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MJ148 ALL 日本マーケティング学会 MJ148 all

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(1)

47

S P R I N G

2 0 1 8

栗木契/巻頭言 栗木契 吉田満梨 曽山哲人 大森信 滝本優枝  上西智子 孫ジン怡/訳  小野晃典 遠藤誠二 鴇田彩夏 上原渉  栗木契/巻頭言 栗木契 吉田満梨 曽山哲人 大森信 滝本優枝  上西智子 孫ジン怡/訳  小野晃典 遠藤誠二 鴇田彩夏 上原渉 

マーケティング・エクセレンスを求めて

第128回/パナソニック サイクルテック株式会社

テーマ書評シリーズ

(2)

マーケティングジャーナル

目次

巻頭言— —————

— 論 文 —————

論 文 —————

論 文 —————

論 文 —————

論 文 —————

AMA・JM 誌論文 —

取材レポート ——

テーマ書評 ———

ブックレビュー ——

なぜ今、エフェクチュエーションか

栗木 契 2

エフェクチュエーションを加速化する省察

栗木 契

5

新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定

吉田 満梨

16

社内スタートアップ創出への組織対応

─ サイバーエージェントが実践からつかんだ知見 ─

曽山 哲人・栗木 契

33

Strategizing Activities and Practices の現状と課題,

そしてその可能性

─ 企業の周辺的活動に注目する意味と

  リレーションシップ・マーケティングに対する含意 ─

大森 信・滝本 優枝

47

サービス・ドミナント・ロジックからみた

医薬品情報提供サービスデザイン

─ 消費者による医薬品情報の自己管理に向けて ─

上西 智子

66

製品の相対価格と効果的製品コミュニケーションの設計

孫 ジン怡 88

<マーケティング・エクセレンスを求めて 128 >

世界も注目したマス・カスタマイゼーションの 30 年

パナソニック サイクルテック株式会社

小野 晃典・遠藤 誠二

102

<シリーズ 107 >

同族企業の行動原理とその特徴

鴇田 彩夏

119

<シリーズ 93 >

仕掛学

─ 人を動かすアイディアの作り方 ─ 松村 真宏 著

(評者)上原 渉

132

日本マーケティング学会 編集委員長 ——— 古川一郎 ——— 一橋大学  副委員長 ——— 西川英彦 ——— 法政大学  編集委員 ——— 石井裕明 ——— 成蹊大学

石淵順也 ——— 関西学院大学

小野晃典 ——— 慶應義塾大学 栗木 契 ——— 神戸大学 澁谷 覚 ——— 学習院大学 鷲田祐一 ——— 一橋大学

148

2018 Spring

(3)

本誌編集委員

栗木 契

神戸大学大学院 経営学研究科 教授

時代は移る

 マーケティングの課題は,時代とともに変わる。

 わが国においても多くの産業が,製品ライフサイクル概念でいうところの成長 期を謳歌していた時代があった。第2次世界大戦の終焉後の日本では,国際政治 や社会経済の諸条件が重なり合い,この特殊な時代状況が生まれた。

 そのなかで各企業は,売上げの伸びを競い合っていた。ヒット商品を次々に生 み出す。チャネルを整え,販売網を全国に張り巡らす。こうしたマーケティング 課題が多くの企業の関心を集めていた。この時代の企業にとって重要だったのは 売上げの拡大であり,そのための商品や広告や販売が求められていた。

マーケティングの課題も変わる

 やがて平成の時代をむかえた日本経済は,バブルの崩壊に直面する。そしてこ のタイミングで,日本の産業の多くが成熟期を迎えることになる。激化する国内 市場のパイの奪い合いのなかで,市場シェアをいかに維持し,利益を確保するか が,多くの企業にとってのマーケティング課題となっていく。

 この1990年代のなかば以降の時期に台頭し,その後のマーケティングにおける 花形のテーマとなっていったのが,顧客関係管理(CRM)であり,ブランド管理 であり,営業革新である。

(4)

なぜ今、エフェクチュエーションか

変化は続く

 時は進む。前世紀末から伸びが鈍化していた日本の総人口は,2008年をピー クに減少へと転じる。企業が国内の競争を勝ち抜き,市場シェアを伸ばしても, 売上げは減少することが珍しくない時代へと突入する。

 この時代にあって企業は,CRM,ブランド管理,営業革新などの守りのマー ケティングでは,消耗戦のなかで事業の規模を縮小していく展望しか描けないと いう問題に直面する。事態を打破するには,既存の事業や産業の枠組の外に打っ て出るしかない。

 そのなかで生じているひとつ大きなトレンドが,海外での事業展開を加速化す る日本企業の増加である。一方で国内においても,事業意欲の旺盛な企業は,既 存事業の枠を超えて,垂直方向あるいは水平方向での新たな事業を模索する。  このような企業の動きは,今後ますます活発化すると思われる。特に近年の国 内では,既存事業に対しては,人口減の圧力が重くのしかかる一方で,新規事業 にあっては,急速に進化するデジタル技術を取り入れることで,新たなビジネス モデルを構築できる可能性が広がっている。

 伸び悩む既存の小売産業や広告産業を尻目に,アマゾンや楽天などのeコマー ス企業,あるいはサイバーエージェントなどのインターネット広告企業の成長が 続く。リクルートはデジタル技術を活用して,教育や住宅リフォームなどの新た な事業領域への参入を果たしている。アップルやアマゾンも,デジタル技術をテ コに自動車産業への参入をねらっている。これらの企業は,デジタル技術を取り 入れた新しいマーケティングに乗り出すことで,市場のフロンティアとの出会い を果たしている。

なぜ今,エフェクチュエーションか

(5)

 エフェクチュエーションには,マーケティング論をはじめとする伝統的な経営 の理論の標準とは相容れない点が少なくない。なぜそのような相違が生じるか。 そして起業という文脈において,エフェクチュエーションの行動原則にどのよう な合理性があるか。こうした疑問にこたえる説明を,サラスバシは,社会科学の 諸分野の基礎理論にさかのぼって展開している。この広く深い思考に裏付けられ ていることが,エフェクチュエーションが注目を集める理由だと考えられる。  さて先述したように,多くの企業の国内事業が,既存事業の生産性の改善から, 新規事業の開発の高度化へと,マーケティング課題をシフトさせることを迫られ るようになっている。このような企業が,エフェクチュエーションに示されるよ うな熟達した起業家の行動原則から学ぶことは少なくないはずである。

 とはいえ,これらの企業の立場で考えると,そこにはいくつもの研究上の課題 が残されている。エフェクチュエーションがとらえているのは,起業家個人の行 動原則である。組織としての新たな事業の立ち上げに,既存の事業をもつ企業が エフェクチュエーションを活かそうとすると,STPマーケティングをはじめとす る既存の標準的なマーケティング・プロセスにエフェクチュエーションをいかに 接続し,予測とは異なる目的のもとで市場調査をどのように活用していくかを見 定めなければならなくなる。加えて,この課題に組織として取り組むには,エフェ クチュアルな行動の採用を個人の自覚にゆだねるのではなく,その動きをうなが すための社内の制度の整備が欠かせない。

(6)

論文

Ⅰ. STPマーケティングへの問題提起

 S. サラスバシの主著である『エフェクチェ エーション』は,熟達者研究の流れに属す る起業家(entrepreneur)研究の成果である (Sarasvathy 2008)。マーケティング研究にとっ て重要なのは,同書が,現代のマーケティング 論の主流である STP マーケティングへの問題 提起を,実証研究を踏まえた入念な理論的検討 を経て行っていることである。

 STP マーケティングは,現代のマーケティ ングの代表的な教科書である P. コトラーの 『マーケティング・マネジメント』が提示す

る「マーケティング・マネジメント・ プロセ ス」の通称である。起業家が,このプロセスを 遵守する場合,新技術(X)の市場導入は次の ように進むことになる(Kotler 1991, pp. 63-79 ; Sarasvathy 2001 ; Sarasvathy 2008訳, pp. 48-51; 栗木 2015a)。

 最初のステップは,セグメンテーションであ る。起業家はXの販売対象となり得るすべての 顧客を包括したマーケティング機会に関する情 報を,フォーカスグループ・インタビューやサー ベイなどのマーケティング・リサーチの手法を 用いて収集し,それにもとづきXを販売可能な 市場をセグメント(S)に分割する。次に起業 家は,各セグメントの潜在的な売上げなどにつ

エフェクチュエーションを

加速化する省察

要約

 未来の予測は成り立つか,成り立たないか。いずれを前提とするかによって,合理的なマーケティン グ活動の進め方は,大きく異なることになる。

 STP マーケティングは,市場の先行きを予測できることを前提としている。しかし,マーケティング という営みにおいて,この未来の予測が困難となるのであれば,新たなマーケティング活動の進め方を 再検討することが不可避となる。すなわち,予測に頼ることなく未来を切り開いていくプロセスを有効 なものとする行動の原則を,企業は見定めることを求められる。

 本稿では,S. サラスバシのエフェクチュエーションを手がかりに,予測に頼ることが有効ではない状 況を第 3 の不確実性とむすびつけてとらえる。そのうえで本稿では新たに,エフェクチェエーションの 行動原則を STP マーケティングの補完に用いるうえで,省察が果たす役割を検討し,マーケティング研 究が取り組むべき今後の課題を浮き彫りにする。

キーワード

エフェクチュエーション,省察,第 3 の不確実性,STP マーケティング 神戸大学大学院 経営学研究科 教授

(7)

いての戦略的評価を行い,1 つあるいは複数の セグメントをターゲット(T)として選択する。 続いて起業家は,競合分析,そしてリソースや 技術の制約条件の検討などを行い,ターゲット とするセグメントにおけるXの最適なポジショ ニング(P)を見定める。そして起業家は,こ れらの STP を踏まえて,製品政策や流通政策 や価格政策やプロモーション政策などのマーケ ティング・ミックスのプログラムを作成し,統 合的な実行を進める。

 以上のような手順は,「STPマーケティング」 あるいは「STP プロセス」とも呼ばれ,広く 世界のビジネススクールの教室で教えられてき た(Sarasvathy 2001 ; Sarasvathy 2008 訳 , p. 95)。STP マーケティングは,マーケティング の企画と実行に,予測→計画→執行という戦略 計画的な流れを持ち込み,プロジェクトの整然 とした展開をうながす。STPマーケティングが, 大規模な事業展開において合理的だと見なされ るのも,そのためである。予測と計画と執行の 各ステップの概要は以下である(栗木 2017)。  ①予測とは,事業目的のもとでマーケティン グ・リサーチを行い,標的として最適な領域を 見いだすステップである。マーケティング機会 の分析,そしてセグメンテーションとターゲ ティングの設定が,これにあたる。

 ②計画とは,①で定めた標的に向けて,統合 化されたマーケティング・プログラムを策定す るステップである。ポジショニングの設定,そ してマーケティング・ミックスのプログラムの 立案が,これにあたる。

 ③執行とは,②で計画したプログラムを,市 場に集中投入し,実行と評価を進めていくス テップである。マーケティング・プログラムの

実行と評価が,これにあたる。  

Ⅱ. 熟達した起業家の行動

 STP マーケティングは,一定の合理性の合 理性をもった考えとして広く受け入れられてい る。とはいえ,この手順は規範的なモデルであ る。実際に,熟達した起業家たちも同じような 行動手順を採用するのだろうか。

  こ の 問 い に 答 え る べ く, サ ラ ス バ シ は, 大 別 す る と 2 つ の 実 証 的 分 析 を 行 っ て い る (Sarasvathy 2008訳, pp. 2-14, pp. 24-55, pp. 64-72, pp. 83-94)。 第 1 は 事 例 研 究(Case based Research)であり,B. ルータン(スペ-スシッ プ・ワン),R. グレーザー(リアルネットワー ク),H. シュルツ(スターバックス)といった 著名な起業家の事業ストーリーを再構成し,熟 達した起業家たちがどのような行動を通じて事 業を立ち上げていくかを分析する。第2はプロ トコル分析(Protocol Analysis)であり,熟達 した起業家たち─すなわち1つ以上の企業を創 業し,かつ最低でも1社を株式公開した人物27 名─を被験者に,架空の起業事例をもとにした 事業計画作成を依頼し,彼らがこの課題にどの ように取り組むかを,プロトコル・データを収 集し,分析する。

(8)

エフェクチュエーションを加速化する省察

という姿勢は,先の教科書的なマーケティング のアプローチとは真逆ともいえる。この熟達し た起業家たちに見られる「やってみなはれ」の 精神(栗木 2015b)とも通じる行動の原則ある いは論理を,サラスバシは「エフェクチュエー ション(実効論)」 と呼ぶ。

 では熟達した起業家たちは,なぜ教科書的な マーケティングの手順に沿った行動をとらない のだろうか。サラスバシは,それは彼らがマー ケティング・リサーチ(市場調査)を行わない, あるいはそれをもとにした予測を軽視するから だと考える。たとえば,サラスバシのプロトコ ル分析では,起業に向けた事業計画の意志決定 にマーケティング・リサーチあるいは予測的分 析を用いるとしたのは,27 名の調査対象者の うちわずか4名だった。

 そして熟達した起業家たちは,予測の代わり に,実行可能な活動を手近なところに見いだ し,それらに取り組むなかで,新製品に適した 市場の領域を事後的に見いだすことを選ぶ。サ ラスバシはその理由として,起業家たちが対峙 する市場は─ STP マーケティングの前提とは 異なり─いかに精査しようとも,その未来を予 測することが困難な環境となることを指摘して いる。

 

Ⅲ. 予測通りには進まないマーケティング

 起業に向けた事業計画だけではない。企業に よるマーケティングの実際も,STPマーケティ ングの予測→計画→執行の流れのようには,理 路整然とは進まないことが少なくない。  たとえば石井淳蔵は,いくつかの事例をあげ ながら,マーケティングの実際は両義的だと述

べる。すなわち,市場における企業活動とは,

事後的に振り返ると,「おいしいビールをつくっ

たからヒットした」という説明と,「そのビー ルをおいしいと思わせるマーケティングがうま くいったからヒットした」という説明の2つが, 共に成り立ってしまう活動だというのである (石井 2004, pp.36-38)。

 鈴木隆は,自身の起業経験,そして他社のマー ケティング事例をあげながら,事前の情報分析 の精度を上げることだけに傾注しても無意味と なりやすいことを指摘している。なぜなら,マー ケティングにおいて本当に重要な情報は,当事 者となって試行錯誤を繰り返すなかで入手さ れることが少なくないからである(鈴木 2016, pp.3-10)。

 では,どうして,このようなことが起こるの か。STP マーケティングをはじめとする,予 測にもとづく計画という発想の見落としはどこ にあるのか。その背景には,市場の不確実性 と相互依存性という相互に関連する2つの問題 があることを,R.ウィルトバンク,N. デュー, S. リード, そして サラスバシが指摘してい る(Wiltbank et al. 2006 ; Sarasvathy 2008 訳, p.73)。彼らが指摘するように,STPマーケティ ングをはじめとする,予測に基づく計画がマー ケティングにおいて合理的となるのは,以下の 2つの前提が満たされるときである。

 第1は,市場の不確実性に関する前提である。 予測にもとづく計画は,市場には一定の不確実 性はあるが,これはリサーチや試行の繰り返し によって克服可能─すなわち顧客のニーズをは じめとする市場の未来は,一定の範囲で予測可 能─だと考える。

(9)

提である。予測にもとづく計画は,この関係は, 市場に対して企業が適応するというリニアなも のであり,そこには相互依存性─すなわち企業 は市場に適応する必要がある一方で,企業活動 を通じて市場をつくりかえることができるとい う二面的関係─は存在しないと考える。  

Ⅳ. 不確実性の類型

 市場とは不確実な場である。未来の結果はわ からない。そのなかで起業家や企業は,明日の 市場で何が起こるかを見定める必要がある。完 全な予測とはならなくても,その精度を高めて いくことはできないか。現在の科学的方法論の 主流となっている批判的合理主義の着想にした がえば,STPマーケティングを1回限りのプロ セスではなく,繰り返し行う連続プロセスとし たり,多数のテスト・マーケティングを展開し たりして,試行回数を増やすことが,予測の精 度を高めるカギとなる(Popper 1959訳, p.49 ; Popper 1963訳, p.78, p.93, p.96 ;小林 1989 ;堀 越 2005, pp14-15 ;野家 2005, 栗木 2012, p.177)。  しかし,こうした科学的な予測精度改善の取 り組みが,そもそもあらゆる不確実性に対して 有効なものなのかについては,よく考えてみる 必要がある。不確実性とは,ひとつの状態では ない。サラスバシは,F. H. ナイトの不確実性 に関する議論を引きながら,市場における不確 実性のあり方を次のように説明する(Knight 1921, pp. 224-226; Sarasvathy 2008 訳 , pp.32-35)。

 ナイトの第1の不確実性は,結果はわからな いが,事象が生起する確率の分布は既知だとい う場合である。これは,たとえば,壺から玉を

取り出すくじ引きで,壺のなかには「当たり」 の赤玉が3個,「外れ」の白玉が7個入っている ことが事前にわかっているような場合である。  第2の不確実性は,結果がわからないのみな らず,事象が生起する確率の分布も未知だとい う場合である。これは,先と同様のくじ引きで はあるが,赤と白の玉がそれぞれ何個ずつ壺に 入っているかがプレイヤーには事前にわからな い,というような場合である。

 さて,未来はわからないとはいっても,起業 家や企業が市場において直面しているのが,こ の 2 種類の不確実性にかぎられるのであれば, 批判的合理主義の着想に沿った科学的方法論は 有効に機能しそうである。第 1 の不確実性は, 起業家や企業が,マーケティング・リサーチを 通じて,事象が生じる確率の分布を一気に把握 できる場合に相当する。このようなかたちでの 市場情報の把握が可能なのであれば,起業家や 企業は,まずはマーケティング・リサーチを行 い,その上で,リサーチによって把握した事象 の生起確率の分布を踏まえて,適切なターゲッ トやポジショニング,そしてマーケティング ・ ミックスのあり方を検討すればよい。

 とはいえ,マーケティング・リサーチにとっ て,第1の不確実性は見果てぬ夢となることが 多い。新製品を市場に導入したり,何らかの マーケティング活動を行ったりする際に,個人 や組織がこれにどのように反応するかの確率分 布を,マーケティング・リサーチによってあら かじめ完全に把握するというのは,現実にはか なり難しい。

(10)

エフェクチュエーションを加速化する省察

ついては,事象が生起する確率の分布を,マー ケティング・リサーチで一気に把握することは 難しいかもしれない。しかし,事前のリサーチ に加えて,試行を重ね,その結果についてのデー タを蓄積していくことによって,予測の精度を 高めていくことは可能である。

 すなわち,批判的合理主義に沿った科学的方 法論が説くように,リサーチと試行を繰り返せ ば,第2の不確実性のもとでも予測の精度は確 実に高まる(栗木 2012, pp. 174-179)。さらに は変化の激しい市場─すなわち,先のくじ引き の壺の中身が,ときどき入れ替わってしまうよ うな場合─においても,試行の回転速度を高め ることで,予測の精度を保つことが可能である (原田 2014, pp.45-48)。

 

Ⅴ. 科学的な取り組みを無効化する

不確実性

 だがナイトは,さらに第3の不確実性がある という。これは,結果がわからず,事象の生起 の確率分布も未知であることに加えて,この生 起の確立分布を不変のものと仮定してよいかど うかもわからないという場合である。

 サラスバシは,この第3の不確実性を踏まえ て,熟達した起業家に見られる,市場と企業活 動の相互依存性を活用した行動に目を向ける必 要を指摘する(Sarasvathy 2008訳, pp. 35-37)。 それはたとえば,先の壺から玉を取り出すくじ 引きであれば,「赤」の玉を引くために起業家 的なプレイヤーは,ひそかに集めてきた 10 個 あるいは 20 個の赤玉を,事前に壺のなかに入 れることを画策したりする。あるいは白玉を引 いてしまった後で,起業家的なプレイヤーは,

くじ引きの主催者や参加者を説得して,当たり の玉は「赤」ではなく「白」だというルール変 更を認めさせようとしたりする。

 こうしたプレイヤーの振る舞いは,事象の生 起の確率分布の前提に働きかけようとするもの であり,壺の中身の推定のために,試行を重ね て,予測の精度を高めていこうとしてきた科学 的な取り組みを無効化してしまう。しかし,マー ケティングにおいては,このような野性の振る 舞いが不可能ではないとともに,しばしば生じ る。

 一例をあげよう。セブン - イレブンには,陳 列棚に広いフェイスをとれば単品で500枚も売 れる魚フライがあるが,これを,人気がある から売れるだろうと,陳列幅を減らすと,100 枚も売れなかったりするという(鈴木 2013, p. 160)。すなわち,マーケティング・リサーチが とらえようとしている顧客の特定の心理や行動 が生じる確率の分布は,法則のように定まって いるわけではなく,企業の取り組みしだいで, あっさりと塗りかえられてしまうのである。  このように企業は市場に適応する必要がある 一方で,企業活動を通じて市場をつくりかえる ことができる。すなわち,市場と企業活動との あいだには相互依存性があるのである。  

Ⅵ. エフェクチュエーションの

5つの行動原則

(11)

しか成り立たず,この状況は次々に塗り替えら れていく。市場において STP マーケティング のような戦略計画型のアプローチに限界が生じ るのも,そのためだと考えられる。

 エフェクチュエーションは,第3の不確実性 が渦巻く市場のなかで,起業家や企業がどのよ うに実行していけばよいかの行動原則である。 市場とは,プレイヤーによるゲームのルールの 書き替えが,避けがたく起こる場である。した がって,市場の秩序を,普遍法則と同一視する ことはできない(栗木 2012, pp. 202-206)。こ うした不確実であり,かつ相互依存的な市場に おいて事業を展開するうえでの合理的なマーケ ティングの行動原則が,エフェクチュエーショ ンなのである。

 エフェクチュエーションの要諦は,まずは やってみることにあるが,その展開を有効なも のとする行動を,サラスバシは以下の5つの原 則にまとめている(Sarasvathy 2008 訳 , p.94-124; Blekman 2011, p.39)。以下では,この5つ の原則のそれぞれが,市場に出現する第3の不 確実性にかかわるどのような問題に対処するた めのものであるかを確認していこう。サラスバ シは,この対応関係を確認していないが,この 確認作業を行うことで,市場における第3の不 確実性に対処するマーケティングには,この 5 つの行動原則を組み合わせることが合理的であ ることが見えてくる。

 1) 手持ちの鳥の原則

  (The bird-in-hand principle)

 これは,すでにある自社のリソースを活かす ことを優先するという「手段主導」の行動原則 である。第3の不確実性のもとでは,市場への 適応のための予測の精度は低くなる一方で,起

業家や企業が働きかけていくことで市場を構築 できる。手持ちの鳥の原則は,このことに対応 した行動原則だと考えられる。

 2) 許容可能な損失の原則

  (The afordable-loss principle)

 これは,どこまでの損失が許容可能であるか

を見定めて,その範囲で投資を行うという,「許

容可能な損失」を優先する行動原則である。第 3 の不確実性のもとでは,「期待収益の最大化」 をめざそうにも,大規模事業投資のリスク低減 に向けた予測精度の向上は難しい。許容可能な 損失の原則は,このことに対応した行動原則だ と考えられる。

 3) クレイジーキルトの原則   (The crazy-quilt principle)

 これは,可能なところから行動をはじめ,そ の結果としてできあがったネットワークのなか で何ができるかを考えるようにするという行動 原則である。第3の不確実性のもとでは,事前 の予測や目的にもとづいた行動を続けるのでは なく,行動を続けるなかで立ち上がってくる状 況に逐次対応していくほうが,行動の有効性が 高まる。クレイジーキルトの原則は,このこと に対応した行動原則だと考えられる。

 4)レモネードの原則

  (The lemonade principle)

(12)

エフェクチュエーションを加速化する省察

 5) 飛行中のパイロットの原則   (The pilot-in-the-plane principle)

 これは,事業機会をたぐり寄せるのは,その 場そのときの人間の活動だと考え,注意と活動 を怠らないようにする行動原則である。第3の 不確実性のもとでは,マーケティングの実行が あたかも自動操縦であるかのように進んでいく とは考えにくく,絶えざる状況の確認と判断が 必要となる。飛行中のパイロットの原則は,こ のことに対応した行動原則だと考えられる。  

Ⅶ. 第3の不確実性を活かす

マーケティング

 市場において起業家や企業が直面するのが, ナイトの第3の不確実性なのであれば,そこで は「予測-計画」よりも,「執行」を先行させ た方が,起業家や企業の行動の有効性は高まる と考えられる。このような論理を,サラスバシ は熟達した起業家の行動について実証的分析か ら見いだし,そこで有効となる行動を,エフェ クチュエーションの5つの行動原則として提示 していると見ることができる。

 原田勉も同様に,イノベーションのマネジ メントにおけるナイトの第3の不確実性への対 応策を検討するなかで,「決定を遅らせる」と いう処方箋を提案している(原田 2014, pp.48-50)。この提案もまた,第1と第2の不確実性と は異なり,第3の不確実性のもとでは,マーケ ティングの手順における「予測-計画」と「執 行」の手順を逆転させることに合理性があるこ とを説くものだといえる。

 ナイトの第3の不確実性とは,市場では事象 の生起が,起業家や企業のとる行動から独立し

ておらず,そのために事象が生起する確率の分 布のベースが揺れ動く可能性を排除できないと いう不確実性である。これは,別のいい方をす れば,市場においてマーケティング・リサーチ は,リサーチャーの内部性の問題と懐疑論的関 係の問題に直面するということである。この 2 つの問題があるときには,判的的合理主義的 なリサーチ・プログラムを採用することの妥当 性は低下することになる(栗木 2012, pp. 183-202)。

 第3の不確実性の問題がある以上,起業家や 企業がいかに市場に関する事前のリサーチを徹 底しても,予測の精度の向上にはいたらないと いう事態が生じる。その一方で,この不確実性 のもとでは,起業家や企業が,人や組織として 取り得る基本的な行動,すなわち運んだり,見 せたり,説得したり,交渉したりすることから, 新しい未来をつくり出したり,生み出したりし ていく可能性が生じる(Beyerchen, Alan 1992 ; 栗木 2003, pp.75-84, pp.141-143;, pp.210-212; 栗 木 2015a)。

 市場とは,循環する関係のなかで構成される 自己組織的な状況の集合体である(栗木(2012) p.36, pp.208-209)。市場に対峙しながら,起業 家や企業が新たな事業を立ち上げ,拡大してい くプロセスにおいては,局所ごとに異なる各種 の不確実性─そこにはナイトの第 1 と第 2 の不 確実性に加えて,第3の不確実性も出現する─ に次々と対処していく必要が生じる。そこでは

図−1のように,STPマーケティングに加えて,

(13)

 第3の不確実性のもとにある市場では,全体 的な予測の精度の向上は望めないが,起業家や 企業が働きかけることで,つくりあげていくこ とができる領域が局所的に出現する。このよ うな市場の局所的秩序(栗木 2012, pp. 205 - 206)を活用しようとするのが,エフェクチュ エーションの5つの行動原則だといえる。そこ で示されるのは,市場の全体的な見通しの不確 実さを克服しようとするのではなく,局所的に 成り立つ手元のコントロールに頼った行動を進 めようとするアプローチである。すなわちこの 条件のもとに置かれた起業家や企業にとって有 効な行動は,「手持ちの鳥」を用いた「許容可 能な損失」の範囲での「執行」によって市場に 働きかけ,そのなかで立ち上がってくる状況を 「省察」し,次なる戦略的な打ち手を「洞察」

していく「キルティング」を進めることである。 そして,この省察と洞察を導く際には,「レモ ン(粗悪品)をつかまされたらレモネードをつ くる」といった,リフレーミング的な発想の切

り替え,そして「飛行中のパイロット」のよう に,進行していく状況の注視が重要となる。  

Ⅷ. 省察がもたらす

STPマーケティングの補完

 こうしたエフェクチュエーションの行動原則 による補完は,STPマーケティングには欠けて いた何をどのように変えるのだろうか。エフェ クチュエーションが活性化するのは,STPマー ケティングを動脈とすれば,その静脈的な回路 だ─どちらが動脈,静脈かについては逆かもし れない─といえる。

 第1に,STPマーケティングに先立ち,まず はやってみること─テスト・マーケティングを 先行させるアプローチなど─の有効性が指摘で きる(杉田 2017, pp. 25-26, pp.63-66)。そこで は「執行」からはじまるプロセスを,いち早く 「省察」し,「洞察」へとつなげ,それらを踏ま えた次なる「予測」や「計画」につなげていく

(14)

エフェクチュエーションを加速化する省察

ことが,STPマーケティングによるテスト・マー ケティングの成果の拡大再生産をうながすと考 えられる。

 第2に,STPマーケティングに導かれた「執 行」の後にも,市場の再構築が生じている可能 性を掘り起こしていく,ある種のしつこさが有 用なことが指摘できる。「執行」によって生じ ているかもしれないゲームのルールの書き替え を,いち早く「省察」し,「洞察」へとつなげ ていくことで,より有効な次なる STP マーケ ティングに向けた取り組みがうながされる。  ここでいう省察(relection)とは,予測の ような行動に先立つ営みではなく,行動中ある いは行動後に自らの行動を振り返ることであ る。そしてそこには,行動のなかの暗黙的な知 が相互作用しあって,新たな意味や感覚に焦点 化されていく展開が期待できる(Shön 1983 訳, pp.87-92; Gray 2007 ; 松尾 2011, p.88)。次に洞 察(insight)とは,種々のデータや情報や目標 を総合的に勘案しながら,将来を見通していく ことであり,省察の結果として出現する(石井 2009, p.50)。エフェクチュエーションを踏まえ ることで,この省察と洞察が,第3の不確実性 に対処する上で重要な役割を果たすことを,新 たに指摘できる。

 さて,エフェクチュエーションを STP マー ケティングの手順の補完として用いるには,事 前の予測とは別に,この省察から洞察を導くス テップを重視するべきである。加えてこの省察 から洞察を導くステップを,第3の不確実性に 挑むものとするためには,予測の精度を高める ことではなく,局所的に生起するコントロール の可能性を,その局所性を踏まえて活用するこ とに向かわせるべきだろう。エフェクチュエー

ションの5つの行動原則は,この省察から洞察 を導くステップのガイドラインとしても活用で きる。

 加えて企業は,情報システムをはじめとする 社内の制度やシステムなどのリソースを,予測 の精度向上と指揮命令の徹底だけではなく,エ フェクチュエーションの5つの行動原則の涵養 にも役立つように再構築していく必要がある。 これは今後のマーケティング研究に残された課 題でもあり,どのような社内リソースがいかに エフェクチュエーションを活性化するかの解明 が待たれる。

 

Ⅸ. おわりに

 エフェクチュエーションは,STPマーケティ ングとは異質ではあるが,対立的な行動原則で はない。この2つの行動原則は,同一の起業家 や企業に併用されていることを,サラスバシ は実証を踏まえて指摘している(Sarasvathy 2008 訳 , p.70, pp.175-178)。サラスバシの実証 から浮かび上がってくるのは,起業家や企業が マーケティングに取り組む際には,STP マー ケティングだけでそのプロセスを完結させるの ではなく,エフェクチュエーションによる補完 によって,市場における各種の不確実性を乗り 越えている実態であり,この異質な2つの行動 原則を組み合わせる必要性である。

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ての考察を新たに進めた。STP マーケティン グを補完するプロセスとしてエフェクチュエー ションを活用する際には,省察から洞察を導く ステップにおいて5つの行動原則を活かすべき であり,そしてその支援のための制度やシステ ムの整備が必要となることが指摘できる。この エフェクチュエーションを活性化する制度やシ ステムについては,今後の解明が待たれるマー ケティング研究に残された課題である。  

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エフェクチュエーションを加速化する省察

栗木 契(くりき けい)  神戸大学大学院 経営学研究科 教授

 1997 年 神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了  1997 年 岡山大学経済学部講師を経て,現職  主 著 『リフレクティブ・フロー』白桃書房,2003

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Ⅰ. 不確実性下での新市場創造の実践

1. 環境の不確実性に対する処方箋としての「予測」  企業現場におけるマーケティング実務者(以 下,マーケター)の実践は,しばしば大きな環 境の不確実性への対処を伴う。例えば,革新的 な製品・サービスの導入段階では,消費者ニー ズは明確ではない。そのため,株式会社伊藤園 が初めて緑茶飲料を発売した際,社内・流通と もに「お茶に 100 円も出すやつなんていない」 と評価されたように(吉田 2010),今日では市 場が確立されている製品でも,その導入時点で 成功するか否かを把握することは不可能だ。ま

た,製品自体は新規でなくとも,市場の成熟化 に伴い,従来とは異なるターゲット顧客にビジ ネスを拡張しようとする際には,やはり直面す る不確実性はきわめて高いものとなるだろう。 さらには,自社は既存のビジネスを安定して続 けているつもりが,競合企業や顧客の予期せぬ 行動によって環境前提が大きく変化し,市場で のポジションを失ってしまうことあり得る。  こうした「不確実性」とは,一般に,正確 に予測をできない意思決定の主体が経験する 問題であり (Milliken 1987),「職務を完遂す るために必要とされる情報量と,すでに組織 によって獲得されている情報量とのギャップ」 (Galbraith 1973, 邦訳 p.9) として定義されてき

不確実性と意思決定

要約

 本研究の目的は,不確実性の高い市場環境に直面したマーケターが,いかに課題解決を行うのかを分 析し,近年アントレプレナーシップ研究を中心に注目されている「エフェクチュエーション」(Sarasvathy 2001, 2008)の論理のマーケティング課題への適用可能性を明らかにすることにある。具体的には,マー ケターを対象に,マーケティング実践における8つの意思決定課題への回答を,シンクアラウド法によ る発話プロトコルデータとして収集する調査を実施した。分析の結果,第一に,市場創造の経験を持つマー ケターが課題解決においてエフェクチュエーションに基づく意思決定を行っていること,第二に,起業 家ではなくマーケターの文脈における,エフェクチュエーションに基づく意思決定の様式が明らかになっ た。以上から,起業家の論理としてのエフェクチュエーションを,大企業におけるマーケティングや新 規事業開発にも有用な知識として精緻化し,既存のマーケティング理論を補完する知識開発に寄与でき る可能性が示された。

キーワード

エフェクチュエーション,不確実性,意思決定,マーケター,プロトコル分析 立命館大学 経営学部 准教授

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新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定

た。こうした不確実性がある場合には,目的達 成のための選択した行為が,事前に期待した結 果をもたらすとは限らない。

 それゆえ経営学では,不確実な状況下でいか に意思決定を行うのか,あるいは,そうした不 確実性ゆえに事業が失敗したり,製品が売れ 残ったりするリスク,及びそれに対処するため のコストをどのように負担するのか,といった 課題について,環境に対応した組織構造や管理 システムの問題,あるいはサプライヤーやチャ ネル,行政や競合といった具体的な環境に対す るマネジメントの問題を含む,様々な研究蓄積 を行ってきた。とりわけ不確実な環境における 意思決定の問題は,意思決定を行う経営者や 組織のメンバーの合理性が,本質的に限定さ れたものであることが認識されて以来(Simon 1957),不断の環境変化の中で長期な成長を志 向する組織にとって,必然的に対応すべき課題 とみなされてきた。

 こうした不確実性への対処に共通する基本的 な方針としては,「追加的な情報を収集・分析す ることによって,不確実性を削減させる」 (e.g., Galbraith 1973, Tushman and Nadler 1978)こ とが目指されてきたと言える。Wiltbank et al. (2006)は,経営学における10の主要なジャー

ナルに掲載された187本の論文のメタ分析から, 環境の不確実性に直面する企業の戦略策定につ いて,戦略的マネジメントの主流の研究が,主 に2つの処方箋を提供してきたことを整理して いる。一つは,とりわけプランニング学派によっ て主張されてきた,「より良く予測するために 努力すべし」という方向性であり,もう一つは, とりわけラーニング学派によって支持されてき た,「より良く適応するために素早く動くべし」

という方向性である。

 前者のAnsof(1979)やPorter(1980)など に代表されるプランニング学派は,体系的な分 析と統合的な計画の重要性を強調する。より詳 細な状況への注意,より頻繁な分析,より多く の代案の評価を重視するこのアプローチでは, 環境の不確実性が高い場合,より念入りに分析 を行い,より正確に変化する環境を予測できる ほど,成果が高くなると考えている。実際に, 合理的な予測が企業成果に結びつくことを示し た多くの研究成果も存在する。

 一方,後者のラーニング学派は,プランニン グ学派とは対照的に,予測的合理性を追求する 代わりに,環境からのフィードバックから,何 をなすべきかを漸進的に学習していくことを重 視する立場である。未来の不確実性に直面する 企業は,事前の予測ではなく,実験を通じて新 たな機会をとらえ,変化する環境に対して柔軟 に適応しながら,戦略自体をその都度修正して いく組織学習が重要だとする。行動を通じて 事後的に見出される,当初の計画段階では意 図されていなかった秩序としての「創発戦略 (emergent strategy)」(Mintzberg and Water

1985; Mintzberg, 1978)もまた,ラーニング学 派に位置付けられる。

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を否定しているわけではない。例えば,状況の 中で事後的に見出された創発戦略もまた,選択 される際には,それが未来の望ましい成果を生 み出すだろうことを見据えて選択されるのに違 いはないと言える。さらには,計画と適応とい う2つのアプローチは必ずしも代替的なもので はなく,合理的な計画と新たな機会の追及を両 立させるようないくつかのアプローチも提案さ れている。これらのアプローチは,最初の段階 から,将来における柔軟な意思決定の修正をあ らかじめ織り込み,予測外の事態に素早く適応 するために,慎重な計画を立てようとするもの で あ る(e.g., Bourgeois and Eisenhardt 1988, Eisenhardt 1989, Teece, Pisano, and Shuen 1997, McGrath 1999)。

 このように,戦略策定において予測が有効だ と考えられてきた背景には,「結果を予測する ことができれば,それをコントロールできる」 という信念がある (Wiltbank et al. 2006)。こ うした信念は一見自明のようだが,実際には, 予測によってコントロールが可能となるか否か は,環境の不確実性の種類によって異なると言 える。

 

2. 真の不確実性下での予測の不可能性

 環境の不確実性に関して,概念的にはこれま で様々な分類がなされてきたが(e.g., Stirling 1998; 2010, 平川2002, 竹村他 2004),広く見ら れるのは,「リスク」を含む用法としての広義 の不確実性と,狭義の不確実性を区別する分類 である。現実の広義の用法では,リスクと不確 実性はしばしば同義とみなされ,代替的に用い られることがあるが,厳密には,「リスク」と は事象の発生確率を何らかの形で数量化できる

ものを指すのに対し,「不確実性」とは,事象 の発生を数量的な確率としては表現できないよ うな状態を指す。この区別の嚆矢は,Knight (1921)のRisk, Uncertainty and Profit(奥隅榮 喜 訳『危険・不確実性および利潤』,1959 年) における,次のような3種類の確率の区別であ る。

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新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定

まったく不可能である。

 Knight(1921)は,まず,第一の先験的確率 のタイプは,ビジネスの現場では決して見られ ないものだとした上で,個別には不確実でも大 数法則的に数量表現できる第二の統計的確率の タイプを「リスク」と定義し,計測不可能な第 三の推定のタイプを,「真の不確実性」と呼ん だ。この区別が重要なのは,リスクの場合には, 典型的には火災の発生に備えて支払う保険料の ように,それは企業にとっての費用とみなされ るのに対して,それを含む諸費用以上の余剰に よって生み出される利潤というのは,計測不可 能な不確実性によってのみもたらされる,と考 えられるためである(和田 2015, pp92-93)。  実際に,マーケターが不確実性に直面する状 況として冒頭に例示した,新規事業開発や新製 品開発,新市場開拓などは,いずれもある企業 が自らの利益を極大化するために差異化され た新たな市場を創造しようとする試みである (Chamberlin 1962)。こうした試みは,それぞ れが本質的にユニークであり,先験的確率を計 算したり,全く同類の経験を数多く集めて研究 したところで,成功確率を判断できるわけでは ない。

 しかし Knight はまた,このような数量的な 予測が不可能な状況でも,企業者自身は,彼の 諸行動の結果から,形成しうる限りの最もよい 推定を形成するのみでなく,自らの推定が正 確であるという確率を主観的に見積もってい るだろうこと,そして,推定が結論に達すれ ば,不確実な未来に対して,一定の自信や確か らしささえ見出すだろうことに注目する。そし て,こうした計測不可能な真の不確実性への対 応こそが,企業者が利潤を手にすることができ

る源泉である,と主張する(Knight 1921, 邦訳 pp.297-303)。

 

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不確実性に対する

エフェクチュエーションの論理

1. 不確実性への2種類の対処:コーゼーション とエフェクチュエーション

 それでは,予測が不可能な真の不確実性へ の対処を通じて利潤を生み出す企業者は,実 際にどのように意思決定を行うのだろうか。 Sarasvathy(2001)は,27 名のエキスパート の起業家に対する意思決定の実験から,この問 題に対する答えを直接導いた。具体的には,米 国の起業家リストから「創業者・起業家として フルタイムで10年以上働き,最低でも1社を株 式公開した人物」を基準にエキスパートの起業 家を選出し,スタートアップにおいて直面す る10の典型的な意思決定課題への回答を求め, その思考内容を分析したのである。その結果か らは,明確なパターンが発見された。例えば, 彼らには「市場調査を信用しない」,「過去の経 験に基づいて意思決定をする」など,複数の明 らかな傾向があった。そしてこれらの発見が示 唆していたのは,経験ある起業家は,スタート アップという極めて不確定性の高い環境下で, 問題解決のために共通の論理・思考プロセスを 活用している,ということだった。実験を通じ て発見されたパターンは,総体として「エフェ クチュエーション」と名付けられた。

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れた造語である。実際,エフェクチュエーショ ンの論理は,戦略論やマーケティング論を含む, 経営学で正当だと考えられてきた意思決定のプ ロセスとは対照的な内容から構成されていたた め,極めて新しい発見として受け止められた。  例えば,伝統的なマーケティング論のアプ ローチでは,ターゲット市場の設定と,消費 者をはじめとする自社を取り巻く環境の十分 な理解を出発点としている(Kelley and Lazer 1958, 嶋口・石井 1995)。そのプロセスでは, 新しい市場機会を特定することから始まり,さ らに消費者調査や競争分析を通じて,期待利益 を予測しつつ,まず明確な事業計画を策定する ことが重視される。そうして目標が明確化され れば,それを実行するために必要な資源を獲得 し,さらに意図せざる結果からのフィードバッ クを受けて計画を修正しつつ,時間とともに変 化する環境に適応していくことを志向するもの となる(図表−1参照)。

 これに対して,Sarasvathy が明らかにした エフェクチュエーションの論理では,コーゼー ションとは対照的な,大きく5つの意思決定の 原則が見出された。

 第一に,プロセスの出発点において,所与と されるのは,達成するべき目的ではなく,手持

ちの手段の集合である(「手の中の鳥(bird-in-hand)」の原則)。なぜならば,極めて不確実性 の高い,変化する環境の中で誰がターゲット顧 客になるのかは,実際にそれを誰が購入したの かを通じて事後的にのみ定義されうるためであ り,目標もまた変更されたり,時間をかけて形 成されたり,あるいは偶然見出されたりするた めである(Fisher 2012)。そのプロセスでは, 自らが(1)誰なのか(アイデンティティ,選 好,能力),(2)何を知っているのか(教育, 訓練,経験から得た知識),そして(3)誰を知っ ているのか(社会的ネットワーク)を含む,起 業家個人に固有の手持ちの資源をもとに,それ を用いて「何ができるか」が模索される。  第二に,起業家がそれを実行に移す際には, どれくらいの利益が見込めるか(期待利益の最 大化)ではなく,仮にうまく行かなかったとし ても損失が許容できるか(損失の最小化),に 基づいてコミットメントを行う傾向がある(「許 容可能な損失(afordable loss)」の原則)。コー ゼーションの論理では,最適な戦略を選ぶこと により,リターンを最大化することが重視さ れてきた。それに対して,エフェクチュエー ションの論理にもとづくエキスパートの起業家 は,はじめに期待利益を設定する代わりに,仮 に失敗した場合でも「どれだけの損失なら許容 できるか」をまず決定し,その上で,手持ちの

• • •

図表 —— 1 コーゼーションのプロセス 

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新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定

手段を創造的に活用するべく行動を始める。新 たな事業を起こすことには大きな不確実性が伴 うため,それを遂行する起業家には,高いリス ク選好を持つ人々というステレオタイプが存在 しているが,実際の起業家はそうではなく,む しろリスク回避傾向を持つことが,近年の研究 によって明らかにされている(Miner & Raju, 2004)。

 「手の中の鳥」の原則と,「許容可能な損失」 の原則は,起業家が失敗するリスクを十分に受 け容れた場合でも,取り組みを継続することを 可能にするような意思決定の論理である。自分 が自由に使うことのできる資源と,限定的な範 囲のみのリスクテイクを足場とすることで,仮 に最悪の事態に陥っても致命的な損失を被るこ となく,学習経験を蓄積しながらチャレンジを 継続することを可能にする。

 実際には,こうした手持ちの資源と許容可 能な損失に基づく新たな行動は,多くの場合, 当初予想しなかった結果や,偶然の出来事と いった意図せざる結果をもたらす(Mintzberg

1978,沼上2000)。その際,第三の原則として, エフェクチュエーションの論理に基づく起業家 は,一見不利なものも含む,こうした意図せざ る結果を無視したり回避したりする代わりに, 梃子として積極的に活用しようとする(「レモ ネード(lemonade)」の原則)。

 第四に起業家は,その過程で自発的に参加し てくれる人々とのパートナーシップを志向す る傾向がある(「クレイジー・キルト(crazy quilt)」の原則)。パートナーシップの構築は, 手持ちの資源の集合を拡張するだけではなく, それぞれが独自の選好・ビジョンを持つパート ナーとの相互作用を通じて,「何ができるか」 を変換し,事業のビジョン自体を共に形作るこ とを可能にする。こうしたエフェクチュエー ションのプロセスは,新たな製品や市場の創出 へと収束するまで,幾度も繰り返される。  最後に,こうしたエフェクチュエーションに 基づく意思決定の論理は,予測によって不確実 性を減らす代わりに,コントロール可能な活動 に集中し,結果として望ましい状態を帰結させ

• • •

! 図表 —— 2 エフェクチュエーションのプロセス

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ようとする世界観に基づいている(「飛行機の パイロット(pilot-in-the-plain)」の原則)。そ のため,予測が不可能な真の不確実性下でも, 可能な行為を一歩ずつ生み出すことを可能にす るのである。

 

2. エフェクチュエーションの論理の一般化可能性  エフェクチュエーションの論理は,熟達した 起業家が好んで用いる意思決定のヒューリス ティクスとして抽出されたものであるが,環境 の不確実性への対処についても,予測を代替す るアプローチとなりうるため,起業家研究以外 のマネジメント研究にとっても示唆に富むもの だった。実際,2000 年代に Sarasvathy とその 共同研究者らによる一連の成果が経営学の主要 ジャーナルで紹介されて以来,それを踏まえた 理論あるいは経験的調査の論文が300近く展開 され(Read et al. 2016),また一部のマーケティ ング研究にも影響を及ぼしている (Read et al. 2009; 吉田 2010)。

 Sarasvathy は,Simon(1996) の Sciences of the Artiicial(邦訳『システムの科学』)に おける非予測的なデザインの原則や,March (1978, 1982) が 主 張 し た「technology of

foolishness(愚かさの技術)」の議論に依拠し ながら,エフェクチュエーションの論理を支え ている起業家の前提を,次のように説明する。 起業家が直面する問題が,Knight のいう真の 不確実性に関するものであるならば,予測は有 効なアプローチとはなり得ず,不完全な情報し か持たない起業家の意思決定は,極めて困難な ものになる。ただ,それが問題となるのは,環 境を人々の行為に対して完全に外生的なものと して想定する場合に限られる。もし,環境を内

生的なものとして,つまり人々の行為自体に よって作り出されるものと仮定するのならば, 予測は望ましい結果を実現する唯一のアプロー チではなくなる。

 実際に企業の外部環境としての市場は,様々 な組織や制度,取引パターンといった複数の人 工物から構成されており,買い手の選好もまた, 現実に入手可能な製品や,広告等の影響を受け て変化することが知られている(Aversi et al. 1999)。特定の製品の使用価値やそれに対する 欲望もまた,企業間の価値実現競争や消費者と の相互作用を通じて形成されることが指摘され てきた(石原 1982,石井 2004)。こうした企業 にとっての環境を構成する要素に何らか働きか けることが可能と仮定するならば,環境が変化 する可能性に開かれた不確実なものであること は,起業家自らがそれを構築できる可能性を意 味するものとなる。これは,プランニング学派, ラーニング学派が主張するアプローチに加え て,不確実性に対処するための第3のアプロー チとしてのエフェクチュエーション,すなわち 「環境を自らの行為によってコントロールする ことで,予測を不要にするべし」という方向性 が存在することを示している。

 実際に,提唱者である Sarasvathy 自身は, エフェクチュエーションの論理を,起業家に 固有の意思決定に限定されるものではなく, 「不確定な状況における意思決定の一般理論」 (Sarasvathy 2008, 邦訳 p.340)であると位置付

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新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定

示唆されている。  

3. マーケティング論との接合における課題  しかし,エフェクチュエーションの論理を, 既存の経営学理論に対してどのように接合すべ きかは,十分明確であるとは言えない。実際, Academy of Management Review誌に掲載され, エフェクチュエーションをめぐる論争のきっか けとなった Arend et al. (2015)では,エフェ クチュエーションの論理に対する批判として, 先行する議論と関係性が十分に示されていない こと,エフェクチュエーションが適合的なコン テキストが不明確であること,を含むいくつか の課題が指摘されている。

 とりわけ,エフェクチュエーションの比較概 念であるコーゼーションの理念型とされたの は,フィリップ・コトラー流のマーケティング・ マネジメントのプロセスモデル(Kotler 1991) である(Sarasvathy 2008)。そのためエフェク チュエーションは,市場環境分析に基づき予測 を重視する伝統的マーケティング理論とは,逆 のアプローチであることが強調されてきた。  確かに,伝統的なマーケティング理論は,消 費者,競合企業,取引相手といった,自社を取 り巻く環境の理解を出発点とする点で,コー ゼーションに適合的であるように思われる。 マーケティング意思決定の問題は,統制不可能 な要因(競争,需要,流通機構,法律,企業のマー ケティング以外のコストなど)から,統制可能 な要因(製品,価格,チャネル,プロモーショ ン,立地)を区別することを基本とし,後者に 対してマネジメントを行うために,前者の十 分な理解が必要とされるためである(Howard 1957, McCarthy 1960)。また,エキスパートの

起業家に見出された,「市場調査を信用しない」 という意思決定パターンなどは,マーケターに 当てはまるとは考えにくい。

 ただし,マーケターの職務が,変化する環 境に対する一方向的な適応ではなく,「創造的 適応」(Howard 1957)であると言われるよう に,エフェクチュエーションの中核的アイデア も,マーケティング研究において古くから共有 されてきたと考えられる。実際に,エフェク チュエーションは,未来の結果について確率 計算が不可能な「Knight の不確実性」だけで はなく,行為の主体自身が何をすべきかについ て,明確な目的,順序だった選好を持っていな い「目的の曖昧性(goal ambiguity)」や,ど の情報が注目に値しどの情報がそうでないか が,必ずしも事前には分からないことを示す「等 方性(isotropy)」といった特徴を伴う問題空 間において有効であることが指摘されているが (Sarasvathy 2008, 邦訳p.90),これらの特徴は,

新市場の創造に携わるマーケターにも当てはま ると考えられる。こうした状況では,環境をむ しろ「作られつつあるもの(in-the-making)」 と捉え,自らの持つ資源の価値を最大化するよ うな場の創造自体をマネジメントの対象とする ことが有効でありうる(石井 2003)。

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クチュエーションの論理に基づく意思決定を行 うのか,第二に,もしそうであれば,エフェク チュエーションに基づくマーケターの意思決定 の様式は,起業家のそれとはどのように異なる のか,を検討する。

 

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経験的研究の概要と結果

1. 調査概要

 本研究では,不確実性下におけるマーケティ ング課題に対するエフェクチュエーションの論 理の適用可能性を検討するために,マーケター の意思決定に関するプトロコルデータを分析対 象とした。これは,市場創造経験のあるマーケ ターを調査対象者として選定し,彼/彼女が マーケターとして直面しうる課題にどのように 対処するかを,一連の意思決定問題に対する発 話データの分析によって明らかにするものであ る。分析対象となる発話プロトコルデータは, 調査対象者が実験問題を考え,意思決定をする 際に,頭に思い浮かんだ言葉を継続的に発話し てもらう,「シンクアラウド(think-aloud)」と 呼ばれる方法で収集された。こうした意思決定 と同時に発話されたデータを用いることは,意 思決定後に振返って発話を求める回顧的なプロ トコルデータよりも,最終的な決断に至るまで の意思決定段階について,より多くの洞察を もたらすことが指摘されている(Kuusela and Paul 2000, p.387)。

 調査対象者の発話は,録音した上でコーディ ングを行い,それが「コーゼーション(伝統的 なマーケティング・マネジメント)に基づく意 思決定」,「エフェクチュエーションに基づく意 思決定」,あるいは「それ以外」のいずれに該

当するかを分析した。さらに発話の内容を質的 にも分析することで,マーケターに固有のエ フェクチュエーションに基づく意思決定の様式 を検討した。

 

2. 調査対象の選定

 調査対象者の選定基準としては,第一に,マー ケターとしての優れた実績を持つこと1),第二

に,マーケティング責任者として新市場創造の 経験を持つこと,を条件とした。新市場創造は, 新ブランドの導入,あるいは既存ブランドのリ ポジショニングのいずれかによって,新規顧客 を獲得したこと,と定義した。

 本研究で用いるデータは,条件を満たす3名 のマーケターを対象としたパイロット調査から 収集されたものである(調査期間:2017 年 10 月 13 日~ 23 日)。調査対象者は,いずれも大 手消費財メーカーのマーケティング責任者とし て,新市場創造の実績を持つ人物であり,マー ケターとしての経験年数は平均 20.3 年であっ た。調査対象者には,1 人あたり 1.5 ~ 2 時間 の調査に協力をいただき,架空の企業にマーケ ティング部長として就任した,という設定で, 8つの実験問題に対する意思決定を依頼した。  

3. 実験資料

 意思決定の問題群は,先行研究(Sarasvathy et al . 1998, Sarasvathy 2001)で用いられた実 験資料を,マーケターの問題領域に合わせて一 部修正したものを用いる。まず調査対象者には, 「株式会社マーケティング・ファースト」とい

参照

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