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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

転写と翻訳の場が隔絶されている真核生物において、mRNA安定性制御が遺伝子発現調 節に果たす役割は大きい。特に、外界からの刺激に即座に応答した遺伝子発現を必要とす る場面(増殖・細胞周期・分化・免疫など)において、mRNA安定性制御はより重要になる。

半減期の短いmRNAは主に、AU-rich element (ARE)などの3'非翻訳領域(UTR)に存在 するシス配列によって分解が制御されている。ZFP36L2はAREを認識してRNA分解酵素 群をリクルートし、標的mRNAの分解を誘導するRNA結合タンパク質である。ZFP36L2 変異マウスは、造血の失敗による短命、あるいは雌性不妊などの表現型を示すことから、

ZFP36L2 が生物学的に重要な機能を持つことは明らかである。しかし、ZFP36L2 の量的 制御や活性制御のメカニズムについては解明されていない。また、ZFP36L2の標的mRNA は、二三の例外を除いて、殆ど同定されていなかった。先行研究によって、過剰量のZFP36L2 は細胞周期進行を遅らせることが報告されていることから、ZFP36L2 は mRNA分解を介 して細胞周期制御に関与する可能性が考えられた。そこで、本論文ではZFP36L2と細胞分 裂周期との関連を精査することを起点に、ZFP36L2を介した全く新しい細胞機能制御機構 を提案する事を目的に研究を行った。

2 研究の方法と結果

本論文では、一連のZFP36L2発現ベクターを構築し、これらをヒト株化培養細胞に導入 することで、ZFP36L2タンパク質の細胞内動態を解明する事から研究を開始した。その結 果、ZFP36L2タンパク質の発現量が細胞周期依存的に変化すること、特にDNA合成期で ある S 期と細胞分裂期である M 期に安定化することを初めて発見した(Noguchi et al., Biolgy Open, 2018)。続いて、ZFP36L2タンパク質はC末端領域が制御するタンパク質 分解によって、間期における発現が抑制されていることを実験的に証明した。さらに、

ZFP36L2 は、ユビキチン・プロテアソーム系により量的調節を受けうること、ならびに

Zyg11B-CUL2ユビキチンリガーゼ複合体をZFP36L2の分解に関わる新酵素として新しく 同定し、これまで不明であったZFP36L2量的制御メカニズムを初めて解明した(Noguchi et al., Biolgy Open, 2018)。

続いて、本論文では、ZFP36L2 結合タンパク質の網羅的解析を行い、細胞周期のS 期、

あるいはM期において、それぞれ全く異なるタンパク質群と複合体を形成する事を新しく 見出した。細胞周期依存的に制御されたタンパク質相互作用は、特にユビキチンリガーゼ の基質認識サブユニットZyg11Bにおいて、特に顕著であることを実験的に証明した。この ことは、ZFP36L2タンパク質の機能が、それぞれの細胞周期ステージにおいて変化してい ること、それらの動態が細胞周期依存的な制御を受けている事などを初めて示している

(Noguchi et al., Biolgy Open, 2018)。

次に、細胞周期制御におけるZFP36L2標的mRNAの探索を行い、G1-Sサイクリンをコ

(2)

ードするmRNAをZFP36L2の新規標的mRNAとして同定した。これらのサイクリンは、

DNA損傷応答の際に発現が抑制されることが知られていることから、ZFP36L2がDNA損 傷応答において機能すると仮説をたて、その証明に取り組んだ。その結果、ZFP36L2ノッ クダウン細胞では、DNA損傷時に細胞周期のS期停止がキャンセルされ、G2/M期移行が 促進すること、さらに、ZFP36L2 ノックダウン細胞は、DNA 損傷時に細胞の生存能力が 低下すること、細胞死の原因はアポトーシスであることを証明した。さらに、ZFP36L2タ ンパク質は、抗がん剤シスプラチンで誘導されるDNA損傷などに応答して、その細胞内蓄 積がコントロールされる新しい因子である事を証明した(Noguchi et al., Biolgy Open, 2018)。

これらの結果は、ZFP36L2 は mRNA分解を介して細胞周期進行を抑制する新規細胞周 期制御因子であり、DNA損傷時の細胞運命を決定する重要な役割をはたしていることを新 しく示している。

3. 論文としての完成度

本論文の研究成果は、それぞれの項目にて適切に説明されている。論文の結果は、(1)

第一章において、ZFP36L2タンパク質は細胞周期依存的な発現コントロールを受けている こと、さらに、ZFP36L2タンパク質は細胞周期依存的に結合タンパク質が変化し、S期、 M 期にそれぞれユニークな複合体を形成していることを示し、(2)第二章において、ZFP36L2 タンパク質は、DNA損傷時にDNA複製の進行を制御する必須機能を担っていることを明確 に述べている。これらの2つの章では、結論の正しさを証明するため、それぞれ多方面の 実験結果からまとめられている。さらに、関連の深い先行研究を網羅して引用し、それら との関係で、本論文の新規性や意義を明確に論じている。今後の研究への展望も、適切に 述べられている。英文も簡潔明解であり、博士学位論文としての完成度は高い。

3 審査の結果

本論文は、ZFP36L2タンパク質が細胞周期の進行、特にDNA障害時にS期進行を適切 にコントロールする必須機能に関わるという仮説を、初めて実験的に検証した。また、こ のシステムが抗がん剤シスプラチンによる効果を増強しうる事を実験的に示した。これら の発見は、ZFP36L2タンパク質が持つ生理的/病理的意義を提案する上において大きな意 味を持ち、高く評価される。本論文の内容の一部は、すでに英文学術雑誌に審査のうえ受 理されており、残りの部分も、今後公表されるに十分値する内容を含んでいる。よって、

本論文は博士(理学)の学位に十分値すると判定した。

4 最終試験の結果

本学の学位規則および生命科学専攻内の申し合わせに従って、試験ならびに試問を行っ た。公開の席上で論文内容を口頭発表し,生命科学専攻教員による質疑応答を行った。さ らに、論文審査委員により、本論文および関連分野の試問を行った。その結果、論文内容、

(3)

専門分野の理解、ならびに外国語についても十分な能力を有することを認め、最終試験に 合格と判定した。

参照

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