• 検索結果がありません。

社会科における環境教育 (<特集1>「教科教育における環境教育」)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会科における環境教育 (<特集1>「教科教育における環境教育」)"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

社会科さこおlナる環境教育

社会系教育講座岩田一彦

環境教育の重要性が認識されるようになって以後初めての教育課程の改訂お よび教科書の改訂が行われた。 そこで、平成4年4月から使用されている教科 書く1〉における代表的環境教材を取り上げて分析し、そこから社会科における環 境教育の諸問題を考察していこう。 1,環境教材の検討 5年における「生活と国土」が代表的環境単元である。 ここではどの教科書 においても「森林の減少」が記述されている。 この森林の減少の原田を何にお いて記述しているかをまとめると次のようになる。

5年の教科書記述にみられる世界の森林減少の原因

字斥材削 [ 1】 1「 IIEI I 弓 剛I開(Ri h 1l i

料1】

也 環境教材は世界的な規模で考察することが不可欠である。 ここで示した世界 の森林の減少問題を初めとして、酸性雨、地球温暖化、大気汚染、水質汚染等、 どれを取り上げても国際的視野で考えていかなければならない問題である。 こ の意味で、環境教材は「国際化」に対応できる特質をもっている。 一方、環境問題は複雑で原因・結果の関係が分かりにくいとか、一方の利益

(2)

-18-が他方の不利益という難しさを持っている。 たとえば、先に示したように、世 界の森林減少の原因についても、多様な原因が書かれている。 どの原因を探求 していっても、一定の正しさがある。 森林の減少の場合には、どれもなんらか の原因として働いているからである。 したがって、それぞれの原因から探求し ていった後には、どの要因がどのような割合で働いているのかを解明していく ことが要求される。 たとえば、教科書記述では8社中5枚が、木材の過剰な輸出入に原因を求め ている。そして、B社の記述では、木材(丸太)の輸入国のグラフを示し、日 本が世界の48.5%を輸入していることを示している。 これでは、日本が世界の 森林減少の主要原因をつくっているように思われる。 統計資料を代えて、丸太 ではなく、木材という製材、枕木、薪材等も含むものにすると、日本の輸入割 合は27.3%に落ちてくる。 (く2〉,p. 219)また、マスコミ等でもっとも問題にさ れている熱帯林の減少に関しては、次のように述べている資料もある。 「FAO(国連食糧農業機関)は熱帯林減少の原因を、焼き畑による移動耕 作、薪炭材のとりすぎ、過度の放牧にあるとしている。 1981-85年にかけて 熱帯林減少のほぼ半分が、移動耕作によるものと推計している。 (熱帯アフ リカでは70%、熱帯アジアでは49%、熱帯アメリカでは35%に相当」(く3〉, p. 294) 森林の減少の問題一一一つとっても、このような複雑な原因・結果の関係があり、 資料を代えたり、視点を代えたりすれば、違った様相が見えてくる。 この意味 では、多様な「探求」過程が可能であるという特質を持っている。 2. 環境教材と単元設計 環境教材は既存の教材に欠けていた点を補う内容を持っている。 それは未来 予測の側面である。 社会科の学習は、原因・結果の関係を学習し、社会におけ る法則性を習得することが中心である。 この重要性はなんら変わるものではな い。ただ、過去の原因・結果の学習に留まり、未来予測を学習場面に導入する ことは、ほとんどして来なかった。 環境教材は、--・一定の考えを提示すれば、か ならず、そのことによって将来のわたしたちの環境がどのようになって行くの かを予測しなければならない0 すなわち、原因・結果の分析に続いて、未来予 測こ価値判断が要求されるのである。 この考え方から、環境教育の単元には、次のような単元構造が必要である。

(3)

-19-元の基本的学習過程

概念探求過程一一価値分析過程

環境教材が主として扱われるべき価値分析の学習過程では、「生活」という 鍵概念が重要な意味を持ってくる。 環境をめぐる価値論争問題は、子どもの日 日の生活と密接に関係している。 たとえば、紙の大量使用が世界の森林の減少 をもたらしているので、新聞の貢数を減らすように主張すべきか否か。 デパ トで友達へのプレゼントを買ったとき、きれいな包装を頼むべきか、簡易包装 で済ますべきか。 森を切り開いて住宅丹地や公園を造成することに賛成すべき か否か。このように環境をめぐる論争問題は、子どもの生活と直接的に結び付 けることができるOこの点は他の教材には見られない有利性を持っているO 「生活」を鍵概念として環境教育を考えることの重要性について、文部省発 行の『環境教育指導資料』は、次のように述べている。 「環境に対する強烈で永続的な興味・関心は、足元の、身近なところで起こ っている車象や毎日の生活の中にみられる事象でありながら、何気なく漠然 と見過ごしているものを、環境学習の課題として意識することによって与え られる。 」(く4〉,p. 15) 「生活」を鍵概念として環境教育の単元計画を設計する際に、一方的な評価 的知識や、規範的知識を押し付けることが無いように配慮することが重要であ る。教科書記述には、「世界の人々と手をとりあって、・・-環境破壊から守 っていく必要」、「森林などの自然を守り、育てることを第---に、みん ながさんせいしました。 」. 「国境を越えて、世界の人々が協力していくこと です。」、「わたしたちは、ちょっとした心がけで、森林などの自然を守るこ とに協力できます。 」といった評価的、規範的知識が多用されている。 環境問題が深刻なのは、心がけや、協力では解決できないからであるという 現実をしっかりと認識させなければならない。 なぜ熱帯林が乱伐されているの か、なぜ古紙の回収業者が激減しているのか、森林を破壊する林道をなぜ次々 と造っているのか。 このような問題は、協力や、心がけで解決する種類の問題 ではない。環境経済学の視点から、これらの問題をめぐる人々の行動を分析し ていかなければ何も見えてこない。 一一例として、日本の大規模な木材輸入の問題を考えてみようO単純に木材輸 入を減らせば良いという問題ではないことが、次のような記述からも分かる。

(4)

-20-「日本の大規模な木材輸入の問題を考えてみよう。 木材の輸出国はその輸出 代金で食料などを輸入して日々の糧を得るとともに、将来、より多い糧を手 に入れるために、機械などの資本材を輸入して生産性の向上に努めているO したがって、森林の開発が抑制されるならば木材輸出国の所得と生活水準 は木材輸出の減少によって低下するであろう。 他方、日本では木材輸入が減 少すれば、その分を埋めるペく日本の森林が破壊され、別の環境問題が発生 する可能性がある。 」(く5〉,p. 7) 環境経済学の視点からの分析があって初めて、環境問題の本質的因果関係が 明らかになる。 リサイクル運動、古紙の使用、簡易包装の推進といった環境問 題への対処の仕方は、あくまでも、環境経済学の視点からの本質的因果関係を 学習した後に出てくるものである。 本流の部分的修正運動と認識すべきである。 この視点を欠くと、科学的視点を欠いた環境教育になってしまう恐れがある。 つぎに、環境教育が鍵概念「個性・創造性」の育成に有効に働くという点に ついて検討していこう。 個性・創造性の育成の重要性については、新教育課程 との関連で強調されてきた。 しかし、社会科のどの単元でどのようにして創造 性を育成していくのかという点については、ほとんど触れられていない。 さき に示した価値分析の学習過程で、事実の原因・結果の関係を探求し、未来予測 および価値判断をしていく場こそ、個性・創造性の育成にふさわしい。 なぜならば、未来予測こそ創造性を働かさなければ答えられないからである。 これまでの原因・結果の学習と現在の問題に関する事実分析を材料として、未 来予測を行うのである。 環境教材が優れているのは、子どもの学習活動が、単 に未来予測をすることに留まらないで、個性を生かした環境保全のための創造 的活動へつながっていく可能性を持っているからである。 <引用および注> く1〉小学校社会の教科書を発行しているのは次の8社である。 教育出版、大 阪書籍、中教出版、学校図書、日本書籍、光村図書、帝国書院、東京書籍 く2〉世界の木材輸出入(1988)、矢野恒太記念会編、『1991年版日本国勢図会』、 国勢社1991.6. く3〉熱帯林の減少、矢野恒太記念会編、『'90-'91世界国勢図会』、国勢社、 1991.6. く4〉文部省『環境教育指導資料』大蔵省印刷局1991.6. く5〉橋本道夫他編、『講座地球環境3地球環境と経済』、中央法規、1990.9.

参照

関連したドキュメント

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

「PTA聖書を学ぶ会」の通常例会の出席者数の平均は 2011 年度は 43 名だったのに対して、2012 年度は 61 名となり約 1.5

「PTA聖書を学ぶ会」の通常例会の出席者数の平均は 2011 年度は 43 名、2012 年度は 61 名、2013 年度は 79 名、そして 2014 年度は 84

「PTA聖書を学ぶ会」の通常例会の出席者数の平均は 2011 年度は 43 名、2012 年度は 61 名、そして 2013 年度は 79

2011

今年度は 2015

今回のアンケート結果では、本学の教育の根幹をなす事柄として、