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窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功 利用統計を見る

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(1)

窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功

著者

今上 益雄

著者別名

Masuo Imagami

雑誌名

東洋法学

36

2

ページ

83-110

発行年

1993-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003511/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功

目  次 一 二 三 四 五 はじめに 三つの下級審判例 学説のスケッチ 事後強盗罪の性格・構造 事後強盗行為に共同加功した非窃盗犯人の罪責

東洋法学

八三

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窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功 八四

はじめに

 窃盗犯人でない者︵共同正犯でないことはもとより、教唆犯、幣助犯でもない者︶が窃盗犯人と共謀のうえ、窃盗 犯人が財物の取還を拒ぐなどの目的︵刑法二三八条所定の目的︶をもって被害者に暴行・脅迫を加えるのに加わった場 合、どのような刑事責任に問われるのであろうか。  要約していえば、この﹁窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功しという問題は、従来、一般には、必ずしも意        ハま  識的に論じられてこなかったものである。ところが、比較的最近になって、被害者が事後強盗行為によって傷害を負 った事案で、結論を異にする二つの下級審判例が出たこともあり、にわかに注目されるに至り、多くの論稿のほか、        ハ レ 一九九一年︵平成三︶年度の日本刑法学会におけるワーク・ショップの一つにも取り上げられるに至った。  すなわち、右下級審判例は、事後強盗罪をもって﹁窃盗犯人﹂を主体とする身分犯であると解する見地から、非窃 盗犯人に対して刑法六五条を適用した点で共通するものの、一方は、本罪を真正身分犯と解し、同条一項のみを適用        ハヨツ して強盗致傷罪の共同正犯として処断した大阪高裁昭和六二年七月一七日判決と、他方は、本罪を不真正身分犯と解 して、同条一項により強盗致傷罪の共同正犯の成立を認めたが、非窃盗犯人は窃盗という身分がないため、同条二項       ハま によりその刑は傷害の限度にとどめるべきものとした東京地裁昭和六〇年三月一九日判決が、それである。  したがって、この問題は、予備罪などと同じく、実務が学説の展開にインパクトを与えた顕著な例であるが、論議 が活発となった背景として次のことが考えられる。

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 一つには、右下級審判例がいうように、事後強盗罪を身分犯と解すべきなのか、身分犯であるとすれば、それは真 正身分犯なのか不真正身分犯なのか、また、事後強盗罪の実行行為、それは、暴行・脅迫を加えることだけなのか、 それとも財物を窃取することを含むのか、という刑法各論上の問題であると同時に、今一つには、身分犯または結合 犯の概念とか、共犯と身分、さらには承継的共同正犯などといった刑法総論上の問題にも関係する多岐の論点を含ん でいることにある。  この点の解明は、事後強盗罪の性格・構造をどのように把握するかが前提となり、それと共犯と身分及び承継的共 同正犯の問題との関係をいかに理解するかにかかっているといえよう。  そこで、本稿においては、この問題に関する下級審判例と学説を概観しつつ、判例理論の統一の観点にも意を用い ながら、わたしなりの若干の考え方を示そうとするものである。 ︵1︶ ︵2︶

43

 同二七二号一五五頁。なお、本判決と同旨のものとして、すでに新潟地判昭和四二年一二月五日判例時報五〇九号七七  判例時報一二五三号一四一頁。 下参照。  ワーク・ショップにおける報告・コメントをめぐる討論の要旨については、刑法雑誌三二巻三号︵平成四年︶四九四頁以 れている程度であった。  判例に先立って、この問題を意識的に論じたものとしては、藤木英雄﹁注釈刑法各則@﹂︵昭和四一年︶工七頁が知ら 頁がある。 東 洋 法 学 八五

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窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功 八六 二 三つの下級審判例  窃盗犯人でない者が事後強盗行為へ共同加功した場合の擬律については、数としては三つの下級審判例があるが、 内容的にみれば、二つに大別することができる。  いささか引用が長きに失する嫌いはあるが、その重要性にかんがみて若干のコメントを加えつつ、認定事実及び判 旨をスケッチすれば、以下のとおりである。  0 ゆ事後強盗罪を不真正身分犯と解し、共犯と身分の問題として刑法六五条︻項及び二項を適用したケース リーディング・ケースとなったのは、①昭和四二年新潟地裁判決である。本件判決の認定によれば、事案の概要は、 次のようなものであった。少年Aほか三名と成人のK及びNは、昭和四二年五月一三日夜、新潟市内にドライブに出 かけた途中、後輪がパンクしたので、仮睡中のK及びNを除く少年四名において、他人の車から同型の左後輪タイヤ を窃取し、車にとりつけようとした。しかし、被害者Yがこれを発見し、車外の騒ぎに気づいて事情を知って介入し たKを窃盗犯人の一員として逮捕しようとしたのに対し、Aが脅迫を加えた。Yがこれにひるんだ隙に被告人らが車 で逃走しようとしたところ、なおもYが被告人らを逮捕しようとして車の後部ナンバーに足を乗せ、アオリに手をか けて飛び乗った。これを知りながら、Aは窃盗共犯者とともに逮捕を免れる意図で、K及びNはAら窃盗犯人の逮捕 を免れさせる意図で、Yの転落を予期しつつあえて自動車を疾走させるという暴行を加えることを共謀し、パンクし たまま蛇行する車体の動揺によってYが車体から踏みはずして道路上に転落し、同人に全治一〇日間の傷害を負わせ

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た、というものである。なお、K及びNは、タイヤの窃取には関与していなかったと認定された。この事実のもとで、 新潟地裁は、K及びNにつき、﹁刑法第六五条第一項、第二四〇条前段、第六〇条に該当するが、被告人らには窃盗 犯人の身分がないので、同法第六五条第二項により傷害の限度において科刑する﹂との判断を示し、K及びNを懲役 一年執行猶予三年の刑に処した。  本判決では、被害者Yが傷害を負っているため、刑法二四〇条前段の適用が明示されているが、﹁窃盗犯人の身分 がない﹂という文言から窺い知ることができるように、その適用にあたっては、同壬二八条がその前提になっている ことは疑いがない。そして、同六五条一項により強盗致傷罪の共同正犯の成立を認めたが、K及びNに窃盗犯人とい う身分がないため、同条二項によりその刑は傷害の限度にとどめるべきものとしているところからみて、事後強盗罪 を不真正身分犯として把握していることがみてとれるのである。  これと同じく、事後強盗罪を不真正身分犯と解し、窃盗犯人でない者には刑法六五条二項を適用したものが、②昭 和六〇年東京地裁判決である。事案の概要は、次のようなものであった。被告人1は、昭和五九年七月七日東京都内 の公園で、被害者Nの財布から現金三、○○○円を抜き取り窃取したが、その直後、Nがーに対し同現金の返還を求 めるや、1及び傍らで現金窃取を目撃していた被告人丁の両名において、 その取還を拒ぐ目的で、意思を通じてこも ごもNに暴行を加え全治一週間の傷害を負わせた、というものである。  検察官は、被告人1及び丁両名の間に窃盗に関しても共謀が存在したと主張したが、証明不十分であるとしてその 主張を斥け、窃盗については、1による単独犯行であると認定した。また、検察官は、さらに現金窃取の共謀が認め     東洋法 学       八七

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共岡加功      八八 られないとしても、Tは、1の窃取行為を目撃し、窃取にかかる現金の一部を受け取った後、1と共謀して取還を拒 ぐ目的でNに暴行を加え傷害を負わせたものであるから、承継的共同正犯として強盗致傷罪の罪責を負う旨主張した が、東京地裁は、﹁被告人丁は、被告人1が事後強盗罪の構成要件の一部である窃盗を終了してから、被告人1の行 った窃盗の結果を十分認識して、窃盗にかかる金銭︵飲み代︶の取還を防ぐべく、被告人1と意思相通じて被害者に 暴行を加え、その結果傷害が生じているので、承継的共同正犯として強盗致傷の罪責を負うとの考え方もあり得よう が、事後強盗罪は、窃盗という身分を有する者が主体となる身分犯の一種であって、被告人丁はその身分がないので あるから、本件では承継的共同正犯の問題ではなく、共犯と身分の問題として把握すべきであり、この解決が本件事 案の実態に即しているものと考える。それ故、身分のないTには、刑法六五条一項により強盗致傷罪の共同正犯とな るものと解するが、その刑は、同法六五条二項によって傷害の限度にとどまると判断するのが相当である﹂と判示し た。  右の引用からも明らかなように、本判決も、事後強盗罪を不真正身分犯と解したうえでの擬律といえるが、検察官 の主張に答える趣旨から、承継的共同正犯の問題ではなく共犯と身分の問題であるとし、この両者が相互に排他的な       ハユゾ 関係にでもあるようないい方をしている点で、判例①と異なる特色を指摘することができる。と同時に、右判決①及 び②が共犯と身分に関する刑法六五条を解釈するについて採用した同条一項は共犯成立の問題、二項はその科刑とい        へ レ う思考は、周知のとおり団藤博士の創設にかかるものであって、不真正身分犯についても同条一項を適用した点にお いて、従来の判例の主流とは異なるものである。なぜなら、判例は、共犯の成立・処罰の問題について、基本的には、

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       ハ   一項は真正身分犯、二項は不真正身分犯に関する規定であると解していたからである。  ω事後強盗罪を真正身分犯と解し、共犯と身分の問題として刑法六五条一項のみを適用したケース  ③昭和六 二年大阪高裁判決がそれである。本件公訴事実は、被告人が、共犯者二名と共謀のうえ、サイドリングマスコット∼ 個を窃取し、その直後、警備員に逮捕されそうになるや、逮捕を免れる目的で同人に対しこもごも殴る蹴るの暴行を 加え、同人に加療一〇臼間を要する傷害を負わせたものというものであって、強盗致傷罪の共同正犯に問われた。原 審の神戸地裁は、共犯者二名は、被告人の窃盗が既遂に達した後にこれに関与したものであって、窃盗の共同正犯で はないとし、かかる共犯者は事後強盗罪の主体ともならないから、被告人ら三名について強盗致傷罪の共同正犯をも って擬律することは相当でないとの見解を示したうえで、被告人の所為につき、﹁刑法二四〇条前段︵壬二八条﹀に該 当︵但し、傷害の限度で同法六〇条も適用する﹂旨判示し、懲役三年六月の刑を言い渡した。これに対し、被告人が 控訴し、弁護人は量刑不当を主張した。大阪高裁は、まず弁護人の主張を斥けた後、職権による判断を示し、証拠の 内容及び原審における審理経過などに照らすと、原判決が公訴事実にそう供述調書などの信用性を否定したことは、 判断内容、手続面ともににわかに賛同しえないものがあると指摘したうえ、さらに、法令の適用について、﹁原認定 のように、共犯者二名が被告人の犯行に関与するようになったのが、窃盗が既遂に達したのちであったとしても、同 人らにおいて、被告人が原判示マスコットを窃取した事実を知った上で、被告人と共謀の上、逮捕を免れる目的で被 害者に暴行を加えて同人を負傷させたときは、窃盗犯人たる身分を有しない同人らについても、刑法六五条一項、六 〇条の適用により︵事後︶強盗致傷罪の共同正犯が成立すると解すべきであるから︵なお、この場合に事後強盗罪を

    東洋法学       八九

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     窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功      九〇 不真正身分犯と解し、身分のない共犯者に対し更に同条二項を適用すべきであるとの見解もあるが、事後強盗罪は暴 行罪、脅迫罪に窃盗犯人たる身分が加わって刑が加重される罪ではなく、窃盗犯人たる身分を有する者が刑法二三八 条所定の目的をもって人の反抗を抑圧するに足りる暴行、脅迫を行うことによってはじめて成立するものであるから、 真正身分犯であって、不真正身分犯と解すべきではない。従って身分なき者に対しても、同条二項を適用すべきでは ない。︶、傷害罪の限度でのみしか刑法六〇条を適用しなかった原判決は、法令の解釈適用を誤ったものといわなけれ ばならないが、原判決は被告人自身に対しては刑法二四〇条︵二三八条︶を適用しているのであるから、右法令の解 釈適用の誤りが、判決に影響を及ぽすことの明らかなものであるとはいえない﹂と判示し、結局、本件の控訴を棄却 した。  本判決が、判例①及び②と異なり、事後強盗罪を真正身分犯であるとして、刑法六五条二項を適用すべきではない としたのは、この問題に関するはじめての高裁判決であることと、括弧書においてではあるが、その解釈の準拠を示 したこととあいまって、きわめて注目されたのである。 ︵1︶判例理論の統一の観点から、共犯と身分の間題と承継的共同正犯の閥題とを択丁相互排除の関係にあるとした判例②を   主たる対象に、さまざまの疑問を提起されたのが香川教授である。香川達夫﹁事後強盗と承継的共同正犯﹂警察研究五八巻   七号︵昭和六二年︶三頁以下、﹁ふたたび事後強盗罪と承継的共同正犯について﹂小野慶二判事退官記念論文集﹁刑事裁判

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︵2︶ ︵3︶ の現代的展開﹂︵昭和六三年︶一頁以下など。  団藤重光﹁刑法綱要総論︹改訂版ご︵昭和五四年︶三九二頁。なお同旨のものとして大塚仁﹁刑法概説︵総論︶︹改訂版ど ︵昭和六一年︶二八五頁、福田平﹁全訂刑法総論︹新版増補︺﹂︵昭和五九年︶二六四頁などがある。通説が刑法六五条︻項 は真正身分犯について身分犯の連帯的作用を、二項は不真正身分犯について身分の個別的作用を規定したものと解するのに 対し、二項の加減的身分にも違法性を規制するものがあり、また、違法要素も個別的に作用することもありうるとし、∼項 と二項は異なる局面に関するもの、すなわち、一項は共犯の成立の問題を、二項は科刑の問題を規定したものと解するので ある。もっとも団藤博士などは、六五条一項の成立範麟から真正身分犯の共局正犯を排除しているのであり、判例①及び② がこれと周じ立場であるかどうかは明確ではない。  判例は、例えば、尊属殺人罪︵違憲であることは別論として︶について、﹁刑法二〇〇条の罪は、犯人の身分により特に 構成すべき犯罪ではなく、単に卑属たる身分があるため特にその刑を加重するに過ぎないものであるから、直系卑属でない 共犯者に対して刑法六五条二項によって処断すべきものと解するを相当とする﹂︵最判昭和三一年五月二四日刑集︸○巻五 号七三四頁。同旨、大判大正七年七月二日新聞一四六〇号二三頁︶として、通説と同趣旨の態度を示している︵これと矛盾 するようにみえる判例がないわけではないが、ここでは触れない︶。 三 学説のスケッチ  学説は多岐に分かれるが、次の三つの考え方がありえよう。  第一は、事後強盗罪を不真正身分犯と解し、その擬律を共犯と身分の問題に求め、中途関与者である非窃盗犯人に は刑法六五条二項を適用し、﹁通常ノ刑﹂、すなわち、暴行罪︵傷害を負わせたときは傷害罪︶の刑を科する、とする 東 洋 法 学 九一

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共購加功      九二 見解である。  もっとも、この見解を採る場合でも、周知のように、刑法六五条一項と二項との関係をどのように把握するかとい うことから、さらに二つの考え方に分かれる。  すなわち、先に引用した団藤博士の創設にかかる刑法六五条一項は身分犯における共犯の成立の問題を、二項は不 真正身分犯についての科刑の問題を規定したもの、との見地に立てば、非窃盗犯人には、同条一項により事後強盗罪 ︵傷害を負わせたときー以下の括弧内の記述は、この場合を指すーは、事後強盗致傷罪︶が成立し、科刑だけ 二項によって﹁通常ノ刑﹂として暴行罪︵ないしは傷害罪︶の刑を科するとする考え方である。例えば、この問題を早 くから扱われた藤木博士もこの前提のもとに、﹁事後強盗は、窃盗犯人を主体とする一種の身分犯であるから、窃盗 犯人が逮捕を免れる目的で暴行・脅迫を加えている旨を知って、これを援助する目的で窃盗犯人と意思連絡の上暴 行・脅迫行為に加担した者は、事後強盗罪の非身分者にょる加功の例として、暴行罪・脅追罪に止まることになろ ハモマ う﹂と説かれていた。非窃盗犯人に対する刑法六五条の解釈・適用の方法からみて、被害者が傷害を負ったときは、 傷害罪の刑が科せられると判断して誤りはないであろう。上掲判例①及び②は、従来の判例理論と統一性を有するか 否かは別として、右の見解に準拠したものといえる。  ちなみに、判例②を評釈された旦局教授は、事後強盗罪が不真正身分犯であるとの根拠づけとして、次のように言 われる。﹁事後強盗罪の場合、窃盗犯人という身分を取得してはじめて行為主体となりうる点だけを考えれば、真正 身分犯のようにも思える。しかし、窃盗犯人でない者あるいは窃盗犯人でも刑法二三八条所定の目的を持たない者が

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暴行・脅迫を加えた場合には、暴行罪・脅迫罪の法定刑︵重い選択刑で二年以下の懲役︶に処せられるのに対し、同じ 暴行・脅迫を窃盗犯人が二三八条所定の鼠的を持って加えた場合にはより重い強盗罪の法定刑︵五年以上の有期懲役︶        ハおレ に処せられることを考えるならば、事後強盗罪は不真正身分犯︵加減的身分犯︶とみるべきであろう﹂と。  次に、通説・判例にょる刑法六五条一項は、真正身分犯について共犯の成立・処罰の問題を、二項は不真正身分犯 についてのそれを規定したものである、との見地に立てば、窃盗犯人と非窃盗犯人との間には、刑法六五条二項によ り事後強盗罪と暴行罪︵ないしは傷害罪︶の共同正犯が成立し、非窃盗犯人は、刑についても暴行罪︵ないしは傷害罪︶       ハヨレ の罪責を負うとする考え方である。  第二は、事後強盗罪を身分犯の一種と理解し、事後強盗行為に共同加功した非窃盗犯人の罪責を共犯と身分の問題 として考えるが、第一の見解と異なり、刑法六五条一項にょって、事後強盗罪︵ないしは事後強盗致傷罪︶の共同正犯 が成立し、同罪の刑が科せられる、とする見解である。  この見解も、詳細にみれば、分かれて二つとなる。その一つは、判例③と同様に、事後強盗罪は真正身分犯であり、 それに共同加功した非窃盗犯人には、刑法六五条一項にょり事後強盗罪︵ないしは事後強盗致傷罪︶の共同正犯が成立       ムィ  するとする考え方である。今一つは、事後強盗罪を不真正結合犯経身分犯として理解すべきでなく、結合犯の承継的 共同正犯の問題として捉えるべきであるが、仮にこの問題を共犯と身分の問題であると解しても、刑法六五条二項を 適用すべきではないとする古江検事の所説である。すなわち、﹁事後強盗罪は、窃盗犯人が所定の目的で暴行・脅迫 に出る行為が財物奪取の手段として暴行・脅迫を加える強盗罪と同視し得る実質的違法性を有するが故に設けられた

    東洋法学       九三

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功      九縢 ものであって、決して暴行・脅迫罪の責任加重類型ではなく、窃盗犯人であることが﹃身分犯﹄であると解しても、 その身分は、身体犯としての暴行・脅迫罪の違法性に質的変更を加え、財物犯としての新たな違法性を作出するもの であって、違法身分であろう。暴行・脅迫は、事後強盗の﹃通常ノ刑﹄ではないのである。それゆえ、六五条一項の          ハさザ みを適用すべきである﹂というのが、それである。これは、﹁違法は連帯的に、責任は個別的に﹂というテーゼを基 礎に据えて、刑法六五条一項は違法身分についての規定であり、二項は責任身分の規定であるという考え方をとって、 事後強盗が成立するための強盗という身分は違法身分であるから、事後強盗に共同加功した非窃盗犯人は、︸項によ って事後強盗罪︵ないしは事後強盗致傷罪︶の共同正犯が成立する、とする考え方であるといえよう。  第三は、事後強盗罪を一種の結合犯と考え、非窃盗犯人が事後強盗行為に共同加功した場合、承継的共同正犯の問 題として考えようとする見解である。  したがって、この見解によれば、当然のことながら、結合犯の性質をどのように理解すべきか、また、承継的共同 正犯に関する消極説と積極説、あるいは中間説などの錯綜した議論を反映して、非窃盗犯人に対する擬律もさまざま なものが考えられる。例えば、事後強盗罪︵ないしは事後強盗致傷罪︶として処罰しようとする考え方︵判例②におい て、検察官はこの主張をした︶、暴行罪︵ないしは傷害罪︶で処罰しようとする考え方、さらには、暴行罪︵ないしは傷 害罪︶と事後強盗罪の蕎助犯の観念的競合として処罰しょうとする考え方などがありうるであろう。

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︵1︶ ︵2﹀ ︵3︶

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 古江頼隆﹁窃盗犯人でない者が、窃盗犯人と共謀の上財物の取還を拒ぐため被害者に傷害を負わせた場合の擬律﹂研修四  前田雅英﹁刑法総論講義﹂︵昭和六三年︶四二一頁など。 頁。 人と意思連絡の上財物の取還を防ぐため被害者に傷害を負わせた場合の擬律﹂法学セミナ⋮三八五号︵昭和六三年︶二八 より﹁通常ノ刑﹂が科せられるとする考え方も、成り立ちえないわけではな“。なお、大谷質﹁窃盗犯人でない者が窃盗犯 は傷害罪︶の罪責を負うことになろう。しかし、また、周六〇条によって不真正身分犯の共同正犯が成立し、六五条二項に が明示されるように、﹁六五条二項により、事後強盗と暴行︵傷害︶の共同正犯が成立﹂し、非窃盗犯人は、暴行罪︵ないし  内田文昭﹁刑法各論︹第二版︺﹂︵昭和五九年︶二八五頁。刑法六五条の解釈について通説的見解にしたがえば、内田教授 成元年︶三六三頁など。 支持するのは、岡野光雄﹁事後強盗と共犯﹂研修四九四号︵平成元年︶三頁以下、米澤慶治﹁大コンメンタール刑法﹂︵平  旦愚義博−事後強盗に窃盗犯人でない者が関与した場合の罪責﹂判例評論三二八号︵昭和六一年︶六二頁。なお判例②を 三八三頁Q  藤木・前掲書二七頁。同旨、中谷瑛子﹁事後強盗﹂下村康正縫八木国之編﹁法学演習講座⑨刑法各論﹂︵昭和四六年︶ 五七号︵昭和六一年︶七〇頁。 四 事後強盗罪の性格・構造  事後強盗罪が、﹁強盗ヲ以テ論ス﹂とされる立法趣旨は、窃盗犯人による財物奪取後における取還を拒ぐための暴 行・脅迫の行為や、窃盗着手後における逮捕を免れるための、あるいは、罪跡を灌滅するための暴行・脅迫の行為が、 東 洋 法 学 九五

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功      九六 刑事社会学的にみても、窃盗行為に付随してしばしばみられる行為態様であるため、全体的に観察すれば、財物奪取 の手段として暴行・脅迫を加える本来の強盗罪と同じ程度の実質的違法性を具備するものと評価され、刑及び他の罰        ハまザ 条の適用において強盗罪と同様に取り扱われるとされることについては、ほぼ異論をみないといってよい。そして、 事後強盗罪は、規定の位置からしても、暴行・脅迫を手段とする点で被害者の生命・身体・自由などに対する罪とし ての性格を併せ有するが、本質的には財産罪である、と解すべきである。単純に考えれば、本来の強盗罪︵二三六条 一項︶と事後強盗罪とでは、財物奪取行為と暴行・脅迫行為の出現している順序が逆転しているだけのことのように みえる。しかし、刑法二三八条のような規定がなければ、そのような行為を強盗罪に問えないことも確かであり、犯        ム レ 罪の実質的な構造において、両者は非常に異なることにも留意する必要がある。ところで、上掲判例は、事後強盗罪 をもって真正身分犯と解するか不真正身分犯と解するかの違いはあるが、いずれも身分犯と解することによって専ら 共犯と身分犯の問題として非窃盗犯人の刑事責任を擬律している。ことに判例②は、これと承継的共同正犯とは二者 択一・相互排除の関係に立つもののように明言しているのである。そこで、この点についての解明は、事後強盗罪の 性格・構造をどのように把握すべきかに関わるから、まず、これを明らかにする必要があるであろうが、その考察に 当っては、事後強盗罪が身分犯といいうるのかという問題と、事後強盗罪の実行行為は何をいうのかという問題の両 面からのアプローチが必要である。もとより、この二つの問題は、密接不可分の関係にある。  0ゆ事後強盗罪の身分犯性  事後強盗罪を身分犯と解する前提は、刑法二一二八条の規定形式から生ずる。同条に おいては、﹁窃盗﹂という主語が用いられており、したがって、例えば、恐喝や詐欺犯人が同条所定の目的で暴行.

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脅迫を行っても事後強盗罪を構成しないことは明らかであり、その行為主体は窃盗犯人に限定されるからである。ま た、実質的にみても、暴行・脅迫はなんぴとによってもなされうるが、同条所定の目的の中に窃盗犯人以外の者が財 物の取還を拒ぐ目的などをもって関与する場合をも包含すると解しうるなら格別、さもない限り、これらの目的は、 行為主体である窃盗犯人自身において具備しなければならないとすれば、それは身分犯、しかも真正身分犯と解する のが自然であるからである。そうすると、事後強盗罪は、窃盗犯人のみが財物の取還を拒ぐ目的などを持ちうるとい        ハきレ う意味で、身分犯と目的犯の二重の絞りを受けるところに特色があることになる。これと同じように、構成要件の規 定上主体が制限されている犯罪を直ちに身分犯と解すれば、上掲判例②も結果的に認めている強盗致傷罪の場合も、 その致傷の結果は強盗犯人によってもたらされることを要するから、強盗犯人を行為主体と解さなければ、論理整合 性がないことになろう。ところで、周知のように、刑法六五条の身分の意義について、最高裁は、明治四四年三月の 大審院判決をそのまま踏襲し﹁身分とは、男女の性別、、内外国人の別、親族の関係、公務員たる資格だけでなくす        ハゑ  べて一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称するしと判示し、多くの学説も基本的       ぢレ にはこれを受容していると評価してよい。もっとも、ここにいう﹁特殊の地位又は状態﹂が何を意味するのかは、必 ずしも定かではないが、その例示の方法からみて、判例の定義にしたがう限り、事後強盗罪も身分犯といえそうであ る。窃盗を行ったことを特殊の地位と解し、窃盗という身分を有する者だけが事後強盗を行うことができると考える のは、十分可能であるからである。しかし、こういうものを身分犯といいうるのか、ということについては疑問があ る。なぜなら、窃盗犯人は、収賄罪における公務員などとは異なり、誰もがいつでもその行為に出さえすればえられ     東洋法 学       九七

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功      九八       パ り る性質のものであって、それは、いわばコ般に解放された身分犯﹂ともいうべきものであって、このような場合に まで﹁身分犯﹂の範疇に包摂することには躊躇を感ずるからである。また、事後強盗罪を不真正身分犯と解すれば、 それは、結局のところ、事後強盗罪をただ機械的に窃盗と暴行・脅迫とに分け、その基本となる犯罪の性格を人格罪 である暴行罪や脅迫罪とし、この暴行・脅迫を窃盗犯人という特殊な地位にある者が行うことによって刑が加重され るものであると捉えることとなり、このような思考は、財産罪としての事後強盗罪の罪質をあいまいにしかねないか    ハァレ らである。これらは、つまるところ、﹁身分﹂もしくは﹁身分犯﹂の核心は何か、という根本の問題に立ち帰って考 察すべきことを余儀なくさせるのである。  いうまでもなく、刑法六五条の解釈については、一項が、共犯は正犯身分に従属・連帯するのに対し、二項が、身 分のない者は身分のある者から独立・個別化されるという一見あい矛盾する規定を包含しているのではないかとの疑 問を生ずるため、その理論的根拠をめぐってさまざまの学説が展開されている。しかしながら、その身分が行為の法 益侵害の一条件となっている違法身分であれ、行為者の非難可能性の一条件となっている責任身分であれ、身分犯は、 その社会関係から、受命者を限定する作用を持ち、当該地位に基づく役割の違背にこそ、身分犯としての本質がある といわなければならない。例えば、同じ横領行為であっても、他人から委託されて自ら占有・保管する財物を不正に 領得する場合は、委託物横領罪︵二五二条︶を構成し、偶然占有物を含め占有者の意思に基づかずに占有を離れた財 物を不正に領得する場合は、占有離脱物横領罪︵二五四条︶を構成するにすぎない。もとより、両罪の関係をめぐっ ては、そのどちらを基本類型と解するかについては争いがあるが、両罪が委託信任関係違背の有無によって区別され

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ることは疑いをいれない。いいかえれば、委託物横領罪における他人の財物の占有者は、財物の占有を委ねた本人と の信任関係を前提としつつ、委託者と対置された者を指示している。この委託信任関係において、他人の財物の占有 者は、委託者に対して信任関係を裏切らない適切な役割を期待されているのであり、それゆえ、その委託信任関係違       ハ ソ 背行為をそれのない占有離脱物横領罪に比して重く処罰される所以があるのである。このことは、他の身分犯の典型 とされる収賄罪、背任罪などにおいても妥当するであろう。  右のように、﹁身分犯しの核心をその地位に結合された特定の役割の違背と捉えるならば、いつでも誰もが行いう る窃盗犯人という地位に格別の役割をみい出しえない以上、事後強盗罪をもって窃盗犯人を行為主体とする身分犯に 包摂することには賛同し難いものがある。  のみならず、その当否︵私見は後述︶は別として、香川教授がつとに指摘されたように、判例理論の統一性の観点 からみても、事後強盗行為に共同加功した非窃盗犯人の擬律を共犯と身分の問題として処理したことにも疑問が残る。 第一に、事後強盗罪は身分犯と目的犯の二重の絞りを受けると解した場合、刑法六五条一項に規定している﹁犯罪行 為二加功﹂とは、そこに身分のない者の加功を予定することはできても、身分のない目的のある者の加功をも含みう るといいうるかは、必ずしも自明の理とはいえず、その意味で、目的はあるが身分のない非窃盗犯人に同項の適用が       ハ ぜ 可能とした上掲判例①及び②の根拠については、反省の余地が生ずる。  第二に、事後強盗罪を判例③のように真正身分犯と解し、刑法六五条の解釈において、一項が真正身分犯の成立・ 、処罰の問題とする判断に依拠するときは、事後強盗行為における中途関与者は、その共同正犯としての罪責を負うこ     東 洋 法 学       九九

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功       一〇〇 ととなる。が、窃盗行為にいっさい関与せず、暴行・脅迫のみに関った者がなぜに事後強盗︵致傷︶罪の正犯として の罪責を免れないのであろうか。これもまた、理由づけが明らかではない。  第三に、強盗致死傷罪が強盗犯人を主体とする身分犯とすれば、Xが財物奪取の手段として暴行を加え被害者に傷 害もしくは死を惹起したところで、Yが事情を了解しながら介入し、被害者の反抗抑圧状態を利用してXと共謀して 財物奪取行為に加担した場合もまた、昭和六〇年判決︵判例②︶に忠実であるなら、﹁承継的共同正犯の問題ではなく、 共犯と身分の問題しとしなければならない。ところが、承継的封巾助犯を認めた判例はある。大審院昭和二二年一一月       ハけレ 一八日判決がそれである。事案は、夫Xが強盗目的で被害者を殺害後、Xの妻Yが事情を聞かされ、金品強取の協力 を求められ、やむなくこれを承諾し、ロウソクを手にしてXの金品強取を容易にした、というものであるが、Yを強 盗殺人罪の封巾助犯として処断した。しかしながら、右判例は、刑法六五条を適用している様子は見受けられず、半面        ハドレ に、身分犯に承継的共犯を認めた先例として位置づけられ、その限り、承継的共犯と身分犯とは択一・相互排除の関 係に立っているわけではないのである。  また、非窃盗犯人はその身分がないから承継的共同正犯の問題は生じないとするなら、身分犯について承継的共同 正犯の成否を考えるためには、先行者も後行者もともに同じ身分の取得者でなければならないが、身分犯について、       ハぱレ そうした主張のあることは寡聞にして聞かないのである。いずれにせよ、強盗罪と事後強盗罪の同価値性を強調する のであれば、なぜ昭和二二年判決では承継的蕎助犯の問題とし、昭和六〇年判決︵判例②︶では共犯と身分の問題と してその取扱いを異にしたのか、さらには、刑法六五条の解釈について、従来の判例の主流と異なる判断を示したの

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か、疑義が生じよう。  ω 事後強盗罪の実行行為  事後強盗罪は財産犯である。それは、窃盗罪を基本としつつ事後的な行為態様によ        る  ってその刑が加重される犯罪であって、その本質は、いわば﹁強盗的な窃盗﹂ともいうべきものである。刑法二三八 条の規定が存在しなければ、事後強盗行為を強盗罪に問えず、本来の強盗罪と事後強盗罪とが実質的な構造において 異なるものがあるにもかかわらず、﹁強盗ヲ以テ論ス﹂とされる所以は、まさにこの点にあると考えられる。したが って、﹁先行行為たる窃盗行為を事後強盗罪の実行行為から排除するのは、事の本質を見誤るものといわなければな らない﹂であろう。すなわち、窃盗行為は、事後強盗罪の実行行為の一部であるが、同罪の実行の着手は、後行行為       ハ レ たる暴行・脅迫に着手したときである。実行行為の一部でありながら、それへの着手をもって事後強盗罪の実行の着 手とされないのは、すべての窃盗行為は、事後強盗罪に発展していく可能性があり、窃盗行為は事後強盗罪の潜在的 な実行行為であるが、事後に刑法二三八条所定の目的で暴行・脅迫が行われることによって、結果的に、事後強盗罪 の実行行為として顕在化していくと考えられるのである。このように解することによって、事後強盗罪の未遂・既遂        パお  の別が、財物の占有取得、換言すれば、窃盗の未遂・既遂のそれによるとの結論が無理なく導き出される。  これに対し、事後強盗罪を窃盗犯人を主体とする身分犯と解すれば、その実行行為は、刑法二三八条所定の目的を もった暴行・脅迫にのみ求められることになり、窃盗行為自体は、事後強盗罪の実行行為ではないということになる。 したがって、事後強盗罪の未遂・既遂は暴行・脅迫の点に求めなければならないはずであるが、これでは、その未遂       ハ レ を想定し難いために、身分犯説に立つ論者も、判例と同じく等しく窃盗の未遂・既遂に求めている。しかし、この所

    東洋法学       一〇∼

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功      ︸〇二 説は果して論理的整合性を維持しうるであろうか。  この点につき、植松博士は、事後強盗罪を身分犯と解しつつ、本来の強盗罪より犯情の軽いことを理由に、取還拒 絶・逮捕免脱・罪跡灌滅の目的いずれの場合も、財物を得たか否かによって未遂・既遂を区別すると主張され、事後 強盗行為を全体としてみれば、行為途中における一時的な占有取得は既遂をもって論ずるに値しないとされるのであ  ザレ る。傾聴すべき見解ではあるが、それによれば、窃盗未遂の場合は事後強盗未遂となり、判例、通説と異なることは なく、逆に、窃盗既遂犯人が刑法二三八条所定の目的で暴行・脅迫を加えたが、その目的を達しないときは未遂とせ        ハ レ ざるをえず、疑問が残ろう。  また、旦局教授は、窃盗行為を事後強盗罪の実行行為と捉えることに対し、﹁事後強盗罪の構成要件の前提条件と       へのレ 構成要件的行為とを混同するものである﹂と批判されるが、これに対しては、﹁行為の時間的順序にのみ眼を奪われ、       ハ ロ 財産犯としての事後強盗罪の法的意義を十分に捉えたものということができない﹂との反批判が妥当しよう。私見に よれば、窃盗行為は事後強盗罪の潜在的な実行行為であり、それを構成要件の前提条件と解しても、結局のところ、        ハのレ 窃盗行為を行うことが窃盗犯人たらしめるのであって、構成要件的行為に還元されてしまうのである。  かくして、事後強盗罪は、窃盗行為と刑法二三八条所定目的での暴行・脅迫の行為から成り立つ結合犯と解すべき こととなるのである。  なお、付言すれば、窃盗行為も事後強盗罪の実行行為の一部であり、事後強盗罪を結合犯と捉えれば、事後強盗行 為に共同加功した非窃盗犯人の刑事責任は、承継的共同正犯の問題と考えなければならない。

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 他方、身分犯説では、事後強盗罪の実行行為は暴行・脅迫のみに求めざるをえない以上、後行行為者たる非窃盗犯 人は暴行・脅迫を共同加功しているため、事後強盗罪の実行行為を全部的に充足していることとなり、およそ承継的 共同正犯の観念をいれる余地はなく、共犯と身分の問題として処理するほかはない。その意味で、判例理論の統一は 別として、共犯と身分の問題と承継的共同正犯の問題は相互排除の関係に立つといえよう。 ︵1︶ ︵2︶

543

 小野判事は﹁周到な定義﹂と肯定的に評価し︵小野慶一﹁共犯と身分﹂刑事法講座三巻︵昭和二七年︶四九二頁︶、逆に平野  最判昭和二七年九月一九日刑集六巻八号一〇八三頁、大判明治四四年三月一六日刑録一七輯四〇五頁。  香川・前掲事後強盗と承継的共同正犯二一頁。 べられている︵同・二三七頁︶。 名には、逮捕を免れるためという主観的構成要件要素を欠くから、事後強盗罪の共同正犯とすることには疑問がある、と述 とされる。西村克彦﹁強盗罪考述﹂︵昭和五八年︶二八頁以下。ちなみに西村教授は、事例①の事案において、K及びN両 かつ窃盗未遂は罰せられるが、暴行・脅迫の未遂は罰せられない結果的復合行為犯であるとして、事後強盗罪の未遂はない  西村教授は、この点を明醤し、さらに、事後強盗罪は先行行為である窃盗のほうが後行行為である暴行・脅迫より重く、 かんがみ、香川教授の見解が妥当であろう。 限定を付される︵香川璽強盗の目的﹄の意味﹂学習院大学法学部研究年報一二号︵昭和五八年︶二五頁。事後強盗罪の性格に 三版ご︵昭和五五年︶五四六頁、大塚・前掲書二︸六頁などがあるが、香川教授は、﹁性質に反しないかぎり一切のしとの  藤木・前掲書一二頁。結論において岡旨のものとして、例えば、小野清一郎・中野次雄・植松正・伊達秋雄﹁刑法︹第 博士は、﹁あまり内容のあるものとはいえない﹂と評価される︵平野竜;刑法総論H民昭和五〇年︶三六七頁︶が、他の刑 法教科書などでは、判示をそのまま引用しているのが通常である。 東 洋 法 学 一〇三

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︵8︶ 1110 9 15 14 13 12 窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功 ∼〇四  斉藤誠二﹁特別講義刑法﹂︵平成三年︶二七五頁。  植園重正﹁事後強盗罪の問題点﹂法学論集二六巻一号︵昭和五一年︶一六頁。古江検事も事後強盗罪の﹁保護法益は、後 行行為たる暴行・脅迫に関する法益︵身体︶ではなく、先行行為たる窃盗に関する法益︵財産︶であって、先行行為たる窃 盗行為を事後強盗罪の実行行為から排除するのは、事の本質を見誤るものといわなければならない﹂とされる︵前掲評釈・ 六七頁︶。  上野教授は、背任罪を例にとりつつ、﹁身分犯をその地位に結合された特定の役割の違背ないし逸脱として構想するなら ば、およそ事後強盗罪を身分犯の範躊に包摂することはできないであろうしとされる︵上野幸彦﹁事後強盗罪と刑法第六五 条適爾の当否﹂沼本法学紀要三〇巻︵平成二年︶四四〇頁。いずれにせよ、身分犯をその地位に結合された特定の役割違背に 求める限り、一時的心理状態にすぎない﹁営利の目的﹂も、六五条二項にいう身分に当るという判例︵最判昭和四二年三月七 日刑集二一巻四一七頁︶は妥当ではない。福田教授は、﹁身分﹂といえるためには多少とも継続的性質を有するものであるこ とを要するとして、同様の結論をとられる︵福田・前掲書二六五頁︶。  香川・前掲事後強盗罪と承継的共同正犯一二頁。  刑集一七巻八三九頁。  例えば、内田教授は、強盗致死傷罪を﹁およそ強盗の﹃身分臨をもった者﹂を行為主体として要求しているとして身分犯で ある旨を明言し︵内田・前掲書二八八頁︶、大塚教授も身分犯であるとされる︵大塚仁﹁刑法概説︵各論︶︹改訂版︺︵昭和六 二年︶二二〇頁︶が、昭和一三年判決のケ⋮スについて、承継的共犯の問題として強盗罪の幣助犯が成立すると説かれてい るだけである︵大塚・前掲書二七八頁︶。なお香川・前掲ふたたび事後強盗罪と承継的共同正犯について四頁以下。  香川・前掲ふたたび事後強盗罪と承継的共同正犯について二頁。  斉藤・前掲書二七七頁。  古江・前掲評釈六七頁。  判例︵最判昭和二四年七月九日刑集三巻二八八頁︶通説である。

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︵16︶ ︵賀︶

2019i8

︵幻︶  内田・前掲書二八一頁、大塚・前掲書二一六頁、藤木・前掲書二七頁、福田﹁全訂刑法各論﹂︵昭和六三年︶二三五頁、 大谷実﹁刑法講義各論︵二版︶﹂︵昭和六三年︶二〇五頁など。しかし、事後強盗罪を身分犯と解する一方、窃盗の未遂・既 遂を本罪の未遂・既遂と解するのは、身分と実行行為とを混同するものといえよう︵坂本武志﹁事後強盗罪は身分犯か﹂判例 時報二一〇二号︵昭和六一年と九頁以下︶。なお、岡野教授は、事後強盗罪を不真正身分犯と解しつつ︵行為主体を窃盗犯 人に限定することによってその財産犯的性格を明らかにしているとする︶、事後強盗は本来強盗でないものを強盗に準じて 取り扱うから、強盗罪との間で理論上の不整合さの生ずることは避け難いとし、理論的にはその未遂・既遂は暴行・脅迫に 求めるべきであるが、結局、窃盗の未遂・既遂にその未遂・既遂を求めざるをえないとされる︵岡野・前掲論文七頁以下︶。 しかし、﹁行為主体を窃盗犯人に限定﹂することによって、財産犯的性格が閣らかになったといいうるかは疑間であり、窃 盗犯人が二三八条所定欝的での暴行・脅迫をすることによって、なにゆえ﹁強盗ヲ以テ論﹂ぜられるかが、問題とされなけ ればならないであろう。  植松正﹁再訂刑法概論豆各論﹂︵昭和四七年︶三九四頁以下。岡旨、香川﹁刑法講義各論﹂︵平成元年︶四六一頁。なお、 植松説に対する批判として西村・前掲書ご二二頁以下。  岡野・前掲論文五頁以下。  旦愚・前掲評論六一頁。  中森喜彦﹁事後強盗を構成する暴行・脅迫に窃盗犯人でない者が関与した場合の取扱い﹂判例評論三五三号︵昭和六三 年︶七∼頁。  上野・前掲論文四三五頁以下。 東 洋 法 学 一〇五

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窃盗犯人でない者の事後強盗への共岡加功 一〇六 五 事後強盗に共同加功した非窃盗犯人の罪責  事後強盗罪を、右にみてきたように、窃盗罪と暴行罪または脅迫罪の結合犯であり、身分犯でないと解すれば、中 途から事後強盗に共同加功した非窃盗犯人の擬律については、およそ六五条を適用する余地はなく、承継的共同正犯 の問題として考えるべきこととなる。  そして、承継的共同正犯をめぐっては、周知のとおり、あとから実行行為に加わった後行の行為者にはどの範囲で 先行の行為者の行為・結果を承継し共同正犯が成立するかに関し、関与後の行為についてのみ共同正犯が成立すると する消極説︵否定説︶、関与前における先行行為を含めて犯罪全体について共同正犯が成立するとする積極説︵肯定 説︶、さらには、先行者の行為の効果を積極的に利用した場合にはその限度で共同正犯を認めるもの、あるいは、共        パまレ 同正犯については否定、蓄助犯については肯定する中間説・限定説などが対立し、学説は錯綜している現状にある。  もし、積極説に立てば、事後強盗行為中に中途で介入し、共同して暴行・脅迫を行った非窃盗犯人は、事後強盗罪 全体の共同正犯の罪責を免れないであろうし、上掲引用の判例の事案のように、共同の暴行により被害者が傷害を負 ったのであれば、事後強盗致傷罪の共同正犯が成立することとなろう。  承継的共同正犯の成否について、最高裁判例はいまだ存在しないが、わが国の判例は、一般論としていえば、戦前       ハカレ の大審院時代には、ほぽ積極説を採り、戦後の判例は、消極説を採るものが次第に多くなりつつあるといえよう。  それでは、この問題をどのように考えるべきであろうか。

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 結論から先にいえば、共同正犯と蕎助犯とを区別して考えるべきであり、前者については、関与後の行為について のみ責任を負い、と同時に、後者については、その行為が、先行の行為者が行う犯罪実現に役立ち、援助していると みられる限り、先行の行為を含めてその全体について責任を負い、両罪は観念的競合の関係に立つものと思われる。        ヨ   その理由は、共同正犯におけるコ部行為の全部責任﹂の根拠と教唆犯・箒助犯の処罰根拠との違いに由来する。  まず、共同正犯は、正犯の一形態である。 このことは、刑法が教唆犯は﹁正犯二準ス﹂︵六↓条︶とし、正犯ではないが、これに準じて扱うこととしているのに 対し、共同正犯は﹁皆正犯トスし︵六〇条︶として、共同正犯は、実行行為をする者とすることにも窺うことができる。 そして、正犯は、自ら実行行為をすることによって構成要件で保護されている法益を直接的に侵害。危険にさらすこ とによって処罰されるのである。このことは、共同正犯においても変わることはない。共同正犯は、二人以上の者が、 ある犯罪を共同して実現することを合意し、相互に依存しあいながら、実行行為を分担し、結果の実現に本質的な働 きかけをして他人の行為・結果が自己の行為支配の内容を構成する点に特色がある。  すなわち、犯罪計画がそれによって予定されている各人の機能・働きに左右されるため、各人の行為は必須の条件 であることから、共同正犯者の一人の実行行為は、それ自身の実行行為と評価されるとともに、同時に、他の者の実        ハすロ 行行為としても評価され、ここにコ部行為の全部責任﹂の根拠があるのである。  これによれば、相互的な行為帰属は、二人以上の者が共同して犯罪を実現しようという合意以後に限定されるので        へぢレ あり、承継的共同正犯については、消極説が妥当するとしなければならない。

    東洋法学       一〇七

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    窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功       一〇八  これを事後強盗罪にあてはめれば、窃盗行為と刑法二三八条所定の目的をもってする暴行・脅迫とを具備すること によって、はじめて事後強盗罪の正犯たりうるのであり、およそ窃盗行為に関与しない者は、もはや事後強盗の正犯 と評価することはできない。  それゆえ、事後強盗の実現過程に介入し、暴行・脅迫だけを共同にした非窃盗犯人については、事後強盗罪の成立 の余地はなく、共同正犯としては、暴行罪あるいは脅迫罪の罪責が認められるにすぎない、と解すべきである。事後 強盗罪が窃盗罪と暴行罪あるいは脅迫罪の結合犯と考えても、窃盗罪と暴行罪・脅迫罪とに分断して考えることは、 十分可能なのである。しかし、これにとどまるわけではない。後行者は、先行者による事後強盗の実現に際し、この ことを十分に認識しながら、暴行・脅迫に加担することによって事後強盗の実現を手助けしたものである以上、事後        ホらレ 強盗罪の幣助犯としての責任を免れないであろう。  幣助犯の処罰根拠は、構成要件上の保護法益への従属的侵害であり、正犯者の実現した結果をともに惹起したがゆ えに処罰されるという因果共犯論的に把握することができ、したがって、後行者の行為について、それが承継できる       ハァ  結果に対して因果的に寄与できるものであれば、その限度で承継的封巾助も肯定できるからである。  このようにして、事後強盗行為に共同加功した非窃盗犯人の罪責は、暴行罪ないし脅迫罪の限度で共同正犯が成立 するとともに、事後強盗罪の蕎助犯が成立し、両罪は観念的競合として処断されるべきである。もし、暴行によって       ハ レ 被害者が傷害を負ったときは、傷害罪の共同正犯と事後強盗罪の封巾助犯とが成立し、両罪の観念的競合となる。

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︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶  積極説といい消極説といい、それぞれニュアンスを異にし、中間説もまた、積極説をベースにおくものと消極説をべ⋮ス におくものがあり、このような分類の方法に疑問を提起されているのは、斉藤誠二﹁承継的共岡正犯をめぐって﹂筑波法政 八号︵昭和六〇年︶九頁以下である。なお、相内信﹁承継的共犯について﹂金沢法学二五巻二号︵昭和五八年︶二八頁以下 参照。  わが国の判例の分析については、鈴木茂嗣﹁承継的共同正犯の成立範囲﹂刑法判例研究姐︵昭和五〇年︶二二七頁以下、 藤尾彰﹁承継的共犯﹂判例と学説7・刑法1︵昭和五二年︶三〇一頁以下、藤永幸治﹁承継的共岡正犯﹂研修三九三号︵昭 和五六年︶五三頁以下、内田文昭﹁共局正犯﹂判例刑法研究4︵昭和五六年︶一八三頁以下、宮津呂英雄﹁承継的共犯の責 任の範囲﹂警察学論集三五巻一号︵昭和五七年︶一五八頁以下、高橋則夫﹁承継的共犯ω﹂刑法判例百選−総論︵第三版︶ ︵平成四年︶一六八頁以下、福山道義﹁承継的共犯鋤﹂同上一七〇頁以下、斉藤・前掲論文四頁以下などが参照されるべき ある。  斉藤誠二教授が指適されるように﹁共犯の処罰の根拠﹂の問題をべースにおいて、承継的共同正犯の問題にアプローチし ょうとする立場もある︵例えば、相内・前掲論文二三頁以下︶が、旧西ドイツでは、共岡正犯は﹁正犯﹂の一つと解されて おり、﹁共犯処罰の根拠﹂というときは、教唆犯・幣助犯という﹁共犯﹂を念頭においており、共同正犯を含めて統一的に 理解するのが妥当であるのか、疑問なしとしない︵斉藤・前掲論文三二頁以下︶。  ロクシンの展開にかかる﹁機能的行為支配﹂論ないしは﹁分担的行為支配﹂論を前提とするものである。<αQごΩ磐ω 即寅芦↓馨Φ嵩鼠鉢弩恥↓象富嵩o訂戸野︾鼠。︸おo 。奔ψ80。共同正犯のコ部行為の全部責任﹂の根拠をこの観点から因 果性のみならず機能的行為支配に求め、相互的な行為帰属は意思疎通以後に限定し、承継的共同正犯について消極説を採る 者として、例えば、高橋・前掲判例解説一六九頁、同﹁共犯体系と共犯理論﹂︵昭和六三年︶九四頁以下、二九四頁以下が ある。なお、斉藤・前掲論文三三頁以下、中野次雄﹁刑法総論概要︹第二版︺﹂︵昭和六三年︶一二四頁以下、上野﹁承継的 共岡正犯論の批判的検討﹂法学研究年報︵昭和五九年︶三九頁以下。共犯の処罰根拠については、大越義久﹁共犯の処罰根 拠﹂︵昭和五六年︶六七頁以下、高橋・前掲書九一頁以下、香川達夫﹁共犯の処罰根拠﹂共犯の処罰根拠︵昭和六三年︶三

  東洋法学       一〇九

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︵5︶ ︵6︶

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窃盗犯人でない者の事後強盗への共同加功 ︸○ 頁以下、平野竜一﹁責任共犯論と因果共犯論﹂犯罪論の諸問題︵上︶総論︵昭和五六年︶一六七頁以下、山中敬一夷共犯の 処罰根拠臨論﹂刑法雑誌二七巻∼号︵昭和六一年︶一三二頁以下、西田典之﹁共犯の処罰根拠と共犯理論﹂同上一四四頁以 下などの論稿がある。  消極説に立つ者として、牧野英一﹁日本刑法上巻︹重訂版︺﹂︵昭和︸二年︶四照六頁、平野竜丁前掲書三八二頁、内 田・前掲書三〇〇頁、曽根威彦﹁刑法総論﹂︵昭和六二年︶二八六頁、野村稔﹁刑法総論し︵平成二年︶三九三頁など。  斉藤誠二教授は、先行の行為者が強盗の意図で暴行を加え、反抗抑圧後、財物奪取のみに加わづた者は、窃盗の共同正犯 と強盗の需助の観念的競合になるとし、被害者を傷害あるいは殺害後、財物奪取に加わった者は、窃盗︵場合によれば占有 離脱物横領罪︶の共同正犯と強盗罪の幣助犯の観念的競合になるとされ、その論拠を共同正犯では﹁行為支配﹂が、共犯で は﹁従属性しのプリンシプルが働くことに求められる︵斉藤・前掲論文三二頁、三八頁︶。その所説から判断して事後強盗 の場合、後行行為者は暴行罪あるいは脅迫罪の共同正犯と事後強盗罪の需助犯の観念的競合になると思われる。  高橋・前掲判例解説一六九頁。  岡旨・上野・前掲事後強盗罪と刑法第六五条適用の当否四四三頁、西村・前掲書二三八頁。

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3 当社は、当社に登録された会員 ID 及びパスワードとの同一性を確認した場合、会員に

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

統制の意図がない 確信と十分に練られた計画によっ (逆に十分に統制の取れた犯 て性犯罪に至る 行をする)... 低リスク

(自分で感じられ得る[もの])という用例は注目に値する(脚注 24 ).接頭辞の sam は「正しい」と

は,医師による生命に対する犯罪が問題である。医師の職責から派生する このような関係は,それ自体としては

と判示している︒更に︑最後に︑﹁本件が同法の範囲内にないとすれば︑