学位論文内容要旨
Dynamic factors involved in common peroneal nerve entrapment neuropathy
総腓骨神経絞扼性障害に対するdynamic factor
の検討日本医科大学大学院医学研究科 脳神経外科学分野 喜多村孝雄
<はじめに>総腓骨神経(Common peroneal nerve: CPN)の絞扼性障害(CPN entrapment
neuropathy: CPNEN)は、下肢の末梢神経障害の中で最も多く、腰椎疾患に伴う第5神経根
障害と症状が類似するため、高齢化社会に伴い近年増加している腰椎疾患の診療に際して、常に念頭に置くべき疾患でもある。CPNは、腓骨骨頭近傍で皮下の浅い層を走行し、長腓 骨筋、ヒラメ筋、腓骨などで構成される線維骨性トンネルを通過するため、外的圧迫要因 の影響を受けやすく障害されやすいとされている。一方、日常生活動作で何ら誘引なく障 害される特発性の
CPNEN
もみられるが、その病態の詳細については未だ明らかではない。特発性の
CPNEN
では間欠性は行を呈することが多く、CPNEN発症に対し、CPN周囲の筋や、動的因子の関与が示唆されている。本研究の目的は、
CPNEN
の神経剥離術中にCPN
へかかる圧を直接、段階的に測定することで、特発性のCPNEN
における絞扼部位を同定 し、動的因子の関与について明らかにすることである。<対象及び方法>対象は、2016年
1
月から2017
年3
月の間に保存療法で症状の改善をえ ず、日本医科大学千葉北総病院脳神経外科でCPNEN
の神経剥離術を行った連続7
例8側 である。症例の内訳は男性5
例、女性2
例、平均年齢71.1
歳で、左側3
例、右側5
例で あった。全例で術前に間欠性跛行を認め、またCPNEN
の誘発試験として行なった連続足 関節底屈試験(repetitive plantar flexion test)は陽性であった。我々はCPNEN
の神経剥 離術を局所麻酔下に行っているが、CODMAN Micro Sensor (Codman and Shurtleff Inc.,Raynham, MA. USA)を用いて CPN
へかかる圧を、複数の除圧段階において測定し、更 に足首の底屈、背屈での圧変化を見ることによって、足位が与える影響についても検討し た。統計分析にはFisher
検定(p<0.05)を用いた。<結果>全例で術後症状は改善した。手術中に測定した
CPN
へかかる圧は、神経剥離術前 では足関節の底屈で有意に上昇し(1.8から37.3mmH
2O
へ上昇, p<0.05)、また足関節の背 屈でも同様に有意に上昇(1.8から23.1mmH
2O
へ上昇, p<0.05)したが、底屈でより影響 が大きかった。CPNへかかる圧は手術の各段階を経るに従い次第に低下したが、長腓骨筋 筋膜切除後に最も低い結果となった。<考察>今回の検討により、特発性の
CPNEN
へは足関節の底屈・背屈運動による動的因 子、特に底屈運動が発症に影響していることが示された。この点は、CPNEN
では臨床上間欠性跛行を呈する点と矛盾しない結果であった。また、CPNへかかる動的な圧上昇は、手 術の各除圧段階を経るにしたがって低下したが、腓骨トンネルの除圧に加え、長腓骨筋筋 膜の切除まで行なうことで