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方言文法全国地図解説 4 : 付資料一覧

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(1)

国立国語研究所学術情報リポジトリ

方言文法全国地図解説 4 : 付資料一覧

著者 国立国語研究所

発行年月日 1999‑03

シリーズ 国立国語研究所報告 ; 97‑4(別冊)

URL http://doi.org/10.15084/00001566

(2)

国立国語研究所報告 97−4(別冊)

方言文法全国地図解説4

   付 資料一覧

国立国語研究所

  1999

(3)

ま え が き

 『方言文法全国地図』第4集(表現法編1)には,否定・条件・可能・過去回想・アスペクトの各 表現法に関する55枚の言語地図と,参考図として「調査地点番号地図(第4〜6集)」1枚を収めた。

本書は,この地図集の解説であり,「方法」「各図の解説」「資料一覧」から構成されている。

 『方言文法全国地図』は,これまで,第1集「助詞編」,第2集「活用編1」,第3集「活用編II」

と刊行してきた。第4集以降,表現法編に入る。対象とする調査票も第2調査票に移る。そこで,

本書では,まず,「方法」において,改めて,編集方針・統合と採用の規則・地点一覧などを記す こととした。基本的な編集の方針は,第3集までと大きく変わることはないが,手続きに多少の異 なりがある。また,これまで,説明が不十分だった箇所を補った部分もある。その他,上記のとお

り調査票が異なることもあって,地点や話者にも動きがある。このような点を整理し直して提示し た。詳しくは,該当箇所を参照してほしい。なお,『方言文法全国地図』全体の目的や調査・地図 作成の方法などについては,第1集解説書において述べている。

 「各図の解説」は,各表現法(例えば,否定表現a)について,「概要と記号化」「計図の説明」か ら構成され,「各回の説明」ではさらに項目ごとに「語形の採用と統合」「語形の記号化」について 述べている。各表現法に共通する語形の採否の方針と記号化の方法については,「概要と記号化」

において説明し,各図ごとの問題については,「三図の説明」で述べるという方針を共通させた。

したがって,各地図についての解説を見る場合も,それぞれの地図が所属する各表現法の「概要と 記号化」を参照するようにしてほしい。

 解説を行うにあたっては,第3集までと同様,資料性重視の方針に従い,回答語形の採否につい て詳細に述べることに努めた。その際,各地の調査者であった方々に調査票の確認や各地方言につ いての情報の提供をお願いすることがあった。また,先行研究の成果を参考にしたことは言うまで もない。すべてについて断ることはしていないが,本書がそうした教示や研究蓄積の恩恵を受けて いることを記しておく。

 「資料一覧」では,地図作成のもとになった回答データをほぼ調査者の報告どおりの形で見るこ とができるように一覧化している。なお,「資料一覧」のための基本的な電子化データは,既刊の ものについては,希望者に公開している。また,将来はネットワーク上での公開も計画中である。

 ところで,第3集刊行後,この地図集をめぐって次のような書評がなされた。

  木部暢子(1996)「書評 国立国語研究所編『方言文法全国地図2・3』」『国語学』186

 第2・3集の活用編に関する書評であり,有益な内容であるとともに,その中ではいくつかの問

題点が提示された。これに対して,

  大西・小林(1997)「木部暢子氏の書評「国立国語研究所編『方言文法全国地図2・3』」を読    んで」『国語学』188

においては,それぞれの点について,担当者の立場から解説を行った。あわせて参照することによ り地図集の理解に役立つであろう。

 『方言文法全国地図』を利用した研究が,すでにさまざまな形でなされてきている。今後も多く の分野で活用されることを希望する。『方言文法全国地図』は全6集を予定している。今後とも読 者諸賢の御教示を期待したい。

       1999年3月

(4)

『方言文法全国地図』第4集編集の担当者

国立国語研究所言語変化研究部第1研究室  吉岡泰夫(部長)

 三 井 はるみ(主任研究官)

情報資料研究部第2研究室  井上文子(主任研究官)

非常勤研究員  佐 藤 亮 一 地方研究員  小 林   隆  沢 木 幹 栄

大西拓一郎(主任研究官)

白 沢宏枝(研究員)

W.A.グロータース

篠 崎 晃 一 内 間 直 仁

 言語地図の作成は,上記編集担当者の合議により進めたが,項目ごとの主たる担当者は,次のと おりである。

否定表現a(151〜160図)……大西 否定表現b(161〜162図)……小林 否定表現。(163〜166図)……篠崎 条件表現(167〜172図)……三井 可能表現(173〜185図)・…・・吉岡 過去・回想表現a(186〜195図)…

過去・回想表現b(196〜197図)……

西藤 大佐

    回答の分類および草稿地図の作成はグロータース,白沢も担当した。白地図への押印から 印刷段階の校正に至る作業は白沢が中心となった。語形の採用と統合にあたり,内間は琉球地方の 回答について助言を行った。

 解説書は,大西,三井,吉岡,井上,小林,佐藤,篠崎が分担して執筆した。「資料一覧」の作 成は,大西,白沢,沢木が中心となった。地図集の「概説」の英文はグロータースが執筆し,「目 次」の英文はピーター・ヘンドリクス氏(オーストラリア国立大学助教授)の助力を得た。

 この他,作業の補助者として渡辺喜代子氏の協力を得た。

  アスペクト表現(198〜199図,201〜202図,205図)……大西     〃    (200図)……井上,大西

    〃    (203〜204図)……三井 ただし,

(5)

一方 法一

1.「表現法」と「表現法編」の編集方針…・・

2.語形の採用と統合・………・…………

 2.1.語形の採用規則…・………・………

 2.2.語形の統合規則…………・……・………

 2.3.終助詞付き回答の処理・………・・

 2.4.語彙的回答の処理………・………・・……

3.語形の記号化…………・・……・………

4.例外的手続きなど………・………・・…………

付録

 1.調査地点・話者一覧(第4〜6集)……

 2。調査担当者一覧…・………・………・…

 3.地点番号順都道府県名索引(4〜6集)

 4.第4集の参考話者一覧………・…一  5.第3集までの正誤表………・・…・…

・3

・5

・5

・7

・・P1

・12

・13

・・P4

・・P5

・・R5

・・R6

・・S3

・・S6

一各図の解説一

1.否定表現a

1.1.否定表現aの概要と記号化・・

1.2.各論の説明………・・…

  151図 行かなかった…・…・…

  152図 行きはしなかった・・…

  153図 行かなければ……・…・

  154図 行かないなら…・…・…

  155図 行かないで……・・……

  156図 行かなくて・………・…

・・T1

・・T4

・・T4

・・U0

・・U5

・・V3

・・V9

・・W4

(6)

   157図 行かなくても………・・………・…………・…・…・…………・…・………・89    158図 無かった………・・………・………・……・………・95

   159図高くはなかった

      ......願の,曾..。........,曾曾..................。..__.。.・・。・… …・・・・・… 一… 。・… 。・・100

   160図高くはなかった 2.否定表現b

 2.1.否定表現bの概要と記号化・・………・・……・………・………106  2.2.各組の説明………・………・……・……・……・………・・………・・………114    161図 見はしない……・……・……・…・…………・…・………・…一…・……・・…………・…・・…・114    162図 来はしない………・…・………・……・…………・…・…・………・・……115

3.否定表現。

 3.1.否定表現。の概要と記号化・…・………・……・………一・…………・・……・………120  3.2.各図の説明・…・………・………・…・……・…・……・…・・…・………・………121    163図 塾,無いよ _._.____。__..____.__..____..__・…………・…121    164図 うん,無いよ

   165図壁・有るよ,___.._____._.._____._._.._._.__..____125    166図 いや,有るよ

4.条件表現

 4.1.条件表現の概要と記号化……・…・………・…………・…・…・・………・………・・………・……・129  4.2.各図の説明・……・………・…・…・・…・…・…………・………・…・・……・・…・…140    167図 降れば・………・………・………・……・…・……・…・………・………・…・……・………140    168図 降ったら………・………・………・………・・…………・…・………・…・………142    169図 行くと………・・……・・………・・………・・………・…・………・…・…………・……・…・……144    170図 行ったら………・………・………・………・…・………・……147    171図 行ったってだめだ…………・……・・…・・………・…・……・……・………・…・・149    172図 行ったってだめだ………・………・………・………・・…・……・………・・153

5.可能表現

 5.1.可能表現の概要と記号化…・…………・…・………・…・・…・・………・………162  5.2.各図の説明………・………・・…・・……・………・……・……一・・…・…・・…・・166    173図 読むことができる〈能力可能〉・……・……・………・………・……・………166    174図 読むことができる〈状況可能〉………・・……・………・…・…・……177    175図着ることができる〈能力可能〉……・………・…………・…一・……・180    176図 着ることができる〈状況可能〉・………・……・……・……・………・…・・…・191

(7)

   177図起きることができる〈状況可能〉………・………・……・……・……・…・…………・…・・193

   178図 来ることができるく状況可能〉…………・……・…………・・……・………・202

   179図 することができる〈能力可能〉……・…………・…一・…………・…………・……・・一210    180図 できる〈能力可能〉・…一………・………・・………・・…・………・・………・…・223

   181図書くことができる〈属性可能〉………・…・………・…・・…・・………・…・229

   182図 読むことができない〈能力可能〉…………・……・一…………・………・・236

   183図 読むことができないく状況可能〉・…・…………・……・・…………・」…・………・…244

   184図 着ることができない〈能力可能〉一………・…・…………一・……・・…………・・246

   185図 着ることができないく状況可能〉………・…・…………・……・・………・…………254

6.過去・回想表現a

 6.1.過去・回想表現aの概要と記号化…・…………・…・……・…・………・…………・……・・……257

 6.2.各図の説明……・一………・…・………・・…………・一…・……・…・………・………273

   186図 おもしろかったなあ        _....,..__。_..。.............,..… 。・・・・・・… 一一・一・・・… 。。・… 。・・… 。。… 273    187図 おもしろかったなあ    188図 行ったなあ        ・・・… 。… 。・・… 。。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 。一・・・・・・・・・・・・・… 282    189図 行ったなあ    190図 いたよ       ..........,,...,....,.....,...................,....,....___。・一・・・… 。。・… 。・・… 。・… 。・… 。・287    191図 いたよ    192図 書いたよ        ・… 一・・一・。・・一・・・… 一・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・… 。… 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 。・・。・293    193図 書いたよ    194図 強かったよ       ・。。・・… 一・・。… 。。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一。・・… 。・一・・。・・・・… 。・・・・・・・・・・・・… 。・… 。・… 302    195図 強かったよ

7.過去・回想表現b

 7.1.過去・回想表現bの概要と記号化…・…・…………・…………・…・…・・…・………・……310

 7.2.三図の説明・………・………・・………・………・・………・………・……・………・…・・…一…・…310    196図 いた………・・…………・・……・…・…・…………・・………・…・・………310

   197図 いるか…………・・……・…・・………・…・…………一・……・………・…・………312

8.アスペクト表現

 8.1.アスペクト表現の概要と記号化…・・………・…・…………・…9・・………・………316

 8.2.各回の説明・…・………・・…………・……・……・・…………・……・…・………・………324

   198図 散っているく進行態〉………・……・………・・…・……・……324

   199図 散っている〈結果態〉・一……一…・・……・…………・………・………・・一一………329

(8)

図図図図図図 0 1 2 3 4 5 0  0  0  0  0 

0

99 ∩∠ ワ創 2 2 2 散りヨル〈将然態〉…・・…

死ニヨル〈将然態〉…・

有りヨノレ 〈進そ了態〉 ・

もう少しで落ちるところだった・・

もう少しで落ちるところだった・

読んでしまった・・

・334

・・R38

・346

・・R50

・・R56

・364

一資料一覧一

「資料一覧」について・・

資料一覧………

文章による注記一

・・R71

・・R73

・706

(9)

(10)

1. 「表現法」と「表現法編」の編集方針

 「表現法編」で扱う「表現法」とは,状況(文脈や場 面)・内容・意図などに応じて用いられる各地方言の言 語形式を指す。

 第2・3集「活用編」における「活用形」との関わり で述べると,活用編で扱ったのは,否定形・終止形・仮 定形・命令形など,いわゆる学校文法における活用表の 中で扱われることが多い比較的簡潔な形態が中心であっ た。それに対し,表現法編では,状況を具体的に特定化 したり,用法をひろげた範囲を対象としている。また,

実際の表現形式も活用編より広く求めることが多い。

 このような特色は,調査における質問文にも反映され ており,状況設定が活用編より詳しいものも多い。

 例えば,活用編では,条件表現のうち,仮定形1・仮 定形2のようなものに限って扱っていたが,表現法編で は,前後の文脈をさまざまに与えることにより,細かく 状況を設定している。また,テンスに関わる表現は,活 用編では,抽象度の高い過去形のみを扱ったが,表現法 編では,過去・回想表現として,モダリティーに関わる 表現にまで範囲をひろげている。第5集以降で扱うこと になる命令表現や禁止表現,待遇表現などでは,このよ うな性格は,さらに強くなるであろう。

 また,表現法編では,「活用形の活用」のような枠組 みが扱われるという特徴もある。例えば,活用編では用 言の否定形(言い切り)のような基本的な形を扱った。そ れに対し,表現法編における否定表現aではさらにそれ が活用したような形を扱っている。

 以上のような点から,活用編と表現法編では,語形上 のねらいを置く場所も異なっていると,総じて言える。

活用編では,基本的に活用形のもとになる動詞・形容詞

・形容動詞といった用言の部分におもな注目点があった。

それに対し,表現法編ではそれぞれの表現法を作る形態 の方に焦点をあてることが多くなる。日本語においては 用言を核としながら後に諸種の付属語・付属形式を付加 してさまざまな語形を作ることが多い。よって,活用編 では語形の前半に重点を置いていた。それに対し,表現 法編では,それぞれの表現法を作る特色にねらいがある

ことから,語形の後半に重心が移っている。

 その他,否定表現b(「見はしない」など)で扱うよう な強調をともなった表現のように一般に活用として扱い

にくいものや,否定表現。における応答詞に関わる表現,

あいさつ表現など,意図や場面に依存する表現も含まれ ている。また,アスペクト表現のように動詞自体の持つ 性質を考慮したような項目もある。

 もっとも,活用編で扱った活用形も一定の状況や意図 に依存した表現であり,この点で,表現法と連続性を持 つものである(ただし,表現法編の方が,場面の具体性 がいっそう高い傾向がある)。したがって,活用編と表 現法編の間に厳密な区分のあるものではない。表現法編 の中にも可能表現のように動詞の形態上の種類にも注目 点を置いた項目もある。また,活用編の中にも使役形の ように「活用形の活用」を扱ったものもあった。このよ うに表現法編とそれ以外は,重なり合うものであり,見 方によっては,表現法は活用などを包括するとも言える だろう。

 調査・編集の手続きの上から言うと,表現法編で扱う のは,第2調査票において扱った項目である。第2調査 票の具体的な内容は,第1集解説書119〜126ページに掲 載している。調査票の中は,分野がいくつかに区分され ている。第4集以降の各集で扱う表現法について,調査 票での区分に従って示すと次のように予定している。

表現分野(調査票) 質問番号

命令・禁止・義務表現 147−154

第5集

強調・詠嘆表現 155−157

第5集

意志・勧誘・希望表現 158−164

第5集

推量・様態・伝聞表現 165−177

第5集

仮定表現 178−185

第4集

疑問・反語表現 186−195

第5集

否定表現 196−205

第4集

授受表現 206−209

第5集

可能表現 210−222

第4集

過去・回想表現 223−230

第4集

アスペクト表現

23r236 第4集

あいさつ表現 237−241

第5集

待遇表現 242−267

第6集

 それぞれの表現分野の中は,形態上の特徴や場面・内 容などによって複数の項目が含まれている。たとえば,

可能表現の場合,能力や状況のような内容に従って分類

一3一

(11)

されるとともに,動詞の種類の異なりなどによっても構 成されている。

 第4集で扱うのは,この表の中で言うと,仮定表現,

否定表現,可能表現,過去・回想表現,アスペクト表現 である。このうち仮定表現は,「条件表現」として,表 現分野の名称を変更して扱っている。また,質問番号 185「行かなければ」は調査票では仮定表現の中に含ま れているが,編集にあたっては,否定表現に分類し直し て扱った。このように,分野を移動させてまとめた項目 もいくつかある。以上のような点については,各図の解 説で述べる。

 なお,第6集は待遇表現でひとまとめになっているが,

第4集と第5集は,明確な規準に基づいて振り分けたも のではない。強いて言えば,どちらかというとモダリテ ィー寄りのものが第5集にまとまっており,第4集には,

活用編からの連続性が認められる。

 編集方針は,第1〜3集の基本方針に従っている。編 集の基本方針(第1集解説書26ページ左4〜6行参照)を 再度記すならば,次のとおりである。

 〔この言語地図集は,採集した各地の言語資料の地理  的分布を客観的に提示することを基本とする。言語地  図作成にあたっては資料性の保持に特に留意する.〕

 また,この基本方針に基づく具体的な編集方針(第1 集解説書26ページ左9〜右7行参照)にも変更はない。

 つまり,第4集も既刊の『方言文法全国地図』全体の 方針を引き継ぎながら編集を行ったことになる。ただし,

そのような編集方針の中で,具体的な手続きに多少の変 更がある。また,第3集までの中でも,実際には異同が 存在する。関連して,採用と統合の規則のように第1集

と第2集の解説書に分散しているものがあり,不便なも のもある。

 以上の点について,後に改めて整理し直す。その他,

表現法編では,先にも述べたとおり,第2調査票に移っ たこともあって,話者や調査地点が第3集までと一部異 なっている。そこで,第4集以降の話者の一覧も掲載す

る。

 解説書の末尾には,資料一覧を付けた。これは,報告 された元資料にほぼ等しい。資料一覧の作成にはコンピ ュー^を利用している。地図のもとになる語形等のデー タを電子化し,プログラムを介して出力している。ただ し,後にも述べるが,地図自体の作成はまだ電算化して おらず,この電子化データは,もっぱら資料一覧の作成

に利用しているものである。

 第3集までの電子化データ,ならびに利用にあたって の最小限のプログラム(プリンタへの出力用など)は,す でに公開している。利用を希望する場合は,国立国語研 究所言語変化研究部第1研究室に問い合せると,必要な 手続き等について情報が得られる。また,第4集のデー タについても最終的な整理が済めば,公開する予定であ る(既刊分も含め,ネットワーク上での公開も検討を進

めている)。

 ところで,先に表現法編は,活用言と連続する性質を 持つことを述べた。しかしながら,現実には,活用編に くらべて,相当に複雑な性格の項目が少なくない。実際,

凡例に挙げた見出し語形の量も第3集までの項目より,

はるかに多い。この複雑さは,表現法として扱った項目 の性質におおいに関わる。

 第4集全体をとおして,もっとも編集担当者を悩ませ たのは,各項目のねらいとそれに関連した採否の境界を どの程度のところに設けるかという点であった。詳細は 素図の解説に述べるが,全般に項目のねらいよりも採用 の範囲は広く設定されている。項目の核となる表現に対 応する語形は当然採用するとして,関連する用法に相当 すると考えられるものまで,内容や意図が大きく外れな い限り,ある程度広く採用する方向をとっているからで ある。このような:方法をとったのは,ひとつは関連分野 との連続性にも視野をひろげていることがある。同時に,

ねらいとした表現が必ずしも全国的に認められず,類似 表現を採用することにより当該の表現内容をどのように 表すかを全国的に見渡すことができるという点に配慮し たものである。

 たとえば,アスペクト項目の二丁態に関わる項目では,

様態ならびにそれに近い語形も採用している。この場合,

将二二と様態(「〜スルヨウダ」「〜シソウダ」のような 形)との意味上の連続性を配慮している。実際の所,ね

らいの中心となる〜オル・ヨルのような形の将三態が認 められる地域は限られており,全国的にはその他の表現 方法で類似した内容を表す地域が多い。そこで,その分 布を資料として提示することにも大きな意義があると判 断した。

 このように項目のねらいや中心となる文法的な内容,

各表現法の中核的用法と,採用した語形の範囲は重なる ものの,一致するとは限らない。これらの関係について は,三図の解説で述べている。この点に十分な配慮の上

一4一

(12)

での利用を求めたい。

2.語形の採用と統合

 ここでは,第4集までの編集作業の中で新たに生じた 問題点を含め,語形の採用と統合の方針について整理し 直したものを示す。

2.1.語形の採用規則

 得られた回答のうち地図に採用したのは,一定の条件 を備えた話者自身の回答した語形で,質問の趣旨に合っ ているものである。ただし,一定の条件を備えていれば,

その土地の主たる話者以外の人物(同席者ほか)の回答し た語形も採用した場合がある。その語形には地図上の記 号に補助記号(†)を付けて,主たる話者の回答と区別 することにした。

 なおここでいう「語形」とは,「回答の形」に相当す るもので,文法的な定義をもつ単位ではない。

 第4集所収の項目から例を取ると,「あした雨が降れ ば船は出ないだろう」という調査文によって下線部にあ たる回答を求めた項目では,回答された「フレバ」「フ ッチュード」「ブリュンニシカ」などを指して,「語形」

という。2.2.で述べる語形の統合規則によって統合され る前のものについても,統合された後の形についても

「語形」ということがある。学校文法によれば,上記の 例は「語」が二つ以上連なったものと見られようが,こ の場合,そのような単位とは食い違っていることになる。

 また例えば,「お前が行ったってだめだ」という調査 文による項目などでは,下線部に対して回答された「イ

ッタッテダメダ」「イタカテアカン」「エテモマネジャ」

のような,相当に長い回答も「語形」と呼ぶ。さらにこ の項目では,回答の形が長いために,「行ったって」相 当部分と「だめだ」相当部分に回答を分割し,2枚の地 図に分けて地図化を行っている。この分割されたそれぞ れの部分にあたる「イッタッチ」「イタカテ」「エテモ」

「ダメダ」「アカソ」「マネジャ」のそれぞれについても

「語形」と呼ぶことがある。

 以下,語形の採用規則について,話者と回答された語 形の二つの点から具体的に説明する。

 報告された語形の採否に関しては,次の3項のいずれ かに分類して処理した。

 A 無条件で(補助記号を付けずに)地図上に登載する

 語形。

 B 参考話者の回答(同一地点における他の話者の回  答)として,補助記号(†)を付けて地図上に登載す   る語形。

 C 地図上に登載しない語形。この語形は「資料一  覧」には,頭に×を付けて登載している。

ABCのそれぞれに含めた語形は次の条件に該当する

ものである。

 A 無条件で(補助記号を付けずに)地図上に登載する  語形。

  一定の条件に合う話者が自分が使う(もしくは昔  使った)として回答した語形で,質問の趣旨に合っ   ていると判断されるもの。

  「一定の条件に合う話者」とは次の(IX2)の条件の   いずれかを備えた者である。

 (1)性・出生年・居住歴が調査時に指示した条件に   合っていること。すなわち,1925年(大正末年)以   前に生まれた男性で,15歳まではよその土地(他       あざ

  の市町村やよその字)で生活したことがなく,そ   れ以後よその土地で生活したとしても,その期間   が10年以内であること。

 (2)上記(1>の条件から外れていても,それが次のイ   〜二のいずれか1点であれば,許容の範囲にある    と認める。

   イ 1934(昭和9)年以前に生まれた者。

   ロ 15歳までの間によその土地に住んだとしても,

   その期間が4年以内の者(ただし,同一市町村    内の移動は無視する)。

  ハ 16歳以後よその土地に住んだとしても,その    期間が19年以内の者(同上)。

  二 (1)の条件をすべて備えた女性。

 B 参考話者の回答として補助記号(†)を付けて地   図上に登載する語形。

 (1)第1調査票と第2調査票の話者が異なる場合の,

  他方の話者の回答語形。

 (2)その土地で,自分より上の世代の者が使うと話   者が指摘した語形。

 (3)以下に示すイロの条件をともに満たす同席者の    回答語形。イロを満たせば女性でも可。

   イ 生育地(0−15歳の居住地)が主たる話者とほ    ぼ同一の大字と考えられる範囲にあること。

   ロ 出生年および居住歴が調一時に指示した話者

一5一

(13)

  の条件に合っていること。(1925年以前に生ま   れ,15歳まではよその土地で生活したことがな    く,それ以後よその土地で生活したとしても,

   その期間が10年以内の者)

  なお,第1,3,4集の解説書の「付録」に,そ れぞれの集に現れたすべての参考話者の氏名・経歴  を「参考話者一覧」として挙げた(第2集の参考話

者は第3集にまとめて挙げている)。その中で,*

 が付いているのが,地図に語形を登載した参考話者  である。

C 地図上に登載しない語形。

 (1)誤答(質問の趣旨から完全にずれていると判断   される語形)。

(2)調査票で採用しないことが指示されている語形。

 例:質問番号020「する」における「ヤル」

(3)話者の理解語。ただし,Bに該当するものを除

  く。

 例:〈自分は使わないが他人が使う。〉

    〈使う人もいる。〉

    〈聞くこと(聞いたこと)がある。〉

   →これらの注記のある語形は不採用。

(4)話者が「若者のことば」「幼児語」「女性語」な   ど,位相が異なるとした語形。ただし,「女性語」

  に関して,次のような注記のある語形は男性も使   わないことはないとみて採用した。

 例:〈女性的(な言い方)〉

    〈女性に多い。〉

    〈おもに女性が使う。〉

    〈母親が使うようなやさしい言い方〉

   →これらの注記のある回答は採用。

(5)話者が,自分の居住地ではなく他の土地(隣接   の市町村を含む)で使うとした語形。

(6)出生年や居住歴がB(3)を満たさない同席者,お   よび,出生年や居住歴が不明な同席者の回答語形。

 (7)話者の回答とは別に,調査者が自分の知識に基  づいて,「話者の回答は十分ではない。この土地   にはこういう表現もあるはずだ。」として報告し   た語形。

(8)話者があいまいな態度を示したり,自信なさそ   うに回答した語形。調査者が疑問を感じているだ   けであれば,採用する。

 このうち,(3)〜(8)は語形についての話者や調査者に

よる注記から判断する。なお,話者が使用頻度が低い とした語形は,言わないことはないものとみられるの で不採用とはしない。

〈あまり言わない。〉

〈(〜は)めったに言わない。〉

〈稀〉

〈言わなくもない。〉

→これらの注記のある語形は採用。

 以上が,語形の採用規則である。このような手続きに よって不採用となった語形と,参考話者の回答として採 用した語形は,解説書の各図の説明の中に理由とともに 挙げる。

 ところで,回答語形に調査者によって音声に関する注 記が付されている場合,その注記をどのように回答の表 記に反映させるかが問題となる場合がある。そこで次に,

この点について説明する。

 調査者による音声に関する注記については,次の3項 のいずれかに分類して処理した。

 1 回答語形の表記のまま採用し注記は「資料一覧」

  の中の「文章による注記」に示すもの

 II 回答語形の表記のままでは採用せず注記に合わせ   た語形として採用するもの

 III回答語形と注記に示された語形を両方とも採用す   るもの

 IIIIIIそれぞれに含めた注記は,具体的には次のよう なものである。A=回答語形, B=注記中の語形や表記。

 1 回答語形の表記のまま採用し注記は「資料一覧」

  の中の「文章による注記」に示すもの    (AはBにも聞こえる。)

   (AはBとすべきかもしれない。)

   (AはややBに近いようだ。)

   (AはBにいくらか近い。)

   (AよりもBの方に近いかもしれない。)

   →これらの注記は,すべて表現を「AはBにも聞     こえる。」と統一して「文章による注記」に示     す。

  例:[tateta](teはdeにいくらか近い。)

    →回答語形の[tateta]のまま採用する。

     ()内は(tatetaはtadetaにも聞こえる。)

     として「文章による注記」に示す。

 II 回答語形の表記のままでは採用せず注記に合わせ   た語形で採用するもの

一6一

(14)

   (AはBに近い。)

   (AはBのように響く。)

   →これらは「文章による注記」には示さない。

  例:[tateta](tatetaはtadetaに近い。)

    →注記に合わせて[tateta]として採用する。

 III回答語形と注記に示された語形を両方とも採用す   るもの

   (AはBに近いこともある。)

   また,注記ではないが,次のような表記で報告さ   れているものは併用として採用する。

   [tateta]

       →[tateta][tadeta]とも採用    [一de一]

 なお,長音については次のように扱う。C=子音,

V=母音

  ((C)Vは少し(C)V・の気味あり。)

       →[(C)V]のままで採用   ((C)Vは少し(C)V:の気味あり。)

      →[(C)V:]として採用  ここに挙げた調査者による音声に関する注記は一部の 例である。実際には様々な注記があるが,それらをIII IIIに振り分けて処理している。そのうち特に注意すべき

ものについては,各国の説明の中で述べる。

 以上のような採用規則にしたがって,回答語形の採否 を決定している。この中でもっとも判断が難しいのは,

語形の不採用に関するC(1)の観点をどの語形に適用する か,という点である。「1.「表現法」と「表現法編」の 編集方針」でも述べたように,その語形が,文法的意味

と語彙的意味の両面で項目のねらいに合致したものであ るか,また,項目のねらいにぴったりとは一致しない語 形について,どの範囲までを採用し,どこからを「質問 の趣旨から完全にずれている」と判断して不採用とする のか,ということは,常に担当者を悩ませる問題であっ

た。

 この点の判定にあたっては,調査者の加えた注記,準 備調査の結果も含めた『方言文法全国地図』の作成のた めに調査者から報告されてきた資料全体,従来の記述研 究などを参照した。また,検討会(複数の担当者の合議)

の場で討議を行った。しかしこれらの考察を経ても採否 の判断に迷う場合は,基本的には調査者から報告された 回答をそのまま採用する方針をとった。また「表現法 編」では,「助詞編」や「活用編」に比べて採用の範囲 をやや広くとるようにしたことは,前述のとおりである。

 なお,このような採用すべきか否か迷った語形につい ては,検討内容も含めて各項目の解説の中で説明を加え

る。

2.2.語形の統合規則

 語形の統合規則は,表記レベルと音声レベルの2段階 に分れている。

 第1段階は,表記レベルの統合であり,これは,以下 の規則に基づいている(第1集解説書28ページ,第2集 解説書6ページ参照)。この段階で統合された表記は,

凡例上では音声内容として,見出しの右側に列挙したも のに相当する(音声内容の出し方と配列の方法について は,第2集解説書8ページを参照のこと)。

 〔一定の地域差があると認められており,かつ,多く  の調査者が表記し分けていると判断される表記は分目  し,それ以外は統合する。〕

 次の段階は,音声レベルの統合である。これは以下の 規則に基づく(第1集解説書30ページ,第2集解説書7 ページ参照)。凡例上,見出しに用いる表記である。

 〔広い地域にわたって音韻的対立が予想される音声は,

 そのような対立のないと思われる地域を含めて全国的  に写出する。音韻的対立が狭い地域に限られる場合に  は,その地域のみの分出とする。それ以外の音声は,

 統合する。〕

 整理すると,それぞれのレベルの統合と実際に凡例に 現れる表記の関係は次のようになる。

  報告された表記→[表記レベルの統合]→音声内容   音声内容   →[音声レベルの統合]→見出し表記  以下には,それぞれのレベルでの具体的な統合につい

て,適宜列挙する形で示す。その際に,以下のような略 号を使うことがある。

  C:子音,V:母音  2.2.1.表記レベルの統合

 「=」で結んだ表記は,それらをまとめて,「=」の一 番左側の表記で音声内容として扱うことを意味する。

「/」で並べた表記は区別されることを意味する。注記は

()内に記している。その他,下線を付したものは,

音声記号として等価と見なし,解説書や資料一覧の中で もすぐ左に配列した記号で表記している。「→」はさら にそれらが別の表記に統合されることを表す。

・母音一般   [a]二[α]=[召]

一7一

(15)

  [i] = [1] = [1] = [ し ]

  [1]=[i]

  [u]=[田]

  [u]=[山]=[モ旺]

  [e]=[e]=[e]

  [e]=[e]=[6]

  ⊥  [Q]=[9]

・子音   [9]=[9]

  [1]=[亀]=[§]=[§]

  [dz]=[z]

  [d3]=[3]=[題]

  [t]=[t]

  [h]=[丘]=[x]

  [Φ]=[F]

  [b]=[B]

  [1]=[L]

  [r]=[f]=[℃]

  [(}]=[(f]=[dr]

・中間音など

 *独立性の弱さや中間音を表す表記は,対応する表記   にまとめた。

  [a]=[a]

  [i] = [1] = [ i ]

  [し]=[司   田=[弓   [u]=[司=[u]

  [UI]=[山]

  [田]=[山]

  [e]=[6]=[e]

  [e]=[曾]

   ⊥

  [O]=[6]=[o]

  [j]=[j]

  [w]=[w]

  [k¢]=[kG]

  [9多]=[go]=[99]

  [kw3=[kW]

  [9W]=[gw]

  [s];[s]

  [1]=国   [z]=[z]→[dz]

  [dz]=[dz]==[dz]

  [3]=[3]→[d3]

  [d3]=[d 3]=[d3]

  [ts]=[tS]=[ts]

  [t〜]=[t∫]=[t〜]

*[(]は表示しない。

  例[ae]=[詫]

・音節

  [kV]=[kV](V=i, i)

  [nV]=[pV](V=i,1)

  [njv]=[pV](V・i,例外)

  [gi]=[hi]

  [Φu]=[h司=[fu](本土)

・鼻音,壌音,促音

*鼻音/機音

      へ   [NX]=[〜X]=[mx]=[nx]=[ロX]=[VX]

       (X=[d][b][dz][d3][9])

 イ列  [ha N da]=[ha〜da]=[ha n da]

    [iNga]=[i〜ga]=[iOga]

[NY]=[NY]=[〜Y]=[mY];[nY]=[oY]

  り=[VY]    (Y=[d][b][dz][d3][g]以外)

例[maNma]=[ma〜ma]=[ma m ma]

    [tONida];[to〜ida]

[η]=[マ]

[N]=[n]=[U](撲音相.当の位置)

[N]=[m](本土,擬音相当の位置)

[N]=[n]=[0]/[m](琉球の語末)

[NC1]=[mC1]/[mC2]

 (琉球,C1=p,bなど唇閉鎖音, C2;唇閉鎖音以外)

      り       り

[VN]=[VN]=[V]=[V:](語末の場合)

      ウ[VNZ];[V N Z];[VVZ]

       (Z=s,1など摩擦音,母音〉

例[oNsa]=[o sa]=[o曲sa]

    [SaNeN]=[Sa N eN]=[SaεeN]

[NC]=[CC](C=鼻音)

例[Noa]=[uoa]

    [Npa]=[ppa]→[Nnja]

[NC]=[OC](C−s,1,乞,3など摩擦音)

      ウ

 i列  [ikaN3aユ=[ika33a]→[ikaNd5a]

    [miN3a]=[miを3a]→[miNd3a]

[wNV]=[歯V](琉球)

        ル[wNVN]=[宙V](琉球)

・促音など

一8一

(16)

 [CC]=[CC]=[C:]=[qC]瓢[QC](C;鼻音以外)

 [CIC1]=[?C1]/[?C2]/[?V](本土, C1=鼻音以   外,C2=鼻音, V=半母音を含む)

 [CCV]ニ[C CV](本土)

  例 [∫∫o]=[1 lo]

 [C2C2];[CIC2]([ts][tl][dz][d3]などを除    く)

  例[∬i]=[sli][ssi]=[lsi]

 [ddz]=[zz]

  伊旺  [addza]=[azza]

 [dd3]=[33]

  {列  [add3a]=[a33a]

・長音

 [V:]=[V・]

 [VIV2]=[Vlv2:]=[v1V2:]([v]は弱化母音)

  {列  [kaeta]二[ka e:ta]=[ka6:ta]=[k a e:ta]

 [(C)V:]=[(C)VV]

  例[ne:]二[nee]

 [(C)VV:]=[(C)V:V]=[(C)VVV]

  例[nee:]=[ne:e]・[neee]

・拗音

 [Cjv]=[CyV]

  伊旺 [kjata]=[kyata]

・有声化,無声化

*子音の有声化,無声化は表示せず,対応する表記に  まとめた。

 [9]=[k]

 [k]=[曾]

 [z]=[§]→[dz]

 [s]=[ζ]

 [3]=[∫]→[d3]

 [1]=[§]

 [d]=[ε]

*母音の無声化は,無声子音のあとは,表示しない。

 それ以外は,表示する。

 唇唖    [〜i] = [〜毛]

   [ru]/[r曾]

   [tai]/[taL]

*無声化母音の表示を省略したと見られる表記は,そ  の母音を復活させて表示する(ただし,この場合は,

 その点を解説に述べる)。

 修F旺 [kalite]=[kalte]

・その他

  [t]=[T]=[T]=[?](語末)

  [C ]=[?C](C=Nを除く子音)

  [?N]=[N,]

  [C]=[C ]=[σ]

・カナ表記

 *特殊なケースを除き,カナを共通語で発音した時の   代表的な音声として扱った。

  例[i]=[イ]

    [ki]=[キ]

    [li]=[シ]

    [tli]=[チ]

    [ni]=[二]

 *特殊な表記

  [e]=[エ]

  ⊥      ●

      

  [〜e]=[セ]

  [(C)お]=ア段モーラ門口    例[kおta]=[カェタ]

  [(C)ε]=判型モーラ十ア    例[kεta]=[ケァタ]

・音韻表記

 簡略な音韻表記が用いられている場合,調査者の報告  に従い,以下のように扱ったものがある。

  修剛  [〜i]=[si]

    [le]=[sje]

    [tli]=[ci]

・アクセントやイントネーションは表示しない。

 2.2.2.音声レベルの統合

 音声内容に統合した表記と見出しに統合する表記が異 なるものを中心に挙げる。それぞれが同じものは,特に 注意を要するものを挙げた。

 見出しに統合する表記は〈〉にくくり,その中の音 声内容としてまとめられる表記を直後の()内に列挙 する。区別される表記は,「/」ではさんで並べる。また,

地域などの注記は「…」の後に記す。なお,音声内容が 1種類で,かつ見出しの表記が共通語での読み方と一致 するものは,凡例には出していない。

・母音,半母音

  *<a>(a,?a,e)…本土の全般,琉球の語頭    〈a>/<?a>…琉球の語頭以外

  *〈i>(i,ji,f,lf)…本土

   〈i>(i,ji)/<?i>(?i,?ji)/〈f>(i,ji)…琉球

一9一

(17)

**

*** **音**   子   ● **

9

***

〈u>(u,u)/ <y>

〈U>(U,WU>/〈?U>…琉球

〈e>(e,je,we,¢,j¢,芭)…九州以外の本土

〈e>(e,je)/〈we>…九州

〈e>(e,je)/<?e>/<e>…琉球

くε〉(ε,jε,Wε,記,jお)

〈φ〉(φ,ce)

<0>(0,Ω,っ)/<WO>…中越型開合地域以外

〈o>(o,Q)/〈っ〉/〈wo>…中越型開合地域 く0>/〈?0>…琉球の語頭

く0>(0,?0)…琉球の語頭以外

〈j>/〈?1>…琉球

〈w>/<?w>…琉球

〈k>(k,k¢,ks,kΦ)

〈9>(9,Y,9多)

〈u>(o,Ng)

〈r>(r,♂,1)

〈C>/〈C 〉…琉球

〈Cj>/〈C j>…琉球

〈N>/〈N 〉(?N>…琉球

〈ka>/〈kwa>

〈ka>/〈kwa>/〈k wa>…琉球

〈ga>/〈gwa>

〈ηa>/〈owa>

〈si>(li,si,li,sl)…本土

〈si>(li)/〈S正〉(li)/<§i>(si>/〈§i>(S⇒…琉球

〈SU>(SU,S廿)

<se>(se,θe,le,¢e,ge,s皇,1皇)…本土

〈se>(se,le)/〈θe>…琉球 くsja>(la)

〈sju>(IU,IU)

〈sjo>(〜0)

〈za>(dza,6a)

〈zi>(d3i,dzi,d31,dzf)…本土

〈zi>(d3i)/ 〈zi>(d31>/ 〈ζi>(dzi)/ 〈ζ1>(dzi)…

琉球

〈zu>(dzu,δu,dzU>…本土

〈zu>(dzu)/ 〈zU>(dzU)… 琉球

〈ze>(dze,d3e,δe,dz皇,d3皇)

<zo>(dzo,δo>

**

**

*音

 〈zja>(d3a)

 〈zju>(d3u,d3U)

 〈zjo>(d30)

 〈ca>(tsa)

〈Ci>(tli,tSi,tgi,ti,tlf,tSi)…本土

 〈Ci>(tli)/ 〈Ci>(t〜f)/ 〈gi>(tSi)/ 〈gf>(tSi)/

  〈ti>…琉球

〈CU>(tSU,tu,tsU)…本土

くCU>(tSU)/〈cU>(tsω/〈tu>…琉球  <te>(te,t〜e,tje,t皇)

 〈ce>(tse,ts⊆})

 〈CO>(tsO)

 〈cja>(t〜a)

 〈tja> (tja)

 〈cju>(t〜U,t〜U)

 〈cjo>(t〜0)

〈di>

〈du>

 〈de>(de,dje,d皇)

〈dja>

〈dju>

〈djo>

 〈ne>(ne,nje)

〈ha>(ha,Φa)…本土

〈hi>(gi,¢i,Φi,gf,¢i,Φi)…本土

〈hi>(Gi,gi)/<hi>(gi,切…琉球

〈hu>(Φu,ΦU)…本土

〈hu>(hu,Φu,fu)/〈hU>(hU,ΦU,fU)…琉球

〈he>(he,Φe)…本土

〈ho>(ho,Φo)…本土  〈hja>(ga,¢a)

 〈hju>(gu,¢u)

 〈hjo>(go,¢o)

〈ha>(ha)/〈hwa>(Φa,fa)…琉球

〈hwi>(Φi,fi)/〈hwf>(Φi,ff)…琉球

〈he>(he)/〈hwe>(Φe,fe)…琉球

〈ho>(ho)/〈hwo>(Φo,fo)…琉球

〈r>(r,1)/<ru>/<t>…語末 イ列   〈kar> / <karu> / 〈kat>

…直後の音節の統合は単音節に同じ。

〈zzV>(ddzV,dd3V)

{列   くzza>(ddza)

一10一

(18)

     <zze>(ddze,dd3e,ddz¢,dd3皇)

  * <zzlv>(dd3V)

   例〈zzja>(dd3a)

     〈zzjo>(dd30)

  * 〈ccV>(ttsV,ttlV)

   {列   〈cca>(ttsa)

     〈CCi>(tt∫i,ttSi,tt∫i,ttSf)

  * 〈ccjv>(ttlV)

   例〈ccja>(tt∫a)

     <ccjo>(ttlO)

  * 〈hhV>(hhV,ggV,¢¢V,ΦΦV)

   伊旺  〈hha>(hha,ΦΦa)…本土      くhhe>(hhe,ΦΦe)…本土   * <hhjv>(ggV,O¢V)

   修触  〈hhja>(Gga,¢¢a)

     〈㎞jo> (990,¢00)

  * 〈hhwV>(ΦΦV,ffV)

   例  〈hhwa>(⑳a,ffa)…琉球      〈hhwo>(ΦΦo,ffo)…琉球

・長音   <VV>(V:)

   伊囁  〈kee> ke:,k¢:

・無声化母音   〈V>(V,V)

      o    例 〈ru>ru,ru       Q      <tai> tai          o

 なお,音声レベルの統合には以下のような例外規則が 設けられている(第1集解説書30ページ,第2集解説書

7ページ)。

〔音韻的対立がなくとも,その音声が,言語地理学的に 見て,語形変化の過渡的段階と解釈される場合には分出

する。〕

2.3。終助詞付き回答の処理

 回答の末尾に終助詞の類(終助詞相当のもの,以下,

終助詞)が加わったとみられる形で報告された回答を

「終助詞付き回答」と呼んでいる。その性質については,

第2集解説書8〜10ページを参照のこと。

 その際,語形に2とおりのものが認められる。

 第1は,単純に終助詞が付いたと見られるものである。

  例 [mirudzo]→[miru]十終助詞[dzo]

 もうひとつは,終助詞が付くことで融合したと見られ

るものである。

  例 [middzo]

このような語形を以下では「融合形」と呼ぶ。この場合,

終助詞が付かない形は[miru]であると想定されるが,

このように想定することを「仮想する」といい,仮想さ れる終助詞以外の部分(例では[miru])を「仮想形」と 呼ぶ。

 第4集での終助詞付き回答の採否,ならびに統合の方 法について,説明する。第3集までとは,異なる部分が あるので注意が必要である。

 2.3.1.終助詞付き回答の採否

・単用の場合

  終助詞付き回答が単用の場合は,採用する。

・併用の場合

  この場合,項目により方針が異なる。A・B・Cの  3種類の方式があり,いずれの方式をとるかは,各図  の解説で述べている。

 * A方式:第2・3集の多くの項目の採用方針   終助詞付き回答どうしの併用の場合は,すべて採用   する。

   例 [mirudzo]→採用      [miruwai]→採用

  終助詞付き回答と終助詞の付かない同形とが併用で   回答された場合は,終助詞付き回答は採用しない。

   例 [miru]→採用      [mirudzo]→不採用      [miruwai]→不採用

  ただし,終助詞付き回答が融合形で,かつその仮想   形が終助詞の付かない併用語形と同形の場合は,両   方採用する。

   例 [miru]→採用      [middzo]→採用  * B方式:第2集命令形の方式

  終助詞付き回答とそれ以外を区別せず採用する。

 * C方式

  終助詞付き回答どうしの併用の場合は,すべて採用   する。

   例 [mirudzo]→採用      [miruwai]→採用

  終助詞付き回答と終助詞の付かない同形とが併用で   回答された場合は,終助詞の付かない形は採用しな   い。

一11一

(19)

   例 [mirudzo]→採用      [miruwai]→採用      [miru]→不採用

  ただし,終助詞付き回答が融合形で,かつその仮想   形が終助詞の付かない併用語形と同形の場合は,両   方採用する。

   例 [miru]→採用      [middzo]→採用  2。3.2.終助詞付き回答の統合

 α・βの2とおりの統合方式がある。これもいずれの 方式をとったかは,各図の説明で述べる。

 * α方式   非融合形の場合

   語形が融合形ではない場合,終助詞の前にハイフ    ンを入れて統合する。音声内容は,終助詞を除く    部分についてのみ示す。

    例  〈mirU−zO>mirU一,mfrU一

   終助詞付き回答相互において,終助詞を除く部分    で一致するものは,ひとつの見出しのもとにまと    め,ハイフンの後に終助詞を並べる。終助詞の配    列順は,共通語読みでの五十音順。

    例  〈mirU−ZO,Wai>mirU一,mfrU一   融合形の場合

   融合形の場合は,そのまま見出しとし,音声内容    も全体を出す。

    例〈mizzo>middzo

   ただし,融合形相互において,仮想形が一致する    ものは,ひとつの見出しのもとにまとめ,語形相    互に共通する部分より後を{}の中に並べる。

   { }内の配列は,共通語読みでの五十音順。音    声内容は,{ }の前までを出す。

    例  くmi{zzo,ddo}>mi,mi

       →〈mizzo>middzoと〈middo>mfddo         があり,仮想形はともにmiruである         ものをまとめた場合

 * β方式

  終助詞付き回答とそれ以外の間に区別をせず統合す   る。

   例 〈miru>miru,miru

     <miruzo>mirudzo,mirUdzo      〈miruwai>

     〈mizzo>mfddzo

     <middo>

 このように終助詞付き回答の採用方式にA・B・Cの 3種類の方式があり,統合方式にα・βの2種類の方式 があるが,採用と統合の方式は,特に関連しない。した がって,Aα・Aβ・Bα・Bβ・Cα・Cβのいずれの 組み合わせもありえる。

 2.3.3.終助詞付き回答の記号化

 語形の統合において,α方式をとった場合は,終助詞 を除いた形,もしくは仮想形をもとに記号化を行い,そ の記号に下向き1本線を付けた記号を与える。

 例 ▲<miru>

   車〈mir比zo,do>

   ■〈ciru>

   甲 〈ciZZO>

 また,α方式では,凡例上,非融合形の終助詞を除い た部分と融合形の仮想形が同じものが現れた場合は,融 合形に下向き2本線を付けた記号を与える。

 例 ▲〈miru>

   車〈miru−ZO>

   令<mizzO>

 このように仮想をもとに記号化を行った場合は,各図 の解説の中でそれぞれの語形について説明をほどこす。

 語形の統合において,β方式をとった場合は,終助詞 付き回答とそれ以外に特に区別は設けず記号化する。

2.4.語彙的回答の処理

 項目名に挙げた語とは異なる語が用いられた回答のう ち,文法的な意味の対応が項目のねらいに対応していて,

かつ語彙的な意味の上でも,項目名に挙げた語に対応し ていると認められるものを「語彙的回答」と呼んでいる。

その性質などについては,第2集解説書10〜11ページを 参照のこと。

 語彙的回答の扱いは,活用編と異なる項目がある。

 活用編では,例えば,「寝る」に関する項目では「寝 る」という語の活用に主たるねらいがあるので,「寝る」

に意味的には対応していても語が異なるもの(例えば,

ネブル,ヤスムなど)を特殊な扱いにすることには意味 があった。一方,表現法編は,冒頭の編集方針でも述べ たように,活用編とは異なり,用言そのものより付属語 など後半の形態にねらいの比重が置かれている。したが って,語彙的回答を特別扱いする必然性が認められない ケースが出てくる。また,項目によっては,項目自体の

一12一

(20)

特殊な事情により,語彙的回答というものを決める手続 き上のきめてに欠くようなものもある(過去・回想表現

aを参照)。

 以上のような事情から,語彙的回答の採用や語形の統 合方法においては,従来の方法と同じであるが,記号化 の方法が従来とは異なる項目がある。従来の記号化の方 法では,語彙的回答はすべて紺色を与えることとなって いた。しかし,語彙的回答とそれ以外を記号化の上で特 別に区別することなく扱ったようなケースがそれにあた

る。

 一方,従来通りの方法に従った項目や,語彙的回答を 採用しなかった項目もある。どのような方法をとったか については,各図の解説で述べることとする。

3.語形の記号化

 語形の記号化の基本方針は,第3集までと変わらない。

語形の体系性を記号の体系性に反映させ,語形間の距離 と記号間の距離とが並行的に対応するように努めた。語 形の外形上の類似度あるいは相違性に応じて,記号の方 でも色・形・大きさ・塗りつぶし方・方向・補助記号な ど記号の持つ要素により類似度・相違度を調整した。

 したがって,語形の成り立ちや変化過程,また,文法 上の体系的背景などには,第1次的な重点を置いていな い。これらの判断は,利用者にゆだねられていることに

なる。

 なお,第2・3集活用編と同様に多くの地図で,前部

・後部などのように語形の分割を行い,それぞれの部分 に応じて,色・形などの記号の要素を与えている。そし て,その方針を「否定表現a」「条件表現」「アスペクト 表現」など各表現分野の中である程度一貫させている。

また,「否定表現b」のように活用編との統一をはかっ た場合もある。詳しくは,それぞれの解説に記すが,こ のような方法をとったことにより,これまで同様,各図 を重ね合わせた総合図を作成することによる利用が期待

される。

 ところで,第1集でも行ったことであるが,第4集の 中には,各項目で扱う語形が長いために複数の地図に分 割したものがある。例えば,159・160図「高くはなかっ た」,171・172図「行ったってだめだ」,186・187図「お もしろかったなあ」などがそれにあたる。このように調 査票で1項目にあたるものを複数の地図に分けた場合の

併用回答の地図化についての規則を記しておく。

 (1)複数に分けたうち,いずれかの地図の併用地点に   おける語形の配列を固定する(この場合の併用語形   の配列は,凡例の順に従い,この方針は語形を分割   しない一般の地図も同様である)。

 ② 残りの地図では,併用で対象となる当該の地点に   おける語形全体に対して,①で扱った地図の配列に   対応する順に配列する。

 (3)いずれかの地図で併用語形のすべてを通して,同   じ形が現れる地点では,ひとつの記号のみを示す。

 159図「高くはなかった」と160図「高くはなかった」

を例にとって説明する。これらは,もともとひとつの質 問文で調査した項目を2枚の地図に分けたものである。

この2図の場合,160図の配列で固定している。したが って,159図「高くは」における併用語形の記号の配列 は,語形全体に対応した160図「なかった」の凡例上の 配列順に対応している。

 例えば,地点番号5632.27では,次のようにそれぞれ の図に見られる。

  159図  ●緑〈takeku>  O赤〈tagega>

  160図  d茶:<nekatta>  口茶〈negatta>

  全体の語形〈takekunekatta>〈tageganegatta>

160図の配列は,凡例上の配列に従うものである。一方,

同じ地点で159図の配列は,凡例の順とは異なる。160図 に相当する部分の配列を凡例に従って固定し,159図で は全体の語形の中から160図にあたる部分を差し引いた 形を160図にあわせて並べている。

 また,地点番号5731.34では,次のようにそれぞれの 図に見られる。

  159図  9赤<tagagaa>  O赤〈tagaga>

  160図       ■茶:〈nagatta>

  全体の語形≦tagagaanagatta>〈tagaganagatta>

全体の語形の中で,160図にあたる部分が共通しており,

159図にあたる部分が異なることを示すものである。

 反対に地点番号6603.68のように159図に相当する部分 が共通して,160図に相当する部分が異なる場合もある。

  159図      ●赤〈takakaa>

  160図   茶1〈nakatta>  ●茶〈nakattoo>

全体の語形〈takakaanakatta>〈takakaanakattoo>

 いずれにしても配列等に注意して複数の地図上の形を 合わせるともとの語形が得られるようになっている。

 なお,分割したどの地図の配列に固定するかは,項目

一13一

参照

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