「話者」の注記の「上手に」は能力の程度にふれた補足 説明と判断し,[jo:lomu]を能力可能の表現として採用
した。
6583.30[jo:jomeru]〈このlo:は「十分に」の意。〉
「話者」の注記によって修飾語としての意味機能が示さ れ,可能表現の一部として機能しているものではないと 判断されるため,jo:の部分は採用せず,それを除いた
[jomeru]の形で採用した。
〔終助詞付き回答の処理〕
終助詞付き回答の扱いはAα方式をとった。「方法」
の「2.3.終助詞付き回答の処理」を参照のこと。
〔記号化の基本方針〕
可能表現の13項目では,語形の分割,記号の与え方に ついて共通の基本方針を設けた。
まず,語形の分割について解説する。可能表現には各 種の形式があるが,共通する部分は同じ「部」になるよ うに分割した。形式によって「部」の有無に異同はある ものの,全体で,前前前部・前前後部・前後前部・前後 後部・後前部・後後部の6つの「部」を設けることによ
って,共通する部分をほぼ同じ「部」に分割することが できた。「読むことができる」「着ることができる」の肯 定形と否定形,および「できる」の,おもな形式を例に あげて分け方を示すと,次のようになる。
前前前部前前後部前後前部前後後部後前部
〕omu
jomu
kiru kiru
Jome lome
ki ki
joma joma
ki ki
koto kOCU koto koto
aaaa
9
︵Ug
nUdeki deki deki deki deki degi dikiju
deke deku de
re re re re rare rare
後後部 ru
N ru nee ru ru N
r←しU
ru
Uarn
ru nee ru N ru heN
joO
]00
]00
joO
]omu
joma
kiru ki
jomu jome jomu
kiru jomi
joma
ki ki jomi jomi ki ki
jomu koto jomu koもaa
kiru koto kiru kotaa jON
jomja ki ki
]uml lumi
k iri k iri
ni
■− ■−
nn
wa
ga
ga
ga
g・
o
ii
joka eguii
e e e e ki kira ki kira na nara na nara na nara na nara na nai naju miCU mlcura rn1CU rnlcura
N
N
nε
ru N ru
Nt
N ru N ru N ru
N.1 Nt
N ru ru
N.nN.n
N 各「部」は,おおよそ次のような部分に相当するもの
である。
前前前部:「ヨーヨム」「ヨーキン」類の副詞「ヨー」
「エー」「エモ」などに相当する。
前前後部:動作を表す動詞「読む」「着る」などに相 当する。
可能動詞の形式では活用語幹「読め」など に相当する。
前後前部:形式名詞「こと」に相当する。
前後後部:助詞「が」「に」などに相当する。
後前部:可能の意味を担う動詞・助動詞・補助動詞の
一164一
活用語幹,ないしは,形容詞「良い」に相当 する。
後後部:肯定形では可能の意味を担う動詞・助動詞・
補助動詞の活用語尾に相当する。
否定形では否定辞に相当する。
次に,語形の記号化について解説する。
可能表現の項目では共通して,記号の色によって形式 を大きく分類している。記号の色の与え方は次の基本方 針で行った。
【記号の色】一前前後部・後前部で色を与えることを 原則とする。つまり,前前後部(動作を表す動詞「読む」
「着る」などに相当する部分,および可能動詞の形式で は活用語幹「読め」などに相当する部分)の形態と,後 前部(可能の意味を担う動詞・助動詞・補助動詞の活用 語幹,ないしは,形容詞「良い」に相当する部分)の形 態との組合わせによって記号の色を与える,という方針 である。ただし,「できる」など可能を表す動詞のみを 使う形式には,前前後部がない。可能動詞「読める」な どの形式,および「ヨーヨム」などの形式には,後前部 がない。そこで,これらの形式が見られる項目では,紺 と榿および茶と赤の一部の区別に,後後部も考慮するこ ととした。
各種の形式は次のように色で分類される。
(水)「ヨムコトガデキ・ル」「キルコトガデキル」「デキ ル」など,可能の意味を担う動詞「できる」の類を 使った形式。「できる」の類には,〈dekiru>
〈degiru> <dikijuN> 〈dekeru> <dek6rjuri> 〈de kuru>〈deru>などが含まれる。
(紺)「ヨメル」「ヨムル」など,可能動詞を使った形式。
「キレル」「キルル」など,可能の助動詞「れる」
(二段活用を保持する地点では「ルル」)の類を使っ た形式。いわゆる「ら抜き」の形式。
(緑)「ヨマレル」「ヨマルル」「ユマリン」など,可能の 助動詞を使った形式。
「キラレル」「キラルル」など,「れる」以外の可能 の助動詞を使った形式。
(榿)「ヨーヨム」「ヨーキン」など,副詞「ヨー」「エ 一」の類を使った形式。
(茶)「ヨムニイー」「ヨメヨカ」「キルニエー」など,形 容詞「良い」の類を使った形式。
(赤)「ヨミエル」「ヨミエン」「キワエン」「ヨミキル」
「キキ・ラン」「ヨムコトガナル」「キルコターナラン」
「ヨンガナッ」「キワナラン」「ユミミツリ」「キリミ ツラン」など,可能の意味を担う補助動詞を使った 形式。
その他,(水)(紺)(緑)(榿)(茶)のいずれにも分類し 難い形式。
記号の形,塗りつぶし,方向,補助記号の与え方は次 の基本方針で行った。
【記号の形】 後前部で記号の形を色ごとに与えるこ とを原則とする。後前部,つまり,可能の意味を担う動 詞・助動詞・補助動詞の活用語幹,ないしは,形容詞
「良い」に相当する部分の形態によって,記号の形を色 ごとに与えるという基本方針である。例をあげれば,
(水)に分類される「読むことができる」「できる」など の類については,<deki>にリボン形,<degi>に平行四辺 形,〈deke>に正三角形,〈deku>に二等辺三角形という
ように,(茶)に分類される「ヨムニイー」の類について は,〈i>に曲玉形,〈ii>に大曲判形というように記号の形 を与える。また,似た語形にはできるだけ似た記号の形 を与えようとしても,記号の形には限りがあるので,一 部の記号には記号内の線によって塗りつぶしも与えるこ とにした。例をあげれば,〈deke>に似た〈dek6>に正三 角形の中の縦線,〈deku>に似た〈zeku>に二等辺三角形 の中の横線,「ヨムニイー」に似た「ヨ民田カ」の
<joka>に曲玉形の中の斜線というように,塗りつぶし も与える。
ただし,前にも述べたように,後前部がない形式もあ るので,それらの形式が見られる項目では,前前後部も 考慮することにした。例をあげれば,可能動詞を使った 形式の「ヨメル」(前前後部は〈jome>)にいちょう形,
副詞「ヨー」「エー」の類を使った形式の「ヨーヨム」
(前前後部は〈jomu>)に楕円形というように,記号の形 を与える。
【記号の塗りつぶし方】 前前後部・前後前部で記号 の塗りつぶしを色ごとに与える。つまり,前前後部(動 作を表す動詞「読む」「着る」などに相当する部分,可 能動詞の形式では活用語幹「読め」などに相当する部 分)の形態と,前後前部(形式名詞「こと」に相当する部 分)の形態によって,記号の塗りつぶしを与えるという 基本方針である。例をあげれば,リボン形記号を与えた
「〜デキル」類の前前後部・前後前部については,
〈jomukoto>にべた塗り,<jomukota>に上白抜き,〈joN koto>に中白抜き,というように記号の塗りつぶしを与
一165一
える。
【記号の方向】一後後部で記号の方向を色ごとに与え ることを原則とする。後後部は肯定形と否定形で異なる ので,それぞれについて基本方針を説明する。
肯定形の項目では,可能の意味を担う動詞・助動詞・
補助動詞の活用語尾に相当する部分の形態によって,記 号の方向を与えるという基本方針である。「読むことが できる」を例にあげれば,〈jomeru>など活用語尾が
〈ru>のものに上,<jomikit>など〈t>のものに左上,〈joN ganai>など〈i>のものに右上,というように記号の方向
を与える。
否定形の項目では,否定辞に相当する部分の形態によ って,記号の方向,および同じ方向に付ける補助記号を 与えるという基本方針である。否定辞のバリエーション が多くて,方向だけでは対応できず,同じ方向に付ける 補助記号との組合わせを必要とする。「読むことができ
ない」を例にあげれば,<jomenai>など否定辞が〈nai>
のものに上/補助記号なし,〈jomenεε〉など〈nεε〉のも のに左上/小円形の補助記号,<jomareN>など<N>のも のに上/小正三角形の補助記号,〈jomarehi N>など〈hi N>のものに左上/小正方形の補助記号,というように 記号の方向,および同じ方向に付ける補助記号を与える。
【補助記号】 前前前部および前後後部で補助記号を 与える。
前前前部は,「ヨーヨム」「ヨーキン」類の副詞「ヨ ー」「エー」「エモ」などに相当する部分である。例えば,
□形の記号を与えた「〜」という語形があったとして,
〈joo〜〉など前前前部が〈joo>のものに旧,〈e〜N>など
〈e>のものに旧,〈emo〜N>などくemo>のものに遇,
というように記号の左に補助記号を与える。
前後後部は,助詞「が」「に」などに相当する部分で ある。例をあげれば,〈ga>のものに[「,〈ga>のものに
[「,〈no>のものに[L,〈ni>のものに.□,というよう に補助記号を与える。
以上に述べた記号化の具体的なところ,各項目で適用 した詳細は,各図の説明の〔語形の記号化〕に記す。
5.2.各図の説明
173図 読むことができる〈能力可能〉
〔語形の採用と統合〕
質問文に設定された動作主体の能力を条件として,
「読む」という動作の実現が可能であることを表す能力 可能の表現の言い切りの形を見ようとした項目である。
「うちの孫は字をおぼえたのでもう本を読むことができ る」という質問文を用いて尋ねたもので,この項目で求 める可能表現の回答が,動作主体の能力を条件とするこ とは「うちの孫は字をおぼえたので」によって話者に提 示している。
可能表現に共通する採用の原則は,当該項目の動詞に ついて,その動作を実現することが可能・不可能である こと,あるいは可能性が有ること・無いことを表す表現 であり,しかも,現在時制で単純に言い切る形と認めら れるものとした。テンス・アスペクトの異なる形式や,
推量形式,待遇形式などが付加された形式は採用の範囲 外とした。
この項目の採用の方針も,この原則にしたがって設定 し,「読む」(共通語では五段型)という動詞を用いて,
その動作の実現が,可能であること,あるいは可能性が あることを表し,単純に言い切る形と認められるものを 採用することにした。
同じく「読む」という動詞を用いて,「電燈が明るい ので」という状況を条件として,その動作の実現が,可 能であることを表す状況可能表現の言い切りの形を求め た174図の項目と共通する形の回答については,能力可 能と状況可能の意味の違いを表現形式によって区別しな いところの回答と認めて,採用することにした。可能の 意味の違いを表現形式によって区別するところ,しない ところが,どこにどのような広がりをもって分布してい るかを見ることも,可能表現項目のねらいの一つである。
可能表現の項目では原則として,当該項目でねらいと した動作を表現する動詞について,語彙的回答を採用し ない方針をとった。173図,174図の「読むことができ る」の項目では,「読む」系統の動詞を使った回答を採 用し,語彙的意味の上では「読む」に対応しているが,
語としては異なるもの,例えば「見る」などを使った回 答は採用しない。
不採用とした回答について解説する。
回答語形の使用状況が語形の採用規則に合わないため に,不採用としたものは以下の回答である。
5527,89 [joζ〕kotoadekiful] 〈若>
5609.54[jomareru]〈今の若い人が言う。〉(共>
6383.28[jomikiru]〈輸入語。使う人もある。〉(P,