小学生の自治能力の基盤形成に与える共同決定の影響力に関する研究
学 校 教 育 専 攻 教 育 経 営 コ ー ス 小 池 民 世 1 .研究の目的 現在の学校教育において,子どもたちが自分 たちに関わることを自分たちで(教師とともに) 決めること,即ち共同決定の機会保障が十分で ないことと,自己判断・自己決定できない子ど もの増加や問題行動の深刻化とは無関係でない ように思われる。本研究は,共同決定の機会保 障の教育的効果を明らかにすることにより,小 学校現場に共同決定を重視した実践が広まる可 能性を拓くことを目的としたものである。 2. 研究の方法 共同決定の体験は,教育の目的でもある主権 者の育成に直接的に関わってくる自治能力の基 盤の形成に影響を及ぼすとの仮説をたて(右図 参照),以下の方法で研究を進めた。 ①提示した共同決定の実践プログラムにできる だけ沿って実践してもらえるよう,協力学級A 組(小学 6年・ 4年,各 1)担任に依頼 ②A組の共同決定回数と内容の記録・解釈 ③A組と対照学級 B組(小 6 ・4,各 1)の子 ども対象のアンケート調査結果の分析考察 なお本稿では,小学生につけさせたい自治能 力 の 基 盤 を 関 与 意 欲 ( = 学 校 生 活 を よ り 良 いもの,より楽しいものにしていく活動に自分 指 導 教 官 岩 永 定 実践能力(=決めたことをみんなで実践してい く力)J 3.研究の結果 協力学級両A組のうち 6・Aは独自の方法 で, 4-Aはプログラムに沿って共同決定の実 践を進めた。その方法は異なるが,子どもの意 思を尊重する構えは共通している。両学級の実 践を分析する上で,討議の質を測る一つの目安 として発議者に注目して分類したところ,以下 のようになった。供
6-A 4-B T T C C T T C C 9 O O 1 6 O 5 E 9 O 1 1 2 O 6 E 7 O 3 1 1 2 7 W¥ ¥
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3 4 O も関わりたいとしづ意欲)J i要求の言語表出能 両学級とも時期を経るにつれて子ども(C) 力(=願し、や要求を言語で表出する力)J i討議 の発議が増えており,討議の質の高まりが伺わ 能力(=みんなで話し合って決める力)J i共同 れる。特に 4・Aは第 I期から子どもの発議が多く見られる。それは,高学年に比べて,その 発達段階から発議を控える傾向がまだそれほど 強くないことも考えられるが,やはりプログラ ム導入の結果であろう。 4・Aの子どもの発議 の 80%はプログラムの実施によって生み出さ れたものであり,それによっておとなしい女子 の発議も促されているからであるO また 1学 期間になされた共同決定数は 6・A 55 回, 4・A 91 回で,内容も時間割編成や生活課題 へ の 取 り 組 み (6・A),遊びの計画 (4・A) 等,多彩であるO ただ 4・Aの共同決定の大半 にプログラムとの関連が見られることから,両 学級の回数の差は,学年差からくる時間的余裕 の違いの他,プログラム運用の仕方の違いが関 係していると思われるO 以上のことから,本プ ログラムは共同決定の質と量を高め得るもので あるとの知見を得た。 次に,アンケート調査の結果についてまとめ る。質問は,自治能力の4つの基盤を測定でき ると考えた9場面でどう対応するか,今(10 月時点)と過去 (4月時点)の自分について答 える「場面設定Jの ほ か 討 議 能 力Jと「共 同実践能力 Jについては四件法も用いた。 まず四つの自治能力基盤それぞれについて, 「場面設定」の調査結果をχ2検定にかけて学 級全体の変容を分析し,さらにクロス集計によ り個人の変容を分析した白次に,四件法で得ら れたデータをもとに学級ごとの平均値を出し, t検定にかけた。その結果,協力学級において は「関与意欲J・「討議能力」・「共同実践能力J の一部に,時期を経るにつれて高まる傾向が見 られた。このことから,これらの自治能力基盤 は共同決定体験を積むことで高まる可能性が示 唆された。ただし