学位論文内容要旨
論文題名
Examination of Optimal Sites and Loading Methods for Measuring Maxillary Complete Denture Retention
(上顎全部床義歯の維持力測定における最適部位と荷重方法の検討)
掲載雑誌名
老年歯科医学誌 (投稿中)
専攻分野 高齢者歯科学 氏名 角田拓哉
内容要旨
【目的】超高齢社会をむかえ,全部床義歯患者の生存年数の延長による難 症例の増加が予測され,質の高い全部床義歯治療が求められるようになっ てきた.全部床義歯治療において維持・安定の評価は重要である.しかし,
現在の臨床において義歯維持力の評価は客観的評価ではなく主観的評価 で行われている.そこでわれわれは,チェアサイドで簡便に義歯維持力を 測定可能な装置を開発した.有歯顎者の口蓋床にて維持力測定の有用性は 示した.しかし,実際に患者が使用している全部床義歯の維持力を評価す るための測定条件は不明確であった.そのため本研究では,客観的維持力 評価のための最適部位および荷重方法の決定を目的とした.
【方法】被験者は 30 名の上顎無歯顎者とした.義歯破損防止と牽引測定 のため,義歯を被覆するシーネを製作した.牽引測定の部位
を結んだ線と正中線の交点部(C),義歯後縁正中部(P MF)
とし,シーネにフックを装着しフックを介して牽引した.加圧測定の部位 IE PC)とし,シーネを開窓し直 接人工歯部を加圧した.測定には開発した維持力測定装置を用いて各部位 5 回測定した.義歯離脱時の荷重量を維持力とした.ただし,被験者が測 定中に痛みを訴えた場合,荷重量が 30 N を超えた場合,シーネが途中で 脱離した場合は測定を中止し,2 回連続で中止した部位は測定不能とした.
その後,中切歯切縁の前後的位置が維持力に及ぼす影響と,顎堤高さ・
形態が維持力に及ぼす影響を分析した.中切歯切縁の前後的位置の計測に は患者のレプリカ義歯,顎堤高さ・形態の計測には義歯粘膜面の印象を使 用した.
統計学的分析は一元配置および二元配置分散分析,Tukey の多重比較と
Pearson の相関分析を用いた.
【結果】C,MF は約半数で測定不能で,P,IE,PC は全ての被検者で測定 可能であった.P,IE 間には有意差はなく,PC は P と IE に比べ有意に大 きかった(p <0.01).P,IE 間に有意な正の相関が認められた
(r=0.640,p <0.01).P,PC 間にも有意な正の相関が認められた
(r=0.452,p <0.05).中切歯切縁の前後的位置と維持力に有意な関係は 認められなかった.また,顎堤高さ・形態と維持力にも有意な関係は認め られなかった.
【結論】過去の文献からも P は維持力測定に適した部位ではあるが,義歯 にフックを装着する必要がある.IE は P と強い相関を示すことから,シ ーネを用いず測定可能な IE の加圧測定の方が維持力の評価を行うには,
より適していることが示唆された.また,今回の結果からは IE の加圧測 定における維持力の評価の際に中切歯切縁の前後的位置や顎堤高さ・形状 を考慮しなくても,客観的な義歯維持力評価が可能であることが明らかと なった.
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