氏 名 ・ ( 本 籍 ) 篠
しの
原
はら
良
よし
徳
のり
(秋田県)
専 攻 分 野 の 名 称 博士(医学)
学 位 記 番 号 医博甲第 842 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 25 年 9 月 25 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学研究科内科系専攻
学 位 論 文 題 名 A multicenter clinical study evaluating the confirmed complete molecular response rate in imatinib-treated patients with chronic phase chronic myeloid leukemia by using the international scale of real-time quantitative polymerase chain reaction.
(国際標準化した定量リアルタイム PCR 法を用いて、イマチニブで治療されて いる慢性期慢性骨髄性白血病患者における分子遺伝学的完全寛解の達成率 を評価する多施設臨床研究)
論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 羽 渕 友 則
(副査) 教授 寺 田 幸 弘 教授 近 藤 克 幸
Akita University
学 位 論 文 内 容 要 旨
論 文 題 目
A multicenter clinical study evaluating the confirmed complete molecular response rate in imatinib-treated patients with chronic phase chronic myeloid leukemia by using the international scale of real-time quantitative polymerase chain reaction
( 国 際 標 準 化 し た 定 量 リ ア ル タ イ ム PCR 法 を 用 い て 、 イ マ チ ニ ブ で 治 療 さ れ て い る 慢 性 期 慢 性 骨 髄 性 白 血 病 患 者 に お け る 分 子 遺 伝 学 的 完 全 寛 解 の 達 成 率 を 評 価 す る 多 施 設 臨 床 研 究 )
申 請 者 氏 名 篠 原 良 徳
研 究 目 的
慢 性 骨 髄 性 白 血 病 ( chronic myeloid leukemia: CML) は 造 血 幹 細 胞 レ ベ ル の 細 胞 に 染 色 体 転 座 t(9;22)(q34:q11.2)が 起 こ る こ と で Philadelphia(Ph)染 色 体 が 形 成 さ れ 、こ の 結 果 と し て 生 じ る BCR-ABL 蛋 白 が 恒 常 的 活 性 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ と し て 造 血 細 胞 に 過 剰 な 増 殖 と 生 存 を も た ら す こ と で 発 症 す る 。
BCR-ABL チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 で あ る イ マ チ ニ ブ ( imatinib: IM) の 導 入 は 、 慢 性 期 慢 性 骨 髄 性 白 血 病 ( chronic phase CML: CML-CP) 患 者 の 予 後 に 劇 的 な 改 善 を も た ら し た 。 国 際 第 Ⅲ 相 試 験 で あ る IRIS 試 験 に お い て 、 IM は 優 れ た 認 容 性 、 血 液 学 的 お よ び 細 胞 遺 伝 学 的 効 果 と 無 増 悪 生 存 期 間 ( progression-free survival: PFS) の 延 長 を 示 し 、 5 年 間 の 治 療 継 続 に よ る 血 液 学 的 完 全 寛 解 と 細 胞 遺 伝 学 的 完 全 寛 解 の 達 成 率 は そ れ ぞ れ 98% 、 87% で あ っ た 。 ま た 、 治 療 開 始 18 か 月 時 点 で の 分 子 遺 伝 学 的 大 効 果 ( major molecular response: MMR) 達 成 に よ り , 病 勢 増 悪 の リ ス ク が 有 意 に 低 く な る こ と が 示 さ れ た 。
さ ら に 、 分 子 遺 伝 学 的 完 全 寛 解 ( complete molecular response: CMR) 達 成 が , 長 期 予 後 を 予 測 す る 因 子 と な る 可 能 性 が 報 告 さ れ 、治 療 開 始 18 ヶ 月 時 点 で CMR を 達 成 し て い る 症 例 で は MMR を 達 成 し て い る 症 例 よ り PFS が 有 意 に 延 長 し て い た 。
最 近 、 CMR を 指 標 と し て IM 治 療 中 止 の 可 能 性 を 検 討 す る 臨 床 試 験 も 行 わ れ 、 2 年 以 上 CMR を 継 続 し て い る 症 例 を 対 象 と し て 、 IM 中 止 後 12 か 月 時 点 で 41% が CMR を 維 持 で き て い た 。
以 上 よ り 、 実 地 臨 床 に お い て も 最 も 深 い 治 療 効 果 で あ る CMR の 達 成 お よ び 維 持 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ る 。本 研 究 で は 、本 邦 で IM 治 療 を 受 け MMR に 到 達 し て い る CML-CP 症 例 に お け る CMR 達 成 率 を 国 際 標 準 化 し た 定 量 リ ア ル タ イ ム PCR 法 ( standardized international scale of qRT-PCR:IS-PCR)を 用 い て 評 価 し 、CMR 達 成 と 相 関 す る 臨 床 的 、薬 理 学 的 お よ び 免 疫 学 的 因
子 を 検 討 し た 。
研 究 方 法
国 内 21 施 設 か ら 、IM 治 療 を 継 続 し て 受 け て お り 従 来 の 検 査 法 で MMR 到 達 が 確 認 さ れ た 157 例 の CML-CP 症 例 が 登 録 さ れ 、 IS-PCR に よ り MMR 以 上 の 奏 効 が 確 認 さ れ た 152 症 例 を 解 析 し た 。abl 遺 伝 子 を 内 部 標 準 遺 伝 子 と し て 用 い 、10,000 コ ピ ー 以 上 の abl 遺 伝 子 に 対 し て 3log の bcr-abl 遺 伝 子 減 少 を 認 め た 場 合 を IS-PCR に お け る MMR( BCR-ABL
I S0.0032%-0.1%)、32,000 コ ピ ー 以 上 の abl 遺 伝 子 に 対 し て 4.5log 以 上 の bcr-abl 遺 伝 子 減 少 が 異 な る 2 回 の 検 査 で 得 ら れ た 場 合 を IS-PCR に お け る CMR( BCR-ABL
I S≦ 0.0032%) と 定 義 し た 。 こ の 定 義 に 基 づ い て 各 症 例 の CMR, MMR( no CMR) を 判 定 し CMR 達 成 率 を 算 出 し た 。
薬 理 学 的 お よ び 免 疫 学 的 検 索 と し て 、高 速 液 体 ク ラ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ る 血 中 IM ト ラ フ 濃 度 測 定 、 PCR-RFLP 法 ( PCR restriction fragment length polymorphosm ) に よ る IM ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 遺 伝 子 多 型 解 析 、 リ ア ル タ イ ム PCR 法 に よ る
BIM遺 伝 子 の 欠 失 多 型 解 析 、 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー 法 に よ る 末 梢 血 の T 細 胞 サ ブ セ ッ ト 解 析 を 行 い 、 臨 床 背 景 と 合 わ せ て CMR 達 成 と 相 関 す る 因 子 を 検 討 し た 。
研 究 成 績
解 析 対 象 と な っ た 152 症 例 の 治 療 効 果 の 内 訳 は CMR 75 例 、 MMR 77 例 で あ り 、 MMR 症 例 に お け る CMR 達 成 率 は 49.3%で あ っ た 。
CMR 群 と MMR( no CMR)群 に 分 け て CMR 達 成 と 相 関 す る 臨 床 背 景 、薬 理 学 的 お よ び 免 疫 学 的 因 子 の 解 析 を 行 っ た 。単 変 量 解 析 に よ り 、① Sokal score の 低 い 症 例 が CMR 群 で 有 意 に 多 い 、
② IM 治 療 開 始 か ら MMR 到 達 ま で に 要 し た 期 間 の 中 央 値 は CMR 群 で 有 意 に 短 い 、 ③ 2 群 間 で 血 中 IM ト ラ フ 濃 度 に 有 意 差 が な い に も 関 わ ら ず 、イ マ チ ニ ブ ト ラ ン ス ポ ー タ ー に お い て
ABCG2421C/A ま た は 421A/A の 一 塩 基 多 型 と な る 頻 度 は CMR 群 で 有 意 に 高 い 、 ④ 末 梢 血 の 制 御 性 T 細 胞 数 は CMR 群 で 有 意 に 少 な い 、こ と が 明 ら か と な っ た 。多 変 量 解 析 の 結 果 、① IM に よ る 治 療 期 間 ( オ ッ ズ 比 : 1.0287,
P=0.0003)、 ② IM に よ る 治 療 開 始 か ら MMR 到 達 ま で に 要 し た 期 間( オ ッ ズ 比:0.9652,
P=0.0020)、③
ABCG2421C/C 遺 伝 子 型( オ ッ ズ 比:0.3953, P=0.0284)
が 独 立 し た 予 測 因 子 と な っ た 。 一 方 、 末 梢 血 の NK 細 胞 数 や
BIM遺 伝 子 の 欠 失 多 型 、 血 中 IM ト ラ フ 濃 度 は CMR 達 成 に 有 意 な 相 関 を 認 め な か っ た 。
結 論
IS-PCR 法 を 用 い て 、 IM 治 療 を 受 け MMR に 到 達 し て い る 本 邦 の CML-CP 症 例 に お け る CMR 達 成 率 が 明 ら か と な り 、 CMR 達 成 に 寄 与 す る 臨 床 的 、 薬 理 学 的 お よ び 免 疫 学 的 な 予 測 因 子 が 抽 出 さ れ た 。 本 研 究 に よ り IM 治 療 を 受 け て い る CML-CP 症 例 に お い て 、 第 2 世 代 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 薬 へ の 切 り 替 え を 行 う こ と で 、 よ り 高 い 治 療 効 果 が 得 ら れ る 一 群 が 存 在 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。
Akita University
学位論文(博士-甲)審査結果の要旨
主査: 羽渕 友則 申請者:篠原 良徳
論 文 題 名 : A multicenter clinical study evaluating the confirmed complete molecular response rate in imatinib-treated patients with chronic phase chronic myeloid leukemia by using the international scale of real-time quantitative polymerase chain reaction (国際標準化した定量リアルタ イム PCR 法を用いて、イマチニブで治療されている慢性期慢性骨髄 性白血病患者における分子遺伝学的完全寛解の達成率を評価する多 施設臨床研究)
要旨
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)の治療においてBCR-ABLチロ シンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ(imatinib:IM)による分子遺伝学的完全寛解
(complete molecular response:CMR)達成がIM治療中止やIM治療中止寛解への重要 な指標となることが示唆されている。本研究では、本邦でIM治療を受けmajor molecular response (MMR)S が得られた CML症例における CMR達成率を国際標準化した定量 リアルタイムPCR 法(IS-PCR)を用いて評価し、CMR 達成と相関する臨床的、薬理学 的および免疫学的因子を検討した。
結果として、解析対象となった152症例のCMR達成率は49.3%であった。単変量解 析により、①Sokal score、②IM治療開始からMMR到達までに要した期間の中央値、
③ABCG2 421C/Aまたは421A/Aの一塩基多型、④末梢血の制御性T細胞数、が有意な 因子であった。多変量解析の結果、①IMによる治療期間(オッズ比:1.0287, P=0.0003)、
②IMによる治療開始からMMR到達までに要した期間(オッズ比:0.9652, P=0.0020)、
③ABCG2 421C/C遺伝子型(オッズ比:0.3953, P=0.0284)が独立した予測因子となっ た。一方、末梢血のNK 細胞数や BIM 遺伝子の欠失多型、血中 IM トラフ濃度は CMR 達成に有意な相関を認めなかった。IM 治療を受けている CML-CP 症例において、本研 究で明らかにされた予後因子を参考にして、第2世代チロシンキナーゼ阻害薬への切り 替えを行うことで、より高い治療効果が得られる一群が存在する可能性が示唆された。
Akita University
【1】斬新さ
本邦の CML-CP 患者の治療効果判定における最も治療効果の高い CMR について、日常 臨床では Amp-CML 法と定性 PCR 法によって暫定的に判定されていたが、本研究では、従 来法より高感度の微小残存病変定量法である国際標準化した定量リアルタイム PCR 法 である IS-PCR を用いて、イマチニブ治療を継続して受けており従来の検査法で分子遺 伝学的大効果 MMR 到達が確認された CML-CP 症例における CMR 到達率を多施設研究で評 価したことである。
さらに、結果として、①IMによる治療期間、②IMによる治療開始からMMR到達ま でに要した期間、③ABCG2 421C/C遺伝子型の3因子を多変量解析で独立した予測因子 として同定し得たことである。
以上が主な斬新な点と考えられる。
【2】重要性
本研究により、IM 投与によっても難治性 CMLの予後因子が同定されたことにより、
第2世代チロシンキナーゼ阻害薬への切り替えへの指標や、それによって、より高い治 療効果が得られる一群を同定できる可能性があり、難治性 CML 患者にとっては大きな 福音となる可能性がある。
【3】実験方法の正確性
標準化されたIP-PCR法、PCR-RFLPによる遺伝子多型解析、様々な臨床病理学的因子 解析法と多変量解析など robust な方法が用いられており、正確性や妥当性に問題点は 無い。
【4】表現の明瞭さ
抄録、背景、対象と方法、結果、考察、結論、表、図など簡潔で明瞭に記載されてい る。さらに、すでに学術雑誌に英文論文として掲載受理されており、学位論文として校 正、表現など問題ない。
以上のことより、本論文は学位を授与するに十分値する内容と判定された。