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マダガスカル共和国 中央高地コメ生産性向上プロジェクト 終了時評価調査報告書 平成 26 年 4 月 (2014 年 ) 独立行政法人国際協力機構 農村開発部 農村 JR

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(1)

農 村

マダガスカル共和国

中央高地コメ生産性向上プロジェクト

終了時評価調査報告書

独立行政法人国際協力機構

( 2014年 )

平成 26 年4月

(2)

マダガスカル共和国

中央高地コメ生産性向上プロジェクト

終了時評価調査報告書

( 2014年 )

平成 26 年4月

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序 文

マダガスカル共和国では、2009 年 1 月より 5 年間の計画で同国の主要なコメ生産地帯である中 央高地を対象とした「中央高地コメ生産性向上プロジェクト」を実施中です。 今般、プロジェクトの協力期間終了を目前に控え、技術協力期間中の実績と実施プロセスを確 認し、その情報に基づいて、評価 5 項目(妥当性、有効性、効率性、インパクト及び持続性)の 観点から総合的な評価を行うことを目的として、2013 年 6 月に終了時評価調査団を派遣しました。 同調査団はマダガスカル共和国政府関係者とともに評価調査を行い、提言・教訓を合同評価報告 書に取りまとめました。 本報告書は、その結果を取りまとめたものであり、他のプロジェクトを含め、プロジェクトの 運営に広く活用されることを望むものです。 終わりに、本調査にご協力とご支援頂いた関係各位に対し、心より感謝申し上げます。 平成 26 年 4 月

独立行政法人国際協力機構

農村開発部長

北中 真人

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目 次

序 文 目 次 プロジェクト対象 5 県の位置図 現地調査写真 略語表 地名のアルファベット表記と和文表記 用語の説明 モデルサイト内のコメ農家数と灌漑面積 対象 5 県の人口、農家数、農地面積、コメ栽培面積 終了時評価調査結果要約表 第1章 調査の概要 ··· 1 第2章 プロジェクトの概要 ··· 2 第3章 終了時評価の方法 ··· 3 3-1 評価の手法及び評価項目 ··· 3 3-2 評価のデザインと主な調査項目 ··· 3 3-3 データ収集方法 ··· 3 第4章 計画達成度 ··· 5 4-1 投入実績 ··· 5 4-2 活動実績 ··· 6 4-3 成果の達成状況 ··· 12 4-4 プロジェクト目標の達成状況 ··· 24 4-5 上位目標の達成状況(見込み) ··· 25 第5章 実施プロセス ··· 26 5-1 プロジェクト管理面 ··· 26 5-2 マダガスカル側のオーナーシップ ··· 26 5-3 プロジェクト実施に影響を与えたその他要因 ··· 26 5-4 他ドナー・民間企業との連携 ··· 27 第6章 評価 5 項目に基づく評価結果 ··· 28 6-1 5 項目評価 ··· 28 6-2 成果達成の促進要因と制約要因 ··· 36 6-3 結論 ··· 38

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第7章 提言・教訓 ··· 39 7-1 マダガスカル側に対する提言事項 ··· 39 7-2 プロジェクト側に対する提言事項 ··· 39 7-3 教訓 ··· 41 第8章 調査団所感 ··· 42 8-1 稲作担当団員所感 ··· 42 8-2 団長所感 ··· 43 付属資料 1.調査日程 ··· 49

2.Project Design Matrix(PDM)ver2(和文・仏文・英文) ··· 50

3.活動計画(PO)(仏文) ··· 56 4.評価グリッド(和文・仏文・英文) ··· 57 5.組織図 ··· 78 6.投入実績 ··· 80 6-1 長・短期専門家派遣 ··· 80 6-2 研修員受入実績 ··· 81 6-3 現地業務費一覧 ··· 82 6-4 供与機材リスト ··· 83 6-5 カウンターパート配置実績一覧 ··· 87 6-6 セミナー・研修開催・交換訪問実績及び参加人数 ··· 90 7.活動実績及び成果 ··· 92 ・これまでに作成された成果品一覧 ··· 92 ・これまでに作成された広報資料一覧 ··· 95 8.中間レビュー提言に対しての取り組み状況・取り組み計画 ··· 96 9.技術パッケージの改訂内容一覧 ··· 103 10.協議議事録(英文・仏文) ··· 108 11.合同終了時評価報告書(英文・仏文) ··· 114

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略 語 表

略 語 正式名称(仏/英) 日本語

AVB Agent Vulgarisateur de Base

コミューンやフクタンに配置された臨 時雇用の普及員(それぞれ専門分野を 有し、実施中のプロジェクトに所属) Ari Malagasy ariary マダガスカル・アリアリ(通貨) AFD Agence Française de Développement フランス開発庁

AfDB African Development Bank(仏:BAD) アフリカ開発銀行

BVPI Bassins Versants Perimetres Irrigués 流域管理・灌漑国家プログラム CAADP The Comprehensive Africa Agriculture

Development Programme 包括的アフリカ農業開発プログラム CARD Coalition for African Rice Development アフリカ稲作振興のための共同体 CDR Conseiller en Développement Rural 農村開発アドバイザー(コミューンに

配置された農業省所属の普及担当員) CFAMA Centre de Formation et d'Application de

Machinisme Agricole 農業機械化研修センター

CiRDR Circonscription de Développement Rural 農村開発担当官(郡レベルに配置) CMS Centre Multiplicateur de Semences 種子増殖センター

CMS Anosiboribory アロチャ・マングル県PC23内の種子増 殖センター

CMS Sakay ブングラバ県サカイの種子増殖センタ

CSA Centre du Service Agricole 農業サービスセンター DGA Directeur Géneral de l'Agriculture 農業総局長

DPA Department of Agricultural Production 生産総局 DRDR Direction Régionale du Développement

Rural

農業省 地域農村開発局(県の農業局) (※局長を示すこともある)

FAO Food and Agriculture Organization of the

United Nations 国連食糧農業機関

FDA Fonds pour Développement Agricole 農業開発基金(農業省傘下) FIFAMANOR Fiompiana Fambolena Malagasy

Norvezian

ノルウェー・マダガスカル共同畜産・ 農業研究センター

FOFIFA Centre National de la Recherche Appliquée au Développement Rural

国立農村開発応用研究センター(農業 省傘下の農業試験場)

FOFIFA Mahitsy アナラマンガ県マヒチのFOFIFA試験 場

FOFIFA Antsirabe ヴ ァ キ ナ カ ラ チ ャ 県 ア ン チ ラ ベ の FOFIFA試験場

FOFIFA Kianjasoa ブングラバ県カンジャスのFOFIFA試 験場

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略 語 正式名称(仏/英) 日本語

FOFIFA CALA アロチャ・マングル県のFOFIFA試験場 FRDA Fonds Régional pour Développement

Agricole 地域農業開発基金(農業省傘下) GPS Groupement des Producteurs Semenciers 種子生産農家グループ

IEC Information Education Communication 行動変容のためのコミュニケーション IFAD International Fund for Agricultural

Development(仏名:FIDA) 国際農業開発基金 JCC Joint Coordination Commitee 合同調整委員会 MAEP Ministère de l'Agriculture, de l'Élevage et

de la Pêche 農業・牧畜・水産省

MAP Madagascar Action Plan マダガスカル・アクション・プラン MinAgri Ministère de l'Agriculture 農業省

NEPAD The New Partnership for Africa's Development

アフリカ開発のための新パートナーシ ップ

NRDS National Rice Development Strategy(仏

名:SNDR) 国別稲作振興戦略

PAPRiz Projet d'Amélioration de la Productivité

Rizicoles sur les hautes terres centrales 中央高地コメ生産性向上プロジェクト PHRD Policy and Human Resources

Development Fund

日本開発政策人材育成基金(日本政府 と世銀との信託基金)

PDM Project Design Matrix プロジェクト・デザイン・マトリック ス

PO Plan of Operations 活動計画 R/D Record of Discussions 討議議事録

RTMC

Comité Régional de Gestion Technique/ Regional Technical Management Committee

県技術管理委員会(本プロジェクトが 設けた県レベルの月例技術会議)

SALOHI

Strengthening and Accessing Livelihood Opportunities for Household Impact Project

USAIDに よ る 生 計 向 上 強 化 プ ロ ジ ェ クト

SOC Service Officiel du Contrôle 農業省 種子検査課 TICAD IV Tokyo International Conference on

African Development IV 第4回アフリカ開発会議 USAID United States Agency for International

Development 米国国際開発庁

VDA Vulgarisateur du Développement Agricole

臨時雇用の普及員(特に専門分野をも たず政府やドナーによるプロジェクト に所属)

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地名のアルファベット表記と和文表記

地名(和文) 地名(仏/英) 説 明 アロチャ・マングル県 Alaotra-Mangoro アンバトラザカ Ambatondrazaka アロチャ・マングル県の県都 ムラランクルム MoraranoChromo モデルサイト(PC23南部灌漑地区) を含むコミューン ブングラバ県 Bongolava チルヌマンディディ Tsiroanomandidy ブングラバ県の県都 アンクンプンブアイ灌漑地区 Ankompomboay ブングラバ県のモデルサイト ヴァキナカラチャ県 Vakinankaratra アンチラベ Antsirabe ヴァキナカラチャ県の県都 アンドリアナ・サハルンブ灌漑地 区 Andriana Sahalombo ヴァキナカラチャ県のモデルサイト アナラマンガ県 Analamanga アンタナナリボ Antananarivo 首都・アナラマンガ県の県都 イタシ県 Itasy ミアリナリブ Miarinarivo イタシ県の県都

用語の説明

用 語 意 味 モデルサイト 重点3県において、各1カ所ずつ選定した灌漑地区で、主として、技術パッケー ジ開発関連活動とコメ生産農家への技術普及を図る地区を指す。 アロチャ・マングル県:PC23灌漑地区のブロック4、5、6、15 ブングラバ県:アンクンプンブアイ灌漑地区 ヴァキナカラチャ県:アンドリアナ・サハルンブ灌漑地区 拡張サイト ( ブ ン グ ラ バ 県 の み) ブングラバ県において、モデルサイトのほかにDRDRが直営で農家への技術指 導を行うサイト。2012年冬作から設定。20世帯程度の農家が実証と同じ形式(実 証を行う区画を各農家が設定し、そこについてはインプットを供与、その代わ り農家は技術パッケージの推奨技術をすべて実践する)で技術指導。定期的な 巡回指導はするものの、生育調査・生産費調査等のモニタリングは行わない。 エ ク ス テ ン シ ョ ン・サイト ( ヴ ァ キ ナ カ ラ チ ャ県、アナラマンガ 県のみ) モデルサイト外で実証に協力しているサイト。モデルサイトとは微妙に投入が 異なるが、エクステンションサイトの中にもモデル/サテライト農家がいる。 研修はモデル/サテライト農家全員、肥料はモデル農家のみ、種子はモデル農 家には水田1区画分、サテライト農家には1a分を提供し生育調査、生産費調査、 技術パッケージ評価会も実施。

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用 語 意 味 モデル農家/実証農 家 ・モデルサイト内の農家で、本プロジェクトが推奨する栽培法と従来の栽培法 とで比較栽培を行う農家。プロジェクト側から、種子、肥料、栽培技術を提供 する。栽培管理は、実証農家とプロジェクト・チームが協力して行う。2009/10 シーズンの実証から参加。 ・アロチャ・マングル県では、モデル農家・サテライト農家の別なく、参加農 家をすべてモデル農家と称している。 ・アナラマンガ県・イタシ県では、篤農家でサイトの農家のリーダーとなる実 力が既にある農家のこと。 サテライト農家 ・モデルサイト内の農家で、本プロジェクトが推奨する栽培法を用いて栽培す る農家。プロジェクト側から、種子、肥料、栽培技術を提供する。栽培管理は、 主としてサテライト農家が行う。2010/11シーズンの実証から参加。 ・アナラマンガ県・イタシ県では、モデル農家以外で実証に参加したいと志願 した農家のこと。 アドプション農家 ・アロチャマングル県:肥料の共同購入に参加した農家(モデル農家及びそれ 以外を含む) ・ブングラバ県:サテライト農家と同条件・同義であるが、2011/12シーズン の実証から参加農家を称する。 ・ヴァキナカラチャ県:PAPRizが率先して研修を実施するのではなく、CDR 等が自ら研修を実施した農家(CDR側から働きかけた農家及び、農家側から依 頼があって研修を実施した農家の双方あり)。基本的に研修のみで、プロジェ クトからの投入(肥料、種子、技術指導)はない(ただし肥料や種子が余った 場合には極少人数に限られるが提供することもある)。 普 及 パ イ ロ ッ ト 農 家 ( ブ ン グ ラ バ 県 の み) 本プロジェクトが推奨する栽培法を用いて栽培する農家。プロジェクト側か ら、一区画分の種子を提供し、技術指導とモニタリングを実施する。栽培管理 は、主として農家が行う(モデルサイト内の農家である場合とモデルサイト外 の農家である場合の両ケースがある)。 技術パッケージ 本プロジェクトで開発するコメの生産技術。 プロジェクト開始前における開発の基本方針は、「中央高地に位置する5 県を 対象とし、灌漑稲作、天水稲作及び高冷地稲作という中央高地における主要な 3種の稲作形態に適した品種に関する生産技術パッケージを開発」であったが、 現状としては、①「都市近郊における小規模兼業型稲作(ヴァキナカラチャ県 のモデル)」、②「山間地農村における小規模労働集約型稲作(ブングラバ県の モデル)」、③「大規模灌漑地区における土地集約型稲作(アロチャマングル県 のモデル)」の営農形態に適した技術パッケージとなっている。 灌漑稲作(水稲)向けの技術パッケージ開発が先行し、途中から、陸稲用の技 術パッケージの開発が開始された。

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モデルサイト内のコメ農家数と灌漑面積

県 モデルサイト モデルサイト内のコ メ生産農家数(戸) 灌漑面積 (ha) 1 アロチャ・マングル PC23南部灌漑地区のブロック4、 5、6、15(PC23 southern irrigation area) 390 776 2 ブングラバ アンクンプンブアイ灌漑地区

(Ankompomboay irrigation area) 76 80

3 ヴァキナカラチャ

アンドリアナ・サハルンブ灌漑地 区

(Andriana Sahalombo irrigation area)

127 75

4 アナラマンガ Andramasina, Anakazobe N.A. N.A.

5 イタシ なし N.A. N.A. 計 593 931 出所:2013.6プロジェクトからの聞き取り情報に基づいて作成

対象

5県の人口、農家数、農地面積、コメ栽培面積

県 人口 (2004年) 面積 (km2 農家戸数(戸) (2004/05年) 農地面積 (ha) コメ栽培面積 (ha) (2004/05年) アロチャ・マングル 877,700 31,943 100,081 107,153 85,617 ブングラバ 326,600 16,688 72,845 93,413 54,181 ヴァキナカラチャ 1,589,800 16,599 227,459 125,281 56,007 アナラマンガ 2,811,500 16,911 203,929 96,599 62,429 イタシ 643,000 6,993 108,791 86,243 43,573 計 6,248,600 89,134 713,105 508,689 301,807 出所:「マダガスカル共和国中央高地コメ生産性向上プロジェクト 中間レビュー調査報告書」2011年11月より抜 粋

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プロジェクト対象 5 県の位置図

アロチャ・マングル県

・モデルサイト:PC23 灌漑地区 (県都 Ambatondrazaka からの距 離45km) ・稲作形態:灌漑稲作 ・C/P:DRDR, FOFIFA, CMS ・標高:770m アロチャ・マングル県 ・モデルサイト:PC23 灌漑地区 の ブ ロ ッ ク 4, 5, 6, & 15 ( 県 都 Ambatondrazaka からの距離 45km、 コメ生産農家数267 戸) ・稲作形態:灌漑稲作 ・C/P:DRDR, FOFIFA, CMS ・標高:770m アナラマンガ県 ・モデルサイト:Andramasina, Anakazobe ・C/P:DRDR, FOFIFA ・標高:600~1,700m ・首都、Antananarivo がある(標高 1,435m) ブングラバ県 ・モデルサイト:Ankompomboay 灌漑地区(県都 Tsiroanomandidy からの距離 30km、コメ生産農家 数55 戸) ・稲作形態:灌漑稲作、天水稲作、 陸稲 ・C/P:DRDR, FOFIFA, CMS ・標高:830m ヴァキナカラチャ県 ・モデルサイト:Andriana Sahalombo 灌漑地区(県都Antsirabe からの距 離2.5km、コメ生産農家数 120 戸) ・稲作形態:灌漑稲作、高冷地稲作、 陸稲 ・C/P:DRDR, FOFIFA, CFAMA、 FIFAMANOR ・標高:1,500m イタシ県 ・モデルサイト:なし ・C/P:DRDR ・標高:1,200~1,500m

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現地調査写真

第 1 回合同評価委員会 プレ JCC におけるグループ・インタビューセッション

CAFMA で開発された農機具(写真は回転式除草機) FOFIFA CALA の試験圃場視察

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アナラマンガ県 DRDR 及び農家との面談風景 イタシ県農家における面談風景

ヴァキナカラチャ県肥料試験 ヴァキナカラチャ県 DRDR 聞き取り

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終了時評価調査結果要約表

1.案件の概要 国名:マダガスカル共和国 案件名:中央高地コメ生産性向上プロジェクト 分野:農林水産-農業-農業一般 援助形態:技術協力プロジェクト 所轄部署:農村開発部 協力金額(評価時点):7 億 474 万 6,000 円 協力期間 (R/D):2009 年 1 月 8 日 ~2014 年 1 月 7 日 先方関係機関:農業省(MinAgri)農業総局、対象 5 県の農業省地域農村開発局(DRDR)、重点 3 県の国立 農村開発応用研究センター(FOFIFA)、農業機械化研 修センター(CFAMA)、農業省種子検査課(SOC)、種 子増殖センター(CMS)、ノルウェー・マダガスカル共 同畜産・農業研究センター(FIFAMANOR) 日本側協力機関:農林水産省 他の関連協力:マダガスカル国食糧増産プログラム国 内支援委員会 1-1 協力の背景と概要 マダガスカル共和国(以下、「マダガスカル」と記す)は、約58 万 7,000km2の国土に約1,880 万人が住む(INSTAT 推計、2008 年)、世界で 4 番目に大きい島である。コメを主食とし、国民 1 人当たり年間約 120kg を消費する。コメの生産面積は 160 万 ha、コメ生産量は 2008 年には 490 万 t であったが、サイクロン等の影響により年間生産量の変動が大きく、コメ消費量の約 10%を輸入に頼っている。マダガスカルの国家開発計画であるマダガスカル・アクション・プ ラン〔Madagascar Action Plan:MAP(2007~2012 年)〕において、最も重要な改革イニシアテ ィブの1 つとして、「緑の革命の始動」により、コメの生産量を2005 年の 342 万 t から 2012 年 までに倍増させることを目標としている。マダガスカルにおけるコメの収量は、1ha 当たり平 均1.8~2.6t とされており、単位収量向上の余地がある。 コメ増産に取り組むにあたり、首都アンタナナリボ(Antananarivo)と第三の都市アンチラ ベ(Antsirabe)を擁する人口集中地域である中央高地においてコメを増産することが喫緊の課 題となっている。中央高地に位置する本プロジェクトの対象地域 5 県の標高は約 600mから 1,500mで、多様な自然・生態環境のもとでの、灌漑稲作、谷地田における天水稲作及び高冷地 における稲作が主な稲作形態である。コメ生産性向上のためには、稲作形態に適し、かつ市場 と農家の評価を踏まえた推奨品種の選定、その種子普及及び品種に適した栽培技術の確立とそ の普及が欠かせないものとなっている。

「中央高地コメ生産性向上プロジェクト(Projet d'Amélioration de la Productivité Rizicoles sur les hautes terres centrales:PAPRiz)」(以下、本プロジェクト)は、マダガスカル中央高地に位 置する5 県(重点 3 県:アロチャ・マングル県、ヴァキナカラチャ県、ブングラバ県)を対象 とし、灌漑稲作、天水稲作及び高冷地稲作等の中央高地における主要な稲作形態に適した生産 技術パッケージを開発し、併せて種子増殖・配布体制を改善し、普及に取り組むことにより、 中央高地におけるコメ生産性を向上させることを目的として、2009 年 1 月に開始された。農業 全体を統括する農業省(Ministère de l'Agriculture:MinAgri)農業総局と、各県の農業省出先機 関である農業省地域農村開発局(Direction Régionale du Développement Rural:DRDR)を主なカ

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ウンターパート(Counterpart:C/P)機関として実施されている。 2011 年 7 月に実施した中間レビューにおいては、プロジェクト活動の進捗はおおむね計画ど おりであることが確認された。特にコメ生産性向上に係る技術パッケージの開発は、重点3 県 のモデルサイトにおいて、1.0t/ha 以上の収量増加を示しており、関係者の能力強化や教材の開 発も順調に進展している。5 項目評価においても満足できる水準となる見込みであることが確 認された。なお、プロジェクトの成果をより向上させるために、①技術パッケージの適用、② 技術パッケージの普及、③種子システムの改善、④活動計画(Plan of Operations:PO)の利用 の4 点についてプロジェクト側へ提言が出され、マダガスカル側へもプロジェクトの管理と調 整について提言が残された。 1-2 協力の内容 本プロジェクトは、マダガスカル中央高地に位置する5 県を対象とし、中央高地における主 要な3 種の稲作形態(灌漑稲作、天水稲作、高冷地稲作)に適した品種に関する「技術パッケ ージ」を開発するとともに、コメ生産に関係する機関の連携強化を図り、技術パッケージに関 する教材等を整備して普及に取り組み、中央高地におけるコメ生産性の向上をめざすものであ る。 (1)上位目標 中央高地において、コメ生産量が増加する。 (2)プロジェクト目標 モデルサイトにおいて、コメ生産性が向上する。 (3)成果 1)コメ生産性向上のための「技術パッケージ」がプロジェクトにより開発される。 2)品種選定、種子増殖、配布体制の整備が推進される。 3)技術パッケージ波及のための教材が整備される。 4)対象 5 県において、関係機関の連携によるコメ生産技術の指導体制が整備される。 5)技術パッケージが対象 5 県の農家に利用可能となる。 (4)投入(評価時点) 1)日本側 総投入額:約 5 億 7,000 万円 長期専門家派遣:延べ 7 名、短期専門家派遣:延べ 16 名、第三国専門家:延べ 7 名 (インドネシア適正農業機械及びポストハーベスト分野) 研修員受入(本邦研修):計17 名、第三国研修:計 14 名 機材供与:総額約1,860 万円 ローカルコスト負担:1 億 6,400 万円(2013 年 3 月現在) 2)マダガスカル側 C/P 配置:127 名(終了時評価時) ローカルコスト負担:8,800 万アリアリ(約 440 万円)(2013 年 4 月現在) 土地・施設提供:首都及び重点3 県におけるプロジェクト事務所

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2.評価調査団の概要 調査者 担当分野 氏 名 所 属 総括 天目石 慎二郎 JICA 農村開発部乾燥畑作地帯第一課 課長 稲作技術 浅沼 修一 名古屋大学教授(「食糧増産プログラム」国内支援 委員会 総括) 評価分析 大形 いずみ 株式会社 コーエイ総合研究所 計画管理 小峯 百合恵 JICA 農村開発部畑作地帯グループ乾燥畑作地帯 第一課 課員 調査期間 2013 年 6 月 3 日~2013 年 6 月 21 日 評価種類:終了時評価 3.評価結果の概要 3-1 実績の確認 3-1-1 成果の達成状況 (1)成果 1:コメ生産性向上のための「技術パッケージ」がプロジェクトにより開発され る。 以下のとおり、成果1 は達成された。 ・重点3 県において、各県の特色に見合った稲作技術パッケージが開発された。技術パ ッケージは、各地域の土地条件や農地規模等に応じた、農民が実践しやすいシンプル な技術により構成されるが、毎稲作シーズン終了後に、農民及びDRDR を中心とする C/P により参加型評価を行い、参加農家の成果について、適用した技術や投入の有効 性、収支計算等を精査のうえ更に適切な方法等について議論を行って適宜改訂され、 現在 Version 3 まで改訂が進んでいる。また、2011 年から支援が開始された 2 県につ いても同様に策定され、現在Version 2 の改訂中である。

・ 国 立 農 村 開 発 応 用 研 究 セ ン タ ー (Centre National de la Recherche Appliquée au Développement Rural:FOFIFA)やノルウェー・マダガスカル共同畜産・農業研究センタ ー(Fiompiana Fambolena Malagasy Norvezian:FIFAMANOR)に対して技術指導を行い つつ、適切な品種の選定や適切な施肥量特定のための技術研究も行っており適宜技術 パッケージに反映されている。

・本技術パッケージにおいては、小型農業機械の利用についても推奨しているが、プロ ジ ェ ク ト で は 、 農 業 機 械 化 研 修 セ ン タ ー (Centre de Formation et d'Application de Machinisme Agricole:CFAMA)へのインドネシア短期専門家の派遣を通じて、対象地 域の条件に見合った小型農業機械(除草機、播種機等の耕作関連機材)の開発を支援 した。また、収穫後処理の不備によるロスが多い現状にかんがみ、収穫後処理関連機 材の開発にも努めている。 (2)成果 2:品種選定、種子増殖、配布体制の整備が推進される。 以下のとおり、成果2 は達成された。 ・優良種子の利用にかかる課題には、種子の品質の劣化、供給体制の弱さ(含むアクセ スの欠如)、種子を購入する習慣・知識の欠如等がある。こうした課題解決をもくろ み、プロジェクトは戦略的な生産種子の選定、種子検査サービスの徹底、認証種子の マーケティング支援、優良種子利用促進キャンペーン等、種子認証と利用システムモ デルの構築を図っている。 ・品種選定・改善については、国連食糧農業機関(FAO)との協力により優良種子カタ ログを作成。またFOFIFA 及び FIFAMANOR に対し優良種子の純化技術を指導すると

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ともに、種子検査官を育成して種子の品質検査を通じた認証種子増産をめざしてい る。対象5 県において 2012 年末現在 26 名の検査官が育成・配置された。 ・種子増殖による供給体制の強化については、種子生産農家や民間企業に対する種子生 産研修を実施することで、種子生産量の増加をめざすとともに、種子生産農家組合の 組織化推進により生産農家がマーケットへアクセスしやすい方策を指導している。ま た、優良種子の利用推進をめざし、TV 及びラジオを通じて優良種子利用キャンペー ンを行う等積極的な普及活動が実施された。こうした活動の成果により、例えばヴァ キナカラチャ県における種子生産は、2010 年の 48.3t から 2013 年には 127.49t に増加。 また、キャンペーン効果により種子増殖センター(Centre Multiplicateur de Semences: CMS)サカイを通じた月間種子販売量が CM 直後には 4 倍に上がるなど、成果がみら れている。 (3)成果 3:技術パッケージ波及のための教材が整備される。 以下のとおり、成果3 は達成された。 ・農民用、農業普及員用、及び一般へのPR 用として、10 種類以上の用途別の普及教材 (技術マニュアル、リーフレット、ポスター、VDC 等)が作成・活用されている。 ・特に、国内人気ナンバーワン映画シリーズの主演俳優を起用した技術パッケージの主 要技術の視聴覚教材を作成し、映画の DVD・VCD に付録として販売・配布するなど 積極的な普及・PR 活動が展開されており、その知名度は全国に広がっている(1 万 5,000 枚無料配布、1 万 5,000 枚販売)。 (4)成果 4:対象 5 県において、関係機関の連携によるコメ生産技術の指導体制が整備さ れる。 以下のとおり、成果4 は達成された。 ・本プロジェクトは、稲作推進に関するあらゆる技術を取り扱っていることから、各県 のDRDR を中心に研究機関、種子関連機関、農業機械関連機関、普及関連機関等さま ざまな機関が協働しており、現時点でのC/P は 127 名にものぼる。これらの関係機関 と認識を共有しつつ、各機関の役割が全うされることでコメ収量増産に資するため、 プロジェクトは各県における毎月の定例会の開催、対象県同士の技術交換の機会の提 供、参加型評価会の開催など、あらゆる機会を提供し、連携体制を強化してきた。 ・また、各関係機関が担当する関連技術にかかる技術研修の実施など、OJT 以外にあら ゆるC/P の能力強化が行われている。 (5)成果 5:技術パッケージが対象 5 県の農家に利用可能となる。 以下のとおり、成果5 はおおむね達成された。 ・モデルサイトにおいては技術パッケージのデモンストレーションや研修を実施するこ とで、周辺農家に対する普及が継続的に行われている(延べ4,000 人が参加)。 ・マダガスカル国内には農業普及体制が整備されていないため、普及の課題は多いもの の、プロジェクトは県・郡職員、また普及活動を担うあらゆる職位の要員を活用して 普及の試みがなされており、普及員の PAPRiz 技術の採用率は約 9 割、モデルサイト 内での農民の技術の採用率(最低1 種類の技術を採用した農民の率)は 8 割弱に達し ている。 ・なお本プロジェクトで作成された普及関連教材は、対象県の全372 のコミューン事務 所及び全27 の CSA に整備されており、農民が情報にアクセスしやすい体制づくりが 試みられるとともに、世界銀行や米国国際開発庁(USAID)、NGO 等の他ドナーを通

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じても普及がなされつつある。 3-1-2 プロジェクト目標の達成状況:モデルサイトにおいて、コメの生産性が向上す る プロジェクト目標の達成指標としては、「モデルサイトにおけるコメ生産農家のコメの平 均単位収量が 1t/ha 増加する」ことが設定されているが、2011/12 年までの収量増加は平均 0.69t/ha にとどまっている。参加農家の 2012/13 年の収量は平均約 3t/ha 増加していることに もかんがみると、更に増加していることが期待されるが、2012/13 年の収穫が終わった直後 であり収量調査が行われていなかったことから、確認に至らなかった。これまでに達成して いない理由としては、①「深刻な自然災害が生じないこと」、「モデルサイトでの灌漑用水の 不足が生じないこと」、「緑の革命の予算が県レベルに分配されること」といったプロジェク ト達成に係る外部条件が満たされなかったこと、②耕作条件の不備や必要な投入が準備でき ない農民の存在などが考えられるが、今後その要因を分析し、より一層の収量増に向けた努 力が期待される。 3-1-3 中間レビューにおける提言への対応状況 中間レビューにおいて調査団から示された提言については、マダガスカル政府に対するも の及びプロジェクトに対するもの双方に関して、適切に対応されていることが確認された。 提言内容と対応状況の詳細については、付属資料8 を参照のこと。 3-2 評価結果の要約 (1)妥当性:高い マダガスカルの人口の約75%が農業に従事し、かつ多くの農民の基幹作物がイネである ことから、プロジェクト対象地域のコメ生産性向上と増産は対象地域・社会のニーズに合 致 し て い る 。 ま た 開 始 当 初 か ら 現 時 点 に お い て も マ ダ ガ ス カ ル の 国 別 稲 作 振 興 戦 略 (National Rice Development Strategy:NRDS)及び MAP と合致していること、マダガスカ ルはアフリカ稲作振興のための共同体(CARD)の第 1 グループに属すコメ増産の重点支 援国であることなどから、わが国の援助方針に沿っていることからも妥当性は高いと判断 される。さらに、わが国のコメ生産技術経験を活用できるという技術的優位性もある。 (2)有効性:おおむね高い(満足できる水準となる見込み) 上記のとおり、本プロジェクトの活動によって、ほとんどの期待される成果(あるいは それ以上)は達成されており、満足できる水準となる見込みは高いが、2012/13 年の平均 収量は未確認であることから調査が求められるとともに、達成していない場合はその要因 を分析のうえ、より一層の収量増に向けた努力が期待される。 (3)効率性:おおむね高い 開始当初は、マダガスカルの政治状況の影響を受けたものの、プロジェクト活動はおお むね計画どおりに進捗し、成果の達成につながっている。 日本側からの専門家や機材・ローカルコスト等の投入は活動の実施に効率的に生かされ ており、成果の達成に有効に活用されている。また本邦や第三国研修に派遣されたC/P は プロジェクトの活動に継続的に貢献している。他方マダガスカル側については、2013 年 6 月現在127 名の C/P が配置され、幅広い活動の推進に寄与している一方、ローカルコスト の投入は限定的であり効率的な事業実施のために日本側が肩代わりしてきた支出が多々 あった(特に C/P の日当・燃料代等)。この点については今後改善が期待される旨提言と

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している。 プロジェクトがこれまでに投入した額と、収量増により期待される収入増、農業機械販 売による利益、VCD 販売を通じた普及の効果等を考慮すると、33 億 8,000 万アリアリの支 出に対し、40 億 2,000 万アリアリの収入が得られたといった分析結果から、全体的な費用 対効果も認められる。 (4)インパクト:上位目標の達成見込みは高いとともに、さまざまな正のインパクトが確認 された。 1)上位目標「中央高地において、コメ生産量が増加する」達成の見通し 技術パッケージの妥当性・有効性が確認されていること、また対象5 県におけるコメ の生産量は自然増にあることにもかんがみ、2018 年までに 20%のコメ生産量が増加す る見込みは高い。他方、外部条件のひとつである「緑の革命の予算が県レベルに分配さ れる」が満たされていない現状は制約要因であるが、それを克服すべくマダガスカル政 府の予算の確保が望まれる。 2)正のインパクト ① 参加農家の生計向上 ・収量増のみならず積極的な組織化を通じた可能性の拡大・定着にかかる取り組みが実 施されたこと(すなわち、種子生産農家組合の設立による販売強化、水利組合強化を 通じた肥料の共同購入、農業機械製造者組合設立による安価な資材購入の試みなど)。 ・また、シーズンごとに収支計算の実施、継続的な家計研修の実施等を通じ、生計向上 につなげる方策がとられたことで、農民の収支にかかる意識が向上したほか、家屋の 建替が可能となった農家など目に見える生計向上効果がみられる。 ② 対象地域外への波及効果 ・2012 年 10 月より農業省生産局のイニシアティブに応じ、ブングラバ県の DRDR が NGO の協力のもと、東海岸 2 県(アチナナナ県、アナランジルフ県)の DRDR への 支援を行う試みが実施され、技術が波及。 ・VCD の販売・配布を通じ全国 22 県、また CARD 加盟国にも PAPRiz 技術の情報の伝 播。 ③ その他 ・政変発生の影響により無償資金協力による灌漑施設整備が中止となっているアロチャ マングル県においては、一時はプロジェクト実施に大きな影響があったが、プロジェ クトで堰の修復支援と排水路の一部浚渫を支援するとともに水利組合の強化を行っ た結果、水利組合が自主的に2 次水路の浚渫を行い、灌漑可能面積が 2 割から 8 割に 増加した。またこれに伴い水利費の徴収も 1 年目は 35%にとどまっていたが、 2011/2012 シーズンは 50%と順調に増加しており、組合の予算(水利費)を用いた今 後の運営管理に向けての取り組みが支援されている。 (5)持続性:おおむね高い 本プロジェクトで開発された技術パッケージは農民の積極的な参加により農民が使い やすいものに改訂されており継続的に活用される可能性は高い。127 名にものぼる C/P が 技術移転を受けるとともに、多くの研修教材も作成・活用されているが、体系的な普及体 制が整っていないことは活動の持続性・発展性において制約要因となり得る。マダガスカ ルの政策とも引き続き合致していることからも、今後より一層の政策面でのサポート(含 む資金面)があれば、持続性は高いと考えられる。

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3-3 効果発現に貢献した要因 (1)計画内容に関すること ・技術パッケージに採用されている技術は、各県の特徴及び農民のキャパシティを考慮し た簡易かつ使いやすい技術となるよう設計しながら開発されていることは、モデルサイ ト内外での普及・波及の推進に大きく貢献している。 ・モデル農家を選定し、集中的に展示効果を発現させたことは、近隣農家等に目に見える インパクトがあり、普及効果が高い要因となった。 (2)実施プロセスに関すること ・参加型評価により技術パッケージを開発・改訂していることは、対象地域に見合った技 術パッケージの改訂につながるのみならず、農民及びC/P の意識の向上にもつながって いる。 ・対象地域の農民の技術適用のしやすさを再優先にとらえ、頻繁に訪問して技術指導及び 活動のモニタリングを行ったことは、技術の理解の促進と定着につながっている。 ・農民を対象とする研修は、常に夫婦で参加するように条件づけられたことで、世帯内で の理解と実践の促進に寄与した。 ・技術の普及促進のため、あらゆる教材の開発(VCD、リーフレット、ポスター等)を行 うとともに、メディアを通じた普及が試みられたことは、対象地域のみならずマダガス カル全国における知名度の普及を実現した。

・種子生産農家グループ(Groupement des Producteurs Semenciers:GPS)組合の設立推進、 農業機械製造・販売促進のための農業機械製造者の組織化(組合の設立)、水利組合を 通じた肥料の共同購入の促進等、組織化の促進により、農民のコメ生産性向上に関連す るアクセスの向上に寄与した。 ・プロジェクト関係者のみならず、あらゆる手段をもって多くのステークホルダーとのコ ミュニケーションに注力されていることが成果の発現につながったと考えられる。例え ばプロジェクト関係者間においては、相互訪問による学びの機会の提供、さまざまな会 合の開催等、またプロジェクト外においては、メディアを活用した普及・広報等。 3-4 問題点及び問題を惹起した要因 本プロジェクトの計画内容及び実施プロセスにおいて成果達成の遅延・効率性の妨げとなっ ている要因として、以下が考えられる。 ・マダガスカル側のローカルコスト負担が計画どおり実施されていないこと。 ・マダガスカルの農業省傘下には普及サービスシステムが存在しないことは、末端での技 術の普及の制約要因となっている。本プロジェクトでは、日本側が普及担当者を雇用し たり、水利組合を通じて雇用することとなった普及員の給与を一時的に担うなどして、 普及の意義・効果を示すことに尽力しているが、持続性は確保されていない状況にある。 ・PAPRiz の技術パッケージにおいては、優良種子の利用及び適切な化学肥料の利用が推進 されているが、それらの負担が不可能な農民も少なくない。プロジェクトでは、家計計 算の指導等を通じて、コメ生産性の向上により、これらの初期投資を行ってでもリター ンがあることを指導するなどして、技術と理解の促進に尽力しているものの、普及に時 間を要する一因と考えられる。 ・活動開始当初、特にFOFIFA との協力による技術研究において、人員不足により研究指 導が想定どおり進められない状況があった(含む高齢化により研修効果が限定的である ことなど)。その後数人の若手技師が雇用されるなど、多少改善はみられるが、適切な 技術開発を行うには十分な体制とはいえないのが現状である。

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3-5 結論 プロジェクトの活動は順調に進んでおり、成果もほぼ達成しつつある。しかしながらプロジ ェクト目標である「モデルサイトにおけるコメ生産農家のコメの平均単位収量が 1t/ha 増加す る」は依然達成されていない。今後数カ月のうちに、2012/13 シーズンの収量に関するデータ が収集される見込みであるため、今後増加量が拡大する可能性があるものの、終了時評価の時 点では、モデルサイトにおけるコメ生産農家のコメの平均単位収量の増加はいまだ 0.69t/ha に とどまっている。 モデルサイトにおけるコメ生産農家に対する技術パッケージの普及を継続的に実施し、少な くとも2 回の作期を確保するため、調査団はプロジェクトに対し、協力期間を 1 年半延長し、 2014 年 1 月から 2015 年 7 月まで延長フェーズを設けることを提案した。 また調査の結果、多くの技術は既に満足できる水準まで開発が進んでいることが観察された ため、延長フェーズにおいては対象5 県の農民に対する技術パッケージのより広範な利用促進 など、普及に関する活動に重点を置くことが望ましい。 3-6 提言 (1)マダガスカル側に対する提言事項 1)予算 ①プロジェクト予算の確保 本プロジェクト実施に際しての予算負担は2008 年に締結された討議議事録(Record of Discussions:R/D)に記載されているとおりであるが、これまでマダガスカル側はそ の一部しか負担しておらず、マダガスカル側において支出されない経費について、日 本側が一時的に負担することが続いている。 特に人件費(C/P の出張旅費及び必要な人材の傭人費)と燃料代については、R/D の記載に準ずるためにも、またプロジェクト終了後の持続性確保のためにも、今後は マダガスカル側が負担することを強く要請する。 ②特に普及活動のためのDRDR への予算確保 本プロジェクトが作成してきた技術パッケージは最終版に向けた取りまとめが進ん でおり、今後は完成した技術パッケージの普及が大変重要となる。対象5 県において、 可能な限り多くの農民へ技術パッケージの利用を促進するためには、各県のDRDR を 活用することが効率的であると考えられる。したがって、農業省とDRDR は、県内に 技術パッケージを普及するための予算を確保すべきである。 2)稲作普及のための人員配置 現在、マダガスカルには普及担当職員が全国で400 名程度しか存在しておらず、技術 を効果的・効率的に普及するための制度が未整備である。しかしながら、本プロジェ クトにおいては開発した技術パッケージをより多くの農民に普及することが今後重 要であると考えられ、そのためには普及に関する体制を構築することが必要不可欠で ある。 よって、農業省内に「稲作技術普及ユニット」を設立し、各県の DRDR や CSA、 その他関係機関を活用しながら技術パッケージを広く普及していくことを提言する。 (2)プロジェクト側に対する提言事項 1)プロジェクトの管理と調整に関すること ①用語とデータの定義の整理

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本プロジェクトでは対象5 県の DRDR がそれぞれ方針を決めながら個別に活動を実施 しているため、同一の用語であってもその定義が異なっており、そのために画一化さ れたデータを取ることが難しい。 主要な用語の定義を揃え、同一条件の下で各県のデータを収集することはプロジェ クトを取りまとめるにあたって必要不可欠であるため、プロジェクトとして用語を定 義づけし、それに基づいて活動を実施することが求められる。特に整理が必要である と考えられる用語は以下のとおり。 ・モデル農家 ・サテライト農家 ・アダプトン農家 ・「技術パッケージ普及」の判断基準 ②PDM と PO に沿った事業の実施 本プロジェクトでは、PDM に記載されていない活動にも取り組む事例が散見される。 いずれも PDM に関連した取り組みであり、前向きかつ積極的に事業を実施すること は好ましいことであるものの、PDM は案件実施の基盤となる枠組みであるため、プロ ジェクトの活動は PDM に従うべきであり、もし記載されていない活動に取り組む場 合にはJCC において PDM 変更の手続きを踏むことが必要となる。また案件実施のス ケジュール管理においては PO も同様に大変重要であり、適切な予算管理と投入のた めにはPDM と PO に沿った事業実施が強く求められる。 したがって、プロジェクトは2013 年 7 月中に PO を作成し、PDM と PO に基づい て案件を実施するとともに、いずれかに変更の必要が生じた場合には速やかに JICA 及び先方政府へ相談し、JCC において正式に変更するものとする。 ③より多くのモデル圃場設置 技術パッケージによって収量を上げている圃場を実際に見せることで、プロジェクト や種子や肥料を投入しなくても自主的に技術パッケージを活用し始める農家が多い ことが、本終了時評価を通じて明らかとなった。今後、技術パッケージの利用率を上 げるためには、より多くのモデル圃場(プロジェクトが種子や肥料等、最低限の投入 を行う圃場)を対象5 県内のできる限り人目につきやすい場所に多く設置し、本プロ ジェクトの成果であることを示すことで普及を図ることが望ましい。 また、本プロジェクトの受益者数を増やすため、これまでに投入を行ってきた農民 への支援は徐々に減少させ、新たな農民への支援へ移行することを提言する。 ④農業省本省の巻き込み これまで、本プロジェクトは各県のDRDR を主要な C/P 機関として活動してきたため、 農業省本省内との連絡体制が十分ではなかった。しかし、今後より広範な技術パッケ ージの普及を図り、プロジェクトの持続性を担保するうえでは、中央政府の巻き込み と、それを通じた適切な人員・予算の確保が必要不可欠である。 各県における活動成果を可能な限り密に農業省本省内へ連絡するとともに、必要に 応じて本省の意向も取り入れながら案件を実施することが望ましい。 ⑤他ドナー、NGO、民間企業等への技術パッケージの売り込み 技術パッケージをより多くの農民に普及するにあたり、農村において何らかの活動を 実施している関連機関を広く巻き込み、彼らのプロジェクトに技術パッケージを利用 してもらうことが効果的であると考えられる。 そのため、今後はあらゆる機会において関連機関に案件の成果を広報するととも に、積極的に営業活動を行うことで技術パッケージを利用する機関を増やしていくこ とが重要となる。

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2)技術面に関すること ①技術パッケージの利用者増加をめざした調査の実施 現在開発されている技術パッケージは、稲作の一連の流れを網羅しており、非常に完 成度の高いものであるが、普及制度の脆弱なマダガスカルにおいて、プロジェクト終 了後にも持続的に技術パッケージの利用者を増やすためには、農民が自分たちだけで 取り組める内容にすることが必要である。 したがって、利用者増加のために必要な取り組みについて農民を対象に調査を行う ことを提言する。 ②優良種子の供給体制の強化 マダガスカルの稲作において、優良種子を用いることは収量を増加させるために非常 に重要であり、農民からの需要も高い。しかしながら需要に対して種子の供給が追い ついておらず、農民の種子に対するアクセスを良くすることが課題となっている。 上記の状況を改善するため、GPS への研修を強化して農村内での種子生産量を上げ ることで、優良種子の供給量を増やすとともに、種子に対する農民のアクセスも向上 させることを提言する。

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第1章 調査の概要

マダガスカル共和国(以下、「マダガスカル」と記す)は約58 万 7,000km2の国土に1,880 万人 が住む(Institut National de la Statistique de Madagascar:INSTAT 推計、2008 年)、世界で 4 番目に 大きい島である。コメを主食とし、日本人と比べ約 2 倍にあたる、年間国民 1 人当たり約 120kg を消費する。コメの生産面積は 160 万 ha、コメ生産量は 2008 年には 490 万 t であったが、サイ クロン等の影響により年間生産量の変動が大きく、コメ消費量の約10%を輸入に頼っている。マ ダガスカルの国家開発計画であるマダガスカル・アクション・プラン〔Madagascar Action Plan: MAP(2007~2012 年)〕において、計画達成上、最も重要な改革イニシアティブの 1 つとして、 「緑の革命の始動」により、コメの生産量を2005 年の 342 万 t から 2012 年までに倍増させるこ とを目標としている。マダガスカルにおけるコメの収量は1ha 当たり平均 1.8~2.6t とされており、 単位収量向上の余地がある。

以上のような背景から、マダガスカルからの要請を受け、2008 年 12 月 1 日に討議議事録(Record of Discussions:R/D)が締結され、農業・牧畜・水産資源省〔Ministère de l'Agriculture de l'Élevage et de la Pêche:MAEP(後に農業省に改組)〕をカウンターパート(Counterpart:C/P)機関とする 技術協力プロジェクト「中央高地コメ生産性向上プロジェクト」(Projet d'Amélioration de la Productivité Rizicoles sur les hautes terres centrales:PAPRiz)が 2009 年 1 月から 2014 年 1 月までの 予定で開始された。本プロジェクトは、マダガスカル中央高地に位置する5 県(アロチャ・マン グル県、ブングラバ県、ヴァキナカラチャ県、アナラマンガ県、イタシ県。冒頭3 県が重点県。) を対象とし、灌漑稲作、天水稲作及び高冷地稲作等の中央高地における主要な稲作形態に適した 生産技術パッケージを開発し、併せて種子増殖・配布体制を改善し、普及に取り組むことにより、 中央高地におけるコメ生産性を向上させることを目的とするものである。 今般、協力開始から 4 年半を迎え、協力期間が 2014 年 1 月で終了を迎えることから、プロジ ェクト目標や各成果の達成状況等をマダガスカル・日本国側双方で確認することを目的として、 終了時評価調査団を派遣した。

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第2章 プロジェクトの概要

本プロジェクトは、マダガスカル中央高地に位置する5 県を対象とし、中央高地における主要 な3 種の稲作形態(灌漑稲作、天水稲作、高冷地稲作)に適した品種に関する「技術パッケージ」 を開発するとともに、コメ生産に関連する機関の連携強化を図り、技術パッケージに関する教材 等を整備して普及に取り組み、中央高地におけるコメ生産性の向上をめざすものである。 (1)プロジェクト目標 モデルサイトにおいて、コメ生産性が向上する。 (2)成果 成果1:コメ生産性向上のための技術パッケージがプロジェクトにより開発される。 成果2:品種選定・種子増殖・配布体制の整備が推進される。 成果3:技術パッケージ波及のための教材が整備される。 成果4:重点県において、関係機関の連携によるコメ生産技術の指導体制が整備される。 成果5:モデルサイトの農家によって技術パッケージが利用される。 成果6:技術パッケージが対象 5 県の農家に利用可能となる。 (3)協力期間:2009 年 1 月~2014 年 1 月(5 年間) (4)実施機関:農業省(Ministère de l'Agriculture:MinAgri)農業総局、アロチャ・マングル (Alaotra-Mangoro)県、ブングラバ(Bongolava)県、ヴァキナカラチャ(Vakinankaratra) 県の農業省地域農村開発局(Direction Régionale du Développement Rural:DRDR)

(5)協力機関:アロチャ・マングル県、ブングラバ県、ヴァキナカラチャ県の国立農村開発応 用研究センター(Centre National de la Recherche Appliquée au Développement Rural:FOFIFA)、 アンチラベ農業機械化研修センター(Centre de Formation et d'Application de Machinisme Agricole:CFAMA)、アロチャ・マングル県及びブングラバ県の種子増殖センター(Centre Multiplicateur de Semences:CMS) (6)対象地域:アナラマンガ(Analamanaga)県、アロチャ・マングル県*、イタシ(Itasy)県、 ヴァキナカラチャ県*、ブングラバ県*(*は重点県) (7)プログラムとしての位置づけ 本プロジェクトは、JICA がマダガスカルにて実施している「食糧増産プログラム」の案件 の1 つとされている。本プログラムは、マダガスカルの開発計画の 1 つに掲げられている「緑 の革命(コメ生産倍増)」への取り組みを支援すべく、異なる支援スキームを組み合わせた 総合的な支援で目標達成を図ることをめざしている。他方、マダガスカルでは 2009 年 1 月 に発生した政変により、以後要請された案件については実施ができない状況が続いているた め、現状として本プロジェクトは食糧増産プログラムにおいて唯一実施中の案件となってい る。

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第3章 終了時評価の方法

3-1 評価の手法及び評価項目 本終了時評価は、2011 年 7 月に実施された中間評価の提言を受けて、2012 年 2 月の JCC にて 修正・承認されたPDM version2(付属資料 2)に基づき、日本側及びマダガスカル側による合同 評価チームにより実施された。 終了時評価の構成は、①プロジェクト実績及び実施プロセスの検証、②評価5 項目の検証、③ 検証結果からの提言・教訓の取りまとめの3 段階からなる。 評価チームは、まず、国内作業にて、プロジェクトチーム作成・提供資料のレビューを行った 後、現地調査を通じ、プロジェクト関係者〔日本人専門家、MinAgri、DRDR、FOFIFA、ノルウ ェー・マダガスカル共同畜産・農業研究センター(Fiompiana Fambolena Malagasy Norvezian: FIFAMANOR)、CAFMA、CMS、農業省種子検査課(Service Officiel du Contrôle:SOC)〕へのイ ンタビューを実施し、プロジェクトサイトの視察、さらに農家へのインタビューなどを通じて、 必要情報・データの収集を行った。 これら収集情報に基づき、PDM における投入と活動によるアウトプット(成果)の達成状況、 そのアウトップによるプロジェクト目標の達成状況につき、検証を行った。そのうえで、以下の 評価5 項目の観点からの評価を行った。 (1)妥当性: 相手国政府の開発政策や受益者のニーズ等と、プロジェクト目標や上位目標 が一致しているか、日本の援助政策と整合性がとれているか。 (2)有効性: プロジェクト目標はどの程度達成されているか、アウトプットとの関係はど うなっているか。 (3)効率性: アウトプット達成のために投入は効率的に行われたか。投入された資源の質、 量、手段、時期は適切であったか。 (4)インパクト:上位目標は達成される見込みか、プロジェクトの実施による意図していなか った正負の影響・効果はあるか。 (5)持続性: プロジェクト終了後に、マダガスカル側関係者によって、その効果・便益が どの程度維持され、拡大されていくか。 この評価結果を踏まえ、プロジェクトの残りの期間及び終了後における対応方針につき協議し、 提言・教訓事項をまとめた。 3-2 評価のデザインと主な調査項目 PDM(version 2)に基づき、プロジェクトチーム作成・提供資料の情報を踏まえ、プロジェク ト実績、実施プロセス、評価5 項目ごとに、評価設問を設定し、評価デザインの枠組みとして評 価グリッドを作成した(付属資料4.評価グリッド参照)。評価グリッドは英文・仏文でも作成し、 マダガスカル側評価チームとも確認・参照した。 3-3 データ収集方法 作成した評価グリッドに基づき、以下の手法・情報収集先から、必要となる情報・データを収 集した。特に、評価グリッドの設問につき、プロジェクトチーム作成・提供資料の情報で不明瞭

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な点、また十分にカバーされていない事項等を中心に確認した。 収集・データ収集方法 収集情報・目的 主な情報収集先 (1)資料・文献レビュー ・プロジェクトの概要把握・背景 情報の整理、進捗状況の点検、 プロジェクトの抱える課題の抽 出 ・政策、コメ生産関連統計情報 プロジェクト作成資料・報告 書 事前評価資料、中間評価報告 書等 コメ生産に係る統計資料 (2)現地調査・インタビ ュー ・プロジェクトの実績・進捗状況 及び実施プロセスに関するヒア リング・確認(事前に主な質問 項目リストを作成) 日本人専門家、 C/P 機関(農業省、各 DRDR、 FOFIFA、FIFAMANOR、 CFAMA、CMS) 農家、水利組合、農業機械製 造者 (3)グループ・インタビ ューの実施 ・終了時評価実施中に開催された プレ JCC の際に、C/P 機関から の 150 名弱の出席者を県別のグ ループに分け、質問リストに沿 ったインタビューを実施。 ・主に、C/P の成果達成状況にかか る自己評価、技術移転手法の有 効性、改善すべきと考える点等 について確認。 C/P 機関(重点 5 県の DRDR、 FOFIFA、FIFAMANOR、 CFAMA、CMS)及び東海岸 2 県のDRDR 関係者 以上を通じて得られた情報・データは、プロジェクト実績、実施プロセス、評価5 項目ごとに 取りまとめ、事実についてはプロジェクトチームが確認を行い、評価内容についてはマダガスカ ル側評価チームと協議を行い、最終化した。また、この評価結果を踏まえ、プロジェクト協力期 間終了まで及び終了後の展望につき、プロジェクトチーム及びマダガスカル側評価チームと意見 交換を行った。本終了時評価の結果は、合同調整委員会(JCC)で報告し、関係者の了承を得た。

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第4章 計画達成度

4-1 投入実績 4-1-1 日本側投入実績 (1)日本人専門家の派遣 1)長期専門家 以下のとおり、延べ7 名の長期専門家が派遣された(詳細は付属資料 6-1 を参照)。当 初長期専門家は4 名体制であったが、重点県が 3 県に分散し、各県の特徴を踏まえた技 術パッケージの開発及び DRDR への技術指導を十分行うためには県別に担当者を振り 分けることが望ましいと考えられたことから、2010 年 9 月より 5 名体制に変更された。 専門分野 派遣期間 チ ー フ ア ド バ イ ザ ー/農業開発 2009 年 1 月~2011 年 1 月、2010 年 12 月~2014 年 1 月(予定) 業務調整/普及 2009 年 1 月~2012 年 3 月、2012 年 3 月~2014 年 1 月(予定) 営農 2009 年 10 月~2014 年 1 月(予定) 稲作 2010 年 5 月~2014 年 1 月(予定) 小規模稲作 2010 年 9 月~2014 年 1 月(予定) 2)短期専門家 次の13 分野について、延べ 16 名の短期専門家が派遣された(詳細は付属資料 6-1 を 参照)。 年 度 専門分野 2009 年度 営農、適正農業機械、ベースラインサーベイ、稲作 2010 年度 栄養診断、農業機械、試験研究管理 2011 年度 水利組合強化、乾期作物の栄養診断、家計研修トレーナー指導、水陸 稲の栽培と養分管理 2012 年度 種子生産、水稲肥培管理、水管理、水稲品種評価 2013 年度* 種子生産 *2013 年 6 月現在 3)第三国専門家 適正農業機械及びポストハーベスト分野について、延べ5 名のインドネシア人短期専 門家が派遣された(詳細は付属資料6-1 を参照)。 (2)本邦及び第三国研修 稲作技術、品種選定技術、小規模水稲・普及等の分野において、計 11 回の本邦研修が 実施され、計 17 名の研修員が参加した。また、ケニア、エジプト、インドネシアにおい て第三国研修が実施され、おのおの 4 名、1 名、9 名の C/P が参加した(詳細は付属資料 6-2 を参照)。

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(3)供与機材 プロジェクト活動に必要な、気象観測装置・インキュベータ・水分計等の実験機材、コ ンピュータ・コピー機・プロジェクター・カメラ等の事務機器など、1,860 万円相当の機 材が投入された(詳細は付属資料6-4 を参照)。 (4)日本側負担現地業務費 プロジェクト活動に必要な経費として、約 1 億 6,000 万円(33 億アリアリ)を日本側が 支出した(プロジェクト開始~2012 年 3 月末現在。詳細は付属資料 6-3 を参照)。 4-1-2 マダガスカル側投入実績 (1)C/P の配置 2013 年 6 月現在、計 127 名(延べ 145 名)の C/P が配置されている。内訳は、農業省(10 名)、FOFIFA(9 名)、SOC(2 名)、アロチャ・マングル県 DRDR(21 名)、ブングラバ県 DRDR(14 名)、ヴァキナカラチャ県 DRDR(16 名)、イタシ県 DRDR(16 名)、アナラマ ンガ県DRDR(30 名)、CMS(2 名)、FIFAMANOR(3 名)、CFAMA(4 名)である(詳細 は付属資料6-5 を参照)。 (2)施設等の提供 首都アンタナナリボでは、農業省土木局の建物内にある3 室がプロジェクト事務室とし て提供されている。また、重点3 県では、DRDR の事務所内にプロジェクト事務所が確保 されている。また、CFAMA では農業機械に関する活動を行っている第三国専門家用の執 務スペースも確保されている。 (3)マダガスカル側経費負担 マダガスカル側は、C/P の出張にかかわる経費(日当・燃料費)を負担することとなっ ており、2010 年以降一部負担している。2010~2013 年 4 月末現在の支出総額は、8,800 万 アリアリ(約440 万円)である(詳細は付属資料 6-5 を参照)。 4-2 活動実績 本プロジェクトでは、以下の成果(アウトプット)を達成するために、さまざまな活動が実施 された。 (1)成果 1:コメ生産性向上のための「技術パッケージ」がプロジェクトにより開発される (2)成果 2:品種選定、種子増殖、配布体制の整備が推進される (3)成果 3:技術パッケージ波及のための教材が整備される (4)成果 4:対象 5 県において、関係機関の連携によるコメ生産技術の指導体制が整備される (5)成果 5:技術パッケージが対象 5 県の農家に利用可能となる

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4-2-1 成果1 を達成するための活動 PDM 記載の活動 活動状況 進捗状況 1-1 各地の特性に合わせ た 技 術 パ ッ ケ ー ジ 案、実証試験を策定 し、実施する ・重点 3 県において、各県の特色に見合った稲作技術パ ッケージが開発・改訂された。(v=Version) 県 技 術 パ ッ ケ ージ 2009 2010 2011 2012 2013 ア ロ チ ャ ・ マングル 水 稲 作 技 術 パッケージ V0 V1 V2 V3 灌漑水路管理 マニュアル V0 ブングラバ 水 稲 作 技 術 パッケージ V V1 V2 V3 水 稲 種 子 生 産 マ ニ ュ ア ル V0 V1 ヴ ァ キ ナ カラチャ 水 稲 作 技 術 パッケージ V0 V1 V2 V3 陸 稲 作 技 術 パッケージ V0 ・アナラマンガ県、イタシ県においても、技術パッケー ジが開発され、現在Version 2 の改訂中である。 ・技術パッケージの開発においては、各地域の土地条件 や農地規模等を特定のうえ、圃場における実験を重ね、 頻繁にモニタリングを行いつつ、農家が実践しやすい シンプル、かつ効果的な技術を採用するよう工夫され ている。 ・各作期終了後に、収穫の成果や投入、収支等について、 参加農家及び C/P 関係機関とともに参加型評価を行 い、その結果から、技術パッケージの改訂を重ねてい る。 2013 年 9 月 まで継続 1-2 栽培技術(推奨品種 選定、土壌、水管理、 病害虫、除草管理等) に関し、試験を行う 栽培技術に関するさまざまな試験が実施された。 ・各地域の特徴にあった適切な品種を選定するため、2009 年以降 FOFIFA の各地域センターにおいて、実験が継 続されている。 ・2010 年に派遣された短期専門家の指導により、水稲栄 養 ・ 生 理 の 観 点 か ら 土 壌 分 析 が 実 施 さ れ た 。 ま た FOFIFA 及び FIFAMANOR との協力により、土壌条件 に応じた肥料や肥培管理の実験も実施された。 ・住友商事によるアンバトビー鉱山プロジェクトの CSR 事業との協力により、肥料としての活用可能性を追求 するため、FOFIFA を通じて硫安試験が実施された。 ・その他、健苗育成、病害虫対策、陸稲の適切な植え付 け深度試験等の栽培技術の実験も実施された。 2013 年 9 月 まで継続

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PDM 記載の活動 活動状況 進捗状況 1-3 ポストハーベスト技 術 改 善 に 関 す る 試 験・研究を行う ・第三国専門家(インドネシア人)の指導により、対象 5 県におけるポストハーベスト・ロスにかかる調査が 実施されている(2013 年 9 月終了予定)。 ・本専門家の指導により、コメの物理的特性(色調、割 れ米歩合等)に基づく品質評価基準が策定されたほか、 選別機の試作が行われた。 ・副産物利用の一環としては、籾殻燻炭製造機を試作し、 対象県に配布するとともに、利用促進のためのペレッ ト化の検討が行われた。 2013 年 9 月 まで継続 1-4 農業機械の開発、改 良及び推進を行う ・2009 年に派遣された日本人短期専門家の指導により策 定された詳細活動計画及び投入計画に基づき、CFAMA においてインドネシア第三国専門家の指導により、さ まざまな小型農業機械の開発が進められた。開発され た機械は、足踏み脱穀機、動力脱穀機、種子選別機(唐 箕)、除草機(水稲用、陸稲用)、播種機(水稲用・陸 稲用)である。 ・農業機械の普及を目的に、2010 年より地元農機具製造 業者に対する技術研修を実施。計14 回、参加者 162 名。 ・農業機械の利用及びマーケティング促進のため、さま ざまな農業フェアへの参加、またデモンストレーショ ンを実施。ホンダ南アフリカ法人との協力により、ア ンチラベにて動力脱穀機や動力選別機・除草機等のデ モンストレーションも実施した。 完了 4-2-2 成果2 を達成するための活動 PDM 記載の活動 活動状況 進捗状況 2-1 品 種 選 定 、 種 子 増 殖・配布、種子認証 の現状と問題点を把 握する ・2009 年に品種選定、種子増殖・配布、種子認証の現況 と問題点について把握。種子生産関係の C/P の本邦研 修参加を通じ、自国の種子生産にかかる課題の明確化 及び問題解決のための活動計画を策定、県技術管理委 員会(Regaionl Technical Management Committee:RTMC) において発表し、それをベースにより詳細な行動計画 を策定する運びとなった。 ・2012 年日本人短期専門家の指導により、種子生産の課 題について把握するため、対象5 県において、FOFIFA 及びFIFAMANOR 協力のもと、調査が実施された。 完了 2-2 品種選定システムを 改善する ・品種選定システムを改善するため、FOFIFA 試験場(ブ ングラバ県、アロチャ・マングル県)及びFIFAMANOR において品種特性試験等が実施された。 ・2010 年、FAO との協力により、作物種子カタログ(稲 を含む作物全般)が作成され、各DRDR における種子 選定に活用できるよう、共有された。 完了

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