Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№56:歯周病学講座ポストグラデュエートコース第
18期生による症例提示−広汎型侵襲性歯周炎に対しフ
ラップ手術と結合組織移植を行なった一症例−
Author(s)
今村, 健太郎; 喜田, 大智; 備前島, 崇浩; 杉戸, 博記;
齋藤, 淳
Journal
歯科学報, 115(5): 498-498
URL
http://hdl.handle.net/10130/3850
Right
目的:近年,三次元形態情報から立体造形モデル (3D モデル)を作製する3D プリント技術は,医 療を含め多様な産業分野で導入されつつあるが,歯 内治療領域では3D プリント技術が活用されるまで には至っていない。今回,我々は経済性に優れる パーソナル3D プリンタを用い,コーンビーム CT (CBCT)画像から 歯・顎 骨 の3D モ デ ル を 作 製 し,患歯の診断,処置方針の立案,患者とのイン フォームドコンセントなど歯内治療のマネージメン トへの活用を試みたので報告する。なお,本報告は 東京歯科大学倫理規定に従い,患者から書面で同 意・承諾を得ている。 症例:歯・顎骨の3D モデ ル 作 製 は,CBCT デ ー タから CAD データを構築,熱溶解積層方式のパー ソナル3D プリンタ(Value3D MagiX MF-2000: ムトーエンジニアリング)を使用した。用途に応じ て等倍モデルあるいは1.5倍大モデルを複数個作製 した。《症例1》患者は48歳の男性,上顎右側中・ 側切歯部の歯根嚢胞の治療依頼で来院。CBCT で through and through の広範な歯槽骨欠損を認め, 口蓋側では皮質骨欠損が患歯歯根全長に及んでい た。3D モデルを用い,骨欠損状況や根尖部周囲外 科の困難性,施術時のリスク等について患者に説明 し,処置方針への理解が得られた。3D モデルで立 体的構造を事前に把握し,歯根端切除術を実施し た。《症例2》患者は37歳の女性,上顎右側第一大 臼歯の難治性根尖性 歯 周 炎 の 治 療 依 頼 で 来 院。 CBCT にて近心頬側根根尖周囲から根分岐部側に 及ぶ骨欠損を認めた。3D モデルを用いて,頬側面 観,上顎洞側面観から骨欠損状況を患者に示説し, 近心頬側根切除の処置方針への理解が得られた。3 D モデルで予測しえた上顎洞への穿孔リスクに留意 し歯根切除術(root amputation)を実施した。 成績および考察:CBCT 画像データを用いて3D プリンタで作製した歯・顎骨3D モデルは,外科的 歯内療法が必要な患歯の形態や病的骨欠損を含む顎 骨形態および周囲の解剖学的構造の立体的な把握, 診断と処置方針の立案,手術器材の到達性の確認や アプローチ方向の事前確認などの施術シミュレー ション,ならびに患者へのインフォームドコンセン トに極めて有用な情報ツールとして活用できること が明らかとなった。今回用いたパーソナル3D プリ ンタの造形コストは産業用3D プリンタの数十分の 1程度ながら造形分解能は CBCT の空間分解能と ほぼ同程度であり,今後多様な歯内治療マネージメ ントに活用可能であると考えられた。 目的:本講座におけるポストグラデュエートコース は平成6年度に発足した。歯周治療において重要な 専門的知識や技術を獲得し,日本歯周病学会認定 医・専門医の取得を目指している。本症例提示に よって,その成果を報告することを目的とする。本 症例は,平成26年度に歯周病認定医を取得した際の 申請症例である。なお,本報告は東京歯科大学倫理 規定に従い,患者から書面で同意・承諾を得てい る。 症例:1.初診時データ(2011年2月8日)38歳の 女性。近医にて左下奥歯を抜歯と言われ,同部位の 精査を希望して,本学千葉病院を受診した。現病歴 として#36は25歳頃から動揺,違和感を自覚してい た。喫煙歴,全身的既往歴に特記すべき事項はない。 2.診 査・検 査 所 見 1)口 腔 内 所 見:PCR は 58%と高く,全顎的に歯肉の発赤,腫脹は顕著では ないが,#36より,排膿が認められた。現在歯数は 26歯本,プロービングデプスの平均は3.9mm,4 mm 以 上 の 部 位 は31.4%,7mm 以 上 の 部 位 は 12.8%で あ っ た。細 菌 検 査 に よ り Porphyromonas gingivalis と Aggregatibacter actinomycetemcomitans が検出された。また,舌突出癖があり,舌に歯列の 圧 痕 が 認 め ら れ た。2)エ ッ ク ス 線 所 見:# 16,22,24,26,36,37,46に垂直性の骨吸収,# 16に遠心から1度,#36に頬側から2度の根分岐部 病変が認められた。 3.診断:広汎型侵襲性歯周炎 4.初診時治療計画:1)歯周基本治療;予後不良 な歯の抜歯,口腔衛生指導,悪習癖の除去,SRP, 感 染 根 管 治 療,暫 間 被 覆 冠 の 装 着 2)再 評 価 3)歯周外科治療;ウィドマン改良フラップ手術 4)再評価 5)口 腔 機 能 回 復 治 療 6)再 評 価 7)メインテナンス 5.治療経過:まず,歯周基本治療による病因の除 去を図った。口腔衛生指導,舌癖に対する認知行動 療法,SRP,#36の近心根抜根,プロビジョナルレ ストレーション(#16−23,35−36)を装着した。再 評価後に,ポケットが残存したためウィドマン改良 フラップ手術(#15−17,#24−26,#46,47)と, #12部歯槽提の増大を目的として,結合組織移植を 行った。その後,口腔機能回復治療を行いメインテ ナンスへ移行した。 成績および考察:本症例は,特定の歯周病原細菌の 感染と舌癖により歯周組織破壊が進行したと考えら れる。侵襲性歯周炎と診断し,炎症のコントロール を目的として治療にあたり,歯周組織の安定を図る こ と が で き た。メ イ ン テ ナ ン ス 移 行 時 に,Peri-odontal risk assessment(Lang and Tonetti.2003) によって低リスクと判定されたが,下顎前歯部の叢 生は改善しておらず,上顎にはロングスパンのブ リッジが装着されているため,リコール間隔を3ヶ 月として管理を行っている。