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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 岡 村 圭 祐      学 位 論 文 題 名

     ●

Autonomic nerve changeslnthemouSepanCreaS     after  ニ reatiCduCtligation      _   pan く

     ( 膵 管 結 紮 後 マ ウ ス 膵 内 自 律 神 経 の 変 化 )

学位論文内容の要旨

    目的

  近 年、 膵外 分 泌に関わる膵 内神経の重要性が注目されて きた。しかし、これまでの 膵内神経に関す る組 織学 的研 究 の多くは薄い 切片の観察に基づいており、 膵全体における自律神経の 三次元分布に関 する 情報 は乏 し く十分ではな かった。一方、臨床病理にお いても、膵外分泌部の消失 などを病理学的 特徴 とす る慢 性 膵炎で、膵内 神経線維の直径が増大するこ とや、神経伝達物質の局在 の変化が報告さ れて きた 。膵 組 織に病的変化 が生ずると、臓器の形態や機 能の維持にとって重要な因 子である神経構 築も 変化 して い る可能性があ る。しかしこれまで、病的膵 を理解するための膵臓全体 における神経の 変化 の定 量的 検 討は行われて いない。マウスにおいて、膵 管の閉塞は慢性膵炎にみら れるような膵実 質の 萎縮 をも た らすことが知 られており、今回の研究では このモデルを用い、膵臓全 体における神経 分 布 の 特 徴 を 正 常 膵 と 膵 管 結 紮 後 萎 縮 膵 で 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

    材料と方法

  動 物は 生後6週 齢dd‑マ ウス を用 い、 麻酔 後 、膵 の3分葉 のー つで ある 脾 臓葉 の基 部で 膵 管を 結紮 し た 。 正 常 対 照 は 生 後6週 齢の 無処 置マ ウ スと した 。正 常対 照 およ び膵 管結 紮7日後 、14日 後に 屠 殺し 、以下の方法で検討した( 各群:n=5)。

1. コリンエステラーゼ組織化学

  ペ ント パル ビ夕 一ル 過剰投与 により屠殺後、左心室より 生理的食塩水を潅流、更にザ ンボ二一液で 潅 流 固定 した のち 、全 膵 を摘 出し 、同 固定 液 で6時間浸潰 固定した(4℃)。膵臓はO.1Mリン酸緩衝液 (pH7.4)中 に2時間 (4℃)浸潰 したのち、3分葉に分け、5% と10%ゼラチン(同緩衝液 で希釈)に2時 間ず っ浸漬した(37℃)。それぞ れの標本を10%ゼラチンに 包埋し、冷蔵庫内で硬化させ た。それぞれ の 標 本は マイ ク口 スラ イ サー で100um厚の 膵臓 全体 の 連続 切片 とし 、コ リ ンエ ステ ラー ゼ 組織 化学 染 色 とし てカ ルノ フス キ一・ル ッツ溶液に2時間浸漬した(4℃)。切片をO.1Mリン酸緩 衝液に数分浸 漬後 、グリセリンジェリーで封 入し、光学顕微鏡で観察した 。

  正 常対照の一部は、血管の走 行を明らかにする目的で、生 理的食塩水を潅流後、10% 青インク_2% ゼ ラ チン 水溶 液(pH7.4)を 潅流 し 、ザ ンポ 二一 液を 腹 腔内 に3m1注 入し10分 聞4℃で 放置 し 腹腔 内固 定後 、膵臓を摘出し、先と同様 に包埋、連続切片を作成し染 色した。

2.組 織定量

  コ リン エス テラ ーゼ 組織化学 染色を行った脾臓葉の全て の連続切片を用い、以下の計 測を行った。

  1)総神経節数(NA)   2)総神経節細胞数

  3)神経節総体積:神経節を楕円形と考え、長径(a)と短径(b)を計測し、それぞれの神経節の体積(レひ は、 以(mm3)=4/37cxロxb2より求 めた。

(2)

神経節総体積(レぉ は、炸(iriiji3)=£以より 求めた。

  4)神経節細胞の 平均体積

  神経節細胞の平均 体積(h):咋/N

  組 織 定 量 の 結 果 の 統 計 学 的 検 討 は 、ANOVAで 行 い 、pく0.05の 場 合 を 有 意 差 あ り と し た 。 3.透過型電子顕微鏡

  2.5% グル 夕一 ル アル デヒ ド‑0.1Mリン 酸緩 衝 液(pH7.4)で、潅流固定を 行い、摘出した膵臓を先と 同じ 方 法で 、ゼ ラチ ン包 埋 し、lOOLLm厚 の切 片 を作 成し 、カ ル ノフ スキ 一・ルッツ溶液に30分聞浸 漬した(4℃)。こ の切片を細切し1%オスミウ ム酸‑0.1Mリン酸緩衝液(pH7,4)で後固定し、脱水後、エ ポキ シ 樹脂 に包 埋し た。 ウルトロトームで超薄 切片を作成し、透過型電子 顕微鏡で観察した。切片の 一部は、2%酢酸ウ ランで電子染色後に観察した 。

    結果 1.肉眼的所見

  膵 管 結紮 後7日 、14日 で結 紮遠 位 側の 膵脾 臓葉 は著 明 に萎 縮し た。 十二 指 腸葉 、胃 葉に は 変化を 認めなかった。

2.組織化学的所見

  正 常 では 、神 経節 細胞 と神経線維はコリンエステラ ーゼ組織化学により赤褐色 に染色された。神経 節細 胞 の核 は染 色さ れな かった。正常膵の神経細胞の 多くはランゲルハンス島の 周囲に存在した。ラ ンゲ ル ハン ス島 内部 に神 経節はなかった。神経線維は 数個の神経節の間を連絡し ていた。膵内の太い 神 経 線 維 束 は 動 脈 に 沿 っ て 走 行 し 、 細 動 脈 表 面 に 細 い 神 経 線 維 を 網 目 状 に 供 給 し て い た 。   膵 管 結紮 後7日 目 、神 経節 の多 く は、 正常 膵と同じ ように、ランゲルハンス島 の表面に存在した。

神経 線 維は 複雑 に屈 曲し て いた 。膵 管結 紮後14日目 、神 経節 の 多く は、 膵管 結紮 後7日目 同 様、ラ ンゲ ル ハン ス島 の近 傍に 存在していた。神経線維は、 屈曲蛇行し密趣分布を示し た。神経節細胞の外 側にコリンエステラ ーゼ活性を持つ神経節細胞 が存在した。

3.定量的所見

  正 常 脾臓 葉に おい て、 神経節の総数は、251土6(平 均土標準偏差、以下同じ) であった。膵管結紮 後、 神 経節 の総 数は 変化 が なか った 。正 常に おいて 、神経節細胞の数は955土36であった。膵管結紮 後7日目、14日目で 神経節細胞の数は正常の約60%に減少した。神経節の総体積は0.0131土0.0030lriir13 であ っ た。 膵管 結紮 によ り 、総 体積 は約2分 の1に減 少し た。 お のお のの神経節 細胞の平均体積は、

膵管結紮後14日で、 正常に比較して有意に減少 した。

4.透過型電子顕微鏡 所見

  膵 内 神経 節細 胞は 胞体 内 にコ リン エス テラ ー ゼ活 性を 持っ て いた 。膵管結紮 後も多くの膵内神経 節細 胞 に大 きな 形態 学的 変化はなかった。膵管結紮後 、胞体内のコリンエステラ ーゼ活性を認めず、

その細胞外にコリン エステラーゼ活性が存在す る神経節が存在した。

    考察

  今 回行 った100ルm厚の 切片 を用 い たコ リン エス テラ ー ゼ組 織化 学の手 法は、膵内神経のみを明瞭 に描 出し 、ま た全 膵 から得られる情報として神 経節を切断面ではなく塊の まま観察でき、これまで行 われ なか った 形態 学 的な 定量 的検 討 に適 して いる と考 え られ る。

  正 常膵 脾臓 葉に は 、数個から数十個の神経細 胞からなる膵内神経節が散 在し、これらの神経節は、

腹腔 神経 叢と 神経 線 維により連絡していた。し かし膵臓表面から膵内に直 接進入する神経線維は存在 しな かっ た。 コリ ン エステラーゼによる染色で は神経組織は一様であり、 染色性の違いによる交感神 経と 副交 感神 経の 区 別はできなかった。膵内神 経は動脈壁に沿って走行し 、外分泌部には、神経終末 は少 なか った 。一 方 、ランゲルハンス島の近傍 には、常に神経節が存在し 、神経線維が多く分布する こと から 、膵 内神 経 による外分泌部の調節は、 直接血管に作用する以外に 、膵島腺房門脈系を介して 行わ れる と考 える こ とが でき る。

15

(3)

膵 管結 紮に より 膵内 神 経節 細胞 の数 が減 少 する こと が明 ら かと なった。膵 内神経細胞の減少は、膵 管 の閉 塞に よる 膵外 分泌部の萎縮に伴う二次的な 変化と考えられ、膵実質の 萎縮スピードに神経線維 のりモデリング が対応できていなしゝ可能性 があった。コリンエステラ ーゼ組織化学で神経節細胞が染 色 され ず、 その 外側 にコリンエステラーゼ活性を 持った神経節の存在は、膵 管結紮により神経節細胞 のコリンエステ ラーゼの局在が変化している ことを示唆した。

    結語

膵管結紮後マウス膵臓において、膵内自律神経の減少が明らかとなった。

(4)

学位論文審査の要旨

     学位 論文 題名     I

AutonomlCnerVeChangeSlnthemouSepanCreaS     afterpanCreatiCduCtligation      (膵 管結 紮後マ ウス 膵内自律神経の変化)

   近年、膵外分泌に関わる膵内神経の重要性が注目されてきた。しかし、膵全体における 自律神経の三次元分布に関する情報は乏しく十分ではなかった。一方、膵組織に病的変化 が生ずると、臓器の形態や機能の維持にとって重要な因子である神経構築も変化している 可能性がある。しかしこれまで、病的膵を理解するための膵臓全体における神経の変化の 定量的検討は行われていない。マウスにおいて、膵管の閉塞は慢性膵炎にみられるような 膵実質の萎縮をもたらすことが知られており、今回の研究ではこのモデルを用い、膵管結 紮後萎縮膵における神経分布の変化を明らかにすることを目的とした。マウス膵管を結紮 し、 膵管 結紮 後7 日 、 14 日に 屠殺 し検 討した。正常対照は生後 6 週齢マウス。1 .コリ ンエステラーゼ組織化学;ザンボニー液で潅流固定したのち、全膵を摘出し、3 分葉に分 け、ゼラチンに包埋した。標本はマイクロスライサーで100pm 厚の膵臓全体の連続切片 とし、コリンエステラーゼをカルノフスキー・ルッツ溶液に2 時間浸潰(4 ℃)し、染色し た。グリセリンジェリーで封入し、光学顕微鏡で観察した。正常対照の一部は、血管の走 行を明らかにする目的で、青インク水溶液を潅流し、ザンポニー液を腹腔内に3ml 注入 し固定後、膵臓を摘出し、先と同様に処理し観察した。2. 組織定量(各群:n=5 );コ リンエステラーゼ組織化学染色を行った脾臓葉の全ての連続切片を用いた。1 )総神経節 数、2 )総神経飾細胞数(NA) 、3 )神経飾総体積:神経節を楕円形と考え、長径(ロ)と短径 (b) を計測し、それぞれの神経節の体積(VA) は、琢(mm3)=4/37r xax62 より求めた。神経 飾総体積(VT は、Vl (mm3 )〓£V ★より求めた。 4 )神経節細胞の平均体積;神経節細胞 の平均体積(VM )=VI ノヘk 、組織定量の結果の統計学的検討は、AN 〇VA で行い、p くO .05 の場合を有意差ありとした。3 .透過型電子顕微鏡;グルタールアルデヒドで潅流固定を 行い、膵臓を摘出した。ゼラチン包埋し、100pm 厚の切片を作成し、カルノフスキー・

ルッツ溶液で染色(4 ℃)、細切後オスミウム酸で後固定し、エポキシ樹脂に包埋し、超薄 切片を作成し、透過型電子顕微鏡で観察した。組織化学染色では、正常マウスにおいて、

17 ‑

永 辺

岩 渡

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

神経飾細胞と神経線維は赤褐色に染色された。神経節細胞の核は染色されなかった。正常 膵の神経細胞の多くはラングルハンス島の周囲に存在した。神経線維は数個の神経飾の間 を連絡していた。膵内の太い神経線維束は動脈に沿って走行し、細動脈表面に細い神経線 維を網目状に供給していた。膵管結紮後 7 日目、神経節の多くは、正常膵と同じように、

ランゲルハンス島の表面に存在した。神経線維は複雑に屈曲していた。膵管結紮後14 日 目、神経飾の多くは、膵管結紮後7 日目同様、ランゲルハンス島の近傍に存在していた。

神経線維は、屈曲蛇行し密な分布を示した。またいくっかの神経節はコリンエステラーゼ 活性を、神経節細胞の胞体に持たなくなり、神経飾細胞の外側に持っようになった。組織 定量において、正常脾臓葉の総神経飾数は、 251 土6 (平均土標準偏差)で、膵管結紮後、

神経節の総数は変化がなかった。神経節細胞の数は、結紮後7 日目、14 日日で正常の約60 % に減少した。神経節の総体積は、膵管結紮により約2 分の 1 に減少した。おのおのの神経 節細胞の平均体積は、膵管結紮後7 日目、14 日目で、正常に比較して有意に減少した。

透過型電子顕微鏡では、膵内神経節細胞は胞体内にコリンエステラーゼ活性を持っていた。

膵管結紮後、胞体内のコリンエステラーゼ活性を認めず、その細胞外にコリンエステラー ゼ活性が存在する神経節が存在した。以上の結果より、今回の手法は、膵内神経のみを明 瞭に描出し、形態学的な定量的検討に適していると考えられる。正常膵脾臓葉には、数個 から数十個の神経細胞からなる膵内神経飾が散在し、これらの神経節は、腹腔神経叢と神 経線維により連絡していた。膵内神経は動脈壁に沿って走行した。一方、ランゲルハンス 島の近傍には、常に神経飾が存在し、神経線維が多く分布することから、膵内神経による 外分泌部の調節は、直接血管に作用する以外に、膵島腺房門脈系を介して行われると考え ることができる。膵管結紮により膵内神経節細胞の数が減少することが明らかとなった。

膵管結紮により膵内自律神経が変性を起こしている可能性が示唆された。口頭発表後、渡 辺雅彦教授より、膵内神経飾は副交感神経由来か、膵管結紮により腹腔内の神経節に変化 は生じるのか、膵管結紮後神経節細胞外にあるコリンエステラーゼはシュワン細胞内に存 在するのかなどの質問があった。っづぃて、岩永敏彦教授より、膵内神経の axon はどこ に分布するのか、膵管結紮後変化した神経節細胞は外分泌支配のものか、他の実験で今回 のようにコリンエステラーゼの分布が変化した例はあるのかなどの質問があった。また、

加藤紘之教授より、神経飾細胞の障害が膵外分泌部の萎縮による二次的な変化なのか否か、

またその原因は何か、ヒト膵臓の膵管結紮との違いは何か、ヒト慢性膵炎の治療に何が還 元できるかなどの質問があった。いずれの質問に対しても、申請者は誠意ある妥当な回答 をした。

   本研究は、膵管結紮後マウス膵臓において膵内自律神経の減少が明らかとし、膵外分 泌 部腺 房の 萎縮する病態における自律神経変化の解明の礎となることが期待される。

   審査員一同、これらの成果を高く評価し、大学院過程における研讃や取得単位なども

併 せ申 請者 が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判断した。

参照

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