所有構造,企業者イ ンセ ンテ ィブと 日本的組織 システム
鵜 野 好 文 中 村 竜 哉
目 次
は じめに
Ⅰ.基本モデル
刀.所有構造と企業者インセンティブ おわ りに
<アブス トラク ト>
資産の コン トロールに関す る権利 は 2つの内容か ら構成 されている。それ は,契約に明記 され る特定請求権 とそれ以外の契約に明記 されない残余請求権 である.契約の一方の当事者が もう一方の当事者の もつ資産に対す る権利の行 使を契約条項 として網羅す ることが難 しいのであれば,当該当事者がその権利 の行使権を購入 した方が好 ま しいであろ う。 オーナーシップはそれ らの残余請 求権の購入を意味す る。 この ことは, しか し,残余請求権の誤 った配分を引き 起 こし,好 ま しくない影響を もた らす。特 に,所有権を奪われた企業所有者 は, 企業者精神 ない し企業者イ ンセ ンティブを喪失 して しま うであろ う。 それは, 残余請求権を購入 された企業の生産性を著 しく低下 させ る可能性 もは らんでい る。 ここでは, このような所有構造の変化が企業者精神 ない し企業者イ ンセ ン
*経営研究会 (April28,1994),日本経営学会北海道部会 (April30,1994)での有 益なコメントに感謝致します。
〔81〕
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テ ィブを喪失 させ,投資イ ンセ ンティブにどの よ うな影響を もた らすかをみ る。最終的に,特殊資本投資で は企業者イ ンセ ンティ ブが保持 され る所有構造 でのみ投資イ ンセ ンティブが高 く,一般資本投資では企業者 イ ンセ ンティブが 喪失す る所有構造で も投資イ ンセ ンティブは高 く維持 されるとい う結論を得て
いる。
はじめに
企業の限界 (/境界)の議論 は,Coase(1937)の取引コス トに始 まる。以 莱,契約の不完備 より,特殊資本への投資か ら生 じる機会主義およびホール ド ア ップ問題 (Kleinetal.(1978),Williamson (1975,1979))を指摘す るこ とで説 明 されて きた。 これ らの説 明は市場取引 コス トが高 くつ くとい うこと が,相対的に組織の存在価値があると主張す るものであ り,組織の限界を説明 する要因について直接言及 した ものではない。 これに対 し,統合 (/内部化) によ り資産の所有権に変化が生 じたとき,いわゆる所有経営者の企業者精神な い し企業者イ ンセ ンティブを低下 させ ることか らくるコス トを考慮 し,組織の 限界を説明 しよ うとす る議論がなされ るよ うにな った (Grossman&Hart
(1986))。それ は,統合 によ る資産 の購入 は,企業の所有権 を奪 い,所有経 営者の企業者イ ンセ ンティブを奪 い,生産性を低下 させ るというものである。
この企業者イ ンセ ンティブのコス トは企業に限界を与え ることになる。所有構 造 と企業者イ ンセ ンティブの概念は, この概念のみで,市場の限界 と組織の限 界を同時に説明可能に している。そこで ここでは, この概念を用いて, 日本企 業の組織 システム ・デザイ ン行動を分析す ることにす る。
本稿では,資産の所有権の変化が もた らす企業者精神 ない し企業者イ ンセ ン テ ィブの堅持 と喪失を基礎に組織 システム ・デザイ ンについて議論す ることに す る。そ こで まず,定義 しなければな らないのは,資産の所有権の概念である。
Grossman&Hart(1986)は,企業を資産の集合 と定義 している。資産 は 物的資産および人的資産を含む。このよ うに,企業を資産の集合 とみなす とき,
所有構造,企業インセンティブと日本 的組織 システム 83 いわゆる市場取引は資産の コン トロール権を契約の束で拘束す ることとみなさ れる。 この とき,資産のコン トロールに関す る権利 は 2つの内容か ら構成 され ている。それ は,契約 に明記 された特定請求権 とそれ以外の契約 に明記 されな い残余請求権である。市場取引はこの特定請求権を建 に資産の利用権を行使す るものである。 しか し,契約の一方の当事者が もう一方の当事者の もつ資産に 対す る利用権の行使を契約条項 に網羅することが難 しいのであれば,当該当事 者 は特定請求権 として網羅 しきれない資産利用の行使権を購入 した方が好 ま し いであろう。 オーナーシップはそれ らの残余請求権の購入を意味す る。 このこ とは, しか し,残余請求権の誤 った配分を引き起 こし,好 ましくない影響を も た らすであろ う。特 に,資産の所有権を奪われた所有経営者 は,企業者精神な い し企業者イ ンセ ンティブを喪失 させ,当該企業の生産性を著 しく低下 させて しま う。 このように,所有構造 と企業者イ ンセ ンティブの概念 は,市場の限界 と組織の限界を,同時に,説明で きるもの となっている。そこで, これ らの概 念を もちいて企業行動 の分析 を行 うことにす る。
本稿での最終 目的は,資産の所有構造の変化が,企業者精神ない し企業者イ ンセ ンティブに影響を与え,期待利益を変化 させ, さ らに,投資イ ンセ ンティ ブをどのよ うに変化 させ るかをみてい くことである。 そ こで,資産の所有権が どのような影響を及ぼすかを簡単な具体例でみてみ る。
自動車 メーカーが製造に必要なすべての部品をその供給業者か ら購入 し完成 車 メーカーとして成 り立 っているケースを考える。ただ し,部品供給業者 は, エ ンジンパーツ供給業者 と車体パーツ (エ ンジンパーツ以外のすべて)供給業 者 しかない もの とす る。また,親会社 (corefirm)は,エ ンジンパーツおよ び車体パーツ業者 に組立 ライ ンを提供す るだけで,エ ンジンの組み立て,車体 の組み立ておよび完成車の組み立ては各部門が行 っているとす る (ただ し,車 体 にエ ンジンを載せ完成車 にす るのは車体部門が行 うとす る)。 この とき,親 会社がエ ンジンパーツ供給業者 と車体パーツ供給業者 と結託 しあ う形態が様 々 に考え られよ う。 た とえば,吸収 ・合併等のような統合 タイプと資本提携,技 術提携等のよ うな企業 グループない しは系列 タイプをあげることができよ う。
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ここにい う組織 システム ・デザイ ンの相違は,所有構造の違 いか らくる。前 者 は,親会社がエ ンジンパーツおよび車体パーツ供給業者を内部化 し企業の一 部門 として機能 させ る,いわゆる統合 タイプである。 これに対 し,後者 は,戟 会社 と部品供給業者はそれぞれ独立 した企業体であるが,暗黙の契約 により, 親会社 に資産の コン トロール権を高度 に与えている企業 グループない し系列 タ イプである。 さらに, この所有構造の違いが,統合 タイプでは,部品供給業者 の企業者 イ ンセ ンティブを喪失 させ (〟‑ 0),企業 グループない し系列 タイ プでは企業者イ ンセ ンティブを堅持 させ る (〟 ‑ 1)0
そこで, ここでは,所有構造の違いが,組織 システム ・デザイ ンにどのよう に表れ,そ して,企業者精神ない し企業者イ ンセ ンティブにどのような影響を 及ぼすのかを,各部門 (/企業)の配分利益を観察す ることで示す ことに した い。まず,親会社が部品供給 メーカーの資産の残余請求権を購入す る,いわゆ る,統合 タイプの組織 システム ・デザイ ンか らみてい く。 この とき,組織 シス テム ・デザイ ンは集権的構造 を示す (図0‑1)。本社 は所有す るアセ ンブ
図0‑1:統合企業の組織 システム
所有構造,企業イ ンセ ンテ ィブ と日本的組織 システム 85
リーライ ンを使 って,エ ンジンパーツ部門か ら供給 されたエ ンジンパーツをエ ンジンまで組み立て, さらに,車体パーツ部門か ら供給 された車体パ ーツを車 体 にまで組み立て,そ して最終的に,車体にエ ンジンを載せ車を完成 させ ると
する。
この とき,全社的に得 られた結合利益をどのように本社 と事業部の間で分配 す るかが問題 となる1)。 また,本社 の管理す る工場の結合間接費をCと定義 し, この工場が部門によって使用 されないとき,便宜上,結合間接費 はゼロと な り,他方,部門によって使用 され るときC>oとな り,本社 と部門で配分 さ れ るとす る。 この共通費割当前 における部門 Ⅱの収益をy,部門Ⅲの収益をZ とす る。また, この場合,集権的構造であるので,各部門は本社 に何の断 りも な くその部門を閉鎖す ることはで きないとす る。 このため,各部門は共通費を 負担 して負の利益が生 じることがないよ う,もし,負 の利益が生 じるときには, 本社が負の利益分をカバーす ると仮定す る。 この ときの各部門がそれぞれに結 託 した場合の特性関数 U((SHM ‑o)を次のよ うに表す とす る。ただ し,特 性関数 は結託 によって取得できる最高の利得を表 した ものである。また, ここ で, Sは結託の集合を,M は部門マネージャーの企業者イ ンセ ンティブを表 し ている2)0
U((0))‑0
u(1日 )‑0, U((Ⅱ))‑0, U((Ⅲ))‑ 0
u((Ⅰ,Ⅱ))‑y‑C, U(iI,Ⅲ))‑ I‑C, U((Ⅱ,Ⅲ))‑ o u((Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ))‑y+2‑C
1)本稿を通 じて,結合利益の配分基準 として, シャプ レイ値を使用す る。 シャプ レイ 値 につ いてはⅡ節で詳述す る。詳細 は,Shapley(1953),Shubick(1962),門 田 安弘(1989)を参照。
2)本稿を通 じて,経営者 は所有権をな くす と自動的に企業者イ ンセ ンティブをな くし (M ‑ o),他方,所有権を維持 していると自動的に企業者イ ンセ ンティブを機能 させ る(〟 ‑ 1) とす る。経営者が企業者イ ンセ ンテ ィブを もっか もたないかは自 動的に選択 されるとし,いわゆる,モラル‑ザー ド問題は生 じないとする.
86 商 学 討 究 第45巻 第 1号
この とき,経済主体 iの シャプ レイ値 は次のように計算 され る。
動‑⊥ ∑ (S‑
1
)!(
a‑ S)![U(S)‑U(S\り]n!iE=S⊆I
(1‑1)I(3‑1)!
3!
(2‑1)I(3‑2
)
[U (くり)‑U((㊨))]
3!
(2‑1)i(3‑2) 3!
(3‑1)!(3‑3) 3!
lu(ti,ji)‑U((jI)]
lu(ti,hl)‑U((hl)]
lu(冒,j,h))‑U(tj,h))]
ただし,i‑Ⅰのとき, j‑Ⅱ,h‑Ⅲ i‑Ⅱのとき,j‑Ⅲ,k‑Ⅰ i‑Ⅲのとき, j‑I,k‑Ⅱ
これよ り・,QI‑¢E‑¢H‑i (y ・ 2‑C)を得 る。 これ は, いわゆ る,供給 業者を内部化 した とき本社が取 り仕切 る利益配分の方法であ る。 ここで,注意 すべ きことは,エ ンジン部門 と車体部門の双方 に企業者 イ ンセ ンテ ィブが働 い ていない ことであ る。特 に,エ ンジン部門には企業者 イ ンセ ンティブが必要で あるとす る。
しか し, この とき,結託が もっと緩やかな ものであ ったな らば,具体的に, 技術提携,資本提携関係 のよ うな ものであったな らば どうであろ うか。そ こで は,先の製造工程 は変わ らないが,結託が緩やかであ るので,部品供給業者 は 企業者精神ない し企業者 イ ンセ ンティブを喪失 しない とす る。そ こで,次のよ
うな組織構造を持つ グル‑プを考え る (図0‑2)0
この とき,各企業 はかな りの 自由裁量 を与え られて い る もの とす る。 した が って, シャプ レイ値の特定関数uM((Si)… U((S)lM‑1)を考 える。
U〟(†㊥))‑ 0
uM((Ⅰ))‑ 0, uM ((El)‑ 0, uM((Ⅲ))‑0
所有構造,企業インセンティブと日本的組織 システム β7
一次下請け
図0‑2:企業グループの組織 システム
uM(iI,Ⅱ))‑yM一一C, uM((I,Ⅲ))‑I‑C uM((Ⅱ,Ⅱ))‑0
uM((Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ))‑yM+I‑C
シャプ レイ値 は先 と同様 に計算 され,これより・41‑¢n‑¢m
‑ ÷ b
,M・Z‑C)を得 る。ただ し,yM≧yである. これは,いわゆる,供給業者を企業 グループ ない し系列化 したとき親企業が取 り仕切 る利益配分の方法である。 ここで,荏 意すべきことは,エ ンジンパ‑ツ供給業者 と車体パーツ供給業者の双方 に企業 者イ ンセ ンティブが働いていることである。特に,エ ンジンパーツ供給業者に は企業者イ ンセ ンティブが必要であ り,そのため,結託の利益が各企業で÷
b M‑y)だけ増加 していることがわかる。 この ことは,当然,投資イ ンセン ティブに大 きな影響をもた らす ことを,直感的に予測で きよう。
ここにあげた具体例が示すような過程,すなわち,資産の所有構造の変化が, 企業者精神ない し企業者イ ンセ ンティブに影響を与え,‑さらに,期待利益を変 化 させ,投資イ ンセ ンティブをどのように変化 させ るかを,より一般的に,Ⅰ,
Ⅱ節でみてい く。 まず, Ⅰ節では, Ⅱ節での投資インセ ンティブの変化を考察
8g 商 学 討 究 第45巻 第 1号
す るための準備 として,投資行動の基本モデル,すなわち,結合利益の配分基 準 としての シャプ レイ値の特性関数の特質を説明す る。 また, この基本モデル を使 って,資産の コン トロール権を定義 し, しか も, コン トロール権 と投資イ ンセ ンティブの関係を分析す ることで,組織の限界 に言及す る。 Ⅱ節では, Ⅰ
節で定義 した基本モデルを使 って,所有構造の変化が企業者精神ない し企業者 イ ンセ ンティブを喪失 させ,最終的に,投資イ ンセ ンティブにどのように影響 す るかを分析 し,その上で, 日本的組織 システム ・デザイ ンが選択 される合理 性を説明す る。最後 に,おわ りにで,要約 とい くつかの問題点を指摘す る。
Ⅰ.基本モデル3)
企業を資産の集合 と定義す る。 この とき,資産の使用権に関す る契約上の権 利 は2つのタイプか ら構成 されている。それは,契約に明記 された特定請求権 とそれ以外の契約 に明記 されていない残余請求権である。一方の当事者が もう 一方の当事者の もつ資産 に対す る権利の行使を契約条項 として網羅す ることが 難 しいのであれば,当該当事者がその権利の行使権を購入 した方が望 ま しいで あろ う。オーナー シップはそれ らの残余請求権の購入を意味す る。この ことは,
しか し,残余請求権の誤 った配分を引 き起 こし,好 ま しくない影響を もた らす。
特 に,残余請求権を奪われた (所有権を奪われた)所有経営者 は,企業者イ ン セ ンティブを喪失 し,企業の生産性を著 しく低下 させ る可能性を もは らんでい
る。
そこで, まず,所有構造の変化を,すなわち, コン トロール構造の変化を定 義 し4),その上 で, どの範囲 まで所有権を拡張 していけばいいのか,すなわ
3) Ⅰ節の基本モデルは,HartandMoore(1990)に依っている。
4)ここでは,所有権(ownership)と資産のコントロール権(control)を区別 しないo 企業グループないし系列で,親会社(corefirm)は一次,二次下請け企業の所有 権を有しないが,高度にコントロール権を有していると考える。この意味では,舵 合企業が所有権をもつことでコントロール権を有するのと同じ効果をもっとみな す。
所有構造,企業インセ ンティブと日本的組織 システム 89 ち,組織の限界 はどこにあるのかを基本的モデルのなかで論 じてい くことにす
る。
まず,モデルの説明か らは じめる。 リスク中立的な個人 I人 (主体 i‑(1 ,‥.,I))の集合 ̲SとN個の資産 (資産an‑(a,...,a n,… ,aNi)の集合4
か らなる経済があるとす る。また,0期 と1期の2期間モデルを考え る。そ こ では,すべての費用 と利益 は1期の価値で測定 されるとす る。0期で,主体 王
は投資行動xlを選択 し, 1期で生産ない し取 引を行 うとす る。 この とき,0 期の投資x iは, 1期の生産性 に影響を与え るとす る。ただ し, 0期での投資
は非協力的に選択 され,また,0期での投資行動 は, 1期での生産ない し取引 を予測で きないため,それ らとは無関係 に選択 されるもの とす る。
簡単化のため,経済主体の投資をxtl0,xhf]とす る。ただ し, xLt・≧0とす る。 また,主体 iの投資行動 の コス トを Ci(xl) とす る. さ らに,次の仮定 をお く。
仮定0:Cl(xf)≧0かつCz(0)‑ 0とす る。また,Clは二階微分可能 とす る。
も し,x‑1>0な らば,x t・∈(0,xt・) に対 して,Cz'(xz)>0かつ Ctr(x.)>0で ある。 ただ し,limx,→oC:(xl)‑0,1imxz→音,C;(xi)‑…である。
ここで,経済主体 iの投資をx‑(xi,‥.,XI)とす る。 また,0期 にある 親会社 (corefirm)が部品供給業者を統合 した り,資本提携 ない し技術提携 で部品供給業者をグループ化ない し系列化 した りす ることを考えよう。親会社 は,統合 ない しグループ化のいずれにせ よ, 1期で資産の部分集合Aを コン ト ロ‑ルす ることを許 された状態,いわゆる結託Sを形成 し,協力 して生産を行 うとす る。したが って,0期でなん らかの協力関係の契約を結んでいない と(契 約 に明記 された特定請求権がないのであれば),結託のメ ンバ ーのみ しか資産 の集合Aを利用で きない ことにな り (所有者の残余請求権のみが有効 にな り), 結託 S以外のすべての経済主体 はこれ らの資産ノ吊こ接近す ることを妨げ られ る
とす る。われわれは,また,1期で形成 された結託 別 ま,事後的な意味で,効 率的配分を選択す ると仮定す る。 さらに,結託のコン トロール下 にあるすべて の資産 は効率的 に利用 され るとす る。 この とき,結託Sは最大利益U(S,Al
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∬)を もっ とす る。 これは,いわゆる,特性関数 と呼ばれ るものである。 さら に,所与の結託Sにおいて,経済主体 iの投資の限界利益 は次のようである。
g u(S,A Ix)‑ui(S,A Ix)
さ らに, ここでは,結託内の利益配分基準 として シャプ レイ値が用い られる とす る。そ こで,次 に, シャプ レイ値 について簡単 に触れてお く。 まず, シャ プ レイ値の特性関数 について次のような仮定をお く。
仮定 1:U(S,A Ex)≧ 0,U(¢,A rx) ‑ Oである。 ただ し, ¢は空集合で ある。U(S,A 巨 )はxに関 して二階微分可能である。 もし,xLi>0な らば, xi∈ (0,豆i)に対 して,uE'(S,A lx)≧ Oである。U(S,A Ix)はxに関 して 凹である。
仮定2 :もし, i毎Sな らば, uz(S,A Ix)‑ 0である.
仮定3:すべてのj≠ iに対 して,(∂/∂x,)ut(S,A Ix)≧0である。
仮定 4:すべての部分集合S'⊆S,A⊆ノ‖こ対 して,U(S′,A ir)≧U(S',A′一 x)+U(S\S′,A\A'1x)である。
仮定5・.すべての部分集合S′⊆ S,A′⊆Aに対 して,ut'(S,A Ex)≧yi(S′,A′l x)である。
仮定 1は特性関数の一般的性質が与え られている。また,結託がなされるとき 非負の利益が保証 され,空の結託がなさるときは利益 はないことが仮定 されて いるO仮定 2はある特定の経済主体の投資は彼が結託のメ ンバー となっている 場合だけ利益 に影響す ることを意味す る。仮定 3は結託内にいる経済主体の投 資は補完的であることを意味 している。また,仮定4はある結託の利益がその 部分結託の利益の総和 よりも小 さいのであれば,その結託 は崩壊す ることを意 味 している。そ して,仮定5は,仮定4よ りさらに強い仮定であるが,投資の 限界利益 は結託のメ ンバーの数および資産の量が増加す るに伴い増えてい くこ
とを意味 している。
さらに,結託Sの最大総利益をU(S,AIx)と表す際,結託Sは経済主体 TS
所有構造,企業イ ンセ ンテ ィブと日本的組織 システム 91
\S以外か ら結託の追加 メンバーを新たに募 ることがで きるとす る。 た とえ ば,結託 βは1期のスポ ッ ト市場で標準部品の供給業者を結託の新 たなメ ン バーとして参加 させ ることができる。 この新 メンバーは,元々のメンバーS\
βより劣位な生産性ない し劣位な重要性を もつ 。 具体的には,新 メンバーは標 準技術 はもつが特殊技術を もたないとする。 このことか ら,特性関数は次のよ
うな優加法性を保証 されるといえよう。 すなわち,U(a,4lx)>U(S,AIx) +U(S\S,4\AIx)である。 この とき,結託Sは,完結的結託であ り, これ以上の結託の拡張は存在 しない。
この優加法性 よ り, 1期での結託の最大総利益 はU(a,4ix)…V(x)に よって与え られる。か くして, この結託の行動は次のように表せる。
max W (x)…V(x)‑∑Ci(xi)
X‡ Z
この とき, ファース ト・ベス ト解 はx ‑ x*で達成 され るもの とす る。仮定 0 とシャプ レイ値の特性関数の仮定 1より,x*は一意的に与え られる5) 。
£
Ⅴ(£)x
=x*=uz・(a,4 lx*)‑C1′(ポ)fo r a l l i
(1)このように,完結的結託Sでは,経済主体 iは0期での投資ポを非協力的 に選択 し,経済主体‑の利益配分はシャプ レイ値により事後的に効率的に行わ れる。それでは,結託が完結的でないとき, シャプ レイ値による利益配分が実 行されるとき,各経済主体はどのように投資行動を変化 させ るであろうか。
その ことを考察す る前に, コン トロールの構造について定義 しておこう。 一方の当事者が もう一方の当事者の もつ資産に対する権利の行使を契約条項
5)この問題は,後に詳述するが,次の問題と同等である。
maxBi(a区)‑Cl(x)
‑∑p(S)[U(̲S,4 Lx)‑U(
S J
\i,A̲\i玩)]‑C.1(x(‑)これ より,∑p(S)uz(萱,4 lx*)‑ uz(̲S,4 lx
*
)‑ Cl・(x芋)を得,x‑x*の解 を もつ ことがわかる。92 商 学 討 究 第45巻 第 1号
に網羅す ることが難 しいのであれば,当該当事者 はその権利の行使権を購入 し た方が望ま しいであろ う。 オーナーシップはそれ らの残余請求権の購入を意味 す る。 ここで,資産の所有構造か らくる資産のコン トロール構造への投影を̲S の部分集合か ら4の部分集合‑の写像αで表す。す なわち,α(S)は結託S が 1期で コン トロールす る資産 ia,‥.,anfの部分集合である。結託 ̲Sの任 意の分割をSu(ざ\S)とす るとき, どの各資産 も,少 な くとも,結託Sな い し結託̲S\Sのいずれか によ りコン トロール され ることになる。 したが っ て,次の ことがいえる。
a(S)∩ αLS\ S)‑¢ (2)
また,結託Sの任意の部分集合S′によってコン トロール されている資産 は, また, よ り大 きな結託Sによって コン トロール されなければな らない。 した が って,次の ことがいえる。
a(S')ca(S) (3)
また, (2), (3)か ら明 らかであ るが,α(め)‑ ¢であ る。すなわち,結託のメン バーが存在 しないとき, コン トロールされ るべ き資産 も存在 しない。
定義 1:確定的 コン トロール構造 は,(2),(3)を満 たす ̲Sの部分集合か ら4 の 部分集合‑の写像αである。
コン トロール構造の例 は,経済主体 iが資産anの行使権 に対 し1投票権を もち(un(i)),多数決ルールが採用 されているケース(an∈a(S)⇔ ∑Un(i)>
0.5)もあれば,経済主体 iが資産 anを所有す るケース (an∈α(S)⇔ i∈ S) もある。しか し,ここで は後者のケースを考える。すなわち,確定的 コン トロー ル構造αを所与 として,結託Sの1期での特性関数をV(x)…U(S,α(S)i
x)と表す.そ して,経済主体 iのV(x)に対す るシェアはシャプ レイ値 の 配分基準 によって次のように与え られ るとす る。
所有構造,企業インセ ンティブと日本的組織 システム 93
Bl(a lx)… S∑.1〔二Sp(S)[U(S,α(S)lx)
ただ し,p(S)
‑U(S\i,a(S\i)
(S‑1)!(I‑S)!
J!
(4)
また, Sは結託Sに参加 したメ ンバ ーの数で ある (LSl‑S)。具体的には,親 会社 (corefirm)の傘下 の企業数 を表す。 シャプ レイ値 によ る利益配分 は, 経済主体 iの結託 に対す る期待貢献による利益配分を意味す る。経済主体 iの 任意 の結託Sでの貢献 は [U(S,a(S)Ex)‑U(S\i,a(S\ilx)]によ って与 え られ る。すなわち,U(S,α(S)Ex)は主体 tが結託Sに加わ った ときの利益で あ り,U(S\i,α(5\釧 x) は主体 iが結託Sに加 わ らなか った ときの利益で
l
意 の結託Sは確率p(S)で生 じる。すなわ ち, Ⅰ人のすべての経済主体が あ る任意の順序づ けで並べ られ,先頭か ら5‑1番 目まで と先頭か らS番 目の経 済主体 iを結託Sとし,それに続 いて結託S以外の メ ンバー I‑S人が続 くと
き,経済主体 iが結託SGこ属す る確率 は(S‑1)!(I‑S)!/I!で表 され る。 し たが って,確率p(S)と貢献 とを乗 じた ものが期待貢献 として表 され る。
ここで,先 と同様,経済主体 まは 0期での投資xiを非協力的 に選択 し, 1 期での各経済主体‑の利益配分 はシャプ レイ値 によ り事後的に効率的に行われ
るとす る。ただ し,先 と異 な り,完結的結託での下で はない とす る。 この とき, 各結託で各経済主体 はどのよ うに投 資行動 を変化 させ るであろ うか。 0期で は,経済主体 iは純利益Bl(αlx)‑CL(xi)を最大化す るよ う投資行動xiを 選択す る。 この とき,仮定 0‑2よ り,ナ ッシュ均衡解x ‑ xe(α)は一階の 条件 を満たす。
∴
∴ ‑ ∵ x=Ⅹ*(a)S;ESP(S)uzlS・a(S)lxe(α)]‑ C'(xe(a)) forall i (5)
94 商 学 討 究 第45巻 第 1号
仮定 5と(3)式 よ り,(5)式の左辺 は∑p(S)ui[さ,4 lxe(a)]よ り等 しいか小
さい値 であ る。す なわち,∑p(S)ui[S,α(S)圧e(α)]‑ul[S,a(S)圧 e
(a)]≦ ui[草,4 Jxe(α)]‑∑p(S)ul[草,4 lxe(a)]で あ る。す なわ ち, xli‑(xl,‥.,Xz̲ 1,X i+1,‥.,X l)を所与 と した とき,ut[S,a(S)k e(α)]
≦uz'[萱,4 lxe(α)]であ り, しか も,C(xl)は結託Sで も結託Sで も変 わ らないので, この とき,(1)と(5)を比較す ると,∬̀(α)≦∬*とな ることがわか る6) (図 Ⅰ‑ 1)。
図Ⅰ‑1:コン トロール構造 と均衡投資
6)社会的余剰も完結結託の方が不完結結託よりも大である。これについては,Hart andMoore(1990)を参照。
所有構造,企業インセ ンティブと日本的組織 システム 95 提言 1 :任意の コン トロール構造αの とき,不完結結託で過小投資がみ られ
る。すなわち,一意のナ ッシュ均衡解xe(a)は,各経済主体 iについて,xc
(a)≦ x串を満たす。 したが って, コン トロールされ る資産がa(S′)がa(S)
‑変化 し,ただ しa(Sつ⊆ α(S),しか も,すべての経済主体 の投資限界利益 が増大す る限 り,すなわち,各経済主体 iについて次式が成 り立つ限 り,均衡 投資は増大す ること (xe(a(S/))≦xe(α(S)))になるo
gBi(a(S)Jx)‑2g Bt(a(S,)Ix)
以上みてきたよ うに, シャプ レイ値による利益配分の下では,結託Sの大 き さに依存 し,経済主体の期待利益が変化 し,それに応 じ各経済主体 はその投資 行動を変化 させ る。まず,結託が完結 しているとき,すなわち,親会社が製造 に必要な部品供給業者を統合 し完成車 メーカーとして成 り立 っているときの経 済主体 iの投資イ ンセ ンティブは,それが完結 していないとき,すなわち,親 会社が車体パーツ供給業者のみを (あるいはエ ンジンパーツ供給業者のみを) 統合化ない しグループ化 しているときのように完成車 メーカー としては不完結 である経済主体 iの投資イ ンセ ンティブよりも大 きい といえるのである。 これ は,結託が完結的でないとき,結託内の経済主体 iの投資は (結託外の経済主 体jの投資を通 じて,(∂/∂xj)U'(S,Afx)≧o)外部経済を生 じることに な り,投資か らの完全な リター ンが期待で きないことによる。すなわち,車体 部門‑の投資はこの部門に追加利益を もた らすばか りでな く,エ ンジン部門の
I
投資を誘発 しこの部門に追加利益を もた らすが,エ ンジン部門は結託外である ので車体部門はこの部門か らの利益配分 にあずかることはないのである。
Ⅱ.企業者インセンティブと日本的組織 システム
Ⅰ節では,結託が完結結託であるのか不完結結託であるのかが経済主体の投 資イ ンセ ンティブに影響す ることを明 らかに した。しか し,そ こでは,結託の
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形態については考察の対象 とは しなか った。ただ,席託の形態 として,統合タ イプと企業 グループない し系列タイプが考え られ ることについて触れたにすぎ なか った。 しか しなが ら,結託の形態,すなわち,組織のシステム ・デザイン が経済主体の投資イ ンセ ンティブに大 きな影響を もっ ことは当然予測 されると ころである。そこで, この問題,結託の形態が経済主体の投資インセ ンティブ にどのような影響を与えるのかを本節で考察す る。そ して, これによ り, 日本 企業のとる組織 システム ・デザイ ンの経済合理性 と米国企業の とる組織 システ ム ・デザイ ンの経済合理性を説明す る手がか りを与えることを 目的 としてい る。
一般的には,経営者が企業者イ ンセ ンティブを もつ場合,投資効率をあげる ことが知 られている。特に,投資の対象 となる領域が リスクを もっ場合,企業 者精神ない し企業者インセ ンティブの有無が限界投資利益に大 きく左右する。
したが って, ここで問題 となるのは,企業者精神ない し企業イ ンセ ンティブを 醸成する源泉 となるものである。そ して,いわゆる,所有 と経営の分離の視点 か らの解答 は,所有経営者のみが企業者イ ンセ ンティブを有 し,所有経営者に は企業者イ ンセ ンティブが欠如す るとい うものである。
結託の形態 との関連で この問題を考える。そこで,まず,結託の形態 として の統合タイプをとりあげる。 これは,親会社 (corefirm)が周辺企業を吸収
・合併等で内部化す る形態である。,米国のGM等 にみ られ る垂直統合企業が それにあたる。そ こでは,いわゆる部品供給業者 は親会社の一部門 として内部 化 されている。 したが って, この結託の形態では,周辺企業の資産の所有権は 親会社へ移 り,雇用経営者 によって管理 される当該部門は企業者インセ ンティ ブを喪失す ることになる。他方,企業 グループない し系列 タイプの結託の形態 では,周辺企業は親会社を中心に緩やかな結びつ きを もつ 。 トヨタ等の系列戟 引を基本 とする中間組織が これにあたる。そこでは,グループない し系列企業 の資産の所有権 は親会社 に移 るのではな く,系列企業 に維持 されたままであ る。 したが って, この結託の形態では,系列企業は企業者精神ない し企業者イ ンセ ンティブを保持 したままとなる。
所有構造,企業インセンティブと日本的組織 システム 97 ただ し,すべての投資領域で企業者イ ンセ ンティブが重要な働 きをす るので はない。例えば,研究開発等の特殊資本投資領域では,企業者イ ンセ ンティブ が特 に必要 とされ,しか も,投資利益 はこの要因によって左右 され る。しか し, 生産 ・販売等の一般資本投資領域では,企業者イ ンセ ンティブは特 に必要 とさ れず, しか も,投資利益 はその有無 に左右 され ることはない。 ここで, Ⅰ節で の仮定のはかに,次の ことを追加す る。
仮定6:特殊資本投資では,企業者精神ない し企業者イ ンセ ンティブは限界投 資利益を増大 させ る。 すなわち,(∂/∂xi)U(S,AIx,M‑ 1)≧(∂/∂xi)U
(S,A Ix,M三 0),ない し,ui(S,AIx)≧ ul(S,AIx)である。
仮定6は,投資対象が企業者イ ンセ ンティブが必要不可欠な特殊資本領域であ る場合,統合 タイプの結託では,結託内の経済主体 は資産の所有権をな くし, その結果,企業者 イ ンセ ンティブを喪失す るため,低 い限界投資利益ui(S, A lx)しか期待できない。他方,企業 グループない し系列 タイプの結託では, 結託内の経済主体 は資産の所有権を保持 し,その結果,企業者イ ンセ ンティブ を維持 したままとな り,そのため,よ り高い限界投資利益値uL(S,AEx)(≧ yi
(S,A Ix))を期待で きるとい うものである。
これまで,組織 システム ・デザイ ンが異なると,当該組織の企業者イ ンセ ン テ ィブが維持 された り喪失 した りす るのをみて きた。 また,企業者 イ ンセ ン ティブは特殊資本の領域で限界利益を上昇 させ ることを仮定 した。 この ことを 前提に,さらに,当該組織の投資対象領域が異なるとき,それぞれ異なる結託 形態の下で経済主体の投資イ ンセ ンティブはどのよ うに変化す るかを考察 しよ
う 。
経済主体が投資対象をどのように限定す るかによ り,投資に関す るそれぞれ の費用関数の形状が異なることが考え られ る。 ここでは,極端な2つの場合を 考えよ う。 1つめのケースは,結託内にある経済主体が,単価のそれほど高 く
ない未熟練の労働者を もっぱ ら雇用 し,機械 ・設備 も市場で容易に調達で きる など,一般的な投資行動を している場合である。 このとき,規模の経済の範囲 では限界投資費用は低いままであるが,その範囲を越えると急に上昇す ると考
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え られる。 この例 として,部品供給 メーカーを内部化 したGM等の垂直統合 企業をあげることがで きよ う。 そこで生産 され る部品はGMの各車種 に共通 に使用 され,大量生産す ることでその投資 コス トを回収できるタイプ (統合内 標準資本)の ものである。 ここでは,当然,ある程度の投資量までは,限界投 資費用は低いまま推移することが予測され る (図 Ⅱ‑ 1)0
これに対 し,2つめのケースは,結託内にある経済主体が研究開発を重視 し, 単価の高い研究開発要員の雇用,研究開発のための人材育成等,特殊な人的資 本への投資,特殊な研究施設 ・設備等,特殊な物的資本への投資を行 っている 場合である。 ここで生産 されるのは,標準部品ではな く特殊部品であり,高い 技術を要求 され, したが って,高い水準での投資の維持が必要 とされるのであ
所有構造 ,企業 イ ンセ ンテ ィブ と日本 的組織 システム 99
る。 この種の企業行動をとる経済主体 は,付加価値の高い高品質の特殊部品を 供給す ることが可能であろう。 そ して,そこでは,当然,投資量に関係な く, 限界投資費用は相当に高いことが予測 される (図 Ⅱ‑ 2)。
この とき,経済主体 iの投資に関す る費用関数はそれぞれ2つの極端な形状 を示す ことになる。その 2つの費用関数 は,研究開発を要す る特殊部品を生産 す る場合を CH(x)で表 し,研究開発を要 しない標準部品を生産す る場合を
CL(x)で表す。ただ し, CH(x)≧CL(x),CH'(x)≧CL'(X)とす る。
解の一意性を保証す るために,仮定 0に したが って,投資費用関数 はxi‑
0でゼ ロにな り, しか もxz・‑ も の とき‑となるとす る。また,仮定 1より, 投資利潤関数 は,U(S,a(S)lx)≧ 0を満たす凹関数であるO したが って,
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ui‑C′となる点がxi‑[0,豆i]でかな らず存在す る。 ここで,重要なのは,そ れぞれの結託の形態で, しか も,それぞれの投下資本の性質 により,均衡投資 xeが どのよ うに異 な るかを明かにす ることであ る。すなわち,投資対象領域 のいかんで投資費用関数がそれぞれに異な り, また,組織 システム ・デザイ ン の相違 (企業者 イ ンセ ンティブの有無)いかんで限界投資利益が異なるとき, 投資イ ンセ ンティブを損なわない最適組織 システム ・デザイ ンはどのような も のかを明 らかにす ることである。
提言2:規模の経済が極めてよ く働 く産業にある標準部品メーカーは統合 タイ プの結託で も部門の投資イ ンセ ンティブはほとんど変化 しない。
U品(S,a(S)Ixe)‑ ui(S,α(S)lxe)‑CL'(xe)
一般資本投資を考えてみる。 ここで は末熟練労働者,一般機械 ・設備等への 投資が主 な対象 となる。 したが って,限界投資費用C;は,規模 の経済の範囲 では低いまま推移す る。 しか し, この範囲を逸脱す ると,未熟練労働者で も雇 用が難 しくなった り,一般機械 ・設備で も購入が困難 になった り等で,極端 に 上昇 してい く。 また,企業 はこれ ら‑の投資か ら,いわゆる,標準部品を生産 す るので, この とき,限界投資利益 uiはかな り低 いまま, しか し,不変のま
ま推移す ると予測で きる。 しか も, この標準部品の生産 には企業者 イ ンセ ン ティブの助けが特 に必要であるとは思われない。なぜな ら,新 しい領域‑の事 業展開で はな く, リス クを負 って事業展開をす る事態 とはな らないか らであ
る。結局,この ときの限界投 資利益 と限界投 資費用の性質 よ り,U孟(S,α(S)
Txe)‑vt(S,a(S)lxe)‑CL'(xe)を満たす均衡投資xeはかな り高い位置 とな ることがいえよ う。 ここに,標準部品メーカーのような場合 は統合 タイプの結 託で も投資イ ンセ ンティブは低下 しないことがいえる。 したが って,小品種大 量生産を とる (大量の標準部品を生産の基本 とす る)GM等 の米国 自動車産 業でみ られる部品供給 メーカーの垂直統合化政策 は決 して誤 った もの とはいえ
ない。