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金融商品取引業の業規制

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金融商品取引法研究会研究記録 第 29号 金 融 商 品 取 引 業 の 業 規 制 財団法人 日本証券経済研究所

財団法人 日本証券経済研究所

金融商品取引法研究会

金融商品取引法研究会

研究記録第 29 号

金融商品取引業の業規制

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ま え が き

 日本証券経済研究所の金融商品取引法研究会は、その時々の証券市場、資 本市場をめぐる様々な法律問題について、ご専門の研究者や法律実務家の先 生方を中心に、また、金融庁のご担当者や実務関係の方々にもオブザーバー として参加していただき、ご報告、ご討論をしていただく場である。研究会 の都度、出来るだけ早く研究記録を刊行し、皆様のお役に立ちたいと考えて いる。  今回の研究記録は、平成 21 年3月 11 日開催の研究会における黒沼悦郎委 員(早稲田大学大学院法務研究科教授)による「金融商品取引業の業規制」 についてのご報告と、このご報告をめぐる研究会でのご討論の記録である。  黒沼先生のご報告は、金融商品取引業の業規制、行為規制につき、これま であまり取り上げられてこなかった点に絞って分析され、問題提起されたも のである。金融商品取引業の定義について、営利性の要件が削除されたこと の意味、対公衆性の要件に関連し、解釈上業登録を要しない行為をどのよう に捉えるか、等の問題を取り上げられた。そのほか、外務員の代理権が兼業 業務や付随業務におよばないこと、投資一任契約と投資運用業登録との関係、 有価証券関連以外のデリバティブ取引等が厳格な分別管理義務が課されてい ないこと、投資者保護制度の対象とされていないこと等の問題を取り上げら れた。また、行為規制に関連し、無登録業者の広告規制の適用、書面交付義 務の免除と説明責任、不招請勧誘の禁止に関する解釈問題、等々さまざまな 興味ある問題を取り上げ、意見も述べられた。このご報告をめぐり、委員の 先生方から活発なご議論があり、いつものように大変有意義な研究記録と なっている。  ご報告をいただき、議事録の整理にご協力いただいた黒沼先生に厚くお礼 を申し上げ、また、神田会長、前田副会長をはじめご参加いただいた先生方、 オブザーバーの方々に心から感謝申し上げる次第である。  2009 年4月 財団法人 日本証券経済研究所  理事長

 髙 橋 厚 男

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金融商品取引業の業規制

(平成 21 年3月 11 日開催) 報告者 黒 沼 悦 郎      (早稲田大学大学院法務研究科教授) 目  次 はじめに ………1 Ⅰ.金融商品取引業の範囲 ………2  1.金融商品取引業の意義 ………2  2.適用除外行為 ………4 Ⅱ.業規制 ………9  1.業務範囲の規制 ………9  2.外務員の代理権が擬制される業務の範囲 ………10  3.一任勘定取引 ………12  4.分別管理義務・投資者保護基金 ………15 Ⅲ.行為規制 ………17  1.広告規制 ………17  2.契約締結前書面の交付 ………18  3.非対面取引における説明義務の履行 ………20  4.不招請勧誘・再勧誘の禁止 ………21  5.虚偽表示等の禁止 ………23  6.内閣府令による禁止行為 ………24 討 議 ………26 報告者レジュメ:「金融商品取引業の業規制」 ………44 資 料 ………59

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金融商品取引法研究会出席者(平成 21 年3月 11 日) 報告者 黒 沼 悦 郎 早稲田大学大学院法務研究科教授 顧 問 森 本   滋 京都大学大学院法学研究科教授 会 長 神 田 秀 樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授 副 会 長 前 田 雅 弘 京都大学大学院法学研究科教授 委 員 青 木 浩 子 千葉大学大学院専門法務研究科教授 〃 太 田   洋 西村あさひ法律事務所パートナー・弁護士 〃 川 口 恭 弘 同志社大学大学院法学研究科教授 〃 神 作 裕 之 東京大学大学院法学政治学研究科教授 〃 近 藤 光 男 神戸大学大学院法学研究科教授 〃 中 村   聡 森・濱田松本法律事務所パートナー・弁護士 〃 藤 田 友 敬 東京大学大学院法学政治学研究科教授 オブザーバー 松 尾 直 彦 東京大学大学院法学政治学研究科客員教授 〃 桑 原 政 宜 大和証券グループ本社法務部長  〃 永 山 明 彦 日興シティホールディングス法務部長 〃 金 井 仁 雄 みずほ証券法務部長  〃 小 川 宏 幸 日本証券業協会客員研究員・ 亜細亜大学法学部准教授 〃 柿 崎   環 日本証券業協会客員研究員・ 東洋大学法科大学院准教授 〃 木 村 真生子 日本証券業協会客員研究員・筑波大学ビジネス科学 研究科アシスタントリサーチャー 〃 金   賢 仙 日本証券業協会客員研究員・早稲田大学 法学学術院(法学研究科)客員研究助手 〃 廣 瀬   康 東京証券取引所総務部法務グループ課長 研 究 所 髙 橋 厚 男 日本証券経済研究所理事長 〃 若 林 良之助 日本証券経済研究所常務理事 〃 関     要 日本証券経済研究所顧問 〃 小 林 和 子 日本証券経済研究所主任研究員 〃 萬 澤 陽 子 日本証券経済研究所研究員 〃 安 田 賢 治 日本証券経済研究所事務局次長 (敬称略)

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金融商品取引業の業規制

前田副会長 定刻になりましたので、金融商品取引法研究会の第 14 回会合 を始めさせていただきます。 なお、オブザーバーの変更があり、みずほ証券の浅場達也法務室長が退任 され、金井仁雄法務部長が就任されています。 金井オブザーバー よろしくお願いいたします。 前田副会長 既にご案内のとおり、本日は、早稲田大学の黒沼悦郎先生より、 「金融商品取引業の業規制」についてのご報告をいただきます。 では、黒沼先生、よろしくお願いいたします。 黒沼委員 早稲田大学の黒沼でございます。よろしくお願いいたします。

は じ め に

本日の報告は、あらかじめ定められた表題に従って「金融商品取引業の業 規制」としましたが、内容は、業規制と行為規制の両方を含んでおります。 この研究会では、行為規制について、一部のものはこれまで取り上げられ ていたのですが、全般的には取り上げられていなかったので、初めから、業 規制というのは行為規制を含むものであるという了解であったと思っており ます。 ただ、業規制と行為規制を全部取り上げるということになりますと、とて も一回では済みませんので、本日の報告では、業規制と行為規制のうち、こ れまで取り上げられてこなかったもの、取り上げられてきたものは、集団投 資スキームに係る業規制とか、それから、金融商品販売法との関係で、適合 性の原則についての行為規制といったものは、この研究会でも取り上げてき たと思いますので、そういうものを省いた内容になっています。 それでも量が多いものですから、私の勝手な考えで、自分として、どうも よくわからない、疑問に思っている論点のみを取り上げて、皆様のご意見を

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伺ってみたいと考えまして、そういう論点のみを取り上げております。した がって、余り重要でない論点も含まれておりますので、その点はご容赦願い たいと思います。 そこで、金融商品取引業の範囲に関する問題から入りたいと思います。

Ⅰ.金融商品取引業の範囲

1.金融商品取引業の意義 (1)営利性の要件 まず、金融商品取引業の意義ですが、金融商品取引法では、金融商品取引 業の定義規定から営利性の要件が削除されました。これは、無登録業者によ る詐欺的な金融商品の販売行為が営業に該当するか否かが明らかでないとの 指摘を受けて行われたといわれています。 もっとも、無登録業者による金融商品の販売行為であっても、無登録業者 もそれによって利益を上げることを目的としているのだから、それは営業に 該当するのではないかとも考えられます。 しかし、さらに考えてみると、それは、詐欺的行為によって利益を上げる ことを目的としているにすぎないから、正規業者が有するのと同じ意味での 「営利性」ではなかったとも説明できる、そういう指摘が既になされていま す(資料4・60 頁(注 11))。 また、金融機関による有価証券関連業の禁止との関係で、金融機関の中に は、営利目的を持って事業を行うことを禁止されている金融機関もあること から、そういう金融機関にも規制が及ぶことを明確化する必要があったとの 説明もなされています。 (2)対公衆性の要件 次に、対公衆性の要件という問題点です。 従来から、事業会社や個人が行う有価証券の売買等が証券業の対象から除 外されることに争いはありませんでしたが、その説明の仕方には違いがあり ました。

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第1の見解は、証券業に該当するには対公衆性が必要であり、事業会社や 個人の行う有価証券の売買等は、対公衆性に欠けるので証券業に該当しない としていました。ここにいう「対公衆性」とは、一般大衆を相手に取引をす る体制がある場合を指すと説明されています。 第2の見解は、事業会社や個人による有価証券の売買等は、投資目的で行 うものであるから、証券業に該当しないとするものであります。 さらに、対公衆性とか投資目的といった一般的な要件を想定するのは難し く、証券業に該当するか否かは、規制の必要性から個別に判断していくしか ないとする見解もありました。 金融商品取引法の立案担当者は、金融商品取引業の要件に対公衆性が含ま れることを前提としたため、事業会社や個人による有価証券の売買等を適用 除外取引に指定しておりません。 この点については、私募の取り扱いは、従来から対公衆性がないにもかか わらず、証券業や金融商品取引業の対象とされてきておりますし、広く流通 することを予定していない集団投資スキーム持分等が有価証券に加えられた ことから、対公衆性、すなわち、一般大衆を相手に取引するか否か、不特定 多数の者を相手とするか否かを要件とすることは難しいという見解が金融商 品取引法のもとでもなされています(資料4・56 頁)。 もっとも、対公衆性の要件は、形式的に金融商品取引業に該当する場合に、 その該当性を否定する事由でありますから、金融商品取引法の対象行為のす べてが、対公衆性の要件を満たしていなければならないわけではありません。 私募の取り扱いについてはそういう説明が可能であろうと思います。 ただ、金融商品取引法では、投資運用行為や投資助言行為も金融商品取引 業を構成する行為としたことから、金融商品取引業への該当性を否定する要 件として、統一化された要件を考えることは難しくなっているのではないか と思います。 他方、投資目的を基準とする見解に対しては、投資目的という概念自体あ いまいであるということ、例えば、デリバティブ取引をリスクヘッジ目的で

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行う場合には、それが投資目的に含まれるかどうか、投資目的といっても、 さまざまなものがあり得るということを指摘できますし、金融商品取引業者 による自己売買業務のように、投資目的で行われる場合であっても、規制対 象とすべき場合があることは否定できないように思います。 加えて、先ほどと同様に、金融商品取引業を構成する行為の範囲が拡大さ れたことを考慮しますと、投資目的でないことを金融商品取引業の要件とす ることはやはり難しいのではないかと思います。 このように考えますと、金融商品取引業を構成しない行為を業規制の適用 除外規定にすべて書き込むことが望ましいと思われます。他方で、後述のよ うに、解釈による適用除外を認める余地があることも否定できず、そのよう な場合には、取引類型ごとに規制の必要性を検討して、業登録の要否を決定 せざるを得ないのではないかと考えます。 2.適用除外行為 (1)営利性の要件の削除 そこで、業の定義からの適用除外行為ですが、金融商品取引法では、金融 商品取引業の定義から営利性の要件が削除され、みなし有価証券の自己募集 や自己運用が金融商品取引業とされたため、金融商品取引業を構成する行為 の範囲が不必要に拡大する懸念が生じました。 そこで、金融商品取引業の定義から除外される行為を個別的に列挙するこ とにしています(2条8項柱書、施行令1条の8の3、定義府令 15 条、16 条)。 こういった適用除外行為の定めというのは、証券取引法時代にはなかったも のであります。 個別列挙された行為とこれらを適用除外する目的につきましては、資料 1−1の 42 ページ以下に説明がございますし、43 ページの図表6にまと まったものがありますので、参照していただければと思います。 この適用除外方式については、松尾教授の一連の見解が参考になると思い ます。松尾先生は、このような方式を採用した以上、今後は、実質解釈の名

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のもとに、形式的には金融商品取引業に該当する行為を該当しないと解釈す ることについては、慎重であるべきだとされています(資料 1-1・40 頁)。 そして、金融庁の平成 20 年2月 21 日の公表文書において、いわゆるセキュ リティ・トラストに係る信託受益権の扱いは、一定の要件のもとで第2種金 融商品取引業(有価証券の私募の取り扱い)に該当しないとの解釈が示され ている点について、法的明確性を確保すべき観点から、適用除外として明示 的に指定することが望ましいとされています。 他方、松尾教授も、金融商品取引業の要件として対公衆性の要件があり、 適用除外規定に個別列挙されていない行為についても、対公衆性が欠けるこ とを理由に登録を要しない行為があり得るということは認めつつ、ただ、「対 公衆性」を「不特定多数」の意味として広くとらえるのは適当でなく、厳格 にとらえる必要があり、したがって、対公衆性の要件を欠くことについては 慎重な検討が必要であるとされています(資料2・15 頁)。 私自身は、対公衆性という要件ではなくて、取引類型ごとの規制の必要性 から、解釈上、業登録を要しない行為があると考えています。ここにいう「規 制の必要性」というのは、業登録を受けることによりいわゆる業規制が適用 されるほか、業を構成する行為について行為規制が適用されることになりま すので、業規制と行為規制の双方の適用の必要性を勘案しなければならない ということになろうかと思います。 いずれにしても、具体的に解釈上の適用除外行為があり得るのかについて、 個別列挙規定との比較で若干の検討を加えてみたいと思います。 (2)個別の検討 ①プロ顧客を相手方とする有価証券関連以外の店頭デリバティブ取引等 個別列挙された適用除外規定というのは数多くあるのですが、集団投資ス キームに係るものなどは、もう既に検討されているのではないかと思います ので、私が特に気になった2つのもののみ、ここでは取り上げております。 第1は、定義府令 15 条のプロ顧客を相手方とする有価証券関連以外の店 頭デリバティブ取引等というものです。

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この適用除外規定は金融先物取引法を引き継いだもので、リスク管理能力 を備えたもの同士で行われる取引については、投資者保護の必要性が乏しい ということが理由として挙げられています。 ただし、この適用除外が適用されるための資本金の要件は金融先物取引法 よりも引き上げられておりまして、その結果、登録金融機関が資本金 10 億 円未満の中小企業等を相手方として行う金利スワップ取引等も金商法の規制 対象になります。資本金の要件は 10 億円ということになっていますので、 こうなるわけです。 そこで、まず、例えば、その 10 億円という要件を緩和することは認めら れるかということを考えてみますと、適用除外規定が設けられた趣旨から考 えて、資本金要件を緩和して規定を適用する、あるいは、解釈上の適用除外 を認めることは許されないだろうと思われます。 それに対して、プロ顧客を相手方とする有価証券関連の店頭デリバティブ 取引は適用除外とされていないわけですけれども、リスク管理能力を備えた 者同士で行われる取引であることについては、有価証券関連以外の店頭デリ バティブ取引等の場合と異ならないのであって、なぜ前者が適用除外とされ ていないのかという点については説明が難しいように思われます。 それでは、対公衆性の要件を欠くことを理由に、この場合に解釈上の適用 除外を認めることができるのかという点を考えてみますと、特定少数相手で あっても対公衆性の要件に欠けることはないとしますと、例えば、プロ顧客 の要件を満たす事業会社同士が、有価証券関連の店頭デリバティブ取引等を 行う場合には、金融商品取引業の登録が必要であることになりそうです。 これに対して、取引類型ごとの規制の必要性から適用除外の範囲を画する のであれば、プロ顧客が店頭デリバティブ取引の契約当事者となる場合には、 有価証券関連かそれ以外かを区別する理由がないこと、事業会社がポート フォリオ改善のために行う有価証券売買等が解釈上適用除外とされるのと同 じ理由がここでは成り立つと考えられることから、有価証券関連の店頭デリ バティブ取引を解釈上の適用除外取引と解する余地は大きくなるのではない

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かと思います。 これは一種の思考実験でありまして、明文で規定されていない適用除外を 解釈上認めるということなので、本当にこれを適用除外にすべきかどうか、 政策的にそれが適当かどうかについて詳しく考えた上での結論ではありませ んけれども、考え方自体について、皆様のご意見を伺えればと思っている点 であります。 ②事業者等の為替リスクヘッジ目的の行為 第2は、施行令 1 条の8の3第1項4号と定義府令 16 条1項3号、4号 に関係する事業者等の為替リスクヘッジ目的の行為であります。 物品の売買等を業とする事業者が、取引相手の為替リスクをヘッジする目 的で、相手方との間で行う店頭通貨デリバティブ取引は適用除外とされてい ます。その理由は、商社が行うこのような取引は、輸出入取引の売買価格を 円貨で固定する手段として行われるものであり、実質的に独立した投資性の ある金融取引とはいえないからであると説明されています(資料 1-1・50 頁)。 また、もう1つの条項では、企業グループ内において、子会社の為替リス クをヘッジするために、親会社が子会社との間で行う店頭通貨デリバティブ 取引は、企業グループ内における一体的なリスク管理のために行われる側面 が強く、それ自体を業規制の対象とする必要性が低いことから、適用除外行 為とされています。ただし、要件として、親会社は内部統制報告書の提出義 務を負う上場会社等でなければならないとされています。 事業会社が、自己が投資をする目的、あるいは、自己がリスクヘッジをす る目的で店頭デリバティブ取引を行う場合に、金融商品取引業の登録を要す るかは、金融商品取引法のもとでも解釈問題として残っていると思いますが、 この適用除外規定はそれに触れるものではなく、相手方のリスクをヘッジす る目的で行う店頭デリバティブ取引が、一定の場合に適用除外となることを 定めるものです。 このうち、商社の行うデリバティブ取引は、貿易取引に付随する取引にす ぎないことから、独立した業規制が不要とされるものです。このように他の

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取引に付随するデリバティブ取引は、これは別の研究会で指摘されていたこ とですけれども、例えば、エアコンを販売する家電量販店が顧客との間で天 候デリバティブ取引を行う、具体的には、夏の気温が上がらなかったらキャッ シュバックするというような取引など、ほかにもあると思われ、そのような 場合に解釈上の適用除外が認められるかが問題となります。ここでも、付随 取引であることを理由とする適用除外を対公衆性の要件の解釈によって認め ることは難しいのではないかと思います。 それに対し、リスクヘッジ目的の店頭デリバティブ取引は、他の取引に付 随することが多いという取引の性質に適用除外の根拠を求めるのであれば、 解釈上適用除外になるとの判断を導きやすいように思います。もっとも、そ もそも、他の取引に付随することを理由に適用除外を認めてよいかというこ と自体、検討の必要があるかもしれません。 次に、企業グループのリスク管理のために行われる通貨のデリバティブ取 引を、例えば、内部統制報告書提出会社以外の親会社に認めてよいかという 点が問題になります。 適用除外規定が内部統制報告書の提出を要件としているのは、デリバティ ブ取引を提供する側に当たる親会社にリスク管理能力があることの徴憑とす るためではないかと思います。 企業グループ内の取引であれば、対公衆性の要件が欠けてしまうので、そ もそも、このような適用除外を設ける必要さえなくなってしまうようにも思 われるのですが、対公衆性を要求する立場からは、内部統制報告書提出会社 以外の会社にも認めざるを得ないのではないか。提出会社か否かという点で 区別をする理由は出てこないのではないかと思います。 企業グループ内で取引が完結するという当該取引の性質を理由に適用除外 を認める場合も、やはりリスク管理能力の有無は問われないということにな るように思います。

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Ⅱ.業 規 制

適用除外行為については、ほかにも検討を要する点はいろいろあると思い ますけれども、以上でこの部分は終わりにしまして、業規制のほうに入りた いと思います。 1.業務範囲の規制 まず、業務範囲の規制についてです。 金融商品取引業者の業務範囲の規制は、第1種金融商品取引業または投資 運用業を行う業者については、届出・承認なしに行うことのできる本来業務、 付随業務(35 条1項)、届出を要する業務(同条2項)、承認を要する業務(同 条4項)に分ける仕組みが維持されています。 第2種金融商品取引業または投資助言・代理業については、業務範囲の規 制はありませんが、他に行う事業が公益に反すると認められる場合には、そ もそも登録を拒否され、または登録取消等の処分を受ける仕組みになってい ます。 第1種金融商品取引業を行う金融商品取引業者について見ますと、付随業 務については、デリバティブ取引の原資産の売買を追加し、投資法人の資産 の保管を届出業務から付随業務に変更するとともに、M&Aの相談・仲介業 務、経営相談業務を付随業務として行えることを明確化しました。 届出業務については、宅地建物取引業、不動産特定共同事業を承認業務か ら届出業務へ変更し、内閣府令において、相続関連業務、排出権取引、有価 証券・デリバティブ取引以外の資産に対する投資、不動産管理業務などが追 加されています。 業務規制についても、私自身が気になっている次の3つの問題のみを取り 上げたいと思います。 そのうち、初めの2つは業規制の中核にかかわるような問題ではありませ んが、余り指摘されてこなかった点だと思いますので、話をさせていただき

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たいと思います。 2.外務員の代理権が擬制される業務の範囲 旧証券取引法 64 条の3は、「外務員は、その所属する証券会社に代わって、 その有価証券の売買その他の取引並びに有価証券指数等先物取引等、有価証 券オプション取引等、外国市場証券先物取引等及び有価証券店頭デリバティ ブ取引等に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす」と 規定していました。 (1)学説の状況(平成 10 年改正前) 学説は、平成 10 年改正前の議論でありますけれども、「有価証券の売買そ の他の取引」について、外務員の定義を定める2条8項各号の一に該当する 行為、それから、43 条但書の承認に係る業務に属する行為がこれに該当す ることはもちろんのこと、これらの行為や外務員による有価証券の売買等の 勧誘行為に関連して、顧客から有価証券や金銭の引き渡しを受ける行為も「有 価証券の売買その他の取引」に含まれることについて、異論はありませんで した。 この 43 条但書の承認業務というのは、専業制がとられていた平成 10 年改 正前証取法のもとで、大蔵大臣の承認を受けて行う証券業に関連する業務の ことをいいます。 (2)平成 10 年改正 平成 10 年改正では、専業制が廃止され、付随業務、兼業業務、承認業務 の区分けがなされたわけですが、平成 10 年改正法のもとで、外務員の代理 権が擬制される業務の範囲は、付随業務、兼業業務だけでなく、承認業務に 及ぶとする見解もありました。 私自身は、平成 10 年改正で外務員の定義に変更が加えられ、兼業業務の みに従事する役職員は外務員としての登録を要せず、その結果、その者の行 為は 64 条の3によって証券会社に帰属することがなくなったことから、平 成 10 年改正法のもとでの代理権の擬制範囲は、外務員の定義を構成する行

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為(64 条の1項1号・2号)及び旧 34 条1項の付随業務に限定されると考 えておりました。これらの解釈はいずれも、旧証取法 64 条の3第1項に、 有価証券の売買「その他の取引」という文言が用いられていたということを 根拠にしています。 (3)金融商品取引法 64 条の3第1項 ところが、金融商品取引法 64 条の3第1項は、外務員は 64 条1項各号に 掲げる行為に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなすと 規定し、外務員登録を要する行為である 64 条1項各号を引用しているわけ です。64 条1項各号は、その行為を行う者を「外務員」と定義する規定で して、政令指定事項もありますけれども、その政令は施行令 17 条の 14 に規 定が置かれています。この結果、外務員の代理権が兼業業務に及ばないこと が明らかにされたと思います。 さらに進んで、付随業務にも及ばないということをこの条文は示唆してい るように思われるわけです。 証券取引における外務員の代理権の擬制制度は、そもそも、沿革的な理由 によってつくられた特殊な制度でありまして、金融商品取引法 35 条1項に 規定する付随業務の範囲がかなり広範であるということを勘案すると、付随 業務について代理権が擬制されないということは不当ではないように思われ ます。これは法律改正によって従来の解釈が変更を迫られている点でありま して、考え直してみる必要があるのではないかと思っております。 さらに、金融商品取引法は、代理権の擬制範囲を外務員の定義規定と連動 させています。2条8項各号に定めるすべての行為が 64 条1項で列挙され ているわけではなく、そのうち外務員の定義に当てはまる行為を限定的に列 挙しているわけです。 その結果、例えば2条8項 16 号に規定する同項1号から 10 号の行為に関 して、顧客から金銭または証券・証書の預託を受ける行為については、金融 商品取引業の本業と位置づけられたにもかかわらず、代理権の擬制が及ばな いのではないかとの疑問が生ずるわけです。

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従来は、これは付随業務でありまして、有価証券の売買のために有価証券 や金銭の預託を外務員が受ければ、外務員に受領に関する代理権があるとみ なされて、その効果が証券会社に帰属する。外務員が金銭や有価証券を横領 した場合に、証券会社に対して返還を請求できるといった点に大きなメリッ トがあったわけですが、それは、先ほどのような規定が置かれていたという ことと、付随業務が代理権の擬制の範囲に入ると解釈されていたからであり ます。 これが外務員の定義規定に列挙されていないと、最も重要な部分が落ちて しまったのではないかとも考えられます。しかし、この点は、2条8項1号 の有価証券の売買、あるいは、2号の有価証券の売買の媒介、取次ぎ、代理 に関する行為として、当然に代理権の擬制の範囲内にあると解すべきではな いかと思います。これも解釈論なので、皆さんのご意見をお聞かせいただけ ればと思います。 3.一任勘定取引 (1)旧証券取引法 42 条1項5号 旧証券取引法 42 条1項5号は、いわゆる一任勘定取引を原則として禁止 し、内閣府令で一定の一任勘定取引を許容していました。ところが、金融商 品取引法 38 条及びこれに基づく内閣府令には、一任勘定取引の禁止を定め た条項がありません。金商業府令 117 条 21 号は、一任勘定取引のうち、い わゆるシステム売買を行う場合に、顧客と業者との契約を書面によって締結 することを求めていますが、これは、旧行為規制府令1条1項5号の規定を 引き継ぐものであります。しかし、他方で禁止を定めた規定は置かれていな いのです。 (2)40 条2号に基づく金商業府令の 123 条 13 号 40 条2号に基づく金商業府令の 123 条 13 号は、金融商品取引業者等が第 1種業または第2種業として、①顧客から売買の別、銘柄及び数について同 意を得た上で、適切な幅を持たせた同意(特定同意)の範囲内で価格を業者

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が定めることができる契約、②顧客から、売買の別、銘柄について同意を得 た上で、数または価格の一方について同意を得て、他方については業者が定 めることの契約、③書面同意によるシステム売買契約、④業者の役員及び使 用人の親族から、売買の別、銘柄及び数について同意を得た上で、価格を業 者が定めることができる契約、以上の4つのいずれかに基づく売買について、 十分な社内管理体制をあらかじめ整備することを求めています。この①から ④は、旧証取法のもとで例外的に許容されてきた一任勘定取引です。 このような規定ぶりから、一任勘定取引について、少なくとも次のように いえるのではないかと思います。 (3)一任勘定取引についていえること まず、投資運用業の登録を受けた金融商品取引業者は、顧客との間で投資 一任契約(2 条 8 項 12 号ロ)を締結して、一任勘定取引を適法にすること ができる。38 条に一任勘定取引を禁止する規定が置かれませんでしたので、 第1種業または第2種業として一任勘定取引を行うことは、それが投資一任 契約に当たらない限り許される。投資一任契約に当たる場合には、投資運用 業の無登録営業になる。そして、従来から証券会社に認められてきた上記① から④の取引を行う場合には、十分な社内管理体制を整備しなければならな い。 このように見ると、内閣府令は、上記①から④の取引を投資一任契約に当 たらないと考えているものと思われます。証券取引法の時代でもこれらの取 引は許容されていましたが、もしそれが投資一任契約に当たるのであれば、 投資一任業務の認可が必要だったはずですから、この解釈は改正の前後で変 わっていないことになります。 ただ、2条8項の行為に形式的に該当するけれども、金融商品取引業の登 録を要しないためには、さきに述べたように、個別の適用除外規定が必要で あるとすると、なぜこの場合に適用除外規定が設けられていないのかという 疑問は残るところです。 次に、①から④の類型に当てはまらない契約は、果たして投資一任契約に

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当たるのかという問題があります。 例えば顧客から売買の別、銘柄について同意を得た上で、適切な幅を持た せた同意の範囲内で、価格と数の双方について業者が定めることができる契 約、つまり、幾らまでの範囲で、ある銘柄について買ってほしい、具体的な 価格と数については一任するという契約は、2条8項 12 号ロの投資一任契 約に当たるのかという問題であります。 投資判断の全部または一部を一任されるとともに、必要な投資権限を委任 されることが投資一任契約の内容でありますから、投資判断の一部であって も、業者が定めることができる契約は投資一任契約であって、⑤の行為もそ のように考えると、投資一任契約に該当しそうです。しかし、そうだとする と、同じように考えれば、①から④の取引も投資判断の一部を業者にゆだね ているわけですから、投資一任契約に該当するのではないかという疑義も生 じるところです。 恐らく立案担当者は、内閣府令で社内管理体制の整備を義務づけていない 行為はすべて投資一任契約に当たり禁止される、投資運用業としての登録を 受けていない限り禁止されると考えていたのではないでしょうか。そうでな いと、投資一任契約に該当しないため、投資運用業についての登録を受けて いない業者もすることができる一任勘定取引については、十分な社内管理体 制の整備が義務づけられないことになってしまうからです。 しかし、法律の授権がないのに、内閣府令で定めると投資一任契約の定義 から除外されるというのはおかしな話でありまして、適用除外規定がない限 り投資一任契約に該当するか否かは、28 項 12 号ロの文言やその趣旨に照ら して解釈されるべき事柄のように思われます。なお、投資一任契約の適用除 外規定は、実は定義府令 16 条1項8号に一部定めがあるのですが、これに は先ほどの例のようなものは挙がっておりません。 さらに、もし解釈上投資一任契約に該当しない契約であって、金商業府令 123 条 13 号に該当しない契約があるとすると、その契約に金商業府令 123 条 13 号を適用ないしは類推適用するができるのかという点が問題になるわ

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けですけれども、この点は肯定して差し支えないのではないかと思います。 肯定して差し支えないというのは、これは十分な社内管理体制を整備せよと いう規定ですから、ある契約であれば整備しなくてよくて、ある契約であれ ばしなければいけないという性質のものではありませんので、形式上は類推 ということになるんでしょうけれども、その整備が義務づけられると解すべ きではないかということです。123 条 13 号を類推適用することはできなく ても、金商法 51 条に一般的な監督権限を行使できるという規定が設けられ ましたので、これに基づく処分は可能になっています。 4.分別管理義務・投資者保護基金 (1)有価証券取引および有価証券関連デリバティブ取引 平成 10 年改正証券取引法は、顧客資産についての証券会社の分別保管義 務を明確に規定し、金融商品取引法は、これを有価証券等管理業務に関する 特則として受け継ぎました(43 条の 2)。金融商品取引業者等は、特定性の ある有価証券、具体的には①有価証券関連の市場デリバティブ取引の取引証 拠金として顧客から預託を受けた有価証券、②有価証券関連業またはこれに 付随する取引に関し、(a)顧客の計算において金融商品取引業者等が占有す る有価証券、または(b)金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた有価 証券を、確実かつ整然と管理する方法によって、金融商品取引業者等の固有 財産と分別して管理しなければならないと定めています。 また、③金融商品取引業者等が預託を受けた預かり金等の金銭や特定性の ない有価証券については、金融商品取引業を行わないこととなった場合に、 顧客に返還すべき額に相当する金銭、すなわち顧客分別金を信託会社等に信 託することによって、金融商品取引業者等の固有財産と分別して保管しなけ ればならないとされています。 (2)有価証券関連以外のデリバティブ取引 これらに対し、有価証券関連以外のデリバティブ取引については、金融先 物取引法上、証券取引法と同程度の厳格な分別管理義務を課してこなかった

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ことを考慮して、金融商品取引法上も緩やかな分別管理義務を課すこととさ れています。(43 条の3) これに該当するのは、①市場デリバティブ取引に関し、(a)取引証拠金と して顧客から預託を受けた金銭・有価証券、または(b)顧客から預託を受 けた有価証券、及び②デリバティブ取引等に関し、顧客の計算に属する金銭・ 金融商品の価額に相当する財産でありまして、分別管理の方法については、 金商業府令で詳細が規定されていますけれども、例えば金銭については、保 証金であることが明らかな名義で預金すれば足り、信託することまでは求め られていません(金商業府令 143 条)。 このような分別管理義務の厳格さの相違というのは沿革によるものであり まして、理論的に正当化できるものではないように思われます。加えて投資 者保護基金の保護対象についても、金融商品取引法では証券取引法時代と同 様に、有価証券関連業及び有価証券関連デリバティブ取引に関する顧客資産 に限定をしています。投資者保護基金制度は、証券会社の顧客資産の分別管 理の徹底を原則としつつ、これを補完するものとして設けられたという立法 の経緯にかんがみて、高度の分別管理義務が定められていない有価証券関連 デリバティブ取引等以外のデリバティブ取引等については、適用対象から除 外をしたというふうに説明されております。 しかし、金融商品取引業者の参入・退出が容易であるという事情は、業者 の取り扱う取引の種類によって異なることはない上、分別管理義務が徹底し ていなければ、むしろ顧客資産の保護の必要性は増すわけでありますから、 分別管理義務及び投資者保護基金の制度のあり方について、再整理が必要に なってきているのではないかと思います。 これはいろんな事情があったのではないかと思いますけれども、私が憶測 するところでは、投資者保護基金が強制加入になっているというところから、 例えば外国為替証拠金取引業者もすべてそれに強制加入させて、それが破綻 した場合の保護まで全部面倒を見るというのは不可能に近いということを考 慮して、このような区分がなされているのではないでしょうか。

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仮に有価証券関連以外のデリバティブ取引についても、法的に厳格な分別 管理義務を課しさえすれば、投資者保護基金の強制加入の対象になってすべ てうまくいくかというと、そうはならないはずでありまして、幾ら厳格な分 別管理義務を課したとしても、それがきちんと遵守されなければ、破綻した ときに投資者に迷惑がかかるわけでありますから、制度設計から考え直す必 要が出てくるのではないか。投資者保護基金は強制加入ですけれども、強制 加入制度から見直しを検討していく時期がやがて来るのではないかと感じて おるところです。

Ⅲ.行為規制

1.広告規制 広告規制は、金融先物取引法、投資顧問業法にあった規定を参考にして定 められたものであり、一定の事項を必ず表示しなければならないとしている ことと、誇大広告を禁止している点に特徴があります。広告規制については さまざまな論点がありますが、ここでは無登録業者の取り締まりについて考 えてみたいと思います。 広告には業者の商号・名称、金融商品取引業者である旨、登録番号及び政 令で定める事項を表示しなければなりません(37 条1項)。表示すべき事項 を表示せず、または虚偽の表示をした者に対しては、6月以下の懲役、50 万円以下の罰金が課せられます(205 条 10 号)。 私は当初、無登録業者は登録番号を表示できないか、虚偽の表示をするこ とになるので、これにより無登録業者の取締まりが期待されると考えていま した。しかし、ちょっと考えてみればわかることなんですが、広告規制は登 録業者に対してのみ適用されますので、無登録業者は広告規制に違反するこ とができず、違反をして広告をしても罰則は適用されません。無登録営業で あるということによる罰則は適用されますけれども、広告をしたということ を根拠にして罰則を適用することはできないわけです。 それでは、無登録業者の広告には何の規制も働かないのでしょうか。金融

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商品取引業者の商号・名称、登録番号等は金融商品取引業者等登録簿に記載 され、公衆の縦覧に供されます(29 条の3)。無登録業者が、照合されるこ とを恐れて登録番号を広告に記載しなければ、投資者から無登録業者である と疑われることになりますから、この場合には、広告規制に投資者に対する 警告効果が発揮されるということになろうかと思います。 無登録業者が登録業者にはない商号を用い、架空の登録番号を広告に記載 する場合には、投資者は登録簿を閲覧すれば無登録業者であるか否かを知る ことができますが、普通、投資者はそのようなことをしないでしょうから、 投資者が無登録業者と取引をして被害を受けるという事態を適切に防止する ことはできないのではないかと思われます。期待できるのは、せいぜい行政 が広告についての監視を行う過程で、当該広告が無登録業者によるものであ るか否かを判別し、調査の上無登録である場合には、無登録営業としての告 発を行うということぐらいではないかと思います。 2.契約締結前書面の交付 契約締結前書面の交付(37 条の3)は、業法上の説明義務を規定したも のと理解されています。書面交付手続により投資者に与えられる情報は、業 者に関する情報、業者との契約に関する情報、商品のリスクに関する情報及 び手数料・租税等のコストに関する情報に限られておりまして、商品の価値 に関する情報は原則として含まれていません。例外は、みなし有価証券につ いての契約締結前交付書面であるかと思います。 他方、書面の作成やその交付にはコストがかかることから、さまざまな適 用除外の定めがありますけれども、過去1年以内に上場有価証券の売買に関 する情報を記載した書面、(上場有価証券等書面)を交付しているなどの場 合には、契約締結時に改めて書面を交付する必要はないとされています(37 条の3第1項但書、金商業府令 80 条1項)。上場商品等については、商品が 定型化されて一定程度の社会的周知性があること、取引所による上場審査等 を経ていることや公衆縦覧型開示が行われていること等が考慮されたものと

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説明されています(資料 1-2・123 頁)。 ここにいう上場有価証券からはカバードワラントが除外されており、また、 上場有価証券の売買等からはデリバティブ取引・信用取引等が除外されてい ます。これらの取引はリスクが大きくて、他の上場有価証券の売買取引とは 大きく異なる点が考慮されたものであります。 そして、上場有価証券等書面を交付してから1年以内に上場有価証券等売 買等に係る契約を締結していれば、当該締結の日に上場有価証券等書面を交 付したものとみなされるとの規定が置かれています(金商業府令 80 条3項)。 この結果、1年以上間を置くことなく上場有価証券等の取引が行われていれ ば、書面交付義務はなく、書面が交付されない以上、実質的説明義務に係る 金商業府令 117 条1項1号も適用されないと解されています(資料 1-2・124 頁、「金融庁の考え方」392 頁)。 確かに書面交付義務なしに説明義務のみを課すということになりますと、 結局、説明のために新たに書面を作成して交付したほうが簡便であるという ことにもなりかねず、書面交付義務を免除した趣旨が没却されます。そこで、 このような場合に説明義務の履行は不要であるとの行政解釈が示されたと思 われます。 しかし、上場有価証券等といっても、例えば外国市場で上場されている株 券と、国内市場に上場されている投資信託の受益証券とでは、リスクや手数 料が異なり、契約締結前交付書面の記載内容も大きく異なるはずです。した がって、1年以上間があかなければ改めて書面を交付しなくてよいとすると、 書面交付により説明義務を果たさせようとする法の趣旨が没却されるおそれ があるのではないかと思います。 また、金融商品取引法上の説明義務は、「顧客の知識、経験、財産の状況 及び契約締結の目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び 程度によらなければならない」と定められているわけですが、1年以上取引 を継続する間に、顧客の財産が減少したり、契約締結の目的が変化すること は幾らでもあり得るところです。そうだとすると、新たな取引に際しては、

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その時点の顧客の属性や投資目的に即した説明を行うことが法の趣旨に合致 するのであり、前に一度説明を聞いたからよいというものではないでしょう。 そこで、解釈の問題として、金商業府令 80 条3項の要件に合致すれば上 場有価証券等書面の交付は不要であるという点は動かせないとしても、金商 業府令 117 条1項1号の「書面の交付に関し」とは、書面交付がみなされる 場合も含むと解釈して、金商法上の説明義務は免除されないと解することは できないでしょうか。この点についても、ご意見を伺えればと思っておりま す。 上場有価証券等書面を交付したとみなされる場合には、書面交付に伴う説 明は不要であるとしても、勧誘に伴う私法上の説明義務は、この場合にも生 じます。その結果、行政解釈によれば、金融商品取引法上の説明義務が適用 される範囲は、私法上の説明義務の適用範囲よりもかなり狭まり、私法上の 説明義務が履行されていない状況にあるにもかかわらず書面交付義務が免除 されているために、金商法上の説明義務違反を理由に業者に行政処分を課す ことができない場合が生ずるように思われます。 3.非対面取引における説明義務の履行 契約締結前書面の交付は、電子的な方法によっても行われるわけでして、 そのような非対面取引での書面交付に伴う説明義務も、顧客の属性・目的に 照らし、理解に必要な方法・程度によらなければならない点では変わりがあ りません。その方法について、金融庁は、顧客が契約締結前交付書面等の内 容をよく読んだ旨を確認すること、顧客の問い合わせに適切に対応する体制 を整備すること及び照会頻度の高い質問についてQ&Aを掲載することな ど、実務上特段の工夫が必要であるとしています(資料 1-3・157 頁、「金融 庁の考え方」389 ∼ 392 頁)。 また、金融商品取引業者等の監督指針では、実務上の工夫の例示として、 金融商品取引をインターネットを通じて行う場合においては、顧客がその操 作する電子計算機の画面上に表示される説明事項を読み、その内容を理解し

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た上で画面上のボタンをクリックする等の方法で、顧客が理解した旨を確認 することが挙げられています(資料 1-3・157 頁)。説明義務の履行を実質的 に確保するためには、最低限交付書面の内容を読み理解した旨を顧客が確認 し、ボタンをクリックしなければ、購入までの画面に進めないようにする必 要があると思われます。 対面取引と非対面取引の大きな相違は、対面取引では相手の表情・態度か ら、顧客が本当に理解しているか否かを判別できるのに対し、非対面取引で はそのような判別ができない、あるいは難しい点にあります。 また、非対面取引のうち、電話取引では看取される相手の理解度に応じて 説明の仕方を変えることも不可能ではないのに対し、ATM取引やインター ネット取引では、説明の対応を変えること自体が難しいものと考えられます。 このような差異を考慮すると、金融庁の考え方や監督指針で示唆された方法 では、まだ対面取引と同等の説明の履行とは認めがたいように思われます。 例えば対面取引では、質問することについて心理的抵抗が低いわけですけ れども、インターネット取引では、質問するためにはQ&A欄をクリックし て自分の質問事項を探し、答えを見る、なお理解できない場合には電話をか けるという必要があるのであって、心理的抵抗が高いわけであります。 では、どうしたらいいのかというと、妙案は私にもありません。対面取引 と同等の説明を確保するための方策をどう考えたらいいのかは、難しい問題 として残されているように思います。 4.不招請勧誘・再勧誘の禁止 次に、不招請勧誘・再勧誘の禁止。38 条3号から5号についてであります。 不招請勧誘禁止の趣旨については、証券取引法研究会における梅本教授の報 告が鋭い分析を行っています(資料5・144 ∼ 145 頁)。 これを最初に紹介させていただきたいと思いますけれども、金融商品取引 に不招請勧誘の禁止を導入する趣旨としては、①本来なら業種による適合性 原則違反や禁止行為違反をとらえて処分をすればよいが、それでは処分が後

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追いになるため、不招請勧誘という形でルールを設定すると、顧客をそういっ た形で勧誘しただけで行政処分が可能になり、悪質業者の取り締まりに効果 を発揮できること、②金融商品は、その性質上クーリング・オフ制度になじ まず、実際にも投資顧問契約の締結に限ってクーリング・オフが適用されて いることから、クーリング・オフが認められない商品については、勧誘段階 で規制を厳しくすることに意味があると指摘されているところです。 さらに、③適用対象を政令指定制にすることにより、金融商品が政令指定 されないように、業界全体として自主規制を通じて健全な販売・勧誘を行お うとするインセンティブが与えられるという指摘も重要だと思われます。 ここでは、不招請勧誘の禁止に係る解釈問題として、禁止の対象である勧 誘とは何か、禁止の解除原因となる勧誘の要請とは何かということについて 検討してみたいと思います。これらについて定義規定は置かれていません。 そこで、例えば不招請勧誘禁止の対象外の商品を訪問または電話により勧 誘していたところ、外国為替証拠金取引に話が及ぶということは勧誘に当た るでしょうか。一般的には商品の説明は勧誘に当たると解すべきですから、 この場合勧誘に当たると考えられ、業者の従業員は勧誘の要請がなければ、 外国為替証拠金取引に触れることはできないということになります。 それでは、顧客が外国為替証拠金取引の説明を求めたとすると、それは勧 誘の要請に当たるでしょうか。もし当たるとすると、業者は顧客の意思を確 認した上で、それは勧誘の要請と同時になされているのかもしれませんけれ ども、外国為替証拠金取引を勧誘することができるということになります。 しかし、これでは、勧誘受諾意思確認義務(38 条4号)を課すのと同じ結 果となってしまい、投資者保護が「特に必要な場合」に不招請勧誘を禁止し た法の趣旨と反するように思います。したがって、この場合の勧誘の要請と は、訪問または電話をかける前に行われる必要があると解すべきだと思いま す。 それから、顧客が勧誘の要請をする前に、業者が勧誘を受ける意思の有無 を顧客に確認する行為も勧誘に当たると解すべきでしょう(資料5・147 ∼

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148 頁)。38 条4号は、「勧誘に先立って、・・・その勧誘を受ける意思の有 無を確認すること」と規定しており、あたかも意思の確認は勧誘とは別の概 念である、意思の確認は勧誘に当たらないかのように読めますが、これは当 たると解さないと、いきなり電話をかけて勧誘受託の意思を確認することが できてしまい、やはり 38 条3号の禁止の趣旨に反するからであります。 このような解釈をとると、38 条4号の「勧誘を受ける意思の有無を確認 すること」は 38 条3号の勧誘には当たるが、38 条4号の勧誘には当たらな いという解釈をすることになります。これは文言上不自然かもしれないです けれども、実質上そう考えないとおかしな結論になるのではないかと考えて おります。 不招請勧誘の禁止、再勧誘の禁止については行政処分の事例も出ておりま して、これは神田先生他編の『金商法実務ケースブックⅡ行政編』に行政処 分の例が挙がっており、法執行が厳格に行われていることがわかります。た だし、これらは旧金融先物取引法に基づくものです。 5.虚偽表示等の禁止 金融商品取引契約の締結またはその勧誘に関して、顧客に虚偽のことを告 げる行為が禁止され(38 条1号)、これに違反した者は、1年以下の懲役も しくは 300 万円以下の罰金を科せられ、またはそれらが併科されます(198 条の6)。 この虚偽事実の告知に類するものとして、契約締結または勧誘に関して虚 偽の表示をし、または重要な事項について誤解を生ぜしめるべき表示をする 行為も禁止されます(38 条 6 号、金商業府令 117 条1項2号)。この違反に ついては罰則はありません。 普通、表示には口頭の表示も含まれますので、虚偽の表示をする行為と、 虚偽のことを告げる行為との差異は明らかではありません。つまり、表示に は口頭の表示も含まれるとすると、虚偽の表示をする行為の中には虚偽のこ とを告げる行為が含まれるので、府令の規定と 38 条1号とは重なる部分が

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あるのではないかということです。 他方、この金商業府令の規定は、パブリックコメントの結果を踏まえて、 原案の「重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」の禁止に 加えて、虚偽の表示をする行為の禁止が追加されたものと説明されています。 そうだとすると、立案担当者は、恐らく虚偽の表示は虚偽事実の告知に含ま れないと考えたのではないかと思います。これは最初に話したのとは逆の方 向から見て、虚偽事実の告知の中に虚偽の表示が含まれるかというと、それ は含まれないと考えた、そのために虚偽の表示を虚偽事実の告知とは別に禁 止の対象にしたというのではないかということです。 もっとも、保険業法 300 条1項1号は、虚偽のことを告げる行為を罰則を もって禁止しているのですが、そこにいう「告げる」とは、口頭の表示に限 られないと解されています(保険研究会編『最新保険業法の解説』302 頁(大 成出版社、1996 年))。すなわち、文章による表示も告げる行為に該当する のです。 38 条1項の告げる行為にも口頭の表示以外の表示が含まれると解すれば、 そもそも内閣府令上の禁止行為に虚偽の表示を挙げる必要はなかったと考え られます。内閣府令が定められている現行法のもとにおいても、虚偽事実の 告知は虚偽の表示を含むものと解すべきでしょう。実質的にも、口頭で告げ る行為のみが虚偽告知として罰則をもって禁止される理由はないと思われま すから、金商業府令と金商法の本体の規定の両方に違反し、罰則を適用する ことも可能であると解すべきではないかと思います。 6.内閣府令による禁止行為 金融商品取引法 38 条6号に基づく禁止行為は、金商業府令 117 条1項1 号から 28 号まで列挙されています。これらには新設された規定、証券取引法、 投資顧問業法、金融先物取引法、抵当証券業規制法などから引き継いだ規定、 旧法を引き継いだけれども文言が変更された規定などさまざまなものがあり ます。

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それぞれの規定がどこに由来するかということについては、資料1−3の 図表 25 に要領よくまとめられていますので、ご参照いただけばと思います。 これらの規定のうち、金商業府令 117 条1項7号の迷惑時間勧誘の禁止は、 抵当証券業規制法施行規則、それから、商品投資販売業者の業務に関する命 令に規定があったものであります。 金融商品取引法では、個人についてはこの規制をすべての金融商品取引契 約に及ぼしましたが、法人については抵当証券、商品ファンド、金融先物取 引に規定を限定しています。この点については、個人、法人を問わず、一律 に禁止する方法でよかったのではないかと、指摘されているところです(資 料3・37 頁)。 関連していえば、府令に委任されたものではないんですけれども、38 条 5号の再勧誘の禁止は、一度断られたら、同様の商品については勧誘しては ならないというものですが、これも断られて勧誘してならないのは当然のこ とでありまして、適用範囲を今のように金融先物取引に限定する必要はな かったのではないかと考えているところであります。 その他気づいた点を1点だけ挙げておきますと、特別の利益の提供等の禁 止についてのものであります。旧証券取引法では、顧客に対し特別の利益を 提供することを約して勧誘する行為が禁止れていました(旧行為規制府令4 条2号)。 金融商品取引法では、金融商品取引契約につき、特別の利益の提供を約す る行為、または特別の利益を提供する行為自体が禁止れされています(金商 業府令 117 条1項3号)。これは恐らく損失補てんの禁止規定の書きぶりと そろえたものと思われ、このように規定を変更した結果、勧誘を伴わない利 益提供の約束や取引後の利益提供行為が新たに禁止の対象になったという違 いが生じているのではないかと思います。 特別の利益を約して勧誘する行為を禁止する目的は、利益提供によって投 資者の投資判断がゆがめられないように確保するという点と、公正な競争を 確保するという点の双方に求められていたのではないかと思います。特別利

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益の提供自体を禁止する形式が採用されたことによって、規制の目的が公正 な競争確保のみに純化されたのかという点が問題になります。この点は特別 に資料もなく、考える材料もないのですけれども、公正な競争確保のみが目 的ではなく、依然として投資者の投資判断がゆがめられないようにすること も、この規制の目的と解すべきではないかと思います。 そう解することによって、形式的にこの規定に違反して勧誘が行われ、投 資者が不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合に、業者の不法行為法上 の違法性を認定しやすくなるという違いが出てくるのではないかと思いま す。もっとも、特別の利益提供の禁止は、例えば保険業法 300 条1項5号に も定められていますが、保険業法上の禁止規定の理由は、他の保険契約者と の間に不公平が生じること、及び保険会社の事業及び保険市場全体の健全性 が害されるおそれがあるということが挙げられています(山下友信『保険法』 175 頁(有斐閣、2005 年))。保険団体の中での保険契約者間の平等の確保と いうことと、保険市場全体の健全性、保険業全体の健全性の確保ということ が理由であり、保険会社間の公正な競争確保というのは挙げられていないよ うです。 このように、業法によって同じような規定が設けられていても趣旨が異な る場合がありまして、こういった点は、将来、預金・保険を含む金融商品の 勧誘に関する規制について調和を図るとか統一するときに、よく考慮しなけ ればならない問題ではないかと思います。 以上、極めて雑駁な報告でしたが、ご教示をいただければ幸いです。

討 議

前田副会長 どうもありがとうございました。幾つかの具体的な解釈論上、 立法論上の問題提起を含めまして、大変貴重なご報告をいただくことができ ました。 それでは、ただいまのご報告につきまして、どこからでもご質問、ご意見

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をよろしくお願いいたします。 松尾オブザーバー(以下OBS) 経緯的なことは後で申し上げるとして、 ちょっと質問させていただきたいのですけれども、分別管理義務のところで、 投資者保護基金への加入義務の見直しというお話も若干されたように思いま すが、それは、より具体的にはどういうご趣旨でしょうか。 黒沼委員 具体的に何か提案をしたいということではありません。そもそも、 導入したときから、強制加入にすべきかどうかというのは議論があったとこ ろですが、基本的には、私は任意加入にしたほうがいいのではないかと考え ているところです。 川口委員 「Ⅲ.行為規制」の「5.虚偽表示等の禁止」のところですけれ ども、証取法のときは、たしか「虚偽の表示」を禁止していたのではないで しょうか(証取法 42 条 1 項 10 号、行為規制府令 4 条 1 号)。それが金商法 で「虚偽のことを告げる行為」が禁止行為となったので、いろいろな問題が 出てきたと思います。ご報告では、口頭の表示以外の表示も「告げる」に入 るということでしたが、ビデオの上映とかパンフレットの交付も、本当に「告 げる」と言えるのでしょうか。「告げる」とはいえないから、内閣府令(金 商業等府令 117 条 1 項 2 号)で、あえて「虚偽の表示」を禁止行為につけ加 えたのではないかと推察するのですが。 黒沼委員 「虚偽の表示」がつけ加えられた理由としては、パブリックコメ ントで、虚偽の告知に当たらないようなものもあるからというのが挙げられ ていたと記憶しています。ですから、そういう経緯があったことは確かだと 思います。しかし、実質的に考えて、口頭の表示でうそをつくと処罰される けれども、ビデオやパンフレットだったらいいという理由はないので、他の 業法の解釈の例もあるから、「告知」の中には表示一般が含まれると解すべ きではないかと申し上げたところです。 川口委員 直接口頭で伝えるほうが騙され易く、悪質なので、制裁も重たく なっているということも考えたのですが、ちょっと難しいでしょうかね。 それと、38 条6号は「前各号に掲げるもののほか」とあるので、6号を

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受けて内閣府令で禁止される行為は、1号で禁止される行為と別の側面があ る行為であるという解釈はあり得ませんか。 黒沼委員 そういう解釈はあり得ると思いますが、金融商品取引法では、除 かれる場合は一々書いていますよね。ですから、除く場合には、府令のほう で、括弧書きで金商法の禁止規定を除くと書くのが通常のやり方ですよね。 重なるかどうかというのは、私はそれほど問題はないと思うんですけれど も、金商業府令の規定によって金商法の法律の解釈が限定されることは、絶 対にあってはならないとは思いませんけれども、それによって規制の目的が 達成できない方向に限定されるのは適当でないと思っています。 藤田委員 みなさんが後ろの方について質問されているので、私も後ろのほ うで細かなことを一点質問させていただきます。 13 ページで、例の 38 条の3号、4号の関係で、相対的に「勧誘」という 概念を解釈されるというところですが、38 条4号の「勧誘を受ける意思の 有無を確認すること」は、3号の「勧誘」には当たるけれども、38 条4号 の「勧誘」には当たらないとの解釈を示されています。そうなると、電話を かけて、「こんな新しい商品があるのですけど、今から説明・勧誘に行って いいですか」といって、「いいよ」といわれ、その後訪問して勧誘したとす れば、3号に当たることになるのでしょうか。 つまり意思の確認が「勧誘」に当たると一般的に言い切ってしまうと、今 言ったやり方は違法行為になってしまいかねない。でも、これは許される典 型的な売り方かなとも思ったのですが。ですから,報告でお話になった結論 については黒沼先生に反対じゃないのですけれども、ご説明のような道具立 てまで用意して対処しちゃうと、今いった例のようなケースでちょっと説明 が難しくなるかなと思ったんですけれども。ちょっと誤解しているのかもし れませんが。 黒沼委員 不招請勧誘が禁止される商品については、いきなり訪問すること や電話すること自体が禁止されていると解すべきであって、「勧誘してもい いですか」と電話で聞いて、いきなり行くこともできないわけです。電話を

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