競争時代の介護サービス論 第5回 運営から経営へ (2)‑‑スタッフに求められる経営感覚
著者 岡田 耕一郎, 岡田 浩子
雑誌名 ふれあいケア
巻 4
号 9
ページ 76‑79
発行年 1998‑09‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1204/00000163/
競争時代の介護サー ビス論
第 5 回
E E
組 織 の ピ ラ ミ ッ ド(大企業)EB
組織のピラミッド(介護サービス提供機関)運 営 か ら 経 営
s ω ヘ
ス タ ッ フ に 求 め ら れ る 経 営 感 覚
S
川
︑ ︑ ‑
︑ ︑‑
︑ ︑
‑
︑ ︑
︑
‑
︑ ︑
‑
︑ ︑
‑ ‑‑ ‑
︐
︐
︐ ﹃
︐
︐
‑
︐
︐ ‑
' ︐'‑
'
J
︐ ' ‑
岡 田 耕 一 郎
(語学院大学経済学部助教綬)
岡 田 浩 子
(社会福祉士介護福祉士)
‑ は じ め に
介護サービス提供機関は︑﹁述件﹂
から
﹁経
常﹂
発想を転換すべきであるといわれています︒
山 古 川 刊
山 は や
円札 を身 につ ける よう に竹 即日 弘行 のぷ 品改 市が ぶめ られ
ているのですそれ
では
︑
現ぬのスタyフには統件
感覚は必要とされていないのでしょうかスタッフ
にと
って
︑
かなり気になる点です︑
前回 は︑
経営に対する誤併を取り上げ︑それらの
問題点を吟味することによっ
て ︑
経営とはどのよう
が︑
では︑それよりもかなり近く感じられまて
2
図(注1)
もち ろん
︑現
場の スタ ッフ の中 には
︑管 理者 のよ う に広 い視 野を 持っ て発 想す べき であ ると 考え てい る 方も いま す
︒と
ころ が︑ 管理 者か らは
︑ス
タッ フに その よう な発 想は 不要 であ ると いわ れて しま い︑ や る気 がな くな った とい うこ とも よく 耳に しま す
︒
‑ 衆 知 を 集 め る 全 員 参 加 の 経 営 ヘ
後者(図
2)
の閲係を別の表現で一
不す なら
施設長は組織の上から経営をするのではなく
リーダーとなり︑現場のスタッフはそれに従うも
のとして航極的に経営に参画するような関係とで
もいえるでしょうか︒
確かに︑施設長は経営に探く関わっていますが︑
現場の日常業務に対して全面的に関与しているわけ
ではないので︑スタッフほどには現場の問題に熟知
していないことがあります︒
他方︑現場のスタッフは︑施設長のように施設全
体に関わるサービスと運営に目を配る時間の余裕は
見つけられそうにありません︒つまり︑施設長とス
タッフ︑さらにスタッフ一人ひとりは熟知している
領減が異なっているのです︒
ところが︑競争時代を目前にした今︑その厳しい
状況に立ち向かっていかなければなりません︒
その
ためには︑施設全体の持つ競争力を高めていく必要
があります︒リーダーが中心になって他のメンバー
lま
、さ て
76
なことかを説明しました︒
今同
は︑
じ中
a ‑ ‑
︑
4 1 介護サ
l
ピス提供機関におけるスタッフと﹁符営﹂の問わりについて考えてみましょう︒
‑ ス タ ッ フ と
﹁ 経 営 ﹂
スタッフの中には︑
﹁杭 営﹂ は胞 設長 をは じめ とす
る管内者がやることであり︑
山似 たち には 令く 関係 の L
、
u
I!しよ、
と ,J:l,
6
たえ 宇 、
て は
~\ JJl
/a") jl1i
本 必
ι 、
多
E
L、 ナ
~
i
子 J に 主 11‑d 噌. 人'<!'
i i :
Ir )l1 It
、
ι ない こと だ︑そこには︑現場と料引(あるいは竹
m
行)なり距離があるという先制叫がみられます心 の間にか
ここで︑組織を.つのピラミッドとH
凡な
して
︑
一向
有の距離を考えてみましょうσ大企業であれば︑経
枠内 者で ある 卜
yプをピラミッドの凶点に︑υドトLafJよ ・ 晶
︑ もφ '
' l' '
ト底辺に附くことができますcその与えむに従うと︑
施設の場合であれば︑法人役
μ
や施設長がピラミヅドの問点に位此し︑現場スタッフが.昨
卜に
なって
しまいます(凶lを参照
) σ
したがって︑どうして
""'‑
も統
九
VT
けする側と︑経悦には
Mm
⁝関係な側という附係を
立識せざるをえません
他ト ベ
それ
とは
川 ん な
るけんんもあります
つま
り︑
こ
のいト人なピラミッドの凶の小に︑比較的小脱悦組織
である介議サービス山仇機山を柿くと
︑ 施
社以もス
タッフもほとんどピラミッドの似点に此附づけられる
という比五です(凶
2
を参照ー
) r M
であ れば
︑た とえ
ぱ施設長と卵場スタyフの距雌は述く感じられます
の知
山崎 を集 め
ることが位法なポイン
トに
なっ
てく る
のです ︑
ある
符中
引な
山村
川
VH V引 の品 川い た本 をは ると
︑そ れを
﹁衆
知を
集め
る﹂
とい
い火
山叫
して いま す
竹内行だ
けに経営をまかせるのではなく︑
スタ
ッフ
' H 身も制
極的 に参 州し
︑ これ か
らの介護サービス提供機関の
経営を考えてみる必要がありそうですまさしく令
員委加の経常なのです︒
‑ ス タ ッ フ に 求 め ら れ る 経 営 感 覚
以前
︑ス タ
ッフ
の
点とお訴をし
てい ると きに 気が つい
たことがあります︒そ
れは
︑ス タ
ッフがケアの現場を
ι
接支えているために︑どうしても毎日の繰り返しの業務に埋没しがちになってい
るこ と
︑しかもスタyフ
の多
くが
それ
に流
され
てし
まっ
てい
ると
い︑
つい
山
Ha
巾た
です
ここで︑そのようなスタγフが︑次化度に'川
けて
︑
各部門の方針についてのなHんを求められたとしまし
ょう
︒定型的な毎日のケア業務(ルーチンワlク)
に追われているスタッフの場合︑会議の場で黙り込
んで下を向きがちですいきなり立見を求められで
も自分独自の見解や改善案などをしっかりと説明で
きないことがあるのです仕下に追われ︑それに流
されてしまうと︑その仕引の中で問題立識を持つことも︑
考えることもできなくなります問題立織が
なければ︑日々の仕引を泊して円らの立見(問題と
解決 ト刀 法) を緋 り
LL
げていくことはできませんそ
の結果︑どうしても・円分が川頃思っていることを他
77
競争時代の介護サービス論
EE スタッフに求め 5 れる経営感覚
4
fわがことのように考えるj 日常の業務とワーピス事業全体 との関連性に目を向ける
4
①日常の業務をこなしていく中 で、組織全体の動きにも自を 向ける
①組織全体の勤きの中に、自分 を置きながら客観的に自分の 日常業務を見つめ直す サービス事業全体
PROFILE
‑おかだ こういちろう
1958年兵庫県生まれ。神戸 商 科 大 学 大 学 院 修 了。 東北学院大学において経営組織論を担当している。
施設経営に関する執筆に、「サービス評価基準の戦略 的活用J(本誌'97年4月号)、[福祉業界にお入される 競争原理がめざすものJ(本誌・98年2月号)がある。
.おか だ ひ ろ こ
1962年兵庫県生まれ。介護領祉士。社会福祉 士。
干980‑8511宮械県仙台市青葉区土樋1・3‑1 東 北 学 院 大 学 経 済 学 部 商 学 科 周 囲 研 究 室 電子メール:[email protected]‑gakuin.ac.jp
の人に説明することができなくなります(注21
それでは︑競争時代のスタッフ像とは︑どのよう
な姿なのでしょうか︒たとえばおむつを替える
こと
とサービス事業全体との関連性(事業全体における
自分の担当する業務の位置づけ)に思いを巡らして
いるようなスタッフです︒日常の業務をこなしてい
く中で組織全体の動きにも目を向けようとする一方
で︑組織全体の動きの中に自分を置きながら客観的
に自分の日常の業務を見つめ直そうとする姿勢︑そ
れこそがスタyフに求めら
れる経営感覚なのです ( 図 3を参照)︒ ( 注 2
)問
題意
識を
持っ
て 日々 考え てい たと して も
︑自
分の
考え
を人
にわ
かり
やす
く伝
える
こと
が苦
手な
スタ
ッ
フも
いま
す
︒
しか
しな
がら
︑今
後は
コミ
ュニ
ケー
シ ョン 能力 もか
なり
必要
にな
ると 思わ れま す
︒
‑ 経
営 す る ス タ ッ フ 像
s わ
が こ と の よ う に 考 え る
s
介護サービス提供機関のスタッフが続営成只凡を持
ちながら働くとは︑どういうことなのでしょうか︒
もう少し具体的なイメージをつかむために︑屋台の
ラー
メン
屋さんのお話をしてみまし
ょう
︒
夜︑繁華街に行くと︑屋台のラーメン屋さんを目
にすることがあります︒同じ屋台であっても︑日に
よって︑時間によ
って
︑街のいろいろなところに現
れてい
ます
︒必ずしも一カ所にとどまって商いをし
れば︑組織全体のことも考えることにしよう︑
と
し、
う姿勢になっていきます︒
本来
︑
わがことと考えて
いた
事業
が︑
気が
つけ
ば︑
わがことのように考える
ことができなくなってしまっているのです︒
したがって競争時代においては︑スタッフは自分
の部門はもちろんのこと︑さらに視野を広げて他部
門 ︑
事業全体を﹁わがことのように考える﹂ような
経営感覚が求められています︒
‑
﹁ わ が こ と の よ う に 考 え る
﹂ こ と の 難 し さ
それでは︑介護サービス提供機関において
﹁わ
が
ことのように考える﹂こととは︑実際にどうするこ
となのでしょうか︒利用者の立場に自分を置いて考
え︑行動すればよい
ので
しょうか︒もちろん︑利用
者の立場が尊重される
ことはいうまでもありませ
ん︒そもそも︑介護サービス提供機関の事業の目的
は ︑
利用者にサービスを提供することにあります︒
ところが︑利用者の立場に自分を置いて考え行動
しようとすると︑ときに困った問題が生じることが
あります
︒それは︑スタッフがよりよいケアを利用
者に提供したいと切に願うあまり︑現状のケアを抜
本的に改善するには人も足りない︑お金も足りない
という結論に達してしまい︑スタッフのやる気が徐々
に失せてしまうことです︒そう・なると︑﹁うちは理想
からほど遠い﹂とか︑極端な場合︑﹁うちは全くだめ ているのではないようです︒
さて︑屋台のラーメン屋さんは︑商売に出かける
前には︑さまざまなことに思いを巡らせます︒
その
日の天気は特に重要です︒雨模様よりも附れている
方が売り上げを期待できますから︑附れた円にはそ
れなりの材料の仕込みが必要になります︒街のどこ
かで催しがあることもあります︒そのお客さんを当
て込んで屋台を流してみるのもいいかもしれませ
ん︒また︑繁華街は︑時間によ
って
︑お客さんの流
れが微妙に異なりますから︑それに合わせて場所を
変えてみるのもよいでしょう︒
つまり︑この屋台のラーメン屋さんは︑しかるべ
き売り上げを雌保するために︑さまざまなことに考
えをめぐらせているのです︒自分の日々の判断(立
思決定
)が︑
向上
冗に
豆大
な川
紛糾
を及
ぼし
かね
ない
の
で︑真剣にならざるをえません︒ラーメン屈さんは
自分の商売を他人事ではなく︑文字どおりわ
がこ
と
と考えているのです︒
このようにl人で尚売をし
てい
れば
︑
引業全体の
責任がわが身にかか
って
き
ますから︑中l然︑事業
︿ ド
体の隅々にまでわがこととして
細かく
U
を配り
ま
す︒ところが︑従業員の数が徐々に哨えて組織が大
きくなっていくと︑しだいに雄子が変わっていきま
す︒たとえば自分の属する部門のことをまず優先し
て考え︑余怖があれば︑山分の部門に直峻関係する
部門のことを考えてやり︑それでもさらに余桁があ
だ﹂︑という意見が
出始
め︑
スタ
yフの立欲は此下し︑
行動は消極的になってしまいます︒結果的には︑サ
ーピスの質は以前よりも忠くなり︑利川将に迷惑を
かけてしまうことにもなりかねません ︐
そうではなく︑﹁わがことのように与える﹂こと
とは
︑
スタッフが利用者に思いを間きながらも︑な
お介護のプロ(サ
ービ
ス提供者)として︑より広い
視肝
に立
ち︑
困難な現状をみんなで刈を・合わせて何
とかしていこう︑という発惣です︒言葉で説明する
とわずかこれだけのことですが︑前述の例からも分
かるように︑その実行が容易でないところに︑﹁わ
がことのように考える﹂ことの縦しさがありますひ
もしも︑
競 争 時
代に﹁わがことのように考える﹂こ
とができなければ︑その介設サービス提供機関には未
来はないかもしれません︒
選択する権利を持
った利
用者は︑別の︑真剣に﹁わがことのように考える﹂機
閲の方を選ぶはずです︒
利用
者は
︑
自分の人中を﹁わ
がこととして考える﹂権利を持っ
てい
るの
ですから︒
︿
V
O
︿﹀
今回は︑介護サービス提供機関における経営とス
タッフの問題について考えてみました︒競争時代に
求められるスタッフ像とは︑﹁経営に参加する安勢
をもったスタyフ像﹂であり︑その中核には︑﹁わ
がことのように考える﹂
とい
う発想がありますの
﹃競争時代の介護サー
ビス論
﹄
次回
は︑
円ソ刊民山田T
曲 ︑
6 4 4 L
関わる﹁サービス﹂の意味を考えてみますっ
78
:<:・参考文献I商売心得帖j松下幸之助/PHP研究所,1973 f実路経営哲学J松下幸之助/PHP研究所,1978