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7-1 マダガスカル側に対する提言事項

(1)予算

1)プロジェクト予算の確保

本プロジェクト実施に際しての予算負担は2008年に締結された討議議事録(Record of Discussions:R/D)に記載されているとおりであるが、これまでマダガスカル側はその一 部しか負担しておらず、マダガスカル側において支出されない経費について、日本側が一 時的に負担することが続いている。

特に人件費(C/Pの出張旅費及び必要な人材の傭人費)と燃料代については、R/Dの記載 に準ずるためにも、またプロジェクト終了後の持続性確保のためにも、今後はマダガスカ ル側が負担することを強く要請する。

2)特に普及活動のためのDRDRへの予算確保

本プロジェクトが作成してきた技術パッケージは最終版に向けた取りまとめが進んで おり、今後は完成した技術パッケージの普及が大変重要となる。対象5県において、可能 な限り多くの農民へ技術パッケージの利用を促進するためには、各県のDRDRを活用する ことが効率的であると考えられる。したがって、農業省とDRDRは、県内に技術パッケー ジを普及するための予算を確保すべきである。

(2)稲作普及のための人員配置

現在、マダガスカルには普及担当職員が全国で400名程度しか存在しておらず、技術を効 果的・効率的に普及するための制度が未整備である。しかしながら、本プロジェクトにおい ては開発した技術パッケージをより多くの農民に普及することが今後重要であると考えら れ、そのためには普及に関する体制を構築することが必要不可欠である。

よって、農業省内に「稲作技術普及ユニット」を設立し、各県のDRDRやCSA、その他関 係機関を活用しながら技術パッケージを広く普及していくことを提言する。

7-2 プロジェクト側に対する提言事項

(1)プロジェクトの管理と調整に関すること 1)用語とデータの定義の整理

本プロジェクトでは対象5県のDRDRがそれぞれ方針を決めながら個別に活動を実施し ているため、同一の用語であってもその定義が異なっており、そのために画一化されたデ ータを取ることが難しい。

主要な用語の定義を揃え、同一条件の下で各県のデータを収集することはプロジェクト を取りまとめるにあたって必要不可欠であるため、プロジェクトとして用語を定義づけし、

それに基づいて活動を実施することが求められる。特に整理が必要であると考えられる用 語は以下のとおり。

・モデル農家

・サテライト農家

・アダプトン農家

・「技術パッケージ普及」の判断基準 2)PDMとPOに沿った事業の実施

本プロジェクトでは、PDMに記載されていない活動にも取り組む事例が散見される。い ずれもPDMに関連した取り組みであり、前向きかつ積極的に事業を実施することは好まし いことであるものの、PDMは案件実施の基盤となる枠組みであるため、プロジェクトの活 動はPDMに従うべきであり、もし記載されていない活動に取り組む場合にはJCCにおいて PDM変更の手続きを踏むことが必要となる。また案件実施のスケジュール管理においては POも同様に大変重要であり、適切な予算管理と投入のためにはPDMとPOに沿った事業実 施が強く求められる。

したがって、プロジェクトは2013年7月中にPOを作成し、PDMとPOに基づいて案件を実 施するとともに、いずれかに変更の必要が生じた場合には速やかにJICA及び先方政府へ相 談し、JCCにおいて正式に変更するものとする。

3)より多くのモデル圃場設置

技術パッケージによって収量を上げている圃場を実際に見せることで、プロジェクトや 種子や肥料を投入しなくても自主的に技術パッケージを活用し始める農家が多いことが、

本終了時評価を通じて明らかとなった。今後、技術パッケージの利用率を上げるためには、

より多くのモデル圃場(プロジェクトが種子や肥料等、最低限の投入を行う圃場)を対象 5県内のできる限り人目につきやすい場所に多く設置し、本プロジェクトの成果であるこ とを示すことで普及を図ることが望ましい。

また、本プロジェクトの受益者数を増やすため、これまでに投入を行ってきた農民への 支援は徐々に減少させ、新たな農民への支援へ移行することを提言する。

4)農業省本省の巻き込み

これまで、本プロジェクトは各県のDRDRを主要なC/P機関として活動してきたため、農 業省本省内との連絡体制が十分ではなかった。しかし、今後より広範な技術パッケージの 普及を図り、プロジェクトの持続性を担保するうえでは、中央政府の巻き込みと、それを 通じた適切な人員・予算の確保が必要不可欠である。

各県における活動成果を可能な限り密に農業省本省内へ連絡するとともに、必要に応じ て本省の意向も取り入れながら案件を実施することが望ましい。

5)他ドナー、NGO、民間企業等への技術パッケージの売り込み

技術パッケージをより多くの農民に普及するにあたり、農村において何らかの活動を実 施している関連機関を広く巻き込み、彼らのプロジェクトに技術パッケージを利用しても らうことが効果的であると考えられる。

そのため、今後はあらゆる機会において関連機関に案件の成果を広報するとともに、積 極的に営業活動を行うことで技術パッケージを利用する機関を増やしていくことが重要 となる。

(2)技術面に関すること

1)技術パッケージの利用者増加をめざした調査の実施

現在開発されている技術パッケージは、稲作の一連の流れを網羅しており、非常に完成 度の高いものであるが、普及制度の脆弱なマダガスカルにおいて、プロジェクト終了後に

も持続的に技術パッケージの利用者を増やすためには、農民が自分たちだけで取り組める 内容にすることが必要である。

したがって、利用者増加のために必要な取り組みについて農民を対象に調査を行うこと を提言する。

2)優良種子の供給体制の強化

マダガスカルの稲作において、優良種子を用いることは収量を増加させるために非常に 重要であり、農民からの需要も高い。しかしながら需要に対して種子の供給が追いついて おらず、農民の種子に対するアクセスを良くすることが課題となっている。

上記の状況を改善するため、GPSへの研修を強化して農村内での種子生産量を上げるこ とで、優良種子の供給量を増やすとともに、種子に対する農民のアクセスも向上させるこ とを提言する。

7-3 教訓

(1)充実した普及制度の重要性

農業技術を取り扱う技術協力プロジェクトにおいては、ともすれば技術を開発することが 最終目的となる案件が計画されがちである。普及制度が整備されている国では、優れた技術 が開発されればそれを普及していくことも困難ではないが、協力対象国によっては普及制度 の整備が不十分であることも散見される。普及制度が整っていない場合、よい技術を開発し てもそれを広域に展開して裨益者数を増やすことが難しく、プロジェクトの成果が小さいま までとどまってしまう可能性がある。

こうしたことを防ぐために、技術協力プロジェクトにおいては、それが技術開発型の案件 であったとしても、開発された技術をどのように普及するのかを事前に検討し、協力対象国 の制度が不十分であれば、それを補足するための活動をプロジェクトに含めることが大切で ある。

(2)予算措置の重要性

プロジェクトの成果を最大化するためにも、技術協力の相互経費負担の原則を担保するた めにも、協力対象国が必要な予算をきちんと配賦することは重要である。

C/P機関の力が弱く、思うように予算確保に向けた働きかけが進まないときは、プロジェ クト側から案件やその成果の重要性・有効性等を発信し、予算措置に向けた適切な支援を行 うことが必要となる。またその際には協力対象国の予算措置のスケジュールを正確に把握し、

時機を逃さず働きかけを行うことが重要である。

(3)積極的な広報活動

本プロジェクトでは、他案件ではみられない積極的な広報活動を展開してきたことが特徴 である。具体的には、現地の有名俳優を起用してVCDを作成・販売し、多くの国民に案件の 活動や開発技術を知らしめてきた。技術を広めたい相手について分析し、そこに至るための 手法を丁寧に検討することで、居住地域や年齢層、性別にとらわれない不特定多数の国民に 情報を伝達することに成功した。このマーケティングのプロセスは、他のプロジェクトにお いても十分に活用可能なものである。

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