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6-1 5項目評価

6-1-1 妥当性:高い

本プロジェクトは、以下のとおり、マダガスカル側の開発政策、日本の ODA 政策、対象地 域・グループのニーズと整合しており、妥当性は高いと判断される。

(1)マダガスカルの開発政策との整合性

開始当初から現時点においても、マダガスカルの国家開発政策であるマダガスカル・ア クションプラン(MAP:2007-2012)において、「農村開発と緑の革命の開始」が重点分野 の1つになっており、食糧安全保障の観点から、コメ増産は重要視されている(当計画は 保留となっているが政策としては現暫定政権でも踏襲)。また、CARD のイニシアティブ のもと 2008 年から国家稲作開発戦略(NSDR)が策定・改訂されており(最新版は 2011 年の改定版)、稲作振興は、これらの政策と合致している。

(2)日本の援助政策との整合性

対マダガスカル支援重点分野は、農水産業・農村開発、保健・衛生、民間セクター開発・

貿易投資促進である。農水産業・農村開発分野では、「食糧増産プログラム」の実施を通 じて、コメ自給を支援する方針であり、本プロジェクトは、このプログラムのなかの1つ として位置づけられている。

また、日本は 2008 年 5 月に開催された第 4 回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development IV:TICAD IV)において、向こう10年間でアフリカ地 域のコメ生産量倍増を図るための支援を提供することを表明し、マダガスカルはCARDの 第 1 グループに属すコメ増産の重点支援国である。本方針は、2013 年 6 月に開催された TICAD Vにおいても再確認されたことからも、日本政府の方針と合致している。

(3)ターゲット・グループのニーズとの整合性

マダガスカルの人口の約 75%が農業に従事し、そのうち 85%はコメ生産に従事してい るとされることから、プロジェクト対象地域のコメ生産性向上と増産は、対象地域・社会 のニーズに合致している。また、農村部においては、1 人当たり年間約 138kg、都市部で は118kgのコメを消費しており、コメの増産は、食糧安全保障の観点からも重要課題であ る。

(4)手段としての適切性

アプローチ・対象地域の適切性

マダガスカルの稲作の歴史は 400~500 年といわれるが、その手法は伝統的農法に頼る ものであり、コメの平均収量は 2.5~3.0t/ha にとどまっている。プロジェクトの対象5 県 は、マダガスカルの主要なコメ生産地域であることから、対象地域の選定は適切である。

また、プロジェクトのアプローチとしては、コメの生産性向上を図るため、①「都市近 郊における小規模兼業型稲作(ヴァキナカラチャ県のモデル)」、②「山間地農村における

小規模労働集約型稲作(ブングラバ県のモデル)」、③「大規模灌漑地区における土地集約 型稲作(アロチャマングル県のモデル)」の 3 種の稲作形態に適した技術パッケージの開 発を軸に、技術パッケージに関する教材開発と研修の実施、適切な品種選定・種子増殖・

配布体制の改善、またコメ生産に関連する機関の連携の強化等を通じ、包括的な生産性向 上に資するものであり、その包括的なアプローチは対象地域のコメ生産性を向上させるに あたり、適切である。

ターゲット・グループ選定の適切性及び波及性

各県のモデルサイトは、各 RTMCにおいて、専門家とともに協議を通じて決定された。

いずれも灌漑施設単位で適切な稲作に十分な水が確保されているところである。特に、初 年度に選定されたモデル農家は、確実な成果の発現が導ける条件や展示効果を考慮して、

デモファームに適した条件の農地、かつ収量増をめざし技術改善に熱心な農家が選定され ており、全般的に効果の発現につながっている。

モデルサイト内における普及としては、モデル農家・サテライト農家、アドプション農 家など参加農家を対象に技術採用農家を増やしつつ、技術パッケージの適切な改訂に努め るよう設計されている。モデルサイト外での普及方法は県によって異なるが、例えば、ブ ングラバ県では、拡張サイトとして、普及員自身の農地を圃場として近隣農家に展示し、

周辺農家に対する技術指導を行うことで技術を普及する、といった方法がとられている。

また、ヴァキナカラチャ県では技術パッケージ普及計画を策定し、実施中であるが、モデ ルサイト外に更に展示効果が高いと考えられるエクステンション・サイトを設置し、その 中にモデル農家・サテライト農家を募る形で普及が図られている。

また、人気映画シリーズとのタイアップによる VCD 販売・配布を通じ、ターゲット・

グループ以外への普及を可能とする試みも行われており、対象県外への波及性も考慮され ている。

日本の技術の優位性

わが国もコメを主食としており、栽培技術の開発や消費者の嗜好に応じた品種開発など、

コメ栽培に関する高い技術を有している。また JICA は、アジアやアフリカで多くの稲作 関連技術協力を実施してきており、稲作分野における経験が豊富である。よって、マダガ スカルにおいて、日本の技術・経験を十分に活用することが可能である。

6-1-2 有効性:高い

前述のとおり、本プロジェクトの活動によって、期待される成果はほとんど達成されており、

満足できる水準となる見込みは高い一方、2011/12年までの収量増加は平均0.69t/haにとどまっ ており、プロジェクト目標は達成されていない。2012/13 年の収量確認に至っていないが、参 加農家の成果から技術の有効性は確認されていることから、取り組みを継続することで、達成 される可能性は高い。

なお、品種選定、種子の品質向上・増殖、配布体制の整備については、DRDRあるいはFOFIFA が推奨している品種の種子生産が奨励されているが、その純化については現在もFOFIFAにお いて実施・継続中である。種子増殖・配布体制強化については、種子生産者に対する研修を継

続するとともに種子生産農家の組織化を通じた販売強化、種子検査官の育成等を通じ、検査体 制強化にも取り組みがなされている。

また、これらの技術や優良種子利用推進のために、プロジェクトは多様な教材(冊子、VCD、

ポスター等)を作成するとともに、積極的に TVやラジオといったメディアを活用し、情報発 信とメディアを使った技術パッケージの普及に努めていることは、本プロジェクトが波及して いる大きな特徴の1つといえ、今後プロジェクト目標、ひいては上位目標の達成に資するもの と考えられる。

このように、技術パッケージの開発及び種子の選定・増殖・配布体制の整備、教材整備、指 導体制の整備、普及、という5つの成果(アウトプット)は、一連の流れと包括的な取り組み としコメの収量増を実現させるものであり、論理的整合性は確保されている。

6-1-3 効率性:満足できる

プロジェクト開始当初に発生した政変の影響があったことは否めないが、プロジェクトの活 動は全体的に計画どおり実施されており、期待される成果を達成しているとともに、プロジェ クト目標の達成見込みに寄与している。したがって、政変の発生という突発的な事態の影響を 受けたにもかかわらず、満足できるレベルの効率性が確保されているといえる。

(1)投入の効率性 1)日本側の投入

日本側の投入(日本人・第三国専門家派遣、機材供与、現地業務費の拠出)は適切な ものであり、効率的な活動の実施と成果の発現に寄与した。

a)日本人専門家

中間評価時にも確認されたとおり、日本人長期専門家の派遣は4名であったが、ア ロチャ・マングル県の水利施設リハビリ事業の中止の影響により、当初計画にない活 動(灌漑施設の一時的修理や水利組合の能力強化など)も実施せざるを得ない状況と なったこと、また重点3県について県別に担当者を振り分けて技術移転を行うことが 望ましいと考えられたことから、2010年に長期専門家1名が増員されることとなった。

このほか、政変の影響によりベースライン調査を担当する短期専門家の派遣が遅れた が、その他の短期専門家(日本人、インドネシア人)は適切な時期に派遣され、特に 効率性を欠く事象は確認されなかった。

b)本邦研修及び第三国研修

本邦研修及び第三国研修においては、プロジェクトの活動に従事している農業省、

DRDR、CFAMA、SOC、CMS、FIFAMANORの職員が派遣され、おのおのの分野の知 見と技術を習得するとともに、プロジェクトの活動へのモチベーションの向上につな がった。特に、DRDR代表者参加のもと、2010年ケニアにおいて実施された「プロジ ェクトマネジメント研修」を通じては、プロジェクト運営管理の重要性が確認され、

帰国後、中央及び各県にプロジェクト・コーディネーターが配置されることとなり、

関係者の円滑なコミュニケーションを通じた事業の実施が可能となった。

c)供与機材及び現地業務費

日本側からの供与機材の状況は、プロジェクター1 機を除いて有効であり、プロジ

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