Title
An adiponectin paralog protein, CTRP6 decreased the
proliferation and invasion activity of oral squamous cell
carcinoma cells:possible interaction with laminin receptor
pathway( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
波野, 公香
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1165号
Issue Date
2021-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/81574
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名 ( 本 籍 ) 波 野 公 香 (岐阜県) 学 位 の 種 類 博 士(医学)
学 位 授 与 番 号 甲第 1165 号 学 位 授 与 日 付 令和 3 年 3 月 25 日
学 位 授 与 要 件 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 目 An adiponectin paralog protein, CTRP6 decreased the proliferation and invasion activity of oral squamous cell carcinoma cells:
possible interaction with laminin receptor pathway
審 査 委 員 (主査)教授 清島 真理子 (副査)教授 中島 茂 教授 千田 隆夫 論 文 内 容 の 要 旨 【緒言】 口腔扁平上皮癌は口腔癌の大部分を占めており,進行性の増殖・浸潤およびリンパ行性転移を伴う ことが多いことから5年生存率は 40~60%と,予後不良である。このため,口腔扁平上皮癌患者の予 後を改善するために新しい治療アプローチが望まれている。 アディポネクチンは脂肪組織によって分泌されるホルモンであり,生理学的には抗炎症剤としての 役割を果たしているが,近年種々の癌に対して腫瘍抑制因子として機能することが明らかになりつつ ある。また,そのアディポネクチンのパラログの一つである C1q/tumor necrosis factor–related protein-6(CTRP6)にも腫瘍抑制機能に関する報告がされているが,口腔癌において CTRP6 がどのよ うに機能するのかということは明らかになっていない。本研究では,CTRP6 の口腔扁平上皮癌におけ る生物学的意義を調べるために以下の研究を行った。
【対象と方法】
① Bac to Bac Baculovirus 発現系を用いて His タグ付き CTRP6 を生成し, 口腔扁平上皮癌細胞 SAS 細胞とヒト赤芽球白血病細胞 K562 細胞を用いて CTRP6-His が結合する分子の発現を蛍光免疫染 色および cell analyzer にて評価した。SAS 細胞と K562 細胞において同様の分子の発現を認めた ため K562 細胞の expression library を用いて CTRP6-His と結合する分子の cDNA をクローニン グした。
② ①の結果,37LRP(37laminin receptor precursor)cDNA がコードするタンパク質が単離されたた め,37LRP-FLAG cDNA をトランスフェクトしたヒト胎児腎細胞 293FT 細胞の溶解物もしくはコン トロール細胞の溶解物と CTRP6-His をインキュベートし,免疫共沈降アッセイを行ったのち western immunoblotting を行い CTRP6-His と 37LRP-FLAG の結合の有無を確認した。
また,高結合プレートを laminin 溶液でコーティングして 37LRP-FLAG cDNA をトランスフェクト した 293FT 細胞の溶解物と CTRP6-His をインキュベートして 37LRP-FLAG と laminin の結合量の 変化を測定し,CTRP6-His が 37LRP と laminin の結合を阻害するか検討した。
③ 1×104個の SAS 細胞を CTRP6-His 存在下または非存在下において培養し,72 時間後に生細胞数を
比較検討した。また,1×105個の SAS 細胞を浸潤チャンバーの上部区画に入れて CTRP6-His 存在
下または非存在下においてインキュベートし,72 時間後にフィルター下面の細胞数を比較検討し た。
④ 免疫不全マウスである SCID-Beige (CB17.Cg-PrkdcscidLystbg-J/CrlCrlj)マウスに SAS 細胞を 異種移植し, CTRP-His を接種したうえで 3 週間後に投与群と非投与群の腫瘍増殖を比較検討し た。 【結果】 蛍光免疫アッセイにより,CTRP6-His が SAS 細胞の細胞膜表面に発現している分子に結合しているこ とが明らかになり,発現クローニングによって CTRP6-His と結合する分子の同定を試みたところ異な るサイズの cDNA を有する 2 つのクローンが単離された。いずれも 37LRP/67LR cDNA であり,一方は ATG 開始コドンの 54bp 上部領域から,もう一方は 24bp 上部領域からコードした。そこで,CTRP6 が 37LRP と結合していることを確認し,さらに 37LRP に対して競合的に結合することで 37LRP と laminin との結合を阻害することを明らかにした。
CTRP6-His を SAS 細胞に添加することで,CTRP6-His は濃度依存性に増殖活性,浸潤活性を有意に抑 制した。また,CTRP6-His は SCID-Beige(CB17.Cg-PrkdcscidLystbg-J/CrlCrlj)マウスにおいて,濃度 依存性に SAS 細胞の腫瘍形成性を有意に抑制した。 【考察】 37LRP との間に前駆関係が存在すると考えられている 67LR(67laminin receptor)は基底膜の主成 分である laminin に対する非インテグリン細胞表面受容体である。また,67LR は様々な癌で過剰発 現していることがわかっており,laminin との相互作用によって癌細胞の細胞接着・遊走・増殖に関 与して侵襲性や転移性の可能性を上昇させていると考えられている。今回の研究において,CTRP6 は laminin-laminin receptor の結合を阻害し,さらに口腔扁平上皮癌細胞の増殖・浸潤を抑制すること が明らかになったが,おそらく CTRP6 が laminin receptor と結合することで口腔扁平上皮癌細胞と laminin の結合を阻害し,口腔がんの進行を抑制すると考える。以上のことから,67LR と laminin の 結合を阻害することは癌の進行を阻止するためのアプローチと考えられ,CTRP6 を用いることで口腔 癌の治療に役立つ可能性がある。 【結論】 内因性物質である CTRP6 は laminin receptor に対するアンタゴニストとして作用することで,口 腔扁平上皮癌の進行を抑制する可能性が示唆された。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 波野公香は,CTRP6 が口腔扁平上皮癌細胞において細胞膜表面に発現している laminin receptor に結合することで laminin-laminin receptor の結合を阻害し,口腔扁平上皮癌細胞の増殖 能・浸潤能を抑制している可能性を示した。
本研究結果は,CTRP6 が laminin receptor のアンタゴニストとして作用することが口腔扁平上皮癌の 進行を抑制するうえで重要であることを示唆し,今後の口腔腫瘍学の発展に少なからず寄与すると認 められる。
[主論文公表誌]
Kimika Hano, Kiichi Hatano, Chiemi Saigo, Yusuke Kito, Toshiyuki Shibata, Tamotsu Takeuchi An adiponectin paralog protein, CTRP6 decreased the proliferation and invasion activity of oral squamous cell carcinoma cells: possible interaction with laminin receptor pathway. Mol Biol Rep, 46:4967-4973(2019),doi:10.1007/s11033-019-04947-9