研究ノー ト
企業価値創造のための 管理会計 システムの構築
中 井 和 敏
-,崇 !
に貢献す ることである. この ような目的を達成するためには,社内外の さまざまな会計情報 を経営意思決定に役立つために整理 ・分析 し,経営 者 はもとより経営管理者や一般社員にもフィー ドバ ックすることが求め られる.近年,会計 ビッグバ ンによる財務会計制度の改革 とともに管理 管理会計の主 目的は.企業経営の効率性 を高め,新たな企業価値創造
会計領域 において も,活動基準原価計算 ( tacjvitybase cdosting:ABC), 経済付加価値 (economicvauel addd: A)e EV ,あるいは,バ ランス ト・
C scorecar blaanced
スコアカー ド ( d:BS )な どといった企業価値創造の ための有効的 な新 しい手法が次々 と紹介されている.この ような新 しい 技法が開発 される背景には,これまでの管理手法では今 日的な経営課題 に対 し,十分対応で きていないことを意味 している.新たな企業価値創 造のためには, 自社の経営資源 を有効 に括相で きる機能 を持った管理会 計 システムの構築 と同時に, システムの持 っている機能の有効性や運用
1.はじめに
企業価値 とは何か.企業価値 を どの ように評価すべ きか.この間題につい て さまざまな議論が展 開されている.この種の議論の背景には,国際会計基
7β 現代経常経済研 究 第 3号
準 との整合性 を図るための連結会計制度の導入や取得原価主義か ら時価主義 による資産評価方法の変更などといった会計制度の間竜ばか りでなく,株式 市場の再整備やイ ンターネッ トによる株式売買の普及 など,槻関投資家や個 人投資家に とって証券市場 に参加 しやすい条件が整備 された ことも,その要 因 として挙 げ られる・今や ,「企業価値創造のための経営」 とい うコンセプ トは上場企業ばか りでな く,未上場企業のなかで も,特 に,公開を目指す企 業 にとっては最 も追求 しなければならない経営課題になっている.
企業価値創造 とい う場合,誰のために価値 を創造す るのかが問題 となる.
このことは,換言すれば 「企業 は誰の ものか」 とい う問題を考えることと同 義である・そこには,企業 を取 り巻 く株主 とその他のステークホルダー (刺 害関係者) との関係 をどのように とらえるか という問題がある. これについ ては見解が分かれる・アメリカやイギ リスでは法制度上 株主は企業の所有 者であ り,取締役 は株主に選 出された経営の代表者 (経営執行責任者)であ る・そ して,企業経営の 目的は株主価値の最大化にある, とい う考え方が主 流 である1〕・この こ とは,我が国の商法 で も基本的には同様 である 2,.現行 商法 に よれば・会社 は営利 を 目的 とする社 団であ り,会社 への 出資者 (樵 主)が取締役を選出 し・取締役 に事業運営が委託 されるとい う構造 を持つ.
また,事業活動に よって得 られた利益は配当金 として株主に還元 されるが, この配当金の額の決定については株主総会の承認が絶対条件 となっている.
この ような関係にある株主に対 し・会社 の業務執行の主体者である取締役 は, 会社 (実質的には株主)に対 して 「忠実義務」 を負 うことになっている 3,.
しか し,我が国では,実際的な問題 として,多 くの会社の経営陣 (取桁役) は株主のために軽骨 を行っているのか どうか議論が分かれるところである.
現行商法に基づいて企業価値の問題 を考えるならば,企業価値 を高める第 一の 目的は株主の利益 を優先することであろう. しか しなが ら,この ことに
「企業 は社会的存在 である」 とい う視点 を加味す る とすれ ば,株主絶対主 義 ・株 主の利益最優先 とい う考え方 とは異なった ものになる. こういった場 令,企業価値を高める・あるいは新 たな価値 を創造するためには,株主優先
研究 ノー ト :企業価値創造のための管理会計 システムの構築 79
とは異なった評価基準やマ ネジメン トの在 り方の検討が必要 になる.
本稿 は,筆者 の これ までの実務経験 4) を参考に し ,「企業は社会的存在で ある」 とい う観点か ら,製造業 における在庫管理手法の活用の仕方などの事 例 を交え,管理会計情報 を経営組織のなかで どの ように共有化 し,企業価値 創造に活用すればよいのか といった ような管理会計手法のあ り方について若 干の検討 を試みるものである.
2.管理会計情報の共有化
(1) 企業価値創造のための経営管理のプロセス
管理会計の定義や経営組織 にお ける意義 について確認 してお きたい.「管 理会計」 を定義 した もの として一般的に受け入 れ られている もの としては
「経営意思決定に役立つ会計」や 「管理 を目的 とした会計」 といった ように 解釈 されている. この区分はやや古典的か もしれ ないが,今で もその有効性 を持 っている 5). しか し, この ような定義 よ りも 「管理会計 とは,企業の歴 史的お よび計画的な経済的処理 をするにあたって,経営管理者が合理的な経 営 目的の達成計画 を設定 し, またこれ らの諸 目的を達成す るために知的な意 思決定 を行 なうの を援助す るために,適切 と思われ る技術お よび概念 を適用 す ることである.」6■とい う代表的な見解がある. この見解 によれば,管理会 計の役割はあ くまで も 「軽骨 目的の達成計画 を設定」 し 「これ らの諸 目的を 達成す るために知的な意思決定 を行 なうの を援助す る」 とい うことになる.
一方,多 くの会計に関連 した文献で紹介 されているように,企業会計 は財 務会計 (制度会計) と管理会計 とに大別される.そ して,財務会計は企業の 経営成績 と財政状態 を企業外部のステークホルダー (利害関係者) に開示す ることを目的 として財務諸表等が作成 される. したがって,財務内容の開示 や作成方法については商法 ・証券取引法 といった法律 によって規制 を受ける.
これに対 し,管理会計の目的は,企業が行 う事業活動 を効率的に推進す るこ とが可能 なように,必要 な社内 ・外 の会計情報 を企業経営者や管理者に適宜 提供することである.必要 な社内外 の会計情報は,企業 によって異 なること
80 現代経営軽済研 究 第 3号 研究 ノ- ト :企業価値創造のための管理会計システムの構築 8)
はい うまで もない. このため,経営管理 に役立つ会計数値 の収集 ・分析,あ の後 「戦略的計画」を 「戦略策定計画」に 「オペ レーシ ョナル ・コン トロー るいは,会計情報 として経営者,経営管理者 に伝達する内容 には,財務会計 ル」を 「タス ク ・コン トロール」 とい うように言い方を変えている8)・アン
(制度会計)のように商法 ・証券取引法の規制を受けないため,当該企業の ソニーによる経営管理 システムを (図表 1) として示 してお く・
都合 によって さまざまな様式や報告の形態がある.
管理会計情報は,経営者および経営管理者のために作成 される.経営者お よび軽骨管理者は,それ らの会計情報 を経営 目的達成のために活用 し,各部 門のマネジメン トを行 う.管理会計は財務会計 と異 な り,事業活動 を効率的 に推進するために役立つ情報を関係部門に提供す ることが 目的 となるため, 業務 に活かす ことので きるタイム リーな資料の提供が求め られる.このため, 管理会計情報は経営管理 システムに効果的に組み込 まれる必要がある.かつ
ma me yo
ベースにしている. したがって,部門 目標やプロジェク ト目標,あるいは個 b
t n
人 目標 といった各 レベルの 目標が有穫的に関連付け られてお り,それ らの 目 標 は最終的に全社的 目標 にリンクされている・そ して・経営 目標の達成 に向
nage
けて事業活動 を展開す るのである. この ような企業活動 プロセスは,各経営
ロセスを効果的に行 うために必要 な機能 として発揮 しなければならない もの (
資源を企業価値創造に転換す るプロセス ともいうことがで きる・ この転換 プ 経営管理の プロセスは, 目標管理 bj tecives:MBO)9杏)
が経営管理サイクルなのである.
て,ア ンソニ ー (n t )は,経営管 理 シス テム を( ,( マ ネ ジ メ ン ト ・コ ン トロー ル ma
) nage
1 ( .
hony, .RN ) 2 A ) l i pannng i
t t sraegc (
戦略的計画 men cton- l),( オペ レー シ ョナル ・コン トロール ( )の 3つ に 区分 した.ア ンソニーによれば,戦略計画は組綴 目的 (軽骨 目標)を達成す る戦略 を策定するプロセスであ り, これは主に経営 トップが担 う非定型的意 思決定か らなるとしている.マ ネジメン ト・コン トロールで は戦略計画の実 現 に向けて軽骨資源 を効果的 ・効率的に経営管理者が活用す ることが求め ら れ,組織 の全体 目標 に適合するように一般社員をリー ドしなければならない.
また,オペ レーシ ョナル ・コン トロールは業務 を効果的 ・効率的に遂行す る i Jonaconrtol
t opera )
3
tro ) 事業計画 と予算管理
いは部門別に会計数値 として示すのである.『原価計算基準』によれば・「予 2
し,これを総合編成 した ものをいい,予算期間における企業の利益 目標 を指 示 し,各業務分野 の諸活動 を調整 し,企業 全般 にわ た る総 合的管理 の要
(
企業にとって 「予算」 とは事業計画を具体的に実行す る際の指針 となるも のである.事業計画の中心 は利益計画になる. これ を全社的,事業部別ある
算 とは,予算期間における企業 の各業務分野の具体的な計画 を貨幣的に表示
具」1)0であると定義 している.
この定義によれば,予算 とは, 図表 1 アンソニーによる経営管理システム ①利益計画が経営 目標 となる.
目的 ・戦時政策 ②各業務分野 (事業部や部門など)の具体的な実行計画である・
長期書十画 ③貨幣 (会計数値)で表示 し,総合編成 された ものである・
短期計画 ④各業務分野 (事業部や部門など)の諸活動 を調整す るものである・
とい うことになる.
亡:_ タスク ・叶 「一 柳 の有蜘 ・能率的達成 この ように,「予算」は単 に 「計画」 し 「統制」す るだけでな く,各業務 プロセスで,業務 (operaotin)の統制が主な 目的 となる7㌧ ア ンソニーはそ
ManagemenLC LtonyoSystem,10/EdltZOn, (出所)Anhont y,R.N.&G id Jovnaraan,V. (200)1,
分野間を 「調整」す る役割 を持 ってお り,この意味で 「予算」 は 「総合的管
Hi11/Irwln,よ り作成
2
8 現代経営経 済研究 第 3号
研究 ノー ト 企業価値創造 のための管理会 計 システムの構築 83
理の要具 (管理手法 )」 となるのである.
企業は利益獲得のために目標 を設定 し,事業活動 を行 う. しか し,設定 さ れた計画に沿って効果的 に事業活動が行われているか どうか,全社的視点か ら観察 ・評価する必要がある.換言すれば,事業計画 を数値化 した 「予算」
が確実に達成 されるようにコン トロール してい く必要がある.事業計画 と予 算の関連 を (図表 2) として示 してお く .
図表 2 事業計画と予算
て 二
経 営 戦 時
一二Iの
-:中 ・長 期 幸 美 計 画
事 業 計 画 の 策 定 行 動 計画の策定
画を予算 として編成する機能.
②調整機能
各事業部や部門などの実践活動がスムーズに実行 されるように相互調整 し,設定 された総合予算が共有化 され.全社的共通 目標達成のために, 効率的な活動 を推進 させる機能.
③統制機能
予算 と実績の比較することによってその差異 を分析 し,差異 をもた らし た原因を明確 に し,それに対する改善策を講 じる機能.
この ような機能のなかで,従来は統制機能が特 に重視 されてきた.それは, 予算 ・実績差異分析の結果に よって,各管理責任単位 としての事業部や部門 に対 し ,「業績評価」が行われて きた ことが要因 として挙 げ られる. しか し なが ら,特 に,大企業などにおいては業務の細分化 にともない組織 も細分化 され,管理責任 をともなう多 くの組織単位が存在 している. これ ら多様な組 織単位が全社的な統一 目標 に向かって事業活動 を行 ってい くためには,予算 編成段 階での各部門や細分化 された組織 単位が担 うべ き予算の調整が不可欠 になる.この調整によって,部門間あるいは細分化 された組織単位 における 基本的合意が得 られない とモチベ- ションも低下 し,予算の共有化 にも問題 を生 じかねない.このため,今 日では予算管理の持つ この 「調整機能」が.
特 に重要な役割 を果た していると理解 されているのが一般的である.
設定 された予算 を 「マネジメン ト サ イクル : P (paln=予算の設定) ,D 予算 の再検討 お よび再実行 )」
do-
( 実行) ,C(ceh kc-評価) ,A(action- (3) 経営管理サ イクルと経営管理者の役割
として機能 させ るのが 「予算管理」である.予算管理 には 「計画策定機能」 経営組織が大 きくなればなるほど権限の委譲が行われる.経営管理者には
「調整機能」お よび 「統制機能」の 3つ の機能があ り,予算達成 のため に, 部下に対するタスクの割 り当て,指揮 ・命令 ・指導す る権限が付与 される.
これ らの機能 を有効的に発揮 させ ることが予算管理のポイン トになる.各機 同時に,業務遂行についての結果責任 も発生する.なお,組織規模に応 じて, 能について概説すれば以下の ようになる.
管 理 者 内部 に お い て も階層 化 が 進 み,経 営 者 お よ び 上級 管 理 職 (top-
①計画策定機能
) t n
t n nage anage m
ma me 下級管理者
me )といったような階層に区分 され,それぞれに権限が付与 され, )
t n l一e nage d
,中級 仲 間)管理 職 (mid ma me , (lower- 各事業部や部門な どの各管理責任単位か ら計画 されたデータをもとに,
経営 トノブの経営戦略における政策判断が加味 されて,全社的な行動計 相当の責任が負荷 されるのである.
現代軽骨経済研究 第 3号 研究 ノー ト :企業価 値創造 のための管理会計 シ ステムの構築 βj
経営組織は企業規模によって異なるが,今 E]では決定権限をで きるだけ下 位の管理者に委譲 した形態が多 く見 られ,現場 に近い ところで迅速 に意思決 定が可能になるように整備が進んである.事業部制か らカンパニー制への移 行が見 られるのはこの事の証左で もある.事業部制 もカンパニー制 も一種の
メーカーに勤務 した時, この在庫 問題が会社 にとって致命的に重要な課題に なるに もかかわ らず,部門の論理が優先 されることによってその重要性が薄 め られる といった経験 を持 っている.い うまで もな く, 自動車部品メーカー は 「カンパ ン方式」 と称 される厳格な生産体制 に組み込 まれてお り・ジャス 分権制 (decenrtali tzaion)である.分権制の形態 にはいろいろあるが,職能
別分梅制 とい うべ き購買,製造.営業,人事,総務 などの職能を基準 とした 分権化が図 られた り,先の事業部制や社内に別会社 を創設 し運営す るカンパ ニー制 は,小回 りの効 く事業推進 を図るとともに利益責任 を一層明確化す る 組織形態 といえるのである.
企業 における価値創造のプロセス として,次の ような活動が求め られる.
①顧客ニーズの発見 ・創造
②製品やサービスの企画 ・開発
③市場お よび販売チ ャネルの開拓 ・維持
④製品やサー ビスの提供 (彰販売後のメンテナ ンスの励行
ト・イ ン ・タイム (
供給 しなければならない状況にあった・当時,当社 を含めた多 くの同業他社 の実態は,適正在庫量 を保持す る とい うよりも,納入先 に対 し指示通 り部品
)・
が供給で きるか どうか,いわゆる 「欠品」 を生 じさせ ない生産体制 を組んで いた. したがって,今か ら思 えば, 日常的に過剰在庫 を保有 している状況で ぁった.多 くの部品メー カーは,パー トナーシップに基づいた対等 な関係 に ぁる協力工場 とい う位置付 けよ りも,いわゆる下請けメーカー として業務 を 行 っているケースが圧倒的に多 く,親会社か らの指示 ・命令 は絶対的な もの
おいて も継続 しているもの と推察 される11 j
であるとの認識の下で経営が行われていた・ このような事業形態は,現在 に im
t i t
us n e)のなかで・自動車 メー カーに対 し,部品を
) 在庫管理のプロセスについて (1
通常,自動車 メーカーの生産計画 を基 に決定 された部品供給計画が・部品 特 に,昨今の ようにグローバルな競争が加速 される軽営環境下にあっては,
各 ビジネス ・シー ンでの競争優位 (competitiveavad tnage)の戦略化 が必要
であ り,このような活動 によって適正利益 を確保す ると同時に,新 たな企業 メーカーに送付 される. これは概 ね 3カ月単位の計画が中心になるが,市場 価値 を創造することによって社会的存在価値 を主張 しなければならないので における販売実績に影響 されるため,この計画書 は毎月送 られて くる・当然・
ある. 雷 先 に送 られて くる計画数字 は大 きく変わっているケースが多い・ したがって,
部品メーカーは 3カ月先 までの生産計画 よ りも・毎月変わる生産数量 に対応 経営管理に求められる管理会計情報の横能と概要
ここで管理会計情報の効果的な機能 を発揮す るシムテム構築について,筆
3. で
F・L;.・J,.3'・・JJ:A
す るように生産計画を組 むのが実情である・計画的供給体制 とい うよりは自 動車 メーカーに欠品によるライン ・ス トップを生 じさせ ない供給体制 を如何 に維持すべ きかが最優先 となる・本来の在庫管理の在 り方 というは・計画 と 者 の実務経験 を基 に,特 に,在庫管理 (invenotrymanageme )nt に関す る経
営的問題 を事例 とし,検討 してみたい. のズレが生 じた場合,そのズ レを絶 えず監視 し,必要の都度,計画 を修正 し く事例 :一在庫管理の問題- ) て生産体制 を組 むようにラインの整備 を行 うことであろ う・
在庫管理に関す る問題は,企業経営 にとって製造業 ・小売業 を問わず非常 ①実績管理
に重要な経営課題であることは周知の通 りである.筆者 はかつて自動車部品 生産計画には,当初,中 ・長期計画 と短期計画がある・ この短期の生産計
84
6
8 現代経営軽清研究 第 3号 研究 ノー ト :企業価値創造のための管理 会計 システムの構築 87
画 は中 ・長期の生産計画に基づいて立 て られる.そ して,短期の生産計画は ②在庫管理
月次計画 としてブ レイク ・ダウ ンされる.ブ レイク .ダウ ンされた計画は進 ユ_ザ-の発注量 と生産の タイ ミングが適切 な対応関係にあれば,過剰 な 捗管理,現品管理 (マテハ ンな ど),生産時点情報管理 (pon opi f dt rouction) 在庫あるいは欠品 といった状態は発生 しないケースが多い・ しか しなが ら,
などに区分 され,計画 とのズレに対応す るシステムの構築が求め られる. こ の ように 「進捗管理 ・現品管理 ・生産時点情報管理」 といった問題の検討が 必要 なため,以下, これ らの点について触れてお きたい.
(進捗管理)
進捗管理では,生産計画で指示 された作業の進捗度を把握 し,生産計画 に 準拠 して生産が行われているか どうかチ ェックす る. ここで注意 しなければ な らない点は 「納期厳守」である.すべ ての進捗管理の基準 は 「納期」であ
実際のビジネスの場面では,多種多様な原因による過剰な在庫が発生する・
在庫 には,完成品在庫,仕掛品在庫・原材料在庫,購入部品在庫 など多様な 形態がある.
過剰 な在庫保有 は企業資金 に重大 な影響 を与 える・ しか し・製品在庫 を例 に取れば,ユーザーの緊急的な注文 に即応で きる といったような供給上の メ
リッ トもある.事実, このようなことを考慮 し,多 くの在庫 を抱 えている企 業 もあ る.筆者が勤務 してい た企業 もこの ように過剰 な在庫 を抱 えてい る. もし納期に間に合 わないような事態が発生 した場合は,その原因を追及
し 「原材料の購買状況,機械設備の点検 ,不良品の発生状況,従業員の勤務 状況」 な ど,原因別にまとめて,実績 として把握 してお く必要がある.
(現品管理)
現品管理は原材料や購入部品.組立品などの品質や数量や段取 り状況の明 確化 を推進す ることである.特に,原材料や購入部品,組立品などについて は,生産現場のなかで どこに幾つあるのかを明確 に しておかなければならな い. この ことによって,不良品の発生,事故による変質や破損,あるいは紛 失な どによって適正数量が確保で きな くなった場合 に適切な対処が可能にな る.
(生産時点情報管理)
ある.
この ような在庫保有 はB脚 体制 を維持す るために意図的に在庫 を保有する, いわば 「戦略在庫」 といって良いのか も知れない・ しか し・過剰 な在庫 は財 務体質の脆弱化 在庫保管 に関わるスペース ・コス トの増加や,場合によっ ては,モデルチ ェンジな どによる製品や原材料の陳腐化 といったリスクをも 生 じかねないのである.適正な在庫量はいかに管理すべ きか・適正な在庫管 理の在 り方や管理手法について検討 を進めることにする・
く適正在庫量 を維持するための管理手法 〉
在庫管理を実施す る上での基本的管理項 目は 「発注時期 と発注量」である・
た12-.この こ とは,仕掛品在庫や原材料在庫 に も同様 の ことが い えるので
これは,いわゆる POS( i f lpon ost aes:販売時点管理)が生産現場 に移行 ここでは, この間題について ,「定量発注方式」で受注す る場合 を考 えてみ した形態である.実績管理 をより正確かつスピーデ ィーに行 うためには,蓄
積 した情報デー タをリアル タイムに取 り込み,分析す ることが求め られる.
この ようなことを可能にす るためには,生産作業の都度,発生する生産数量, 不良品の数,作業効率な どの生産に関する情報をデー タベース化 し,必要の 都度,アウ トプッ トできるシステムの構築が必要である. この ようなシステ
る.定量発注方式 とは,保有 している在庫消費量が常にチ ェックし・当初設 定 した在庫量 になった時 (これは発注点 と同時期になるJ に・一定量の製品
または部品を発注する方式である・
事例 として,年 間需要量が D個 である とす る製品 を, この定量発注方式 によって受注する場合,適正な在庫管理 を行 う時の最適発注量 を考 えてみ る.
ムを生産時点情報管理 (pon opi f dt rouction:POP)システム といっている. この場合,最適発注量は年間の総費用 TC円を最小 とす る発注量 (これを経
88 現代経営権 楕研 究 第 3号
済的発注量 といっている) を求めることになる. この稔費用 TCは,発注費 用 と在庫維持費用の合計 を示 している. また, 1回の発注業務 に関わって発 生する費用 をcB円,製品 1個を 1年 間在庫 してお くのにかかる保管費用 を C九 円 とする.
この ような場合, まず,製品の年間需要量 か個 を年初 にま とめて発注 し た とすれば,年間の発注回数は 1回ですむ. したが って,発注費用 は (cS×
1回)円 となる. また,在庫維持費用 は 「平均在庫量 Xc.」で算出 され,そ の金額 は (刀/ 2Xc.)円で表わす ことがで きる. したが って,年間総費用 TC (発注費用 と在庫維持費用) は次のような式で示す ことがで きる.
TC-csxl・誓Xch
次に発注量 を需要量の半年分 (刀/ 2)個 とした場合 は,半年 ごとの発注 となるので発注 回数 は 2回に なる. したが って,年間平均在庫量 は (刀/
4)個 とな り,総費用 7℃ は次の式 になる.
・C-csx2十雪 XcA
この ような定量発注の場合の適正在庫保有量 と発注点および発注量 との関 係 を (図表 3) として示 してお く.
年間発注量が一定の場合,発注回数 を 1回 と2回 とを比較 した場合,発注 回数を 2回に したとすれば,発注 回数が 2倍になるため発注費用 も2倍にな る. しか し,在庫維持費用は,年 2回発注す ることによ り在庫量が半減す る ため,発注量 と同様,半分になる. この ように,発注 回数が増 えれば,発注 費相 もそれに比例 して増加するが,反対 に,在庫維持費用は減少する. この ような関係 をみると,発注量 を O個 とした場合.発注回数 は め/O)回で 表 され る. この場合 の総費用 (TC)は,年 間平均在庫量 が (Q/ 2)個 に なるので次のような式 として表す ことがで きる.
TC-cjXeD・讐XG
研 究 ノー ト :企業価借 創造の ための管理会計 システムの構築 89
図表 3 適正在庫保有量と発注点および発注量との関係
く発注 1 が 0 の 場 合 >
発 注 1
l l l l
l発 注 < ,受 入 期 間
リート`タイム
<発 注 t が CL/ 2の 場 合 >
千
発注 ■一一一 受 入 発 注 受 入 期間 リ-トタイム
それぞれの要素 (各費用 と発注量 など)の関係 を,算式 に基づいて グラフ で示 したものが (図表 4)である.
す なわち,総費用 を最小 とす る最適発注量 ¢■は発注費用 と在庫維持費用 が等 しくなる点であることがわかる・ これ より最適発注量 ('Q)は次の よう に して求めることがで きる.
cs瑠 -! xq- (Q')2-響 - Q'-
したが って,この時の最小総費用 TCmR.は次の ような算式で示す ことがで きる.
タβ 現代経常経済研究 第 3号
図表 4 最適発注量と各費用との関係
経 済 的 発 注 I 発 注 i (EO C)
・C -- csx・×-g誓GGXDx
岳+× 圭碧 J
XchJ-㌫万c)は,製造原価 )に在庫維持費率 ) また,年間の在庫維持費用 (h (cp (7' を掛 けることによって算出 される. したがって,最適発注量 (Q')と最小総 費用 (CTmnl)は,次の ように計算 される.
最適発注量 (Q')- C. J
最小総費用 (Tmn)-互完面
最適発注量は,年 間の総費用 を最小 にする発注量になるので,一般的に.
この場合の発注量 を 「経済発注量 (cnmiodr uniy:eoo c re qatt EOQ)」 といっ ている.
例 えば,年 間需要量が 5,000胤 発 注費用 は 1回当 り36,000円 で,在庫 維持費用 は 1単位当 り4,000円 とした場合の経済発注量 (EOQ)は,次の よ
うに計算 される.
経- 発注量 伽 Q〕-/呈密 -300個
また,年間需要量が 6,000個の A製品があった とする.但 し, 1回当 りの 発注費用 を5,000円 とし,製造原価 を25,00円,在庫維持費率 は 3%であっ0 たとす る.
研究 ノー ト:企業価値創造 のための管理 会計 システムの構 築 9]
この場合の経済発注量 (EOQ),お よび年 間の最小総費用 (TC-n)は.吹 の ように計算 される.
Q × X
郎 発注量 (EO)-J響-J2250.0.Oxo500 0 ≒283個
最小稔費用 (T m)C n- Bi Jc -J2×5,000×250×03×60,0 ・ , 0≒2,10 123円 一定期間において定量的に発注す る方式 における在庫管理については, こ のような科学的方法 を活用 し,在庫維持費用 を最小に抑えることがで きる・
しか し,実際には,計算 によって得 られる数倍のほかに,現実的に対応 しな ければな らない状況 もある.例 え, この ような科学的手法 を用いて,効率的 な在庫管理 を行 うことがで きるとして も,筆者はこのようなことが全社的に 理解 され,実行 されている企業は少ない との印象 を持っている13'・
●在庫管理情報の共有化- コス ト低減への貢献 について-
在庫管理情報の全社 的 レベルの共有化 をどの ように図るのかについて・再 度検討 してみたい.先述 した ように 「適正在庫 の把握」は経営環境や置かれ ている業種 ・業態に よって異なる・ しか し,在庫問題は全社的共通課題 とし ては極めて重要な課題である.特 に,製造業においては,製品に関係する購 見 生産部門での加工や組立 といった生産管理 に必要な軽費な ど多 くの費用 が発生する. しか しなが ら,実務的には,特に営業部門 との情報の共有化が スムーズに行われないケースが多い.営業部門では販売価格 に力点がおかれ る一方で,生産を担当す る工場サ イドでは製造 コス トが中心 となる・営業部 門か らすれば緊急の注文に対応すべ き在庫量の確保が最優先 される・ これに 対 し,工場サイ ドは適正在庫の保有 を貴優先 とす る論理が働か ざるを得 ない・
筆者は当時 これ らの業務の狭間にあって,大変苦労 したことを思い出す・当 時は営業部門に属 していたので,顧客である自動車メーカーの購買担当か ら の無理な注文にも応 じる体制 を整えるべ きと主張 していた・ しか し,在庫保 有 に伴 う企業資金の問題についての筆者の理解が深 まるに従い, 自社に とっ
2
9 現代経営経 済研究 第 3号 研 究 ノー ト :企業価値創 造の ための管理会計 システムの構築 93
ての適正在庫,つ まり在庫管理は如何 にあるべ きかについて配慮するように 前者の他人資本の提供者に帰属す る部分の代表的な ものは借入金や社債 擬 なった・その結果,少な くとも,先述 した適正在庫の算出方法を基礎 に した 換社債 を含 む)の元本部分 である14). この ような企業価値 とその帰属先 を 管理手法の全社的共有化が必要であ り,それが会計数値に どのように反映 さ (図表 5) として示 してお く.
表 5 EEl れるのか,全社的理解 が必要ではないか とい うような感想 を持つのである.
事例にもあるように,加工や組立な どを担当す る製造 ・生産部門で発生す る 「生産管理 コス ト」や 「段取 りコス ト」などは,当然なが ら発注費用に含 め なければならない.あるいは 「注文の準備」や 「現 品管理」 に関わる費用 なども同様である.こういった発注費用 はなかなか情報 として共有 し難い面
企業価値とその帰属先
企業価値
ト 他 人資本の提供者 (銀行等) に帰属
R 卜 自己資本 の提供者 (株 主)に帰属
=株 主価値
がある・ しか しなが ら,市場原理 に左右 される販売価格 との関係か ら 「適正
マージン」 を如何 に確保す るかについては,先述 した諸費用の発生 を最小限 L■
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三省堂 ,2頁 よ り作成・
に止める必要がある. この点に留意 しない とコス ト プ ッシュにな り,結果
としてマージン率の低下は不可避にならざるを待な くなる.これについては, この ような場合,株式価値 が一定で変 わ らないで,他 人資本 (有利子負
(出所)宇野永 絃 (2003)「実 践 管理会計 と企業価値経削
昨今の情報技術 T)を活用 し,諸費用の合理化 を通 し, 1回当 りの発注 コ
ス トの低減 も可能になるか も知れないのである. こういった諸費用について スでは企業価値が増大 した とい う印象 を受けないのが一般的であろ う・ また, ち,社内的には管理会計ベースで情報 として開示する必要がある. 未上場企業についての企業価値 をどのように算出すればよいのか といった課
題 も残 る.証券市場で株価が決定する上場企業 と異 な り,未上場企業の場合 .企業価値創造に向けての管理会計システムの構築
(I
4
債)だけが増加 したとしても企業価値は増大す る. しか し, こういったケー
は時価評価 で企業価値が算定で きない. こういった限界 を克服するために, ) 企業価値の評価方法について
「企業価値」 とい う場合,「株主 (投資家) にとっての企業価値」,「経営者 代表的 な算出方法 と して,DCF法
(1 さまざまな方法で未上場企業の企業価値 を算出する方法が考 え出 されている・
hdo t as
iscounet
(d dc M owme )と株価 に とっての企業価値」あ るいは 「従業員 に とっての企業価値上「債権者 に 収益率比較法 が あ る.DCF法 は 当該企業が 生 み 出す将来のキ ャ ッシュ フ とっての企業価値」 ,「顧客 にとっての企業価値」 なのか,押 さえておかなけ ローを現在価値 に割 り引 き,その合計額 を企業価値 とする方法である・ この ればならない. さらに,筆者の基本的スタンスで もある 「社会 にとっての企 評価方法 は,当該企業が株式を上場 していな くても評価 に使用で きるため, 業価値」 とい う捉 え方 もあろう. 近年,我が国で も多 くの企業が取 り入れている. これに対 し,株価収益率法
「企業価値 (corporaetvlaueあるいはenetrprsievauel )」につ いての一般的 は 1株当 り,利益の何倍 まで株価が評価 されているのか,上場 している同業 な定義 として,「株式価値 と有利子負債額の合計」 とす る見方がある. この 他社 な どと比較 して未上場企業の株式価値 を求める方法である. これは,主 ような見方によれば,他人資本の提供者 (銀行や社債の購入者) に帰属す る に上場企業の株式価値 を評価する際に多用 される方法である. しか しなが ら, 部分 と自己資本 (株主資本)の提供者である株主に帰属す る部分 とに区分す この株価収益率法にも問題点はある.特 に,対象 とする企業や業種の株価が
ることがで きる.後者の株主に帰属す る部分を 「株主価値」 といっている. 証券市場 において高値で推移 している場合,同業の未上場企業の企業価値 を
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9 現代経営掛 斉研究 第 3号 研 究 ノ- ト :企業価値創造のための管理会計 システムの構築 95
必要以上に押 し上げることもある・ このような場合には,当該企業を評価す の点について,我が国を代表する企業を対象に数社のインタビューを試みた.
る際の客観性が保持 されているか どうか疑問であると言わざるを得 ない. その結果,多 くの企業で活用 されていた経営指標 は,総資本経常利益率や売 また,当該企業の経営者層が,出資された資本 を十分活用で きないで企業 上高経常利益率 といった,いわゆる伝統的な経営分析で求め られる経営指標 価値の創造 (すなわち,一定程度あるいは目標 として設定 した将来のキャッ
シュフローの増大化)がで きなければ,株主は資本を引 き揚げた り,格付け
であ り,従来 より利用 されていた会計的利益 を中心 としたものであった 15).
① E A ( mi add )の登場
A Th
d e l cvaue econo
V V E 会社か らは低い評価 を受けことになる・ このような事態 に陥れば,結果 とし
Co.)が開発 した 界が迫 り,企業存続の危機に陥ることにな りかねない. 企業価値評価指標で,一定期間に企業が生み出 した経済付加価値
-は,ス ター ン ・スチュアー ト社 (SternStewar
て株価が低下することになる・さらに,業績が悪化すれば,資金調達にも限 t&
c mi econo ( では,この企業価値はどのように評価 されれば良いであろうか.先述 した
ように・企業価値は負債の市場価値 と資本の市場価値の合計 として求め られ
eaddd:
を集めている16
E e l
vau VA)を示す.近年,ROE (株主資本利益率) とともに,注 目 .EVAは,税引 き後営業利益か ら資本 コス トを差 し引いて '
るが・他の見方をすれば・企業価値は当該企業や企業グループを構成する事 求め られる. この E Aによって,投下資本に見合 う十分 な利益 を上げたか 業価値 と考えられる・事業価値 とは過去の損益ではな く,将来獲得 されると どうかを判断する もので,EVAがプラスであれば,その企業 は株主の期待 思われる利益額の現在価値で決定 される・このことは次のような算式で求め する収益を獲得 し, さらに新たな価値 を創造 したことになる.但 し,先行投
(算式) 令, この点については,特に注意が必要である.
V
ることができる. 資段階にある時には EVAがマイナスになることもある.企業評価 を行 う場
企業価値 -事業価値の合計 欧米では E AV を経営指標 として取 り入れている企業が多い.我が国で も
=投下資本 +市場付加価値 (将来利益の現在価値) 有力企業の問で採用する動 きが広がっている.証券アナ リス トなども株価評 このようなケースでは,投下資本 を下回れば企業価値 は減少 し,上回れば 価の手段 として利用 してお り,EVAで算出 した 1株当た り株式価値 と実際 価値が創造 されたと評価 される・このように,新 しい企業評価の方法の特徴 の株価 を比較 し,長期的な視点か ら現在の株価が割安か どうかを判断 してい は,会計的利益額 を中心 とした過去 の業績評価だけではな く,将来キ ャッ る. また,E Aの推移 を観察す ることに よって,株価 の短期的な値上が りV シュフローの増大化 と証券市場における時価評価がその評価基準 となってい を予測することにも活用するケースがみ られる.
る・ しか し, このような評価方法 を管理会計の視点か ら見た場合,全社的な 特 に,この EVAはスター ン ・スチュワー ト社の登録商標 になっているこ 規模でのマネジメン トの手段 として活用で きるかどうか疑問である. とを付記 してお く.
将来キャッシュフローの増加額や株式の時価評価をどの ように社内の利益 E AV を求める算式は次の通 りである.
責任や業績評価 と連動 させ るのか・あるいは部門別 ・個別の経営 目標 とどの (算式)
A - EVA NOP
というよりは,全社的なコンセ ンサスとして 「キャッシュフロー」ベースに (注 1)投下資本 -有利子負債 +株主資本
ように結びつけるのか,その評価についての方法が極めて暖味になっている. T (税引後事業利益)-投下資本 ×資本 コス ト (%)
A
よる会計数値が共有化 されているか どうかが問題である. 1昨年,筆者はこ (柱 2)NOPT (neotperatingproftatefrtaj(-・税引後事業利益)
96 現代軽 営経済研 究 第 3号
は 「税 引後 純利 益 +支 払 利 息 (利 息 控 除 前,税 引 後 利 益)」 で求め る.
(注 3)投 下資本 は,総資本 (他 人資本 と自己資本)か ら無利子 負債 (買掛金や未払費用 など) を控除 した額.
(注 4)資本 コス トは,株主が期待す る収益率で理論値で もある.
(資本 コス トを理解す る簡単 な例)
株 主の期待す る収益 率が13%とし (これ以下であれば他の投資 に向ける), 投 下資本 に対 す る株 主資本 の割合 は 60%とす る.有利 子負債 の利子率 は
8%とし,投 下資本 に対す る有利子負債 の割合は 40%とした場合, (i)資本 コス ト(%)-13%×60%+8%×40%
-10% (利息の税効果 を考慮 しない場合) (ii)利息の税効果 を
考慮 した資本 コス ト(%)- 31% ×6% +8% ×4% × 0 0 ( -1 0.)4 -80% .8 (税率 を4%0 と仮定 した場合) EVAは,投下資本 か ら生み 出 された利益 (NOPAT)か ら投 下資本 の コス トを引いた もので,EVAが大 きい とい うこ とは,「株主の期待す る収益率 を 上回っていること」 を意味す る.
EVAを求 め る算 式 は株 価 を必 要 と しない で,現 行 の 「損 益計算 書」 と
「貸借対照表」か ら算出で きる. このため,各企業 において事業部門ごとの 業績評価 を行 う場合や,不採算部門の撤退 といった意思決定 を行 う場合 な ど に活用 されつつある.
②ROE (returnonequity)について
株 主 の投 下資 本 (株 主資 本) に対 す る収 益性 につ い て は,従 来 か ら, ROE (eurtm o qiyneut)が あ る. この指標 は 「株 主資本利益 率」あ るい は
「自己資本利益率」 といわれ る指標 で,「当期純利益÷株 主資本 (自己資本)
×100」 とい う算式 で求め ることがで きる.
しか し, この指標 は重要 な指標ではあ るが,
研究 ノー ト :企業価値創 造 のための管理 会計 システムの構 築 97
・借入金 な ど有利子負債が増加すれば,ROEの数値 は上昇す る.
・自己株式 を取得 して株主資本 を減少 させ るこ とに よって,ROEの数 値 は上昇する.
経営 とい う鞍点では, こういった点 には注意が必要である.
また,収益性 を示す指標 の ひ とつであ る ROA (retum onassets :総資本 当期純利益 率 -当期純利益 ÷総資産 ×100)に も注意 しなけれ ばな らない点 がある.例 えば,当期純利益 に さほ ど増減が見 られない時は,新規投 資 をし なけれ ば,ROAの数値 は上昇す る.つ ま り,当期純利益が一定 の場合,新 たな設備投 資 をしなければ,分母の総資産 に含 まれる設備 な どの減価償却費 相 当分 だけ減少す るため,反対 に,ROAは上昇す るので ある. しか しなが ら, この ような短期業績主義 を重視す るあ ま り,当期純利益 の獲得 にだけ 目 が向き,必要 な設備投資 を極端 に抑制す る とい う経営政策 は,中 ・長期的に 見て事業の拡大や維持 ・発展 とい う観点では問題 になる.
ROE,Ro且,EVAとい った経営指標 は,それぞれ重要 な意味 を持 った経 営指標 である. しか し, これ らの指標 を経営判断 に活用す る場合は,その意 味内容 を的確 に理解 し,当該企業の将来的な展望 をも考慮 した うえで活用す るこ とが前提 となる.
③MVA (marketvallleadded)について
MVA (marketvallleadded,市場付加価値) はつ ぎの算式 で求 め る こ とが で きる.
(算式)
MVA-市場価値 (marketvalue)一投下資本 (株 主資本)
MVA-株式時価総額一株 主資本 で,投 下 され た資本が どれ だけの市場価 値 を生み出 しているか を見 る指標 である. この場合 の投 下資本 は株主資本 を 意味す るのが一般 的である.特 に,株価が分かる上場企業が測定の対象 とな り,企業外部の投資家 な どが投 資する場 合の銘柄 の選択 を含めた判断材料 と して活用す るケースが多 く見 られる.