博 士 ( 理 学 ) 青 柳 恒 太 郎
学位論文題名
Development of Novel Synthetic Methods for Functionalized Carbocyclic Compounds
(官能基化された炭素環化合物の新規合成法の開発)
学位論文内容の要旨
官能基化された炭素環は多くの天然物の基本骨格を構成しており、それらの効率的構築法の開発は 有機合成における重要な課題のーっである。特に、小員環および中員環化合物の合成は5員環や6員 環と比べるとはるかに困難なため、現在も活発に研究が行われている。これらの課題に対レて申請者 は独自の合成法を考案することにより、これまでに例のない官能基化された炭素環化合物の斬新な合 成法を開発した。
高度な環歪みのためにシクロブタノンの合成法は従来[2十2]付加環化反応に限られていた。これ に対し申請者は、ロ 位に脱離基を有するケトンエノラートの分子内アルキル化反応によるシクロブ タノン合成法を考案した。本反応を実現するためには、いかにして不安定な反応活性種を発生させる かが鍵となるが、エノールトリフラートの転位反応を用いる斬新な反応設計により、この問題を解決 した。すなわち、ロ ―シロキシエノールトリフラートをテトラブチルアンモニウムフルオライドで 処理すると、アルコキシド中間体からスルホニル基の分子内転位によルケ.トンエノラートカ§生成し、
次いで分子内アルキル化反応が進行してシクロブタノン誘導体またはオキセタン誘導体が収率よく 生成することを見出した。
S BU4NF h 一一一→
THF 86%
BU4NF THF 55%
Ph H rl
"highly strained"
Ph
→、´ガ
本反応を利用して、以下のような全く先例のなぃ四員環化合物の立
対 会^
94% 91% 78% 81%
さらに、オキセタン誘導体の求核剤による開環反応を検討し、ニッケル触媒存在下でGrignard試 薬とのクロスカップリング反応が高収率で進行することを見出した。
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成
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… 一
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選
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体
H2CH2Ph :12X(dppe) toluene
reflux
R = Me : 81%
H2CH2Ph R = Ph : 97%
R = iPr: 100%
一方、Diel8‑Alder反応に代表される付加環化反応は、一挙に2か所の炭素・炭素結合が形成され る高効率な合成手法であり、天然物合成においても重要な位置を占めている。しかし8員環以上の中 員環骨格を与える高次付加環化反応の開発は遅れており、その報告例はごく限られている。一方、当 研究室では、ジコバルトアセチレン錯体を利用した[6十2]型付加環化反応を開発しているが、本反 応 の 成功 の 鍵 は6炭 素 ユニ ッ ト1の 分 子 内 環化 が 進 行し な い こと に あ ると 考 えられ ていた 。
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これに対し申請者は、より長鎖のアセチレンジコバルト錯体を用いた高次付加環化反応の開発を目 指し、新規な[8十2]型反応および[7十2]型反応による中員環構築法の検討を行った。その結果、
適用範 囲は限 られるも ののア リルカチ オンを経由するE8+2l型付加環化反応による10員環化合物 の合成法を見出した。
(OC)
OSiiPr3 AIBc3 +
CH2c72 ' (OC) ‑78 0C
(C0)3
3 ( C0)3
(OC)3 OSi'Pr3
44% (trans:ぬ=4:1)
また、7炭素ユニット2を用いる[7十2]型付加環化反応では、分子内環化による7員環化合物の 副生が問題となったが、ルイス酸および反応条件を精査することにより、合成に利用できる収率で9 員環化合物が得られることを明らかにした。このようにして得られた付加体は、硝酸二アンモニウム セリウムav)により無水マレイン酸誘導体へと容易に変換できる。
2
Ti(OiPr)CI3
+ :S'iPr3 TCH2CI2
0 0C, 1 h
(NH4)2Ce(N03)6 Me2CO/ H20 0 rl, 10 min
―178―
十 (OC)3
44%
35%
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 助教授
宮下 澤村 鈴木 辻 谷野
正昭 正也 孝紀 康之 圭持
学位論文題名
Development of Novel Synthetic Methods for Functionalized Carbocyclic Compounds
(官能基化された炭素環化合物の新規合成法の開発)
官 能 基 化 さ れ た 炭 素 環 は 多 く の 生 理 活 性 天 然 物 の 基 本 骨 格 を構 成 し て おり , そ れら の 効 率 的 構 築 法 の 開 発 は 有 機 合 成 に お け る 重 要 な 課 題 の ー つ で あ る。 特 に 高 度な 環 歪 みの た め 官 能 基 化 さ れ た シ ク ロ ブ タ ン の 合 成 は 極 め て 難 し い こ と が 知 ら れ て い る 。 一 方 ,8 員 環 以 上 の 炭 素 環 の 合 成 も 一 般 に 分 子 内 環 化 反 応 が 優 先 し て 起 こる た め , 困難 な こ とが 知 ら れ て い る 。 こ の よ う な 背 景 の も と 申 請 者 は 独 自 の 合 成 法 を 考案 し , こ れま で 全 く先 例 の な い 官 能 基 化 さ れ た シ ク 口 ブ タ ン 誘 導 体 の 効 率 的 合 成 法 を 開発 す る と 共に , ジ コパ ル ト ア セ チ レ ン 錯 体 を 利 用 す る 官 能 基 化 さ れ た9員 環 お よ び10員 環 化 合 物 の 斬 新 な 合 成 法 を 開 発 し た 。 こ れ ら の 成 果 は 有 機 合 成 に 新 し い 知 見 を 提 供 し, そ の 進 展に 大 き く寄 与 す る も の で あ る 。
よ っ て著 者 は 、 北海 道 大 学博 士 ( 理学 ) の 学位 を 授 与さ れ . る資 格 あ る もの と 認 める 。