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再生不良性貧血の一例 金沢大学医学部放射線医学教室(主任 畢松教授)

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56

再生不良性貧血の一例

金沢大学医学部放射線医学教室(主任 畢松教授)

  田

fiiyo otcLka

   野

π甜。ε海

清  孝

Okucla

Asano

(昭和25年エ2月20同 謡曲)

(本症例は第4回北陸医学会に於て報告した)

 再生不良性貧血は1888年Ehrlichが初めて 命名した疾患であるが,我が国に於ては1917年 簡野,入沢一古賀の記載門門約200例の報告を数 へる.而して本症は貧血の中でも予後の極めて 不良な重症進行性貧血で,悪性貧血がMinot&

Murphyの肝臓療法の発見によ・つて,容易に軽 快し得る貧血に一変したのに対し,適切な治療

を行はない限り短期闇の内に死の転帰を取る点 に於て,更に大里,小宮両教授の指摘された様 に,本症の頻度が欧米より大である点に於て

も,:大いに岬町医家の関心を要する疾患であ

る.

 我々も最近本症の一例を経験し,葉酸治療を 併用して見πので,鼓に追加報告する.

 19歳の男子,会肚員  圭訴 顔面蒼自,心悸充進  1)家族歴 特記すべきものはない.

 2)饒往歴 生來健康であったが,18歳の夏にも心 悸充進が現はれ,心筋炎と診断された事があるが,当 時貧1触ま無く,其の訴へも間もなく消失した.

 3)現病歴 昭和25年2月28日,咽喉痛及び咳嚇を 俘って38ec内外の発熱があり,配置売藥の解熱剤,

鎭咳剤服用により約1週間後下熱した.;其の後格別異 常を認めなかったが,4月上旬より漸数顔色が悪くな り,心悸充進が現はれ,金沢市内の或る病院で6月迄 鉄剤の投一与を受けた。7月に凹む開業医の下で矢張り 鉄剤投与と肝臓食を勧められ,約1廻間続けたが,何 等効果無く貧血は1曾強するぽかりであった.此の間食 慾は概ね曹通で,耳鳴,眩量,頭痛等は認めなかっ

た.

 昭和25年9月18日,当牽斗に入院した.

 4)入院時の現症 体格中等,栄養は僅かに衰へて るる,顔面並びに眼瞼結膜は著明に蒼白,皮下温血は ない,体調3ア・2。C,脹搏は96,整にて緊張かなり良 好,舌は清浮で君炎はない.歯銀にも腫脹及び出血は ない.咽頭粘膜も蒼白の外異常はなく,扁桃腺にも異 常はない.父何処にも異常の淋巴腺腫脹は触れない。

 胸部 心界は略ミ正常,心音は心尖及び肺動脹難ロ で牧:縮期雑音を懸き,第2肺動脈音の充進がある.肺 では打,懸診上変化がない.胸骨の圧痛及び叩打痛は

ない.

 腹部 一般に牛坦で柔軟,抵抗圧痛はなく,肝,脾 は何れも触知しない.

 四肢 腱反射に異常なく,知覚異常もない.

 尿 淡黄色,遙明,比重1014「ウロビリノーゲソ」

蜴陽性,蛋白,糖,「グメリソ」諸反応何れも陰性・

 尿 虫卵,潜血共に陰性,

 血圧 最高142粍最低0.

[ 56 )

(2)

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山1表 血  液  所  見

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赤血球数(万)

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治療概要

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(3)

58 奥田・浅 野

 Rumpell一:Leede氏現象 陰性

 血液所見(第1表)高色素性貧血が著しく,赤血球 は大小不同症,軽度の扇形挫及び多染性を示す,塩基 性斑点を有するものは見当らないが,僅少の有核赤血 球と網欣赤血球を2⑪%に認める.伺時に白血球数が著 明に減少し,而も百分率では,顯粒白血球が減少して 淋巴球が比較的に高率である,更に血小板数も著滅し てみる.血液凝固時間(Sah]i−b onio三法)はWS it正 常範囲内であるが,出血時間(Duke三法)は軽度の 延長を認める.血清着色度(Meulengracht)は8軍位 で左程濃くない.血液型0型,

 骨髄穿刺所見(第2表)入院翌日胸骨穿刺実施,塗 抹染色標本では有核細胞は甚だ少なく,赤血球系,白 血球系共に共の比率は減少し,有配細胞の大仁が淋巴 球である.且つ有核赤血球の大部分は「ノルモブラス テン系であって,「メガロブラステソ」は全く認めら れない.骨髄巨大細胞も見当らない.

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分葉核白血球

中性好性

エオジン好性

:塩基好性 軍  核  細  胞 淋    巴    球

原 赤 芽 細 胞

正赤芽細胞

大赤芽細胞

:塩基嬉性 多 染 性 正 染 性

核分剖像 塩基好性

多 染 性 正 染 二

四分剖像

骨 髄 互 核 細 胞

網野織内皮細胞

形  質  細  胞

4.2 1.8 0

2.2 58.O e

3.6 9.6 7.O O.6 1.2 0.6 0

02

o o o

6,6 1.2 0

1.8 40.O o

3.0 12.0 6.O O.6 O.8 6.2 1.8 0

O.2 0 0

5.6 0.6

0

ユ.6

54.8 0

O.6 8.0 6.6 0.4 O.4 2.4 1.4 0.4 o o o

第2表 骨  髄  像

1−EIIX 5/X 30/X

骨鵬副詞。・2い・2101

前骨髄細胞

偶」骨萢系田月包

後骨髄細胞

申性好性

エオジン好性

塩基好性 中性好性

エオジン好性

塩基好性 中性好性

エオジン好性

塩基好性

      1学部好性

桿状核白血球:エオジン好性

1纏好性

3.8 e o

2.2 0.4 0

O.6

0..o.

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   1.Ol 4.2  2.8

⑪ 10.2 0

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⑪   0   0 2.4  4.2  6.0 0   0.2  ⑪.8

・ 。1・

   3.617.2

010.6

0   0.4

5.6 1.2

e

 以上の臨駄症状 血液像及び骨髄像を綜合して,本 患者を再:生不良性貧血と診断した.爾経過中実施した 諸検査を一括概述すると,「レ線胸部所見,活動1性病 藁は見出されない.胃液所見(Klatsh−Kalck氏法)遊 離塩酸はなく,総酸度は最高21で低酸症である.

 胃腸「レ線槍査 特記すべき所見はない♂

 血清徽毒反応 陰性,

 血液培養 陰性.・

 赤血球抵抗試験(Ribiere氏法)最小0・44%

       最大0・34%

 赤血球直径の計測(第3表,第1図)当初大型赤血 球多く,Price−Jenes氏曲線は右偏し,目.つ稻it扁ZF

となり,基底拡大する,

 血清注射実験(友田氏反応)患者血清4・Occを家兎 耳灘脈に注射したが,其の成績は第4表に示す通りで

ある.

 即ち赤血球数,鼠色素量の減少率は軽度で,血清の 催貧骨性作用は陰性である.

第3表 赤血球直径分析自分比 (!ノ)

訳畔畔5 繊密咽翫・紳5&751似・19琳乃

18/IX 9/ X 28/ X

 0.5 1  1

 G.5

      

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(4)

再生不良性貧血の一一例 59

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第1図Price−Jones氏曲線

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 経過 入院後37・2。C〜37・4。Cの微熱出没す.治 療としては鉄剤,「ヴ1タミン:B,Cの注射及び「マス

チゲン」内服(1日羅3⑪9)を行った上,9 ra 19日,

21日に取り敢へず輸血5Gcc・宛実施した・21日よ汐 葉酸(裁強張「フオリアミソ」)1日量30mg筋注開 始し,同蒔に25日より何心1⑪Gcc・宛連日反覆した.

赤宙/球数,血色素量は僅か乍ら増加し産め,心悸充進 も末日頃には軽快し,引出の「ウロビリノーゲソ」も 27目副査以後陰性となった,㈹尿中虫卵,潜血は頻 回に検査したが毎回陰性に終った.)又27日より肝臓 食を与へたが,嫌悪するので3日間で歯止した.10月 2日葉酸手持品無くなり一・時中止の已むなきに至り

(全量360mg),代りに「ヴィタミンBm(斌田均「プレ

第4表血清注射実験

家  兎 No. 1

(23COgr)

No. 2

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過  注射前 血色素量(%)

赤血球数(万)

血色素量(%)

赤血球数(万)

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75 585

三間 P2時間

6e 450 74

5L)5

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430 71

」r81

3時副4時間

6ユ 4ros

60 459 70   ア⑪ 55.K, i 528

6時聞

61 450

73 574

スミン」)15γ宛隔日に5回注射した.此の間赤血球 数,血色素量は依然漸壇を続け,色素係数は1に近く なった,10日頃には三色も明らかに良くなった様に思 はれたが,白血球数は毫も増加が見られず,血小板 数,網状赤血球絶対数には精ヒ塔加の傾向が窺はれ た.然しCabotの環駄体:及びJolly氏小体を有する 赤血1球は見出されなかった.5日の骨髄豫では有核細 胞数は前回より梢ヒ増加し,赤血球系,白血球系の比 寧は僅少乍ら増加したが,何れも其の幼若細胞増殖の 兆は殆んど認められず,造血機能が再生現象を現はし て來たとは断じ得なかった.中旬過ぎ時々極く少量の 甥血あったが,止血剤注射により間もなく消失した.

ユ8日葉酸を入手したので再び30mg宛筋注開始し,

同時に輪血は隔日としてみた.血1色素量の増加は著明 でないが,赤血球数は壌加傾向を持続した,23日眼底 検査実施(当院眼科敬室を煩す)。両測乳頭蒼白,特 に左眼に於て其の周辺部は汚臓となり,上山側動静脈 に澹ひ出血巣が認められた.28日赤血球数25⑪万とな ったので,葉数の効果を知るべく輸血を一旦申止した

(全量2700cc・)処が30日午後10時頃突如鰯血再現し,

「bロムホーゲソ」「ウ㍉タミンC.K.:P.「塩化カル

シ ウム」注射,「アドレナリン」塗布等も仲た奏効ぜ ず翌朝5時頃に至り漸く止血,然し午前10時頃より再 度出血し始め,上記諸療法により午後3時頃に至り止 血し得た,爲に貧血塘悪し,心悸:二進を強く訴へ,赤 血球数も195万と減少したので,輪血を再開せざるを 得なくなり連日反覆した処,血液像は漸次恢復を示し た.11月11日右前騰及び右上腿部に微細な皮下濫血斑 が少数出現したが,止血療法の弧{七により,1両日中 に消越し,1・umpell−Leede氏現象{ま尚陰性であった.

16日蒋び眼底橡査を乞ふた処,前回の出血巣は消失 し,限底は一般に汚舗設を呈する外異常なしとの診断 を得た.17日家庭の都合によむ退識した.回議経:過申

「レ線治療は前後12回実施し,骨髄刺戟量放射として 胸骨,両下腿及び両手に3e〜50r放射し,出血性素 質防止の意味で脾臓部に3⑪r2回放射を試みた.因に 放射条件は管電圧130KV・管電流3・O mA・濾過板

⑪.5mm Cu十2.Omm AL焦点皮膚閥距離3Gcmで,

「レ線発生装置は島津製「ポレスタ…」A号である.叉 1 「ice∫ones民曲線では第1図の様に大型赤血球が減 少して左方に移動した・入院中の輪血総量は4000cc・,

葉酸投与屋は11⑪Omgであった、

響59】

(5)

60 奥 田・浅 野

 再生不良1生貧血に対し從画品療法,肝臓療 法,胃腔療法其の他種々の療法が爲されてるる が,何れも殆んど奏効してみないか,或は効果 の認められる場合でも全く微晶晶であるに過ぎ なかった,かくて唯一のそして最良の治療法と されて來kのが反覆輸血である.即ち輸入され た血液が輩に赤血球数の不足を補ふ事よりも,

其の血液内の有効物質が造血臓器を刺戟して,

萎靡してみる再生機能を覚醒せしめるといふに 基く。而して若し何時迄も再生現象が起らぬ時 は脾臓摘出を行った方が良いと小宮教授は提唱 され,事実其の治験例を報告されてるる.叉大 里教授の推奨された骨髄の「レ線刺戟:量放射に 対しても,賛成者が可成り多いが,反:対してみ る入もあり,追試して失:敗した例もある様であ

る.

 近時高色素性貧血の治療に葉酸が賞用され1 殊に悪性貧血には其の効果が認められてみる が,再生不良性貧血に対しては賛否両説があ る..即ちSpiesは3例に, Go】dsmithは12例に1 夫々葉酸を5〜120m9宛連日経:口的に或は非経

口的に4週聞から6ケ月以上に亘って投与した が全く無効であっqたと述べ允.処がWatson等

は「レ線治療に併発した本症の或るものに葉酸 が有効であ局のを認め,更にG・ndelは原因が 十分明らかでない本症の3例に葉酸の大量(15

・〕40⑪mg)を長期聞(16日〜8ケ月)与へて良 好な結果を得たが,氏は之に対し自然寛解とい ふ事も一応考へて見るべきであるが,葉酸を大

:量而も長期聞用ふる時は良果を期待し得るもの であらうと述べた.本邦でも菊地教授等は葉酸 の有効であったと思はれる本症の2例を報告さ れたが,一一方小宮教授は反覆輪血,葉酸併用に より貧血は一旦恢復したが,輸血論義後葉酸軍 独では闘もなく赤血球数,血色素量が減少し始

め,脾臓摘出を行った症例を述べられた.

 要之,葉酸が本症に有効に作用する場合で も,其の大量を長期間に亘って投与しなければ

十分な治療的効果を期待し難い檬である、

 扱て,我々の症例では葉酸の投与:量並びに期 間は遺憾乍ら十分でなく,更に諸種療法を併用

したので其の効果如何は俄に蓮断出來ないが,

葉酸使用時と非使用時とを比較して,赤血球数 及び血色素量の増蜘i率に大差なく,叉網歌赤血 球の変動から窺っても特に有効であったとは考 へられない.Darbyも述べた様に,其の骨髄が 増殖性未分化の像を呈する大乱性貧血には葉酸 は効果があるが,本心の様に骨髄が著しく増殖 低下性を示すものでは効果がない様な感がす る.叉経壷中赤血球数の漸増したのに反し,血 小板数,就中白血球数が殆んど」曾加を示さなか ったのは,骨髄各組織には或種毒素に対し感受 性の差があり,該組織が特に彊烈に侵襲を蒙っ た事に起因するものであるまいか.然し何れに しろ前述諸療法によって見るべき寛解を齎らし た事は確実であって,何れの療法が奏効せるや を断定するのは困難であるが,恐らくは反覆輸 血が主要の役割を演じたものであらう.

 本症の成因に関しては諸家の意見は未だ必ず しも一致を見てみない。即ち原発性骨髄疾患説

(:Frank,大里),品種貧血から二次的に移行す るとの読 (Pappenheim, Hi:schfeld , Ttirk,

Naegeh),或は両者の折衷的見解を抱く入もあ る.本症例では原発性と考へる点に於て何等の 疑問はないが,其の原因に就ては不明と云はぎ るを得ix V・.即ち既往に於て一先人諸家の述べた 様な疾患或は機会に遭遇した事がなく,只3月 上旬服用した配置売粟の解熱剤或は鎭咳剤が関 係あるべく一応は有力視されるが,其の現品を 入手し得す,「アミノピリン剤と称するもので あっ1た事が判明してみるに過ぎない.文献によ れば「アミノピリン」を本症の原因申に挙げて あるが,たとへ夫れとしても其の服用:量は患者 には全く詑憶がなく,左程大量でもなかっただ らう、と推定されてからである.:叉Eppinger,

S⑪nnenfeld等;は本症の発現に体質的因予を重視

【60コ

(6)

再生不良性貧血の一例 61

したが,本例では夫れを裏づける様な何等の根 拠もない.從來の報告でも,臨沐上屡々見られ

るものは其の原因多くは不明の様である.

 最:後に本症例は始めより網駄赤血球,多染性

赤血球或は有核赤血球を認め得kので,未だ再 生不能性貧血ではなく,其の移行途上にあるも のと考へられ,從って小宮教授め所謂再生機能 減弱性貧血に該当するものと思惟する.

 1)19歳の男子に見られた原発性再生不良性 貧血の一例を報告した.

 2>反覆輸血,其の他貧血諸療法により,見 るべき寛解を來したが,葉酸の治療的効果は確 認出來なかった.      し

 稿を終るに当り,御懇篤な御指導,御校閲を賜った 恩師李松教授に深く謝意を表しますと共に,種々御教 示に与りました病理学敢室渡辺教授,太田講師に深謝

します.

主 要

1) Frank : Berlin. klin. Wochenschr., II,

Nr. 37, S. 961. u Nr. 41, S. 1062, 1915.

2) Gendel :J. of Lab. & Clin. Med., 32,

139, 1947. 3) Goldsmith :J・ of Lab・ & Clin. Med. 31, 1186, 1946.   、4) tJs宮 :

日本臨駄,第8巻,第6号.  5)菊地・読田:

文献

 日本臨}休,第7巻,第11号.  6)大里:日新  医学,第20年,第5号.   7)Spies:」・of

 tl}e Am. Med. Assoc., 130, 474, 1946. 8)

 Watson, Sebrell et al : Am. J. Med. Sci.,

 210, 463, 1945.

[ 61 :

参照

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