博 士 ( 工 学 ) 片 山 則 昭
学 位 論 文 題 名
金 属 酸 化 物 に よ る イ オ ン 交 換 反 応 のモ デ ル 化 に関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
金 属 酸 化 物 に よ る イ オ ン 交 換 反 応 は , 分 析 化 学 , 環 境 化学 ,材 料 表面 化学 など に関 連 す る 重 要 な 反 応 で あ る . 分 析 化 学 で は , イ オ ン 交 換 ク ロ マ トグ ラフ 法 の担 体の 機能 に関 係 す る と と もに ´ 原子 吸光 法及 び【CP法に おけ るイ オ ンの 予備 濃縮 に利 用 され てい る. 環境 化 学 で は , 水 処 理 に お け る 有 害 イ オ ン の 除 去 に 利 用 さ れ , ま た, 環境 中 の金 属酸 化物 によ る イ オ ン 交 換 反 応 は , 土 壌 の 植 物 栄 養 塩 保 持 量 , 河 川 , 湖 沼 ,地 下水 な どの 水質 に影 響を 与 え て い る , 材 料 表 面 化 学 で は , 機 能 性 金 属 酸 化 物 徽 粒 子 の 分散 性, 微 粒子 表面 の調 整技 術 に 関係して いる.
金 属 酸 化 物 に よ る イ オ ン 交 換 反 応 プ ロ セ ス を 効 率 良 く 設計 ,制 御 し, さら に環 境中 で の イ オ ン 交 換 反 応 挙 動 を 合 理 的 に 記 述 し 予 測 す る た め に , その 反応 モ デル の確 立が 重要 で あ る , 従 来 , イ オ ン 交 換 反 応 の 平 衡 に 関 す る モ デ ル と し て ,質 量作 用 則に 基づ く選 択係 数 が 用 い ら れ て き た . し か し , 各 反 応 成 分 の 濃 度 商 と し て 表 わさ れる 選 択係 数は 反応 の進 行 度 に 依 存 し , 定 数 に な ら ず , ま た , イ オ ン 交 換 反 応 に あ ず かる 固液 界 面化 学種 の活 量係 数 に 基づくモ デル化の理論は,確立され ていないのが実情である.
本 研 究 で は , 水 溶 液 中 の 金 属 酸 化 物 粒 子 表 面 で 起 こ る イオ ン交 換 反応 の化 学量 論と 平 衡 に つ い て , 次 の 独 自 の ア プ 口 一チ によ っ てモ デル 化を 行っ た :1) 見 かけ 上一 つの イオ ン 交 換 反 応 に 対 し , 複 数 の 交 換 反 応の 併発 を 考慮 する ,2)イ オン 交換 反 応で は, 均一 相反 応 と 異 な り , 反 応 生 成 物 が 固 液 界 面 に 局 在 す る の で 界 面 化 学 穏間 に静 電 的反 発, 立体 障害 な ど が 生 ず る こ と を 考 慮 し , こ れ に よ る 反 応 抑 制 を 熱 力 学 的 関係 によ っ て表 わす .さ らに , モ デ ル に よ り 得 ら れ た 交 換 反 応 の 平 衡 定 数 値 に 基 づ き , イ オン 交換 反 応量 の再 現と 予測 を 可 能 に す る と と も に , 各 種 酸 化 物の イオ ン 交換 能な らび に各 種 イオ ンの 交換 吸 着親 和性 を認t 価 し , そ の 相 違 の 原 因 に つ い て検 討し た ,本 研究 の内 容は 以 下の6章 にま とめ られ てい る . 第1章 は 序 論 で あ り , 分 析 , 環 境, 工業 技術 等 にお ける イオ ン交 換 反応 の役 割と ,そ の モ デ ル 化 に よ る 挙 動 の 理 解 と 予 測 の 重 要 性 を 指 摘 し , 本 研 究 の 目 的 を 述 ぺ て い る . 第2章で は, イオ ン 交換 体と して 用い た 種々 の金 属酸 化 物(I f102,Tioz,Fe304,Fez03, Al203) の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ンを 行っ た結 果 と, それ に基 づく 酸 化物 表面 構造 のモ デ ル に つ い て 述 べ て い る . 即 ち , 酸 化 物 表 面 は 水 酸 基 化 し て 酸型 表面 水 酸基 と塩 基型 表面 水 酸 基 を 形 成 し , 両 表 面 水 酸 基 が イ オ ン 交 換 サ イ ト に な る も のと 考え た .各 酸化 物の 表面 水 酸 基 密 度 は , そ の イ オ ン 交 換 容 量 を 与 え る 重 要 な 特 性 値 で ある .こ れ を求 める ため ,酸 化 物 のBET比 表 面 積 を 測 定 す る と と も に, グリ ニヤ ー ル反 応あ るい は酸 塩 基中 和反 応を 用い て 表 面 水 酸 基 量 を 測 定 し た . 比 表 面 積 は , 酸 化 物 種 に よ り , また 同一 酸 化物 でも 調製 条件 に よ り 種 々 変 化 す る が , 表 面 水 酸 基 密 度 は , 酸 化 物 の 種 類 に よら ずほ ぼ 同一 であ り, 水酸 基 の 最 密 充 填 配 列 を 仮 定 し た 計 算 値 (3. 90x10−smolm・2) に よ っ て 説 明 で き た . 第3章 で は , 種 々 の 金 属 酸 化 物 (lIn02,Tioz,Fe304,Al203) に よ る1価 陽 ・ 陰イ オ ン
(Li゛,Na゛,K゛,Cs゛,N03−)交換反応のモデル化について述べている.1価陽イオンは,酸型 表 面 水 酸 基 の 脱 プ ロ ト ン 化 に よっ て生 じ た負 の荷 電サ イト ヘ 交換 吸着 し,1価 陰イ オン は , 塩 基 型 水 酸 基 の プ 口 ト ン 化 に よ っ て 生 じ た 正 の 荷 電 サ イ トヘ 交換 吸 着す る. これ らの 吸 着 イ オ ン は , 荷 電 サ イ ト 上 の 溶 液 相 に 対 イ オ ン と し て 位 置 し, 分極 し た 表面 イオ ン対 を 形 成 す る も の と 考 え る モ デ ル を 提 案 し た . 表 面 イ オ ン 対 形成 によ っ て生 じた 酸化 物の 表 面 電 荷 密 度は , 酸塩 基滴 定法 によ っ て測 定し た. 表 面電 荷密 度は ,pzc(ゼ口 電荷 点) と呼 ば れ るpHで0, そ れ よ り 低pHで は 正 , 高pHで は 負 の 値 を と る . 実 測 の 表 面 電 荷 密 度 とpHの 関 係 に 対 し , 酸 化 物 表 面 に 生 成 し た 表 面 イ オ ン 対 に よ る 交 換 反応 抑制 を 考慮 した 平衡 モデ ル 式
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を 導 出 し, モ デ ル 式パ ラ メ ー タの 最 適 化 によ り 平 衡 定数 を 決 定 した .得ら れた平衡 定数値 に よ り , 酸化 物 表 面の 帯電挙動 および イオン 吸着量 を再現 ,予測 すると ともに ,各金属 酸化物 の イ オ ン 交 換 機 能 な ら び に 各 陽 イ オン の 交 換 吸着 親 和 性 を評 価 し た .酸 化 物 の 陽イ オ ン 交 換 機 能 は ,Al203くFe304くTi02くXnozの 順 に増 加 し , 陰イ オ ン 交 換機能 はこの 順に減 少した . 次 に , 金属 酸 化 物 のイ オ ン 交 換機 能 と 酸 化物 格 子 金 属イ オ ン の 電気 陰性度 との相関 性を調 べ た と こ ろ, 電 気 陰 性度 の 増 加 とと も に 陽 イオ ン 交 換 機能 が 増 大 し, 陰イオ ン交換機 能は対 称 的 に 滅 少 す る こ と が 分 か っ た . これ は , 格 子金 属 イ オ ンの 電 気 陰 性度 が 増 加 する ほ ど , 隣 接 す る 水 酸 基 の 電 子 密 度 が 誘 導 的に 低 下 す るた め と 考 えた . 即 ち ,水 酸 基 の 電子 密 度 の 低 下 に よ り, 酸 型 水 酸基 で は , 脱プ ロ ト ン 化が 促 進 さ れて 陽 イ オ ン交 換機能 が大きく なり, 逆 に 塩 基 型 水 酸 基 で は , プ ロ ト ン 化が 相 対 的 に抑 制 さ れ 陰イ オ ン 交 換機 能 は 小 さく な る . ま た , イ オ ン 交 換 平 衡 定 数 値 か ら 評価 し た ア ルカ リ 金 属 イオ ン の 交 換吸 着 親 和 性は , 原 子 番 号 が 大 きい イ オ ン ほど 大 き か った . 裸 の イオ ン の 電 荷密 度 は こ の逆 にナょ るので, 吸着イ オ ン は , 原子 番 号 が 小さ い ほ ど サイ ズ が 大 きい 水 和 イ オン と し て 存在 するも のと推定 できた . 第4章 で は , 種 々 の 金 属 酸 化 物 (M1102.Fe203,Fe304,Alz03) に よ る2価 重金 属 イ オ ン
(Pb2+,Cu2十,C02+,Zn2十,NiZ十,Mn2゛)の交換反応のモデル化について述べている.2価重金 属 イ オ ンは , 酸 型表 面水酸基 のプロ トンと (1:1)及 び(1:2)の割 合で交換 反応し ,吸着 イオ ン は 特 異 的 に 固 相 と 結 合 し て 表面 錯 体 を形 成 す る もの と 考 え るモ デ ル を 提案 し た . 金 属 酸 化 物 粒 子 に 対 す る2価重 金 属 イ オン 吸 着 量 を溶 液 平 衡 濃度 とpllの 関数 と し て 測定 し , 吸 着等温 線を得 た,吸着 量は, 溶液平 衡濃度 ,pllとと もに増 加する .この 吸着デ ―夕に対し,
生 成 し た 表 面 錯 体 に よ る 反 応 抑 制を 考 慮 し た平 衡 モ デ ル式 を 導 出 し, モ デ ル 式パ ラ メ ― 夕 の 最適化 により 上記の(1:1) 及び(1:2)交 換反応に 対応す る各平衡定数を決定した.得られ た 平 衡 定 数 値 に よ り 実 測 の 吸 着 等温 線 を 再 現し , ま た ,与 え ら れ た条 件 下 の イオ ン 吸 着 分 率 を 予 測 す る と と も に , 各 金 属 酸 化 物 の イ オ ン 交 換 機 能 な らび に 各2価 重 金 属イ オ ン の 交 換 吸着親 和性を 評価した . H1102に対する2価重金 属イオ ンの交 換吸着 親和性 は,Ni゜゛く Znz゛くC02゛くMn2゛くCu2+,Fe203に対しては,C02゛く2n2゛くCu2゛くI】b2゛の順に増加した.こ れ ら の2価 重 金 属 イ オ ン は 水 中 で ヒ ド ロ キ ソ 錯 体 を 形 成す る が , その 平 衡 定 数と 表 面 錯 体 形 成 の 平 衡 定 数 は 良 い 相 関 を 示 し, ヒ ド ロ キソ 錯 体 形 成が 容 易 な イオ ン ほ ど 吸着 性 が 良 い こ と が 分 か っ た . そ の 理 由 は , 両者 と も 水 酸基 と の 反 応で あ り , 化学 反 応 と して 類 似 し て い る た め と 考 え た . C02゛イ オ ン に 対す る 各 酸 化物 の イ オ ン交 換 機 能 は,Al203くFez03く Fe304くHJ102の 順に 増 加 し た. こ れ は 酸化 物 格 子 金属 イ オ ン の電 気陰 性度の 増加す る順に 一 致 し ,C02゛イ オ ン 交 換機 能 の 増 加は , 表 面 水酸 基 の 脱 プロ ト ン 化 の促 進 に よ るも の と 結 諭 した.
第5章 で は , 金 属 酸 化 物 へ の2価 重 金 属 イ オ ン 吸 着 量 と そ の 際 遊 離 す る プ ロ ト ン量 を そ れ ぞ れ 測定 し , [ 遊離 プ ロ ト ン量 ] / [ 吸着2価 重金属 イオン 量]で 表わさ れる交換 比の値 を 測 定 し た. 実 測 の 交換 比 は ,1と2の 間 の非 整 数 と なり . (1:1)及 び(1:2)交換 反応の併 発 を 考 慮 し た 第4章 の モ デ ル の 化 学 量 論 を 実 証 で き た . また , 交 換 比が 溶 液pH及 び イ オン 濃 度 と も に 変 化 す る 挙 動 が モ デ ル 計算 で 再 現 でき , 本 モ デル で 仮 定 した 平 衡 条 件式 が 正 当 な ものであることが示された.
第6章は本論文の総括である.
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
主査 教授 古市隆三郎 副査 教授 渡辺寛人 副査 教授 高橋英明 副査 助教授 田村紘基
学 位 論 文 題 名
金 属 酸 化 物 に よ る イ オ ン 交 換 反 応 の モ デ ル 化 に 関 す る 研 究 、 I
金 属酸化 物によ るイオ ン交換 反応は、 分析化 学、環 境化学 等に関 連する 重要な 反応で ある。
例 え ぱ 、イ オ ン 交 換ク ロマト グラフ 法の担 体機能 に関係 し、原 子吸光 法及びICP法にお けるイ オ ン の 予備 濃 縮 に 利用 さ れ て いる 。 ま た 、水 処理 技術に おいて は有害 イオン の除去に 利用さ れ 、 土 壌 の 植 物 栄 養 塩 保 持 量 、 河 川 、 湖 沼 、 地 下 水 な ど の 水質 に も 影 響を 与 え て いる 。 イ オン 交 換 反 応プ ロ セ ス を効 率 よ く 設計 、 制御し 、更に 環境中 での反 応挙動 の合理 的な記 述 と 予 測を 行 う た めに 、 そ の 反応 モ デ ル の確 立が 必要と されて いる。 従来、 イオン交 換反応 の 平 衡 に関 す る モ デル と し て 、質 量 作 用 則に 基づ く選択 係数が 用いら れてき た‥しか し、選 択 係 数 は反 応 の 進 行度 に 依 存 して 変 化 し 、ま た、 交換反 応に与 る固液 界面化 学種の活 量係数 に基づくモデル化理論は、確立されていな。
本 論文は 、水溶 液中の 金属酸 化物表面 で起こ るイオ ン交換 反応の 化学量 論と平 衡につ いて、
(1)見か け上一 つの交 換反応に 対し、 複数の反応が併発すること、(2)交換反応生成物が固液 界 面 に 局在 す る た め界 面 化 学 種問 に 静 電 的反 発と 立体障 害が生 ずるこ とを考 慮し、こ れらに よ る 反 応抑 制 を 熱 力学 的 関 係 によ っ て 表 わし 、さ らに、 モデル により 得られ た交換反 応平衡 定 数 値 から 、 イ オ ン交 換 反 応 量の 再 現 と 予測 を可 能にす るとと もに、 各種酸 化物のイ オン交 換 能 並 びに 各 種 イ オン の 交 換 吸着 親 和 性 を評 価し 、その 相違の 原因に ついて 検討した もので あり、以下の6章にまとめられている。
第1章 は 序論 で あ り 、分 析 、 環 境、 工 業 技 術等 に お け るイ オ ン 交 換反 応の役 割と、 そのモ デ ル 化 に よ る 反 応 挙 動 の 理 解 と 予 測 の 重 要 性 を 指 摘 し 、 本 研 究 の 目 的 を 述 べ て い る 。 第2章では 、イオ ン交換 体であ る金属 酸化物(Mn02、Ti02、Fe304、F:e z03、Al203)のキャラ ク タ リ ゼー シ ョ ン の結 果 と 、 それ に 基 づ く酸 化物 表面構 造のモ デルに ついて 述べてい る。即 ち 、 酸 化物 表 面 は 水酸 基 化 し て酸 型 表 面 水酸 基と 塩基型 表面水 酸基を 形成し 、両表面 水酸基 が イ オ ン交 換 サ イ 卜に な る も のと 考 え て いる 。表 面水酸 基の密 度は、 イオン 交換容量 を与え る 重 要 な特 性 値 で 、酸 化物のBET比表 面積と、 グリニ ヤール 反応或 いは酸 塩基中 和反応 を用い て 測 定 した 表 面 水 酸基 量 か ら 求め た 。 比 表面 積は 、酸化 物種に より、 また同 一酸化物 でも調 製 条 件 によ り 種 々 変化 す る が 、表 面 水 酸 基密 度は 、酸化 物の種 類によ らずほ ば同一で あり、
水 酸 基 の 最 密 充 填 配 列 を 仮 定 し た 計 算 値(3. 90x10‥molmー 。 ) に よ っ て 説 明 で き た 。 第3章では、1価陽、陰イオン(Li゛,Na+,K゛,Cs+,NO:,−)交換反応のモデル化について述べ て い る 。1価 陽イ オ ン は、酸型 表面水 酸基の 脱プロ トン化 によっ て生じ た負の 荷電サイ 卜へ、
ま た 、1価 陰 イオ ン は 、 塩基 型 水 酸 基の プ ロ 卜 ン化 に よ っ て生 じ た 正 の荷電 サイトヘ 交換吸 着 する。 このモ デルとし て、吸 着イオ ンが荷 電サイ ト上の 溶液相 に対イ オンとし て位置 する、
分 極 し た 表 面 イ オン 対 形 成を 提 案 し た。 表面 イオン 対形成 によっ て生じ た酸化物 の表面 電 荷密度 は、酸 塩基滴定 法によ って測 定した 。表面 電荷密 度は、pzc(ゼロ電荷点)と呼ぱれる
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pHで0、 そ れよ り 低pHで は 正 、 高pHで は 負と な る 。 実測 の 表 面 電荷密 度とpHの 関係と 、酸化 物 表 面 に 生成 し た 表 面イ オ ン 対 によ る 交換 反応抑 制を考 慮して 導出した 平衡モ デル式 から、
モ デル式 パラメ ―タの 最適化 により 平衡定数 を決定 した。 得られ た平衡 定数値 により、酸化物 表 面 の 帯 電挙 動 及 び イオ ン 吸 着 量を 再 現、 予測す るとと もに、 酸化物の イオン 交換機 能並び に 各 陽 イ オン の 交 換 吸着 親 和 性 を評 価 した 。酸化 物の陽 イオン 交換機能 は、Alz03くFes04く Ti02くMn02の順 に増加 し、陰 イオン 交換機 能はこの 順に減 少した 。次に 、金属 酸化物のイオン 交 換機能 と酸化 物格子 金属イ オンの 電気陰性 度との 関係を 調べた ところ 、電気 陰性度の増加と と も に 陽 イオ ン 交 換 機能 が 増 大 し、 陰 イオ ン交換 機能は 減少す ることが わかっ た。こ れは、
格 子 金 属 イオ ン の 電 気陰 性 度 が 増大 す るほ ど、隣 接する 水酸基 の電子密 度が誘 導的に 低下す る た め と 考え た 。 即 ち、 水 酸 基 の電 子 密度 の低下 により 、酸型 水酸基で は、脱 プロト ン化が 促 進 さ れ 陽イ オ ン 交 換機 能 が 大 きく な り、 逆に塩 基型水 酸基で は、プロ トン化 が相対 的に抑 制 さ れ 陰 イオ ン 交 換 機能 は 小 さ くな る 。ま た、イ オン交 換平衡 定数値か ら評価 したア ルカリ 金 属 イ オ ンの 交 換 吸 着親 和 性 は 、原 子 番号 が大き いイオ ンほど 大きかっ た。裸 のイオ ンの電 荷 密度は この逆 になる ロ)丶 で、吸 着イオンは、原子番号が小さいほどサイズが大きい水和イオ ンとして存在するものと推定できた。
第4章では、2価重金属イオン(Pb2十,Cu2十,C02十,Zn2+,Nj2十,Mn2十)の交換反応のモデル化 に ついて 述べて いる。2価重金 属イオ ンは、 酸型表面 水酸基 のプロトンと(1:I)及び(1:2)の 割 合 で 交 換反 応 し 、 吸着 イ オ ン が特 異 的に 固相と 結合し て 表 面錯体 を形成 するモ デルを 提 案 し て いる 。 金 属 酸化 物 へ の2価 重金 属 イ オ ン吸 着 量 を 溶液 平 衡濃度 とpHの 関数とし て測 定 し、吸 着等温 線を得 た。吸 着量は 、溶液平 衡濃度 、pHとと もに増 加する 。この 吸着データを も と に 、 生成 表 面 錯 体に よ る 反 応抑 制 を考 慮した 平衡モ デル式 を導出し 、モデ ル式パ ラメー タ の最適 化によ り上記 の(1:1) 及び(1:2)交換反応に対応する各平衡定数を決定した。平衡定 数 値 か ら 実測 の 吸 着 等温 線 を 再 現し 、 また 、与え られた 条件下 のイオン 吸着分 率を予 測する と と も に 、各 金 属 酸 化物 の イ オ ン交 換 機 能 なら び に 各2価 重金 属 イオン の交換 吸着親 和性を 評 価した 。MFl02に 対する2価重金属 イオン の交換 吸着親 和性は 、Ni゜゛ く2n2゛くC02十くMn‖ くCu2十、Fe:03に対しては、C02゛く2n2゛くCu2←くPb゜←の順に増加した。これらの2価重金属イ オ ン は 水 中で ヒ ド ロ キソ 錯 体 を 形成 す るが 、その 平衡定 数と表 面錯体形 成の平 衡定数 は良い 相 関を示 し、ヒ ドロキ ソ錯体 形成が 容易なイ オンほ ど吸着 性が良 いこと が、わ かった。その理 由 は 、 両 者と も 水酸基 との反 応であ り、化 学反応 として 類似して いるた めと考 えた。C02゛イ オ ンに対 する各 酸化物 のイオ ン交換 機能は、Al203くFe203くFe30 くMn02の順に 増加した。こ れ は酸化 物格子 金属イ オンの 電気陰 性度の増 加順序 に一致 し、C02十イオン交換機能の増加は、
表面水酸基の脱プロトン化の促進によるものと結論している。
第5章 で は、 金 属 酸 化物 へ の2価 重 金 属イ オ ン 吸 着量 と そ の 際に 遊 離 す るプ ロ ト ン 量を そ れ ぞ れ 測 定し 、 [遊離 プロ卜 ン量] /[吸 着2価重 金属イ オン量 ]で表さ れる交 換比の 値を測 定 し た 。 実測 の 交換比 は、1と2の問の 非整数 となり 、(1:1) 及び(1:2)交換反 応の併 発を考 慮 し た 第4章 のモ デ ル の 化学 量 論 を 実証 で き た 。ま た 、 交 換比 が 溶液pH及ぴイ オン濃度 とと も に 変 化 する 挙 動 が モデ ル 計 算 で再 現 でき 、本モ デルで 仮定し た平衡条 件式が 正当な もので あることが示された。
第6章は本論文の総括である。
こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 金 属酸 化 物 表 面上 で の1価 及 び2価 金属 イ オ ン と1価陰 イ オ ン の イ オ ン 交 換反 応 に つ いて 、 表 面イ オ ン対 及び 表面 錯体 による反 応抑制 作用を 組み入 れ て モ デ ル化 し て 、 平衡 論 的 に 精細 に 理論 展開し 、更に 、実験 的にモデ ルの妥 当性を 確かめ て お り 、 分 析 化 学 、 環 境 化 学 の 理 論 及 び 水 処 理 技 術 に 寄 与 す る と こ ろ 大 で あ る 。 よ っ て 、 著 者 は 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与さ れ る 資 格あ る も の と認 め る 。