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京丹後市の公共交通施策にみる路線バス事業への行政の関与

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Ⅰ.本稿の目的

本稿は、国民の生活に必要不可欠とされるサービスを 提供する事業に対する行政の関与が今日どのように行 われているのかを、京丹後市の路線バス施策を素材とし て、その法的根拠の一つである道路運送法の規定内容の 変化と関連付けながら、明らかにすることを目的とする ものである。

Ⅱ.本稿の背景

  −過疎地の赤字バス路線の廃止問題

路線バス事業は、地域によっては、高齢者や障害者、 学童など、日常生活において移動手段が制約される 人々、いわゆる移動制約者にとって唯一の生活の足とな る場合も少なくない。それ故、旅客自動車運送事業の中 でも公共性が高い事業であるということが一般的にい われてきた。他方で、収益性が低いために事業を単体で 維持していくことが大変難しく、市場競争にはなじまな い事業ともされてきた。国は、旅客自動車運送事業を規 制する道路運送法令によって、路線バス事業だけでな く、貸切バス事業やタクシー事業等も含め、旅客自動車 運送事業全体に対して需給調整規制や運賃・料金規制等 を行い、事業の保護と統制を図ることで、総合的一体的 に交通体系を維持し、もって国民生活の安全や利便の向 上に繋げようとしてきた。 しかし、路線バス事業は、自家用自動車の普及もあっ て、1968 年を境に利用者数が減少に転じている1 )。中 でも過疎地の路線バス事業は、もともと少ない利用者の もと、国や自治体の補助金や企業の内部補助2 )、分社化3 ) 等でどうにか運営されてきた事業であるため、2002 年 の道路運送法改正により、旅客自動車運送事業の需給調 整規制が撤廃され、参入が自由化された後も、新規参入 事業者は数えるほどしかいない4 )。逆に、退出も制度的 に容易になったことから、新規参入が殆どないことより も、既存事業者の相次ぐ撤退の方が問題となっている。 退出の背景には、国や自治体の補助金の削減5 )に加えて、 地域の交通体系を一体的に支えている6 )民間事業者が、 路線バス事業の黒字路線や、観光バス、タクシー等の路 線バス事業以外の黒字事業での競争の激化に備え、過疎 地の赤字路線を整理せざるを得ない状況に陥っている という現実がある7 ) このような状況の中、移動制約者を含めた住民の生活 の足をどう確保していくのか、という深刻な問題が指摘 されている。各自治体は、地域住民の生活交通8 )を維 持しようと、様々な取組みをしている。自治体単独で小 型バスを運行したり、既存民間事業者と連携したり、地 域住民に利用を呼びかけたり、それらを複数組み合わせ て行ったり、多様な施策を打ち出している。一方、国も、 この問題については極めて重要な課題と位置付けてい る。しかし、過疎地では、厳しい経営環境の下、国や自 治体の財政難による補助金打ち切りで撤退を余儀なく Ⅰ.本稿の目的 Ⅱ.本稿の背景−過疎地の赤字バス路線の廃止問題 Ⅲ.本稿の内容  1.路線バス事業と道路運送法制   (1)路線バス事業の定義   (2)道路運送法の沿革と内容   (3)2000 年及び 2002 年の道路運送法改正   (4)2006 年の道路運送法改正  2. 路線バス事業への行政の関与の実際−京丹後市の 公共交通施策を事例に   (1)京丹後市の公共交通の概要   (2)「上限 200 円バス」   (3) 京丹後市まちづくり計画骨子案における公共交 通の位置付け Ⅳ.本稿の現時点での結論と今後の課題

京丹後市の公共交通施策にみる路線バス事業への行政の関与

新 子 眞佐夫

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される民間路線バス事業者に代わって、自治体や NPO 等が、旧道路運送法下では例外的扱いであった 21 条バ ス9 )や 80 条バス10)を運行して、住民の生活交通を確 保してきたのが実態である。 そこで、2006 年の道路運送法改正では、公共の福祉 のために止むを得ない場合等に限って許可していた 21 条バスの制度を廃止し、また、80 条バスの制度を登録 制に見直すことで、さらに規制を緩和した。いわば、上 記の運行実態と法律の整合性をとったものといえる。ま た、地域住民の生活交通の確保は社会的にも重要である から、地域において関係者により十分に話し合うことが 重要であるとして、地方公共団体の長が主宰する地域公 共交通会議11)を法定し、そこで協議が整えば、運賃・ 料金は事前の届出で足りるとするなど、地域の利害関係 者間の合意を優先する形にした。ただ、上記の手続きを 踏んで届けられた運賃・料金について、特定の旅客に対 する不当な差別的取り扱い等がある場合には、運輸審議 会への諮問を条件に、変更命令を発する権限を国土交通 大臣に残している12)

Ⅲ.本稿の内容

1.路線バス事業と道路運送法制 (1)路線バス事業の定義 路線バス事業は、道路運送法13)で、旅客自動車運送 事業の一種である乗合バス事業と定義されている14) 旅客自動車運送事業とは、「他人の需要に応じ、自動 車を使用して旅客を運送する事業」(2 条 3 項)であり、 特定の旅客を対象とするか不特定多数の旅客を対象とす るかで、特定旅客自動車運送事業(3 条 2 号)と一般旅 客自動車運送事業(3 条 1 号)に区分される。特定旅客 自動車運送事業とは、特定の旅客の需要に応じ、限られ た範囲内で旅客を運送する事業で、具体例としては、学 校や宿泊施設、工場等への送迎を目的とした事業が挙げ られる。一方、一般旅客自動車運送事業とは、「特定旅 客自動車運送事業及び無償旅客自動車運送事業以外の旅 客自動車運送事業」(3 条 1 号)をいい、道路運送法も、 同事業を中心に多くの規定を割いて細かな規制を施して いる。 一般旅客自動車運送事業には、路線バスなどの一般乗 合旅客自動車運送事業(路線を定めて定期に運行する自 動車により乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事 業)、観光バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業(一 般乗合旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送 事業以外の一般旅客自動車運送事業)、タクシー・ハイ ヤーなどの一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約に より乗車定員十人以下の自動車を貸し切つて旅客を運送 する一般旅客自動車運送事業)がある(3 条 1 号イない しハ)。 (2)道路運送法の沿革と内容 1)道路運送法の沿革 旅客自動車運送事業に関する全国統一的な法規は、バ スを中心とした自動車運送事業の勃興を背景として 1919 年に公布された内務省令「自動車取締令」に遡る。 それ以前は、地方ごとに交通安全を目的とした警察的取 締が行われていたに過ぎなかったようである。 その後、鉄道事業者が次々にバス事業に参入するよう になり、いわゆる過当競争が起こるに至って、「自動車 交通事業法」が 1931 年に制定され、1933 年に施行された。 同法では、自動車運輸事業及び自動車道事業は行政庁の 免許によるとされ、事業計画の作成が義務付けられると ともに、運行計画、収支計画等を含めてそれらの変更に は行政庁の認可が必要とされた。また、公益上の必要か ら、行政庁による事業計画等の変更命令、事業者の事業 継続義務、事業報告書提出義務なども同法に盛り込まれ た。これらのことから、同法に、今日の道路運送法のルー ツをみることができる。その後、自動車運送事業は、戦 時体制下において、物資輸送力の増強という軍事上の理 由から、他の産業と同様、民間事業者の極端な事業合同、 業界団体の統制団体化など、国家による厳しい統制を経 験したが、太平洋戦争終結後、そうした統制から解放さ れ、同法も廃止された。 1947 年に制定された道路運送法(旧道路運送法)は、 その制定過程において、占領軍が民主的観点から、米国 の州際通商委員会を範として、市場原理の導入、行政委 員会による合議制、免許基準の明確化、手続きの適正化、 行政裁量の縮小等を要求したのに対し、日本側が従来の 規制方式を主張したため、結局、権限と責任は行政庁が 持つが、中央と地方に諮問機関的性格を持つ道路運送委 員会を設けてその意見を尊重するという、妥協の産物と なった。なお、道路運送委員会はその後、中央において は 1949 年設置の運輸審議会に制度趣旨が受け継がれて いくのに対し、地方においては道路運送審議会と名称変

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更された際に委員が半減され、1953 年には、さらに自 動車運送協議会と名称を変更して単なる地方陸運局長の 諮問機関となり、1971 年の法改正で廃止された15) 現行の道路運送法は、上記の旧道路運送法を、条文の 不備や運用の困難等を理由に廃止して、1951 年に新し く制定し直したものである。その背景には、戦後の急速 な自動車運送事業の復興がある。そして、それに伴い、 貸切事業による乗合類似行為、自家用自動車による営業、 運賃のダンピング、交通事故の多発といった諸問題も増 加していく。それらの諸課題に対応するため、同法は、 運輸省設置法や道路法、道路運送車両法16)、道路交通 法等の関連諸法令の改正と並行する形で、制定以降、大 小 40 回にも及ぶ改正を経て、今日に至っている。 2)道路運送法の内容 2000 年に道路運送法が改正されるまで、路線バス事 業に対する規制は、需給調整規制と運賃・料金規制の 2 つを柱とするものであった。両規制を中心に道路運送法 の規定をもう少し細かくみていくと、以下のとおりと なっている。 まず、需給調整規制については、道路運送法 4 条にお いて「一般乗合旅客自動車運送事業又は一般乗用旅客自 動車運送事業(以下「一般乗合旅客自動車運送事業等」 という。)17)を経営しようとする者は、国土交通大臣の 免許を受けなければならない。」と規定し、6 条で、免 許をするにあたっての審査基準を定めている。同条は、 1 項 1 号で「当該事業の開始が輸送需要に対し適切なも のであること。」とし、同項 2 号で「当該事業の開始に よつて当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需 要量に対し不均衡とならないものであること。」として、 行政が路線または事業区域ごとの需要と供給を審査した 上で事業免許を与える旨、定めている。その趣旨が、既 存事業の地域独占を維持することによって、供給過剰に よる破滅的競争を防ぎ、もって最終的に国民生活の安全 と利便を確保しようとするものであったことは、多くの 識者の指摘するところである。しかし、当該需給調整規 制については、古くから批判の対象にもなっており18) 後述する規制緩和の主要な対象でもあった。 次に、運賃・料金規制であるが、道路運送法は、9 条 1 項で、運賃及び料金については、国土交通大臣の認可 によることとし、同条 2 項にその審査基準を置いている。 需給調整規制だけでは、国民生活に必要不可欠な旅客運 送サービスを、安全かつ継続的に提供する仕組みを保持 することは難しい、という考え方の下、運賃・料金規制 の必要性が説かれてきた。その背景には、1947 年制定 の旧道路運送法が認可基準を定めなかったために、運賃 をめぐる激しいダンピング競争が横行し、その結果、国 民の安全と利便を守る免許制度そのものを揺るがしかね ない状況が 1955 年頃まで続いたという歴史がある19) 運賃・料金規制は上限規制と下限規制に細分される。両 者の目的は同じではない。上限規制は事業の統制を目的 としており、下限規制は事業の保護を目的としていると される20) 事業の免許、運賃・料金の認可以外にも、道路運送法 は、運送約款の認可(11 条)、事業計画変更の認可(15 条)、共同経営協定の締結、同協定の変更認可(19 条)、 事業の管理の受委託許可(35 条)、事業の譲渡及び譲受 の認可(36 条)、相続人の事業の継続認可(37 条)、事 業の休・廃止の許可(38 条)等、様々な場面で行政庁 の判断を必要とする構造を採っている。 また、行政庁に対して、欠格事由に該当する場合は事 業免許を禁ずる(7 条)ほか、事業改善命令(31 条)、 事業停止命令、免許取消(40 条)等の権限を授権して いる。 さらに、事業者に対しては、運輸開始義務(8 条)、 運賃・料金等掲示義務(12 条)、運送引受拒絶の禁止(13 条)、引受順の運送義務(14 条)、事業計画に定める業 務の確保義務(16 条)、事故報告義務(22 条)、運行管 理者選任義務(23 条)、小児無賃運送義務(26 条)、輸 送の安全確保義務(28 条)、旅客の差別的取扱の禁止(30 条 3 項)等を要求し、96 条以下に罰則規定を設けて、 それらの履行を担保している。 (3)2000年及び2002年の道路運送法改正 上記のような行政の厳格な規制に対しては、行政改革 委員会の規制緩和小委員会等で、その是非が検討されて きたところであり、また、日米構造協議のような国際的 な規制緩和の圧力もあって、1996 年 12 月、旧運輸省は、 それまで行ってきた需給調整等の事業規制を大幅に緩和 する方針を打ち出した21)。翌 1997 年、旧運輸省は、規 制緩和方針について旧運輸政策審議会に諮問をしている が、その諮問理由の中で、当該規制緩和によって、「こ れまでの参入規制と価格規制によって確保されてきた事 業秩序等に大きな影響を与えることとなり、その結果と

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して、生活路線の維持、安全の確保、消費者の保護、中 小企業の経営安定、雇用の確保等の諸問題が生じる」と 述べている。この旧運輸省の懸念は、今日、現実のもの となっている。上記の諸問題は、これまでの我が国の運 輸事業の歴史において繰り返し起こってきた事柄であ り、問題が起こるたびに法制度を修正してきた所管庁に とっては、想像に難くない結果だったと思われる。 しかし、上記諮問に対する同審議会の答申22)は、懸 念される諸問題へ配慮しつつも、結論としては、従来の 規制を大きく緩和する方向を示すものであった。その結 果、まず、2000 年の道路運送法改正によって貸切バス 事業の規制緩和が先行してなされ、2002 年の道路運送 法改正によって路線バス事業、タクシー・ハイヤー事業 の規制緩和が行われた。規制緩和の主な内容は、先にみ た需給調整規制と運賃・料金規制の緩和である。本論の 対象は路線バス事業であるので、以下、同事業に関する 改正点を中心にみていくこととする。 2002 年 2 月施行の改正道路運送法では、路線バス事 業への参入は、路線ごとの免許制から事業ごとの許可制 に改められ(4 条)、参入にあたって当該路線における 需要と供給のバランスについての行政の事前審査、すな わち需給調整規制が廃止された(6 条)。これによって、 行政庁は、輸送の安全その他事業の遂行上、適切な事業 計画を有するかどうか(6 条 1 号、2 号)、事業を適確に 遂行する能力を有するかどうか(3 号)について審査し、 基準に適合していれば許可しなければならなくなった。 また、路線バス事業の運賃・料金については、認可制か ら上限認可制となり(9 条)、事業の休廃止については、 許可制から原則として 6 ヶ月前までの届出制となった (38 条 2 項)。 なお、2000 年の改正で、道路運送法 1 条が変更され ている。それまでは、「道路運送事業の適正な運営及び 公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序 を確立することにより、道路運送の総合的な発達を図り、 もつて公共の福祉を増進することを目的とする。」となっ ていたところ、本改正で、「道路運送事業の運営を適正 かつ合理的なものとすることにより、道路運送の利用者 の利益を保護するとともに、道路運送の総合的な発達を 図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。」 と改められた。「公共の福祉を増進する」という宣言的 な終局目的自体に変更はないものの、そのための手段で ある政策方針を示す「により、」以前の箇所に変化がみ られる。すなわち、「公正な競争を確保する」、「道路運 送に関する秩序を確立する」という文言が削除され、事 業運営を「合理的なものとする」という文言が挿入され ている。 (4)2006年の道路運送法改正 2002 年の改正法施行から 4 年が経過した 2006 年 5 月、 再び道路運送法が改正され、同年 10 月に施行された23) 本改正の主な内容は、目的条項と乗合バス事業の規定の 更なる見直しである。 同法の目的条項については、先述のとおり、2000 年 に改正がなされたが、本改正でさらに内容が変更され、 以下の文言が追加されている24)。すなわち「道路運送 の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確 に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進する」、 「利便の増進を図る」の 2 点である。 乗合バス事業に関する規定では、定義が見直された(3 条 1 号イ括弧書)。旧来の路線バスのような路線定期運 行(路線を定めて定期に運行する自動車による乗合旅客 の運送)以外に、路線不定期運行(路線を定めて不定期 に運行する自動車による乗合旅客の運送)、区域運行(路 線定期運行、路線不定期運行以外の乗合旅客の運送)が 新たに加わった(施行規則 3 条の 3)。路線定期運行以 外のバス事業の運行態様は、従来、貸切事業に区分され ており(旧 3 条 1 項 1 号ロ)、かつ、貸切事業者の乗合 旅客運送は旧 21 条で原則として禁止されていた。貸切 事業者が乗合事業を代替するには、災害の場合その他緊 急を要するとき(旧 21 条 1 号)を除き、国土交通大臣 の許可が必要であった(旧 21 条 2 号)。21 条の規定自 体は本改正後も残っているが、一般乗用旅客自動車運送 事業も例外的に乗合旅客の運送が可能となったことや、 乗合事業の代替は一時的な需要のために地域及び期間を 限定して許可されることが変更点として挙げられる(21 条 2 号)。 次に、旧来、「災害のため緊急を要するとき、又は公 共の福祉を確保するためやむを得ない場合であつて国土 交通大臣の許可を受けたとき」(旧 80 条 1 項但書)を除 いて禁止されていた自家用自動車による有償旅客運送に ついて、市町村や NPO 等が、一の市町村の区域内で運 営するための登録制度が創設された(78 条 2 号)。運送 の種別は、市町村運営有償運送、過疎地有償運送、福祉 有償運送の 3 つに区分される(施行規則 51 条)。後二者

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はボランティアという位置付けであり、運送主体は営利 を目的としないものに限定される。具体的には、特定非 営利活動法人、公益法人、農業協同組合、消費生活協同 組合、医療法人、社会福祉法人、商工会議所、商工会で ある(78 条 2 号、施行規則 48 条、同 49 条)。運送の対 価は、燃料費等実費の範囲内ないし営利を目的としてい ると認められない妥当な範囲内とされ、過疎地・福祉有 償運送については、後述の運営協議会で協議が調ってい ることも必要とされる(施行規則 51 条の 15)。 さらに、自家用有償旅客運送に関する協議の場として、 市町村運営有償運送については地域公共交通会議(施行 規則 9 条の 2)、過疎地有償運送、福祉有償運送につい ては運営協議会(施行規則 51 条の 7)が設けられた。 地域における自家用有償旅客運送の必要性、運賃・料金、 路線・区域、運行主体等についての協議をそこで行い、 関係者の合意を得ることが登録の条件となっている(79 条の 4 第 1 項 5 号、施行規則 51 条の 7)。地域公共交通 会議については、一般乗合旅客自動車運送事業の運賃・ 料金についても協議でき、そこで合意が得られれば、国 土交通大臣への事前の届出のみで足りることとなった。 上限認可となった運賃・料金規制がさらに緩和される仕 組みになっている。地域公共交通会議、運営協議会とも に、従来の地域協議会と大きく異なる点は、構成員に住 民または旅客の代表が加えられた点である(施行規則 9 条の 3 第 3 号、同 51 条の 8)。 2. 路線バス事業への行政の関与の実際−京丹後市の公 共交通施策を事例に 前節では、道路運送法の沿革と規定内容、特に最近の 大きな改正による規定内容の変化をやや詳細にみた。 2000 年及び 2002 年の法改正は、「官から民へ」とい う観点から、行政による需給調整規制を廃止し、また、 運賃・料金規制を緩和して、それらによって守られてき た旅客自動車運送事業の全体に対して市場原理を導入す るものであった。いわば、国民の生活に必要なサービス の提供は、社会における私的主体の自由な経済活動に任 せようとする試みであったといえる。他方、2006 年の 法改正は、「地域でできることは地域で」という観点から、 過疎地における不採算路線の廃止や路線バス事業の運行 形態の多様化に対応しようとするものであった。市場原 理が行き届かない領域における生活必需サービスの提供 を、今度は地域の自主性に委ねようとする試みであった といえる。 両改正は、一見すると異なる様相を呈しているように みえる。しかし、目的条項の一連の変更や、需給調整規 制の廃止、運賃・料金の認可制から届出制への移行、自 家用有償旅客運送や地域公共交通会議等に関する規定や 通達等が示すように、国の行政の関与が一貫して減少し ている点では共通している。2000 年以降の一連の目的 条項の変化、特に手段=政策に関する部分の変化から、 国の旅客自動車運送事業に対する姿勢の重要な変化が読 み取れる。つまり、2000 年改正以前の目的条項にあっ た「公正な競争25)の確保」、「道路運送の秩序の確立」 という、国の行政が主体となって積極的に交通体系の構 築を主導する姿勢を表す文言は削除され、代わりに、事 業の運営を「合理的なものとする」という、主体及び内 容の曖昧な文言が 2000 年の改正で挿入され、さらに 2006 年の改正では、「サービスの円滑かつ確実な提供を 促進する」という、いわば支援者としての消極的関与に 留めることを示す文言が追加されている。 この流れが、各地域における自治体の施策に一定の自 由度と積極性をもたらすことになった。以下で示す京丹 後市の施策はその一例である。以下、路線バス事業に対 する行政の関与が、今日、地方においてどのように展開 されているのか、事実に即してみていきたい。 (1)京丹後市の公共交通の概要 2004 年 4 月 1 日、京都府中郡峰山町・大宮町、竹野 郡網野町・丹後町・弥栄町、熊野郡久美浜町の 6 町が合 併し、京丹後市が発足した。この合併によって、東西約 35km、南北約 30km、面積 501.84km に及ぶ広大な市域 を有する基礎自治体が、京丹後地域に誕生した。旧丹後 町、旧久美浜町の区域は、過疎法に基づく過疎地域とし て総務大臣の指定を受けている。これらの地域も含め、 市民の通勤、通学、購買等日常生活の足を支える重要な 公共交通が路線バスである26)。合併によって、旧 6 町 時代、複数の市町にまたがっていた路線の多くが市内で 完結することとなった。 合併後の現在、市内を走る路線バスには、市営バスと 丹海バスがある。市営バスは、道路運送法 78 条に基づ く自家用有償運送で、合併前の久美浜町営バス、弥栄町 営バスを継承したものである。旧町時代も、共に自家用 有償運送(旧 80 条)であった。市立久美浜病院、市立 弥栄病院を中心に路線が引かれている。丹海バスは、道

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路運送法 4 条に基づき、一般乗合旅客自動車運送事業許 可を受けた路線バスである。同バスは、丹後海陸交通株 式会社が運営しており、市営バスが走っていない地域の 生活路線を広範にカバーしている。路線図を見ると、峰 山−丹後中央病院前−峰山駅前間に複数路線が集中して いて、そこから市内各方面に路線が拡がっている様子が 分かる。京丹後市と与謝野町を結ぶ路線もある。与謝野 町営バス(コミュニティバスひまわり)の運行も、同社 が受託している。現在、阪急阪神ホールディングス株式 会社のグループ企業となっている。なお、現在は運行が 休止されているが、兵庫県豊岡市と京丹後市を結ぶ豊岡 久美浜線を全但バスが走っていた。全但バス株式会社が 運営する路線バスで、丹海バスと同じく 4 条許可事業で ある。2009 年 5 月 16 日より、豊岡久美浜線のうち、下 の宮(兵庫)−久美浜間の運行を休止している。運行休 止については、京丹後市地域公共交通会議が全会一致で 承認している。よって、現在、京丹後市と兵庫県を結ぶ 路線バスはない。 (2)「上限200円バス」 同市では、学童や高齢者が生活上の移動に支障を来た さないような公共交通体系の構築を重点課題として掲げ ている。「分かりやすく使いやすい公共交通の拡充」と いう基本方針の下、利用者数の増加を実現するため、同 市は、民間事業者や京都府、国と連携し、また、広く住 民に利用を呼びかけて、「上限 200 円バス」の実証運行 を行ってきた。ここでは、2009 年 9 月に行った京丹後 市長及び京丹後市企画総務部企画政策課の担当職員への ヒアリング結果等を踏まえ、施策の内容についてみてい く。 「上限 200 円バス」とは、1 回の乗車にかかる運賃を、 乗車区間に関わらず、一律 200 円におさえた路線バスで ある。実証運行の経緯であるが、2005 年 12 月に設立さ れた京丹後市地域交通会議27)が、公共交通に関する住 民アンケート調査を実施し、2006 年 2 月にその結果を 公表した。住民からは「運賃は 200 円∼ 300 円に」、「運 行間隔は 40 分以内で」等の要望があった。これを受けて、 2006 年 10 月、間人線、間人循環線、海岸線、弥栄病院 線の 4 路線を対象に、上限運賃を 200 円に設定する実証 運行が開始された。そして、2007 年 10 月には、対象を 市営バスと丹海バスの市内全路線に拡大して実証運行を 継続し、今日に至っている。運賃額を幾らに設定するか については、300 円くらいが限界ではないかという市長 に対して、市の担当職員があくまで 200 円という金額に こだわった、ということであった。先にみたように、地 方自治体がこのような施策を積極的に打ち出せるように なった制度的背景には、道路運送法の 2006 年改正で、 運賃決定の仕組みが変わったことがある。 従来の運賃からの値下げ幅をみると、例えば、間人∼ 峰山間が 500 円、久美浜∼峰山間が 680 円等となった。 運賃収入が著しく落ち込むかも知れないこの施策には、 当然のことながら、運行事業者が反対し、道路運送事業 を所管する近畿運輸局も難色を示した。京丹後市は、運 賃収入減少分について市が全額追加支援することで両者 の納得を得たが、実証運行を開始する直前の 2004 年当 時における京丹後市の財政は、財政力指数が 0.341 で京 都府下の市では最低、経常収支比率は 95.3%で八幡市に 次 い で 下 か ら 2 番 目、 地 方 交 付 税 等 の 依 存 財 源 率 が 69.8%という状況であった28)。そうした状況下での、全 額追加支援という判断であった。 しかし、乗車人員が大幅に増加したことから、運賃収 入総額は実証運行開始前とほぼ同じ水準を保っている。 実証運行 1 年目こそ、運賃収入は前年比 95.3%となった が、これも市や運行事業者からすると、当初の予想を上 回るもので驚いたというのが実情のようである。当初の 利用者数の増加についての予想は 1.3 ∼ 1.5 倍くらいで あろう、というものであったが、以下の表にあるとおり、 実際には 1.6 倍を超えるものであった。なお、運賃収入 は、実証運行 2 年目は 103%、3 年目は 107%と増加し ている。 また、京丹後市は、上記運賃施策以外にも、利用者の 増加を図るため、地域公共交通会議において事業者等と 協議を重ねながら、ダイヤの改善(鉄道との接続時間の 短縮等)、路線変更(商業施設経由への変更等)、バス停 の増設・改善(病院敷地内への停留所設置等)、新たな バス車両の導入(ノンステップバス、ラッピングバス)、 市民への情報提供(全交通機関総合時刻表の全戸配布、 公共交通マップの市ウェブサイトへの掲載、市広報誌 「きょうたんご」への公共交通情報の毎号掲載)、老人会、 区長会、校長会への路線バス利用促進依頼、高校生との 対話集会、企業に対するノーマイカーデー等の啓蒙活動 等の諸取り組みを複合的に行っている。市は、これらの 取り組みに関し、2006 年 5 月に臨時的組織として「新 交通体系構築プロジェクトチーム」を発足させ、調査研

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究、企画立案等にあたらせている。同チームは、発足当 初公共交通を所管していた生活環境部市民課のほか、子 育て支援、高齢者福祉、観光振興、商工振興、教育、総 合戦略等を所管する各部署の職員によって部局横断的に 構成されている。なお、公共交通の所管は、2009 年 4 月に市民課から企画総務部企画政策課に移管替えされて いる29) これらの取り組みの結果、表 1、図 1 に示されるよう な成果がみられた。 後述の「京丹後市第一次総合計画」の基本計画項目で 表 1 実証運行 1 年目の路線別月別乗車人員の推移 図 1 実証運行 1・2 年目の月別乗車人員及び運賃収入の推移 出所) 京丹後市『京丹後市白書 平成 20 年度版』。なお、上記グラフ右上の凡例にある乗車人員及び運賃収入の「1 年目」と「2 年目」 の表記が逆になっているように思われるが、原典のまま引用した。 出所)京丹後市『京丹後市白書 平成 20 年度版』

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ある地域交通の確保においては、路線バスに関する施策 の評価指数として利用者数が用いられている。当初は、 2014 年度時点で 18 万人を目標に設定されていたが、実 証運行 3 年目には全路線の乗車人員が 26 万人に達して いることから、上記目標は 30 万人に上方修正されてい る。 市は「上限 200 円バス」施策について、利用者数以外 にも、市民満足度という指標を立てて調査をしている。 その調査によれば、同施策は、市民から非常に高い評価 を得ているとのことであった。また、高校生を対象に、 全部で 19 個の項目について、満足度アンケートを実施 したところ、満足度の高い上位項目の 1 位が「運賃が安 くなり、分かりやすくなった」、2 位は「回数券が車内 で購入できるようになった」、3 位は「通学以外でも出 かけるようになった」、4 位は「マイカー通学からバス 通学になり保護者の負担が減った」、5 位は「地域の人 の外出が増えたと感じる」、という結果であった。その他、 「地域で誇れるバスがあり嬉しい」(6 位)、「高校進学時 に高校選択の幅が広がった」(8 位)という項目におい ても、満足度が高かった。 このように、一定の成果がみられる施策ではあるが、 市は、今後の課題として、以下の諸点を挙げている。ひ とつは、国の生活交通路線維持費国庫補助金の要件が地 域の実情に合っていないという問題である。すなわち、 路線が地域の中心地を通過すること、路線の経常収支比 率が 11/20 以上であること、路線変更は路線全長の 1 割 以内であること等の諸要件が足かせとなって、地域で地 域の実情に応じた路線の構築ができない、ということで ある。現在、国に改善を要望しているとのことである。 もうひとつは、公共交通空白地域の問題である。この問 題については、市営バスを活用することによって、丹海 バスが走らない公共交通空白地域をカバーするなど、4 条許可事業との棲み分けを図りながら、市民の生活の足 を確保する取り組みを行っている。その結果、公共交通 空白地域の総人口割合は、2005 年の 19.01%から 2009 年は 9.18%に減少した。市は、今後も当該地域における 路線の一層の拡大を目指している。 (3) 京丹後市まちづくり計画骨子案における公共交通 の位置付け 京丹後市は、旧 6 町合併協議会における新市建設計画 をベースに、2006 年 3 月、「第一次京丹後市総合計画」(以 下、「総合計画」という)を策定している。総合計画の 目的は、市の「将来像を見据えながら、市民が行うべき こと、市が行うべきこと、市民と行政が力を合わせて進 めていくことなど、本市の今後の進むべき方向性を具体 的に示す」ことである30)。総合計画の期間は、2005 年 度から 2014 年度までの 10 年間と設定されており、前期 表 2 京丹後市まちづくり計画(京丹後市都市計画マスタープラン)骨子案の概要 まちづくりの目標 目標実現に向けたまちづくりの方針(主な施策) 新・丹後王国にふさわしい交流創造都市 A.軸の強化 都市軸(大宮∼峰山∼網野)と地域拠点軸の強化 交通 ①地域高規格道路の早期実現、②地域高規格道路整備 にあわせた取り付け道路の整備、③地域間ネットワー ク道路の強化、④市街地内の道路網の整備、 ⑤公共交 通網(KTR、路線バス)の強化 B.ゾーンの区分(開発と保全) 都市計画ゾーンと沿岸・田園・森林保全ゾーンの区分 土地利用 ①新たな都市計画区域の設定、②計画的な土地利用の 配置、③民間開発における適切な環境水準の確保 自然・景観 ①自然環境・景観の保全、②魅力ある都市景観の保全、 ③特徴あるまち・集落景観の保全 C.拠点整備 広域都市サービス拠点と地域拠点の整備 都市拠点 ①既存中心市街地の維持強化、②広域都市サービス拠 点の形成、③工業団地の整備充実、④シビックゾーン の形成 生活環境 ①上水道の整備、②下水道の整備と水環境の保全、③ 自然災害の防止、④高速情報通信網の整備、⑤公共空 間のバリアフリー化、⑥都市公園などの整備、⑦住宅 の供給、⑧ごみ処理施設などの整備、⑨火葬場の整備 出所)京丹後市建設部都市計画・建築住宅課『京丹後市の都市計画 第 8 号』より筆者作成

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5 年で具体的な戦略プロジェクトと主要な事業・施策及 びそれら評価のための社会指標を示し、後期 5 年で社会 経済情勢の変化や計画事業の評価等を踏まえて同計画の 見直しを行うこととなっている。総合計画には、37 の 基本計画項目がある。地域交通(鉄道、路線バス)の確 保も、その中の一つに掲げられている。 上記総合計画を受けて、市は「京丹後市まちづくり計 画骨子案(京丹後市都市計画マスタープラン)」(以下、「骨 子案」という)も策定している。骨子案では、まちづく りの目標を、A. 地域高規格道路を活かした交通ネット ワークの形成(都市軸、地域連携軸の強化)、B. 都市計 画区域の設定による都市と自然の調和(都市計画ゾーン と沿岸・田園・森林保全ゾーンの区分)、C. 都市拠点の 形成(広域都市サービス拠点及び各地域拠点の整備)の 3 つに大別している。それぞれの目標の下には、目標実 現に向けた 5 つのまちづくりの方針が設定され、さらに その下に主な施策が複数掲げられている(表 2)。また、 市は、旧 6 町の地域ごとにも、上記 ABC の目標の下、 合併前の各町の地域特性を踏まえたまちづくりの方針を 定めている(表 3)。

Ⅳ.本稿の現時点での結論と今後の課題

京丹後市は、「上限 200 円バス」の取り組みにおいて、 地域住民の生活利便の向上のために利用者数の増加を目 指し、単に機械的に路線バス事業の収支欠損に対して補 助金を支給するだけでなく、運賃の設定をはじめ、鉄道 との接続時間を短縮できるようなダイヤの改善、商業施 設を経由するような路線変更、全交通機関総合時刻表の 市内全戸への配布、老人会・区長会・校長会へのバス利 用促進依頼、高校生との対話集会等を主導している。こ れらは、民間企業でいうと、その企業が利潤の追求のた めに立てた経営戦略に基づいて行う事業活動の一部であ る。こうした民間企業における活動を地方公共団体自身 が企画立案し、かつ、主導している事実に着目すると、 そこでの路線バス事業は、民間事業者が運行していると はいっても、純粋な私人の経済活動ではなく、公の目的 を持った行政活動の一部といえる。公共交通空白地域を 解消するために自家用有償旅客運送である市営バスを運 行していることと併せて、市は、地域住民の生活の足の 確保を重視する活動を積極的に展開している。そして、 こうした行政の関与により、過疎地であっても、乗車人 員が実証運行開始前と比べて大幅に増加し、かつ、運賃 収入は実証運行開始前と同水準を維持するなど、一定の 表 3 地域ごとの主なまちづくり方針 新・丹後王国にふさわしい交流創造都市 A.軸の強化 B.ゾーンの区分 C.拠点整備 大宮 京丹後市の玄関口としての交通機能の 強化と沿道景観の形成 バランスある土地利用による住環境と 営農環境の保全 国道バイパス周辺の商業集積との役割 分担による地域拠点の形成 峰山 商業集積の高い峰山地域への連絡性を 高める交通ネットワークの強化 御旅市場周辺の歴史や文化を活かした 魅力的なまちの形成 広域都市サービス拠点との連携・役割 分担による魅力ある地域拠点の形成 網野 日本海沿岸の観光交流の軸となる交通 ネットワークの強化 海洋資源や温泉資源、歴史資源を活か した魅力的なまちの形成 自然豊かでコンパクトにまとまった、 歩いて暮らせる地域拠点の形成 丹後 京丹後市の東の玄関口としての交通機 能の強化 リアス式海岸による特徴的な景観など を活かした魅力的なまちの形成 観光交流の活性化による地域拠点の維 持・強化 弥栄 地域を結ぶ交流軸としての交通機能の 強化 田園環境の保全による魅力的なまちの 形成 農業の高度化などによる地域拠点の維 持・強化 久美浜 京丹後市の西の玄関口としての交通機 能の強化 久美浜湾や、食と農、古墳群などの活 用による魅力的なまちの形成 観光交流による地域拠点の維持・強化 出所) 京丹後市建設部都市計画・建築住宅課『京丹後市の都市計画 第 8 号』より筆者作成。なお、ここに掲げた項目以外に、網野・ 丹後・弥栄・久美浜地域の C.拠点整備に共通する項目として、地域の暮らしを支える各種サービス機能(市民局、病院、商 店街など)を取り込んだ地域核の維持強化が掲げられている。

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成果があがっている。 一方で、総合計画の基本計画項目の一つである「地域 交通の確保」施策の、骨子案における位置付けを見てみ ると、路線バス事業が地域住民の生活の足の確保という 役割だけでなく、他の役割も与えられていることが分か る。表 2 をみると、同施策は、C.拠点整備(生活環境) という目的の下ではなく、A.軸の強化という目的の下 に位置付けられている。さらに、表 3 をみると、骨子案 は、旧 6 町が各々有している地理的条件や天然資源、産 業構造、歴史、文化等の個性を活かしつつ、それらを地 域拠点として新市の中央拠点と結びつけ、一つの都市と してまとめ上げることに重点を置いていることが分か る。表 2 と表 3 を併せてみることで、地域公共交通とし ての路線バス事業が、都市の一体性の確保という目的で も活用されうる側面があることが分かる。 今日、自治体の多くが基本計画で都市のあり方を描く。 その基本計画の下に、土地利用や生活交通等々の各行政 領域における計画が組み込まれている。そのような状況 の中で、2006年に道路運送法が改正され、生活交通に関 する計画策定の主導権が、完全にではないが、国から地 方に移った。このことは、自治体が、計画段階から地域 の多様な事情を考慮して、路線バス事業に関与していく ことを可能にする。しかし、次のような問題も想起させる。 すなわち、生活交通のあり方を国が決めるのではなく地 域が協議して決めるということは、生活交通の領域に、 その地域の他の領域の事情が持ち込まれる可能性が増す ということでもあり、従来生活交通の領域において公益 とされてきた利益−地域住民の生活に欠かせない移動の 足−が、その地域における多様な諸利益−例えば、土地 の開発や農林水産業の振興、商工業の活性化等−の中で 相対的に希薄化するかも知れないということである31) このように、道路運送法制の変化に伴って、路線バス 事業の役割の多様化が地方で生じているということは分 かったが、同事業の各役割−京丹後市の事例でいうと、 生活の足の確保と都市の一体性の確保−が衝突する可能 性や、衝突が起こる場合にそれを調整する基準や方法等 の検討が今後の課題として残った。これらの諸課題につ いては、今後の研究で取り組みたい。 謝辞 本稿における京丹後市の路線バス施策についての記述 は、筆者が所属するリサーチ・プロジェクト「政治行政 過程と法政策研究」において、2009 年秋に行った京丹 後市へのヒアリング調査結果が基になっている。お忙し い中、ご対応くださった京丹後市長、市担当職員の方々 には、あらためて感謝を申し上げる次第である。 1 )1968 年度の 10,143,807 千人をピークに一貫して減少を続 けており、2005 年度は 4,243,854 千人であった。国土交通省『平 成 18 年度版 陸運統計要覧(2 − 23 自動車旅客輸送量の推 移)』。 2 )収支採算性の高い路線から得られる利益を、不採算路線の 運営により発生する欠損に充てること。 3 )分社化は、私鉄各社が人件費の抑制等、経営の効率化を図 るため、採算の悪いバス事業部門を本社から切り離す例に代 表されるが、単なる効率化のためだけではなく、経営指標の 改善が沿線自治体の補助金交付の条件になっていたという理 由もあるようである。青木亮「既存事業者の経営戦略として の分社化」寺田一薫編著『地方分権とバス交通』(勁草書房、 2005 年、PP.29 ‐ 40)。 4 )貸切バス事業者数は 2000 年の参入自由化以降、2,864 社 (2000 年)から 3,923 社(2005 年)と大幅に増加したのに対し、 路線バス事業者数は 2002 年の参入自由化以降、485 社(2002 年)から 513 社(2005 年)の増加に留まっている。そのうち、 過疎地の路線バス事業に参入した事業者は 2004 年 5 月末時 点で僅か 5 社である。しかも、その内訳は、貸切バス事業を 主な業態とする事業者が 4 社、タクシー事業を主な業態とす る事業者が 1 社であり、要するに旅客自動車運送事業者同士 が相互に乗り入れているだけであった。国土交通省『平成 18 年度版 陸運統計要覧(3 − 1 陸運関係事業者数の推移)』、 田邉勝巳「新規参入乗合バス会社の経営戦略」寺田一薫編著 『地方分権とバス交通』(勁草書房、2005 年、PP.24 ‐ 29)。 5 )1966 年に「離島・辺地等バス路線維持費補助金」として 始まった国の補助制度、「地方バス路線維持費国庫補助金」 の項目別交付実績の推移をみると、1994 年度の 10,998,448 千円を境に減少に転じている。1972 年より同国庫補助金の 中核を担ってきた「生活路線維持費補助金」も 2001 年度に は終了し、それ以降は、複数の市町村に路線がまたがる場合 のみに国の補助が限定された(現行の「生活交通路線維持費 補助金」)。バス事業百年史編纂委員会編『バス事業百年史』(日 本バス協会、2008 年)、P.239。なお、生活交通路線とは、複 数市町村にまたがり、キロ程が 10km 以上、1 日の輸送量が 15 ∼ 150 人、一日の運行回数が 3 回以上等の要件を満たす、 広域的・幹線的な路線をいう。国土交通省「国の地方バス路 線維持費補助制度の概要」。 6 )陸上旅客運送は、鉄道の走らない場所を路線バスが走り、 鉄道、路線バスの走らない場所、時間を貸切バスやタクシー が走るというように、相互に補い合う特徴を持っている。

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7 )過疎地・中山間地を走る生活路線からの撤退事例として、 島根県安来市の一畑バス、岐阜県郡上市の JR 東海バス、石 川県加賀市の加賀温泉バスなど。このうち、加賀市の事例で は、石川県加賀市を営業エリアとして乗合バスや貸切バスを 運行している加賀温泉バス株式会社に対し、加賀市が、赤字 路線の補助金の打ち切りを決定。これを受け、同社は、「補 助金なしで赤字路線の運行を続ければ、黒字の三路線の継続 も危うい。補助金打ち切りなら八路線の廃止はやむを得ない」 として、全 11 路線のうち、赤字 8 路線の廃止を決断した。 北陸中日新聞 2007 年 10 月 19 日。 8 )「地域における通勤、通学、通院、買物などの住民の日常 生活に真に必要不可欠な交通」をいう。旧運輸政策審議会総 合部会答申(諮問第 16 号)「需給調整規制廃止後の交通運輸 政策の基本的な方向について」1998 年 6 月。 9 )旧道路運送法 21 条の規定により、貸切事業者の乗合事業 乗り入れ許可を受けたバス。 10)旧道路運送法 80 条の規定により、自家用自動車の有償運 送許可を受けたバス。 11)地方公共団体の長、事業者、住民または旅客の代表、地方 運輸局長、運転者が組織する団体のほか、必要に応じて道路 管理者、都道府県警察、学識経験者を加えて構成される。但 し、設置は任意。 12)本論の対象外であるが、タクシー・ハイヤー事業について は、破滅的競争から国民の利便を守るために、国土交通大臣 が過剰供給のみられる地域を指定して、当該地域における需 要と供給のバランスを緊急的に調整する権限が、2002 年の 道路運送法改正によって新たに設けられた(8 条)。 13)Ⅲ− 1 −(1)、(2)で引用する道路運送法の条文は、2002 年改正直前(平成 12 年 5 月 31 日法律第 91 号)のものである。 その後の改正によって定義が変更されているが、その点につ いては後述する。 14)道路運送法自体は、旅客自動車運送事業以外にも、自動車 道事業や貨物自動車運送事業(今日、ほとんどの規定は貨物 自動車運送事業法に移管されている)についても規定してい る。 15)道路運送法の沿革については、森田朗『許認可行政と官僚 制』(岩波書店、1988 年)、バス事業百年史編纂委員会前掲 書の詳細な記述に負うところが大きい。 16)道路運送車両法は、1951 年の現行道路運送法と同時に制 定されたもので、それまでは、車体の構造、検査に関する事 項は、旧道路運送法内に規定が置かれていた。 17)一般貸切旅客自動車運送事業については、2000 年の法改 正で既に許可制に移行し、第 42 条の 2 に別途規定が置かれた。 それ以前は、同事業も免許制であった。 18)1963 年、当時の行政管理庁は、タクシー行政に対する世 論の厳しい批判もあって、運輸省に対し「陸運行政に関する 行政監察結果に基づく勧告」を出し、路線バス以外の旅客自 動車運送事業については、免許制から許可制に移行するよう 求めている。尾上實「道路運送法 101 条の合憲性」(運輸判 例百選、1971 年)。なお、上記 101 条は、自家用自動車有償 運送に関する条文であり、その後の法改正で条文番号が 80 条に変更された。 19)佐藤英善「道路運送法の規範構造と独禁法」法学セミナー 368 号。 20)山内一夫「同一賃金同一地域の原則に対する違反を理由と するタクシー運賃の値下げ申請の拒否」公正取引 414 号。 21)「今後の運輸行政における需給調整の取扱について」(運輸 省許認可事務等改革推進本部決定)。 22)「交通運輸における需給調整規制廃止に向けて必要となる 環境整備方策等について」。貸切バスについては 1998 年 6 月 2 日、路線バスとタクシーについては 1999 年 4 月 9 日に答 申が出された。 23)平成 18 年 5 月 19 日法律第 40 号(道路運送法等の一部を 改正する法律一条による改正)。 24)正確には、両改正の間に国土交通省設置法や道路運送車両 法等の改正に伴う道路運送法の軽微な改正が 6 回あり、平成 18 年 3 月 31 日法律第 19 号(運輸の安全性の向上のための 鉄道事業法等の一部を改正する法律 5 条による改正)で、道 路運送法第 1 条に「輸送の安全を確保し」との一文が追加さ れている。 25)「公正な競争」という文言は多義的であることに留意を要 する。事業法である道路運送法における「公正な競争」は「公 共の福祉を増進」させることを目的とし、事業者の自由な競 争に委ねておいたのでは「道路運送に関する秩序」や「道路 運送の総合的な発達」が阻害され、国民生活に必要不可欠な 運送役務が行き届かない虞があることから、それを防ぐため の規制の下で行う競争を意味している。これに対し、独占禁 止法における「公正な競争」は「国民経済の民主的で健全な 発達」を目的とし、競争の過程で生じる私的独占や不公正取 引等を排除しつつ、あくまで事業者の自由に委ねる競争を意 味する。両法における「公正な競争」の持つ意味は正反対で ある。佐藤前掲論文、P.58。 26)本稿の対象ではないが、京丹後市は、鉄道も重要な公共交 通として位置付けている。先述のように、同じ陸上旅客運送 事業である鉄道と路線バスは、相互に補完しあう関係にある。 市の施策も両者の連携に重点を置いている。 27)2006 年の道路運送法改正により、地域公共交通会議になっ た。構成メンバーは、議長である京丹後市長を筆頭に、国交 省近畿運輸局、京都府広域振興局(企画総務部、保健所、土 木事務所)、京丹後警察署、路線バス事業者、観光バス事業者、 旅行業者、京丹後市区長連絡協議会、京丹後市老人クラブ連 合会、京丹後市身体障害者団体連合会の各役職員。後三者が 住民・利用者の代表である。 28)京丹後市『広報きょうたんご号外 平成 17 年度予算のあ らまし』(2005 年 5 月)。 29)国土交通省『地域モビリティ確保の知恵袋(Ⅱ− 2 −(2)

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体制・組織の設置・運営)』。プロジェクトチームは、京丹後 市プロジェクトチーム設置規程(平成 18 年 5 月 15 日訓令第 7 号)に基づいて市長が設置するもので、同規定によると、 公共交通対策以外にも、定住対策など 3 つのプロジェクト チームが別表に掲げられている。なお、定住対策も企画政策 課が所管している。 30)京丹後市『京丹後市第一次総合計画』P6 以下。 31)都市空間、農村空間における土地利用規制を対象にしたも のであるが、見上崇洋『地域空間をめぐる住民の利益と法』(有 斐閣、2006 年)、P.206 以下。「農」の機能の多面化等がもた らす、その機能が従来保護していた利益の相対的劣化、とい う視点を参考にした。 参考文献 ・青木亮「既存事業者の経営戦略としての分社化」寺田一薫編 著『地方分権とバス交通』勁草書房、2005 年 ・尾上實「道路運送法 101 条の合憲性」運輸判例百選、1971 年 ・北近畿タンゴ鉄道株式会社ウェブサイト http://ktr-tetsudo.jp/ (2010 年 7 月 3 日) ・旧運輸省運輸政策審議会ウェブサイト  http://www.mlit.go.jp/singikai/unyusingikai/unseisin/unseisin. html(2010 年 7 月 3 日) ・京丹後市『京丹後市白書 平成 20 年度版』 ・京丹後市『京丹後市第一次総合計画』2006 年 ・京丹後市『京丹後市の都市計画 第 8 号』2008 年 ・京丹後市『広報きょうたんご号外 平成 17 年度予算のあら まし』2005 年 ・国土交通省「国の地方バス路線維持費補助制度の概要」  http://www.mlit.go.jp/jidosha/sesaku/jigyo/bus/hojo/gaiyou.pdf (2010 年 7 月 3 日) ・国土交通省『地域モビリティ確保の知恵袋』  http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/soukou/chiebukuro/(2010 年 7 月 3 日) ・国土交通省『平成 18 年度版 陸運統計要覧』  http://www.mlit.go.jp/k-toukei/search/pdfhtml/16/16200600 x00000.html(2010 年 7 月 3 日) ・佐藤英善「道路運送法の規範構造と独禁法」法学セミナー 368 号、1985 年 ・全但バス株式会社ウェブサイト http://www.zentanbus.co.jp/ (2010 年 7 月 3 日) ・田邉勝巳「新規参入乗合バス会社の経営戦略」寺田一薫編著 『地方分権とバス交通』勁草書房、2005 年 ・丹後海陸交通株式会社ウェブサイト http://www.tankai.jp/ (2010 年 7 月 3 日) ・道路運送法令研究会編『Q&A 改正道路運送法の解説』ぎょ うせい、2006 年 ・バス事業 100 年史編纂委員会編『バス事業百年史』日本バス 協会、2008 年 ・阪急阪神ホールディングス株式会社ウェブサイト  http://www.hankyu-hanshin.co.jp/(2010 年 7 月 3 日) ・『北陸中日新聞』2007 年 10 月 19 日 ・見上崇洋『地域空間をめぐる住民の利益と法』有斐閣、2006 年 ・森田 朗『許認可行政と官僚制』岩波書店、1988 年 ・山内一夫「同一地域同一運賃の原則に対する違反を理由とす るタクシー運賃の値下げ申請の拒否」公正取引 414 号、1985 年

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