ダ イ
レ ク ト ・マ ー ケ テ ィン グ戦 略の 分 析 枠 組
近
藤公 彦
日 次
Ⅰ は じ め に
Ⅱ ダイレク ト・マーケティング活動の誘因と経営資港
Ⅲ ダイレクト・マーケティング戦略の次元と戦略グループ
Ⅳ ダイレクト・マーケティングの成果
Ⅴ む す び
Ⅰ は じ め に
近年 ,わが 国の流通 システムが情報化に向けて大 きな変化を遂げ よ うとす るなか で1), 通信販売 の成長を背景 として ダイ レク ト・マーケテ ィングへ の関心が急速に 高 まってい るO ダイ レク ト・マーケテ ィングの販売形態 として位置づけ られ る通信 販売2)紘, と くに80年 代に入 って以降,著 しい成長をみせ てい る。 日経流通新聞の
「第8回無店舗販売調査」に よれば,89年度 の売上高は1兆5,633億 円に達 し,対 前年度比で14.0%の伸び率を示 してお り,過去5年間連続 の2桁成長を達成 してい る3)。 小売総売上高に対す る比率では依然 として低 いが,そ の成長率 の高 さか らみ れば現代 の成熟型 消費市場に急速に浸透 しは じめてい るといえ よう。
こ うした近年 の通信販売 の成長にみ られ る大 きな特徴は,そ の成長率の高 さとと もに,通信販売企業 の属す る本業の業種 ・業態が きわめて多岐にわたってい るとい う行為主体 の多様性であ る。すなわち,今 日,通信販売を通 じて ダイ レク ト・マ‑
1)情報化に向けたわが国の流通システムの現状と展望については,宮沢健一編(1986),
『高度情報社会の流通機構』東洋経済新報社,を参照せよ。
2)近藤公彦 (1987).「ダイレクト・マーケティ‑/グの概念規定」『六甲台論集』第34巻 第2号,113‑124ページ;同(1990a),「ダイレクト・マーケティングと流通構造変 動」『岡U」商大論叢』第26巻第1号,1091132ページ。
3)日経流通新聞 (1990),「第8回無店舗販売調査」,1990年 11月3日。
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第27巻 第1号
ケテ ィング活動を遂行す る企業は通信販売専業企業に とどまらず ,百貨店やスーパ ーマーケ ッ トに代表 され る大規模小売業者,家電量販店な どの専門店小売業者,さ らには大規模製造業者,総合商社な どの卸売業者,宅配便業者な どの物流業者,伝 販会社に代表 され る金融業者,出版社な どの情報提供業者な ど多様であ り, さまざ まな業種 ・業態に属す る企業が ダイ レク ト・マーケテ ィングを通 じて小売活動に従 事 しは じめてい る.企業行動の観点か らダイ レク ト・マーケテ ィングに よる事業展 開を分析す る場合, こうした行動はどの ような枠組の もとに概念化 され るであろ う か 。
あらゆ る企業は, それが ゴ‑イ ソグ ・コソサ‑1/ (goingconcern)であろ うと す るか ぎ り,常に存続 と成長を志向 しなければな らない。その意味で,存続 と成長 は ゴーイ ング ・コソサーソとしての 企業 の 究極の 目標であ る4)。 Ansoff は,こう した企業の存続 と成長を達成す る方向を企業 の成長ベ ク トル として定式化 し,製品
‑市場分野におけ る拡大化 と多角化の2つのルー トを指摘 している5)。 拡大化 とは 既存の製品一市場に新たな製品あ るいは市場 を追加す る方向であ り,多角化は新 た な製品一市場に参入す る方向である。 しか し, このような枠組を小売市場に適用す るさいには分析上の修正が必要であ る。すなわち,ダイ レク ト・マーケテ ィング活 動の主体である企業は単一製品企業ではな く多製品企業的性格を もってお り,同時 に単一製品市場ではな く多製品市場であ る小売市場 を訴求対象 としてい る。 ダイ レ ク ト・マーケテ ィングに よる小売業への事業展開を考察す るさいには,こうした ダ イ レク ト・マーケテ ィング企業 の多製品企業性 と小売市場の多製品市場性 とい う特 質を明示的に捉えなければな らない。したが ってここでの問題設定は,以上 の特質 を踏 まえて,企業 の成長ベ ク トルを戦略的行動の観点か らどの ように分析す るか と い うことである.本稿において採用 され る1つのアブp‑チほ, Ansoff 流の製品 一市場関係におけ る多角化を小売業態の レベルで捉え直す ことであ る。 ここで業態 とは 「標的市場,販売方法,企業組織 ,経営戦略な どの違いに よって生 じる形態の 差異6)」であ る。 企業は小売市場において特定の業態に もとづいて特定 の標的市場 4)cf.W.Alderson(1957),MarketingBehaviorandExecutiveAction.Irwin.(石
原武政 ・風呂勉 ・光浮乾朗 ・田村正妃訳(1984),『マ‑ケティング行動と経営者行為』
千倉書房,58‑66ページO)
5)H・Ⅰ.Ansoff(1965),CorporateStrategy,McGraw‑Hill.1965.(広EEl寿亮訳(19 6)宮沢健一(1988),『業際化と情報化』有斐閣, 6ペ‑ジ,脚注。
ダイレクト・マーケティング戦略の分析枠組 を設定 し,販売方法の決定を含む特定の最適な経営戦略を策定す る。標的市場に注 目すれば,企業は小売業態を多様化す ることに よって既存の業態では訴求 しえない 市場を新 たに標的市場 として設定 し,異なった市場 ニーズを異な った業態を通 じて 満 たす ことができるoその究極のかたちは,生活 シーンのあ らゆ る側面で生 じるさ
まざまなニ‑ズを企業内部の業態多様化に よって吸収す ることである。
一方, ダイ レク ト・マーケテ ィングは,(1)既存チ ャネルの補完,(2)潜在的市 場の拡大,お よび(3)排他的販売を下位 目的 とし,顧客 ニーズを満た しつつ企業 の 成長 目標を補完す る7)とい うヨ リ上位の 目標を達成す ることを志向 してい る。小売 業におけ るあるいは これに向けた企業 の成長ベ ク トル として多角化戦略を捉えるな らば,こ うした基本 目的を もつ ダイ レク ト・マーケテ ィング活動の展開は業態 とし ての通信販売を付加す る業態多様化行動にはかな らない。それゆえ,通信販売 とい
う新たな業態を企業組織 内部に構築す る業態多様化行動は,長期的な存続 と成長の 機会を確保 しようとす る企業 の多角化戦略 として位置づけ ることがで きる。
このような企業の存続 と成長を保証す る行動準則は,環境,戦略,組織,お よび 経営資源間の相互適合性を達成す ることである8)。 本稿の課題は,多角化戦略 とし ての ダイ レク ト・マーケテ ィング活動を,と くに環境,戦略,お よび経営資源 との 相互適合性に焦点をあてて分析す ることであるO以下では まず,環境 と経営資源に 注 目しなが らダイ レク ト・マーケテ ィング活動の誘因 とダイ レク ト・マーケテ ィン グ活動に必要な経営資源を検討す る。次に, ダイ レク ト・マ‑ケテ ィング活動の戦 略次元を提示 し,これに もとづいてダイ レク ト・マーケテ ィング活動におけ る戦略 グループの存在を議論す る。最後に, ダイ レク ト・マーケテ ィング活動の成果が こ の戦略 グループの異質性に よって異な ることを示す ことにす る。
ⅠⅠ ダ イ レク ト ・マ ー ケ テ ィング 活 動 の誘 因 と経 営 資 源
本稿で議論 され るダイ レク ト・マーケテ ィング戟略の分析枠組は,図1の ように 要約 され るとお りであるO図1は,次の ような基本的視角に もとづいているOすな わち,企業が どの ような業種 ・業態に属す るか,つ ま りその企業の本業が何であ る 7)N.Parley (1973),''GoingOneStepBeyond with DirectMarketing,"Man‑
agemeniRevieuJ,Vol・62,No.3,p.27,
8)石井淳蔵 (1984),『日本企業のマ〜ケティ./グ行動』日本経済新聞社。
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第27巻 第1号
既 存事 業 にお け る需 要 の長期的停滞 (大規模 小売店 舗法 に よる出店規 制) 既 存事 業 にお け る需 要不確 実性 の増大
(消 費多様 化 )
固定的経 営 資源 の異 質性
・人的資源
・物 的資源
・資金的 資源
・情報 的資源
未利 用資源 の有効 利 用 目標 ギ ャ ップ 企 業規模
ダイレクトマーケティング企業の本業 通信 販売専 業企 業 大規模 小売業 者 専 門店 小売業 者 製造業者 卸売 業 者 物流 業 者 金融業 者 情報提 供 業 者
多角化 モー ド 問題 発生 型 多 角化 資 源適 応 型 多角化 企 業者 型 多角化
ダイレクトマーケティング軌略の次元 価 格
品質 品揃 え ブ ラ ン ド志向度 チ ャネル ・シス テム
ダ イ レク ト マ ー ケテ ィング戦 略 グル ー70 通信 販売専 業企 業 グル ープ 大 規模 小売 業者 グル ープ 専 門店 小売 業 者 グル ープ 製造業者 グル ープ 卸売 業者 グル ープ 物流 業者 グル ープ 金融業 者 グル ープ 情 報提供 業 者 グル ープ
ダイ レク ト マ ー ケ テ ィング戦 略 の成果 営業 利益 成 長率
売上 高成長率
マー ケ ッ ト ・シ ェア 成 長率
図 1 ダイ レク ト・マ ー ケテ ィング戦略 の分析 枠 組
ダイレクトマーケ ティングの基 本特 性
情 報桓室些 双方 向性 (機 能特性 ) 無店 舗性
(構 造特 性 )
ダイレク ト・マーケティング戦略の分析枠組.
かに よって, ダイ レク ト・マーケテ ィング活動を展 開す るさいの誘因は異な った も の とな る。それ とともに企業 の本業 はそれぞれ固有 の経営資源を有 してお り, ダイ レク ト・マ‑ケテ ィソグ戦略 の類型 は この経営資源 の異質性に よって規定 され るこ とにな る。 ダイ レク ト・マーケテ ィングにおけ る戦略 グル ープは,企業 の本業 の相 違に もとづ く戦略 の異質性か ら識別す ることがで きる。 さらに ダイ レク ト・マ ーケ テ ィング戦略 の成果 は, こうした ダイ レク ト・マ‑ケテ ィング戦略 の遂行様式に影 響 され ることにな るO以下では, この分析枠組 について詳細に検討 してい くことに
しようO
今 日, ダイ レク ト・マ‑ケテ ィング活動 を遂行す る企業は通信販売専業企業 に と どまらず ,大規模小売業者 ,専 門店小売業者,製造業者 ,卸売業者 ,物流業者 ,金 融業者 ,情報提供業者な ど,多様であ る。 ダイ レク ト・マーケテ ィング企業 の本業 が どの ような業種 ・業態に属 してい るか とい うことは, ダイ レク ト・マーケテ ィソ グ活動を分析す る うえで二重の意味で重要 な問題を提起す ることにな る。第1に, ダイ レク ト・マーケテ ィングを通 じて事業多角化を図ろ うとす る誘 因は,その企業 の本業 の内的条件お よび本業 を取 り巻 く環境条件に よって規定 され るところが大 き い。第2に, ダイ レク ト・マーケテ ィングに よる事業展開を行 うさいに,本業にお いて蓄積 された経営資源 の状態が大 きな影響を与 え る。
(1) ダイ レク ト・マーケテ ィング活動 の誘因
ダイ レク ト・マ‑ケテ ィ1/グを通 じて企業が多角化に向か う誘 因には,次の よう な ものが作用 してい る9)。 第1は外的誘 因 とよばれ るもので,既存事業分野におけ る需要成長率の停滞お よび既存事業分野の需要不確実性の増大があげ られ る。
既存事業分野におけ る需要成長率 の停滞 は,そ こにおいて主力製品 ライ ンを有す る企業 の存続あ るいは成長 の機会を大 き く阻害す ることにな る。企業が長期的な存 続 と成長を持続す るためには,製 品晶質 の改善 ,製品差別化 の推進 ,マーケテ ィン
グの強化な どを通 じてそ こでの需要拡大を図 るとともに,他 の事業分野へ多角化す ることに よって ヨ リ安定的な収益 の確保に努力 しなければな らない。既存事業分野 におけ る需要成長率の停滞は,業態 として急成長 してい る通信販売事業への多角化 9)吉原英樹 ・佐久間照光 ・伊丹敏之 ・加護野忠男(1984).『日本企業の多角化戦略』日
本経済新聞社,69‑79ページ。
第27巻 第 1号
を動機づけ る大 きな誘因となろ う。
需要成長率の停滞を もたらした要因 としてと くに指摘すべ き点は,大規模小売店 舗法に よる出店規制である10)。 これは,既存事業分野におけ る需要成長率の停滞が 政府の流通政策に よって生み出された特殊なケースであ る。大規模小売店舗法の施 行に ともな う出店規制は,百貨店,スーパーマーケ ッ トなどの大規模小売業者に よ る多店舗化を通 じた企業成長に大 きな制約を課す ことにな り,それ までの量的拡大 を志向 した戦略を転換す る必要性を知覚 させ ることになった。その1つの方向が業 態多様化に よる多角化行動であ る。大規模小売業者に よるダイ レク ト・マーケテ ィ
ングは,このような業態多様化戦略のもとで遂行 され ている。 ダイ レク ト・マーケ テ ィングはその構造特性である無店舗性に よって,小売店舗を出店す ることな く消 費者‑の販売を行 うことがで きるとい う優位性を もってお り,大規模小売店舗法に よる出店規制は業態多様化戦略の一環 として ダイ レク ト・マーケテ ィング活動への 事業展開の大 きな誘因 とな っている。以上のことか ら,一般に ダイ レク ト・マ‑ケ テ ィング事業への多角化の誘田は,既存事業分野の成長率が低い企業ほ ど高 くなる といえ よう。
次に,既存事業分野の需要不確実性の増大は,消費市場におけ る消費の多角化, 個性化,お よび短サイクル化に関連 してい る。現代の消費市場を特徴づけ る消費多 様化11)は消費市場 の不確実性を著 し く高めつつあ り,それに ともな って消費者の購 買行動を 「個」の レベルで捉え ることが ます ます重要 となってきてい る。 ここに ダ イ レク ト・マ‑ケテ ィングにおけ る情報伝達の双方向特性が優位性を もつ ことにな る. すなわち, 情報伝達の双方向性を通 じて 売手 ・買手問に 情報のフィー ド/:ッ ク ・ル ープを確立す ることに より,顧客の属性,購買商品,購買量,購買金額,購 買頻度 といった顧客 ・購買情報が直接的に売手に伝達 され,この情報をデ‑タベ ー ス化す ることに よって顧客 ニーズを分析 し, ヨリ訴求力のあ るダイ レク ト・マーケ テ ィングを実施す ることがで きる。多様化 した消費市場におけ るダイ レク ト・マー ケテ ィングの優位性は,このような市場情報の捕捉 ・追跡 システムを構築す ること を通 じて情報処理に よる市場不確実性対処12)の手段 となることに よるものである。
10)近藤公彦 (1990a),前掲論文。
ll)消費多様化については,田村正妃(1989),『現代の市場粗略』日本経済新聞社,41‑ 95ページを参照せよ。
12)加護野忠男(1980),『経営組織の環境適応』白桃書房,92‑93ページ。
ダイレクト.7‑ケティング戦略の分析枠組 したが って,ダイ レク ト・マーケテ ィングに よる事業展開の可能性は,消費市場に おける既存事業分野の需要不確実性が高い企業は ど大 き くなるといえ る。
ダイ レク ト・マーケテ ィングを通 じた事業多角化の誘因の第 2は内的誘因とよば れ るもので,未利用資源の有効利用, 目標ギ ャップ,お よび企業規模な どがあげ ら れ る。
未利用資源の有効利用は,次の ような論理に もとづいている13)O企業はその 日常 活動を通 じて,人的資源,物的資源,資金的資源,お よび情報的資源な どの経営資 源の多 くの領域で既存事業だけでは利用 しきれない資源を蓄積 している。 こ うした 未利用資源を他の事業分野に転用す ることがで きれば,多大な投資を行 うことな く 新規事業分野に参入す ることは ヨ リ容易 とな るだろ う。 この とき,未利用資源は企 業の事業多角化にさい して重要な源泉 とな る。 したが って, ダイ レク ト・マーケテ ィングに よる事業多角化の可能性は,未利用資源の蓄積が大 きい企業ほ ど高 くなる と考えることがで きる。
第2の 目標 ギャップは,企業が達成 しようとす る利益 目標 あるいは売上高 目標な どが実際の達成水準 とどの程度雫離 してい るかを表 した ものである。 目標 の希求水 準 と実際の達成水準 との間に負のギ ャップが存在するとき,このギャップとま負の 目 標 ギャップとよばれ るD企業が従来の戦略バク‑ソに よって負の 目標 ギャップを埋 め ることがで きない とき,その企業は行為 コースの変更を迫 られ ることにな る14)0 その1つの方向が事業多角化であるとすれば,業態 として急速な成長期にある通信 販売事業‑の参入は重要な代替案 として認識 され ることになろ う。 したが って他の 条件を一定 とすれば, ダイ レク ト・マーケテ ィングを通 じた多角化の程度は,負の
目標 ギ ャップが大 きい企業ほ ど高 くなることが予想 され る。
最後に,企業規模が多角化の内的誘因となるのは,企業を経営資源の集 ま りとみ な した場合に, 企業規模それ 自体が 経営資源蓄積の 豊か さの 指標 となるか らであ る。企業規模が大 きいほ ど経営資源 の蓄積量は多 くなる。 このことは,第1に蓄積 された経営資源に ダイ レク ト・マーケテ ィング活動に転用可能な未利用資源が含 ま れている可能性が高 くな ること,第2に ダイ レク ト・マ‑ケテ ィ'/グ活動に割 り当 13)E.Penrose(1959),The TheoryoftheGrouJthoftheFirm,BasilBlackwell.
(末松玄六訳(1980),『会社成長の理論』ダイヤモンド社o)
14)R.M.CyertandJ.G.March(1963),A BehazJioralTheoryofikeFirm,Pren‑
ticeHall・(松田武彦 ・井上恒夫訳(1967),『企業の行動理論』ダイヤモンド社。) 27
第27巻 第1号
て られ る投 資 能 力が大 き くな る ことを意 味 してい る。 それ ゆ え . ダイ レク ト・マ ー ケテ ィングに よる多角 化 の可能性 は ,規 模 が大 きい企業 ほ ど高 くな るで あ ろ う15'。
以上 の よ うに , ダイ レク ト マ ーケテ ィング事業 とい う異 な った事 業分 野‑ の多 角 化 を志 向す る企業 は ,そ の外 的 お よび 内的誘 因か ら長 期 的 な存続 と成長 を維 持す る必要性 を知覚 した企業 で あ る といえ る。
(2) ダイ レク ト・マ ーケテ ィングにお け る経 営 資源
ダイ レク ト・マ ー ケテ ィング企業 の本業 が どの よ うな業 種 ・業 態 に属 してい るか が 問題 とな るのは,それ ぞれ の業 種 ・業 態 に固有 の経 営 資源 が存 在 してお り,そ の 経営 資源 の状 態 に よって ダイ レク ト・マ ー ケテ ィングを通 じた小売 業へ の事業展 開 の様 式が異 な る可能性 が あ るためで あ る16)O以下 で は , この問題 につ い て議論 を進 め る こ とに しよ う。
ダイ レク ト・マ‑ ケテ ィングは ,機 能特 性 と しての情報伝達 の双 方 向性 お よび構 造 特性 と しての無店 舗性 を有 してい る。 こ うした特性 は , ダイ レク ト・マ ‑ ケテ ィ
ングを実 施 しよ うとす るすべ ての企業 に とって さ しあ た り基 本的 な特性 で あ る。 し か し戦略 的 な観 点か ら捉 え る と, この基 本特性 は競争 手段 に転 化 し, ダイ レク ト・
マ ーケテ ィングを ヨ リ差 別 的 に遂 行 す る ことに よって 自社 の競 争優位 の強化 に寄与 15)もっともM.Gortの実証研究によれば,企業規模と多角化度との問には有意な関係
は存在 しないことが指摘されている。 したがって,企業規模が大きいほどダイ レク ト
・マ‑ケティソグによる多角化の程度は大 きいとい う仮説は,支持されないか,ある いは支持 されるとしても弱い可能性がある。 (M.Gort (1960),DiversiPcationand IntegralioninAmericanIndustry,PrincetonUniversityPress.)
16)企業の本業における固定的経営資源の異質性に よってダイ レク ト・マーケティング活 動の様式が規定されるのは, ダイレク ト・マーケティングを遂行する事業 と企業の本 業 との間に経営資源の高い転用可能性あるいは共有可能性が存在す るためである。 本 業 とある事業との間の経営資源の移転可能性あるいは共有可能性は,本業 との関連性 (relatedness)が どの程度高いか,あるいは本業 との間にどのようなシナジー(Syn‑
ergy)が期待されるか とい うことに関 して考察されてきた。すなわち,ある企業がダ イレク ト・マーケティング活動を実施するさい,その活動は本業 と何らかの関連性あ るいはシナジーを有していることが重要な条件となる。 こうした関連性あるいはシナ ジーが強ければ強いほど,ダイ レク ト・マーケティング活動の遂行は ヨリ容易になる。
Ansoff は販売シナジー,操業シナジー,投資シナジー, およびマネジメン ト・シナ ジーの4つのシナジ‑を指摘 し,一方,Biggadikeは,技術の関連性,規模の経済の 関連性,垂直統合の関連性, およびコソグロマ リット的関連性の5つの関連性をあげ ている。(H.Ⅰ.Ansoff(1965),op.cit.;E.R.Biggadike (1976),CorporateDi‑ versijcation:Entry,Strategy,andPerformance,DivisionofResearch,Grad‑
uateSchoolofBusinessAdministration,HarvardUniversity.)
ダイレクト・マーケティング戦略の分析枠組 することが期待 され ることになる。 もしそ うであるとすれば,差別的に展開 され る ダイ レク ト・マーケテ ィング活動の戦略様式はすべての企業に とって‑様な もので はな く,そ こには企業の保有す る経営資源の態様を反映 した独 自の戦略様式が存在 す るはずである。 したが って,企業が ダイ レク ト・マーケテ ィング活動を遂行す る さいに,その基本特性を戦略的競争手段へ と転化 させ る条件は,その企業 のもつ経 営資源の異質性に応 じて異な った ものとなるだろ う。
一般に経営資源 とは,図2に頼型化 され るように,広義には 「企業活動に必要な すべての資源あ るいは能力の全
体17)」を意味す る。 しか し,企 業に とって適応すべ き環境は静 態的な ものではな く,動態的に 不断に変化 してい く。企業はそ の環境変化のなかで適切な生存 領域を常に探索 し,それに対 し て有効かつ効率的な経営資源の 配分を行わなければな らない。
経 営 資 源
可変的資源
固定的資源
人 的 資 源 物 的 資 源 資金的資源 情報的資源
i
環 境 情 報 企 莱 情 報 情報処理特性 図2 経 営 資 源 の 分 類
出所:吉原英樹 ・佐久間照光 ・伊丹敏之 ・加護野 忠男(1984),『日本企業の多角化戦略』日 本経済新聞社.26ページ,図 1‑ 40 そのような意味で,ここでは経
営資源を ヨ リ動態的な視点か ら 「企業が対象市場を特定化 したとき ,その対象市場 に向けて配分 ・準備された量的 ・質的な投入予定財18)」 と捉えることに しよう。図 2に示 され るように,経営資源は可変的資源 と固定的資源に大別 され るが,分析上 と くに重要な資源は固定的資源である。固定的資源は, 「その保有量を企業が増減 させ るのに時間がかか り, またその調整 のために必ず相当の コス トがかか る19)」 と い う性質をもっているが,固定的資源が ダイ レク ト・マーケテ ィング戦略を分析す る うえで重要なのは,それが第 1に 「戦略の遂行の制約条件あるいは内的環境 とな り,あるいは戦略の遂行 とともに意図的に取得 され蓄積 されて行 くことが必要20)」 であ り,第2に 「企業に個性を与え, またその成長の大 きさと方向を規定す る21)」
17)吉原葵樹 ・佐久間照光 ・伊丹敬之 ・加護野忠男(1984),前掲書,24ペ ージ。
18)オールウェイズ研究全編(1989),『リーダー企業の興亡』ダイヤモンド社,7ページ0 19)吉原英樹 ・佐久間照光 ・伊丹敬之 ・加護野忠男(1984),前掲書,24ぺ‑ジ。
20)同上。
21)同上。
第27巻 第1号
か らである22)0
固定的経営資源は,人的資源,物的資源 ,資金的資源,お よび情報的資源か ら構 成 され,情報的資源は さらに環境情報,企莱情報,お よび情報処理特性をその内容 としている28)。人的資源の主要な構成要素はその企業の従業員であ り,物的資源は その企業が保有す る工場 ・設備や店舗, また資金的資源は 自己資金を主な要素 とし ている。情報的資源 のなかで本稿の分析において重要な資源は,環境情報 と企業情 報であ る。環鎗情報 とは,市場や技術についての企業の 日常活動を通 して得 られ る ものであ り,前者 は市場関連情報 ,後者は技術関連情報 とよばれ る。市場関連情報 には供給市場 の情報お よび販売市場 の蘇客情報が含 まれ,技術関連情報 としては商 品開発力お よび フル フ ィルメソト (ful丘11ment)24)な どがあげ られ る。一方,企業 情報 とは,企業 の信用 ・イメ‑ジや ブラン ド, ダイ レク ト・1)スポンス広告の ノウ
‑ ウな ど,企業に関す る好 ましい情報を企業を取 り巻 く環境のなかの人 々や組織が もっていることであ り, その企業に対 して 差別的な便宜を 与 えるよ うな ものであ る。
表1は, ダイ レク ト・マーケテ ィングの 遂行に さい して どの よ うな 固定的資源 が活動の基盤 とな りうるかを示 した ものである。 もっとも特徴的な資源に注 目して み ると, まず通信販売専業企業では 顧客情報, フル フ ィルメソ ト, お よび ダイ レ ク ト・リスポ ンス.広告 のノウ‑ ウが基盤 とな ってお り, ダイ レク ト・マーケテ ィン グの もっとも基礎的な資源について優位性を もっている。百貨店 ・スーパーマーケ ッ トな どの大規模小売業者では,人的,物的,資金的,お よび情報的資源の多 くの 要素において 豊富な諸資源を 有 してい る。 近年の大規模小売業者に よる ダイ レク ト・マーケテ ィングの活発な展開は, こ うした豊かな経営資源の蓄積に よるところ が大 きい。一方,専門店小売業者 の活動基盤は,店舗か ら得 られた顧客情報お よび 22)またD.A.Aakerは,こうした固定的経営資源 (彼の用語でいえば資産とスキル)
が企業の持続的競争優位の基礎であると述べているC (D・A・Aaker (1989),Man‑
agingAssettsandSkills:TheKeytoaSustainableCompetitiveAdvantage,' CaliforniaManagementReview,Vol.31,No・2,pp・91‑1061)
23)吉原英樹 ・佐久間照光 ・伊丹敏之 ・加護野忠男(1984),前掲書,26‑31ページ。
24)フルフィルメソトとは, カタログやダイレク ト・メールなどの送付から,商品の受注 処理,顧客 t)ス トの整僻,商品在庫管理,商品配送,返品処理,顧客サービスなど, 一連のロジスティックス活動を指す。(cf.H.KatzensteinandS.W.Sachs(1986), DireciMarketing,MerrillPublishing,pp.3931415;M.L RobertsandP.D.
Berger(1989),DirectMarketingManagement,PrenticeHall,pp.1671186.)
表1ダイレクト・マーケティングにおける経営資源 LLEi所:吉原英樹・佐久間順光・伊丹敬之・加護野′忠男(1984),『日本企業の多角化戦略』日本経済新聞社,23‑31ページ.および 伊丹敏之(1984),『新・経営戦略の論理』日本経済新聞社,47‑82ページの議論より加筆・修正。
9..1 I,9 7 ・7 ‑ヤ 叫 ⊥ヾ9+弊昂 8i>頚 市 野
第27巻 第 1号
ダイ レク ト・リスポソス広告の ノウ‑ ウを主 としている。製造業者 と くに大規模製 造業者は,商品開発力お よび企業 の信用 ・イメージや ブラン ドな どに豊富な固定的 資源を蓄積 している。卸売業者 と くに商社 は,やや間接的な要素ではあるが,豊富 な 自己資金 と高い企業 の信用 ・イメージを もっている。物流業者は物流施設 とフル フ ィルメソ トが最大の経営資源であ り, また金融業者は資金流に ともなって発生す る顧客情報の蓄積な らびに企業の信用 ・イメージな どの点で特異な固定的資源を有 している。情報提供業者は印刷 ・電波媒体な どに よる情報提供手段を通 じて顧客情 報 を蓄積 していることに優位性がある。
さて,こ うした ダイ レク ト・マーケテ ィング企業 の本業 と固定的資源 との関連が 示唆 しているように,固定的資源の状態が企業戦略の制約条件 とな り,また企業の 成長ベ ク トルを方向づけ ると捉えるな らば,多様な業種 ・業態に属す る企業 のダイ レク ト・マーケテ ィング活動の様式は,それぞれの企業の もつ固定的資源の性格に よって規定 され ることになる。 さらに,固定的資源の性格はそれぞれの企業が属す る業種 ・業態の特質を反映 している。 したが って, ダイ レク ト・マーケテ ィング戦 略の基本類型は個 々の企業間での固定的経営資源の異質性を越 えて, ヨ 1)集計化 さ れた業種 ・業態間での 経営資源の 異質性において 識別す ることがで きる。 それゆ え, ダイ レク ト・マーケテ ィング企業 の本業が,通信販売専業企業 ,大規模小売業 者,専門店小売業者,製造業者,卸売業者,物流業者,金融業者,情報提供業者 の いずれであ るかに よって,基本的な固定的資源な らびに戦略叛型の異質性が規定 さ れ ることにな る。
以上の ような ダイ レク ト・マーケテ ィング企業 の本業 と固定的資源 との関係は, さらに企業が どの よ うな環境適応行動の もとで ダイ レク ト・マーケテ ィングを展開 しているかについて も有益な洞察を与え ることになる。前述の多角化の誘因に関 し て,企業がそれをどの ように多角化の意思決定に結びつけ るか とい う過程は,次の ような3つのモー ドに類型化す ることがで きる25)a
第 1のモー ドは,問題発生型多角化である。 この多角化行動は,既存事業分野に おけ る需要成長率の停滞お よび需要不確実性 の増大な どの環菟変化を直接的な契燐 として生 じる。 このモー ドの特徴は,企業を多角化へ と向かわせ るような外部環境
25)吉原英樹 ・佐久間照光 ・伊丹敏之 ・加護野忠男(1984),前掲急 79‑82ページ。
ダイレクト・マーケティング戦略の分析枠組 の変化があっては じめて多角化の意思決定が行われ ることである。 したが って,多 角化に必要な経営資源が十分に蓄積 されない ままに実行 され ることが多 く,その意 味で失敗の危険性をは らんでいるか,あるいは学習のための ヨ リ長期的な経験が必 要であるといえる。新 日本製鉄の子会社 ニッテツ‑イ リビングの通信販売事業か ら の撤退は前者 の例であ り,大規模小売店舗法施行後の大規模小売業者の参入は後者 の例である。
第2の多角化モー ドは資源適応型多角化 とよばれ るもので,企業内部に蓄積 され た未利用資源を有効に活用 しようとす る動機か ら生 まれ る。 このモー ドは,未利用 資源の有効利用を 目的 としているために,問題発生型に比べて多角化のための経営 資源が存在 してい ること,その意思決定が外部の環境変化に よる問題発生 とは直接 的な関連を もたないために ヨ リ効果的な タイ ミングで実施で きることを特徴 として いる。 ダイ レク ト・マーケテ ィングにおいて最 も多 くみ られ るのは, この資源適応 型の多角化である。大規模小売業者,専門店小売業者,製造業者,卸売業者,物流 業者,金融業者,情報提供業者な どに よるダイ レク ト・マーケテ ィング活動は,表 1に示 された よ うなそれぞれの もつ未利用資源の有効利用を 目的 として展開されて い る。
第3のモー ドは企業者型多角化であ る。企業者型多角化は長期的な視野に立 って 企業の将来 と環境の変化を分析 し,有望 な事業分野に進 出 しようとす るきわめて企 業家精神に富んだ動機を背景 としている。通信販売事業 におけ る リーデ ィング ・カ ンパニーであ るセシールや二光通販な どをは じめ として,通信販売専業企業はこの ような企業家精神を もった創業者に よって設立 された場合が多い。
以上の ように,ダイ レク ト・マーケテ ィング企業の本業が どの ような業種 ・業態 に 属 してい るかに よって, ダイ レク ト・マーケテ ィングを 通 じた 事業多角化の誘 因,な らびにそれぞれの固定的組営資源の異質性に もとづ くダイ レク ト・マーケテ
ィング戦略の様式は異なった もの となる。
ⅠⅠⅠ ダイ レク ト・マーケテ ィング戦略の次元 と戦略グループ
ダイ レク ト・マーケテ ィング戦略を類型化す るさいに重要 な基準 となるのが,マ ーケテ ィング ・ミックスの状態であ るO マ‑ケティング ・ミックスは小売市場にお
第27巻 第1号
いて競争優位 を確 立す る土 俵であ り乞6), ダイ レク ト・マ‑ケテ ィ1/グ戦略 の類型 を 明 らか にす るためには ,そ こで どの よ うな マ ‑ケテ ィソグ ・ミックスが用 い られ て い るか に注 目しなければ な らない。 ダイ レク ト・マ ーケテ ィングにおけ る戦略 グル ー プは, こ うした マーケテ ィング ・ミックスの次元 の類似性 か ら識別す ることがで きる。
(1) ダイ レク ト・マーケテ ィング戦略 の次元
企業 が策定す るマーケテ ィング ・ミックスの次元 は多様 であ る27)が , ここで は ダ イ レク ト・マ ーケテ ィング戦略 の分析 に さい して もっとも基本的 な もの として,以 下 の5次元 を と りあげ ることに し よ う。
第1の次元 は ,価格水準 であ る。低価格政 策 を志 向す る戦略 は,主 として コス ト
・リーダ‑ シ ップ戦略28)に もとづ いてい るOす なわ ち,所与 の品揃 え品 目につ いて コス ト・1)‑ダー シ ップを背景 とした ヨ 1)低 い価格 を設定 す ることに よって,価格 感応 的 な消費者 の需要 を吸引 しよ うとす る戦略であ る。一方 ,次 に述 べ る品質水準 と関連 して, ヨ リ高い価格 は ヨ リ高 い晶質 を保証す るとい う消費者 の価格一 品質連 想29)を喚起 しよ うとす る場 合には,所 与 の品揃 え品 目につ い て中位以上 の価格 が設 定 され る ことにな る。 こ うした価格 戦略 は,高品質で あ る ことを訴求す る ことに よ
って 自社製 品を差別化 しよ うとす る差 別化戦略30)に対応す る もので あ る。
第2の戦略次元 は,品質水準で あ る。通信販売 を販売 形態 とす るダイ レク ト・マ ーケテ ィングの場 合,商 品に関す る情報 は記 号情報 に よって提示 され るため,品質
26)田村正妃 (1982),『流通産業大転換の時代』 日本経済新聞社,167ページ。
27)たとえばM.E.Porterは競争戟略の観点から,専門度,ブラン ド志向度,プッシュ 型‑プル型,流通業者の選択,品質,技術 T)‑ダーシップ,垂直統合度,コス ト面での 地位,サービス提供度,価格政策,パ ワー,親企業との関係, および自国ならびに事 業を行っている国の政府との関係,の13の戦略次元を指摘している。(M・E.Porter (1980),CombeiiiiveStrategy,FreePress,pp.127‑129,土岐坤 ・中辻寓治 ・服部 照夫訳(1982),『競争の戦略』ダイヤモンド社,180‑183ページ。)
28)M.E.Porter(1980),op.cit.,pp.35146.(前掲訳書,55‑71ページ。)
29)cf.L D.McConnell(1968),HAn ExperimentalExaminatiollOfthe Price‑
QualityRelationship,"JournalofBusiness,Vol.41,No.4,pp.439‑444;良.C.
Riesz(1978),"PriceVersusQualityintheMarketplace,196111975:'Journal ofRetailing,Vol.54,No.4,pp.15‑28;E.Gerstner (1985),〟Do Higher PricesSignalHigherQuality?,"JournalofMarketingResearch,γol.21,No.2. pp.209‑215.
30)M.E.Porter(1980),op.cit.,pp.35142.(前掲訳書,55171ペ‑ジO)
ダイレクト・マーケティング戦略の分析枠組 については店舗販売に比べて一般に ヨ1)高い リスクが知覚 され ることになる81)Q し たが って,記号情報か ら得 られた知覚品質が実際の品質水準を大 き く下回 るときに は高い認知的不協和 (cognitivedissonance)が発生 し,その結果 ,以後の通信販 売か らの購入可能性は著 し く低 くなるであろ うCそれゆえ,顧客 との継続的な取引 関係の構築を図ろ うとす るダイ レク ト・マーケテ ィング企業に とっては,こうした 品質次元におけ る認知的不協和をで きるか ぎ り回避す るために,少な くとも中位以 上の品質水準を設定す る必要がある。
第3の次元は,品揃えである。品揃え品 目の確定に さい して重要な選択問題は, どの程度多 くの品 目を品揃えす るか とい う品揃えの広 さの問題 と,所与 の品 目につ いて どの程度多 くの 商品を 品揃えす るか とい う品揃えの 深 さにかかわ る問題であ る。広い品揃えは,あ る一定の基準に もとづいて他社 とは異なった ヨ.)多 くの品 目 を品揃えしなが ら, ワンス トップ ・ショッピング型 の便益を提供 しようとす る戦略 にかわ ってお り,一方,深い品揃えは, と くにある少数の品 目に品揃えを集中させ ることに よって消費者に ヨリ多 くの選択代案を準備 し,特定品 目‑の購買欲求を満 たそ うとす る集 中戦略に対応す るものである32)a
第4の戦略次元は,ブラン ド志向度である。 ブラン ド志向度はナシ ョナル ・ブラ ン ドを中心 とした品揃えを行 うか,あ るいは プライベ‑ ト・ブラン ドを中心 とした 品揃えを行 うかに よって分類す ることがで きる。一般に大規模製造業者がナシ ョナ ル ・ブラン ドを導入す る目的は,消費者に 自社製晶に対す る特殊な選好を形成 し, それに もとづいて ヨ リ高い価格設定を可能にす ることであ るのに対 し,小売業者に よるプライべ‑ ト・ブラン ドは,低価格販売 と粗利益確保 の同時達成 と豊富で排他 31)cf.D.F.Co又andS.U.Rich(1964),"Perceived Risk and ConsumerDeci‑
sion‑Making'・TheCaseofTelephoneShopping,"JournalofMarketingRe‑ seaych,γol.1,No.4,pp.32‑39; H.E.Spence,J.F.Engel,and良.D.Blackwell (1970),"Perceived Riskin Mail‑Orderand RetailStoreBuying,"Journal ofMarketing Research,Vol.7,No.3,pp.364‑369・,E.N.Berkowitz,J.R.
Walton,and0.C.Walker,Jr.(1979),"In‑HomeShoppers:TheMarketfor lnnovativeDistribution Syst̲ems",Journalof Retailing,γol.551No・2,pp.
15‑33;S.Sharma,0.C.Bearden,andJ.C.Teel(1983),"DifferentialEffects ofln‑HomeShopping Methods",JournalofRetailing,Vol,59,No.4,pp.29
‑51:近藤公彦 (1990b)「通信販売利用者の特性に関する実証的研究」『岡山商大経 営研究所報』第11号,55‑83ページ。
32)M.E.Porter(1980),op.cit.,pp.35‑46.(前掲訳書,55‑71ページO)