八戸工業大学食品工学研究所紀要 第 2巻 (1991年 2月 )
熱風乾燥法 における鮮魚の乾燥特性
青 木 秀 敏キ
Drying Characteristic of Ra、 v Fishes under Hot Gas Drying Conditions
Hidetoshi Aoki Abstract
The drying characteristic of raMI(ishes under hot gas dving conditions was investigated by measuring drying characteristic cur、 e The rishes used in experilnent 、 vere paciFic saury, sardines,salmon,cod and pOllack,natrish,squid and cuttlerish
Experilnental data shO、
,、ed that the drying characteristic curve of raM/1ishes direred one another lt、 vas considered that the amount of lipid and the internal structure of Fishes affected the drying characteristic of rattr Fishes
̀よ
じ め に
八戸港 の今年 の水揚 げ数量 は ,魚 市場 開設 以 来史上最 高 を記 録 ,釧 路 に次 いで全 国第 2位 の 座 を確 保 して い る。水揚 げ数量 の 54%が イ ワ
シ , 23%カ ミイカ , 6%カ ミ サバ とな ってい る。
日本 人 が一 番 多 く食 べ て い る魚 は イ カで あ り ,八 戸港 は国内総水揚 げ量 の 3分 の 1,世 界 の
15%を 占め ,世 界 で も トップの イ カ水揚 げ港 で あ る。生産額 か らみ る と ,イ カは八戸港全体 の
80%,年 間 600億 円を 占めて い る。 しか し最近 は水揚 げ量 の増大 か ら相場 が暴落 し ,業 界挙 げ て イカの消費 キ ャンペ ーンを行 った ことは記憶 に新 しい。 イカに限 らず 魚の消費拡大 のため に は ,調 理 が しやす く , しか も付加価値 の高 い新 しい水産加工 品を開発 し ,全 国各地 へ販 売 す る こ とが課題 とな ってい る。
最近 ,動 物 性脂肪 で も ,魚 の脂防 の よ うな液 状 の油 (不 飽和脂肪酸 )に は ,動 脈硬 化 を防 ぐ
EPA(エ イ コサペ ンタエ ン酸 )が 多 く含 まれ て
平成 2年 10月 31日 エネルギーエ学科 食品工学研究所 (併 任
)い る ことが注 目を浴 びてい る。 EPAは ,サ バ ,ア ジ , ニシ ン ,イ ワシ等 のいわ ゆ る青 背 の魚 に多
く含 まれ , これ らの魚 は ,成 人病 予
Fノウと治療 に 効果 があ る と報告 され てい る。
現在 ,八 戸港 に水揚 げ された 魚 は ,鮮 魚 とし て全 国各地 へ,あ るいは八戸地 区 14社 の魚粉製 造工場 へ 出荷 され る以外 は ,大 型 冷蔵庫へ い っ た ん冷凍貯蔵 され る。 白銀漁協 ,八 戸魚連 ,八
戸加工 連 等 の大型 冷蔵庫 には ,‑40℃ の冷 風 で 冷凍 した 魚 が ,約 ‑8℃ の庫 内 に貯蔵 され てい るが ,相 場 の緩衝 役 としては ともか く ,そ の エ
ネ ル ギ ー コス トは か な りに な る もの と思 わ れ る。
た しか に,鮮 魚 として出荷す るのであれば,冷 凍 して保存 す るのが最 適 で あ るが ,各 種 の水産 加工場 に出荷す る場合 には ,鮮 魚 を乾燥 して保 存 す る こ とも貯蔵 コス トが安 く , しか も加工 の 操 作 が短縮 され る一つ の方法 であ る。 また ,例
えば魚 肉た ん 白を原料 に機能性食 品 ,健 康 食 品
素 材 等 の新 しい水 産 加 工 品 を製 造 す る工 程 に
は ,鮮 魚 を保存す る前処理 あ るいは製造工程 の
中 に魚 肉を乾燥す る操作 が必ず必要 にな って く
る。
乾燥 とは ,水 分 を含 んで い る湿 り物 質 に熱 を 加 える こ とに よ り ,そ の水分 を蒸発除去す る操 作 を指 し , 日常的 には洗濯物 を乾 かす場合 ,工
業 的 には ,石 炭 ,粘 土 ,木 材 ,セ メン ト等 の製
造 に利用 され て い る。食 品加工 の分野 で も ,粉
ミル ク ,イ ンス タン トコー ヒー等 ,熱 風 中 に液 状 の物 質 を噴 霧す る こ とに よ り粉 末 状 の製 品 を 作 る際 に乾燥操 作 が利用 され て い る。 最近 で は 水産加工 の分野で も ,天 日乾燥 に代わ り ,新 し
い乾燥法 が開発 されつつ あ る現状で あ る。
本研究 は ,各 種 の鮮 魚が , どの よ うな機構 で 乾 燥 され るの か を 実 験 的 に検 討 す る こ とに よ り ,効 率 の良 い , しか も味 の損 なわ ない乾燥保 存 法 を確立 し ,付 加価値 の高 い水産 加工 品 を開 発 す るた め の基礎 資料 を提示 す る こ とを 目的 と
してい る。
1.実 験装置および方法 1.1 実験材料
実験 に使用 した鮮 魚 は ,八 戸市営魚菜市場 か ら購入 した冷凍 され てい ない新 鮮 な魚 を用 い
,鮮 魚 はベ ニサ ケ ,セ グ ロイ フシ ,サ ンマ ,ヤ リ
イ カ ,黒 ガ レイお よびス ケ ソウグラの 6種 類 を 用 いた。表 1に それ ぞ れ の魚 の成 分分析例 1)を 示す。
浪」 定 サ ンプル は,内 径 φ 49mmの ステ ン レス
シ ャー レの中 に魚 肉を細切 れ に して ,密 に詰 め る ことに よ り作成 した。それぞれ の魚 につ いて
,質量測 定用 お よび表 面温 度決」 定用 の 2つ のサ ン ブルを作成 した。
なお,季 節 に よる魚の成分 の変化 を考慮 し,鮮 魚 は全 て 12月 〜1月 の間 に購 入 した もの を使 用 し ,購 入 した鮮魚 は冷蔵庫 内に保管 し ,3日 以
表 1 魚の成分分析例 (100g当 り ,単 位 〔
g〕 ) タ ラ内 に使 用 した。
1.2 実験装置 お よび方法
熱 風 乾 燥 法 実 験 装 置 の概 略 図 を 図 1に 示 し た。熱風乾燥機 (内 法 45 cm× 45 cm× 45 cm)は 横 か ら送 風 され ,排 気 は煙 突 よ り屋外 に出 され る形式 の物 を使用 し,排 気 ダンパ ーを 20%開 の 状態 に保 ち ,機 内温 度 を一定 に保 った。
質量 は ,15分 毎 に シ ャー ンを乾燥機 よ りす ば や く取 り出 し ,電 子天稀 に よ り ,乗 せ た直後 の 値 を決 U定 した。 出 し入れ に伴 う質量 お よび表面 状 態 の変 化 は ,短 時 間 で あ るた め ほ とん どな か った。 また ,魚 肉 の表 面 温 度 は φ
O。lmmの
Cu― Co熱 電 対 を表 面近 傍 に取 り付 け る こ とに よ リー定時間毎 に測定 した。
本実 験 で用 い る平衡 含水率 ″ ?及 び 自由含 水 率 仇ヶはそれぞれ次式 で表 され る。ここで WIま
個 体重量 ,Weは あ る乾燥条件 で質星 の 変 化 が
な くな る時点 の平衡 時個 体質量 ,Woは 180℃
に上 げて完全 に乾燥 した完全乾燥個体重量 であ る。
含水 率 W― Wo
″ = ヽ ヽ /o
自由含水率 時 =型 転ぎ 生
平衡合水率″ ? 型 鴇話評 生
④
③
① 温度計 ④ 煙突
② 記録計 ⑤ 熱風乾燥機
③ ダンパ 水 分
蛋 白質 脂 質
82 7 15 7
04 図 ② 1 熱風乾燥法実験装置概略図
― ‑ 42 ‑―
61 8 20 6 16 2 サ ン マ
64̲6 19 2
138
イ ワ シ
69 3 20 7
84
サ ケ
76 9 19 0
22
カ レイ
81 8 15 6
10
イ カ
団
⇒
①
2.実 験結果 および考察
図 2〜 図 7は 熱風乾燥の場合 における 6種 類 の鮮魚の乾燥特性 曲線を示 し ,魚 の種類による
500
乾 燥特 性 の違 いをみた もので あ る。 図中 には熱 風 温 度 を 100℃ 〜160℃ の間 で 4段 階 に変 化 さ
せ た場合 の乾燥特性 曲線 を示 し ,鮮 魚 の乾 燥特 性 に及 ばす熱 風温 度 の影響 も検討 した。
図 2に 示 した タ ラの乾燥特性 曲線 か ら鮮魚 の 状態 の タ ラの 自由含水率 は約 5.2と 大 きい。つ ま り完全 乾 燥 質量 l kgに 対 して乾 燥 で除去 で き る水 分 が 約 5。 2 kgも 含 まれ て い る こ とを示 して い る。 この こ とは表 1に 示 した よ うに タ ラ が 6種 類 の魚 の中で は一 番 水 分合有 量 が多 く
,脂 質 が 少 な い魚 で あ る こ とに よ る と考 え られ る。 また ,グ ラの場合 の乾燥特性 は ,い ず れ の 温度 の場合 で も一定 の速度 で乾燥 が進行す る恒 率乾燥 が行われ ,そ の後乾燥速度 が遅 くな る減 率乾燥へ と移 ることがわ か る。恒率乾燥期 間 と 減 率乾燥期間 の境 の 自由含水率 であ る限界合水 率 の値 は熱 風 温 度 に よって若 千 の変 化 は あ る が,2.0〜 24の 範 囲 にあ る。さ らに乾 燥 速度 につ いては ,熱 風温度 が高 い方 が当然 の ことなが ら 速 度 は速 くな ってい る。
図 3に 示 した イ カの場合 ,熱 風温 度 の上昇 に 伴 って恒率乾燥速度及 び減率乾燥速度 は比較 的 規則 正 し く増加 して い る。 また熱風温度 100℃
︹ ﹂ 飩 E ヽ 一 ︺
1000
褪 四 当 懇
0 o 10 20 30 40 50
自 由 含 水 率 〔 ― 〕 図 2 乾燥特性 曲線 (タ ラ )
500
60
10 20 30
自 由 含 水 率 図 3 乾燥 特 性 曲線 (イ カ
)︹ 二 七 ュ
︶
褪 凹 蝶 報
0 0 O
r t
〕
160° C
140° C
120° C
100° C
△
○ ロ
●
160° C
140° C
120° C
100° C
△
○
□
0
50
︹
︱ 准 ユ
︺ 褪 四 当 胡
1000
500
500
05 10 15 20
自 由 含 水 率 〔 図 4 乾燥特性曲線 (カ レイ
)25
50
〕
︹ 生 推
︺ 悩 増 当 輝
1500
10 2 0 3 0 4o 自 由 含 水 率 〔
図 5 乾燥特性曲線 (サ ケ
)〕
〜140℃ の場合 ,減 率乾燥 には乾燥 速度 が直 線 的 に減 少す る減 率第一段 と非直線的 に乾燥速度 が減 少す る減率第二段 が表 われ る傾 向がみ られ た。これは ,6種 類 の魚 の中では イカのみ にみ ら れた傾 向であ り ,イ カの肉質 が繊維質材料 か ら 構 成 され て い る こ とに関係 してい るもの と考 え
られ る。
図 4に 示 した カ レイの場合 ,限 界 合水率 の値
は いず れ の熱 風 温 度 の場 合 で も約 1.0と 少 な く ,合 水率 がかな り小 さい値 まで恒率乾燥が続 くこ とがわ か る。
図 5に 示 したサ ケの場合 , カ レイ , イ カお よ び タ ラよ り脂質が多 い ものの ,繊 維 質 の 肉質構 造 か ら水 分 の内部拡散 が 円滑 に行 わ れ るた め
,恒率乾燥速度 お よび減 率乾燥速度 は大 き くな っ て い る。
□
○
△
120°
C
140°
C
160°
C
●
□
○
100°
C
120°
C
140°
C
160°
C
︹ 1000 生 推
︺ 饗 凹 雖 将
800 600 400 200
05
05 10 15 自由含 水率 〔
10 15 20
自 由 含 水 率
図 6 乾燥特性 曲線 (イ ワシ
)20
図 6お よび図 7に 示 したイ ワシおよびサ ンマ の場合 , ともに脂質含有量が大 きいため ,脂 質 が水分の内部拡散 に影響を及ぼす ことが考 えら れ るが ,両 者 とも恒率乾燥期間が存在 し ,限 界 含水率の値 は 0.6〜 0.9の 範囲 となった。しか し
,鮮魚の 自由含水率が少ないため ,恒 率乾燥速度 お よび減率乾燥速度 はほかの魚に比べ小 さな値 を示 した。
図 8に サ ケの熱風乾燥 140℃ の場合の魚肉の 表面温度 と重量 の時間的変化りを示 した。図 5 の結果 と併せて考 えると ,材 料予熱期間では急 激 に表面温度が上昇 し ,や がて表面温度は一定 とな リオ ,日 率乾燥期間に移 る。その後 , 自由含水 率の値が限界合水率 よ り小 さくな り減率乾燥期 間に移 ると ,魚 肉の表面が乾 いて くるため表面 温度 は再 び急激 に上昇 し ,機 内雰 囲気 の温 度 140℃ に近づ くことがわかる。
0 25
〔 〕
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雖 輝 い 600
500
400
四 300
100
〕
160° C
140° C
120° C
100° C
△
○
□
0
160° C
140° C
120° C
100° C
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