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智山學報 第46 - 011苫米地 誠一「『最後潅頂常行心要法』について」

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(1)

NII-Electronic Library Service 『最後潅頂常行 心 要法』につ い て 『

 

 

 

一 [ 論 文 要 旨 ] 小 野 僧 都 成 尊 ( 一 〇 一 二 〜 一 〇 七 四 ∀ ま た は 醍 醐 三 宝 院 勝 覚 ( 一 〇 五 七 〜

二 九 ) の 製 作 と さ れ る 『 最 後 潅 頂 常 行 心 要 法 』 と い う 書 物 が 写 本 に 依 っ て 伝 え ら れ る 。 本 書 は 、 目 録 等 に 於 て も 殆 ど そ の 存 在 が 知 ら れ て お ら ず 、 成 尊 や 勝 覚 の 製 作 と す る に は 疑 問 が あ り 恐 ら く 鎌 倉 期 の 成 立 で あ ろ う が 、 こ の 時 代 の 真 言 宗 の 成 仏 思 想 の 展 開 や 往 生 信 仰 ( 密 教 浄 土 教 ) の 姿 を 示 す 貴 重 な 資 料 の 一 つ と 思 わ れ る の で こ こ に 紹 介 し 、 本 文 を 翻 刻 す る 。 、

  此

で 紹

す る 『 最

心 要

』 は 、 現

ま で 写

の み に よ っ て

え ら れ 、 活

化 さ れ て は い な い が 、 又

に よ っ て は 『 最

灌 頂

住 心 要

』 『 謂 色 即

』 と い う 題

の も の も あ

、 ま た 『 無

』 と も 称 さ れ る 。 『

』 と 称

る 書 に は

の 口

な ど や 仏 書 以 外 の も の を 含 め て 数

が あ り 本 来 は 題

の な い 論 書 で あ っ た も の と 思 わ れ る 。  

は 、

曼 荼 羅

第 二 世 で あ る

野 僧

↓ ( 一 〇 一 二 〜 一 〇 七 四 ) の 製 作 と

る 説 と 、 醍 醐 寺 座 主 三 宝

正 勝

2 ) ( 一 〇 五 七 〜 一 一 二 九 ) の 製

と す る

と の 二 説 が

え ら れ て い る が 、

に 述 べ る よ う に 、 お そ ら

中 〜

期 頃 に 成 立 し て 、 成 尊 ・

託 さ れ た 、 秘

の 口

書 の 類 で あ ろ う と 思 わ れ る 。 而 し 本

は ま た

) の 祖

師 空 海 ( 七 七 四 〜 八 三 五 ) 以

の 、

の 作 ら れ た 時 代 の 、

言 宗 の 成 仏

を 一

143

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(2)

『最後 潅頂 常行 心 要法』につ いて

す 論 書 と し て

目 さ れ る 論

で あ り 、 ま た こ こ に は

生 浄 土 の 思 想 ( 密

浄 土 教 ) ( 3 ) が

か れ て お り 、 そ の

か ら も

目 さ れ る

で あ る 。 二 、

つ い

 

に こ こ で 取

上 げ る 諸 写

の 書 誌

概 要 に つ い て 、 簡 単 に

て お き た い 。 (

1

) 『

』  

宗 智 山

本 山 智

院 所

本 (

瑜 所

・ 常 盤

旧 蔵 本 )   『 鐃 鉢 秘

』 ・ 『

』 ・ 『 金 日

』 三

合 写 の 中 。

化 一 一 年 ( 一 八 一 四 )

本 ( 『

鉢 秘

』 ・ 『 金 日

』 は 文

書 写 ) 。

綴 装 。 一 冊 。 縦 二 四 ・ 九 糎 。

一 八 ・ ○

四 五 紙 ( 表 紙 共 四 六 紙 、 中 『

抄 』 中

共 二 一

) 。

丁 一 〇

。 一

一 九 〜 二 一 字 。 (

題 ) 鐃

注 / 無 名

尊 / 金 日

/ 合 全

 

下 )

( 『 鐃

秘 伝 』

右 下 )

廓 方 印 「

山 / 常

」 。

廓 方

」 ( 中

紙 外 題 ) 無

題 ・ 尾 題 ) 無 し (

)   本 云 延 慶 三

廿 日

一 交 之 定

1

  此

小 野 僧

無 名 抄 云 々   最 祕

書 也 云 々 一

144

(3)

NII-Electronic Library Service

内 題 云 最 後

注 ) 亦 ゜ 。 “ 儲 獄 苛

 

既 有 二 名

十 六 年 九 月 九 日 書 之 藤

住 准 識

十 次 在 癸

夏 十 日 以

城 東 六 段 田 六 地

寶 庫 本

爲 令

 

日 一 交 了  

 

  金 剛 佛 子

 

全 宥 祥

十 一 歳 四 月

 

 

 

 

  宥 盛

N工工一Electronlc  Llbrary  Servlce

『最後 潅頂常 行心 要法』につ い て (

2

) 『

宗 総 本

王 護 国

本 (

智 院 金 剛 蔵 所 蔵 本 ・ 又 別 九

八 号 ) 書

不 明 ( 江 戸

) 。 禅 我 書 写 。

子 装 小 型

。 一 巻 。

紙 。 二 二

。 縦 一 六 ・ 七

約 一 〇 五 九 ・ ○ 糎 。 一

一 二 〜 = 二 字 。 墨 点 ( 仮

・ 返 点 ) 。 原

。 (

題 ) 上 最

心 要

 

題 下 )

 

我 ( 内 題 ) 最

行 心

( 尾 題 ) 無 し (

)   三

僧 正 勝

記 云 々

小 野 成

御 製

々 一

145

(4)

『最 後潅頂常行心要法』につ い て  

覺 ノ 御

習 ヒ 來 也                   菩 提

印 禪 我 (

3

) 『

』   高 野 山 金 剛 三

院 所 蔵 本 (

野 山

図 書 館

託 ( 特

25

ム 金

2

ご   天

一 六 年 ( → 五 四 七 )

。 書 写

不 明 。 粘 葉 装 。 一

紙 ( 高 野 紙 ) 。 縦 二 五 ・ 九

。 横 一 五 ・ 八 糎 。 押 界 (

高 二 一 ・ 三

幅 一 ・ 八 〜 一 ・ 九 糎 ) 。 半 丁 七 行 。 墨

二 六

紙 共 二 八 紙 ) 。 墨 点 ( 仮 名 ・ 返

( 天 文 一 六

) ) 。 原

。 ( 外 題 ) 無 明

 

肩 (

題 と 別

) ) 小 野 成 尊 制

 

紙 右 下 ( 又 別

) ) 快 英

 

下 ( 又 別

) ) 有

書 也 ( 内 題 ) 最 後 灌 頂 常 住 心 要 抄 ( 尾 題 )

し (

書 )   此 書 者 小 野 成 尊 僧

之 製

無 明 抄 ー 云 云 最 祕 最 祕           自 交 】 交 了   天 文 十 六

丁 未 菊

十 一 日 於

野 山 書 之

本 云       大 阿 闍 梨 法

大 和 尚 位 空

( 花 押 ) 求

快 英

師 一

146

(5)

NII-Electronic Library Service 『最後潅頂常行心要法』につ いて (

4

) 『

 

野 山 金 剛 三

本 ( 高 野 山 大 学 図

託 (

25

イ 金

4

) )

 

書 写 年 次 不 明 (

戸 初 期

) 。

不 明 。

綴 装 。 一 冊 。

の 子

。 縦 一 三 ・ 九 糎 。 横 一 九 ・ 五 糎 。 無 界 。

丁 十 一 行 。 墨 付 二 五

( 表 紙 共 二 八 紙 ) 。 原

。 (

題 ) 謂 色 即

 

肩 ( 別

) ) 常 行 心

作 / 或

抄 云 々

 

右 下 )

紙 見 返 し ( 又

) ) 常 行 心 要 抄 成 尊 作

本 云 無 名

云 々 (

題 ) 謂 色 師

題 ) 無 し (

書 )

 

 

 

 

 

 

 

 

四 年 乙

三 月 十 二 日 書 寫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空 地

 

 

ノ 肝 心 也

 

空 地

5

) 『

野 山

別 所 所

野 山

図 書

託 (

1

64

44

) )

明 (

戸 中 期

) 。

不 明 。

装 。 一

紙 。

六 ・ 六 糎 。

全 長 約 一 〇 八 亠 ハ ・ ○ 粳 。 一

147

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(6)

『最後 潅頂常行 心要法』につ い て 無 界 。

二 → 紙 。 一 行 = 二 〜 一 四 字 。 墨 点 ( 仮 名 ) ・ 朱 点 (

名 ・ 返 点 ・

訓 符 ) 。 原

紙 ( 秋 草 に 銀

散 し ) 。 (

題 ) 最

行 心 要

 

題 右 下 ) 妙

( 内 題 ) 最

灌 頂 常 行 心 要

 

題 前 に 押 紙 ) イ 本 / 無

抄 成

記 ( 尾 題 ) 無 し (

)   三

院 權 僧 正

i

( 覺 )

  此

祕 宗 之

言 之 骨 目 也   最 祕 最 祕 穴

穴 賢

有 深 信 上 智 之

自 覺

初 之 法 要 故 若 許  

下 根 之 輩 者 必 可 爲 邪 見

  起 之 因 縁 也 可

可 愼 矣 ( 同 本

紙 )   イ 本 此

小 野 成

名 抄 ト 云 云 最 祕 極 書 也 云 云

 

私 云 隆

一 

148

一 小 野 ノ

資 佛 化 子

瑞 評 シ テ 日 此 ノ 記 二 所 . 明 ス 胎 内 . 五 位 ノ 成 佛 迂 猟 ナ リ 也 。 不 足

ス ル 一 必 定 シ テ 合 シ 不 ル 佛 駄 . 説 二 。 後 人 假 テ

勝 覺 二 謬 テ

ヵ シ ム 于 先 匠 ヲ 。 設 シ

. ハ 此 ノ 記 ノ

(7)

NII-Electronic Library Service 『最後潅頂常行 心要法』につ い て ( 行

書 「 此 記 所 . 述 無 相 修 行 ノ 之 理 リ 及 臨

用 心 等 太 殊 妙 也 。 者 利 鈍 ノ ニ

共 二 有 り

レ ヵ 所

ス ル 耶 。 鈍 頑 ノ 人 信 セ ハ 此 ノ

ヲ 忽 二

シ テ

ヲ 自 、 一 . 貢 擧 セ ン 焉 。

キ 利 人 ノ

セ ハ 此 ノ 記 ヲ 進 退

. テ

二 壞 七 ン 正 智 , 。 何 ソ

疑 ス ル ヤ 耶 。 謂 ク

ク 自

漫 荼 ノ 教 ハ 法 界 悉 ク

ノ 色

ニ シ テ

皆 ナ

シ ト

ン ス レ . 爲

レ 唯 シ

ノ 五 位 ノ ミ 成 佛 ノ 極 位 ナ ル ヤ

頗 シ

ン ト 云 ハ 者 劫 初 ノ

生 ト 及 諸 天 ト

生 ー . 有 情 ハ 容 シ

ル 即

. 二 。 何 , 以 ノ 故 二 無 キ ヵ 胎 内 ノ 五

故 二 。

シ 此 レ

ハ 無 シ ト 云 ハ 五 相 ノ

者 卸

何 ソ 應 不 ル 遍 セ

情 二

滋 ク

シ 不 忍 ヒ 縷 述 二 然 レ ト モ

ス ル 教 相 ヲ 中

ト シ テ

明 ノ 出 ル ガ 浩 海 二 是

. 資 ト 云 . 爾

保 十 一 丙 午 二

廿

性 院

下 勝 道

者 手 唯 胎 内 五

成 佛 此 凡

也 」 )

此 説 僞 書 也 云 云

保 廿

二 月 再 見 之 此

覺 ノ 記 醍 醐 流 ノ 人 ハ

内 五 位 之 説 也 。

ノ ハ 正 説 也 。 失 ス レ ハ

流 ト ナ ル 也 。 責 ル モ

亦 不 ル モ 咎 メ 吉 ナ リ 也 。 宜 シ

酌 ス 也 。 一

149

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(8)

『最後 潅頂 常行 心 要法』につ い て  

づ (

1

) の 智 積

所 蔵 本 『 無

抄 』 は 、 智 山

三 十 三 世

瑜 ( 4 ) ( 一 七 七 三 〜 一 八 五 〇 ) の 収

し た 写 本 の 一 つ と 思 わ れ 、

に 隆

え 、 本

一 丁 目 の 初 め に 「 智 山 / 常 盤 蔵 」 「 隆 瑜

」 の 二 つ の

が 押 し て あ る 。 『 鐃 鉢 秘

』 ・ 『 無 名

』 ・ 『 金 日

』 の 三 本 を 一 冊 に 書 写

綴 し た も の で 、 『 無

抄 』 は 文

十 一 ( 一 八 一 四 )

四 月 に 宥 盛 の

写 し た

で あ り 、 『 鐃 鉢 秘

』 ・ 『 金 日 鈔 』 は

化 十

宥 盛

で 、 『 金 日 鈔 』 は 文 化 十 一

六 月 に

し て い る か ら 、 お そ ら く 此 の

に 一 冊 に し た も の で あ ろ

。 文

年 に 興 全 宥

の 六 地 蔵

本 を 書 写 し た

を 再 写 し た

の で あ る 。 返

点 が ま ば ら に 見 ら れ る が 、

ず し も こ れ で 本 文 の

て が 読 め る よ う な 訓 点 で は な い 。 ま た 本

も 、 誤

・ 誤 脱 等 が

く 見 ら れ 、 或 い は 原 本 が そ れ

良 質 で は な か っ た も の を 判 読 で き ず に 形 だ け を

し た か

記 者 で あ る 宥 盛 の 癖

の せ い か 、 お か し な

体 の 文

が 所 々 に 目 に 付

。   (

2

) 東

本 『 上 最

灌 頂

行 心 要 法 』 は 、 江 戸

に 書 写 さ れ た 巻 子

で あ る が 、 書 写 者 の 禅 我

印 に つ い て は 不 明 で あ る 。 比 較 的 詳 細 な 訓

( 返 点 ・ 仮

点 ) が

ら れ て お り 、

み や

い 写 本 と

え よ

が 、 他 本 と

合 す る と 、 や は り 多

の 誤 字 ・ 誤 脱 が 見 出 せ 、 ま た そ の 訓

も 、 必 ず し も

肯 で き る も の ば か り と は 言 い 難 い 。

本 の 場 合 と 同

に 江 戸 期 の

で あ り 、 そ の 訓

戸 期 の 語 法 (

者 は 詳 し く な い が 〉 の よ

で あ り 、 何 時 ま で 遡 れ る か 不 明 で あ る 。   ま た 高 野 山 に は (

3

) ・ (

4

) ・ (

5

) の 三 本 の

本 が

来 し て い る 。 (

3

) の

野 山

院 所

の 『 最

灌 頂

心 要 抄 』 は 天

十 六 ( 一 五 四 七 )

写 、 書 写 者 不

の 粘 葉 装 の 写

で あ り 、 や は

、 欠 字 が 見 ら れ る 。 こ れ ま で に 確 認 し

も 古 い 写

で あ る が

の 害 も

っ て お り 、 必

し も 状

い 写 本 と は 言 え な い 。   (

4

) の 『

色 即

』 も 、 同 じ

野 山 金 剛 三 昧 院 所

で 、 江 戸

写 、

写 者 不 明

装 の 写

で あ る が 、

本 に 比 し て

字 も

く 、 か な り 長

落 が 有 り 、 ま た 虫

っ て お り

の 程

は 最 も 悪 い 。

そ の 本

は 、 同 じ 金 剛 三

院 に

来 す る も の で あ る だ け に 、 (

3

) の 『 最

灌 頂

心 要 抄 』 と 最 も 近 い よ

で 一

150

(9)

NII-Electronic Library Service 『最後潅頂常行 心要法』につ い て あ る 。

し 、 独

の 本

も 見 ら れ 、 (

3

) の 転 写 本 で は な く 、

の 写

と 思 わ れ る 。   ま た (

5

) 高 野 山

別 所

蔵 本 の 『 最 後 灌 頂 常

心 要 法 』 は

期 頃 写 、

者 不 明 の

装 の 写

で あ る 。

書 の

紙 が

り 、 高 野 山 真 別

第 八 世 と な っ た

僧 で あ る

〔 , 〕 ( 元 禄 九 (

ハ 九 六 ) 〜 明 和 元 ( 】 七 六 四 ) ) の 批

さ れ る 。

別 所

の 写 本 に

が 批

の 押 紙 を

え た も の か 、

い は

が 入

し た こ と に よ り 真 別

来 す る よ う に な っ た も の か は 不 明 で あ る が 、 そ の 本

は か な り (

2

) の 東

本 に 近 い 姿 を 示 し て い る 。   こ の 他 に も 、 川 崎 大 師 教

究 所 に は 、 や は り 江 戸

保 二 ( 一 七 一 七 ) 年 の 写 本 が 一 冊 あ り 、 こ れ は か っ て 筆 者 が 同 研 究 所 に

し た お り に 、 古 書 展 に 出 品 さ れ て い た も の を 見 出 し 、 同 研 究 所 の

し た も の で あ る が 、 筆 者 が 同 研 究 所 を

退

い て

在 は そ の 蔵 書 の 公 開 を し て い な い と い う こ と で 、

回 は ま だ 利 用 で き な い 状 況 で あ る が 、

し 、 そ の

書 に は 「

に 云 く / 初 め 円 明

本 を 以 て

写 し 畢 り 、 交 し 了 ん ぬ 。 / 後 宀 一

( 室 生 山 ) の 御 本 を 以 て 一 交 し 了 ん ぬ 。 / 本 に 云 く 時 に 建 武 四

二 月 十 四 日 書 写 し

ん ぬ 。 / 金 剛 仏

覚 真 」 と い う 識 語 が

さ れ 、 南 北

に は

地 に

の 所

し た こ と が

え ら れ る 。  

に よ り そ の 状 態 に は か な り の 差 が

る が

文 の 程 度 は ど れ も

り 良

と は 言 い 難 く 、

独 で は 全

の 解

る こ と は 難 し い 。 そ の 殆 ど が 江 戸 期 の 写

で あ り 、 伝 写 の 過 程 に

て 変 化 を 蒙 っ た も の で あ ろ

。 ま た (

3

) の 金

三 昧 院

の 表 紙 に 「

疑 書 也 」 と あ っ た り 、 ま た (

5

) の 真 別 所 所

本 の 妙 瑞 の

記 の 押 紙 に

ら れ る よ う に 、 本

を 僞

と し て

う 見 解 が あ り 、 醍

の 法 流 に

え ら れ る と い

「 胎 内 五 位 の 説 」 や 常 行 用 心

な ど が

か れ て い て 、 「 若 し

下 根 の

に 許 さ ば 、 必 ら

起 の 因 縁 と 為 る 可 き 也 」 「 旨 を 失 す れ ば

流 と な る 也 」 な ど と い わ れ る よ

な 秘 義 を 説

文 献 で あ っ て 、 秘 匿 さ れ た も の で あ ろ

か ら 、

広 範 囲 に 流

し た も の で は な い の で あ ろ う し 、 秘 匿 、 秘

さ れ た 分 、 そ れ ほ ど 正

が さ れ て こ な か っ た も の か と も

え ら れ る 。 一

151

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(10)

『最後潅頂常行心要法』につ い て

  本 書 の

者 に つ い て 、 此

の 写 本 の 奥 書 に よ れ ば 、 小 野 僧 都 成

の 製 作 と

る 説 と 、 三 宝 院

僧 正 勝

と す る 説 と の 二 説 が

え ら れ て お り 、 ま た こ れ を 後 人 が 成 尊 ・ 勝

に 化 託 し た 偽 撰 と す る 説 が 存 在 す る 。

際 に 『 密 教 諸

目 録 』 『 諸

録 』 な ど の

の 目

類 ( 6 ) を 見 て も 成 尊 ・ 勝

の 著 作 と し て 、

い は そ の 他 の

師 の 著

と し て も 、 「 最 後 潅 頂

行 心 要 法 」 (

い は こ れ に 類 す る 名 前 ) を

る こ と は で き な い 。   本 書 成 立 の 下 限 は 、 (

1

) の 智 積

蔵 本 の

に 「 延 慶 三 ( = 二 一 〇 ) 年 六 月 廿 日 」 の 日

が 見 ら れ 、 (

3

) の 『 最 後 灌

抄 』 の

書 に は 「 天

十 亠 ハ ( 一 五 四 七 )

丁 未

月 十 一 日 、 高 野

に 於 て 之 れ を

す 」 と あ り 、 (

4V

の 『 謂

』 に は 「 正 和 四 ( 一 三 一 五 ) 年 乙

三 月 十 二 日 、

写 し

ん ぬ 。 」 と 見 ら れ る 所 か ら 、 少 な く と も

の 末 に

た る

園 天 皇 の

慶 三

二 〇 ) 以 前 に 既 に 成 立 し て い た こ と は

で あ る 。

し 、 こ れ だ け で は 、 そ の 成 立 が 何 処 ま で 遡 れ る か は 不 明 で あ る 。   こ れ に 対 し て 、 (

5

) の 高 野

さ れ る 押 紙 に は 江 戸 中 期 の 学 僧 で あ る 妙

の 批 評 が あ り 、 そ こ で は 此 の 書 を 偽

と し て い る 。

瑞 の

拠 は

後 潅

の 内 容 で あ る

内 五

の 成 仏 説 が 「 迂 狒 な 説 」 で あ り 、 後 人 の 妄 説 で

る と い う こ と で あ る 。 こ の 胎

五 位 の 説 に つ い て は 後 に

れ る が 、

瑞 の 理 解 に は 本

の 主

を 誤

し て い る 所 が

り 、

に 述 べ る よ う に 、 興 教 大

正 覚 房

鑁 ( ] 〇 九 五 〜

四 三 ) に 既 に 類 似 の 説 が 見 ら れ る の で 、 此 の 説 そ の も の は 勝

の 時 代 ま で 遡 ら せ て も お か し く は な い で あ ろ

。   ま た 第 三

「 常

」 三 「

生 門 の 修 行 」

1

「 有 相 の 三 昧 門 」 の

に は         原 ( み れ ) ば 夫 れ 、 思

を 恒

万 数 の 法 門 に

た ん

り は 、

か じ 只 、 一 印 明 尊 の 巨

が ん に は 。 久       労 を

時 歴

の 悠 々 た る に 積 む 従 り は 如 か じ 、 但 し 、 須 臾 刹 那 の 迅 迅 を

め ん に は 。 一

152

(11)

NII-Electronic Library Service 『最後潅 頂常行 心 要法』につ いて        

て 、 則 ち 已 に 易 行 に し て 、 功 は

行 に 勝 れ た り 。 何 を 以 て か 之 れ を 棄 て て 勝

の 法 を 伺 は ん 。 則 ち       此 の 勝

っ て 得 る

の 功

は 無 比

な り 。 此 の 功 を 廻 向 す れ ば 、 設 ひ 仏 果 を 成 じ 、

ち に

土 に

く       も 、 意 の 楽 ふ

に 随 て 無 礙

な り 。 此

用 は 皆 是 れ 大 悲

便

の 利 生 化 区 の 方 便 門 な り 。 と あ っ て 、 恵 心 院 僧

信 ( 九 四 二 〜 一 〇 一 七 ) か ら

然 房 源 空 ( → = 二 一 二 〜 一 二 一 二 ) に つ な が る

教 阿 弥 陀 浄 土 教 の

・ 易 行 の 教 判

教 を

聖 道 門 に 加 え 、 こ れ を

行 と し 、

教 阿 弥 陀 浄 土 教 を

門 と す る ) が

さ れ て お り 、 こ れ を

に 強

調

し た の が 源 空 の 教 学 で あ っ た こ と を

す る と 、 そ れ 以 降 の 成 立 の よ う に も 見 ら れ る か も し れ な い 。 而 し こ の よ

な 難

・ 易

教 判 は 、 既 に 源 信 の 『

生 要

』 の 「

」 ( ヱ に も 見 ら れ る

え で

、 こ れ の み に よ っ て は 、

尊 や

作 を 否

す る こ と は で き な い 。   而 し 、

書 の 中 に は 、 本

を 成 尊 や 勝

作 で は な い で あ ろ

測 で き る 根 拠 が 別 に

す る 。 そ れ は 第 三 章 「

」 の 一 「 顕 教 の

行 」 の 中 で 、 禅 宗 に つ い て 述 べ る も の で 、         是 の

に 、 禅 宗

の 意 も 、 念 念

続 す る を 名 づ け て 縛 と 為 す 。 念 念

る を 名 づ け て 正 と 為 す 。 或 ひ は       心 意 識 を

し 、 無 の 一

を 提 撕 す と 云 々 。 と い う 一 文 で あ る 。   日 本 へ の 禅

の 伝

は 、 既 に 天 平

年 間 ( 七 五 七 〜 七 六 四 ) に

律 師 ( 8 ) ( 七

Q

二 〜 七 六 〇 、 一 説 に は 七 五 七 と

) が も た ら し 、 ま た

教 大 師 最 澄 ( 七 六 七 〜 八 二 二 ) は こ の 道

の 禅 を

る 行

か ら

し 、 入

し て 天

山 禅 林 寺 の 脩

か ら も

け 、 そ の

を 『 内 証 仏

相 承 血 脈 譜 』 ( 9 ) に 記 録 し て い る 。 そ し て 五 大

( 八 四 一 〜 八 八 九 〜 ) は 『 教

論 』 〔 10V な ど に お い て 禅 門 の 相

に つ い て 述 べ て い る 。 而 し 此 等 の 資 料 の 中 で は 「 禅

」 「 禅 門 」 と い っ た

現 は 見 ら れ る が 、 「 禅

」 の

は 見 ら れ な い 。 此 の 語 の 日 本 に 於 け る

使

用 が い つ ま で

れ る か は 不 明 で あ る が 、 ど ち ら に し ろ 平

中 期 頃 ま で に

え ら れ た 禅

は 、 最 澄 や 安 然 の 示

も の

一 

153

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(12)

『最 後潅頂常 行心 要法』につ い て め て 、 あ ま り 広 く 流

し た と は 言 い 難 い 。   こ れ に 対 し て 禅 宗 の 興 隆 を 図 っ た の が 叡 山 の

上 房

西 ( 11V (

四 一 〜 一 二 一 五 ) で あ る 。

西 以 前 に は 、 ほ ぼ 同 時

房 能 忍 が

る が 、

は 日 本 達 磨

を 称 し て お り 、 ま た

言 宗 僧 と の

流 も 、

者 は 確 認 し て い な い 。 栄 西 は 二 度 の 入 宋 に 於 て 黄

の 禅 を

え 、 京

に 建 仁

立 し 『 興 禅 護 国 論 』 を

し た 日 本 臨

宗 の 祖 と さ れ る が 、 台 密 葉 上 流 の

で も あ り 、 生 涯 を 通 じ て 台 密 僧 ・ 天 台 僧 で あ っ て 、 彼 の

法 興

は 、 祖 師 最 澄 の 仏 教 の

興 で あ っ た と 思 わ れ る 。 そ の 栄 西 は

朝 後 、

山 衆 徒 の 排

を う け る が 、 真 言 宗 僧 と の

ら れ 、 特 に 俊 乗

重 源 ( 〜 一 一 九 三 ) の 後 を 受 け て 東

大 勧 進 職 に 補 任 さ れ た こ と は

名 で あ り 、 醍 醐 寺 、

い は 東

僧 と の 関 係 が

さ れ る 。   ま た 栄 西 の 禅

の 弟 子 で あ り 、 建 仁 寺 の

二 世 で あ る 荘

房 退

勇 ( 長

元 ( 一 一 六 三 )

治 二 ( 一 二 四 こ 年 ) は 、 初 め

僧 で あ っ て

倉 鶴 岡 八 幡

供 僧 で あ っ た が 、

に 下 向 し た 栄 西 よ り 禅

を 受 け て そ の

嗣 と な り 、 建 仁 寺 を

ま た

進 職 も

承 す る 。 後 、 健 保 二 ( 一 一 = 四 )

に 北 条 政 子 が 高 野

に 金 剛 三

院 を 開 く に

、 開 山

一 世 と な り 、 後 延 応 元 ( 一 二 三 九 )

に 鎌

寿

福 寺 に 還 り 、

治 二

七 月 十 五 日 に 示 寂 し て い る 。 ま た

は 高 野 山 に

て 正 智 院 道 範 (

七 八 〜 一 二 五 二 ) に

頂 受

し た と さ れ 、 禅 宗 を

し た

僧 と し て

え る こ と が で き よ う 。 ま た こ の 金

三 昧 院 に 於 け る 禅 法 の

承 と い う こ と も

え ら れ る 。 本

の 二 部 の 写 本 (

度 の 良 い

と は い え な い が ) が こ の 金 剛 三 昧 院 に

来 し て い る こ と も 注 目 さ れ る 点 で

る 。   ま た

の 開

で あ る 聖 一 国 師 円 爾

( 建 仁 二 ( 一 二 〇 二 ) 〜

安 三 ( 一 二 八 〇 ) ) は 、 初 め 三 井 園 城 寺 に 出 家 し 、 上 野

の 世

朝 に 学 び 、 潅 頂 を

。 後 に 入

し て

め て

山 に

を 嗣

し て い る が 、 元 の

で あ る 栄

は 栄 西 の 付 法 の

で 、

上 流 と 臨

禅 黄 竜

を 伝 え て お り 、 弁 円 も 日 本 天

と し て こ れ を

し て い る 。 現

録 は

ど が 禅 宗 か ら の も の

り で あ り 、

円 の 天

僧 ・ 台 密

と し て の 側 面 は 隠 れ が ち で 一

154

(13)

NII-Electronic Library Service 『最 後潅 頂常行 心要法』につ い て あ る が 、

年 ま で

達 に

を 授 け て お

9

、 ま た 弁 円 に

し て そ の

子 と な っ た

原 道 家 ( 沙 弥 行 恵 ) の 家

状 案 に は 、 東

に つ い て 、

を 定

し て

定 慧 の 三

を 学 ば せ 、 「 大 小 顕 密 戒 律 を 以 て 総 体 と し 、 真

・ 止

門 を 以 て

宗 と

。 是 れ

師 の

願 な り 。 ( 中 略 )

師 所 承 の 血

内 証 仏

に 乃 ち 三 譜

り 。 一 に

の 付 法 、 二 に 天 台 の

、 三 に

言 の 血 脈 な り 。 云 々 」 ( 13 ) と あ る が 、 こ れ は

円 の 立 場 と 同 じ と

て よ い で あ ろ

西 と 同

に 、 宋 代 の 禅

を 嗣

・ 將 来 し た

僧 で は あ る が 、 そ れ は 天 台 宗 僧 と し て の

学 で あ り 、 終 生 を 天

僧 と し て 終 わ っ た と い う べ き で あ ろ う 。   そ し て そ の よ

な 弁 円 の 下 に は 、 栄 西 に 学 ん だ 行 勇 の よ

に 、 ま た

く の 真 言

僧 が 禅

を 学 ん で い る 。  

院 中

上 人 迴 心 房

空 〔 14 ) ( 一 二 〇 四 〜 一 二 ⊥ ハ 八 ) は 、 も と 醍 醐 寺 理 性 院 行

子 で 、 東 大

禅 に 三

を 、 大 悲 菩

提 寺 覚 盛 ( 建

五 (

九 四 ) 〜

元 ( 一 二 四 九 ) ) に 律 を 学 ん で い る が 、 円

円 に 禅

け 、 建 長 七 ( 一 二 五 五 ) 年 に は 金 剛 三 昧 院 の 栄 信 に

か れ て 金 剛 三 昧 院 を

し て い る 。 ま た 大 通

の 開 山 と な り 、 文

四 ( 一 二 六 七 〉

に 鎌

寿 院 に 住 し 、 翌 五 年 に

寂 し て い る 。   そ し て こ の

に 学 ん だ

性 院 俊 立 旦 房

瑜 ( 一 二 二 六 〜 = 二 〇 四 ) は 、 『

俗 雑 記 問

』 ( 15 ) に 於 て 「

幡 の

」 と し て

と 真 言

じ て い る 。 即 ち              

九 、 禅

言 と

深 の

。         問 ふ 。 二

の 浅 深 、

ん 。 答 ふ 。 禅 宗 は 浅 く 、 真

し 。

ふ 。 禅

は 顕

諸 宗 を

教 内 と 云 い 、

     

を 教

と 云 う 。 真 言 は 猶 し

門 に 滞 る が

に 浅 な

。 ( 中 略 )

で 知 ん ぬ 、 禅

言 に 勝 れ た る と 云       う

を 。 尓 ら ば 如 何 ん 。

ふ 。 木

の 義 に 云 く 、 教

別 伝 と 云 ふ と も 、 一 心 無 相 の

理 を 出 で ず 。

ぞ 一 心       の 処 に 本 よ り 六

・ 四

の 徳 用 有 る に 勝 れ た り と 云 ふ や 。 又 、 付

を 云 へ ば 、 顕 教 の 教 主 の 釈 迦 よ り 迦 葉 ・       阿 難

ふ 。 仏 は 則 ち 応 化 仏 、

持 の 人 は 又 迦 葉

の 小

の 人 な り 。 応 化 仏 の

は 三 乗 の 極 理 を 云 一

155

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(14)

『最後潅頂常 行心 要法』につ い て       ふ 。

仏 の 言

心 滅 す る 顕 乗 の 雑 言 、

及 ば ず 。 豈 に 真 言 教 は 法 身 大 日 の

を 、 金 剛 手

の 大 士 の 伝 持 す 。 何       ぞ 、 同 日 の

を 致 す べ け ん や 。 と い

。 こ れ は 弁 円 に 禅 法 を

ん だ

空 が 、 禅 宗 と

言 宗 と の 優 劣 を ど の よ

え て い た か を 示 す も の で

、 そ の 禅 宗 理

の 内 容 も 、 『 最 後 潅 頂 常 行 心 要 法 』 の

宗 理 解 に 通

る も の と い え よ う 。   ま た 東 大

戒 壇 院 実 相

円 照 ( 一 二 二 〇 〜 一 二 七 七 ) も 唐 招 提

盛 の

で 、

房 聖

( 一 二 一 九 〜 一 二 九 一 ) の 肉 弟 で 、 法 相 ・ 三

・ 密 ・ 天 台 等 を

ん だ と さ れ 、 や は

円 に 禅

し て い る 。 弟 子 の

大 寺 凝

大 徳 ( 一 二 四 〇 〜 一 三 二 一 ) の 著 し た 円 照 の 伝 記 で あ る 『

寺 円 照 上 人

状 』 上 巻 ( 16 > に は 円 照 が

福 寺 円

の 門 室 に 入 り 、 禅 学

し て 血

け た こ と を 記 し 、

に 円 照 の 所

に つ い て        

を 学 ぶ と 雖 も 、 司

無 き に

ず 。 諸 宗 の 中 に 義 理 深

に し て 、

悟 速

な る は 、

に 過 ぎ た る は 無       し 。 弘 法

の 所 判 、

な り 。

心 淳 重 な り 。 帰 投

し 。 禅

誇 る も 、 旨 尓 る べ か ら ず 。

ば 世 人       の 数 子 有 る が

き 、 嫡 子 有 り 、 二 男

り 、 三 男

り 。

言 は 是 れ 嫡 子 な り 。 禅

は ロ バ 三 男 な り 、 二

に 及 ば       ず 。 況 ん や 立 て て 嫡 と

さ ん や 。

は 諸 根 具 足 し 、 万 徳 円 満 せ

法 は

念 、 目

る こ と 無 し と       云 々 。 然 り と 雖 も 機 に 隨 ひ て 人 を

く に 、

此 を

は ず 。 遇 ふ に

っ て 即 ち 訓 ふ 。 空

る こ と 無

      な り 。

是 れ 自 己 の 内 証 、 専 ら 三 密 を 以 て

る 而 已 。

に 居 し 、 宗 は 三

り 、 証 は

を 味 わ ひ 、      

に 遊 ぶ 。 照 公 の 仏

は ロ ハ

れ な り 。 と の べ て い る 。 即 ち 円 照 は 、 禅 宗 を

び な が ら も 、

言 宗 を

一 と し

天 台 の 一 乗

を 次 と し 、 禅 宗 を そ の 下 に 位 置

け て い る 。   こ の

に 詳 し く 調 査

れ ば 、 鎌 倉 期 の

期 に 於 け る 禅 を 兼

る 天

と 真

宗 僧 と の 交 流 に つ い て は も っ と

く の

が 在 る で あ ろ う が 、

に 退 耕

の 存 在 と 金 剛 三 昧 院 の 建 立 は 、

僧 に

け る 禅 宗

の 一

156

(15)

NII-Electronic Library Service 『最後 潅頂常行 心要 法』につ い て 面 で 大 き な も の だ っ た の で は な い か と 思 わ れ る 。   そ

い っ た

で 、 本 書 中 に 見 ら れ る 禅

に 対 す る 発 言 は 、 こ の よ う な 状 況 を 背 景 と し て 顕 れ て き た

の で は な い か と い

推 測 が で き 、 本 書 の

立 時 期 も 此 の

に 置 け る の で は な い だ ろ う か 。

し 、 そ れ 以 外 の 内 容

な 側 面 か ら す る と 、 教 理 ・ 思 想 的 に は 摂 関 ・ 院 政 期 か ら 鎌 倉

の 、 何 時 の

っ て も 不 思 議 で は な く 、 院 政 期 の 成

、 勝

の 頃 の 成 立 で あ っ て も お か し く は な い 。 禅

に 関 す る 問 題 が 、 院 政

に ま で 遡 り

拠 が 見 つ か っ た 場

に は 、 こ れ が

の 製 作 で

る 可 能 性 も で て こ よ う か 。 而 し 顕 教 阿

陀 浄 土 教 と

言 密

の 難

・ 易 行 の 問 題 を

め 、 禅

更 に

り 上 げ て い る

書 の 性

は 、 や は り 鎌

中 〜

期 の 頃 に 置 く の が 妥

な よ う に も

え ら れ る 。 ま た 本

が 成

や 勝 覚 の

述 と さ れ る こ と は 、 こ れ が 醍

の 法 流 の

で 伝 承 さ れ て き た も の で あ る こ と を 示 す も の で あ ろ

つ い

 

書 の 内 容 に つ い て は 、

げ る 仮 の

文 (

∀ を

照 さ れ た い 。 こ の

は 、 全 く 私 に 作 っ た も の で

中 に

ら れ る も の で は な く 、 そ の 立 て 方 は 不 適 切 な 面 が あ る か も し れ な い が 、 一 応 の

容 の

握 の た め に

成 し た も の で あ る 。 『 最 後 潅

心 要

』 内

  序

 

  分       帰

( 仮 科

) 一

157

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(16)

『最後潅 頂常行心要法 』につ い て        第       一 本     四 三 ニ ー 章       N      、      、      、

二 章     一 、 二 、 第 三 章     一 、

の 即

成 仏 ( 四 門 分 別 )

成 仏

身 成 仏

身 成 仏

二 無 礙 の 即

 

1

、 教 相 分  

2

相 分

頂 の

二 教 の 理 ( 生 ・ 住 ・ 異 ・ 滅 の

)  

1

、 顕 乗 の 理  

2

、 密 宗 の 理

胎 成 仏 の 義  

1

、 日 月 輪 の 観

 

2

、 一 仏 二 明 王 の 習 い  

3

利 法 に 就 く  

4

、 出 胎 の

行 一

158

(17)

NII-Electronic Library Service 『最後潅頂常行心 要法

j

につ い て 二 、 三 、 四 、 五 、     六 、 第 四

    一 、     二 、

有 門 の

 

1

生 の 三 業  

2

、 金 剛 界 の 義  

3

、 胎 蔵 界 の 義

生 門 の 修 行  

1

有 相 の 三 密 門  

2

無 相 の 三 密 門 一

知 の 已

 

1

已 後 の 三 業  

2

、 迷

見 に 約 す  

3

、 十 界 平

の 三

五 位 の

 

1

、 赤

二  

2

、 五 七 日 の 次 第  

3

、 月

秘 密 秘

中 の 実 談

の 実

る 一 念 信 知 巳

の 悪 業 一

159

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(18)

『最後潅頂常行心要法』につ いて

    第

        五

1

章 、

他 の 成 仏  

1

相 の 三

 

2

相 の 三

    a 、 知 を 以 て

す    

b

、 性 を 以 て

と 為 す 一 期 の

生 の 二

 

1

生  

2

証 の

生   初 め に

と 帰

が あ り 、 本 論 が ほ ぼ 五

に 分 け ら れ よ

。   第 一 章 「 四

の 即

成 仏 ( 四 門 分

) 」 は 、

用 ・ 不 二

礙 の 四

の 即

成 仏 の

を 示 し て い る 。

め の 体 ・

・ 用 の 即

成 仏 と は 、 結 局 、 六 大

大 ・ 四 曼 相 大 ・ 三 密 用

の 三

有 門 に 於 て 捉 え 、 こ れ を

々 、

の 即 身 成 仏 、

身 成 仏 、 用 の 即

と 言 っ た も の と い え よ

。 そ こ で は

々 の 互 相

入 ・

尽 性 の

調 が

ら れ 、 そ こ に 衆 生 の

的 側 面 に

け る 仏

を 具 足 す る 根

え て い る と い え る 。 そ し て 四 の

二 無 礙 の

身 成 仏 は 、 更 に 教 理 分 と

分 と に 分 け ら れ 、 教 理 分 で は 、 理 具 ・

得 の 三 種 即

成 仏 説 を 挙 げ て は い る が 、 そ の 三 種 夫 々 に 体 ・ 相 ・ 用 を 具 す と し 、 ま た 理 具 に

・ 顕

し 、 加

に 理 具 ・ 顕

を 具 し 、 顕

に 理 具 ・ 加

す と い っ た 円 融 無 碍 の 立

の 理

を 示 し 、 専 ら 本 有 門 的 立 場 で

釈 を し て い る と 言 え 、 異 本 『 即

義 』 ( 17 ) の 理 一

160

(19)

NII-Electronic Library Service 『最 後潅頂 常行心 要法 』につ い て

と は

な っ て い る 。 空

以 降 の

言 宗 の 即

成 仏 理 解 は 、 異 本 『 即

義 』 の 成 立 の 後 、 こ れ に 説 か れ る 理 具 ・ 加

・ 顕

の 三

成 仏 説 に よ っ て い る も の が

い よ

に 思 わ れ る が 、 こ の 四

成 仏 説 は そ の 意 味 で ユ ニ ー ク な 理 解 の

方 で

る よ う に 思 わ れ る 。 ま た

相 分 で は 、

潅 頂 の

に 繋 が る 胎

第 を 以 て 即

成 仏 を

こ と を 述 べ て い る 。  

「 最

潅 頂 の 義 」 に

の 題

に も

げ ら れ る 「 最

」 に つ い て 述 べ て い る が 、 そ れ は 出 胎 の 形 を

も の で 、 こ れ が

証 成 仏 で あ り 、 そ の 後 は

生 の 働 き で あ る と す る 。  

づ 、 } 「 顕 密 二 教 の 理 ( 生 ・

・ 異 ・ 滅 の

) 」 で は 、 顕 密 二

の 夫 々 の 諸 法 に

す る

を 説 明 し 、

い で 二 「

生 処 胎 成 仏 の

」 で 、

か ら 出 生 す る ま で の 過 程 を

成 仏 の 過 程 と し て

べ き も の と し 、

瑞 師 の 問 題 と し た 胎 内 五 位 の

か れ る 。 詳 し く は

略 す る が 、         直 ち に

胎 の

を 以 て 、 即 ち 自 身

仏 の 思

す 。 最 初 、

頼 藍 の 位 よ り 、 下 、 諸 位 を 経 て 、 一       一 の

は 此 れ 則 ち 秘

幟 に 非 ざ る 莫 し 。 と い

に 、 人 が

胎 し 、 母 親 の

内 で 成 長

る 五 七 日 の 過 程 を 五 智 ・ 五 仏 ・ 五 相 成

想 し

即 仏 の 境 地 を

ん と す る も の で

る 。 こ こ で 妙 瑞

の 批

は 、 胎 内 の 五

な い で 出 生 す る も の は

仏 で

な い と い う

味 に 、 こ こ の 記 述 を

け 止 め て い る が

の 主

く ま で こ の

内 の 五

を 経 る 人 の 場 合 に は 、 こ れ を 以 て 自 身 即 仏 の 理 を

れ と い

も の で あ っ て 、 逆 に い

な ら ば

内 の 五

を 経 な い も の ( 卵 ・ 湿 ・ 化 生 の 衆 生 ) は 、 異 な る 次

即 仏 の 理 を

る こ と に な る も の で あ り 、 こ れ は

師 の 誤

と い え よ う 。   ま た こ の 「 胎 内 の 五

の 成 仏 」

に つ い て は 興 教

( 一 〇 九 五 〜

四 三 ) の 『 自 身 観 』 〔 −8 ) に も 同

な 説 が 見 ら れ 、         一 切

生 は

 

な り 。

 

一 切

情 は

な り 。

 

賢 菩 薩

 

自 体 に 遍

る が 故 に 。 有 情

廻 一

161

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

(20)

『最後 潅頂常行心要 法亅につ い て       し て

を 受 く る の

は 、

 

父 母 和

し 、

 

恚 現 前 し て 、 赤

二 滞

 

凝 滑 円 団 な り 。

 

識 の

 

託 し て 其       の 中 に 入 る 。

 

是 れ

羅 藍 に し て 、

 

現 在 の 初 位 な り 。

 

迷 え ば 則 ち 生 死

 

結 生 の 根

 

れ ば 則 ち 佛 法       法

の 源 底 な り 。   二 滴 は す な わ ち こ れ

 

蓮 華 の 理

 

二 心 は ま た

 

金 剛 の

慧 な り 。  

合 の 肉 色 と 、       入

の 識 支 と 、

 

こ れ を 両 部

 

互 い に 不 二 な る こ と あ り と

 

此 の 二 の 色 心

 

一 体 な れ ば 、

 

な わ       ち こ れ 南 方

 

の 薩

 

虚 空 と 日 月 と は 、

 

な り 。

 

六 大 四 曼

 

三 密

円 せ り 。

 

法 界       く

、 す な わ ち 心 佛 塔 な り 。

 

胎 内 の 五

  次

に 増 長 し

 

五 相 成

 

五 智 円 満 す 。

 

乃 至 出 体 の

 

生 長       の

の 初 位 と

 

因 果 不 二 に し て 、

 

し 種 と 果 と の ご と し 。

 

其 の

 

即 ち 同 き が ゆ え に 。 と あ る 。 中 野

慧 氏 は こ れ を 偽 撰 と 判 断 さ れ た よ

で あ る が 、 富 田 皸 順 師 は 『 打 聞

』 に 類 似 の 説 が あ る と し て 覚 鑁

と さ れ た よ

で あ る 。 即 ち 『 打

集 』 ( 19 ) に は         ま た い わ く 、

と は し ば ら く 胎 内 に 入 る

の 、

羅 藍

二 滞 和

の ご と し 。

の ご と く 円 形 な り 。      

色 は 瞋

の 色 、 白 色 は 慈 悲 の 色 な り 。 佛 心 は 大 慈 悲 を 体 と な す 、 ゆ え に そ の 色 白 し 。 『 菩

心 論 』 に 、

      心 の 中 に お い て 、 日 月 輪 を

ず と い う 。

白 二 楴 の 義 、 ま た こ れ

。 し か り と い え ど も 凡 夫 の

は 二

      合 し 、 成 佛 の

は た だ 白 色 な り 。 ゆ え に 佛 心 如 満 月 と い う 。 ま た 、 浄 白 淳

の 法 を 満 足 す と い

。 二 種 和 合       の 義 は 、 凡 夫

色 の 内 に 、 本 性 清

の 佛 性

る ゆ え に 、 二 種 和 合 し て 、 こ の

を 表 す 。 吾 具

内 に 、 大       悲 毘 盧 遮 那

子 あ

。 こ れ を

と 名 つ く 。 即 ち こ の 種 子 、

空 に 遍 ず る ゆ え に 、

点 を 置 き 、 円 満       の

を 表 す 。 ゆ え に こ の 点 を 円 点 と 名 つ く 。

ま た 圓 形 な り 。 圓

を 重 ね る

、 圓 圓

徳 を

す 。 こ の 圓       か な る 形 、

く 五 位 を 経 る 間 、

出 生 す と 。 こ れ は 三 味 耶 形 、 五

な り 。 こ の 卒

、 漸 漸

し       て 、 形 像 と 成 る 。 こ れ

の 位 の ご と し 。 こ れ を 種 子 三

形 と い

な り 。 と 見 ら れ る 。 こ れ ら の 所

は 、 殆 ど 本 書 の 最

頂 の 義

11

内 五 位 の 成 仏 説 と 同 じ で あ る と 言 え る 。

っ て 、 こ れ 一

162

(21)

NII-Electronic Library Service 『最後潅 頂常行 心要 法』につ いて ら の

鑁 の 撰 述 を 見 て も 、 胎 内 五 位 の 成 仏 説 そ の も の は 院 政

に ま で 遡 り 得 る よ う な も の で あ る と い え よ

。  

い で

三 章 「

」 と

「 最 極 秘

秘 密 中 の 実

」 で は 、

行 法 ( 又 は 常

心 要

) が 説 か れ る 。 こ れ は 成

の 中 で も

行 論 と い

べ き も の で 、 密

の 修

に 本 有 門 の 修

と 修 生 門 の

と を

け 、 本 有 門 で は 、 一 切 衆 生 の 三

の 所

は 全 て 三 密 行 に

な ら な い と い う 。

生 門 で は 、 こ れ を 更 に 有 相 の 三

門 と 無 相 の 三 密 門 と に 分 け 、

門 で は 、 一 印 を

べ ば 一 切 の

ぶ に 越 え 、 一 明 を 誦 せ ば 一 切 の 明 を 誦 す に 越

、 一 念 を 観 ず れ ば

量 定 に

習 す る に 勝 れ る と し 、 こ の

教 の

相 の 三

行 を

に し て 功

の 勝 れ て い る こ と の 最 た る も の と し 、

仏 も

生 も 容

い と し て い る 。 そ し て 「

の 三

の 行 と は 、 所

ゆ る

資 相

の 両 界

、 ま た 則 ち 別

等 の 種

相 。

ひ は 三 密 を

し 、 或 ひ は 二 密 に 随 ひ 、 或 ひ は 一 密 に

る 。 軌 模 階

し て

を 乱 せ ず 、

の 如 く

す る

是 れ な

。 」 と い い 、 一 密 ・ 二 密

が 見 ら れ 、 覚 鑁 の 『 五 輪 九

明 秘 密

釈 』 と の 比

ら れ な け れ ば な ら な い で

ろ う 。 ま た 無 相 の 三 密 門 で は 、 真

の 自

即 仏 の 理 を 一 念

知 し て 已

は 、 そ の 三

作 は

行 に な る と し 、 一 念

知 已 後 の 三

作 は 、 悪 業 も 三 密

で あ り 、 善 悪 の 強 劣 に よ っ て 悪

に 堕 す と し て も 、 そ の 地 獄 の

も 法 爾

起 の 曼

羅 心 の 苦 で あ っ て 、 秘

の 実

を 知 る が

に 、 悪

の 苦 を 秘 密 の

と 成 し て 、 自

に 流 入

る と し て い る 。   こ

い っ た 理 解 は 、 最 初 の 四

成 仏 説 な ど に 見 ら れ る

門 的 立

覚 思 想 を 徹

さ せ た 処 に 、

達 さ れ る 類 の も の で あ ろ

。 そ れ は 或 い は 、 本 覚 思

の 徹 底 の 上 に 展 開 し た 日

宗 の 口 伝 法 門 の 教 説 と の 関

、 特 に は そ の 前

互 の

と い っ た も の が

題 と さ れ る で あ ろ

が 、

は 取

わ な い 。 但 し 、 本 書 で は 「

し 、

を 以 て

す 。 若 し 信 根

き 者 は 縦 使 ひ

る と も 、 即 ち 悪

の 行 を 以 て 、

可 か ら ず 。 」 「 則

の 如 く の

門 は 、

め て 心

難 し 。 其 の 以 は 、 設 ひ 衆 罪 を 造 れ ど も 、 悉 く 善

と 成 る の

理 を

る の 人 は 至 て 稀 な り 。 縦 ひ 之 れ を

ず る 人 、 適 々

れ ど も 、 自 己 の

斉 を 顧 み ず 、 自 ら 恣 ま ま に 諸 々 の

を 造 る 。

等 の 一

163

一 N工工一Electronlc  Llbrary  

参照

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