは離職の大きい部分が低年令で且つ短期勤務後に生ずるからである︒
なお団体年金をみるに︑権利帰属は無酸出制では醐出制ほど普通ではない︒しかし従前よりも多くの雇主がこの
山給付を与えている︒
米国冦営退職年金制度の基本的諸事項曰
属するというものである︒
しかし死亡給付が他の形で与えられることがある︒
112‑4 1
2
一25
回無醸出の場合ー無醸出制では死亡給付の与えられることもあるが︑習慣的には与えられていない︒
のみでなく退職後の場合も︶︒
係に一定の死亡給付︑すなわち均一額或いは死亡者の一年分の給料に等しい金額が支給されるものがある︒被保険 式の個別保険年金契約団体取扱や団体保険年金は退職給付とともに自動的に死亡給付をも含んでいる︒前者におけ
る死亡給付の金額は普通退職時の年金月額各一0ドルに対し一
000
ドル或いは現金価格︵︵どちらでも大きい方︶ その説明は次の無醸出制の項にゆずる︒
第 6 表
最近新設或いは修正の退職年金制度にお ける離戦の際の雇主負担金権利帰属規定
1948 50* 1950 52※ 年 制 度 年 制 度
19彩 24彩 権利帰属の種類
権利帰属なし
勤務年数完了を条件とする権利帰属 10年或いほ同年未憐 15年
20年或いは同年超 計
一定年令到達を条件とする権利帰属 50オ
55オ 60オ 計
10年乃至20年勤務完了及び一定年令 到達を条件とする権利帰屈
45オ或いは同オ未満 50オ
55オ 60オ 計
年令或いは勤務年数条件無し即時権利
帰属 3
解雇のみを条件とする権利帰属 3
資料不完全 1
合 計 100
・新設制度100および修正制度117を含む。
※ II 97 II II 138 11 D.M. McGill: ibid., p.60
14 71 0‑ 31
13 61 0‑ 29
7 9 7 5 8 l
‑ 3
9027‑8 1 1 3
米国秋営退職年金制度の基本的諸事項国
2‑2‑10
゜
ー︵川
元︶
自家年金では雇主負担金と無関
︵退
職前
あるが︑それはその制度の型によるわけで︑ 上記の外の死亡給付も与えられることも 前後を問わず︑普通それは雇主に返還される︒ 担金については︑団体年金では死亡時の退職 求している︒なお被用者死亡のときの雇主負 の州では被用者負担金のこの処理を法律で要 される︒この給付は一括金として死亡被用者 出制では死亡被用者負担金の利息付或いは無
固
利息積立金に相当する死亡給付がつねに支給
の遺産または指定受取人に支払われる︒若干
固 退 職 前 死 亡 給 付 り 醸 出 制 の 場 合 ー 醸
四
︵川
元︶
い︑修正現金返還付年金選択権の行使された場合には︑払込まれた被用者負担金総額から既支払年金総額を差引い
た残額を返還している︒なお何れの種類の退職年金制度にしろ︑その採用の標準的支給形態は選択自由であり︑そ
れによって死亡給付の大きさが異なるわけである︒この場合退職給付の費用だけで行うものもあれぼ︑特別の費用
廃疾給付ー実際ほとんどあらゆる年金制度は疾病或いは傷害のため一時労働不能になった被用者を保護する
規定を含んでいる︒傷害或いは疾病により永久に労働不能になった場合︑すなわち永久全部廃疾に対しては︑年金
制度の大部分では︑早期退職特権によって与えられている救済以外には何の規定もない︒前述のように同規定では︑
標準退職年令よりも早く退職の被用者が︑一定年令および勤務年限条件を充したとき︑これに減額した給付を与え
ることになっている︒経験上廃疾になる率は高年令で最も大きく︑また最も多くの早期退職は廃疾にもとづくもの
である︒さらに永久全部廃疾になった被用者の大部分は早期退職への受給条件を充たすようになっているものであ
る︒若干の制度では廃疾被用者に︑より低年令で且つより少ない勤務年数でも退職を許している︒この場合その年 3
米国底営退職年金制度の基本的諸事項~ の支出を加えて行うものもある︒ に無醸出制の普通の形態では如何なる死亡給付も与えられない︒
五
一方多数の醸出制では年金管理上の諸規定に従
(b)
退職後死亡給付ー退職後の死亡に対する給付は退職年金が支給される標準的形態に左右される︒既述のよう て死亡給付を与えている︒ となっている︒他方後者では年金月額各一0ドルに対して一
00
0ドルの保険を与えている︒
団体年金では死亡給付として前述の通り死亡が退職の前後如何を問わず︑被用者負担金の返還以外何等支給しな
いから︑無醸出のときは何の返還金も給付もない︒しかし団体年金採用の多数会社は︑別個の団体生命保険によっ
し︑連邦所得税からの免除を許していない︒ 等の理由のあるときだけ制度の終了を許している︒ は事業費として課税を免れるのであるが︑ 4 米国私営退職年金制度の基本的諸事項国
金額は︑それまでに権利のできた年金額と保険計理的に等しい金額であって︑多くの場合すこぶる僅かな年金額と
なるにすぎない︒このことを考慮して少数の制度ながら永久全部廃疾には雇主の負担金をも帰属させ︑被用者に一
一方では廃疾退職日までにできた権利に荼づき標準退職年令で受取る年金額
を実際退職時から支給するものもある︒この場合雇主は別に負担金を支出して付加的年金を与えるわけである︒ま
た僅少の雇主ながら被用者が六五オで支給開始の
OA SI
年金額に等しい定期年金を実際退職時から与えている︒
多数の大規模な制度︑殊に団体交渉からの制度では永久全部廃疾に対し分離され且つ明確になっている一給付を
与えている︒その年金額は予め示され︑標準退職年金額の或る割合またほ退職時給料の或る割合または均一額とな
っている︒最近の団体交渉型の数制度では六五オまで一カ月五0ドルの廃疾年金を与え︑六五オから︑廃疾日まで
に権利発生の標準退職年金額を支給するようになっている︒自家年金制度では廃疾年金は通常︑退職年金と同じ基
金から支払われるけれども︑被保険式制度では同制度の全体をなす一部分として与えられることもあり︑或いは︑
それは保険会社が廃疾危険の契約を好まない場釦であるが︑退職制度と別個の自家廃疾年金によることもある︒
制度の終了ー一般に退職年金制度では長年月の間被用者の負担金は課税後の純所得から払われ︑雇主のそれ 括金で引出すことを許すものもある︒
制度によっては雇主負担金の権利帰属の条件が厳重を極めるものがあ
る︒課税上注意しなければこのような条件を充した僅かの恵まれた者だけに制度終了に際し積立金を分配すること
になるかも知れない︒それで財務省は破算・債務不履行・所有権の変更・経営陣の変更・負担金継続の経済的不能
︵川
元︶
そしてこれ等の理由以外では雇主の負担金も全課税年度に対
......
ノ
︵ 川
元 ︶
七
年金制度の終了に際してほ年金制度に所属する資金はすべて現職ならびに退職の被用者に帰属するものとしてい
される制度では全払込済年金︵雇主の負担金での購入分を含む︶ る︒但し同制度のあらゆる債務を満足させた後残る金額は雇主の取得を許されている︒毎月或いは毎年年金の購入⑧ への権利が普通被用者に帰属する︒
注山
D.
M.
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76
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③
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の一九五
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五二年の慣習型の調査で七五彩以上が何等かの形で︑離職のときの権利帰属を認めてい
る︒︵本文第6表はこの明細表である︒︶連邦保障庁の三四六の団体年金の研究でも九四彩が条件的帰属でこれを認めている︒
(D
.M
. McGill"ibid
.,
. 5 p
9 )
山
K .
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k,
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i d . ,
p .
8 0
固団体年金をみるに︑以前は無利息が流行したが︑近年その流行が衰えて来た︒このためにコストが増加するが︑被用者への
好影響がこれを償って余りあるものと考えられている︒しかしカナダの制度の約五0%が無利息の基礎による由︒
( K .
Bl
ac
k,
J r . :
i b
i d . ,
p .
7 7 )
⑥この場合の個別保険年金契約団体取扱︵無醸出制︶における年金支給開始前の現金価格
(c
as
h value)
とはその年金購入に払
込まれた負担金総額︵利息付或いは無利息︶を意味するであろう︒
切通常の据置団体年金制度では直接には廃疾給付について規定していない︒以前同上制度に永久全部廃疾になった被用者に対
する保護について規定があった︒しかしこれ等の給付は保険会社が一般に生命保険契約に付した永久全部廃疾所得給付を中止
或いは大修正するの止むなきに至ったとき︑団体年金契約からこれを除いた︒
( K .
B la c
k , J
r . :
ibid••p.81)
⑧プラックの著書に﹁団体年金制度の修正或いは中止﹂について記しているので次にこれを述べよう︒
⑱制度の修正ー修正には大小種々あるが︑多数の修正は
OASI
制度の結果行われた︒この湯合修正の日までに生じた給
付について被用者が不利な影響を受けないようにというのが目的である︒
⑮制度の中止ー団体年金契約では雇主はつねに︑その年金の購入の中止を文書により保険会社に通知し︑或いは支払日の
到来した保険料を単に支払わないことによって中止することができる︒一方保険会社も下記の三条件の一つで︑より以上の保
米国冦営退職年金制度の基本的諸事項曰
86
る ︒ ことにした制度もある︒若干の制度ではその価値のより良き認識を目的として同上制をとっている︒ ト引受けが不可能とみられることが多いからでもあろう︒他方年金額を大きくするために被用者が進んで醸出する
無醸出制をとる制度は大部分繰延払賃金の観念に基づいている︒この観念を認めないならば単一負担の論拠はか② なり薄れる︒しかし同論拠を強めるものとしては︑単一負担によって被用者の干渉から比較的自由となり︑管理上
便利でもあり︑また積立に融通性があるということも展々挙げられている︒雇主の負担金は税法で事業費として控
除され得るということもその有力な一論拠である︒被用者が自己の退職年金に醸出する負担金は税払の手取所得か
ら払われており︑ ー
六
米国冠営退職年金制度の基本的諸事項曰
険料の収受を拒み︑制度の中止を行うことができる︒切保険料猶予期間内の保険料不払込回加入者が一定数︵二五人また
は五
0
人︶未満となり︑或いは醸出制の醸出被用者数が加入有資格者数の七五彩未満になったとき州保険会社が契約の条文
に従い定めることのできる新料率または新条件に雇主が同意しないときである︒
大多数の醸出制団体年金ではこの中止の湯合雇主負担金の被用者への権利帰属が即時無条件で行われもるのと規定してい
る︒また大多数の会社は中止した制度の復活期間として1カ年を与えている︒復活の場合中止期間の保険料払込についてはこ
れを払わぬようにも取定めることができる︒
( K . B la c k ,
Jr
.:
ibid••pp.89~90)
経理的には退職年金コストを被用者も負担するか否かに従い醸出制と無醸出制とがある︒
被用者醸出の是非ー伝統的ながら今日でも醸出制が数において優っている︒これは麗主の経済状態が全コス
その負担金は同じ一ドルでも雇主以上に醸出者の負担になっているということも論ぜられてい
財
政(1)
︵川
元︶
八
3
︵ 川
元 ︶
ルについては被用者に負担させない傾向がある︒ 四
彩が
︑
2 的交渉力︵団体交渉の場合︶
九
一九
五
要するに或る年金制度の決定は広い意味の経済およぴ課税事情•他産業会社の同制度の実施情況・労資間の相対
なく
︑
・会社の収益事情および雇主の政策によって影響される︒③ 団体交渉型および慣習型制度と醸出の実際ー団体交渉型では雇主が全負担金を引受ける傾向がある︒
o i
五二年
Ba
nk
er
T s
ru
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Co .
が行った九七の同上型制度の調査によれば︑被用者に負担金を要求したものが一
つもみられない︒しかし僅少の同上型は被用者の自発的な負担金を許している︒
慣習型の大多数では被用者も負担することが求められている︒しかし反対の方向への傾向が新設定および修正さ
れた制度の中に起って来ている︒例えば連邦保障庁の新設団体年金の調査によれば醸出制は一九三八l四二年の九
一九
四二
l四六年では五八形に逆転︑世界第二次大戦の終了とともに流行し一九四八年頂点八五彩に達し
たが︑その後再逆転して一九五0年頃には五九彩となった︒また
Ba
nk
er
sT
ru
st
Co .
の慣習型制度の研究でも相
似た一般的傾向がある︒さらに前者の研究によれば醸出制でも年所得のうち最初の三
000
ドル或いは三六
00
ド
一九
五
O
五二年に設定の同上型のうち三五彩は何等の同負担が
また
二五
彩は
一︱
10
00
ドル以下の年所得に対しては負担金を求めないものであった︒後者のうちの大部分は
三六00ドル以下の年所得に対して負担のないものであった︒そして全所得についての被用者負担を求めるものは
三七彩だけであった︒
負担金と基金積立方法ー団体交渉型を除き殆んどあらゆる年金制度は前払積立
( a
d v
a n
c e
f u
n d
i n
g )
を実施
している︒すなわち退職年金の支給に必要とされる金額が退職時に先だち取っておかれるのである︒そして何時そ
の制度の終了を行っても終了の時日までに権利付与年金はすべて支給できるような方法︑或は合理的な或る期間に
米国乱営退職年金制度の基本的諸事項曰
準備もされていない︒ 米国私営退職年金制度の基本的諸事項曰
そのことが実現できるように計画されている方法を完全稿立
( f u l
l
f u
n d
i n
g )
の方法という︒完全積立は大部分は
過去勤務年金に対して如何にするかでその然るや否やが定まる︒前者の意味での完全積立の制度はまだ極めて僅少
である︒財務省の規定によれば取りおかるべき金額は最少限度︑当年度に権利発生の年金債務に︑過去勤務年金債
務には積立てがないものとしてのその無積立の過去勤務債務への利息︵予定利率による︶相当額を加えたものとな
っている︒事実上前払積立方法を採る殆んどあらゆる制度が︑当年度に権利発生の年金を支給するのに充分な資金
に︑過去勤務債務の一部を加えたものを毎年とっておいている︒そして全債務を実行可能の最も早い時日に積立て
るよう期しているようである︒
大多数の団体交渉型および若干の他の制度は︑退職時一時払積立
( t e r
m i n a
l
f u
n d
i n
g )
の方法を採っている︒こ
の方法では退職被用者に支給される年金は完全に積立てられるが︑現職被用者への権利発生年金に対しては何等の
或る限られた数の制度が無積立
( a
p a y ‑
a s y
o u ‑ g
o , c
as
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i s
b u
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e n
t )
で実施されている︒すなわち年金債務
支弁につき何の資金も前以て取りおかれることはなく︑給料支払と同様に取扱わ札ている︒この方法では︑現職お
よび退職被用者ともにその年金支給に対し何等︑分離された基金或いは第三者的保証を当てにすることができない︒
なお第三者的保証のある唯一の制度は生命保険会社との契約になるものである︒もっとも直接参加保証式では保
険会社は既払保険料が支弁可能である限りにおいて債務の支払に当る︒
課税金額からの控除については前述︵本稿﹁加入範囲および加入資格条件﹂︶の通りであるが︑しかし雇主ほ権
利発生年金のコストおよび︑毎年とっておかるべき金額の積立にかなりの融通性が与えられている︒例えばコスト
︵川
元︶
10
( イ
) 4 一方非被保険式の負担金は開業保険計理士によって測定されるが︑同計理士ほ如何なる財政的責任をも負うもの
でない︒このような負担金は離職や繰延退職を計算に入れるのみでなく︑死亡や利息に関して保険会社の計算にお
ける
より
も︑
れ︑どの被用者についても退職日までには完全ななし崩し的年金購入がなされていなければならないが︑多数の非4 被保険式ではこのような債務に対する年賦償還的購入は何等試みられていな州︒
負担金の計算方式ー上記のように団体交渉型を除き前払積立が普通実施されているが︑過去勤務への積立は
別としてここに将来の勤務に対する負担金の計算方法を述べよう︒
均一負担割合︵対給料︶方式
( l e v
e l
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f o
p a y r
o l l
me
th
od
)
ーこの方法は科学的自家年金を含
み︑負担金額建方式で︑最も一般的に採用されている︒この場合年金額は全期平均給料型︑或いは最終平均給料型
がとられる︒そして負担金はつねに給料に対し或る一定の割合として表わしたものとなる︒この計算には予想給料
表・現価および終価計算に用うる予定利率.死亡率生存率等々が使用される︒なおこの方法では払込期間の初めの
方では負担金はその年々の権利発生年金に必要なコストを超える金額となるであろう︒それは毎年権利発生の年金
額を同一としても年令の進むと共に負担金が高くなり︑さらに全期平均給料型ではその上普通増給があるから毎年 い
ない
︒
米国私営退職年金制度の基本的諸事項曰 仮定が膜々内輪といえない︒
︵川
元︶
また多くの被保険式では過去勤務債務について︑その一部が毎年払わ の算定には将来の死亡•投資上の収益・離職・繰延退職その他の要素を考慮に入れることができる。しかし年金コストを低く算定する仮定は明かに基金の支払能力を害うものである︒この点被保険式の計算は預金管理式および直接参加保証式は別として︑もっとも内輪の基礎により行われ︑離職および繰延退職に対して何等の予想もなされて
5 (ハ)
米国冦営退職年金制度の基本的諸事項日
追加的に権利新発生の年金額が加わるという考え方からも分るであろう︒
付加的平準負担金方式
( i n d
i v i d
u a l
l e v e
l p
re
mi
um
a s b
i s )
‑この場合死亡率と利率のみが考慮され︑給料
は全期一定でまた離職はないものと仮定して︑一応平準負担金が計算されている︒増給のときにはその時の年令での
増給分に対する付加的負担金が︑毎年同額増徴されるものとする︒このようにして或る被用者について継続的に増
給ありとすれば︑負担金は継続的に累増することが予想される︒この負担金の増加は単に絶対額だけでなく対給料
割合でも起り得る性質のものであるから︑後になって切の場合よりも雇主は負担を重く惑ずるに至るであろう︒
毎年一時払負担金方式
( s i n
g l e
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ba s
i s )
‑この方式では毎年権利発生の年金の
コストは一時払負担金として計算される︒従ってその以後の年々に権利発生の年金に対してはい回と異なり何の⑤ 考慮もされていないものとして計算される︒
負担率ー醸出制では被用者負担金の額が払込能力に合理的な関係を持っていなければならない︒負担金が高
すぎると充分な数の被用者が同制度の保護を選ばぬかもしれず︑それでは同制度設定の目的が達せられず︑また次
の実際的見地からも支障を来たすからである︒すなわち例えば醸出制団体年金では少なくとも加入有資格被用者の
七五%が制度設定に際し加入選択を行うことが要請されている︒
年金額建方式制度では従来の最も一般的な実際採用方法は︑被用者負担金の給料への割合すなわち負担率の数を
将来勤務年金額の給料への割合︵百分率︶の二倍i三倍としたものである︒例えば年金額がその給料の一%宛生ず
るものとすれば︑被用者の負担率は普通その給料の二彩
i ‑ ︱︱彩と定められる︒そして雇主は同制度で保証されてい
る将来の勤務に対する年金額を準備するため︑それに不足する金額を負担する︒さらに雇主はほとんどつねに過去
( 口
)
︵川
元︶
(b) (a) 6
︵川
元︶
の勤務に対する年金額に必要な全コストを負担するのである︒
一時払コストの一〇彩よりも多い払込を要 負担金建方式では扉主の負担率と被用者のそれとの間に一定の比率が定められ︑前者は少なくとも後者と同率なることが期待されている︒若千の制度では後者の二倍或いは三倍を醸出している︒負担金建では雇主負担率が予め容易に分り雇主に便利であるのに反し︑年金額建では雇主負担金は上記のように補完的であり︑不確定である︒
団体年金負担金の払込方法ー据置団体年金で負担金の払込方法について次のような方法が採られている︒ま
た実行し易いので月払で給料から差引く方法が通常行われている︒雇主は一括して一年分を払い︑被用者は月払と
するものもある︒無醸出制でも醸出制ほどでないが雇主負担金の月払が多い︒
将来の勤務への負担金についてー団体年金月払の場合保険会社に送る保険料は雇主の負担金に︑前月の間に
被用者給料から差引いて得た被用者負担金を加えたものである︒この場合多数会社は或る一年末での被用者および
雇主の各負担金総計の比を計算し︑翌年の間麗主の負担金をこの比率に基づくようにし︑年末に適当な調整を行っ
ている︒なおコスト支弁のために或る合理的な融通性を雇主に与えている︒
過去の勤務への負担金について1この負担金の金額は制度の実施日における全過去勤務に対する年金額への
一時払保険料といえる︒このコストの実際上の払込にはかなりの融通性が与えられている︒なお連邦所得税法の規
定によれば雇主の負担金に対しては所得税計算に際し一年につき一時払コストの一〇彩以内を控除に考慮されるに
すぎない︒また或る制度で退職年令に既に達し或いはこれに近い老令被用者に対するかなりの給付金額を含むもの
とすれば︑保険会社は彼等の退職日前にその給付を全額購入するよう︑
求できる︒この場合同税法によれば雇主が或る一課税年度に控除を許されている負担金額の超過分はみな将来の課
米国私営退職年金制度の基本的諸事項国
92
注田
第7表
D . M . c G M i l l :
ib id ., p p. 65 6 8;
K .
B l a c k ,
Jr.:
ib id ., p .p 82 8 8
被用者離職に際する雇主への
返還保険料の計算例(2年勤務後)
第 2年度末に被用者離職の場合 第1年度間の払込額 第 2度末迄の 2形の利息 第 2年度払込額 第2年度末合計額 返遠保険料=合計額の96飴
被用者へ100%返遠のときの返遠保険料 但し雇主は上記差額を払うものとす 崩主・被用者ともに月10ドルの負担と仮定。
この計箕は月払のとき適用のもの。 (年払のときは利息は経過月 の全部に対して与えられる。)
被用者
$120.00 2.40 120.00 242.40 232. 70 242.40
K. Black, Jr.: ibid,, p.87
しな
い︒
8
米国私営退職年金制度の基本的諸事項国 離職の場合の雇主負担金の返還ー据置団体年金において雇主によって購われた年金は被用者が離職︒死亡・
廃疾となったとき取消され︑
これに対して払われた保険料︵利息付︶の九六形が雇主に与えられる︒過去勤務の保 険料については普通同上︵利息付︶
の九六形か同上︵無利息︶
の全額のうち大きい方となっている︒なお被用者へ 退職前の死亡は雇主の保険料率の計算で予期され︑
対し払込まれて来た麗主の保険料は生残者に対して利用されるであろうという ことも予期されている︒それで雇主は離職者が健康であるときだけ保険料の返 還を受け得る︒経験によれば離職被用者が健康なりや否やを保険会社が決定す ることは︑管理上困難な問題であって︑普通雇主が報告書を提出するが︑秘密 調査によりこれを補うこともある︒
またこのような被用者に 保険料率の保証ー団体年金で契約に含まれている当初の料率は通常五ヵ
年保証されている︒当初の期間後の料率は毎年保険会社が九
0
日の予告をもっ て契約応当日に変更することができる︒若干の会社では新料率を五カ年保証し ている︒なおこのような料率の変更は変更の効力発生前に購入の年金には影響
雇 主
$120.00 2.40 120.00 242.40 232. 70 223.00
の四形の控除金は普通扉主が引受けている︒
7 税年度に繰越すことを許されている︒
︵川
元︶
一四
(5) この切およびいは左記の文献から或る程度数字による説明を得られるであろう︒
合
計
三
•
オ
. 五九才
D . M . M c G i l l ,
ed it ed : Pensions,
r P ob le ms an d T re nd s, p p. 29 3 0, pp .3 74 3, pp .1 23 1 31
②この﹁被用者の干渉からの自由﹂の意味には﹁その管理に従業員の参加を要求されるのでないかという危惧﹂︵日本生産性
本部•生命保険五二八頁)や「労資交渉の対象となった湯合に労働者は自分達の醸出割合に比例して支給を増加しようとする
おそれ﹂︵労働省労基局・退職金と年金制度の実際一八0頁︶も含まれているであろう︒
矧 一 九 四 九 年 米 国 合 同 鉄 鋼 労 組
( U . S
. A . )
が鉄鋼産業使用者側と行った年金・保健・保障・賃上げの交渉で︑使用者側の負担
の点に問題が起り事態が逼迫した︒そのとき大統領の命により調査委員会が作られたが︑その報告で﹁社会保険および年金の
費用は正常な事業経費の一部と考えらるべきで﹂あり︑また﹁年金の経費は一年一被用者当り最高︱二
0
ドルまで﹂と勧告
された。このことは使用者負担の年金制度を確立する上に他産業にも極めて重要な意義を持った。(藤林敬一―-•退職金と年金
制度一七二l
四頁
︶ ぬ前払稼立を可とする理由をいま少しく考察するに︑一般的には扉主は被用者が麗主の事業の利潤に貢献している年々に︑そ
の被用者の年金に対し準備すべしというにある︒被用者側からは︑その完全積立から離れている程度に応じて︑第一1一
者的
保証
を欠き︑雇主の好意と財政的能力に依頼しこれに左右されることになり︑単に不安を惑ずるだけでなく実際上年金支給なく困
却するを保し難い︒一方雇主側も積立ての遅れるほど負担金の合計額が︵利息を考えない場合であるが︶より多額となり重い
負担となるからである︒次に一覧表で例示しよう︒︵
D . M . M c G i l l ,
ed·"ibid••p.39,
p .1 3 1 ) 諸種の負担計算方式による負担金比較表
( M c G i l l ,
e d・ , i b i d. , p ‑ . 13 1 ) ーニ0オ加入•六0オ退職・給料年一―1000ドル(毎年同じ)年金年一五00ドル・予定利率一――彩ー 均一負担割合方式︵対給料六・九彩︶毎年一時負担金方式
(毎年権利発生年金三七•五0ドル)
︱︱
六・
︱︱
10
ドル
四六0•八0
1 1
0 オ
年
令
二0七ドル
米国冠営退職年金制度の基本的諸事項曰 八︑二八
0(
対給料六・九彩︶
1 1
七二0 . 0 七
︵川
元︶
九、五八四•
00
C同上八%︶
一五
一九・三四
0(
同上一六・一%︶ 退職時一時払稼立
94
勤 務 残 存 表
勤務残存数 (1) 30 10,000 31 7,463 5 0 2 ,.737 51 2,. 671 6.4 1,.839 65 1. 735
第(2)欄の数字は1937Standard Annuity Tableによる。
第(41梱は廃疾給付の与えられぬときは離識と合併する。
年令 嗜 一 数
16 12 . . . 1 31 4 . . . 5 5
廃 米国私営退職年金制度の基本的諸事項日
D.
M.
M cGill :
i b i d . , pp .
146169
J.A•Hamilton
and D. C
. Bronson "Pensions, p
p. 2 19
‑̀ 27 5
労働省労基局﹁退職金と年金制度の実際﹂︱二八
l‑
︱︱
二頁
︑一
八0l
八三頁
いま簡単に切の均一負担割合方式による全期平均給料型︵将来の勤務に対するもの︶の負担金計算方法について述べよう︒
︵日本生産性本部・同上書五︱︱︱五
l ‑
︱一
六頁
Mc
Gi
ll
: i b i d . , pp . 116120)
この場合被用者の各年令の死亡率・年金支払開始 後の死亡率.廃疾率.離職率等を示す経験表により例えば上掲のような勤務残存表
( s e r v i c e t a b l e ) が作成される︒これ等 以外の要素として各年令の俸給率と糠立金を投貸して得られる利率を予定しなければならない︒
いま乎均給料型を採るとすれば年金額は勤続期間中の乎均給料に一定率︑例えば一%と勤続年数とを掛けたものであり︑
さらに均一負担割合方式をとるとすれば︑年々の負担金はその総額がそれぞれの年度の給料総額の一定割合となるように定
められる︒すなわち離職者廃疾者に対して何の給付も与えぬものとしまた例示の勤務残存
表を用いれば︑制度設定時一︱
‑0
オの被用者一万人中標準退職年令六五オの退職者が一七三 五人の割合で生ずることになり︑従って先ず一七三五人に対する上述の方法による年金額
を求め︵実際上の一︱
‑0
オの人数に対しては一万人との比例で計算︶︑次に=ニオの被用者
には
七四
六一
一一
人に
対す
る一
七一
1一五人の割合で年金額を求め︑以下各年令に対し同様計算を
行ない︑これ等年金額総額を得る︒そして実際上の総人数に対しては各年令別に比例で求
めたもの4
合計を算出し︑さらにこれ等年金額合計に対して必要な六五オ時の年金現価
︵年金コスト︑計算法省略︶総額
A
を算定する︒次に制度設定時現在の実際被用者に対し︑
前記の給料率と勤務残存表を用いてこれ等被用者が標準退職年令までに支払わるべき全給 料終価総額
Bを求める︒
A‑B
をr
とすれば毎年給料の
r彩が負担金となるわけである︒
︵実際上は他に事務費が必要︶︒
11)中の死亡者数
121
21 16
加:
27
: . 9
離職者数13) 2,500 1,269
2}
︵川
元︶
一六