・原 著
嗜姫藤、銘63巻磯讐榊
7番染色体上に存在するcDNA(pLMM1)を用いた
結節性硬化症家系における分子遺伝学的検討
東京女子医科大学 小児科学(主任:福山幸夫教授)
モリタ レイコ サイトウカ ヨ コ ハラ ミ チ コ イマノ マ キ森田 玲子・斎藤加代子・原 美智子・今野 真紀
オオサワマ キ コ ハラダ タカヨ みしま まゆみ スズキ ハルコ大澤真木子・原田 隆代・三島 眞弓・鈴木 陽子
シシクラ ケイコ ヒラヤマ ヨシト フクヤマ ユキオ宍倉 啓子・平山 義人・福山 幸夫
(受付 平成5年6月23日)
Molecu霊ar Genetic Study of Tllberous Sclerosis Using c・DNA pLMM1,
Located on Chromosome 7
Reiko MORITA, Kayoko SAITO, Michiko HARA, Maki IMANO, Makiko OSAWA,
Takayo HARADA, Mayumi MISHIMA, Hamko SUZUKI, Keiko SHISHIKURA,
Yosllito HIRAYAMA and Yukio FUKUYAMA
Department of Pediatrics(Director;Prof. Yukio FUKUYAMA) Tokyo Women’s Medical College Four patients with tuberous sclerosis(TSC)and their fam童lies were studied using pLMM1,which is located on chromosome 7, to obtain restriction fragment length polymorphisms(RFLPs)by Southern blotting and to detect the pLMMl mutation. In one of the families, the TSC patient had a younger brother with congenital myotonia of Becker type(CM・B). TSC has heterogeneity and its gene loci exist on chrgmosomes 9(TSC1),11(TSC2), and 12(TSC2), whereas the locus of CM−B is presumed to be on 7. There have begn no reports of families with both TSC and CM・B patients, to date. Our results suggest the possibility of a contiguous gene syndrome of TSC and CM−B in one of the 4 families studied.緒 言
結節性硬化症(TSC:tuberous sclerosis com.
plex)は,顔面の血管線維腫(従来,誤って皮脂
線腫といわれてきたD),網膜過誤腫,爪周囲線維
腫,脳の結節および石灰化,その他,腎,心,肺
の小結節などを特徴とする多発性全身性過誤腫症
で,神経皮膚症候群である.従来,てんかん,精
神遅滞,顔面血管線維腫がTSCの3主徴と言わ
れてきたが,実際には3主徴がそろうのはTSC
の29%にすぎず1),現在ではGometzの診断基準2)
が一般的である.
TSCの遺伝子座はABO血液型の遺伝子座の
存在する9番染色体長息(9q34)であるという報
告3)4)の他に11q14−11q235),12q6),147)などの報告がある.これまでの研究でTSCは9q34を遺伝子座
位とするTSC18),11q14−11q23を遺伝子座位とす
るTSC28),12qを遺伝子座位とするTSC39)に分
類されている.一方,TSC患者の顔面血管線維腫
からpLMMIというcDNAが単離され(1990
年),その対応する遺伝子は染色体7番上に位置す
ることが判明している10)11).今回,TSC4家系において, ABO血液型とTSC
との関連,および,7番染色体上のpLMM1と
TSCとの関連について検討したので報告する.4
家系中1家系のTSC推定患者が染色体7番に連
鎖があるといわれる先天性筋強直症一Becker
型12)13)(以下CM−B型)にも罹患しており,本家
系における隣接遺伝子症候群14)の可能性も含めて
考察した.対象および方法
1.対象
対象はTSC4家系で,家族構i成員の臨床症状お
よび所見の有無を,Gometzの診断基準項目別に
表1に記した.
1)家系A
両親に血族結婚はなく,TSC患者の父,母,姉
は正常表現型を呈していた.TSC患者は18歳男子
で,TSCの3主徴を認めた.染色体は正常核型46
XYであった..TSC患者の弟は15歳男子でCM−B
型と診断された15>.6歳頃から徒競走のスタート
が遅れる,13歳頃からボールを蹴る力が弱いこと
に気付かれ,15歳時に当科受診し,grip myotonia,
percussion myotoniaの存在,筋生検上, type II
線維の肥大および散在性小径線維の存在を認め
た.体幹部に白斑を認め,一親等親族にTSCが存
在することからGometzの診断基準2)上, TSCと
推定された.2)家系B
両親に血族結婚はなく,正常表現型であった.
TSC患者は7歳男子でTSCの3主微を認めた.
染色体は正常核型であった.
3)家系C
両親に血族結婚あり,父方祖父と母方曾祖母が
同胞で,かつ,父親の祖父母の一方と母方祖父の
表1 対象症例における症状・所見の有無 臨床症状および所見 家 系A
家 系B
家 系 C 家 系 D (Gometzの診断基準項目) 父親 母親 長女 長男 次男 父親 母親 長男 父親 母親 長男 次男 父親 母親 長男 次男 1確定 1 皮質結節(CTまたはMR)ND ND ND
十 一ND ND
十ND ND
十 一 一 一 十 2 脳室上衣下結節@(CTまたはMR)
ND ND ND
十 一ND ND
十ND ND
十 一 一 十 3 網膜過誤腫ND ND ND
十ND ND
十ND ND
十 } 一 一 一 十 4 顔面血管線維腫 } 一 一 十 一 一 十 一 一 十 一 一 一 一 十 5 爪線維腫』 一 一 } 十 一 一 一 一 皿 一 十 一 一 } 一 一 6 前額/頭皮線維腫 一 } 一 十 一 一 皿 一 一 一 一 一 『 一 』 7 多発性腎血管筋脂肪腫ND ND ND
一 } .NDND
一ND ND ND ND ND ND ND
十 II推定 1 点頭てんかん 一 一 一 十 一 一 一 十 一 } 一 一 一 一 2 ミオクロニー,強直, ネいし脱力発作 一 一 } 十 一 一 一 十 } 皿 十 十 一 } 一 十 3 色素脱失斑 一 一 十 十 一 十 一 十 十 一 一 十 4 隆起革様皮 一 一 十 一 一 一 } 一 } 一 一 一 一 十 5 乳頭周囲網膜過誤腫ND ND ND
一ND ND
一ND ND
一 一ND
ND
ND
6 歯肉線維腫 一 } 皿 一 一 一 一 一 } 一 一 』 一 一 7 歯エナメル陥凹 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 } 一 一 8 多発性腎腫瘍ND ND ND
一 一ND ND
一ND ND ND ND ND ND ND
一 9 腎嚢胞ND ND ND
一ND ND
一ND ND ND ND ND ND ND
一 10 心横紋筋腫ND ND
ND
一 一ND ND
一ND ND ND ND ND ND ND
一 11 肺リンパ管筋腫症ND ND ND
一 一ND ND
一ND ND
一 一ND ND ND
一 12 X線上の蜂巣状肺ND ND ND
一 一ND ND
一 ND.ND
一ND ND ND
一 13 喫状皮質一皮質下石灰化ND ND ND
十 一ND ND
十ND ND
一ND
ND ND
一 14 多発性皮質下髄鞘低形成ND ND ND
一 一ND
ND
十ND ND
一 一ND ND ND
一 15 1親等の近親者に本症 十 十 十 一 十 十 十 ㎜ 十 十 一 十 十 十 十 一TSC診断
bM−B型 確定 確定m定
確定 確定 確定 確定 *ND:not determined(未検査)祖父母の一方とが同胞であった.父と母は正常表
現型であった.TSC患者は13歳男子でTSCの3
主徴を認めた.TSC患者の弟は12歳男子で,てん
かん,精神遅滞,白斑を認め,一親等親族にTSC
が存在することからGometzの診断基準2)上,
TSCと推定された.
4)家系D
両親に血族結婚はなく,父,母,兄は正常表現
型を呈した.TSC患者は5歳男子で, TSCの3主
徴を認めた.染色体は正常核型であった.
2.方法
1)家系図およびABO血液型の確認
ABO血液型(表現型)を母子手帳または献血手
帳から確認した.家系図を作成し,ABO血液型
(遺伝子型)を類推した.
2)末梢リンパ球DNA分析
末梢血を採取しヘパリンを加えて凝固を防止
し,成書の方法に従い高分子量DNAを調製し
た16).(1)サザンプロット法
家系A,Bに行った.サンプルを制限酵素Msp
Iで処理し,0.7%アガロースゲルで泳動後,サザ
ン・ハイブリダイゼーションを行った.pLMM1
を32Pでマルチプライム法でラベルし,プローブ
として用いた.(2)PCR法
家系C,Dに行った. pLMM1の5’側と3’側で
合成された表2のプライマーを用いて,サンプル
をPCRで増幅し,バンドの有無を調べた.
PCR反応はPerkin Elmer Cetus社製のDNA
表2 プライマーの塩基配列およびPCR反応
プライマーF:CAGCCTCCACATTCAGAGGCAT
R:AGGAGAGCTCTATGCAGCGTGT
反応系(100μ1) 10Xバッファー 10X dNTP プライマーF プライマーR 滅菌精製水DNA
Taq polymerase 10μ1 2μl lμ1 1μ1 83μ1 2μ1 1μ1PCR方法
Di鱒1回
のlil霧]胴
3)72℃ 8分
サーマルサイクラーを用いて表2のように行っ
た.白血球を調製して得たDNA2μ1に,表2のプ
ライマーを各1μ1,Taq polymerase 1μ1,10x
・ミッファー(100mM Tris−HC1, pH 8.3,500mM
KCI,15mM MgC12,0.01%(W/V)gelatin)10μ1
を加え,合計100μ1として,94℃ 5分,60℃ 1
分,72℃ 10分の反応により1本鎖DNAに変性
させた.次に94℃ 1分(変性反応),60℃ 1分
(アニーリング反応),72℃ 2分(伸長反応)の
3ステップを29回繰り返し,最:終伸長反応を72℃,
8分行った.PCR反応で得られたPCR産物10μ1
を1.2%アガロースゲルで電気泳動し,エチジウム
ブロマイド染色を施行した.
結 果
1.ABO血液型の確認
家系Aでは,TSC確定患者,父,母,姉の血液
型(表現型)はA型であり,弟のTSC推定患者の
み0型であった.家系CではTSC患者と,弟の
TSC推定患者はAO型,父親は00型であった
が,母親の遺伝子型をAA, AOのいずれであるか
を推定できなかった.家系B,Dの家族構成員は
全員0型であった.
2.末梢リンパ球DNA分析
家系図,血液型,サザンプロット法の結果,お
よびPCR法の結果を図に示した.
サザン法を行った家系AではIII−2のTSC患者
のみ800bpのバンド(ホモ)が検出されたが,患者
の弟(III・3)のCM−B患者,姉(III−1),母親(II−2)の3人はいずれも1kb,800bpの2本のバンド
(ヘテロ)が検出された.家系BではTSC患者
(III−1)とその両親(II−1, II・2)の3人はいずれも1kb,800bpの2本の・ミンド(ヘテロ)が検出され
た.PCR法を行った家系CではTSC患者(V−1)
とその弟(V−2)のTSC推定患者およびその両親
(III−4, IV−4)の4人はいずれもPCR産物が正常の
530bpであった.家系Dも同様にTSC患者(III−
3),その兄(III−2)および両親(II−1, II−2)の4人はいずれもPCR産物が正常の530bpであった.
考 察
TSCはてんかん,精神遅滞,顔面血管線維腫を
1
家系A
n 1δ
尿毒症 2AO
禿頭(÷) 高血圧AO
1kb/800bpm
l
CM−B型 1㎞。。。b台/Al亀。。。bp. 800bp/800bp 1 糖尿病 H 家系B 十 心 梗塞 董,士
脳卒中00
1kb/800bp家系D
H○
00
1kb1800bp O.0 530bp 1 2 300
530bp 1m
.・偏bp
m
00 00 530bp. 530bp 家系C 1 † 1†2
† いず II 7 6 □ 5 かは00 † † 3† 4† † †AO
00
80代 † 4 III 3び
2 ††9 10
1 †00
† †AQ
1 .† † † † †OAO
00 AO A
(5る
00AOAOAO A A A
00 00. 6 QO AO AO OO †V
A
AO OO
11 12 A AO AO 40代 事故. 心臓病13451617
W
幼時幼時幼時AO 5歳 0 80代 歳・・Q・・…A・・誰1萎・・
530bp00
530bpAO
B A凸
AB A 1 2/贈 照 。。 BAAA
530bp 530bp図 家系図,血液型,サザンプロット法およびPCR法の結果
□は男性,○は女性,■はTSC確定患者,屠1はTSC推定患者. AA, AOは血液型A型の遺伝子
型.BB, BOは血液型B型の遺伝子型.00は血液型0型の遺伝子型. A, Bは血液型の遺伝子型 の不明なもの. 家系A:III−2はTSC確i定患者, III・3はTSC推定患者であると同時にCM・B型(Becker型一先天性 筋強直症).血液型は,III・3のみ00型で, H 4,【1・2はAO型, IH・1, III−2はAO型かAA型か推定 できなかった.pLMM1をプローブとしたサザンプロット法の結果はIII−2のみ800bpのホモ, III−1, III−3, II−2の3人は1kb,800bpのヘテロ. 家系B:III・1はTSC確定患者.血液型は, II・1, II−2, IIL 1が00型. pLMM1をプローブとしたサ ザンプロット法の結果はII・1, II−2, III−1の3人が1kb, r 垂O0bpのべテロ.. 家系C:III・1はTSC確定四川でIII・2はTSC推定患者.血液型の遺伝子型は, V・1, V・2がAO型, III−4が00型, IV・4はAAかAOか推定できなかった. pLMM1の両端をプライマーとしたPCR反 応の結果,III・4, IV・4, V・1, V−2の4人において530bpの正常のPCR産物が得られた. 家系D:III・3はTSC確定患者.血液型は,』II−1, II・2, III−2, III−3が00型. pLMM1の両端をプラ イマーとしたPCR反応の結果, II・1, IL2, III−2, III−3の4人において530bpの正常のPCR産物が 得られた.3大主徴とするが,その病理は組織の発育,分化
の障害による過誤腫様組織である.脳,網膜,肺,
心,腎などの多器官に発症し,同一組織内に1つ
以上の別組織あるいは判定困難な組織を生じ,多
発性全身性過誤腫症に属する疾患である.遺伝形
式は常染色体性優性遺伝であるが,新たな突然変
異によって発症した即発例が過半数を占める17),
また3主徴のそろわない不全型が多く,原因遺伝
子の究明が難航していた.1987年,Freyerら(英
国)は26個の多型マーカーを用いてTSC家系で
連鎖解析を行い,ABO血液型遺伝子座に関して
Lod scoreが最高値3.85とTSCに強い連鎖を有
し,TSCの遺伝子は9番染色体の長腕(9q34)上
にあると報告した3).またConnorら(英国)も同
年,‘オンコジンabl(ネズミ白血病ウイルスAbe1−
son株)を用いてTSCの遺伝子は9q34にあると報
告した4).一方でTSCとABO型とは関連がない
という報告もある18).1990年,Smithら(米国)は
15家系を対象として,34の多型マーカーを用いて
連鎖分析を行いTSCは11q14−11q23に連鎖があ
ると報告した5).また1991年,Fahsoldら(独)は
染色体異常t(3;12)(p26.3;q23.3)をもつ
TSC患老からヒントを得て12qに連鎖があるこ
とを報告した6).TSCにはgenetic heterogeneity
があり7)19),現在TSCの遺伝子座はTSC1(9q),
TSC2(11q), TSC3(12q)の3つが考えられてい
る8)9).従って国により,あるいは家系により遺伝
子座が異なる可能性もある.我が国では9番染色
体異常(Cバンド異常)をもつ新生児TSC例の報
告があり,その患者においては9番染色体と本症
遺伝子座との関連が推測されている20}.
一方,我が国ではTSC患者の顔面血管線維腫
からcDNAが単離された.このcDNAは全長704
bpであり, pLMM1と名付けられている.この
pLMM1は染色体7番上に存在するinsulin・like
growth factor binding protein 3(IGFBP−3)遺
伝子の3’非翻訳領域cDNAと同一であった10).
IGFBP−3の遺伝子座は染色体7番上のinsulin−
hke growth factor binding protein 1(IGFBP−1) の遺伝子座に隣接している21)22).今回我々はこの7番染色二上の遺伝子cDNA
であるpLMM1を用いてサザン法による多型の検
討およびPCR法による遺伝子異常の検討および
血液型の確認を行った.
1.血液型
家系AではTSC確定患者の血液型がA型で,
TSC推定患者の血液型が0型であった. TSC推
定患者が真のTSCであるならぽ,本家系では血
液型とTSCとの連鎖はないと考えられ,また
TSC推定患者がTSCでないならば,連鎖の可能
性があった.家系Bでは家族構成員の血液型が全
員0型であったので,TSCと血液型との連鎖を
論ずることができなかった.家系CではTSC確
定患者とTSC推定患者の血液型がAO型であっ
たので,TSC推定患者をTSCと判断すると,本
家系におけるTSCと血液型との連鎖の可能性が
考えられるが,TSCでないと判断すると,本家系
におけるTSCと血液型との連鎖の可能性はない
と考えられた.家系Dでは家族構成員の血液型が
全員0型であったので,TSCと血液型との連鎖
を論ずることができなかった.
2.DNA分析
1)サザンプロット法
家系Aでは泳動・ミンドのパターンが患者(III−
2)のみ1本(ホモ)で,姉(III−1),弟(III−3), 母親(II−2)は2本(ヘテロ)であった. III−3はTSC推定患者であり,TSCである可能性とTSCでな
い可能性があった.もしIII−3がTSCでないとすれ
ぽ,III−2のみ泳動パターンが異なるという事実か
ら,本家系におけるTSCとpLMM1との連鎖の
可能性が考えられた.しかし,III−3がTSCである
とすれぽ,III−2と同じパターンをとるはずであり,
この点から,家系AでのTSCとpLMM1との連
鎖は証明し難いと思われた.家系Bでは家族3人
のパターンは同一であり,TSCとpLMM1との連
鎖を云々することはできなかった.TSCは症状が
多彩であるため,TSC推定患者をTSCと判断す
るか,TSCでないと判断するかによって結論が異
なる危険性があると考えられた.
2)PCR法
家系Cの4入のPCR産物は正常の530bpであ
り,pLMM1の遺伝子に欠失はないと考えられた.
家系Dでも同様に家族構成員4人のPCR産物は
正常の530bpであり, pLMM1の遺伝子に欠失は
ないと考えられた.
3.隣接遺伝子の可能性
家系AのTSC確定患者の弟はTSC推定患者
で,しかもCM・B型患者であった.先天性筋強直
症(CM)は1876年にThomsenにより初めて報告
され,現在,先天性筋強直症(Thomsen型)(以
下CM−T型)と呼ばれている23). CM・T型は常染
色体優性遺伝形式をとりその遺伝子座は筋強直性
ジストロフィーの遺伝子座の存在する19番染色体
とは関連がないということが判明している24).こ
れに対し,後にBeckerによってまとめられた
CM−B型はCM−T型より発症が遅く,症状も重い
ことが多く,常染色体劣性遺伝形式をとるが孤発
例も多い25).CM・B型が塩素イオンチャンネルの
欠損によって生じるとすれぽCM−B型の遺伝子
座は7番染色体に位置する可能性があるといわれ
ている12)13).CM−B型の頻度は5万人に1人であ
る.我が国ではCM・B型の報告は少なく, CM−B
型とTSCが同一家系内に発症したという報告は
ない26).同一家系内に2つの稀な疾患が存在する例とし
七telecanthus cleft lip/cleft palate, glandularhypospadiasを特徴とするBBB症候群(遺伝子
座はX染色体上)とtype l hereditary sensory
motor neuropathy(HSMN, genetic heter−
ogeneityが存在)の兄弟例があり,隣接遺伝子症
候群の可能性が示唆されている27).また,Duchen−
ne型筋ジストロフィー(DMDと略)に慢性肉芽
腫症,McLeod red cell phenotype,網膜色素変
性症を合併していた男子の報告も各疾患の責任遺
伝子が隣接することを示唆しており,この症例は
DMDの責任遺伝子発見の一役を担った28).
TSCの頻度は出生1万当り0.46人(竹下ら,
1984)であり,TSCの突然変異は生殖細胞10万個
のうち2.5個に生じると言われている
(McKusick,1992).家系Aにおいては, TSC推
定患者(III・3)をTSCと判断すれぽ, III−3はCM−B
型のホモ劣性遺伝子とTSC遺伝子を有すること
になる.また,TSC推定患者(III−3)をTSCでな
いと判断すれぽ,同一家系内に,TSC患者とCM−
B型患者が同胞発症したと考えられる.いずれに
しても,このような状況が偶然に生じたと考える
のは,その確率の低さからいって無理があると思
われる.家系AにおけるTSCの遺伝子座が7番
染色体面にあって,CM−B型の遺伝子座と隣接し
ている隣接遺伝子症候群14)の可能性も考えられ貴
重な症例と思われた.
結 論
7番染色体上の遺伝子cDNAであるpLMM1
を用いて,TSC 4家系とpLMM1との関連を検討
した.TSCとpLMM1との関連はないと考えられ
た.家系AはTSCとCM−B型の兄弟発症例で
あった.従来,同一家系内にTSC確定患者と
CM・B型患者が兄弟発症したという報告はなく,
本家系におけるTSCの遺伝子座がCM−B型の遺
伝子座に隣接している可能性もあり興味深いと思
われた.ご指導いただいた東大農学部農芸化学科,生物化学
教室の小野寺一清教授,高橋哲夫助手に深謝致しま
す.本稿を恩師福山幸失教授退職記念論文として捧げ
ます,本研究は,森田玲子が助成を受けた,平成3年度科
学研究費補助金(奨励研究A:課題番号03770604結節
性硬化症の発症に関する遺伝子工学的基礎研究)に
よって行われた.本文の要旨は第38回日本人類遺伝学会(1993年10月
21日∼23日,東京)において発表した.
文 献
1)大澤真木子,金子信子:神経疾患.小児科臨床
46:1841−1878, 19932)Gometz MR:Tuberous・sclerosis complex
(TSC), diagnostic criteria,(abstracts)Tuberous Sclerosis Association of Great Britain’s 5th International Medical Symposium:18−21,1991 3)Fryer AE, Chalmers A, Connor J皿et al: Evidence that the gene for tuberous sclerosis is on chromosome 9. Lancet 1:659−660,1987 4)CoRnor JM, Pirrit LA, Yates JRW et al: Linkage of the tuberous sclerosis locus to a DNA polymorphism detected by v・ab1. J Medi− cal Genetics 24:544−546,1987 5)Smith M, Smalley S, Cantor R et al:Map・ ping of a gene dete㎜ining tuberous sclerosis to human chromosome llq14−11q23. Genomics 6:105−114, 19906)Fahsold R, Rott HD, Lorenz P et a1:Evi− dence for a tuberous sclerosis locus on chromo− some 12.(abstracts)Tuberous Sclerosis Associ− ation of Great Britain’s 5th Intemational Medi− cal Symposium:34,1991 7)Kandt RS, Pericak・Vance MA, Hung WY et al: Linkage studies in tuberous sclerosis chro− mosome gPor maybe 14!Ann N Y Acad Sci 615 :284−297, 1991 8)Janssen LAJ, Sandkuyl LA, Merkens EC et al: Genetic he亡erogeneity in tuberous sclero− sis. Genomics 8:237−242,1990 9)Fahsold R, Rott H・D, Lorenz P=Athird gene locus for tuberous sclerosis is closely lin一 』ked to the phenylalanine hydroxy玉ase gene 王ocus. Hum Genet 88:85−90,1991 10)Takahashi T, Monica・Masuda L, Ito S et al: Biochemical. study of cells cultured from a patient with tuberous sclerosis. J Dermatol 19:909−913, 1992 11)小野寺一清,高橋哲夫,伊藤真一:結節性硬化症 患者由来の理化細胞に特異的に発現している cDNAの性質.厚生省特定疾患神経皮膚症候群調 査研究班平成元年度研究報告書:84−86,1990 12)Steinmeyer K, Ortlan〔l C, Jentsch TJ=Pri・ mary structure and functional expression of a developmentally regulated skeleta玉musc}e chloride channe董. Nature 354:30}304,1991