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修士論文・博士論文一覧|九州大学 大学院人間環境学府

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(1)

34-1

に重点を置いて保全に取り組むことが有効と考えられ

る(図 1)。

 以上より、本研究では、北九州市八幡東区枝光一区

を対象に、高齢者の歩行負担の観点から算定した宅地

利便性と土地利用推移との関係、および主要歩行路に

おける空家・空地の管理状態を分析し、縮減期の斜面

住宅地における主要歩行路の保全手法に関する知見を

得ることを目的とする。

2.研究の方法

2-1.研究対象地区の概要

 本研究の対象地区である北九州市八幡東区枝光一区

( グロス面積約 45.1ha、2015 年人口 3,021 人、世帯数

1,475 世帯、高齢化率 38.6%) は、1901 年の官営八幡製

鐵所の操業以降、労働者の住宅需要を受け形成された

斜面住宅地である。しかし、1959 年に始まった製鉄

企業の再編・合理化によって労働人口が流出し、その

後もモータリゼーションの進展や郊外住宅地の拡大に

伴って住民の減少や高齢化が進行している。

 これに対し、2000 年より市・交通事業者・地域(枝

光一区・二区・三区)が連携して乗合タクシーの定期

運行による高齢者等の外出支援と地元商店街の集客支

援を行っている。一方、2017 年に公表された市の立

地適正化計画では地区の大半が居住誘導区域を外れ、

さらなる縮減に対して空家・空地対策等の住環境の保

全やコミュニティの維持が大きな課題となっている。

2-2.研究の流れ

 まず、地区内の画地注 3)

ごとに高齢者の外出時の歩

行負担の推計を行い、利便性を評価した。次に、画地

の利便性と土地利用の関係について、特に、空家・空

地の利活用状態、管理状態、および老朽度注 4)の 2005

年~ 2015 年の推移をもとに分析した。続いて、生活

施設や公共交通までの主要な歩行動線となる道路(主

要歩行路)を抽出し、主要歩行路に面する画地の状態

を分析した。最後に、縮減が顕著なエリアでの主要歩

行路の保全事例を取り上げて詳しく分析し、斜面住宅

地における主要歩行路の保全手法について考察した。

2-3.歩行負担の算定方法

 斜面地での歩行負担を捉えるには水平移動に加え、 1. 研究の背景と目的

 人口減少と高齢化の進む我が国において、社会資本

の大幅な増進は望めず、広く生活サービスの強化を図

ることは難しい。これに対し、2014 年の都市再生特

別措置法改正により立地適正化計画注 1)

が制度化され、

コンパクト ・ プラス ・ ネットワークの推進に向け、地

方自治体で計画の策定が進められている。しかしなが

ら、当計画では、都市機能誘導区域や居住誘導区域を

定めて都市施設や住宅の立地コントロールを図るもの

の、区域外に位置づけられた地域に対する手当や措置、

さらには、誘導された後の土地利用や住環境の保全に

関する方向性は明示されておらず、重大な課題として

指摘されている1)2)3)

。特に、既に縮減が進む地域では、

区域外指定による状況の加速は免れず、さらなる空家・

空地の増加による住環境の荒廃を防ぎ、また、高齢者

など交通弱者の生活利便性注 2)( 以下、利便性)を確保

する対策が喫緊の課題である。

 本研究で対象とする斜面住宅地は、道路基盤が脆弱

で狭隘な坂道や階段道が多く、外出時の歩行負担が利

便性を左右する。また、縮減の進行で、近年、空家・

空地が群化する箇所が増えており4)

、集積状態の良否

を評価し対策を講じる必要がある。よって、縮減期の

斜面住宅地における住環境の保全手法として、路線単

位で空家・空地の集積状態を捉え、特に、住民の主要

な歩行生活動線となっている道路(以下、主要歩行路)

縮減期の斜面住宅地における主要歩行路の保全手法に関する研究

北九州市八幡東区枝光一区におけるケーススタディ

-高橋 豪志郎

図 1. 縮減の進行と住環境の保全単位

凡例

路線 道路中心線

管理の方向 主要歩行路 生活幹線道路 宅地

管理情報

バス停 擁壁 その他

空家 未利用地 菜園

管理領域 駐車場

〇宅地単位の個別保全

(※モデル) 〇路線単位の一体的保全

管理 管理

劣化

未利用

除却

転用 転用

(2)

34-2 垂直移動による身体的負担を考慮する必要がある。本

研究の先行研究4)

では、「歩行負担量」を用いた地区の

利便性評価をもとに街路空間の整備指針について論じ

ているが、換算距離の算定方法や利便性評価区分は課

題の残るものであった。これに対し、佐藤ら5)

による

「代謝的換算距離」は、地形条件や歩行者の年齢による

身体能力の変化を考慮しており、斜面地での歩行負担

を算出する指標として有効であると考えられる。よっ

て、本研究では代謝的換算距離を用いて高齢者の歩行

負担を算定した ( 図 2)。 

 分析用データベースは、地区のまちづくり協議会や

自治会と協働で実施した住環境点検調査注 5)

をもとに

ArcGIS を用いて作成した「地域住情報 DB」注 6)

を用いる。

3.画地の利便性区分 

3-1.利便性区分別の分布特徴

 画地の利便性を評価するにあたり、まず、目的地と

して高齢者の日常生活において重要度や利用頻度が高

い購買施設や医療施設(以下、生活施設)、および公

共交通利用時のバス停留所を設定した ( 表 1)。次に、

各目的地に対して国土交通省が示す誘致距離指標を

もとに代謝的換算距離での利用圏域注 7)

を算定し、そ

の重なりから画地の利便性を A ~ C の 3 段階に区分し、

さらに前面道路の車両進入の可否によってそれぞれ 2

区分し、図 3 に示す 6 区分を設定した。

 利便性区分別の分布をみると ( 図 4)、生活施設から

の徒歩圏内にある利便性 A1,A2( 以下、分類のみ表記 )

は地区の平地部にまとまり、全画地の約 2 割を占める。

市が設定した居住誘導区域よりやや広い範囲である。

次に、公共交通の停留所からの徒歩圏内にある B1,B2

は、平地部から山手にも及び、全体の約 5 割を占める。

また、A,B の両圏域に含まれない C1,C2 の画地は全体

の約 2 割で、中腹・山手の幹線道路から離れた位置に

分布する。特に車両進入が困難な B2,C2 は約 3 割あり、

中腹・山手に群状に分布している。

3-2.土地利用の推移

 利便性区分別の 2005 年~ 2015 年の土地利用の推移

をみると、A1 では事業所系の割合が増加して住宅が

減少し、空家・空地(以下、空画地)も減少している。

その他の区分では、後半 5 年に住宅の減少と空画地の

増加が大きく、特に、B2,C2 で顕著である。

3-3.空画地の利活用状況 

 同様に、利活用されない空画地(以下、未利用空画地)

は A1 以外の全区分で増加傾向にあり、B2,C2 で著しい。

一方、住宅以外の用途に利活用されている空画地(以

下、転用空画地)では、車両進入可の画地で駐車場が

図 3. 利便性評価区分

図 4. 利便性区分別の分布

多く、不可の画地では菜園の割合が高いが、ともに総

量はほとんど変化していない。

3-4.未利用空画地の劣化状態

 次に、未利用空画地の管理状態と劣化状態では、車

両進入不可の画地で未利用空画地の老朽化が進行し、

利便性が低いほどその割合が高まる。用途別では、未

例 利便性 A1(21.9%) 利便性 A2(1.2%)

利便性 B1(34.6%) 利便性 B2(18.6%)

利便性 C1(12.4%) 評価対象外 地区境界線 利便性 C2(11.3%)

居住誘導区域 都市機能誘導区域

居住誘導区域 都市機能誘導区域

表 1. 目的地分類別の距離指標

図 2. 代謝的換算距離による評価6)

代謝的換算距離による評価 平面距離による評価

■換算距離の算定式

M = P× ri+1.2

r0+1.2

×S

S 0

M:代謝的換算距離(m) ri:勾配 i %でのRMR値 P:地形距離

r0:勾配0%でのRMR値 :基準歩行速度(4km/h)

0

S :高齢者の基準歩行速度(2.82km/h) S

地形条件や歩行者の身体能力を考慮に入れた換算距離を用いることで、斜面地で の移動負担を捉えることができる。また、一方通行の規制をかけることで、 -11%を境とした上り下りのエネルギー代謝率を考慮に入れた算出を行う。 平面距離を用いた分析では垂直方向の移動距離が考慮されないため斜面地の移動 負担を捉えることができない。

坂道

Start

勾配30 階段道 勾配10%

%

Start

平面距離 換算距離

現況

坂道

Start

勾配25% 階段道 一定 勾配10% 評価 評価

Start

Start

ri =

3.113e-4.614i

3.113e4.614i (i<-11(%)) (-11(%)≦ i <25(%)) (i ≧25(%))

10

i%

地形距離 P

平面距離 20

25

15 20

10

5

0 10 20 30 40 50 60 勾配 [%] RMR 値

▲斜面の勾配変化による RMR 値の推移 勾配 25% 以上坂道 階段道一定値 (=10) 身体的負荷 歩行能力

RMR 値(エネルギー代謝率)の算定式

購買施設 0-500

0-500

500-施設分類 目的地

利便性高 利便性低

利便性評価区分 (m) 利用区分

スーパーマーケット、コンビニ、商店街、 小売店等

生活施設利用

医療施設 病院、診療所(産婦人科、小児科を除く)

0-300

300-交通

公共交通利用 西鉄バス停留所・乗合タクシー停留所

車両進入可

A: 生活施設からの徒歩圏内

歩いて暮らせる画地 公共交通あるいは自家用車の利用が求められる画地

B: 公共交通停留所からの徒歩圏内

車両進入不可

C: 各種施設からの徒歩圏外

A:生活施設・自家用車ともに 利便性が高い

1 B :公共交通・自家用車ともに

利便性が高い

1 公共交通の利便性は低いが

自家用車の利便性は高い

C :1

公共交通・自家用車ともに 利便性が低い

C :2

B :公共交通の利便性は高いが 自家用車の利便性は低い 2

A :生活施設の利便性は高いが 自家用車の利便性は低い 2

(3)

34-3

図 6.主要歩行路の分布

表 2.路線延長距離あたりの未利用空画地面積

利用地は期間中の変化は少なく、A2 を除く全ての区

分で用途転換あるいは管理が行われるようになってい

る。一方、空家は B2,C2 で増加傾向にあるが、その大

半で管理状態は維持されている。

4.主要歩行路の保全

4-1.主要歩行路の抽出

 続いて、住民の主要な歩行動線となっている主要歩

行路を抽出する。生活施設は平地部や周辺地区に立地

しており、生活サービス水準を確保するため公共交通

への依存が増すと考えられる。よって、各画地から最

寄りのバス停までの最短経路を算出した上で、車両通

行や建築行為が制約される幅員 4m 未満かつ、市の生

活道路整備基準の 4 世帯以上の利用注 8)

が想定される

路線 (148 路線 ) を主要歩行路として抽出した(図 6)。

4-2.主要歩行路の保全実態

 主要歩行路の分布をみると、未利用空画地の増加と

老朽化の進行が顕著な B2,C2 が集積するエリアを通る

ものが多い、また、各路線の利用戸数は減少し、未利

用空画地率が増加しており、特に、2005 年の利用戸

数が平均値 (16.1 戸 ) 以下の路線では、利用戸数の減

少に対する未利用空画地率の増加が著しい ( 図 7)。主

要歩行路の単位長さあたりの未利用空画地率は、他の

細街路ほど高くない ( 表 2)、利用戸数が少ない路線を

いかに保全するかが今後重要と言える。以下では、主

要歩行路沿いの空画地への住民による多様な保全行為

が見られる 4 路線を取り上げ、その保全実態を分析す

る。

 まず、路線①は私道で狭隘な階段道だが、利用戸数

は 36 戸と多い。期間中に世帯の不在住化に伴い空家

と未利用地(元菜園)が生じており、また、空家の除

図 5.利便性区分別の画地の利活用状態の推移

却や未利用地の駐車場への用途転換がみられる。次に、

路線②は、利用戸数の減少に対して未利用空画地率の

増加が大きい路線であるが、菜園利用が連続する一角

がみられ、うち 1 画地は、かつてまちづくり協議会が

図 7.利用戸数と沿道の未利用空画地率の変化

利便性

区分 年

準グロス

面積 [ha]

6.6

10.5 21.2%

24.7% 23.4%

25.5% 19.6%

30.0%

空画地

構成比 住居系

住宅

管理無 管理有 管理無 管理有

※面積の構成比は画地面積を利便性分類別エリアの準グロス面積 ( グロス面積より道路、公園、大規模公共用地、自然緑地の面積を引いたもの ) で除したもの

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 [%]0 5 10 15 20 25 30 35 [%]0 1 2 3 4 5 6 7 8 [%] 空画地

空地

空家 住宅

・宅地

未利用 空画地 空画地

事業所系 未利用空画地

空家 未利用地 転用空家 菜園 駐車場

転用空画地

空家 劣化大

未利用地

住宅・宅地の利用状態 空画地の利活用状態 未利用空画地の劣化状態

2005 年

2005 年 2010 年

2010 年 2015 年

2015 年

3.8

0.4 22.5%

20.4% 22.2%

15.5% 24.3%

23.0%

2005 年

2005 年 2010 年

2010 年 2015 年

2015 年

5.6

3.4 25.6%

27.8% 30.7%

32.7% 39.8%

38.9% 24.1%

2005 年

2005 年 2010 年

2010 年 2015 年

2015 年

A1

B1

C1

A2

B2

C2

地区 全体

2005 年

30.3 26.3%

2010 年

29.7%

2015 年

利用戸数(推計)[ 戸 ]

沿道の未利用空画地率

20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

路線① 路線②

路線③ 路線④

路線① 路線②

路線③ 路線④

2005 年

2015 年 N値:148

2015 年平均値 16.2% 2005 年平均値 7.8% 2005 年平均値 16.1 戸

2015 年平均値 14.1 戸

[%]

生活幹線道路

延長距離:9,646m 劣化大 劣化大

面積[m2] 7,128 1,037 6,864 883 13,992 1,920

単位長さ当たり[m2/m] 0.7 0.1 0.7 0.1 1.5 0.2

主要歩行路

延長距離:6,279m 劣化大 劣化大 合計

面積[m2] 9,849 2,467 10,941 501 20,791 2,968

単位長さ当たり[m2/m] 1.6 0.4 1.7 0.1 3.3 0.5

他の細街路

延長距離:2,466m 劣化大 劣化大

劣化大

劣化大

劣化大 合計

面積[m2]

※幅員4m以上の路線を「生活幹線道路」、主要歩行路を除く幅員4m未満の路線を「他の細街路」とする ※角地など複数の路線種別に重複する未利用空画地がある

10,976 3,609 11,277 1,144 22,253 4,753

単位長さ当たり[m2/m] 4.5 1.5 4.6 0.5 9.0 1.9

合計

空家 未利用地

空家 未利用地

空家 未利用地

(4)

34-4

謝辞

本研究にあたり、枝光一区町内会長、枝光一区地域まちづくり協議会ならびに枝光一 区地域住民の皆様に多大なご協力を頂きました。ここに記して深謝いたします。

補注

注 1)国土交通省によると、居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等のさまざまな 都市機能の誘導により、高齢者をはじめとする住民が公共交通によりこれらの生活利 便施設等にアクセスできるなど、福祉や交通なども含めて都市全体の構造を見直すこ とを目的としたマスタープランを指す。

注 2) 国土交通省によると、日常生活に必要な、医療、福祉、商業などの生活機能と 公共交通サービス機能の充実度のことを指す。

注 3)利用状況に応じた境界、もしくは物理的境界により区切られた宅地で、所有者 の区分単位である筆を基本単位としつつ、その状況に応じて範囲を拡張したもの。 注 4)住宅地改良法施行規則による住宅不良度測定基準及び国土交通省「擁壁チェック シート」をもとに独自に作成した空家・空地の評価指標。空家の立地する画地は屋根、 外壁、基礎・柱、擁壁、空地は擁壁の外観目視にて劣化状態を判定した。 注 5)2006 年に志賀研究室が住宅地管理を促進するプログラムとして提案し、研究対 象地区のまちづくり協議会と自治会と協働して継続実施されている「住環境点検調

査」、「まちづくり検討座談会」さらに「地域防災マップ」の作成に至る一連の取り組み。

注 6)画地の情報は、画地単位に用途や居住の有無、空家・空地の管理の有無や老朽 度等である。また、道路の情報は、幅員、階段の有無、公道・私道の区分等である。 注 7)行き帰りの換算距離を算出し、長距離になる方を基準として指定される距離指 標に収まるエリアを指す。

注 8)北九州市の定める生活道路の整備基準。戸建て住宅、併用住宅は、一棟に一戸 一世帯、長屋、共同住宅は、一戸に一世帯として集計した。

参考文献

1)横張真:改正都市再生特別措置法と立地適正化計画について,土地総合研究,第23巻, 第 2 号,pp.33-36,2015

2) 饗庭伸,野澤千絵,中西正彦,讃岐亮,稲葉美里,洲永力:立地適正化計画の検 討状況からみる都市のたたみ方の研究,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.49-52,2016.8

3)中井検裕:コンパクトシティの理念と制度的枠組み,日本建築学会大会都市計画部 門研究協議会資料,pp.1-7,2017.9

4)今吉浩一朗:斜面住宅地における空画地の集積傾向と管理状態の推移に関する研究, 九州大学大学院人間環境学研究修士論文梗概集,pp.169-172,2016.3

5)深澤尚仁:歩行負担量を用いた斜面住宅地における街路空間の評価に関する研究, 九州大学大学院人間環境学研究修士論文梗概集,pp.197-200,2016.3

6)佐藤栄治,吉川徹,山田あすか:地形による負荷と年齢による身体能力の変化を 勘案した歩行換算距離の検討,日本建築学会計画系論文集,第 610 号,pp.133-139, 2006.12

運営していた共同菜園の利用者が自宅隣の空画地を借

りて菜園づくりを始めた事例である。続いて、路線③

は、老朽空家 1 画地を除き、他の空画地では転用また

は管理がなされ、うち一箇所は災害時の一時集合場所

に位置付けられている。最後に、路線④は、未利用空

画地率は高いものの、地主による一体的な管理がなさ

れ、路線の環境は保全されている。

5.考察と今後の展望

 本研究では、北九州市八幡東区枝光一区を対象に、

高齢者の歩行負担の観点から算定した宅地利便性と土

地利用推移との関係、および主要歩行路における空家・

空地の管理実態を分析した。

 以上の分析から、主要歩行路の多くは利便性の低い

画地 B2,C2 が集積する中腹・山手のエリアに分布する

こと、および利用戸数の減少以上に未利用空画地の増

加が大きい傾向があることがわかった。このことから、

今後さらに縮減が進む中で利便性の低下を防ぐため、

主要歩行路と沿道の空画地の一体的な保全が重要であ

ると言える。また、主要歩行路沿いでは住民による空

画地の多様な保全行為が見られ、それらは (1) 未利用

地の転用と (2) 所有者や住民による自主的な維持管理

に大別できた。

図 8.主要歩行路の保全実態

 最後に、これらの取り組みを助長し、主要歩行路の

保全を図る手法として以下を提案する。

 (1) 未利用地の転用について、まず、菜園への転用

は利便性の低い画地の保全的利用として有効だが、当

地区では近年の伸びが少なく、活性化が必要である。

現在、まちづくり協議会が行っている共同菜園整備の

取り組みに対し、市が土地所有者との連絡や固定資産

税の優遇などのバックアップを行うことで、菜園利用

を促すことが考えられる。

 また、住民が災害時の一時集合場所に位置づけた空

画地について、市の生活道路整備事業の一環としてベ

ンチの設置等による休憩スペースの整備を支援するこ

とで、日常的な利用を促すとともに外出時の歩行負担

の軽減につながると考えられる。

 (2)所有者や住民による自主的な維持管理について、

現在、市が実施している老朽空き家等除却促進事業(空

家解体費の助成)を主要歩行路沿いの空家について優

遇するインセンティブを設けることで、管理活動がさ

らに促進されると考えられる。

 今後は、より長期的かつ多角的な視点から利便性の

評価や主要歩行路についての検討を重ねる必要があ

り、さらなる人口減に対応するためにも主要歩行路を

保全する多様な手法の立案が求められる。

路線 番号 1 2 3 4

延長距離 公私区分 道路幅員 利用戸数(2015)

39.5% 24.6% 16.8% 56.3% -10.0%

-9.1% -28.6% -30.0%

2m 未満 2m 以上 4m 未満 2m 以上 4m 未満 2m 以上 4m 未満 私道

76.2m

菜園 駐車場 所有者管理

管理者

※管理者については図中に管理者の世帯がある場合のみ表記 路線

転用空画地 未利用空画地(管理あり)

地形表記等 他者管理

空家

バス路線

対象主要歩行路 その他の主要歩行路

法面 ( 舗装無 ) 法面 ( 舗装有 ) 擁壁 バス停 一時集合場所

対象主要歩行路 ( 階段道) 未利用地

未利用空画地(管理なし) 空家

未利用地

123.0m 92.6m 141.0m

36 戸 10 戸 14 戸 16 戸 公道

公道 公道

沿道の未利用 空画地率 (2015) 18.2%

7.6% -31.6% 沿道の未利用 空画地率 (2005) 利用戸数

増減率 ( 対 2005)

集 集

1

2 3

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