肺癌患者におけるEGFR遺伝⼦子変異異検査の⼿手引き
第1.0版 2009年年3⽉月6⽇日
第1.7版 2009年年5⽉月11⽇日
第2版 2014年年2⽉月11⽇日
第2.1版 2014年年4⽉月14⽇日
⽬目次 第 2 版の序 ... 4 初版の序 ... 5 まとめ ... 6 はじめに ... 7 1. EGFR によるシグナル伝達 ... 7 2. EGFR 低分⼦子チロシンキナーゼ阻害剤 ... 8 3. EGFR 遺伝⼦子変異異 ... 8 4. EGFR 遺伝⼦子変異異と EGFR-‐‑‒TKI 感受性 ... 9 5. EGFR 変異異の種類と EGFR-‐‑‒TKI の奏効 ... 10 6. EGFR-‐‑‒TKI の臨臨床試験における EGFR 遺伝⼦子変異異の意義 ... 11 7. EGFR 遺伝⼦子変異異で選択された患者に対するファーストラインの臨臨床試験 ... 13 8. EGFR 野⽣生型における EGFR-‐‑‒TKI ... 14 9. 獲得耐性 ... 14 10. EGFR 遺伝⼦子検査の適応 ... 14 11. EGFR 遺伝⼦子検査の種類とその特徴 ... 15 1) 直接塩基配列列(ダイレクトシークエンス)法 ... 15 2) 変異異のスクリーニングが可能な⽅方法(未知の変異異の検出が可能) ... 15 a) PCR-‐‑‒SSCP 法 ... 15 b) Fragment(length)解析 ... 15 3) 特定の変異異の検出を⾼高感度度, 迅速に⾏行行う⽅方法. ... 16
a) PNA LNA PCR-‐‑‒Clamp 法 ... 16
b) PCR-‐‑‒Invader 法 ... 16 c) Cycleave 法 ... 16 d) therascreen®EGFR 変異異検出キット RGQ「キアゲン」 ... 17 e) コバス®EGFR 変異異検出キット ... 17 f) その他の遺伝⼦子検査 ... 17 g) EGFR 変異異特異異抗体 ... 18 h) 検査間の validation study ... 18 12. EGFR 遺伝⼦子検査に⽤用いられる臨臨床検体の特徴とそのとりあつかい ... 18 1)腫瘍部新鮮凍結材料料 ... 18 2) ホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE) ... 18
3) ⼿手術検体のパラフィン切切⽚片 ... 19 4) 胸⽔水, ⼼心嚢液 ... 19 5) 経気管⽀支擦過細胞, 経気管⽀支穿刺刺吸引細胞やリンパ節穿刺刺吸引細胞: ... 19 6) 喀痰・吸引痰・BAL ... 19 7) ⾎血液 ... 19 8) 検体の適正性の評価について ... 19 13. 保険診療療上の留留意点 ... 19 14. EGFR TKI のその他の効果予測因⼦子 ... 20 1) リガンドレベルの変化 ... 20 2) EGFR 遺伝⼦子増幅 ... 21 3) 他の HER ファミリー ... 21 4) その他の遺伝⼦子変化と TKI 感受性 ... 21 おわりに・・・実地診療療と EGFR 変異異 ... 21 付)CAP/IASLC/AMP ガイドラインのまとめ84 ... 23 ⽂文献 ... 26
第 2 版の序
この度度,「肺癌患者における EGFR 遺伝⼦子変異異検査の⼿手引き」第 2 版を公開することとなっ
た.2009 年年 5 ⽉月に第 1.7 版が出されて以来, 5 年年ぶりの改訂となる.この 5 年年間に ALK 融合蛋⽩白を
はじめとして多くの driver oncogene が発⾒見見され,これらに対する阻害薬の開発が進んでおり, 肺
癌のバイオマーカーと分⼦子標的治療療研究は常に興奮に満ちている. にもかかわらず, EGFR 遺伝⼦子
変異異は肺癌研究の中⼼心にあり続け,これに対する TKI は肺癌分⼦子標的治療療の主役としての位置にあ
り続けている. アジア⼈人における本遺伝⼦子の変異異頻度度の多さが要因の⼀一つである. さらに EFGR
TKI はいったん奏効しても⾼高頻度度に耐性化すること, その結果耐性機序に関する研究が進捗したこ
と, 解明された耐性機序がきわめて多岐に及ぶこと, さらに耐性を克服する治療療法と治療療薬が活発
に開発されていること等が⼤大きく影響している. まさに EGFR 遺伝⼦子変異異研究は, 学術的にも臨臨床
的にも多くの新知⾒見見を⽣生み出し, かつ肺腫瘍学の奥深さを具現している.
本⼿手引きにおいては, 肺癌学会の肺癌診療療ガイドラインとの整合性をとりつつ実診療療において
本検査を実施するに際しての適応, 検体の取扱, 保険診療療における注意点とコスト,結果の解釈な
ど具体的な内容を⽰示し, 適正かつわかりやすい⼿手引きとなっている. 第 1 版よりこの作成を⽴立立案
主導してきた光冨徹哉理理事と第 2 版作成に関わったバイオマーカー委員の諸⽒氏に敬意を表すると
共に, 本⼿手引きが診療療ガイドラインとならんで臨臨床現場における適正な診断治療療提供の⼀一助とな
ることを祈念念する.
2014 年年 3 ⽉月 28 ⽇日
⽇日本肺癌学会理理事⻑⾧長
中⻄西洋⼀一
初版の序
上⽪皮成⻑⾧長因⼦子受容体(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)は膜貫通型受容体チロシンキナ
ーゼであり, このチロシンキナーゼ領領域の活性化すなわちリン酸化が癌の増殖, 進展に関わるシ
グナル伝達に重要であると認識識されている. このような観点からEGFR は癌治療療の分⼦子標的とし
て注⽬目され, EGFR チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-‐‑‒TKI)や抗EGFR抗体等が開発された.
わが国においては EGFR-‐‑‒TKIの1つであるゲフィチニブが2002年年7⽉月, 世界に先駆け て承認され,
2007年年10⽉月には同種同効のエルロチニブも認可されている. 2009年年4 ⽉月現在までEGFR-‐‑‒TKI製剤
は8万5千⼈人を超す⾮非⼩小細胞肺癌患者の治療療に使われている. 腺癌, ⾮非喫煙者を中⼼心に劇的な効果
を⽰示す例例も経験される中, 科学的な効果予測因⼦子として EGFR 遺伝⼦子変異異が最も重要な因⼦子であ
ると, 少なくとも⽇日本を含めたアジアでは認識識されている. この様な背景から2007年年6⽉月にEGFR
遺伝⼦子変異異検査は保険収載されたものの本検査の実際について解説したものはなかった.
2009年年2⽉月26⽇日の⽇日本肺癌学会理理事会において, 光冨徹哉理理事より「肺癌患者における EGFR 遺
伝⼦子変異異検査の解説」の作成が提案され, 承認後, 僅か1ヶ⽉月余で本解説が完成した. これも光冨
理理事はじめ7名のEGFR 解説作成委員の労に負うこと⼤大であり, 深甚の敬意と謝意を捧げたい. な
お本書はEGFR遺伝⼦子変異異検査の解説にとどまらず, EGFR-‐‑‒TKI の臨臨床試験の結果や基礎的な最新
の知⾒見見等の解説も含まれており, 肺癌治療療医のみならず多くの医療療関係者に裨益することを期待
している.
2009年年5⽉月
⽇日本肺癌学会理理事⻑⾧長
⼀一瀬幸⼈人
初版執筆者
光冨徹哉, ⾕谷⽥田部恭, 萩原弘⼀一, 弦間昭彦, ⻄西尾和⼈人, 秋⽥田弘俊, 中川和彦
まとめ
EGFR 遺伝⼦子変異異検査の適応 l 薬物療療法を考慮している肺癌患者 l 少なくとも⼀一部は腺癌成分のある扁平上⽪皮癌, ⼩小細胞肺癌も適応. ⼩小⽣生検標本では腺癌成分 がないことを否定することは難しいので検査を⾏行行ってよい l 性別, 喫煙歴, ⼈人種などで検査不不適応を決めない 検体 l ホルマリン固定パラフィン包埋標本, 凍結切切⽚片標本, 細胞診検体, 胸⽔水などが使⽤用できる. いずれの場合も腫瘍細胞が存在していることを確認することが必須 検査⽅方法 l ダイレクト-‐‑‒シークエンシング以外の PCR を基本とする⾼高感度度法(SCORPIONtherascreen (ARMS), cycleave, PNA LNA clamp. PCR invader, コバス等ををもち いればどの⽅方法も感度度特異異度度に遜⾊色はない. ) l 2014. 1 現在体外診断薬承認は therascreen, コバスのみ. こちらを使⽤用すると 2500 点. それ以外の⽅方法をもちいると 2100 点が算定できる l ⼀一患者⼀一回のみの制限はなし 結果の解釈・・・すべての変異異が EGFR-‐‑‒TKI の効果を予測するものではない. l 感受性をあげる遺伝⼦子変異異(もっとも良良い適応) エクソン 19 ⽋欠失変異異, L858R l 感受性をあげるが上記よりはやや奏効率率率は劣劣ると考えられるもの G719X, エクソン 19 挿⼊入変異異, A763_̲Y764insFQEA, L861Q l 薬剤抵抗性をもたらす変異異 エクソン 20 挿⼊入変異異, D761Y, L747S(L747S 変異異ではゲフィチニブ耐性, エルロチニ ブ感受性と報告されている) l 意義不不明の変異異 多数あるがまれ EGFR-‐‑‒TKI の使⽤用については肺癌診療療ガイドラインを参考にする
はじめに 上⽪皮成⻑⾧長因⼦子受容体(EGFR)特異異的なチロシンキ ナーゼ阻害剤(TKI)であるゲフィチニブ(イレッサ®) が 2002 年年の夏に承認され, 2007 年年の末にはエルロチ ニブ(タルセバ®)が承認された. これらの薬物は化 学療療法の不不応例例にもしばしば劇的な臨臨床症状および画 像上の改善をもたらす. 2004 年年の春に肺癌における EGFR 遺 伝 ⼦子 の 突 然 変 異異 が 発 ⾒見見 さ れ , こ れ を 機 に EGFR-‐‑‒TKI の研究はおおいに加速することとなった1,2. この⼿手引きは肺がん臨臨床に携わる医師のために 2009 年年に作成されたが既に 5 年年が経過した. その間, EGFR 遺伝⼦子変異異で選択した患者に対する臨臨床試験の 結果が明らかとなり EGFR 遺伝⼦子変異異の効果予測因⼦子 としての意義が確⽴立立した. これをうけて EGFR-‐‑‒TKI 添 付⽂文書への EGFR 遺伝⼦子変異異の記載, EGFR 遺伝⼦子診断 の体外診断薬の承認などがなされた. また, 2014 年年に は第⼆二世代の EGFR-‐‑‒TKI であるアファチニブの承認が された. 肺癌学会バイオマーカー委員会ではこの領領域 の急速な進歩を鑑み今回⼿手引きの改訂を⾏行行った. 1. EGFR によるシグナル伝達 EGFR は HER ファミリーとよばれる 4 つのレセプタ ー 分 ⼦子 族 の ⼀一 員 で あ り , EGFR/HER1/erbB1, HER2/neu/erbB2, HER3/erbB3, HER4/erbB4 の 4 つの分⼦子からなっている. HER ファミリーの増殖因 ⼦子(リガンド)は 11 種知られているが, EGFR に特異異 的 に 結 合 す る グ ル ー プ ( EGF, TGFα, amphiregulin(AR)), EGFR と HER4 に結合するグル ープ(betacellulin(BTC), heparin-‐‑‒binding EGF (HB-‐‑‒ EGF), epiregulin), HER3, HER4 に結合するグルー プ(neuregulin(NRG) (別名 heregulin))の三つに⼤大 別できる. HER2 には対応するリガンドがないが, 常に リガンドが結合して活性化した状態に類似の構造をと っており, 後述するダイマーの相⼿手として選ばれやす い. ⼀一⽅方, HER3 はアミノ酸の置換によってチロシンキ ナーゼ活性を失っているが, Phosphatidylinositol 3-‐‑‒ kinase (PI3K)の調節サブユニットである p85 の結合 部位を多く有しておりダイマーの相⼿手として, 特に細 胞⽣生存に関わるシグナル伝達に重要である3,4.
リガンドが細胞外ドメインに結合すると, 同⼀一分⼦子 どうしでホモダイマーを形成したり, 他の HER ファミ リー分⼦子とヘテロダイマーを形成する. この場合 EGFR や HER4 どうしのホモダイマーの活性は低く, ヘテロ ダイマー特に HER2 とのヘテロダイマーの活性が⾼高い. この後細胞内ドメインのチロシンキナーゼ(TK)はお 互いのチロシン残基をリン酸化して活性化される(1). するとそのリン酸化部位に特異異的に種々のアダプター タンパク(PLCγ, aCBL, GRB2, SHC, p85 など) が結合し, さらに下流流の RAS-‐‑‒MAPK 経路路, PI3K-‐‑‒AKT 経路路, STAT 経路路などに伝えられる. そして, 増殖, ア ポトーシスの回避, ⾎血管新⽣生, 転移など, がん細胞にと って重要な表現型に寄与すると考えられている 3,4. EGFR の過剰発現は肺癌を含む種々の腫瘍で⾼高頻度度に 認められ, 予後にも関連するため, 分⼦子標的として注⽬目 されることとなった(図1〕. 2. EGFR 低分⼦子チロシンキナーゼ阻害剤 最初の EGFR-‐‑‒TKI であるゲフィチニブ(イレッサ®) はわが国では 2002 年年の夏に承認された. 当初から劇 的ともいうべき腫瘍縮⼩小効果が⼥女女性, ⾮非喫煙者, 腺癌を 中⼼心とした症例例にみとめられた. ゲフィチニブは EGFR 特異異的な可逆的 TKI であり, EGFR チロシンキナーゼに ATP と競合して結合するこ とでその阻害効果を発揮する. 2007 年年末に承認された エルロチニブ(タルセバ®)もまた EGFR 特異異的な可 逆的チロシンキナーゼ阻害剤である. ⼀一⽅方, 2014 年年 1 ⽉月 に 承 認 さ れ た ア フ ァ チ ニ ブ ( ジ オ ト リ フ ® ) は EGFR のみならず他の HER ファミリーも不不可逆的に阻 害するとされ, 第⼆二世代の EGFR-‐‑‒TKI に分類される. ゲフィチニブは最⼤大耐⽤用量量(MTD)700mg/⽇日であっ たが, ランダム化第⼆二相試験で 250mg と 500mg が⽐比 較された際, 有害事象は明らかに 500mg に⾼高頻度度で あったが, 抗腫瘍効果は同等であったことから 250mg が推奨量量として以後⽤用いられた 5,6. ⼀一⽅方, エルロチニ ブは MTD150mg がそのまま推奨量量として⽤用いられて おり, これらの⽤用量量で⽤用いられた場合ゲフィチニブの トラフ値は 0.4μM であるのに対してエルロチニブは 3.5μM と報告されている 7. このことを反映してか⽪皮 疹や下痢痢などの有害事象はエルロチニブの⽅方に頻度度が ⾼高い. アファチニブの第Ⅰ相試験における MTD は 50mg/⽇日, 承認⽤用量量は 50mg/⽇日であるが, 本剤の有害 事象は⼀一般にエルロチニブよりも⾼高頻度度かつ重篤な傾 向であり, 適切切な休薬・減量量や対症療療法が重要である 8. EGFR-‐‑‒TKI で⽣生じる最も重篤な副作⽤用である致死的 な急性肺障害は, ゲフィチニブ承認直後から多数症例例 で明らかとなり⼤大きな社会問題となった. その発症頻 度度は 4-‐‑‒6%で, 発症者の死亡率率率はおよそ 30%であった 9. この肺障害は不不思議なことに欧⽶米のみならずアジア の他の国でも⽇日本ほど問題となっていないようである が, 台湾の⼩小規模な検討では 5.8%という発症率率率が報告 されている 10. ⻄西⽇日本胸部臨臨床腫瘍研究機構(WJTOG) がおこなった 1976 例例のゲフィチニブ投与患者の後ろ 向き調査での臨臨床背景別肺障害の発症率率率は全体で 3. 5%, 死亡率率率 1.6%であった. 臨臨床背景別の発症率率率は男 性 5.8%, ⼥女女性 1.0%, ⾮非喫煙者 0.8%, 喫煙者 6. 2%, 既存の間質性肺炎あり 13. 9%, なし 3.8%等 であった 9. なお, アストラゼネカ社が⾏行行ったコホート 内ケースコントロールスタディによるとゲフィチニブ による肺障害は⼀一般の化学療療法剤より⾼高頻度度で, オッ ズ⽐比は約 3 倍であった. 喫煙者, 既存の間質影をもつ 患者, PS 不不良良, 正常肺占有率率率低下, 55 歳以上, ⼼心⾎血管 系合併症などがリスク因⼦子であるが, ゲフィチニブに 特有なリスク因⼦子は⾒見見いだされなかった 11. ⼀一⽅方, エ ルロチニブのわが国での特定使⽤用成績調査(全例例調査) の最終結果でも, 肺障害の発⽣生頻度度は 9909 例例中 429 例例(4.33%), 死亡例例 153 例例(1.54%)とゲフィチニブ と同程度度の結果が⽰示された. 12 3. EGFR 遺伝⼦子変異異 2004 年年に EGFR 遺伝⼦子チロシンキナーゼドメイン の変異異がゲフィチニブの奏効率率率が⾼高かった肺癌に多く みられることが報告され, また in vitro でもゲフィチニ ブの感受性との関連が証明された 1,2. EGFR 遺伝⼦子変 異異は細胞内のチロシンキナーゼドメインの中でもエク ソン 18-‐‑‒21 の領領域に集中している. COSMIC データベ ースに登録されている 13186 例例のエクソン 18-‐‑‒21 の 変異異をみてみると, 特に頻度度が⾼高いものはエクソン 19 のコドン 746-‐‑‒750 の 5 つのアミノ酸(ELREA)を中
⼼心とする部位の⽋欠失変異異とエクソン 21 のコドン 858 においてロイシンからアルギニンに変化する(L858R) 点突然変異異であることがわかる脚注1(図2). しかし, エ クソン 19 ⽋欠失変異異には⽋欠失アミノ酸の個数や, アミノ 酸置換を伴うものなど, ⾮非常に多くのバリエーション があるが, E746-‐‑‒A750 の単純⽋欠失が最も多く, L747-‐‑‒ E753 ⽋欠失に S が挿⼊入されたもの, L747-‐‑‒E750 ⽋欠失に P が挿⼊入, L747-‐‑‒E751 ⽋欠失が続いている. その他エク ソン 18 の E709K E709A, コドン 719 の点突然変異異 (G719X, アミノ酸が C, S, A の場合がありまとめて X と表す), エクソン 20 の S768I, 挿⼊入変異異, エクソ ン 21 の L861Q などが認められる. このほかに⾮非常に 多くのまれな突然変異異が報告されている. またとくに 点突然変異異は同時に複数起こることがしばしばあるが, COSMIC ではそれぞれ単独の変異異としてカウントされ ているようである. 耐性に関わる T90M 変異異は 6%弱 t と⾼高頻度度に認められたとされているが, これは耐性症 例例の解析も含まれているためと思われる(11 ⾴頁参照). 第⼆二相試験の段階から EGFR-‐‑‒TKI の臨臨床効果は⼥女女性, ⾮非喫煙者, 腺癌, 東洋⼈人に⾼高いということが知られてい たが, EGFR の遺伝⼦子変異異も肺癌の患者としては特異異な これらの集団に頻度度が⾼高い. これまでに報告された 2880 例例を対象とした 13 の研究における EGFR 遺伝 ⼦子変異異の頻度度は, 東洋⼈人(32%), ⾮非東洋⼈人(7%), 男性(10%), ⼥女女性(38%), ⾮非喫煙者(47%), 喫煙 者(7%), 腺癌(30%), ⾮非腺癌(2%)など臨臨床背 景に強く関連していることがわかる 13. 愛知県がんセ ンターの検討によると組織型, 性別, 喫煙のうち独⽴立立し て EGFR 遺伝⼦子変異異にかかわっているのは組織型と喫 煙であった 14. ⼥女女性肺癌はほとんど⾮非喫煙者の腺癌で あることから⼥女女性, ⾮非喫煙, 腺癌と三つの条件を重ねて も変異異頻度度は 63%程度度にとどまる. ⼀一⽅方, 男性喫煙者 でも腺癌であればかなりの確率率率で EGFR 遺伝⼦子変異異が 存在した. ⼀一⽅方, 男性喫煙者⾮非腺癌では EGFR 変異異は 132 例例中 2 例例にすぎなかった. 組織学的には腺癌に多いが, 未分化な腺癌で⼤大細胞 癌とも⾒見見なされるような症例例, 腺扁平上⽪皮癌15 脚注2, ⼩小 細胞癌16(とくに腺癌との combined type)などでも EGFR 変異異はしばしば検出される. 腺癌の亜型別にみる と , 細 気 管 ⽀支 肺 胞 上 ⽪皮 癌 (BAC)の 成 分 を も つ 腺 癌 , 17TTF-‐‑‒1 やサーファクタントを発現しているような肺 癌に頻度度が⾼高い(50-‐‑‒65%)18 脚注3. なおこのタイプの腺 がんは IASLC/ATS/ERS で提案されている新分類では invasive adenocarcinoma, lepidic predominant と 分類されるようになり BAC の名称は今後⽤用いないよう にされた. 4. EGFR 遺伝⼦子変異異と EGFR-‐‑‒TKI 感受性 ⼀一般に EGFR 遺伝⼦子変異異がおこると EGFR はリガン ドの結合なしにリン酸化されて活性化され, がん細胞 はその増殖や⽣生存がこの経路路に依存した状態となる (oncogene addiction). それに加え, EGFR-‐‑‒TKI の EGFR への親和性が ATP の EGFR への親和性を⼤大きく 上回り, EGFR-‐‑‒TKI が競合阻害作⽤用を発揮する原因とな っている. 19
2 Toyooka らによる検討では腺扁平上⽪皮癌 11 例例中の EGFR 遺伝⼦子変異異頻度度は 3 例例(27%)であり,1 例例に KRAS 変異異を認 めた.⼀一⽅方,Tatematsu らによる⼩小細胞癌の検討では EGFR 変 異異は 5/122 であったが, 腺癌との combined type に限ると 3/15(20%)であった.これらの場合 EGFR 変異異は扁平上⽪皮癌 や⼩小細胞癌の成分にも同様に存在しており,EGFR-‐‑‒TKI の奏効 も期待できる 3 Yatabe らは BAC 成分、TTF1 あるいはサーファクタントの
EGFR 変異異と奏効に関連する初期の 1335 例例の報告 をまとめてみると, EGFR に変異異を有する肺癌 526 例例 中 377 例例(72%)に TKI が奏効する⼀一⽅方, 変異異がない 肺癌 809 例例では 80 例例(10%)に奏効するのにすぎな い20. また, EGFR 変異異を有する症例例でゲフィチニブ服 ⽤用後の⽣生存期間が有意に延⻑⾧長しているとするものが多 い21,22. EGFR 遺伝⼦子変異異陽性患者に対するわが国の 7 つの前向き解析の統合解析である I-‐‑‒CAMP でも, 全体 での奏効率率率は 148 例例中 76.4%であった 23. ⼀一⽅方, EGFR 遺伝⼦子変異異を有しない症例例の EGFR-‐‑‒TKI の奏効 率率率は~∼10%と報告されているが 20, この中には EGFR 遺伝⼦子検査そのものに問題があって変異異が検出されな かったものもはいっていると考えられるので, 解釈は 難しい. 5. EGFR 変異異の種類と EGFR-‐‑‒TKI の奏効 変異異の種類によっても EGFR-‐‑‒TKI の有効性が異異なる. 初期の検討をまとめてみるとエクソン 19 の⽋欠失変異異の 奏効率率率は 81%であるのに対して, L858R は 71%であ り, G719X は 56%である 13. 特記すべきは 7 例例のエ クソン 20 の挿⼊入変異異を有する症例例では奏効例例がないこ とである13. 最も⾼高頻度度なエクソン 19 の⽋欠失と L858R 変異異の EGFR-‐‑‒TKI 奏効に関する違いについては多くの検討が あるが最終結論論には⾄至っていない. 上述のように奏効 率率率はエクソン 19 ⽋欠失変異異に⾼高い傾向がある. また OS についても Riely らは 34 ヶ⽉月対 8 ヶ⽉月24, Jackman らは 30.8 ヶ⽉月対 14.8 ヶ⽉月と⼤大きな差を認めている. またエルロチニブの III 相試験である OPTIMAL 試験25, EURTAC 試験26ではそれぞれ 15.3 ヶ⽉月対 12.5 ヶ⽉月, 11.0 ヶ⽉月対 8.4 ヶ⽉月であった. ⼀一⽅方, わが国の⼆二つの ゲフィチニブの第 III 相試験である NEJ002 と WJOG3405 ではそのような差を認めていない〔11.5 ヶ⽉月対 10.8 ヶ⽉月および 9.0 ヶ⽉月対 9.6 ヶ⽉月〕27,28
.
⼀一⽅方, わが国で⾏行行われた EGFR 変異異陽性患者に対する エルロチニブの第 II 相試験ではエクソン 19 ⽋欠失と L858R に対する奏効率率率と PFS はそれぞれ, 84%, 12. 5 ヶ⽉月, 76%, 11.0 ヶ⽉月と差を認めた. 従って, この乖 離離の原因の少なくとも⼀一部はふたつの TKI の差に関連 している可能性があり, in vitro での⼆二つの変異異に対す る IC50 値の差はエルロチニブの⽅方が⼤大きい1,29という 事実はこの可能性を⽀支持している. しかしエルロチニ ブ:ゲフィチニブは Riely らの研究では 12:22, Jackman らは 56:28 であり, 必ずしも TKI の差のみ でも説明できない. G719 変異異についての最近の検討では単独変異異で 4PR, 1SD, 3PD. 他のマイナー変異異 との複合変異異では3PR, 1PD と報告されており, 全体 での奏効率率率は 7/12 で 58%ということになり, やはり エクソン 19 ⽋欠失などに⽐比べるとやや奏効が悪い傾向が ある. 30 L861Q 変異異もまれに⾒見見られる変異異であるが 同論論⽂文によるとこの奏効は4PR, 1SD, 1PD であり, 感受性を増す変異異と考えて良良いであろう30.
⼀一⽅方、ア ファチニブ投与患者における 18 例例の G719 変異異患者 の奏効率率率、PFS,OS はそれぞれ 78%, 13.8 ヶ⽉月と通常 の変異異と同等の効果が報告されている.31
全 EGFR 変異異の約1%はエクソン 19 の挿⼊入変異異で あ り , 多 く は ELREA の 前 の 7 個 の ア ミ ノ 酸 (KIPVAIK)が重複して挿⼊入されるものか 2 番⽬目の I が V や T に変異異するものもある. この変異異は in vitro で EGFR-‐‑‒TKI 感受性であり, また臨臨床例例でも奏効が得ら れることから sensitizing mutation の⼀一つと考えてよ い32. エクソン 20 の変異異については最近の総説によると EGFR 変異異全体の 4%を占める. 33多くは種々の位置の 挿⼊入変異異であるが特にコドン 767, 768, 770, 772, 773 に影響する変異異においては第⼀一世代第⼆二世代の EGFR-‐‑‒TK の奏効は期待しがたくしたがって通常の化学 療療法を施⾏行行すべきであるとされている 33. これらの変 異異では EGFR は活性化されるが EGFR-‐‑‒TKI への親和性 が上昇しないことが奏効が得られない理理由であること が⽰示されている34. ただし, エクソン 20 挿⼊入変異異の中 でも A763_̲Y764insFQEA(COSMIC によると頻度度は 0. 1%以下)のみは感受性変異異と報告されている 34. また, 後述する獲得耐性の原因として最も多いいわゆ るゲートキーパー変異異といわれる T790M が EGFR-‐‑‒ TKI 治療療前から存在することが報告されている. 頻度度 は検査感度度に依存しており, ダイレクトシーケンシン グをもちいると1~∼3%35の症例例に存在し, この場合 TKI の奏効は期待しがたい. しかし, ⾼高感度度の assay を⽤用いると T790M は 10/26 例例に存在するとの報告も ありこれらの症例例の PFS7. 7 ヶ⽉月は T790M のない症 例例の 16. 5 ヶ⽉月より短いが全く奏効しないわけでもな いようである36. in vitro の data では T790M 変異異細 胞が全体の 25%以上の割合になると TKI への感受性が 低下してくるとされており 37, 少量量の T790M 細胞が 治療療によって選択されるにつれて症例例としての耐性を しめすと理理解できる. また, もっとまれに肺癌多発家系 に胚細胞変異異として存在した例例も報告されている 38. T790M 単独でもマウスに肺癌を⽣生じさせることも明ら かとなっており 39, 耐性のみでなく癌遺伝⼦子としての 機能も担っていることが⽰示されている. なお, EGFR 遺伝⼦子変異異についての報告例例のまとめは Vanderbilt ⼤大学の William Pao らが運営している website My Cancer genome (http://www. mycancergenome.org/content/disease/lung-cancer/egfr/1)も参考にすることができる. 6. EGFR-‐‑‒TKI の臨臨床試験における EGFR 遺伝⼦子変 異異の意義 EGFR-‐‑‒TKI を含んだ第 Ⅲ 相⽐比較試験では, negative な結果が続いた. まず, TKI の標準化学療療法への上乗せ 効果および延命効果をみた四つの臨臨床試験ではいずれ も negative であった 40-‐‑‒43. TRIBUTE 試験の⼀一部の症 例例でも EGFR 遺伝⼦子解析がおこなわれているが, EGFR 変異異は予後良良好因⼦子でありエルロチニブの効果予測因 ⼦子ではないとされた44. 次いで, ゲフィチニブ(ISEL 試 験 45)あるいはエルロチニブ(BR.21 試験) 46と best supportive care の⽐比較試験が⾏行行われたが, BR. 21 試 験のみで TKI の延命効果が⽰示された.
セカンドライン以降降でのドセタキセルとの⽐比較試験 において, 国内の V15-‐‑‒32 試験はゲフィチニブの⾮非劣劣 性が証明されず 47, 海外での INTERST 試験では⾮非劣劣 性が証明された 48. これらのサブ解析では INTEREST において EGFR 変異異が陽性では無増悪⽣生存期間(PFS) がゲフィチニブの⽅方が化学療療法より⻑⾧長かったが全⽣生存 期間(OS)の差は認められなかった 49. V15-‐‑‒32 では全 体に EGFR 変異異を有する患者の予後が良良好であったが, ドセタキセルとゲフィチニブの差は認められなかった 50. これらの解析はいずれも全症例例中のごく⼀一部が後ろ むきに解析されており,しかも⼀一貫した結果ではないた め解釈は困難であった. ゲフィチニブを化学療療法後に逐次的に使⽤用するか否 かの第 III 相試験(WJTOG0203)では, 全症例例について は有意な延命効果は⽰示されなかったが, 腺癌では有意 な延命が⽰示された⼀一⽅方, ⾮非喫煙者サブセットでは全体 の⽣生存は良良好であるが⼆二群間の有意差はなかった. ゲ フィチニブ群で実際にゲフィチニブが投与されたのは 57%しかなかった⼀一⽅方, 化学療療法群の 51%さらに⾮非喫 煙者の化学療療法群では 76%に後治療療としてゲフィチニ ブが投与されており, 解釈の難しい試験となっている 51. 先に述べた I-‐‑‒CAMP では 87 例例がファーストライン として 61 例例がセカンドライン以降降にゲフィチニブを投 与されていた. そこでファーストラインにおいてゲフ ィチニブと化学療療法を⽐比較したところ PFS の中央値は 10. 7 ヶ⽉月対 6. 0 ヶ⽉月であったが, OS には有意差はな かった(27.2 対 25.7 ヶ⽉月)23. これらは RCT ではな いものの, EGFR 変異異が効果予測因⼦子であることを強く ⽰示唆している. これらの混沌とした状況に終⽌止符を打ったのは, ア ジアで⾏行行われたカルボプラチン+パクリタキセル対ゲ フィチニブの第Ⅲ相試験 IPASS である52. 本試験では, ⾮非-‐‑‒軽喫煙歴の腺癌症例例を対象にゲフィチニブの無増悪 ⽣生存期間(PFS)における優越性が検証されたが, 試験 全体において統計学的にはゲフィチニブの優越性が⽰示 されたものの, 両群の PFS 曲線が交差する解釈が難し い結果が⽰示された.しかし, EGFR 遺伝⼦子変異異別のサブ セット解析にて、EGFR 変異異陽性例例ではゲフィチニブ 群が明らかに化学療療法群に勝り(HR=0.48), ⼀一⽅方 の EGFR 変異異陰性群では全く逆の結果となったことか ら(HR=2.85, EGFR-‐‑‒TKI の患者選択マーカーとして は臨臨床因⼦子より EGFR 変異異の⽅方が明らかに重要である ことが⽰示唆された(表1).
7. EGFR 遺伝⼦子変異異で選択された患者に対するファ ーストラインの臨臨床試験 IPASS や韓国で⾏行行われた First-‐‑‒Signal 試験53のよう な臨臨床因⼦子(腺癌, ⾮非喫煙者)ではなく, EGFR 遺伝⼦子 変異異そのもので患者選択をした第 Ⅲ 相試験の結果は, まずわが国から世界に先駆けて報告された〔表 1〕. NEJ002 試験はゲフィチニブとカルボプラチン+パクリ タキセルとの⽐比較を, WJTOG3405 試験はゲフィチニ ブとシスプラチン+ドセタキセルとの⽐比較を, いずれも EGFR 変異異陽性例例のみを対象に PFS を主要評価項⽬目と して計画され, 両試験とも中間解析の段階でゲフィチ ニブ群の優越性が証明されている 27,28. その後, エル ロチニブとプラチナ併⽤用療療法との⽐比較試験として中国 から OPTIMAL 試験25, 欧州からは EURTAC 試験が報 告され 26, さらにアファチニブとプラチナ併⽤用療療法と の⽐比較試験も 2 つ報告されている 54,55. いずれの試験 も EGFR 変異異陽性例例に対しては EGFR-‐‑‒TKI が初回治療療 として有意に優れた PFS の延⻑⾧長効果を⽰示し, 現在の初 回標準療療法と考えられる(表 1). なお, 複数存在する EGFR-‐‑‒TKI の効果の優劣劣は現時点では明らかではなく, ⽪皮疹や下痢痢などの有害事象の頻度度としてはゲフィチニ ブ, エルロチニブ, アファチニブの順で多いことが知ら れている〔表 2〕. それらの有効性と安全性のバランス を含めた優劣劣の判断には前向き⽐比較試験での結果が重 要とされ, ゲフィチニブとエルロチニブとの⽐比較試験 (WJOG5108L)やゲフィチニブとアファチニブとの ⽐比較試験(LUX-‐‑‒Lung 7)等の結果が待たれる. なお, 先述の IPASS から OPTIMAL までの試験で⽰示 されている全⽣生存期間では EGFR-‐‑‒TKI 群と化学療療法群 と で 有 意 差 を 認 め な い の は , 化 学 療療 法 群 に お い て EGFR-‐‑‒TKI のクロスオーバーが許容されていたためで ある. NEJ002, WJTOG3405, OPTIMAL の事後解析で は, 全ての治療療期間において EGFR-‐‑‒TKI とプラチナ製 剤のいずれも投与された群と, どちらか⼀一⽅方のみを投 与された群の全⽣生存期間を⽐比較した結果, EGFR-‐‑‒TKI 治 療療を⼀一度度も投与されていない群は他の 2 群(EGFR-‐‑‒ TKI が投与された群)より明らかに全⽣生存期間が短い ことが⽰示されている 56-‐‑‒58. また, ゲフィチニブ承認前 の 1999-‐‑‒2001 に治療療を開始した肺癌患者(15%がゲ フィチニブを服⽤用)と承認後の 2002-‐‑‒2004 に治療療を 開始した肺癌患者(91%がゲフィチニブを使⽤用)の⽣生 存期間を⽐比較したレトロスペクティブ解析では, EGFR 変異異陽性の 2002-‐‑‒2004 群が MST 27.2 ヶ⽉月であり, 他の三群はみな⼀一年年前後であったことも EGFR 変異異陽
性例例における EGFR-‐‑‒TKI の⽣生存期間延⻑⾧長効果を⽰示唆す る重要な結果といえる59. 8. EGFR 野⽣生型における EGFR-‐‑‒TKI ⼀一⽅方, BR. 21 試験の結果からは EGFR 変異異陰性例例で あっても EGFR-‐‑‒TKI の有⽤用性があると認識識され, 特に エルロチニブについては現時点でも⼆二次治療療における 標準療療法の 1 つとされている. しかし. 最近報告され た EGFR 変異異陰性例例を対象とした第 Ⅲ 相試験では, エ ルロチニブは, ドセタキセルよりは明らかに劣劣る結果 が⽰示されている. まず, EGFR 野⽣生型肺がんを対照にエ ルロチニブとドセタキセルを⽐比較した TAILOR 試験に おいてドセタキセルのあきらかな優位性が⽰示されてい る(HR 0.70, P=0. 016)60. また, わが国で⾏行行われた, EGFR 野⽣生型症例例を中⼼心としたセカンドあるいはサー ドライン治療療におけるエルロチニブとドセタキセルの 第 III 相試験でも EGFR 野⽣生型のサブセットにおいて はエルロチニブの PFS は 1. 3 ヶ⽉月とドセタキセルの 2. 9 ヶ⽉月より有意に短かった61. OS には有意差はなかっ たが, わが国においては急性肺障害のリスクもふまえ たうえで少なくとも三次治療療以降降に⽤用いるのが妥当い えよう. 9. 獲得耐性 臨臨床上の⼤大きな問題として, ゲフィチニブに初期に は奏効したほとんど全ての症例例が, 後には抵抗性とな ることがある. このような症例例の約半数以上にもとも との⽋欠失や L858R などの感受性をあげている遺伝⼦子変 異異に加えて, コドン 790 のスレオニンからメチオニン への変異異(T790M)が⼆二次的に加わっている 62,63. そ のほかに L747S64, D761Y65, T854A66も獲得耐性 の原因として報告されているが, 頻度度が⾮非常に低く臨臨 床的意義は⾼高いとはいえない. ゲートキーパー変異異と 呼ばれるこのような変異異が起こると, EGFR-‐‑‒TKI の EGFR への親和性が ATP のそれより弱まることが耐性 化の原因であり, がん細胞の EGFR 依存性はまだ保た れているので異異なった結合プロファイルをもつ EGFR-‐‑‒ TKI は有効であることが期待される. 残りの症例例の多くはバイパストラックと⾔言われるメ カニズムであり, EGFR-‐‑‒TKI は EGFR のシグナルを遮 断しているのにも関わらず新たなキナーゼが活性化さ れて下流流のパスウエイが活性化されるものである. こ の代表は MET 遺伝⼦子増幅 67,68であり, これが EGFR を介さず ERBB3 を活性化することがそのメカニズム である. 当初は耐性の 20%を占めると報告されたが, その後の検討では 5%以下であることが繰り返し⽰示さ れている 69,70. その他のバイパスメカニズムとしては HER2 増幅71, HGF 過剰発現72, CRKL 遺伝⼦子増幅73, PI3K 遺伝⼦子変異異 69, BRAF 変異異 74, MAPK1 増幅 75, PTEN 発現喪失 76,77などがある. さらに, ⼩小細胞肺癌 トランスフォーメーション 69, 上⽪皮間葉葉移⾏行行 78の関与 もしめされ, そのメカニズムとしては, AXL 活性化 79, MED12 発現低下 80, TGFb-‐‑‒IL6 81等が報告されてい る. 耐性への対応としては現時点では化学療療法への切切り 替えを考慮することが⼀一般的であるが, RECIST での PD よりもより臨臨床的に意味のある PD(症状の増悪, 新病変の出現など)を機に切切り替えることが多いよう である. 新しい試みとしては増悪後にも TKI を継続し ながら化学療療法を併⽤用する治療療戦略略(beyond PD)が 理理論論上は有効とされており37, IMPRESS 試験(ゲフィ チニブ治療療中の増悪時にシスプラチン+ペメトレキセ ドを追加することの意義を検証する第 Ⅲ 相試験)など 複数の臨臨床試験の結果が待たれる. また, TKI への耐性 化の機序として最も頻度度が⾼高い(約 50%)とされる T790M 変異異の発現に対して, 野⽣生型の抑制なく同変異異 を特異異的に阻害する第三世代の EGFR-‐‑‒TKI も複数開発 が進んでいる82. 将来的には, EGFR-‐‑‒TKI 耐性出現時な どに再び遺伝⼦子検査を⾏行行って, そのメカニズムに応じ た治療療選択が可能となることが予測される. 10. EGFR 遺伝⼦子検査の適応 EGFR 遺 伝 ⼦子 変 異異 は 肺 腺 癌 特 異異 的 に 認 め ら れ る EGFR-‐‑‒TKIの効果予測因⼦子であるので, EGFR遺伝⼦子検 査は薬物治療療を考慮している腺癌患者が最もよい適応 である. ⾮非喫煙者, ⼥女女性, といった臨臨床背景をもつ患者 に相対的に⾼高頻度度であるが, 絶対的なものではなく男 性や喫煙者という理理由で検査を施⾏行行しないのは誤りで
ある. 組織型については腺扁平上⽪皮癌, ⼤大細胞癌と診断 される可能性がある未分化な腺癌, それに⼩小細胞癌で も報告例例があるが, 標本の⼀一部に腺癌成分がある場合 が殆どであるので, 腺癌成分のある肺癌は検査の適応 がある. したがって外科切切除標本でどこにも腺癌成分 のない扁平上⽪皮癌などでEGFR変異異があることはまずな く適応から外すことは妥当である. ⼀一⽅方, ⼩小さな⽣生検や 細胞診検体では腫瘍全体の評価はできておらず, これ らが扁平上⽪皮癌や⼩小細胞肺癌であってもEGFR検査を施 ⾏行行することは妥当である. またひとつの検体の中の heterogeneity についてはあ るとするものないとするもの様々な報告があるが, Yatabe らの詳細な解析により否定されたと考えて良良い であろう83. すなわち, EGFR 変異異は腫瘍化のきわめて 早期に獲得されると考えられており, EGFR-‐‑‒TKI による 治療療前であれば, 腫瘍細胞に均⼀一に分布している. 同様 に, 原発巣と転移巣, 原発巣と再発病巣における EGFR 遺伝⼦子変異異状態が異異なることもきわめて稀であること が⽰示されている83. 原発巣/再発巣のいずれも EGFR 変 異異検査が可能であれば, 腫瘍細胞量量, DNA の保持状態 でどちらを⽤用いるか判断すべきである. ただし, 多発性 で明らかに別々の肺腺癌に対しては重複癌の可能性を 考慮し, それぞれの腫瘍について検討を⾏行行うことは意 味がないとはいえない. EGFR-‐‑‒TKI 治療療後に出現した腫瘍に対してどのように EGFR 変異異検査を施⾏行行するかについては, 研究の段階に あり, ⼀一定のコンセンサスに到達しているとはいえな い. しかしながら, 獲得耐性変異異である T790M は, 耐 性機序の半分以上を占め, 治療療戦略略についての再考を ⾏行行う所⾒見見の⼀一つである 84. この変異異アレルは野⽣生型ア レルに⽐比較して少ないことが多く, 少なくとも 5%の感 度度を持った⽅方法を⽤用いて検討する必要がある. 11. EGFR 遺伝⼦子検査の種類とその特徴 1) 直接塩基配列列(ダイレクトシークエンス)法 DNA 合成反応の際に DNA 鎖の原料料となる dATP, dGTP, dCTP, dTTP ( 総 称 し て dNTP) に 加 え て dideoxy NTP(ddNTP)を加えておくと, それが取り込 まれたところで DNA 鎖の伸⻑⾧長が停⽌止することを利利⽤用し て塩基配列列決定をおこなう(Sanger 法). 今⽇日では蛍 光ラベルを⽤用いて機械化されている. 通常は数時間で 300 塩基ほどの配列列を決定できる. 変異異アレルが 10% 以上あることが必要で感度度はあまり良良好でないが, 変 異異検索索の基本となる⽅方法である. しかしながら, 感度度の増加, コストの減少, 解析時間 の短縮, 処理理検体数の増加などのためPCRをベースと した多数の⽅方法が開発されて臨臨床検体の検査にダイレ クトシークエンス法を⽤用いることは本邦ではほとんど なくなった. PCRベースの⽅方法はきわめて多くのものが 研究⽬目的を主体として開発されてきた, その⽐比較を表3 に⽰示す. 2) 変異異のスクリーニングが可能な⽅方法(未知の変異異 の検出が可能) a) PCR-‐‑‒SSCP 法 ⼀一本鎖DNA断⽚片の塩基配列列特異異的な⾼高次構造による 電気泳動距離離の差により変異異の有無を検出する⽅方法. b) Fragment(length)解析 解析対象の領領域をPCRで増幅し, PCR産物の⻑⾧長さを genetic analyzerで検討する. エクソン19の⽋欠失変異異 やエクソン20の挿⼊入変異異では変異異によってDNAの⻑⾧長さ