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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 高 柳 俊 明

学 位 論 文 題 名

腫瘍免疫及びヒト免疫不全ウイルス感染症の モデル化とその解析に関する研究

学位論文内容の要旨

  免疫システムは,進化機構や神経網と並んで非常に魅力的な生物の情報処理方法であ り,複雑系工学研究の観点からも注目されている.例えば,免疫システムの一部であろ うと思われるイディオタイプネットワーク仮説をもとにした免疫アルゴリズムに関する 研究が行われている.また,様々な免疫反応(ウイルス感染症,細菌感染症等)を解明 するために,個々の免疫反応をモデル化し,解析する研究も盛んになりつっある.免疫 反応は様々な疾患(感染症,自己免疫疾患,アレルギ−,癌等)に関わるため,その研 究は社会的意義のあるものと言える,

  本論文は免疫細胞と異物(腫瘍細胞,感染細胞)との相互作用等において,これまで の免疫システムのモデル化とその解析に関する研究を調査し,免疫反応でよく認められ る非線形性を取り入れ,腫瘍免疫とヒト免疫不全ウイルス感染症をモデル化し,解析し,

シミュレーションによってそのモデルの妥当性と,複雑系工学の観点からの免疫学への アプローチの可能性を示したものである.

  第1章 は 序 論 で あ り , 上 記 の よ う な 研 究 背 景 , 研 究 意 義 を 述 べ て い る .   第2章 では , 腫 瘍免 疫の モデル化 とその解 析に関 する研究 につい て述べて いる,

  まず, 研究背 景と研究 意義として,新たな癌治療として免疫療法が注目されている ことを述べている.次に,これまでの腫瘍免疫のモデル化とその解析に関する研究を調 査し,それらのモデルの問題点を明らかにしている.すなわち,従来の腫瘍免疫のモデ ルの基本と思える口トカ・ヴォルテラ補食系における相互作用は,捕食者と被捕食の接 触する確率が小さいときには成り立つ.しかしながら,実際の腫瘍免疫では,腫瘍細胞 と細胞 傷害性T細胞(CTL)は常 にいず れかの細 胞と接 触してい ると仮 定できるため,

腫瘍細 胞とCTLの接触 確率は極 めて大 きいと考 えられる.従って,ロ卜カ・ヴォルテ ラ補食系のように単純な捕食者数と被捕食数の積では相互作用を表現できない.本論文 では,CTLに よる腫瘍 細胞の減 少率と 腫瘍細胞 によるCTLの増 加率を 算出し,それら

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を 近似する 式(F式) を得てい る.そ して,こ のF式を用いて著者独自の腫瘍免疫のモ デ ルを提案 し,解 析し,シ ミュレ ーション を行っ ている,そして,腫瘍細胞とCTLで 構成された基本的なモデルでありながら,ロトカ・ヴォルテラ補食系で見られる周期解 と 大きく異 なり,CTLによ って腫 瘍細胞が 拒絶さ れる結果 や,腫瘍 細胞がCTLと共 に 増殖し続ける結果を得ている.これらの結果は,実際の腫瘍は周期的な変動をせず,発 症後進行を続けると考えられている医学的事実と合致し,妥当な結果であると思われる.

さ らに,腫 瘍に対 し十分な 量のCTLを投与 するこ とで腫瘍を拒絶できることを示し,

腫瘍に対する免疫療法の有効性を示唆している.

  第3章では,ヒト免疫不全ウイルス感染症のモデル化とその解析に関する研究につい て 述べてい る,ま ず,研究 背景と 研究意義 として ,後天性 免疫不全 症候群(AIDS)と ヒ ト免疫不 全ウイ ルス(HIV)感染症 が世界的 に関心 を集める疾患であり,そのモデル 化 とその解 析に関 する研究 は活発に行われていることを述べている,次に,代表的な HIV感染症のモデル化とその解析に関する研究として,D. D. HoのモデルとF.M.C.de Souzaのモ デルを取 り上げ検 討して いる.. その結 果,Hoのモ デルは ,治療開 始後1 週間程度の現象のみを対象としており,長期の現象の解析は出来ない,また,de Souza のモデルは感染細胞を陽に取り扱っていないことやパラメーターの設定に問題点がある こと等を指摘している.これらの問題点を考慮し,著者は,急性期から慢性期にいたる 長期の動的変動を対象とする広範な免疫学研究を調査し,感染細胞やウイルスの生体内 に おける半 減期か らそれら に対応するバラメーター値を算出して,3種類の独自のHIV 感染症のモデルを提案している.そして,それらのモデルを用いて様々なシミュレーシ ヨ ンを行っ ている .シミュ レーシ ョンの結 果は,HIV感染症は突然変異ウイルス株の 出 現が連続 するこ とでAIDSへ 進行することを示している.同時に,突然変異ウイルス 株 の出現バ ターン によってHIV感 染症の進 行は様 々なバターンをとること(長期未発 症例,徐々に進行する例,急速進行例)を示している.これらの結果は,医学的仮説と 合 致し,妥 当な結 果である と思わ れる.更 に,抗HIV薬を長期投与中に突然変異の程 度 の大きい変異株が出現すると,HJV感染症の再燃がおこることを示している,この結 果 は , 現 在 行 わ れ て い る 抗HIV療 法 の 長 期 的 効 果 に つ い て 示唆 を 与 えて い る .   第4章では,全体のまとめと残された研究課題と今後の免疫反応におけるモデル化と その解析に関する研究の課題について述べている.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

腫瘍免疫及びヒト免疫不全ウイルス感染症の モデル化とその解析に関する研究

  近年 の分子生物学および免疫学の発展により,様々な免疫反応の詳細なメカニズムが 解明さ れてきている.また,アレルギー性疾患の増加や,免疫システムを利用した治療 法(免 疫療法)が注目を浴びている.本論文は,複雑系工学の観点から,腫瘍免疫とヒ     |

ト免疫 不全ウイルス感染症のニつの免疫反応を各々モデル化し,解析し,その結果が医 学的見 地からも妥当であることを示し,モデル化と解析による方法が免疫学においても 有効で あることの可能性を示したものである.本研究のモデルと他の提案されているモ デルと の大きな違いは,免疫細胞と異物(腫瘍細胞,感染細胞)の相互作用等を,免疫 学の研 究で良く認められる非線形特性を導入しモデル化したことである.免疫に関する 疾患の 増加を考慮すると,今後本研究のような免疫学の現象をモデル化し解析する研究 はます ます重要性を増していくと思われる.

  本論 文の主要な成果は以下の点に要約される,

1.腫瘍免疫のモデル化と解析

  著者 は,従来の腫瘍免疫における提案モデルを調査し,それらの問題点を明らかにし て い る .そ して ,免 疫学 的考 察か ら, 腫瘍 細 胞と 細胞 傷害 性T細胞(CTL)の接 触確 率 を二 項分 布 によ って 表現 し,CTLによる腫瘍細胞 の減少率と腫瘍細胞によるCTLの 増 加率 を算出し,それらを近似する式(F式)を得て いる.そして,このF式を用 いて 著者独 自の腫瘍免疫のモデルを提案し,解析し,シミュレーションを行っている.そし て ,腫 瘍細胞とCTLで構 成された基本的なモデルでありながら,ロ卜カ・ヴォル テラ 補食系 で見られる周期解と大きく異なり,CTLによって腫瘍細胞が拒絶される結果や,

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東 司

   

   

隆 侑

内 森

大 大

嘉 和

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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腫瘍細胞 がCTLと共に増 殖し続 ける結果 を得て いる,こ れらの結果は,実際の腫瘍は 周期的な変動をせず,発症後進行を続けると考えられており,医学的見地から見ても妥 当なシミ ュレー ション結 果であることを述べている.さらに,腫瘍に対し十分な量の CTLーを投与することで腫瘍を拒絶できることを示し,腫瘍に対する免疫療法の有効性を 示唆していることを述べている.

2.゛ヒ卜免疫不全ウイルス(HIV)感染症のモデル化と解析

  著者は,急性期から慢性期にいたる長期の動的変動を対象とする広範な免疫学研究を 調査し,感染細胞やウイルスの生体内における半減期からそれらに対応するパラメータ ー値を算 出して ,3種 類の独 自のHIV感染症モ デルを 提案して いる. そして, それら のモデルを用いて様々なシミュレーションを行っている.シミュレーションの結果は,

HIV感 染症 は 突 然変 異 ウ イ ルス株の 出現が連 続する ことでAIDSへ進行す ることを 示 している .同時 に,突然 変異ウ イルス株 の出現 パターン によってHIV感染症の進行は 様々なパターンをとること(長期未発症例,徐々に進行する例,急速進行例)を示して いる,これらの結果は,医学的仮説と合致.し,妥当な結果であることを述べている.更 にシミュ レーシ ョン結果 は,抗HIV薬を 長期投 与中に突 然変異の程度の大きい変異株 が出現すると,HIV感染症の再燃がおこることを述べている.この結果は,現在行われ ている抗HIV療 法の長期 的効果 について 示唆を 与えてい ることを述べている,この抗 HIV薬の 長期服 用例のシ ミュレ ーション 結果は ,抗HIV薬の長期 的効果 が不明で ある 現在,非常に興味あるところである.

  これを要するに,著者は免疫学研究における知識を背景に,腫瘍免疫およびヒト免疫 不全ウイルス感染症のモデル化と解析を行い,多くの知見を得て,複雑系工学の可能性 を広げたものであり,複雑系工学,システム情報工学および免疫学の進歩に寄与すると ころ大なるものがある.

  よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める,

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参照

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