一 299 一
東医大誌 59(4):299〜301,2001
東京医科大学病院熱傷ユニット入院症例の5年間の臨床統計
Clinical study of burn victims treated in the burn unit of Tokyo Medical University in recent 5 years
菅 又 章1)
行 岡 哲 夫3)
茂 原 健1) 松 村
1)東京医科大学八王子医療センター形成外科 2)東京医科大学形成外科
3)東京医科大学救急医学
A2)
【要旨】東京医科大学熱傷ユニットは,東京都熱傷救急専門医療施設1施設として,1982年の発足以来数多 くの熱傷患者を収容し,治療を行ってきた.今回は最近5年間の収容患者を統計学的に集計し,近年の都市
型熱傷患者の動向を検討した.その結果,入院患者は形成外科に併設されたユニットとしての特徴を有し,年齢構成は都心の居住者の状況を反映していた.
はじめに
東京都は新宿バス放火事件による広範囲熱傷患者 の大量発生という救急医療上対処困難であった事件 を契機として,衛生局の指導のもと1982年に熱傷救 急専門医療施設を整備,認定した.発足当初は7施設 であったが,現在は13施設となり土曜,日曜,祭日の 熱傷治療を当番性で担当している.しかし,実際には 当番日以外でも,都内で発生する中等度以上の熱傷患 者の70%近くがこれらの施設に収容されている.
東京医科大学熱傷ユニットも専門施設に認定され,
発足以来のメンバーとして積極的に熱傷患者の治療 を続けており,その取り扱い患者数が最も多い施設の 一つとなっている.今回は,最近5年間の収容患者を 集計し,最近の都市型熱傷患者の動向を検討した.
対象症例
1996年4月から2㎜年3月までの5年間に東京医
科大学熱傷ユニットに収容された症例を対象とした.
ただし,小児外科病棟で管理した幼小児熱傷患者と気 道熱傷のみで救命救急病棟で管理された症例も対象
に加えた.
結 果
患者総数は252名で,男性146名,女性106名,年
齢は0歳から101歳で平均40.37±26.07歳(mean±
SD)であった.熱傷面積は気道熱傷のみで0%であっ たものから97%までで平均9.42±15.56%であった.
Burn Index(BI)の平均は6.50±13.10, Prognostic Burn Index(PBI)の平均は46.87±32,52であった.在院日数
は最長204日で平均22.42±22,91日であった(表1).
表1
全体症例 死亡症例 年齢
唐aSA
aurn Index(BI)
orognostic Burn Index(PBI)
40.37+26.07 −
X.42十1556 −
U.50十13.10 −
S6.8フート32.52 一
66.82十15.74 −
T0.47±26.10
S3,84十25.OI −
撃P4.19十29.05 一
キーワード:熱傷,熱傷ユニット,統計
(1)
一 300 一 東京医科大学雑誌 第59巻第4号
70 60 50 40 30 20 10
0
1996
年度別入院患者数
68
53「
47
36
48
1997 1998
図1
1999 2000
45 40 35 30 25 20 15 10
5
年齢別患者数
黛
a 黛p 2 象
1◎
16
原因別症例数
その他
化学剤電撃
爆発過熱固体
過熱液体
火焔
120 100 80 60 40 20 0
104 88
18
7 5
曇茸茸獣鰍証型
糠騨暗魁$
勲唄
図3
年度別入院患者数は1999年まで増加したが,2㎜
年は若干減少した(図1).患者の年齢分布では,20歳 代が最も多く次いで10歳以下であった(図2).受傷 原因別分類では過熱液体によるものが最も多く,次い で火焔によるものであった(図3).気道熱傷を合併し た症例は60例(23.8%)であった.四半期別の患者数 では各期に大きな差はなかった(図4).
死亡症例数は17例であった.死亡例の平均年齢は
66.82±15.74歳,平均熱傷面積は50.47±26.10%,平均 BIは43.84±25.Ol, PBIはll4」9±29。05であった.死亡症例における気道熱傷の合併は14例(82.4%)で あった.また,受傷原因は火焔によるものが13例,爆
発によるものが2例,過熱液体によるものが2例であった.
Skin bankを使用した症例は5例で,3例は死亡し たが,2例は救命した.
考 察
東京医科大学熱傷ユニットは16階東病棟に設置さ
72
四半期別患者数
1−3月
10−12月
国
64
63
図4
7−9月
53
れた病棟併設型ユニットである.病床数は3床で形成 外科により運用されている.入院を必要とする学童以 上の熱傷患者は原則としてこのユニットに収容され る.今回の統計では,気道熱傷のみで救命救急病棟に 収容された症例と,小児外科病棟に収容された小児熱 傷症例もユニット患者として集計した.
東京医科大学熱傷ユニットに収容した熱傷患者の
分析を,東京都11ユニットの1983年4月〜1992年3月までの入院患者を集計した統計結果1)と比較してみ ると,特徴的なのは平均受傷面積が若干少ないことで ある.この理由は,当熱傷ユニットが形成外科に併設
(2)
2001年7月
菅又他3名:東京医科大学病院熱傷ユニット入院症例の5年間の臨床統計 一 301 一されていることから,救命センターに併設されたユ ニットに比較して,形成外科的治療が必要となる手や 顔面,陰部などの特殊部位の熱傷患者が収容されるこ とが多いためと考えられる2).また,患者の来院手段が 救急車によるものが139例に対し,自力来院がllO例
あったことも特徴的である.これは,熱傷面積が少な い患者が多かったためであると同時に,交通網が発達 した新宿に位置するユニットであるためと推察され
る.
年齢別患者数では20歳代に患者数のピークがある ことが特徴である.この原因は明確ではないが,都心 であるため壮年者に多い労災事故が少なかったこと などが推察される.また,60歳以上の患者比率も東京 都全体の統計1)より多いが,これは都心の居住者が高 齢化していることの反映であると考えられる.受傷原 因では火焔が比較的少なく,過熱液体が多いことが特 徴である.これは新宿近傍の都市型のライフスタイル において火を使うことが地方より少ないためと思わ れた.その他,在院日数がやや長いことは,救命的治 療に引き続き形成外科的治療も行われるためである.
死亡症例では高齢,広範囲熱傷,気道熱傷の合併が
大きな要因であることが認められ,この結果は東京都 全体の統計と一致した.
Skin bankを利用した5例のPBIの平均はl16±12.
5ときわめて致死的症例であるが,このうち2例を救 命し得たことは,skin bank systemの有用性を強く裏
付けていた.ま と め
最近5年間に東京医科大学熱傷ユニットに収容さ れた熱傷患者を集計し分析したところ,形成外科に併 設されたユニットとしての特徴があり,大都会新宿周 囲を背景とした患者構成であることが判明した.
文 献
1)村松正久,島崎修次,相川直樹,小林国男,菅又 章,野崎幹弘,前川和彦,井砂 司,樋口良平,濱 邊祐一,辺見 弘:東京都のll熱傷ユニットにお ける過去10年間の熱傷統計.熱傷22:55〜61,
1996
2)松村 一,松前秀治,谷平 茂,渡辺克益,牧野准
男:当院熱傷入院患者の統計的観察,熱傷ユニッ ト開設以来3年6ヶ月のまとめ.熱傷16:164,
1990.
(3)