中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発
⎜⎜ 自動水やり機の開発 ⎜⎜
三 田 純 義・清 水 貴 史・寺 島 邦 彦 平 形 隆 正・加 藤 幸 一
群馬大学教育実践研究 別刷 第27号 163〜172頁 2010
群馬大学教育学部 附属学校教育臨床総合センター
中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発
⎜⎜ 自動水やり機の開発 ⎜⎜
三 田 純 義 ・清 水 貴 史 ・寺 島 邦 彦 平 形 隆 正 ・加 藤 幸 一
1)群馬大学教育学部技術教育講座
2)群馬大学大学院修士課程教育学研究科教科教育実践専攻技術教育専修 3)渋川市立北橘中学校
4)群馬県総合教育センター
Development of a compound teaching material
for manufacturing in cooperation with a junior high school
⎜⎜ Development of an automatic water supply machine⎜⎜
Sumiyoshi MITA , Takashi SHIMIZU , Kunihiko TERASHIMA Takamasa HIRAKATA and Koichi KATOU
1・2)Department of Technology Education, Faculty of Education, Gunma University Maebashi, Gunma, 371‑8510, Japan 3)Hokkitsu Junior High School, Shibukawa, Gunma, 377‑0062 4)Gunma Prefectural Education Center, Isesaki, Gunma, 372‑0031
キーワード:技術教育、ものづくり、教材開発、中学校連携、自動水やり機
Keywords:Technology Education, Manufacturing, Development of Teaching Material, Cooperation with Junior High School, Automatic Water Supply Machine
(2009年10月30日受理)
1.はじめに
現行の中学校学習指導要領の技術・家庭科[技術分 野](以下では技術分野とする)に示されている学習内 容は、A技術とものづくり(生活や産業の中で技術、
製作品の設計、製作工具や機器の使用・加工技術、製 作に使用する機器の仕組み・保守、エネルギーの変換 を利用した製作品の設計・製作、作物の栽培)とB情 報とコンピュータ(生活や産業の中での情報手段と役 割、コンピュータの構成・機能・操作と利用、情報通 信ネットワーク、マルチメディアの活用、プログラム
と計測・制御)の2つであり、そのうち、「エネルギー 変換を利用した製作品の設計・製作」、「作物の栽培」、
「コンピュータを利用したマルチメディアの活用」、
「プログラムの計測・制御」の4項目は、生徒の興味・
関心に応じて選択的に履修させる内容として必修とは されていない 。
平成24年度から全面実施される中学校の新学習指導 要領の技術分野に示されている学習内容は、A材料と 加工に関する技術(生活や産業の中で利用されている 技術、材料と加工法、製作品の設計・製作)、Bエネル ギー変換に関する技術(エネルギー変換機器の仕組み 群馬大学教育実践研究 第27号 163〜172頁 2010
と保守点検、製作品の設計・製作)、C生物育成に関す る技術(生物の生育環境と育成技術、栽培、飼育)、D 情報に関する技術(情報通信ネットワークと情報モラ ル、ディジタル作品の設計・制作、プログラムによる 計測・制御)の現代社会で活用されている多様な4つ の技術としている。また、現行の指導要領では選択履 修であった学習内容も、すべての生徒に履修させるこ とになる 。
しかし、技術分野の授業時数は、第1学年35時間、
第2学年35時間、第3学年17.5時間と、現行の学習指 導要領の授業時数と変わりなく、教材や指導法を見直 す必要がある。
新学習指導要領で示されているA、B、C、Dの4 つの領域の学習内容はそれぞれが完全に独立している わけではない。動きをもつものを製作するのであれば、
動きに関連した機構などの機械要素(Bエネルギー変 換に関する技術)を指導だけを必要とするのではなく、
製作するためには使用する材料やその材料の加工方法
(A材料と加工に関する技術に関する技術)も必要で ある。また、動きに対して製品本体が変形したり、破 断したりしてしまっては製品本体の機能を満たすこと はできない。さらに、その動きを、コンピュータなど によって計測・制御を行うとすれば、「D情報に関する 技術」とも関連してくる。このように生活の中で使用 されているものは多くの内容が関連して成り立ってい ると言える。新学習指導要領に示されているA〜Dの 技術も、それぞれを関連づけることで、個々の技術を 独立して学習を行うよりも、生徒は技術を深く広く学 習を行うことができると考えられる。
そこで、本研究では、平成24年度から全面実施され る新学習指導要領に則し、中学校現場と連携した、A 材料と加工、Bエネルギー変換、C生物育成、D情報 に関する技術を複合的した教材の開発と、それを用い てた中学校での授業実践について述べる。また、教材 開発と授業実践を通じて教育現場との連携のあり方に ついて述べる。
2.教育現場と連携した教材開発
2.1 教材開発の経緯
中学校現場で使用している教材は、市販教材あるい は教員の自作教材である。市販教材を利用すれば時間
をかけずに教材を手に入れることはできるが、指導目 標を達成するために適切な教材とは限らず、また、教 材費も必要となる。一方、指導目標を達成するのに適 切な教材を自作しようとすれば、そのための時間を確 保できなかったり、材料や部品の入手が困難だったり することも多い。このように、学校現場では教材の入 手や開発に、さまざまな課題を抱えている。
授業時間数が変わらず、指導内容が増えたことから、
新学習指導要領の内容に対応した教材は、従来の教材 とは異なった視点から作成する必要がある。本研究で は、A材料と加工に関する技術、Bエネルギー変換に 関する技術、C生物育成に関する技術、D情報に関す る技術の4つの内容を複合的し、かつ生徒が技術に関 する内容やその役割を構造化して学習できるような教 材が必要であると考える。
しかし、学校現場では教材の入手や開発に先ほどの ような課題を抱えており、新学習指導要領に向けた教 材は手に入れるのは容易でない。また、新指導要領の 実施が平成24年度を待たずに前倒しで行われる地域も あり、教材開発とそれを用いた授業案作りが差し迫っ た課題である。
大学の学部教育では実践科目として教育実践イン ターンシップを設けたり、また、大学院教育では教育 現場での授業実践演習を科目として設けている。技術 教育講座では、インターンシップを希望する学部生や 大学院生には、教育現場と連携して、その機会をでき る限り与えるようにしている。本研究に取り組んだ大 学院生には、授業実践演習を広くとらえ、約週3日、
公立中学校の技術科の授業で、中学校の教員とともに 生徒を指導する機会を設けた。学生は実践的な体験を 通して、多くの生徒がものづくりやコンピュータと いった技術の授業に興味・関心をもって取り組んでい る様子を観察することができた。また、授業以外にも、
給食や行事の手伝いなどの学校生活においても生徒た ちや中学校の教員たちと共有することができ、イン ターンシップとして充実した時間を得ることができ た。
このインターンシップを通して、中学校から大学に 新学習指導要領に向けた教材開発、授業づくりの依頼 があり、中学校の1年生を対象に教材と指導計画を作 成することとなった。中学校と大学との連携には、自 然環境問題をテーマとした総合的な学習の時間の授業
プログラムなど少なくはない 。
新学習指導要領に向けた教材を用いて授業を実施す る中学校1年生は、表1の年間指導計画に示すように 現行の学習指導要領の「B情報とコンピュータ」で基 本的なコンピュータの操作を学習し、「A技術とものづ くり」で「生活を豊かにするものをつくろう」として、
図1に示すペンや植物を載せることのできるプラン ター付きフォトスタンドの製作について学習してい る 。その後に、新学習指導要領に向けた教材開発を開 発し、授業を実践することとなった。
このことから、題材の選定に際しては、第一に生徒 の実態を考慮し、これまでに製作を行ってきたフォト スタンドでの植物栽培に関連付けることと、新学習指
導要領に示された「D情報に関する技術」の1つ「プ ログラムによる計測・制御」を学習できるようなコン ピュータを用いた自動で働くものを製作していくこと を中学校現場からも依頼され、その点を踏まえて教材 中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発
表1 公立中学校の年間指導計画 1年生
B情報とコンピュータ⑴〜⑷
「自己紹介をしよう」……7時間 コンピュータの基本操作
・文書処理、画像処理、プレゼンテーションソフトウェアの活用
・コンピュータの基本操作を身に付けることにより、情報を進んで活用する力を身に付ける。
新学習指導要領との関連: 情報に関する技術の現代社会で活用されている多様な技術―⑵デジタル作品の設計・制 作
A技術とものづくり⑴〜⑷
「生活を豊かにするものをつくろう」……28時間
・製作品の構想 ・製作品の設計 ・製作品の製作 ・製作品のまとめ
*構想・設計、製作・振り返りの過程を通してものづくりの手順、進め方を身に付ける。
新学習指導要領との関連: 材料と加工に関する技術―⑵材料と加工法、⑶材料と加工に関する技術を利用した製作 品の設計・製作
2年生
B情報とコンピュータ⑴〜⑷
「コンピュータを利用していろいろな発表をしよう」……28時間
・インターネットを活用した情報検索、文書処理、表計算、画像処理、データベースソフトウェアの活用
*各種ソフトウェアを活用した発表資料の制作を通して、情報社会に必要な知識や技術、情報活用能力を育成する。
新学習指導要領との関連: 情報に関する技術の現代社会で活用されている多様な技術―⑴情報通信ネットワークと 情報モラル、⑵デジタル作品の設計・制作
A技術とものづくり⑴〜⑷
「生活に役立つソーラー付きダイナモラジオをつくろう」……7時間
・エネルギーの変換方法・基本的な電気回路 ・ラジオ製作
*製品の製作を通して、作業手順や組立て方法を身に付ける。
新学習指導要領との関連: エネルギー変換に関する技術―⑵エネルギー変換に関する技術を利用した製作品の設 計・製作
3年生
B情報とコンピュータ⑸
「見る人に感動を与えるディジタル作品をつくろう」……17.5時間
・見る人に感動を与えるという観点から、制作品を構想
・1年次、2年次に活用したソフトウェアの複合的活用
*これまでの学習の成果を生かして、Webページやビデオクリップ等のデジタル作品の構想、制作、振り返りを行い、
生活に必要な知識や技術の定着を図る。
新学習指導要領との関連: 情報に関する技術の現代社会で活用されている多様な技術―⑴情報通信ネットワークと 情報モラル、⑵デジタル作品の設計・制作
図1 プランター付きフォトスタンド 165
を開発することにした。
2.2 教材開発の構想
植物に関連すること、自動で働くものであるという 視点から、土中の水分量が少なくなると、それをセン サで検知し、自動的にポンプを動かして水分を補給す ることができるポンプ水やり機の開発を検討した。
本研究のポンプ水やり機とは、植木ポットの土の水 分量をセンサで検出し、水分量に応じてポットに水を 供給する機械とする。
ポンプ水やり機の製作・制御の授業を実施する生徒 は中学校1年生であり、小学校時での学習では、現行 の小学校学習指導要領第7節図画工作の内容から、木 切れなどの材料や場所の特徴をもとに、組み合わせる、
切ってつなぐ、形を変えてつくるなど工夫し、新しい 形をつくるとともに、その形から発想してつくりだす 造形遊びをすることなどの学習を行なってきたと考え られる 。
また、実施を行う前に表1に示すように、現行の学 習指導要領のB情報とコンピュータでは基本的なコン ピュータの操作を学習し、プランター付きフォトスタ ンドの製作で材料の加工や組み立てといったことを学 習してきた。しかし、インターンシップでの半年間の 生徒の観察から、生徒たちはプランター付きフォトス タンドの製作で木材をノコギリで切断、金属板の切断 や折り曲げ、アクリル板の切断などの加工を学習して きたが、生徒全員がうまく加工できたのではなく、不 慣れな生徒も多く、ポンプ水やり機の製作・制御の授 業では材料の加工についての指導も必要があると気づ いた。
ポンプ水やり機の製作・制御では、以下の新学習指 導要領の学習内容を含むこと考慮した。
A 材料と加工に関する技術
⑵ ア 材料の特徴と利用方法を知ること。
イ 材料に適した加工法を知り、工具や機器を安 全に使用できること。
ウ 材料と加工に関する技術の適切な評価・活用 について考えること。
⑶ ア 使用目的や使用条件に即した機能と構造につ いて考えること。
ウ 部品加工、組立て及び仕上げができること。
B エネルギー変換に関する技術
⑴ ア エネルギーの変換方法や力の伝達の仕組みを 知ること。
イ 機器の基本的な仕組みを知り、保守点検と事 故防止ができること。
ウ エネルギー変換に関する技術の適切な評価・
活用について考えること。
D 情報に関する技術
⑴ ア コンピュータの構成と基本的な情報処理の仕 組みを知ること。
エ 情報に関する技術の適切な評価・活用につい て考えること。
⑶ ア コンピュータを利用した計測・制御の基本的 な仕組みを知ること。
イ 情報処理の手順を考え、簡単なプログラムが 作成できること。
以上のことから、新学習指導要領に記される内容を 複合し、土中の水分量が少なくなると、自動的にポン プを動かして水分を補給することができる「ポンプ水 やり機の製作」を通して、材料と加工、エネルギー変 換、情報等の内容に関して生徒の興味・関心を高め、
基礎的な知識と技術を構造化して指導でき、それぞれ の内容の関連性についての見方や考え方を養うことが できると考え、本題材を設定した。
3.ポンプ水やり機
3.1 仕様
開発するポンプ水やり機に求められる機能は、植木 ポットの土の水分量をセンサで検知し、水分量に応じ て植木ポットに水を供給する機械であるポンプ水やり 機に必要な機能は大きく分けて、①植木ポットなどに 水を供給できること、②水分量の計測ができること、
③植木ポット内の水分量が減少したら、自動で働くこ との3点である。また、開発するポンプ水やり機の大 きさは持ち運ぶことができ、卓上で使用できるものと して考え、表2に示す仕様とした。
表2 ポンプ水やり機の仕様 最 大 重 量 1㎏以内 ポンプの容量 500ℊ以内
電 源 電池
3.2 構造の検討
⑴ 植木ポットに水を供給する仕組み
ポンプ水やり機の本体では植木ポットに水を与える ことから、液体を自動で汲み上げる、灯油用のポンプ の検討を最初に行った。しかし、そのまま利用するこ とで教材としては生徒が製作する部分が少なくなって しまうことが考えられた。また、この灯油用のポンプ は羽根車を回転させて、水を汲み上げる流体機械であ る。中学校技術科の学習指導要領では流体機械につい ての学習内容は記述されておらず、中学生が学習する にはやや複雑である。そのため、灯油用のポンプを採 用しないこととした。
次に、シャンプーボトルのポンプや霧吹き用のポン プでの水の供給を考えた。このようなポンプでは、機 械的にポンプを押すことで水を汲み上げることができ る。このポンプの仕組みと関連することは、中学校技 術科の新学習指導要領の「Bエネルギー変換に関する 技術、ア エネルギーの変換方法や力の伝達の仕組み を知ること」に、「歯車やカム機構、リンク機構など、
力や運動を伝達する仕組みの特徴や共通部品について 知ることができるようにする」とある。このことから、
ポンプを押して水を出すためにはこれらの機構を用い ることを検討した。
シャンプーボトルのポンプでは、図2のように上か ら力を加える偏芯カム機構を、霧吹き用のポンプには、
図3のように横から押す力を加えるスライダ・クラン ク機構を用いてポンプ水やり機を試作した。
シャンプーボトルのポンプの偏芯カム機構では、偏 芯カムを回転するのに大きなトルクが必要となり、カ ムの軸を左右2つのモータで回さないとポンプを押す ことができなかった。また、偏芯カムを金属のみで製 作すると、シャンプーボトルのポンプの接触部との摩 擦が起こり、プラスチックのポンプではすり減ってし まうことがわかった。摩擦を軽減するベアリングを取 り付けることも考えられたが、中学校では金属を加工 するための旋盤などの機械はほとんどなく、手工具で 加工することは不可能である。
霧吹き用のポンプでは、てこの原理を使ったレバー を引くことによって水を汲み上げることができる。こ のレバーを引くには、スライダ・クランク機構を使い モータの回転運動を往復運動に変換し、レバーを動か すことができる。このことから、スライダ・クランク
機構を用いて、比較的トルクの小さいモータ1台で駆 動できる霧吹き用のポンプを採用することとした。
⑵ 水分量の計測
植木ポット内の水分量を検知するためには、水分セ ンサそのものが必要となる。水分センサは数千円で市 販されているが、教材として使用するには高価であり、
教材として使用することは難しい。そこで安価で簡単 に製作できる水分センサの製作を構想した。
安価に製作することから、植木ポット内の土壌に二 本の電極をさし込み、土壌の水分量によって電極間の 抵抗値が変化することを利用することとした。
そこで、土壌はいろいろな化学的な成分が含まれて いるため、土の代わりに砂を用い、砂に含まれる水分 量によって、電極間の抵抗値がどう変化するのかを調 べるため、砂20ℊに対しての表3に示す条件で、抵抗 値を測定した。この際、電極には20㎜四方の正方形の 木片にアルミニウム片を取りつけたものを使用した。
図2 シャンプーボトルの偏芯カム機構
図3 霧吹き用のポンプのスライダ・クランク機構 中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発 167
図4に示す測定結果から、土壌中の水分量が増える と、抵抗値は減少していくことがわかる。水分量と 抵抗値の関係は比例関係ではないが、ポンプ水やり機 での水やりでは、ある一定以上の水分が土壌中から失 われた時に行うため、電極2本を土壌にさし込み、そ の間の抵抗値を測定することで、水分センサとして使 えると考えた。
植木ポットでは土壌に深さがあるため、図5に示す 金属線に導線を取り付けた電極の水分センサを製作し た。これに、図6に示すように抵抗1つを直列に接続 し、水分量による電気抵抗の変化を電圧に変換する。
⑶ 計測・制御のためのコントローラ
ポンプ水やり機では、植木ポット内の水分量を水分 センサで検知し、水分が減ったら、ポンプを駆動し、
自動で水やりをする。それには、センサの信号の大小 を判断し、その結果にもとづいてモータを起動・停止 することが必要である。その計測・制御のためにコン ピュータを使うことにした。
自動で働かすための装置には、ポンプ水やり機に載 せることができ、ほかの機材との常時接続を必要とせ ず、持ち運びできるように、コンパクトなコンピュー タ、いわゆる、マイクロコンピュータの使うことにし た。
そこで、神奈川県教育センターが開発した学校教育 用のロボット学習システム RoboXの一部であるロ ボット制御ボード(RoboBrain)を採用した 。図7に 示すロボット制御ボード(RoboBrain)にはモータ接 続端子(出力)が3つ、センサ接続端子(入力)が6 つあり、モータとセンサのそれぞれを接続できる。セ ンサとしては、水分センサに限らずに、温度センサな どのほかのセンサも組み合わせて使うことができ、制 表3 砂と水分量
砂 砂20ℊ乾燥した砂を網の目が0.85㎜のふるいを 使ってふるう。
水分量 0.5ℊ、1.0ℊ、1.5ℊ、1.0ℊ、2.5ℊ、3.0ℊ、
3.5ℊ、4.0ℊ、4.5ℊ、5.0ℊ
図4 抵抗値[kΩ]と水分割合(水[㏄]/砂[ℊ])
図5 ポンプ水やり機に使用する水分センサ
図6 水分センサの回路
図7 ロボット制御ボード(RoboBrain)
御ボードとして発展的に活用することが可能である。
このロボット学習システム RoboXには、プログラ ム作成アプリケーションのロボビルダー(RoboBuil- der)があり、図8に示すように、GUI(Graphical User Interface)であり、モータやセンサ、動作時間設定な
どのアイコンを組み合わせてプログラムを作成するこ とができる。
多くの中学生はマウスを動かしてコンピュータを操 作することができるが、キーボードから命令を打ち込 んで、プログラミングを学んだ生徒はごく少数である と考えられる。ロボット学習システム RoboXでは、
BASICなどのようなプログラミング言語を用いず に、アイコンの並び替えで簡単にプログラムを作成で き、プログラミングを行ったことない中学生でも、プ ログラムの流れを考えることが容易であり、取り組み やすい。
図9に示すプログラムでは、アイコンを組み合わせ、
水分が多い場合には、再度水分量を判定し、少ない場 合にはポンプを駆動するためのモータA(ここでは、
ロボット制御ボード(RoboBrain)の出力ポートAに 接続したモータ)を2秒働かせ、2秒停止させる。そ して、再度水分量を判定することを繰り返す。水分セ ンサの値やモータの動作時間は簡単に変更することが できる。
以上の植木ポットに水を供給する仕組み、土壌中の 水分量の検知、コントローラの検討をもとに、図10に 示すポンプ水やり機を開発した。
4.授業実践
4.1 授業の指導計画
中学校1年生(3クラス105名)に実施する指導計画 は中学校の年間授業計画の中で行うことから、ポンプ 水やり機の製作・制御を全11時間とし、表4に授業内 容と授業時間数を示す。
初めの3時間の授業で、ポンプ水やり機の製作・制 御の基礎になる内容で、中学校1年生が未履修の内容 として、コンピュータの働きや仕組み、コントローラ と光センサを用いたライントレースカーでのプログラ ミング、リンク機構を指導した。
その学習後に、1班生徒3〜4人で加工や組み立て 等を工夫して、ポンプ水やり機の製作に取り組んだ。
ポンプ水やり機の製作では、授業時間の1時間で取 り組めるように、ポンプ水やり機の本体をベース、支 持板、クランク機構などに分けて、製作計画を練り、
指導した。また、製作に使用する材料をあらかじめ決 めず、木材・金属(アルミニウム)・プラスチックのそ 図8 ロボビルダー(RoboBuilder)
図9 ポンプを動かすプログラム例(アイコン)
図10 ポンプ水やり機
中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発 169
れぞれの材料の中から生徒に選択させた。
授業の指導には、大学から教員1名、学生4名、公 立中学校から教員1名が参加し、毎時間3〜4名での T.T(チームティーチング)を取り入れ、学生がT1と して中心となって指導した。
生徒の授業への取り組みの様子を図11に、生徒の製 作したポンプ水やり機を図12、図13に示す。
4.2 授業実践結果
⑴ 生徒への授業アンケート調査
毎回の授業の終わりに、群馬県内の技術科を担当す
る教員グループが作成した表5に示す項目の質問紙を 使用し、調査した。興味・関心、理解、工夫、意欲・
態度、目標についての項目に、5段階で生徒たちに 自己評価させた。その結果を図14に示す。
興味・関心については、常に4と高い値となり、生 表4 授業内容とその授業時数
授業内容 授業時数
1.コンピュータによる計測・制御
・生 活 や 産 業 の 中 で 用 い ら れ て い る コ ン ピュータ
・コンピュータによる計測・制御の仕組み
1時間
2.ライントレースカーの制御
・コントローラ RoboBrain
・RoboBuilderによるプログラミング
・光センサを用いたライントレースカーの制 御
1時間
3.ポンプ水やり機の機構
・ポンプ水やり機に使うリンク機構
・リンク機構のモデルの製作
1時間
4.ポンプ水やり機の製作と制御
・ポンプ水やり機の構想
・・ポンプ水やり機本体のベースづくり
・スライダクランク機構のベースづくり
・ポンプ水やり機の組立・調整・完成
・水分センサ
・ポンプ水やり機の制御
8時間
表5 生徒への調査項目
分類 質 問
興味・関心
・大人になっても今日学習したことは役に 立つと思います。
・学習したことを積極的に生活に役立てよ うと思います。
理 解 ・自 分 の 作 る も の の 特 徴 を 説 明 で き ま す。・学習したことを人に説明できます。
工 夫
・自 分 な り の 工 夫 を し よ う と 思 い ま し た。・いろいろな材料や方法をつかって、
つくってみたいと思いました。
意欲・態度
・失敗をおそれずに、できるまで何回も チャレンジできました。
・自分から進んで授業に、取り組むことが できました。
・みんなと協力して取り組めたと思いま す。
目 標 本時の目標が達成できました。
図11 授業の様子
図12 生徒の製作したポンプ水やり機⑴
図13 生徒の製作したポンプ水やり機⑵
徒は毎回の授業に興味・関心を持って取り組んでいた ことがわかる。また、理解については、授業の回を重 ねるごとに向上した。さらに、目標については、授業 ごとによって点数にばらつきがあった。評価が低く なった理由として、毎回の授業でその授業ごとの目標 を設定したが、その授業で設定した目標がやや難しく、
到達できた生徒が少なかったことが挙げられる。
⑵ 教師へのアンケート調査
ポンプ水やり機の製作・制御の授業の11時間中の7 時間目に研究授業を行い、その後に授業研究会をもっ た。
授業を参観した現職の中学校教員ら12名を対象に、
本題材について「この授業を実施するには何学年が適 当であるか」、「中学校への導入は可能か」などについ てアンケート調査を行った。その結果を表6に示す。
その結果から、次のようになった。
①実施学年:「第1学年で扱うには能力的に厳しい」、
「理科とのつながりを考えて」、「第3学年は時間不 足」などの意見を考慮すると、第2学年が適当であ ると言う回答が多い。
②授業時数:実践した授業時数11時間では少ないとい う回答が多かった。
③題材の展開:「総合的な内容を含んでいるが、それ ぞれの内容の指導の深さや指導方法などの授業の展 開による」との回答があった。
④中学校への導入:導入するには、「教材費とスタッ フの確保」、「一人一人の生徒の評価はどのように行 うのか」、「教材準備に時間がかかる」等の課題が挙 げられた。また、「生徒の実態を考えて」という意見
表6 教師へのアンケート結果 この授業を実施するには何学年が適当であるか」
第1学年 1人
第2学年 10人
第3学年 0人
無 回 答 1人
指導時間数は10・15・20時間でどれほど必要か」
10 時 間 1人
15 時 間 7人
20 時 間 3人
無 回 答 1人
題材を総合的に展開できるか」
展開できる 10人
展開できない 1人
無 回 答 1人
中学校への導入は可能か」
可能である 9人
可能でない 1人
どちらとも言えない 1人
無 回 答 1人
インターンシップによる学生のティーチングアシス タントは効果的であるか」
効果的である 12人
効果的でない 0人
図14 授業時間ごとの各項目の調査結果 中学校と連携した技術科の総合ものづくり教材の開発 171
もあった。
⑤教育現場インターンシップとティーチングアシスタ ント:「(特に技術科は、)いろいろな展開のやり方 があるので効果的だと思う」、「生徒への支援が細か く入るのでよい」、「我が校にも来てほしい」という 回 答 が あ り、イ ン ターン シップ を 通 じ た 学 生 の ティーチングアシスタントによる学習指導支援は効 果的であった。
5.結言
中学校学習指導要領改訂にともなう技術・家庭科[技 術分野]の授業を展開することを目的に、中学校と連 携し、「材料と加工」、「エネルギー変換」、「情報」を複 合化した教材として「ポンプ水やり機」を開発した。
その教材を用いて、授業を実践したところ、生徒は興 味を持って取り組み、理解を深めた。また、授業を中 学校教員の公開したところ、参観した教員は開発した 教材は授業に導入可能であると評価した。
授業が成立した第一の理由に、教育現場インターン シップを通して、学生が生徒や中学校の現状を知り、
現場の教員と連携して取り組めたことが挙げられる。
第二には、教材や授業案について、学校現場の教員と、
大学の教員や学生とが十分打ち合わせができたことで ある。第三には、生徒の学習状況や教材の必要性を把 握している学校現場と、教材の開発力を有する大学が
相互の機能や働きを活かして連携できたことである。
今後、教材や指導計画を改善し、学校現場の教員が 活用し、生徒の学習に生かせるようにする必要がある。
謝辞
本研究にあたり、教育研究の機会を与えてくださっ た渋川市立北橘中学校青木金雄校長先生、また意欲的 に授業に取り組んだ105名の生徒諸君、教材開発と授業 実践に協力いただいた教育学部技術教育講座学生の井 野口正和君と加藤公成君、SPP(サイエンスパート ナーシッププロジェクト)の関係諸氏に心より感謝を いたします。
参考文献
1)文部科学省編:中学校学習指導要領(平成10年12月)解説
―技術・家庭編―
2)文部科学省編:中学校学習指導要領(平成20年9月)解説
―技術・家庭編―
3)尾澤重知・今井亜湖・西村昭治:中学校と大学との連携に よる総合的な学習の協調的デザイン、日本教育工学会論文誌、
29(Suppl.)、129‑132、2005 4)文部科学省検定済教科書
新しい技術・家庭 技術分野、東京書籍(2005)
技術・家庭 技術分野、開隆堂(2005)
5)文部科学省編:小学校学習指導要領(平成10年12月 告示、
15年12月一部改正)
6)ロボット学習システム RoboX
http://www.edu.ctr.pref.kanagawa.jp/robox/
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みた すみよし・しみず たかし・てらしま くにひこ ひらかた たかまさ・かとう こういち
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