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柿炭疽病菌による柿果肉多糖類の酵素的分解について-香川大学学術情報リポジトリ

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29 笛10巻第1号(1959)

棉炭疫病菌による柿果肉多療窺の酵素的分解について

谷 利

Enzymicdegradation of kakifruits poly$aCCharides by

G7ββ〃S如㌢∠伽弼ゐ〃ゐ哀

Toshikazu TAN王(Laboratroy of Phytopathology) (Received August30,1958)

Ⅰ 緒

p 植物細胞の細胞壁あるいは細胞中間層を構成するPeCtin,hemicelluloseおよびcelluloseなどの多糖規につい ては,いまだに不明の点が多く,それらの構成分子の種類あるいは分子の結合様式もきわめて複雑で,植物の種類 によってまちまちのようである.また,多糖類分子に密接に結合ないしは附若しているiigninなどのplypbenol 縮合物の存在状態もはっきりしていない.したがって,病原菌carbohydraseによる寄主組織の破壊磯構と寄主 抵抗性とをむすびつけるばあいには,寄主多糖類の酵素約分解における品種間差異と抵抗性の関係についても究明 する必要があると考える.しかるに.,植物病原菌carbo如dI・aSeにかんする既往の研究町ほと・んとは,寄主植物以 外のpectinあるいは単純多糖類を・基貿として−おり,寄主多糖類を供試して酵素作用をあきらかにしたものほきわ めて少ない.筆者は抵抗性を異にする2品種の柿果から抽出した多糖類について,柿炭疫病薗の分解作用を追究し たところ,ニ,三興味ある緯果をえたのでここ.に報告する次第である 本稿を草するに.あたり,指導と.鞭撞をたまわった本研究室内藤中人教授ならびに実験について種々助言と援助を あたえられた本学農産製造学研究芸格崎丁市講師こ濁謝の恵を表す−る.また,本研究つ−㈲ま昭和31年度文部省科 学研究費によりおこなったものであり,附記して謝意を表する.なお,本報曽の一・部は昭和31年虔日本植物病理学 会秋季関西部会において講演し■た,

Ⅱ 実験方法および結果

1り 果肉多糖類の分離 11月初旬に本学部大宮果樹園で採取した富有および碁盤果肉を・−・150Cに凍結保存し,実験のつど使用した・剥 皮除核した果肉をブレンダー・で贋砕し,水洗して冷水可溶部を除いてから,杉野法(3)に・したがってCrude pectin を抽出したり抽出物は濃褐色の不純物をI含有しており,ether,熟ethanol処理によってもほとんど除去されなか ったので,WISEの脱1ignin法(7)に準じて脱色精製した。ついで,peCtin抽出後の残遭をさらに0”5%ammonium oxalateで数由加熱処理後,熱水抽出を繰返して残存pectinを除き,不溶部をcrudeholocel血ose とした。本 地出物も濃褐色の不純物を含有しているので,WISE法(7)に・よって精製し 白色粉末と.した..収鼠は第1表にしめ すとおりである. 第1表 柿果肉多糖頬の収監 (註):単位は生柿果重あたりの100分率 2.果肉多糖叛構成糖のペーパーークロマトグラフィ pectinの加水分解にあたっては,5%H2SO4を加えて120OCで1‖5時間加熱し,hoiocelluloseのばあいは,ま ず1%水懸濁液に最終濃度5%のH2SO4を加え.100〇Cで6時間加水分解してhemicelluloseの加水分解物とし,

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30 香川大学農学部学癖報儀 残部をさらに40%発煙臼Clで前温により24時間処理して−cellulose加水分解物とした.分解後の液はいずれも NaOHで中和してp王子55附近としたのち,固形物に近い状態にまで400C以下で減圧濃縮したhついで,80%温 ethanolを加え,不溶部を辞退し,可溶部はふたたび減圧濃縮してシラップ状の展開試料とした‖ ペーパーグロマ トゲラフィには東洋折紙No.50をもちい,n・BuOH,aCetic acid,水(4:1:2)を展開溶媒として一次元上昇法 を2回線返し 同時に展開した標準物質のスポットの位眉と発色を比捺した.呈色剤にほかanicidin・HClとphl・ OrOglucin・HClを使用したが,実験結果は第2表のとおりである= すなわちPeCtin加水分解物としては,galactu− 欝2衣 桁果肉多糖類構成単糖類のペーパーグロマトグラフィ Galactur・Onic acid 亜 珊 未知スポッ† (1)l(2) Glucose Galactose + 十 十(?) +(て一) 富 有 碁盤 富 有 碁 盤 富 有 碁 盤 廿 -tt 冊 珊 冊 冊 Pectin Hemi− Cellulose Ce11ulose

r・Onicacidもっとも多く,ついで glucose であったが,Ⅹyloseと2種の未確認物質も検出された.未知スポッ 71Ilはpectin分解物中に.だけ検出され,ニ重展開後のgalacturonicacidのRfO,36にたいして0.29をしめし, ?−anicidin−HClで桃色,phloroglucin−HClでは墨色しないので,digalacturonicacidと推定される…未知スポッ T12は北原(1)の未知スポットに∴一致するい hemicelluloseの構成糖としては,glucose とⅩyloseがもっとも多く, ついでgalactoseと未知スポット2が検出され 北原(1)が報彗したmannoseは検出されなかった.cellulose区 分の構成糖としては,主としてglucoseが娩出されたほか,わずかにⅩyloseの存在がみとめられた。なお,glu− coseのスポッナの下部にgalactoseらしいスポットがみられたが,glucoseスポットのtailingとの区別がはっき りしなかった小 いずれにしても,富有と碁盤におけるpectin,hemicellulose,およびcellulose区分の構成単糖類 には差異がみいだされず,また,それらの量的比率も大差ないようである. 3菌のearbo王1ydraseによる果肉多糖類分解作用 (a)粗製多糖類匿たいする作用 まず前報(6)に.したがって,本研究室保存の1号菌を培養した富有および碁盤果肉培地より酵素液(以下FEおよ びGEと称する)を抽出した.また基質には,富有および碁盤果肉より抽出したcrudepectinならびにCrude holocelluloseの1%溶液と2%懸濁液とをもちいた.作用液は酵素液4ml,基質4ml,McILVAINE bufEer2ml およびtoluol少盈を混合して調製したが,FEによる匹Ctin分解の測定にさいしては,FEの作用力が大きいた め酵素液を・他のばあいの2倍に稀釈した(第3表には滴定借そのままを記載したので,富有pectin区の酵素強度 はその他の区の%となっている)..30CCで20時間作用させ,peCtin基質の作用液はそのままを2ml,hblocellulo3e 基質の液では炉過後の炉液を1miとって,SoMOGYI−S=AFFNER・HARTMAN法により還元糖盈を定盈した‖ 同時 に,20分間加熱処理して酵素を破壊した液について,同様操作をほどこし,その滴建値から前者を差引いて酵素の 作用力とした…なお,作用液のpHは前報(叫こしたがって,それぞれの酵素ろ最適pH偲に規正した.実験結果 は第3衷のとおりである”すなわち,富宥cr・udepectinはFEおよびGEによって分解されるが,碁盤cr.ude 第3表 柿果肉培地より払出した酵素の多糖幾分解作用 32 】 4.5

作 用 液 pH

45 ≡ 5二三 1 pi。i。 Holocellulose

3.2 適宜二[憂蜜二

5.2 Pectin _富有」_.葵墜_

稲わら Ⅹylan Na−CMC 基 質 抑200Na2S20掘有墳墓 滴定借(ml)露盤培纂 5●55 …:・;;i

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軌0を鱒1号(1959) 31 匹Ctinはほとんど分解されない.・一一方,boloc色iluloseの同一−\条件下に.おける分解には,品種間差異があまりみら

れない,また,富有crude pectinおよびpH3。2におけるCrude holocelluloseの分解はGEよりもFEが大で ある小 (b)精製pectinにたいする分解作用 富有および蒙盤のCrude pectinをWISE法(7〉によって処理した精製pectinにたいするpolygalactur・OnaSe作 用について実験した.新鮮な柿呆が充分えられなかったため,10%富有果肉磨砕物にpeptonel%と SuCrOSe 2 %を添加した培地に室温(32′h・′250C)で6日間薗を培養し,(a.)にしたがって培養炉液より粗酵素標品を抽出し, 炉液の%に.相当する水に溶解して酵素液と.した.おなじく(a)により調製した作用液2mlについて還元力を測定 した結果は,第4表にしめすとおりである.,すなわち,富有crude pectin,富有pectinおよび碁盤pectinはよ 第4表 菌酵素による柿果肉pectinの分解作用

Cr・ude pectin Pectin

蚕ニコニ憂 基 質 【岬一岬 盃 ル/200Na2S203 滴 定 借(ml) く分解され,かつその間における差異はほと.んどないが,碁盤crude pectinはあまり分解されなかった, (c)分解生成物のペーパー・グロマ†グラフィ (a)に準じて調製処理した50mlの作用披より,分解生成糖類を抽出した.すなわち,WISE法(7)によって精製 した多糖類を基質とし,富有培地に菌を発育させた培養炉液より抽出した酵素液をもちい,300Cで20樽F乱 pectin はp王‡52で,holocelluloseは4.5で作用させた液に,2倍浴のethanolを加えて折過し,i13LT披を減圧洩縮して 乾固させ,80%温ethanolに生成糖類を溶解し,不溶部を炉過後ethanolを溜去してシラッブ状の試料をえた. 2に.したがっておこなったペー・パークロマt・グラフィの結果は第5表のとおりである”peCtin分解物中にほ gluc一 帯5裳 菌酵素による柿果肉多糖頬分解生成物のペ−パー・クロマナグ■ラフィ 少Anicidinによ る 呈 色 ア ポ ッ t の 大 さ 基 質

有 l碁

州 0 5 9 3 5 ㌫MO・20・3M Pectin Holocellulose *2重展開後の測定値 ose以外に,di−およびtri−galacturonic acidとLおもわれる未知スポット(R董029と020)と,01igosaccharide とおもわれる未知スポット2種(RfO.33と0.25)が検出された.しかし,galacturor)ic acidの存在を確認するこ とができなかったので,本菌の酵素は典型的な糖化型polygalactur・OnaSeとはいえないようである.hoユ0こellulose 分解物中には,glucose(RfO,A5)とgalactose(RfO.41)のほか,01iBPSaCCharideとおもわれる顕著な未知スポ ット(Rf O,25∼0り35)と,1種の未知スポット(RfO.23)とを検出したが,Ⅹyloseの存在ははっきりしなかっ た.また,富有pectin分解物中のRfOけ33のスポットが碁盤匹Ctin分解物中に検出されなかった以外は,富有 と碁盤果肉多糖類を基質とした分解生成糖類の問に差異はみられなかった. 4.碁盤果肉erudepeetimのp01ygalaetnromase阻害作用

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香川大学農学部学術軸蛮 32 3・・(b)にしたがって酵素液を作製し,碁盤果肉より私恨した CrudepectinとPeCtinを樺々の比率に混合し, 水を加えて全体を2mlとして■基質に供したまた,酵素液2ml,基層2ml,McILVA‡NE bufferlml,お〕こび toluol少量を混合調製して作用液とL,30(’Cで20時間後に2miをとって,SoMOGYI−SHAFFNER・・HARrLMAN法に より還元力を定鼠した.結果は第6衣の とおりである.すなわち,a,b,C,dの 実験区からうかがえるように,基貿中の crude pectin の比が大きいぼど,POly・ glactur・OnaSeの作用力は小となる‖また, a,e,f,g の実験区は,Crude pectin の存在により pectinの分解が阻害され ることをものがたって−いるしたがって, 碁盤crude pectin の含有不純物は,た んにpectinを保護して polygユIactuて・0・ naseとの接触をさまたげるのではなく, む・しろ酵素活性を商掛昆害するものとい 第6衷 碁盤cr・ude pectinの酵素作用力におよほす影 凡/200Na2S203 滴定借(、ml) 基 質

藍二認「軍忘

訂 実験区 記 号 0..0 0巾3 0小7 1小0 10 0,7 03 1.0 0‖7 0.3 0..0 1() 1‖0 1“0 5.79 2.28 0.85 1200 1555 2.30 2.63 a b C d e f▲ g X1%溶液の混合mlをあらわす えようり 5小 多糖類を曜−の炭素源とした合成培地における菌体の発育 基本培地(4)(KH2PO。0.15%,MgSO4。7H20002%,N軋NO30.4%,Ebio31%令水油出物1%)に多糖類を 1%となるよう添加したものを 50ml容三宵フラスコに5mlずつ分注し,これに,あらかじめ拷抽寒天培地に 発育させた蘭叢の先端的1mm2を切りとって按秘した.培地か作製にあたっては,Ebios冷水抽出物以外の薬剤 を全部加え,100CCで2回殺菌後,N−NaOHでpH60にしてから,Ebios冷水抽出物を添加し1000Cで15分 間殺菌した..菌体の発育鼻が少畳のため,所定期間250Cで培養後4∼5コの三角フラスコの菌体をあわせて乾燥菌 体蓮を秤鼠した.xylanおよびholocellulose培地では菌体と培地多糖類を完全に分離することができなかったの で,肉日艮観察によった. (a)citruspectinおよび単純多糖類培地における菌体の発育と培地中還元糖の変化 citruspectin,日比野法(2)に.より抽出した稲わらⅩylanおよぴNaMCMC添加培地における菌体の発育と,培 地中の還元糖の有鮒こついて測定した.還元糖の定温は,培養折披を1mlとってSoMOGYI・S=AFFNER−HARTMAN 法によっておこなったり 繹果は第1図にし めすとおりである.すなわち,本菌は供試 多糖類を唯一・の炭素源としたばあいでも, Ⅹyloseおよび glucose培地に.おける最大 生長嵐にくらべ劣りはす−るが,その発育は かなり良好である.xylan培地における発 育もpectin培地と同程度であった..しか して,いずれの培地中にも還元糖の生成が みられるので,本菌は多糖類を唯一の炭素 好とする合成培地においてもかなり強力な 多糖類分解酵素を外生酵素として生成する ものといえよう‖ (b)柿果肉多糖頬培地における菌体の 発育 前項にしたがって,柿果多糖顆租抽出物 を唯一・の炭素源として培地に添加し,4日 間培養後菌体の発育を測定した.本研究室 で分離した5種の薗についておこなった実 6 8 0 2 4 岱 蓑 田 数 2 4 6 8 侍 藁 日 数 第1図 多糖類を唯一の炭素原とした合成培地におけ る菌体の発育ならびに培地の還元糖生成

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含急 幾10巻東1号(195ウ) 第7表 柿果肉多糖類を唯・一・の炭素滅とした合成培地における菌体の発育 Holocellulose 有 蓋 碁 盤 分 離 菌 No. Pectin 有】碁 盤 廿 柵 甘∼珊 冊 廿∼・肝 骨(3.6、) ≠(3.9) 廿(4.3) ヰト(5.0) 什(4.2) 肝 甘ん棚 肝 ・肘 冊 棚 (7..0) 廿・∼冊(5.6) 廿・∼珊(5.9) 肝 (7.3) 什∼珊(5.7) 1 2 3 A▲ 5 (註):括弧内の数字は,菌体乾燥重恩のmgをしめす 験結果は第7表のとおりである.すなわち,供試菌はすべて果肉多糖類を唯一・の炭素源として利用し,良好な発育 をしめLた.しかして,碁盤pectin培地における発育は,富有pectin培地よりも劣るが,両品種のholocellul OSe培地問には差異がみられない Ⅱ 考 察 病原菌の多糖類分解酵素による寄主組織の破壊挽構を抵抗性の一・因としてとりあげるばあいには,大別して,第 1に病庶菌酵素作用力の寄主品種間に.おける差異を,筍2に寄主構成多糖類の酵素基質としての異同を考えなけれ ばならない..酵素作用力に関連した問題としてほ,分泌酵素の種類ならびに分泌盈,寄主内に・おける阻害物質ある いは腐活物質の存在,および作用の場におけるpHの影響等による酵素活性の差異があげられようい聾者(のは前報 に.おいて−,抵抗性品種碁盤果肉培地と檻病性品種富有果肉培地に本菌を培養して,分泌された多糖類分解酵素を比 較した.それによれば,両培地に生成される酵素の種類はおなじであるが,作用力はいかなるpⅡに・おいても,富 有培地に生成された酵素のほうが大であった.しかしながら,この程庶の両品種問に・おける酵素力の差異は,有傷 接種における病斑伸展速度の極端な差異(5)を説明するには充分でない.したがって,酵素作用力にみられる抵抗 性との関連性ほ,碁盤果肉における抵抗現象の−−・因となりえても,主因とほ考え.られない.そのうえこれらは, citruspecticacid,稲わらⅩylan,あるいはNa−CMCを基質とした実験であるから,柿果肉に・存在する多糖類 を・基貿とした緯果と−・致するとは必ずしもいえない.すなわち第2の問題である,罷病性,抵抗性両種問における, 酵素基貿としての多糖類の異同がとりあげられねばならない. まず,富有と碁盤果肉多糖頬の構成単糖掛こついてみるのに.(第2嚢),両品種間忙おける差異はみられない. つぎに,粗製状態の果肉多糖類に七いする薗酵素の作用をみるのに.(第3表),同じ酵素液によるCr■udeholocell− uloseの分解は,碁盤と富有間に大差ないので,基質と.Lての hoIocelluloseの品種間差異もー応考えられない. ところが,Crudepectinの分解にはいちじるしい品種間差異がみ.られる.すなわち,粗製状態の碁盤peCtinは富 有のばあいとらがって,菌酵素に.よってほとんど分解されない”しかしてこれは,PeCtin自体の構造によるもの か,あるいをま,粕製状態において含有されている不純物にもとづくものと考えられる.ところが,WISB法(ア)によ つて精製した富有および碁盤匹Ctinの菌酵素による分解生成物には大差がみられないし(第5表),分解により生 成される還元糖鼠に.も差異がないのであるから(第4表),碁盤crude pectinに混在している或種の物質が,菌 酵素の作用力を妨害しているためであるといえる.碁盤crudepectinの含有不純物は熟alcoholおよびether不 溶の茶褐色物貿で,遮元性を有し,FeCl3反応は肯灰色で,WISEの脱1ignin法(7)処理Klよってethanolに・溶出 する.溶出物は,水,ethanol,およびethylacetateにL溶解し,アルカリ性diazotizedbenzidinで橙黄色を呈す る酸性物質で,POlygalactur・OnaSe阻害をしめさない.したがつて本阻害物質は,tanninあるいは1ignin枝物質 などのPOlyphenol縮合物であると推定される.果肉よりは,冷水処理後の0・5%ammoniumoxalate抽出によ って塔出してくるから,果肉内では,匹Ctinとかなり密接F=l結合ないしは附着の状態にあるものと想像される1.ま たこの不純物は,たんにpectinを・酵素の分解から保護しているのではなく,酵素活性に阻害卸こ働ら一くから(第 6表),一−・L種の阻害剤ともいえよう. 以上の結果から,抵抗性を異にする2品種D柿果肉において,PeCtin,hemicellulose,およびcellulose区分に する多糖類匿は,酵素基質と∵しての本質的な差異はみられないが,抵抗性品種の碁盤果肉に・おいては,匹Ctin に

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香川大学農学部学術報倭

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polygalactur・OnaSeの活性を阻害する物質が附随して:存在するために・,菌に・よって分解されないことがあきらかで ある.碁盤crude pectjnは,富有crude pectinに比較して%(帯6表)あるいほそれ以下(第3表,第4表)

しか分解されないので,これが抵抗性の主因になりうると考えてさしつかえないのであるが,本実験は各種酵素系 の複合的作用の場においてなされていない.この欠陥を補う意味で,碁盤crude pectinを唯一の炭素源としたば あいの菌体の発育をみるのに.(第7表),他の培地における発育の約%という,酵素作用からの推定菌体発育鼠を はるかに上廻る結果をしめしでいる小 ただしこの実験ほ,かなり不自然な条件下に.菌をおいているので,いずれが より事実に近い結果であるかは,仲々判断つけ難いが,或種の条件下では,碁盤匹Ctinに・附随して−いる随書物質 が,碁盤抵抗性の主因となりうるだけの働らきをあらわさないことを暗示しているものといえよう.しかしこのば あいに.も,発育は他の培地よりも悪いのであるから,阻害物質の存在を碁盤果肉抵抗性の一周に.とりあげてもよか ろう. 富有培地に分泌された酵素は,稲わらⅩylanにたいしてかなり強力に作用するに.もかかわらず,同じpHにぶ いてholoce11uloseにはあまり作用しない(第3表).この理由として’,Ⅹylo$eが果肉中には Ⅹylanとして存在 しないことが考えられる”酵素による分解生成糖のペ−パー・クロマ†グラフィにおいても,glucoseとgalactose は検出されるが,Ⅹyloseは検出されず(第5表),この推定を裏書きしている.すなわち,木蘭はⅩylanaseを分 泌するにもかかわらず(第3表,第1図,前報(6)),本酵素は寄主体侵入に役立っていないと.いうこと.になる一筆 者はこのほか,木蘭に.よるinulase の分泌を確認しているが,柿果肉構成多種類中にほ 董ructose は存在しない (第2表).このように病原菌は,合理的な代謝のみをいとなんでいるとはいえないようであるから,病原菌の分泌 する酵素を寄主成分以外の基質に.作用させ,その結果だけから寄主内に・おける薗の生態を推定することは,危険で あるといえよう. なお,pH3.2における富有培地の酵素の富有holoce11ulose分解作用ほ,碁盤培地の酵素の碁盤holocellulose 分解作用の約6倍であるが,p‡‡4り5においては,ほとんど作用力に・差異がみいだせない(第3表)小 Lたがって, 薗が侵入Lた果肉の,抵抗の場に.おけるp‡‡がいかなる状態にあるかが,こんご重要な問題となってくる‖ また。 前報く6)に発表した液化型celluloseの果肉多糖類にたいする作用に、ついても,基質の関係上実験できなかった.こ れらの問題はつぎの概会にゆずりたい. 摘 要 1.柿炭痘病菌の分泌する多糖類分解酵素は,富有および芽盤果肉holocelluloseを分解して還元糖を生成する が,両品種問における分解盈には大差がない.また,構成単糖類および酵素濫よる分解生成糖類も同一・であるから, 両品種のholocelluloseに.は酵素基質としての差異はないと思われる. 2.碁盤果肉crudepectinは富有果肉pectinに.くらべて,%あるいはそれ以下しか菌酵素で分解されないが, 脱1ignin法により精製した碁盤果肉pectinはよく分解される.1また,酵素に・よる両pectinの分解生成物には ほとんど差異がないので,両品種における果肉pectinにも,酵素基質としての本質的な差異は考えられない. 3.碁盤果肉に.おいては,peCtinに附随するpolyphenol縮合物と思われる物質が薗の POlygalactur・OnaSe 打 阻害的作用をしぬす几本阻害物質は,碁盤果肉抵抗性の一・因をなすものと推定される 4.本菌はⅩylanaseを分泌するが,本酵素は菌の果肉侵入に役立っていないようである

引 用 文一 献

(1)北原増雄,竹内.良光,辻勝治;栄養と食塩,8,139 (4)高井省三:植物病害研究,5,119−125(1955)・ −142(1955). 伍)谷利一・:番犬農学報,8,115−120(1956)・ (2)西田吃ニ:江上不二雄綴,多糖類化学,13,東京, (6)・−:Ibid.,g,136一・140(1958ゝ 朝倉審店(1956). (7)WzsE,I・.E.:Zhd.Eng.Chem.,AnallEdl・,63, (亭)−:Ibid.,18. 17(1954). R占snmる 1.Thepresentpaper・dealswiththeexperIimentalresultsontheenzimicdegradationofkakifruits

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軌0容顔1号(1如婚)

Ⅰ氾1ysaccharides by Gloeos9wium kakicausingkAkianthracnose

2.In the view−POint ofenzymic substrates,the pectin,hemicellulose,and celiuloseof Fuyu(suscepti・ hle varI.)werIealmost the$amewith those of Goban(resistant var‖)respectively

3“Acertaininhibitor for fungal polygalacturona$e,Which seemed to be polyphenoIplymer,WaS

foundin Gobanfruit.ThisinhibitorIeXistscloselyconnecting with pectin,anditsinhibitorypower was Su氏cient toexplain the difnculty of decompsition ofGoban pectin by fungal en2;yme.The result may

$uggeSt thata partof the causein the check of the developmentof the fungusin Goban fruit depends upon the exi$tenCe Of thi$inhibitor.

4.Althoughthe causalfungusexcretesⅩylanase,the en2:ymeis uselessininva$ion of the pathogen into the kakifruit,because xylosein kakiholocellulose does not seem to form xylan

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