モニタ リング ・システムと情報の価値
鵜 野 好 文
目 次
は じめに
Ⅰ エー ジェンシーの基本 モデル
Ⅱ 意思決定 と情報の役割
Ⅱ
モニ タ リング ・システムと情報の価値 おわ りに
は じめに
集権か分権かの論議 は経営学が長年 にわた って直面 して きた重要な課題であ る。 コンティンジェンシー理論 は, この論議 に,当該組織を取 り巻 く環境の状 況により,適合的組織構造が決まると結論づ けることで解答を引き出そ うとし た。すなわち,不確実な環境下では,組織の情報処理量 は膨大 となると考え ら れるため,情報処理能力の高い分権組織が適合的であ り,他方,確実な環境下 では,組織の情報処理量 はさほど膨大でないと考え られ るため,情報処理能力 の相対的に低い集権組織が適合的であるとしている。 しか し, これ らの結論 に いたる理論的根拠 はさほど十分 とはいえない。特に,情報のコ ミュニケーシ ョ
ン ・コス トおよび意思決定権限の委譲にともなう損失を考慮にいれた ものでは ない。
* 土曜研究会での有益 なコメン トに感謝致 します。むろん,ありうべ き誤謬は筆者の責 任に帰す るものです。
〔407〕
408
商 学 討 究 第42巻 第 2・3 号
組織では,通常, トップ ・マネ ジメ ン トが意思決定の役割を担い,第一線の 従業員が課業の遂行の役割を担 っている。そ して,意思決定および課業の遂行 に必要 な情報 は従業員のあいだに蓄積 されているといえ る。意思決定 には, トップ ・マネジメ ン トに賦与 された決定権限 と,第一線の従業員の もつ情報が 結び付 く必要がある。
その方法 として,従来 より
2つの組織的工夫がなされてきた。一つは,意思 決定権限を情報の存在す る部門に賦与す る方法である。さらにもう一つは,必 要な情報を意思決定者に伝達す るための情報 システムを作 る方法である
。集権 とは,第一線の従業員のあいだに存在する情報を意思決定 に役立てるた め,必要な情報が意思決定者 にまで伝達 され るよう,情報 システムをつ くるこ とで これに対処する方法である。 これには,情報 システムの構築の費用および コ ミュニケーション ・コス トの問題を引き起 こす。
分権 とは,第一線の従業員のあいだにある情報を意思決定 に役立てるため, 意思決定権限を情報を もつ第一線の従業員に委譲す る方法である。 これには, 全体組織の観点か らの意思決定が希薄になるとい う問題を引き起 こす0
このよ うに,情報 システムの構築をともな う集権 にも,意思決定権限の委譲 をともな う分権にもそれぞれ問題がある
。しか し,両者 とも決定権限 と必要な 情報を有機的に結びっけ られることか ら,意思決定の効率化をはか る有効な手 段 とみ られている。そ こで,本稿では,前者の方法,すなわち,意思決定権限 と必要な情報 とが分離 した状況を持つ組織構造に情報 システムを導入す ること で決定権限 と情報 とを結び付 けた,いわゆる, コ ミュニケーション ・ベースの 集権構造を構築 したとき,情幸削まどのような役割を果た し,意思決定者の行動 はそれによってどのような変化を生ぜ させ られ,また,その とき,組織成果へ の影響 はどのようになるのかを考察 していきたい。ただ し, この とき,組織モ デル としてエージェンシー ・モデルを使 うことにす る
。本稿の構成 は,まず, 第 1節では, 決定権限 と必要 な情報が分離 した組織を, 基本モデル として,エー ジェンシー ・モデルで記述 し,その問題点を指摘す る。
次に,第 2節では,基本モデルでの決定権限 と情報 との結び付 きを検討す る前
モニタ リング ・システムと情報の価値
409に,意思決定過程 における情報の役割および価値を,より単純な意思決定モデ ルの上で検討 してみる. ここではゼ ロ情報,完全情事臥 不完全情報が意思決定 過程 にどのように影響す るかが検討 され るであろ う。そ して, 第
3節では,エー ジェンシー ・モデルに,様々の形態の情報 システムを導入 したとき,エージェ ンシー ・モデルで表された組織モデルはどのように再定式化 され,また,その とき, 意思決定者 は追加情報 より決定行動 にどのような影響を受 け,さらには, 組織成果は結果 としてどのよ うになるかが考察 される。そ して,最後 に,本稿 では考察の対象 としなか った問題,例えば,情報 コス トの導入,分権構造の持 つ意思決定の効率化の可能性について指摘 しておきたい。
Ⅰ
エー ジ ェンシーの基本 モデル
組織を考えるにあた り, ここでは意思決定者 としてのプ リンシパル と課業の 遂行および情報の所持者 としてのエージェン トの存在を考える。一般的には前 者 は,意思決定権限を持っが,現場の情事削ま持たない もの とす るO他方,エー ジェン トは意思決定権限は賦与 されていないが,現場の情報 には精通 してい る。 このとき,両者の間には意思決定権限の委譲 もなければ,情報 システムに よるコ ミュニケーションもないもの とす る。本節ではこのような,どこにで も み られ る組織構造を想定す る。
<基本モデル 1 )>
一人のプ リンシパル と一人のエージェン トか らなる組織を考える。 この組織 では,ある状態
S∈ Sの もとで,エージェン トの活動
a∈Aによって,成果
x‑x(
a
,S)が生産 され るもの とす るo
sが観察 されないとき,プ リンシパル と エージェン トの
Sに対す る先験的確率 は同様に ¢( S) とす る
。ただ し, ここで は,生産関数の説明変数
Sを確率変数 として考える代わ りに,直接,被説明変 数
xを確率変数 とみな しエージェン トの活動 aが
xの分布関数 ( x その もので
はない)に影響す るもの と考える。そ して,
αを所与 としたとき,その累積分
1)基本モデルについての詳 しい議論 は
,Holmstr6m (1979)を参照。
410
商 学 討 究 第 42巻 第2・3号
布 関数 を
F(xla),また, 確率密度 関数を
f(xla)で表せ るもの とす る。ただ し
,xa≧O
の仮定 よ り
Fa≦0であ り,しか もfa ,fa a が存在す るもの とす る。
組織で は,エー ジェン トのみが生産活動 に従事す る。そ して,エー ジェン ト は,その活動 aに対 し代償 として,
xの単位で測定 され た報酬
t‑i(x)を支払 われ る
2)0( エー ジェン トの活動
αはプ リンシパル によってモニ ターで きないもの とす る。 ) この とき,エー ジェン トの効用関数
H(i,a)は,報酬
tか らの 効用 と活動 aか らの不効用 とに分離可能 とし, 次のよ うに表す。 すなわち,エー
ジェン トは リスク回避的であ る。
H(i,a)‑U(i)‑V(a)
,
U'> O
,
U"≦ o;V'> O,
V"> 0.(1‑ 1) また,この とき,エー ジェ ン トは競争 的労働市場 にい ると仮定す る。したが っ て, プ リンシパル はエ ー ジェン トが組織 にとどまるよ う,留保効用月 o 以上 の 期待効用を従業員 に保証す る必要があ る。簡単化のため,その留保効用をゼ ロ
に基準化 して表す と,留保効用の制約条件 は次のよ うに定式化 され る。
EH(i,a)≧ 0. (1‑ 2)
さ らに, この組織で はエ ‑ ジェ ン トの活動 aはプ リンシパ ル によ ってモニ ターされないので,エー ジェン トはプ リンシパルの コン トロールを離れ,期待 効用を最大化 しよ うとす る個人合理性行動 を とる。エー ジェン トの個人合理性 行動 は,イ ンセ ンティブ ・コ ンパ テ ィ ビリティ制約条件 として次のよ うに定式 化 され る。
a∈ area‑pAaXEH(
i
,a')・ (1‑ 3)他方, プ リンシパル は,エー ジェン トの生産活動か ら得 られた成果を,エー ジェン トとのあいだで分配す る。 プ リンシパル は,エー ジェン トに, 方の単位 で測定 され た報酬
t‑i(x)を支払 い, その残余生産物
r(x)(…x‑i(x))を受 け取 る。 この とき,プ リンシパルの効用関数を次のよ うに定式化す る。すなわ ち,プ リンシパル は リスク回避的ない し中立的である。
2)i(x)
は非負の有限区間
[C,d+x]を持つ とす る。
モニ タ リング ・システム と情報 の価値
G(x,i)‑G(x‑i),
411
(1‑ 4) G'>
O,
G"≦ O.仮定 された条件 に従 い,意思決定過程を記述すれば,次のよ うな シナ リオ と してえが くことがで きる。 この過程 の各時点で,プ リンシパル とエー ジェン ト はそれぞれ最適 な意思決定を行 う
。ただ し, この過程で,生起す る各イベ ン ト の順序が異 なれば,最適 な意思決定 は影響を受 けることになる
。図
Ⅰ‑1意思決定過程
プ リンシパル エー ジェン ト エー ジェン ト 成果 の エー ジェン ト の契約提示 の状態の観察 の意思決定 確 定 ‑の支払 い
t
s a(S) x i(x)プ リンシパルは,意思決定過程 にあ って,仮定 された制約条件の もと,すな わち,留保効用の制約条件およびイ ンセ ンテ ィブ ・コンパテ ィ ビリテ ィの制約 条件 の もと, 期待効用 を最大化 しよ うと行動す る。プ リンシパ ルの この行動 は, 次のよ うな最適化 問題 と して表す ことがで きる。
黒子号/G(x‑i(x))f(xla)dx subjectto
/[U(i(x))‑V(a)]f(
x
b)dx≧0,
a∈arE,慧a又/[U(i(x))‑
V( a' ) ]
f(xb
,)dx・(1‑5)
さ らに,
(1‑5)式のイ ンセ ンテ ィブ ・コンパ ティビリテ ィの制約条件 は, 一階の条件 によ り書 き換え られ, したが って,先の最適化問題 は次 のよ うに再 定式化 され る。
票門 /G(x‑i(x))f(xla)dx subjectto
/[U(i(x))‑V(a)]f(xla)dx≧
0,
/U(i(x))fa(xZa)dx‑V・(a)‑ 0・
(1‑5')
最適化 問題の解 をラグラ ンジュ乗数法を用 いて解 けば,次のよ うな一階の条
412
商 学 討 究 第42巻 第 2・3号
件を得 る。ただ し,
A, F Lはそれぞれ,留保効用およびイ ンセ ンティブ ・コン パティビリティ制約条件のラグランジュ乗数である。
G' ( x‑i( x)) f a( xl
a)Vy , (1‑ 6) U' (
i(x))
f(x I α)
G( x‑i( x)
)f a( xl a) dx
・
pl /U( i( x))f a a(
xla) dx
IV"(a)]‑ 0・ (i‑ 7)われわれ は,Borch (
1962)よ り,
(1‑ 6)式の右辺が定数でないと, リスク ・シェア リングの観点か ら,パ レー ド最適 とはな らない ことを知 ってい る
。 (1‑ 6)式の右辺が定数 とな るためには,
〟‑ 0ない し j T a( xl
a)‑ 0の いずれかが満たされていなければな らない。
ところで,基本モデルは ,x
a(a , S)
≧0を仮定 しているので, Fa( xl
a)≦ 0は明 らかである。 しか し, これは j T a( xl
a)‑ 0と矛盾す る。
また,
Holmstr6m (1979),Shavel
l(1979)によ り明 らかなよ うに, こ こで は, U'
> 0および
Fa≦0が仮定 されているので,必然的に,
p> 0とな り
(〟‑ 0が達成 されないため),右辺 は定数 とはな らない。 したが って, こ の とき,パ レー ト最適の意味で, ファース ト・ベス ト解 は達成 されない。
また, このとき, ( セカ ン ド・ベス ト)解が ファース ト・ベス ト解か らどの 程度かい離 しているかは , l f a l / fの値の測度で測 られ る。 これ は,言 い換え れば,セカ ン ド・ベス ト解 は成果
xの分布 と活動 aの関係 に依存 していること を意味 している。 したが って,情報の非対称性の もとでは,
xはaの シグナル の役割を果た し,また, もし,エージェン トの活動
αに関す る追加情報が得 られたとしたな らば,それ らが不完全情報であったとして も,セカン ド・ベス ト 解をよ りファース ト・ベス ト解‑改善 してい く役割を果たす と考え られる
。そこで,第
3節では,情報の非対称性の もと,活動 α に関す る追加情報が与
え られるとき,エージェンシー ・モデルで表 された組織モデルで,プ リンシパ
ルとエージェン トの両者 はどのように期待効用の改善をはか ることがで きるの
かをみていきたい。
モニタ リング ・システムと情報の価値
413Ⅱ
意思決定 と情報の役割
前節で,情報の非対称性が存在す るとき, もはや,ファース ト・ベス ト解が 達成 されないことをみた。そこで,次 は, もし可能な らば,セカ ン ド・ベス ト 解を追加情報 によって改善 してい く仕方をみてい く。ただ し, ここでは,エー
ジェンシー ・モデルを離れ,より一般的な意思決定モデルでの追加情報の意味 を考える。すなわち,意思決定者が組織に情報 システムを導入 し,意思決定に 必要な追加情報を得 ることで,期待効用を改善 してい く過程を考察 してい く
。追加情報の意味を考え るため,次のような簡単 な意思決定モデルを想定す る。意思決定者 は3 ),生起す る状態
S ∈βの もとで,活動
α∈A4)を選択す る。意思決定者は,状態
Sが生起す ることを,活動 aを選択す る前に観察でき ない もの とす る
。ただ し,彼 は,その際,状態
Sに対 し先験的確率
¢(S)を も つ とす るOさ らに, 状態
Sの もとで, 意思決定者の活動 aに依存 して, 成果 ズ( a
,S)が決 まり, この とき,意思決定者の効用関数 は,
U(a
,S)‑U(x(a
,S)) で表 さ れるとす る。
このよ うに,代替案の集合A,状態の集合 S,先験的確率関数
¢(S) ,生産 関数x( a
,S) ,および効用関数 U( a
,S)を決定す ることによ り, I A,S, ¢,Ut
E)のように意思決定モデルを記述で きる.ただ し, Eは意思決定者の経験 に 当たる。
この意思決定モデルで, 意思決定者が追加情報を得 た場合, 先験的確率
¢(β)をどのよ うに更新 させ,そのことが活動
αの代替案の選択および,期待効用を
どのように変化 させ るかをみてい く
。まず,追加情報がない最 も基本的な意思 決定の場合か らみてい くことにす る。
<ゼ ロ情報での意思決定 >
ここでは追加情報がない場合の意思決定を考える。(これは,第
3節でみ る
3)
意思決定モデルでは意思決定者は期待効用最大化行動およびベイズの定理に合致し た行動を とると仮定す る。
4)A,S
は有限集合 とす るO
414
商 学 討 究 第42巻 第2・3号
ゼ ロ情報 一集権 モデル にあた る. )追加情報がゼ ロ情報 の とき,状態
S∈ Sに 関す る意思決定者 の先験 的確率 ¢( S) には変化がない。意 思決定者 は先験 的確 率 ¢( S) にのみ依存 して意思決定 を行 うほか はない。 したが って,一般 的 に, 意思決定者が特定の活動の代替案 aを選択 した もとで,状態
Sが生起す るとき の期待効用 は次のよ うに定式化で きる。
E(U
la)‑SE
ESU( a
,S)¢( S).
(2‑ 1)これ らの期待効用の うち
(αの選択 に関す る可能 な代替案の うち) ,最大の 期待効用を達成す る活動の代替案を選ぶ ことによ り,意思決定者の選考すべ き 代替案a芸を示す ことがで きる。 この とき,最大 の期待効 用を もた らす代替案 a糾ま次のよ うに定式化で きる。
E(U
la芸)‑rPEaAXE(Ula)=rpEaAXsEESU(
a , S)Q( S)
‑sEES¢(S)(rpEaAXU(
a , S)¢( SI S) ) ・ ただ し
,め( S)
‑SEESQ(S)
,Q( S)
‑Q( SI S) である・
(2‑ 2)
ここで,ゼ ロ情報 の場合 の意思決定者 の具体例を考えてみ る。 この とき,義
Ⅱ‑ 1
にみ るよ うな利得表,お よび意思決定者 の先験 的確率関数 ¢( S) が与え られているとす る。
表 Ⅱ‑ 1 利得表 ( 状態
Sの もとでの活動
aか らの効 用)
状 態
SI S2 S3
活 動
α2α1U(
a l,Sl )‑100 U(
a l,S2)
‑ 50U(
a l,S3)‑100 ただ し, ¢( s
l)‑P
1‑0.5 , ¢( S2)‑P2‑0.3 , ¢( S3)‑P3‑0.2 で あ る ・
例 :
E(U
Lal ) ‑ ∑U(
al,St・)¢(sL)‑U(
a l,Sl ) ¢( sl )+U(
a l,S2)¢( S2)+U(
a l,S3)¢(S3)‑85.
モニタ リング ・システム と情報 の価値 E(Ul a2) ‑∑U(
a2,Si)¢(st・)‑U(
a2,Sl)め( sl )+U(
a2,S2)¢( S2)
+U(
a2,S3)¢( S3)
‑88.
415
E(Ul a蒜)‑ maxE(Ul
a)‑E(Ul
a2)‑88.
具体例が示す よ うに,追加情報が ない場合,すなわち,期待効用の最大化 を 選好す る意思決定者が先験的確率のみで意思決定を行 う場合,期待効用を最大 化 す る活動 の代替案 に固定 して (この場合,α2 に固定 して)対処す る戦 略 し か選択で きない ことを意味 しているOそれでは,同 じ条件 の もとで,状態 Sに 関す る追加情事組 i 得 られた場合,ゼ ロ情報の場合 に比較 して戦 略の選択 の幅が 広が り, しか も期待効用の改善 をはか ることがで きるのであろうか。次 に,そ の ことをみてい く。
<完全情報での意思決定 > ●
情報が意思決定者 の前 に完全 に公開 されて い る場合 を考 えてみ る。 この と き,状態
S∈Sに関す る情報 は,意思決定者が活動の代替案
a∈Aを選択す る前 に, 観察 で きるとす る.したが って, 意思決定者 は,まず,状態
Sを観察 し, 次 に, ( 主観的 に)最適 な代替案αS
(…a(S)
)を選ぶ ことにな る。 この とき,一 般 的 に,意思決定者が,状態
S∈ Sを観察 した とき,特定 の活動 の代替案as
∈Aを選択す る場合 の期待効用 は次のよ うに定式化で きる。
E(U ) as)‑
S!sU( a( S) ・ S)4( S) ・ (2‑ 3) ただ し
,a(S)は
Sを観察 した後,( 主観的 に)最適 な活動
as∈ Aを選ぶ ことを 示 している。
これ らの期待効用の うち
(αの選択 に関す る可能 な代替案の うち) ,最大の 期待効用 を達成す る活動の代替案を選ぶ ことによ り,意思決定者 の選考すべ き 代替案a芸を示す ことがで きる。 この とき,最大 の期待効果 を もた らす代替案 a岩は次のよ うに定式化で きる。
E(Ul
a…))‑rpEaAXE(U!as)416
商 学 討 究 第 42巻 第 2・3 号
=rFAxsEESU(
a( S),S)Q( S)
‑s
E
ES
¢(S)(Ⅰ誉野 U(a(S),S)) (2‑4)‑s
EES¢( S) ( Ⅰ 誉 U( a( S),S)
¢(sls))・すなわ ち,ゼ ロ情報 の もとでの,意思決定者 の先験 的確率 ¢( SE S) ‑ ¢( S) は,完全情報 の もとで, ¢( sl s) ‑ 1と変更 される
Oここで,ゼ ロ情報での具体例が完全情報 の もとで はどのよ うに変化 してい く かをみてい く。ただ し,この とき, 意思決定者 の活動の代替案 の選択戦 略 a( S) は 表
Ⅱ‑2のよ うに与 え られ るもの とす る。
戦略
表
Ⅱ‑ 2完全情報 での活動 a( S) の選択戦 略
活動の選択 効
用期待効用
a(sl)a(S2)a(S3) U(a(sl),Sl) U(a(S2),S2) U(a(S3),S3) E(Ula(S)) αl
d2 α3 α4 α5 α6 α7 α8
α1 α1 α1 【Jll al al a2 Ull al a2 al Ull α1 α2 α2 【/ll a2 al al U21 α2 α1 α2 U■21
U12 U13 U12 U23 U22 U13 U22 U23 U12 U13 U12 U23 α2 α2 α1 U21 〔/22
a2 a2 a2 U21 U22
85 82 1m
98 75 72 90 88
例 :
E(U
la s,a2)‑ ∑U( a( s i
la2 ), S. 1 )¢( S)
‑ U( a( s
IIa2),Sl)¢( s
l)+U(
a(S2la2 ),S2)4 ・ ( S2)
+U(
a(S3la2), S3)¢( S3)
‑U(
al , S l ) ¢( sl)+U(
al,S2)¢( S2)+U(
a2,S3)¢( S3)
‑82.
E(UI
a:)‑ m axE(U
las)モニタ リング ・システム と情報 の価値
417‑ma又
∑U( a( st ・ ) , st ・ )¢( s
t・)‑
∑¢( S. I
)tmaxU( a( si ) , S. ・ ) )
‑
¢( sl )U(
a l,Sl )
+¢( S2)U(
a2,S2)+¢(S3)U(
al
,S3)‑100.
この とき, ゼ ロ情報の もとでの, 意思決定者 の先験的確率 ¢( SI S)
‑¢( S) は, 完 全情報 の もとで ¢( sl s) ‑ 1と変更 され, しか も,ゼ ロ情報 の もとで は,状態 βに関わ りな く活動 の代替案 を固定 して
(α1 ない し
α 2に固定 して)対処 す る 戦略 しか選択 で きなか ったが, 完全情報 の もとで は, 戦 略の選択 の幅が広が り,
それぞれの状態
Sに対応 しなが ら,活動の代替案
αを選択す ることがで き, ま た, 期待効用 の改善 を はか ることがで きた。ただ し, 情報の価値
Vの‑E(UZ a…)
‑E(Uf a岩) が,厳密な意味で
Vm≧Oであることは次の節で考察 したい.
<不完全情報 での意思決定 >
先 に, 全 ての追加情報が公 開 されてい る場合 を考 えた。しか し, 一般 的には, 追加情事酎ま限定的 に しか公開 されない し, また,全情報を収集す ることも不可 能 に近 い。 さ らに, また, ここにあげた意思決定 モデルか らすれば,ゼ ロ情報 も完全情報 も不完全情報の特殊例 とい うことがで きる。 これ らの意味で,不完 全 な追加情報 の意思決定 モデルを考え ることは重要であ る。そ こで,次 に,不 完全 な追加情報で,意思決定者 は, どのよ うに状態の先験的確率を変更 し, さ
らに, どのよ うに活動 の代替案の選択を変更 してい くのかをみてい く
。この とき,意思決定者 は,状態 S∈ Sを直接 に知 ることはで きない もの とす る。 しか し,状態
Sを観察す る代わ りに,情報 システム 符を通 じて, Sに関す る情報を シグナル y ∈ Y として受 け取 ることがで きるもの とす る. しか も, シ グナルyは,意思決定者が活動 の代替案
a∈Aを選択す る前 に知 ることがで き るとす る. したが って,意思決定者 はまず状態
Sに関す るシグナルyを受 け取 り,その上で,( 主観的に)最適 な代替案 a
,(… a( y)) を選ぶ ことになる.
本来 な ら, ここで,意思決定者が追加情報 と しての シグナル y ∈ Y を受 け
取 った とき,特定 の活動 の代替案
αγ∈Aを選択す る場合 の期待効用 の定式化
を行 うのであ るが, 少 々複雑であ るので, 一般 的な定式化 は後 回 しに し,まず,
418
商 学 討 究 第42巻 第2・3号
その具体例か ら考察す ることに したい。
はじめに,情報 システム qの意味か ら考察す る。意思決定者が状態
Sの追加 情報を得 るためにあるコ ミュニケーション ・システムを導入す るとす る。 この とき,情報 システムはその精度 により,様 々な形態が考え られ る
。例えば,吹 の基本例,図
Ⅱ‑ 1はコ ミュニケーシ ョン ・システムとしては完全である。す なわち,状態
S‑ ((sl )
,is21
,(S3日を情報 システム 符は分割 して シグナル
Y‑(
b,1 ) ,
b,2) ,
b,311 として正確 に伝達 している。 しか し,実際には, このよ うな完全な情報 システムばか りではな く,表
Ⅱ‑ 3に示すように様 々な情報 シ ステムが考え られ る。
園 Ⅱ‑ 1 情報 システム
トップ ・マネ ジメ ン ト
ロワー ・ マネ ジメ ン ト
Y yl y2Illl llll Elly3
I 1
「一一」l
I
IS
s l 2 8
lIL ‑「】1l 3
表
Ⅱ‑ 3情報 システム ¶とシグナル y
状 態
S1 82 S3
ql 符1(Sl)‑yl 叩1(S2)‑yl 叩1(S3)‑yl
ゼ ロ情報
符2 172(Sl)‑yl T72(S2)‑y2 772(S3)‑y2不完全情報
情報 システム
q3 符3(Sl)‑yl q3(S.2)‑y2 173(S3)‑yl不完全情報
774 符4(Sl)‑yl か4(S2)‑yl 叩4(S3)‑y3不完全情報
175 符5(Sl)=y1 叩5(S2)=y2 75(S3)‑y3̲完全情報
モニタ リング ・システムと情報の価値
419このように,いくつかの情報 システムが選択可能なとき,例えば,意思決定 者が,情報 システムか1 を使 って状態
S∈Sのシグナルy∈ Y を受 け取 るな ら, それはゼ ロ情報を意味 し, 追加情報の価値 はないo 逆 に, 情報 システム
775 を使 っ て状態
S∈Sのシグナルy∈Y を受 け取 るな らば,追加情報は,状態
s l, S2,83
を完全 に分割 し, シグナル yl ,y2 ,y3 とノイズな しに伝達す る完全情報 と なる。 ところで,問題 は行2 ,
73,
774の情報 システムである. これ らのシステム は,状態
Sを完全 には分割 しているわけではない。 しか し,全 く意味のない分 割を しているわ けで もないO シグナルyは状態
Sを不完全 なが ら反映 してい
る。その分割の仕方 は次にあげるところである。
Ⅱ‑4
情報 システム T lと状態
Sの分割
分 割
771
tS) ゼ ロ情報
172 Hs1
)
, (S2,S3日不完全情報 情報 システム
符3 iis2)
, isl,S3日不完全情報
q4 iis3}
, tSl,S2日不完全情報
情報 システム 7 日こついての役割が理解 されたところで,次に, これ らの情報 システムを採用 したときの意思決定者の活動の代替案
αの選択の変化 と期待効 用の変化を観察す る。 ここでは,意思決定者が組織に情報 システム
行2を導入 し た場合 に,まず,限定す る。
情報 システム
符2 を採用 したとき,意思決定者が とりうる行動の代替案 aの選 択戦略は,表
Ⅱ‑5に列挙 したよ うに
4種類ある。 これか ら,状態
sl の もとで シグナル yl を受 け取 った とき, aの選択の幅は
α( yl r s l)
‑al および
α( yll s.)
‑a2
のいずか とな る。しか し, 状態S2 ない し
S3の もとで シグナル
y 2を受 け取 っ た とき, aの選択の幅は a( y2 I s 2)
‑a( y2 l s 3)
‑al ない し a( y2 l s 2)
‑a( y2 l s 3)
‑a2
のいずれか とな り
,a(y2 l s 2) と a( y
2f s
3)の選択をペアで固定 して行わな
ければな らないことか ら,選択の幅は幾分制約を受 ける (この場合,
1/ 2 の選択
420
肢 とな る。)
商 学 討 究 第42巻 第2・3号
表
Ⅱ‑ 5情報 システム¶2 の もとでの活動 ∂( yl
¶2)の選択戦 時
戦略 活動の選択 効 用 琴待効用
ab,1)ab2)U(abllq2),Sl)U(ab21772),S2)U(ab,2匝2),S3)E(Ula(y匝2)) α1 al al
U
ll U12 U13 85α4 al a2
U1 1
U22 U23 98 α5 a2 al U21 U12 U13 75 α8 a2 a2 U21 U22 U23 88そ こで次 に, 情報 システム7 7 2 の もとで, 意思決定者の期待効用を考 えてみ る。
意思決定者 は,まず,情報 システム叩2 を通 じて,状態
Sに関す るシグナルy‑
叩2(S)
を受 け取 る
。つ いで,意思決定者 は, ( 主観的 に)最適 な代替案
a,1q2(≡a( y座2) ) を選ぶ。 したが って,状 態
S∈Sを観察 した とき,意思決定者 が特 定 の活動 の代替案
α∈Aを選択す るさいの期待効果 は次 の よ うに定式化 で きる。 この定式化 に限 り,簡単化のため、
U(a( yl
り2),S)‑U(a( y)
,S)と表す。
E(U
l
aylか2,か2)‑U(a( y l
),Sl)¢(sl) +U(a( y
2),S2)¢(S2)+U(
a( y
2),
S3)¢(
S3)‑(め(sl))(U(a(yl),Sl)¢(s
IE y
.))+(¢(S2)+¢(S3)HU(
a( y
2),S2)¢(S2I y
2))+(¢(
S2)+¢(S3)HU(a(y2),S3)¢(S31y2))‑
6(yl)(U(a( y
l),Sl)¢(slly
l)) +6(y2)(U(a(y2),S2)¢(S21y2))+6(y2)fU(
a( y
2),S3)Q(S3f y
2)).ただ し,
6(・) はシグナル
yの生起す る確率を表 してい る。
これ らの期待効用の うち
(αの選択 に関す る可能 な代替案 の うち) ,最大 の
期待効用を達成す る活動の代替案を選ぶ ことによ り,意思決定者 の選考すべ き
モニタリング ・システムと情報の価値
421代替案
a,'l可2を示す ことがで きる. この とき,最大の期待効用を もた らす代替 案 a
,+1可2は次のように定式化できる.
E(U
la,*lq2 , q2)
‑ maxE(UI a
yl
q2,
72)‑max
( U( a( yl ) , Sl)
め(sl)+U( a( y
2), S2)Q( S2)
+U( a( y2) , S3)¢( S3))
‑
1 ¢( sl ))
imaxU( a( yl ) ,Sl )¢(
sI L y
l))+† Q( S2)+ 9( S3) Hm axU( a( y2) , S2)Q( S21 y
2))+ (¢( S
2)+
め(S3))i maxU( a( y2) , S3)
¢(S3I y
2)).この定式化か ら,意思決定者の先験的確率
¢(S)は, シグナルyを観測 した とき更新 され,次のような条件付 き確率で表される。
¢(sJy)‑ め(S)
最 少( S)
ただ し
、 S,は特定のシグナルyに変換 される状態
Sのすべてを表す.
ここで,先の具体例で,意思決定者 はどのように先験的確率
¢(S)を修正 し, 期待効用を最大化す る活動の代替案をどのように選択するかをみる。
例 :
E(UI
a ylq"α4,772)‑(¢( sl )HU(
al,Sl) ¢( sll y
l))+ (¢( S2)+
¢(S3)H U(
a2,S2)¢( S2i y2) ) + (¢( S2)+ ¢( S3) H U(
a2,S3)¢( Sat
)′2))‑98.
E(U
la伽 ,a5,772)‑(¢( sl )HU(
a2,Sl)¢( S.f y
l))+
(¢( S2)
+¢( S3) 書く U(
al
,S2)¢( S21 y2) )
+(¢( S2)
+¢(S3))( U(
a l,S3)¢( S3J y
2))‑75.
E(U
ta*yl町2,772)‑maXE(U
Za ylq2,772)‑E(U
la, 1 7 2
,α4,叩2)・最後に,一般的に,情報 システム 符を考察 してみる。(これまでは,情報 シ
422
商 学 討 究 第
42巻 第
2・3号
ステム7
72に限定 して考察 して きた。 )組織 に情報 システムが導入 され ると,意 思決定者 は,状態 S∈ S の追加情報 として シグナル y ∈ Y を受 け取 る。 これに ともない,意思決定者 の
Sに対す る先験的確率 ¢( S) は更新 され, シグナル
yの条件付 き確率 として,一般的に,次のよ うに定式化 され る。
¢( sl y
,叩)‑6( y l s
,q)¢(S)∑
¢( yl s
,17)¢( S)
・ES
6( yl s
,17)‑
¢( S)
6( yIか)
(2‑ 5)
ただ し, 6( yl
77), 6( yl s
,77)は,情報 システム
77の もとで, シグナル
yの生起す る確率および
Sの生 じた ときの シグナル
yの生起す る確率を表 している。
ここに,意 思決定者 が, シグナル y ∈ Y を受 け取 り,特定 の活動 の代替案
a,∈A
を選択 したとき,その条件付 き期待効用 は次のよ うに定式化 され る。
E(U
la ,,q)‑ ∑ ∑SESYET 6( y)U( a( y) , S
,叩)¢( sl y
,77). (2‑ 6)これ らの期待効用の うち
(αの選択 に関す る可能 な代替案の うち ),最大の 期待効用 を達成す る活動 の代替案 を選ぶ ことによ り,意思決定者 の選考すべ き 代替案a;(… a( yl
17)を示す ことがで きる。 この とき,最大 の条件付 き期待効 用を もた らす代替案α封ま次のよ うに定式化で きる。
E(U
Ja芸
,り)‑maXE(
UJay,〟)‑ma又∑ ∑sESyE
Y 6( y)U( a( y) , S
,77)¢( sl y
,77)‑ y ∑ 6( ∈ Y y)
(maxs∑ U( ∈ s a( y) , S
,叩)¢( sl y
,77)). (2‑ 7)これ までの論議 で, 追加情報 は意思決定者 の状態
Sに対す る先験 的確率 ¢( S) を変更す る役割を果 た し,それに ともない意思決定者の活動の代替案 α の戦略 選択 に も影響 を及 ぼす ことを理解で きた。 しか も, (数値例 のなかで はあ る が )追加情報が多 いほど,意思決定者 の最大期待効用 は改善 され ることを観察 で きた. ここに, V w‑E(U
la苦)‑E(U
la;) , VI ‑E(U
la;
,7 7)‑E(UI a芸) を 追加情報の価値 と定義す ることがで きる。特 に,前者 は完全情報の価値,後者
は不完全情報 の価値 と呼ばれ るものである。
ところで,一般的 に,情報の果 たす役割が理解で きたので,次 に,第
1節で
モニタ リング ・システムと情報の価値
423の基本モデルに戻 り,情報の価値を考察することにする。すなわち,情報 シス テムをエージェンシー ・モデルで表 した組織モデルに導入 した場合,情報 シス テムか らえ られる追加情報が,プ リンシパル とエージェン トの最大期待効用を 同時に改善できるかどうかを考察 したい。すなわち,情報の価値が,エージェ
ンシー .モデルでは,
Ⅴ00≧VI≧ 0 であることを確かめたい.
Ⅲ
モニタ リング ・システム と情報 の価値
意思決定 における情報の役割を明 らかにで きたので,第 1節のエージェン シー ・モデルにおいて,情報 システムを導入 した場合,追加情報が このモデル にどのような影響を もた らすかを考察 していきたい。ただ し, ここでは,情報 システムを,組織構造の観点か ら分類するので,それ らの分類基準を,まず, 指摘 しておきたい。
エージェンシー ・モデルに情報 システムを導入することを考えるとき,分析 の観点 として,情報 システムの形態の違いを ( 追加情報の多寡の違いを)組織 構造の問題 としてとらえる。すなわち,プ リンシパルに追加情報をより多 く提 供できる情報 システムは, コ ミュニケーション ・ベースで,より集権的 と考え ( エージェン トに対す るモニタ リングが厳 しいと考え) ,他方,より少ない追 加情報 しか提供できない情報 システムは,コ ミュニケーション ・ベースで,よ
り分権的と考える。
そこで,これ らの観点に立ち,情報 システムのそれぞれの形態を,エージェ ンシー ・モデル上で定式化 し表 してみる.まず,区分のため,それ らに名称を 与えてお く
。状態の追加情報を全 く公開 しない情報 システムを導入 した組織を ゼ ロ情報 一集権モデル
(Zerocommunicationbasedcentralization),状 態の追加情報をすべて公開する情報 システムを導入 した組織を,完全情報 一集 権モデル
(perfectcommunicationbasedcentralization),そ して,状態 の追加情報を一部 しか公開 しない情報 システムを導入 した組織を,不完全情報 一集権モデル
(inperfeetcommunicationbasedcentralization)とす る。
これ らの情報 システムの形態を,順次,エージェンシー ・モデル上に定式化す
424
商 学 討 究 第
42巻 第
2・3号
ることで検討 していきたい
5)。<ゼ ロ情報 ‑集権モデル >
情報 システムがゼ ロ追加情報 しか公開 しないケースである。第
1節でのモデ ルでいえば,プ リンシパルはエージェン トの活動
a∈Aを,また,状態S∈Sを事前に観察できない状況 に該当す る。 したが って, このときの問題 は,第 1 節の基本モデルその ものとなる。すなわち,エージェン トは,状態
Sを知 った 上で,活動 aを選択す る。 しか し,プ リンシパルはaおよび
Sを観察す ること ができない。 このとき,報酬 はよにのみ依存 して決まることになる。そ して,
この問題 は次のように定式化 される。
誓F.芋ノG(x(a(S),S)‑i(x)
)
Q(S)ds subjectto/U(i(x))i(S)ds‑V(a(S))≧ 0
,
a(S)∈aarEgAmaX/U(i(x)
)
Q(S)ds‑V(a・)・(3‑ 1)
このモデルの解,すなわち,モラル ・‑ザ‑ トの もとでの最適解 は,もはや, ファース ト・ベス ト解ではないことを知 っている。それゆえ,ユニジェン トの 行動を観察す ることが必要になる
。エージェン トの行動の完全な観察 は現実的 には不可能であるが,比較の 目的のために,次にこれを考えてみる。
<完全情報 一集権モデル >
情報 システムが完全追加情報を公開す るケースである。第
1節でのモデルで いえば,プ リンシパルはエージェン トの活動
a∈Aをすべて観察す ることができる状況 に該当す る。この とき, 第 1節の基本モデル上では,この問題 は,エー ジェン トは,状態
S∈Sを知 った上で,活動 aを選択す る。また,プ リンシパ ルはエージェン トによって選択 された活動
αを観察できるものとす る。 このと
き,報酬 は£および
αに依存 して決 まることにな り,同時に,プ リンシパルは エージェン トの活動を完全 にコン トロールす る。そ して, この問題 は次のよう に定式化 され る。
5)
情報システムの導入と運営に関するコス トは,ここでは無視されている。
モニノ リング ・システムと情報の価値
TA
d G( x( a( S), S)‑i(
x,S))Q( S) ds s
ubjectto425
(3‑ 2)
/U( t( x, S))Q( S) ds‑V( a( S)) ≧ 0 ,
a(S)∈aarEgAmaX/U(i(x
, S)) Q( S) ds‑V( a・ )・
完全情報 システムは,次に述べる不完全公開の情報 システムの特別なケース である.第
2節の意思決定モデルでいえば,情報 システム 符が状態
S∈Sをシ グナル y∈ Y に正確に分割することを意味 している. しか し,情報 システム 7 7 が状態
Sを分割する仕方 は,全 く分割 しない,一部分割する,完全に分割する のいずれかである。 これ らは,より一般的に,不完全情報 システムとして表さ れるであろう
。<不完全情報 一集権モデル>
情報 システムが不完全追加情報を公開す るケースである。 ここでは,プ リン シパルはエージェン トの活動
α∈Aを観察す ることができないが,代わ りに, 情報 システム qを使 って状態
Sを間接的にモニターで きるものとす る.すなわ ち,状態
Sの情事酎まシグナル y ∈ Y を通 して しか知 ることができず, しか も, この情報 システムは不完全であ り,ノイズが混在 しているか もしれない。 この とき,第 1節の基本モデル上では, この問題 は,エージェン トは,状態
S∈Sを知 った上で,活動 aを選択 し,他方,プ リンシパルは,不完全追加情報
yを 通 してエージェン トの活動 aを観察す る問題 となる. このとき,報酬は
xおよ びyに依存 して決まることになる.そ して,問題 は次のように定式化 される
.T A 禁 //G( x( a( S),Sト E( x, y))¢( sl y)6( y) d
sd y
subjectto
/U( i( I , y))Q( S) ds‑V( a( S))
≧0,
a(S)∈arg讐
/U( i( x, y))¢( S) ds‑V( a' ) .
(3‑3)
ただ し,3つの情報 システムでの報酬支払 は t( x
,st a;) ‑i( x, yl a ;) および t( x , yl a 芸)‑i( x
屑 )を満たす ものとする。
このように
3つの異なる情報 システムを組織に導入 したさい,そこか ら開示
される追加情報が,ゼロ情報 一集権モデルでの最大期待効用を改善できるかを
426
商 学 討 究 第 42 巻 第 2・3 号
みてい く
。すなわち,組織に導入 された情報 システムの もた らす追加情報 は, プ リンシパルおよびエ‑ジェン トの最大期待効用を改善す るのに価値があるの かどうかをみてい く
。ただ し, もし,次のような結論を得 られるな ら,組織に 情報 システムを導入す る価値があると考え る。その結論 とは次のようなもので
ある。
[ 定理]ゼ ロ情報,完全情報,不完全情報の もとで,エ‑ジェン トおよびプ リンシパルの最大期待効用をそれぞれ [ U B , UB ], [UA q ,【 芹 ], [U L ,U
主]と す るとき,次の不等式が同時にな りた
っ 。U旦 ≦ U
ま≦UA W , U B ≦U
f≦Ub q.
[ 証明] まず,不等式,
U旦≦ U L ≦UA Wの証明か らはじめる.
不完全情報 一集権モデル式のエージェン トの最大期待効用か ら次の ことが明 らかである
。U五‑E(U
封a;
,叩)‑maXE(UL
la,,叩)
≧E(UL
la岩,符)‑ /U( i(
x,yl a ;( S)))Q( S) ds‑V( a S( S))
‑max
/U( i( x)
)Q( S) ds‑V( a( S))
‑U曳.
ただ し,a ;( S)
(…a紺 まゼ ロ情報時のエージェン トの最適活動を表す。UA
n‑E(UA nt a
苦,7 7)‑maXE(UA la
s,77)> ̲E(UA Wl
a;,1?)‑ /U( i( x
,sL a・( y)
)) Q( S) ds‑V(
a*( y))
‑max
/U( i( x, y) ) Q ( S) ds‑V( a( S))
‑Uま.
ただ し
,a*( y)
(…a;) は不完全情報時のエージェン トの最適活動を表す。
次に,不等式,
UB≦ U L ≦U , Wを証明する。
コ ミュニケーシ ョン ・ベースのモデル式のプ リンシパルの最大期待効用か ら
次の ことが明 らかである
。モニタ リング ・システムと情報の価値 U妄‑E(Ufl a;
,符)‑maXE(U封a
,,符)>
̲E(U
封a芸
,叩)‑//G( x(
a;(S) , S) ‑i( x, y l a・ o )) Q( st y)6( y) d s d y
‑//G( x( a "S , , S) ‑"x
州 ,轍 , 響 ( y) dsdy
‑//G( x( a芸( S ) , S) ‑i(
x,yra芸))¢( S)6( yt s) d s d y
=ma
X
/G( x(
a(S) , S) ‑i( x)) Q ( S) ds
‑ US .
ただ し,a
芸(S)(…a紺 まゼロ情報時のエージェン トの最適活動を表す。
Ubm‑E(Upwla
苦
,q) ‑maxE(Up l
a s,符)≧E(Ub ml
a;
,叩)‑/G( x(
a*( y) , Sト E( x, sl
a;))¢( y) ds
‑//a( x(
a*( y) , Sト E(
x,sJa;)) @( S)
6(yls)dsdy
‑//G( x(
a*( y
,,S, ‑"
X脚 ,8( y, 響 ( y, dsdy //G( x( a*( y) , S)‑i( x, sl a
;))Q( sl y)6( y) d
sd
y=n一aX
//G( x( a( S), S) ‑i( x, y)) Q( S‑ y)6( y) d
sd
y427
‑ U去 .
ただ し ,a*( S)
(…a;)は不完全情報時のエージェン トの最適活動を表す。
また, U
旦≦Ui≦ UA W, U
B≦U去≦ Up mも
,a蒜
,a; ,および
a苦の条件下で同 時に満足される
。したが って, この
2つの不等式は同時に成 り立
っ 。( 証明終 り) ここで,エージェンシー ・モデルにどのような構造で情報 システムを導入す るのかという問題に対 し,( 情報 システムのコス トを無視 した)一応の結論を出 す ことができるOそれは, ゼロ情報 ‑集権モデル(
Zerocommunicationbased centralization),不 完 全 情報 一集権 モ デ ル
(imperfectcommunication basedcentralization),そ して,完全情報 ‑集権モデル
(perfectcommu‑nicationbasedcentralization)