図書館における資料保存のための
ガイドライン(初版)
-図書館資料の利用と保存のために-
九州大学附属図書館
・資料保存研修会
・研究開発室(資料保存担当)
2008
図書館における資料保存のためのガイドライン
2008 年 12 月 16 日 第1章 基本原則 1 目的 2 方針 (1) 現時点における最善の処置 (2) 固有資料の保存責任 (3) 所蔵機関の少ない資料の保存責任 (4) 資料の利用とのバランスを考慮した保存政策の選択 3 用語の定義 (1) 保存(preservation) (2) 保護(conservation) (3) 修復(restoration) 4 保存資料の範囲 (1) 蔵書構築基本要綱 (2) 資料の種別あるいは特性 (3) 利用状況 (4) 劣化状況 (5) 他機関における所蔵状況 (6) 保存方法(技術)の有無 5 点検・評価 6 組織 (1) 図書館資料保存委員会 (2) 図書館資料保存実行班 (3) 資料保存問題担当専門的職員 第2章 劣化の原因 1 劣化の原因 (1) 人為的劣化要因 1) 図書館職員・利用者の不適切な資料取り扱いによる劣化 (2) 生物的劣化要因 1) 虫害による劣化 2) カビによる劣化 (3) 化学的劣化要因 1) 酸による劣化 2) 光による劣化 (4) 物理的劣化要因 (5) 災害による劣化 1) 地震災害による劣化 2) 台風災害による劣化3) 洪水災害による劣化 4) 火災による劣化 2 劣化状況の把握 (1) 「劣化度」の規定 (劣化の態様) 1) 表紙と本体が分離 2) 見返し破損 3) 綴じのゆるみ・はずれ 4) 無線綴じ図書のページのはずれ 5) ページの破損 6) カビ 7) 虫食い 8) 酸性劣化 (状態のレベル) 1) 通常の利用にはほとんど問題がない 2) 多少傷みがあるが取り扱いに注意すれば利用に支障がない 3) かなり傷みがあり、そのままでもまた利用によっても傷みが広がっていく (2) 調査の必要性と方法 1) 日常業務中に行う調査 2) 対象資料を選定して1冊毎行う調査 3) サンプリング調査 第3章 方法 1 環境 (1) 収蔵環境 1) 温度・湿度 2) 光 3) 防災 4) 盗難防止(図書館資料のセキュリティ) (2) 施設・設備 1) 施設・設備に必要とされる要件 2) 室内環境について 2 資料の保管と取り扱い (1) 資料の保管 1) 排架 2) 日常の管理 (2) 資料の取り扱い方 1) 基本的習慣づけ 2) 資料の移動時 3) 資料の納品時
4) 資料の受入時 5) 資料の装備・排架時 6) 閲覧・貸出時 7) 複写時 8) 関連機器の改善・交換 9) 酸性資料などの利用制限 10) 非図書資料 11) 展示 12) 貴重書・古文書 13) 受入 14) 整理・装備 15) 貸出・閲覧 3 保存 (1) 資料保存のための意思決定(保存方法の選択) (2) 原形保存 1) 保護(conservation) 2) 修復(restoration) 3) 脱酸処理 4) 紙力強化 (3) 代替保存 (置き換え) 1) 買い換え・複本の購入 2) 複製 3) 媒体変換 4) 媒体変換の種類 5) 媒体変換の体制 (4) 製本 1) 製本の原則 2) 製本の意義 3) 製本すべき雑誌の選定 4) 製本の時期 5) 製本の規格 (5) 廃棄 不要決定の基準 4 教育 (1) 職員 1) 初任者資料保存研修 2) 職員資料保存研修 3) 外部研修の積極的利用 4) 資料保存マニュアル (2) 利用者
1) 新入生へのオリエンテーション 2) 研修および広報活動 3) パンフレットの作成 5 緊急時・災害時の対応 (1) 災害対策策定の意義 (2) 考えられる主な災害 1) 自然災害 2) 人為災害 (3) 災害対策 1) リスク評価 2) 防止対策 3) 事前準備 4) 災害時の対応 5) 災害後の対応 (4) 個別の復旧対策 1) 水害 2) 地震(落下) 3) 火災(スス、高熱) 参照文献 備 考
第1章 基本原則 1 目的 このガイドラインは、図書館資料を良好な状態に維持しその利用を長期間保障するための一 貫した方針、基準を指し示すことで、資料保存問題にどう取り組むべきかの共通理解を一般に 広め確立するとともに、関連する他機関との協力・標準化を図ることにより、資料保存の取り 組みを発展、強化することを目的とする。 2 方針 資料保存活動を進めるにあたっての基本的考え方は、このガイドラインによるもののほか、 各図書館の根幹である収書基準「蔵書構築基本要綱」などに則る。また、「IFLA 資料保存の原 則」などの外部の指針についても参照する。 「蔵書構築基本要綱」などは、何を収集するかの基本原則であり、このガイドラインは、こ れに基づき、どう残していくかのための基本原則である。 (1) 現時点における最善の処置 現時点における保存技術及び保存対策予算などの制約条件の下で、優先順位に従った最善 の処置を行う。現時点で処置を行わない選択をした場合、将来の技術の進歩、または予算の 獲得などによる処置の可能性を留保する。 (2) 固有資料の保存責任 図書館固有の資料保存には、特に責任を有する。 (3) 所蔵機関の少ない資料の保存責任 他の所蔵機関が少ない資料の保存には、特に責任を有する。 (4) 資料の利用とのバランスを考慮した保存政策の選択 個々の資料ごとに、資料の特性、利用状況などを勘案し、利用と保存のバランスに配慮し た保存政策を選択する。 3 用語の定義 保存、保護、修復の用語の定義は次のとおりとする。 (1) 保存(preservation) 今日の資料保存は、酸性紙問題への取り組みのなかで生まれた諸活動を、新たに包含した もっとも包括的な概念である。 製本・修復、メディア変換(マイクロ化を含む)、蔵書調査、環境整備、虫・カビ対策、 盗難防止、職員の研修と養成、利用者の資料取扱上の注意、書庫スペースの確保、災害対策、 資料の収集廃棄計画とのリンク、他の図書館との協力、協力計画/全国計画への参画、財政 計画、組織改善などがあげられる。 図書館資料及びそれに含まれる情報を保存するための保管・設備の整備、職員の専門性、 政策、技術、方法を含むすべての運営面、財政面の考慮が含まれる。 (2) 保護(conservation) 図書館資料を劣化、損傷、消失から守るための個々の政策と実務で、考案された技術と方 法も含まれる。 (3) 修復(restoration) 経年、利用などにより損傷した図書館資料を補修する際に用いる技術と判断が含まれる。 4 保存資料の範囲
蔵書のすべてを上記の資料保存の目標に従って保存できるとは限らないので、保存政策を進 めるに当たっての政策実施の優先順位を決定する必要がある。この優先順位を決定するにあた っては、次の点を考慮する。 (1) 蔵書構築基本要綱などの収書基準 (2) 資料の種別あるいは特性 (3) 利用状況 (4) 劣化状況 (5) 他機関における所蔵状況 (6) 保存方法(技術)の有無 5 点検・評価 このガイドラインは、時代に即し、かつ、効果的な資料保存活動を推進するために、しかる べき組織において定期的に検討する。この組織の例については、次項において述べる。 6 組織 (1) 資料保存委員会 資料保存事業が、統一のとれた一体的事業として運営されるよう、全学的な組織による委 員会を置き、方針、予算などを協議する。 (2) 資料保存実行グループ 資料保存委員会の下に実行グループを置き、実際的な資料保存活動を実施する。 (3) 資料保存問題担当専門的職員 資料保存問題を担当する専門的職員を配置し、資料保存についての点検や指導を行う。さ らに、この専門的職員は、できるだけ、保存業務を実際に行うのではなく、資料保存事業全 体の総括を行い、事業が全体として統一された運営がなされるよう保存委員会と一体となっ て管轄する。 第2章 劣化の原因 資料劣化の原因を知ることで、劣化を招かない保存対策が可能になるが、最近では化学的劣化 要因の究明も進んでおり、とるべき対策も明らかになっている。 ここでは、資料の劣化原因をいくつかの要因に分けて記述する。劣化原因の詳細は別掲の参照 文献によること。 1 劣化の原因 (1) 人為的劣化要因 1) 図書館員、利用者の不適切な資料取り扱いによる劣化 図書の背やノドの部分の破損の原因は、ほとんどが図書を書架から無理に取り出したり、 コピーの際資料を強く押しつけたりするなど、図書を適切に取り扱わないことにある。 また、図書に書き込みを行ったり、ページを折ったり、飲食物を付着させるなどの行為 も劣化の原因となる。 (2) 生物的劣化要因 1) 虫害による劣化 図書は紙で作られているので、それ自体が様々な害虫の攻撃を受けるし、使われている 糊、使用過程で指から付着する脂、保存過程で発生するカビなども攻撃要因となる。
害虫は分類学上多岐にわたるが、代表的なのは、シミ類とシバンムシ類である。一般的 に成虫は飛散して図書に留まっていることは少ないため、主に図書を蝕害するのは蛆虫状 の幼虫期である。 2) カビによる劣化 高温多湿の環境が図書や写真(マイクロフィルム)にカビを発生させ、これらを劣化さ せる。 カビの胞子は塵、埃、あるいは人の衣類に付着して書庫内に容易に侵入してくる。 高温多湿の条件が満たされると、胞子が発芽し、製本時に使用される糊などが腐敗した ものや人の手の脂、唾液などを栄養源として活動を開始する。 (3) 化学的劣化要因 1) 酸による劣化 資料を劣化させる外的要因の他に資料内部に潜む劣化要因がある。それが酸性紙中の酸 である。 資料の劣化に及ぼす酸の影響は、米国の製本・修復家であったバローの調査以来、数々 の調査により裏付けられ、知られるようになった。 また、酸性劣化のメカニズムも科学者から具体的な仮説がいくつか提示されている。 代表的な説は、①酸加水分解 ②疑似結晶化 ③角質化 ④硫酸による脱水作用、など である。 酸性紙による劣化の進行は、資料の保存環境(気温・湿度)に大きく左右されることが 分かっている。 図書に酸性紙が使われるようになったのは、19世紀半ば以降に用紙の材料にパルプを 使うようになった頃からである。製紙工程で加えるインクのにじみ止め(ロジン)を紙に 定着させるために添加する硫酸アルミニウムが原因で紙中に硫酸を生ずる。この硫酸がセ ルロースを傷めて図書を劣化させる。 2) 光による劣化 自然光や蛍光灯から発せられる紫外線により資料がもろくなったり、褪色が生じること となる。 また、自然光に含まれる赤外線の熱により傷みが生じる場合もあるし、複写機の人工光 でも資料を褪色させる場合がある。 (4) 物理的劣化要因 資料の材質、形状に適さない状態で書架などに放置され無理な圧力が長期間加えられるこ とにより劣化する。また、書架にぎっしり排架すること自体が劣化を招く。 (5) 災害による劣化 1) 火災による劣化 紙資料は火に晒されることでもろくなる。また、煙と煤が図書を変色させ汚損する。 2) 水害による劣化 水害によって湿気を帯びた状態ではカビが急速に発生する。また、水分は羊皮紙のゼラ チン化の原因となる。 3) 地震 資料が書架から落下することで損傷を被る。地震の規模によっては、資料が書架の下敷
きとなることもある。 地震の際は二次災害として火災や水害の被害にあうことも少なくない。 2 劣化状況の把握 (1) 「劣化度」の規定 資料の保存対策を考えるうえで必要となるのが、資料の現状を把握することと資料の価値 を判断することである。 その現状把握と価値判断によりどのような保存・修復作業が必要であるかが決まってくる。 ここでは、「劣化度」として、資料劣化の様々な態様とそのレベルを示すこととする。 (劣化の態様) 1) 表紙や背と本体が分離 2) 見返し破損 3) 綴じのゆるみ・はずれ 4) 無線綴じ図書のページのはずれ 5) ページの破損 6) カビの発生 7) 虫食い状態 8) 酸性劣化 (状態のレベル) 1) 通常の利用にはほとんど問題がない 2) 多少傷みがあるが取り扱いに注意すれば利用に支障がない 3) かなり傷みがあり、そのままでもまた利用によっても傷みが広がっていく (2) 調査の必要性と方法 「劣化度」を規定するためには現状の把握が必要である。そのために調査を行う。 1) 日常業務中に行う調査 書架整理・蔵書点検・資料の貸出・返却時など、職員が日常の図書館業務を行う中で発 見した劣化資料について、所定の調査票(記録票)に劣化状況を記録していく。 2) 対象資料を選定して1冊毎行う調査 具体的な保存・修復作業に直結する図書1冊毎の調査。和漢古書・洋古書・マイクロ資 料など、対象を限定して行うのが現実的である。 3) サンプリング調査 資料の現状(劣化状況)を大まかに把握して、対策の大枠を決めることに利用する。 例)年代別、排架場所別、和装洋装別 なお、調査項目としては以下のものが考えられるが、調査の目的に応じ、その都度適宜 選択を行う。 <資料の劣化状況調査における調査項目の例>(「記録史料の保存と修復」参照) ① 資料名・資料番号・請求記号 資料の識別 ② 資料発行年月日 資料に記された年月日 ③ 排架場所(保管場所) 貴重書庫、書庫地階など ④ 資料形態 冊子、新聞、マイクロフィルムなど ⑤ 紙の種類 和紙、洋紙、混合など
⑥ 資料の外見(損傷) 虫損、汚損、破損、カビ、変色、褪色、変形、開き難 さ、要再製本など ⑦ 過去の補修の有無 補修の仕方など ⑧ 酸性劣化判定 紙の劣化や変色の度合いを段階的に判定 (国立国会図書館の5段階判定基準など) 第3章 方法 1 環境 (1) 収蔵環境 1) 温度・湿度 ① 資料保存に適した温湿環境 一般に、温度摂氏 22℃、相対湿度 55%前後に維持された環境が、資料の劣化・損傷の 防止に最適といわれている。 ただし、適する環境は資料の材質によって異なり、全ての資料に適した温湿度環境を 設定することは不可能であることに留意しなければならない。 したがって、実際的な対応として、対象資料の保存必要性に応じた保管環境を選択する。 ② 資料を劣化させる環境要因の理解 資料に適した環境管理のために、避けるべき劣化要因を理解することが不可欠である。 a) 温度による劣化 温度上昇は、化学反応を加速させ、劣化を進行させる。 空気の飽和水蒸気量は温度の上昇に応じて増加する。 b) 湿度による劣化 湿気は化学反応の触媒となり、劣化を進行させる。 高湿度は、生物被害の危険性を高める。 乾性カビの場合、温度 25℃、湿度 60%が発育条件の目安といわれる。 低湿度は、化学反応の進行は抑制されるが、収縮・硬化・ひび割れなどを生じさせる。 c) 環境の変動による劣化 保管場所での環境変動のほか、保管場所と利用場所との温度差による負荷にも注意 を要する。 絶対湿度が一定ならば、急激な温度変化により相対湿度が急上昇し、結露が生じる。 結露の過剰な水分により、カビの発生や資料の材質自体の変質が引き起こされる。 たとえば、紙の保存に最適な環境は、温度 10℃以下、相対湿度 30-40%である。一方、 革の保存に最適な環境は、相対湿度 50%以上である。 注)絶対湿度:空気1立方メートル中に含まれる水蒸気の量を質量(g)で表したもの (単位:g/m3) 相対湿度:任意の温度の空気が持つことができる最大の水蒸気量(飽和水蒸気 量)と実際に含まれている水蒸気量の比を百分率で表したもの(単位:%)空 気を箱の中に完全に閉じ込めて温度を変化させると、中の空気の相対湿度は 変化するが、絶対湿度は変化しない。絶対湿度を変えるには、水蒸気を加え る(加湿)か、水蒸気を取り除く(除湿)作業が必要になる。
2) 光 光はエネルギーであり、エネルギーは化学反応に必要なものである。いかなる光源から も、赤外線、紫外線が放出される。 あらゆる波長の光-可視光線、赤外線、紫外線-は有機物を酸化させ化学変化を促進す る。特に、高いエネルギーを持つ紫外線が最も有害である。 しかし、すべての光、特に大気汚染物質とともに存在する光は、セルロース、接着剤、 布、革を痛め、脆くする。 光は、紙の脱色、異変、黒変などを引き起こす。さらにインクや色材の退色を引き起こ し、文書、写真、美術作品、装丁の見栄えを悪くし、判読を難しくする。 対策としては、次のようなことが考えられる。 ① 文書に覆いをしたり、箱に入れたり、梱包したりする。 ② 直接光を避けるため、窓にカーテンやブラインドを取り付ける。 ③ 窓に対して直角に書架を据え付ける。 ④ 照明などに配慮する。(以下の事項「(2) 施設・設備」参照) ⑤ 書庫の明かりは、使用されていない時は必ず消す。 3) 防災 図書館においては規模の大小に関わらず、あらゆる災害に対してできうる限りの予防策 を講じる必要があり、防災計画は次の5段階に分けられる。 ① 危険度評価(建物や蔵書に対する危険の把握) a) 館外における危険因子の確認 ・ 地域の特性、建物の周囲の安全性、火災や洪水に対する安全性。 b) 館内における危険因子の確認 ・ 建築物の材料、耐火構造、耐震構造、防火壁、防火ドアなどの設置。 ・ 蔵書の収蔵場所が水漏れ、洪水の被害を受ける危険性など。 c) 現在講じている予防策の点検 ・ 煙火災感知器、水漏れ感知器、自動火災消火設備などの設置がされているか。 ・ 明文化された防災計画が作成されているか。 ・ 職員の非常時における訓練が行われているか。 ・ コンピュータデータのバックアップの作成が毎日行われているか。 ② 予防(危険を取り除く、あるいは小さくするための対策) a) 火災報知設備、消火装置、自動消火システムなどを設置し日常的に維持管理を行う。 b) 書架に転倒防止装置を取り付ける。 ③ 備え(災害への備え、災害時の対処、復旧計画の作成と明文化) 以下のような準備を通常時より行っておく。 a) 建物全体を記した平面図(窓、出入口、空調のパイプ、消火設備など細かく記載) b) 優先的に救助する資料のリスト c) 職員による防災訓練 d) 被災後の復旧活動の詳細手順の作成 ④ 対処(災害が発生したときにとるべき対応) a) 非常時の対応手順に従って警報を発し、人を避難させ被災場所からの危険を取り除
く。 b) 被害状況を確認し復旧処置に必要な設備、環境を整える。 ⑤ 復旧 (被災場所や被災資料の状態を安定させ、再び利用できるようにするための処置) a) 保存修復処置の優先順位を決め、数が多い場合は段階的にプログラムを作成する。 b) 資料を廃棄、取り替え、再製本、修復処置を行うものに分別する。 4) 盗難防止(図書館資料のセキュリティ) ① 善良な利用者にとっては、ゆとりある利用規程(貸出規定)であること。 ② 図書館員及び利用者教育によりモラルの向上を図ること。 a) すべての図書館資料には一定の方法で蔵書印を捺し、その図書館の蔵書であること を明確にする。 b) 貴重書・稀覯本は専用のスペースを設け保管する。 c) バラ雑誌などは破損や紛失を避けるため製本する。 d) 館内の盗難防止などに備え防犯カメラを導入する。 e) BDS、IC タグなどの退館装置を設置する。 (2) 施設・設備 1) 施設・設備に必要とされる要件 ① 免震・制震構造である 当該地域で予想される最大規模の地震でも書架が倒れず、図書が落下・損傷しない。 ② 漏水・浸水による汚損が生じない a) 数十年に一度の大雨、洪水などにおいても漏水や浸水が生じない。 b) 書庫内は完全調湿とし、除湿時に発生した水を安全に外部に排水できる。 c) 雨漏り、内部配管からの漏水を直ちに補修できる。 ③ 火災による焼損が生じない 防火、消火設備を設置する。 ④ セキュリティ a) 不審者が簡単に侵入できない建物の構造と、館内・外に防犯カメラや警報装置を備 えた総合警備システムを導入し、図書館員や利用者の安全を図る。 b) 防犯対策に抵触しないような換気方式を採用する。 c) 図書館員と利用者の出入口は別とし、利用者の出入口には常時職員を配置する。 (24 時間開館時の入退館チェックは入退館管理システム、防犯システム・カメラな どによる) 2) 室内環境について 環境の維持・改善のために考えられる施設・設備要件を以下に挙げる。実際的には資料 の保存必要性に応じて設置可能な要件を選択する。 また、設置だけでなく、定期的な調整など、適切な管理に留意する。 ① 環境測定 館内・館外環境の維持・改善の前提条件となる。 a) 温湿度計の設置 b) 光度計の設置(または定期的な測定)
c) その他(pH、虫害など) ② 環境維持のための施設設備 a) 資料保存容器 b) 書架の配置(窓に対して直角に書架を据え付けること) c) 空調(昼夜・年間をとおした維持管理が望ましい) ・ 調湿機能に優れ、室内が均一に冷暖房される。 ・ 書庫内の換気、空調が簡便かつ安価に行える。 d) 建材・壁紙(結露防止など) e) 中継室(保管場所と利用場所の環境差が大きい場合、急激な環境変化を与えないた めに資料を一時的に置く場所) ③ 環境改善のための施設設備 a) 除湿器、加湿器 b) 換気設備(空気循環) c) 照明 ・資料を傷めない間接採光を工夫する。 ・カーテンやブラインドを取り付ける。 図書館資料の排架場所については間接、全天候型自然採光、室内灯からの採光のい ずれも紫外線を通さないものにする。 ・蛍光灯には退色防止蛍光灯(紫外線吸収膜付き)を採用するか、紫外線除去フィル ターを取り付けその後定期的に点検する。 2 資料の保管と取り扱い 資料は利用すれば痛んでいく。永く利用するためには、資料の保管と取り扱いが重要なポイ ントになる。 次にあげる大原則は各個人のモラルやマナーあるいは躾に関わるようなことでもあり、利用 者だけでなく図書館職員も理解を深めることが必要である。 *大原則1 資料の取り扱いは丁寧に行う。 *大原則2 資料を汚損する原因を排除する。 *大原則3 資料に非可逆な変更を加えない。 (1) 資料の保管 1) 排架 資料は利用頻度や受け入れ方法などによって区画配分していく。一旦排架した資料を移 動するのは、資料を損傷し手間も要するので、あらかじめ綿密な計画を立てるとともに余 裕ある配置とするべきである。 資料は大半の期間、書架上に排架された状態に置かれる。従って、資料を永く維持する ためには損傷しないような排架と容易に取り出せるような排架に注意しなければならな い。 以下に、排架における注意事項をあげておく。 ① 書棚には詰め込みすぎない。軽い力で図書の出し入れができる程度を目安にする。(指 が入る隙間をつくるなど) ② 図書は真っ直ぐ立てて排架し、斜めの状態や前小口を下にして排架しない。
③ 書棚が埋まらない場合は、図書をきちんと支えておくためにブックエンドを使用する。 ④ ブックエンドは表面が滑らかで、角の丸いものを使用する。 ⑤ 図書は通路にはみ出さないように排架する。 ⑥ 可能であれば大きさごとに図書を並べる。小型図書は、大型図書を十分に支えること ができないので、大型図書の隣に置くことは避ける。 ⑦ 大型図書は水平に排架する。その際、何冊も重ねない。 ⑧ 図書は書棚の前端から少し間隔をあけて並べる。棚の奥行きを充分とり通気を確保す る。 2) 日常の管理 埃や汚れは、資料の劣化を早める原因となる。 図書のクリーニングや資料の保管場所を清潔に保つことは、資料の寿命を延ばすうえで、 重要であるので、日常的に継続して計画的に行わなければならない。 日常的に清掃を心がけ、虫やカビの侵入した痕跡がないか点検する。痕跡を発見した場 合、速やかに駆除する必要がある。また、被害の原因を究明して今後の対策を考え、実行 することが重要である。 建物の換気システムも、大気中の汚れや埃を少なくするうえで、必要である。 また、毎週定期的に書架整理を行い、修復が必要な図書の発見、補修に努めなければな らない。 ① 埃拭き a) 図書の埃や汚れはダストバニーや、柔らかいブラシ、刷毛などで除去する。 b) クリーニングのため、図書を書架から移す場合には、使用されていない棚を固くし ぼった雑巾や化学雑巾で拭いてきれいにした後に、元に戻すようにする。 c) 真新しい害虫による被害痕や活動痕に注意を向け、発見したらすぐに対処する。 ② 防虫香 a) 虫害抑制のため、貴重書には、防虫香やナフタリンペーパーを入れ、定期的に取り 替える。 (2) 資料の取り扱い方 1) 基本的習慣づけ ① 資料の取り扱いは丁寧に行う。 ② 作業前,作業後,または飲食後には必ず手を洗うことが、資料の汚損を防ぐ基本的姿 勢である。 ③ 定められた場所で飲食することが望ましいが、やむを得ず閲覧机などで飲食する場合 は、資料をできるだけ遠ざける。 ④ 濡れた手や指、汚れた手や指で図書やページに触らない。 ⑤ 貴重であることの有無を問わず、資料の上で字を書かない。 ⑥ できるだけ消去可能な筆記具を使用する。鉛筆(B以上)の使用が望ましいが、作業 の必要上その他のものを使用するときは資料から遠ざけて使用する。万年筆は使用しな い。 ⑦ 目印として、ページの角を折ったり、鉛筆などの厚みのあるものをページの間に挟ん だりしない。
⑧ 図書を開いた状態に保つために他の図書で押さえない。 ⑨ のどの部分を無理に広げない。 ⑩ 開いたページの上に重いものを載せない。 ⑪ 図書を開いたまま伏せて置かない。 ⑫ 図書を何冊も積み上げない。(落としたりする危険がある。また、よけいな重さがか かる。) ⑬ 机の上で図書を滑らせて移動させない。 ⑭ 未カットのページ部分を読む場合にはペーパーナイフでカットする。 ⑮ 新聞紙など、酸性化しやすい紙片をページの間に挟まない。 2) 資料の移動時 ① 複数の図書を抱えて運ぶと崩れて図書を落として壊してしまう危険があるので、両手 で確実に持てる以上の図書を運ぶ時にはブックトラックを使用する。 ② 図書館間の相互貸借や外部での展示などのために、やむを得ず資料を郵送する場合は 乱暴な取り扱いや雨を受けても、中の資料が傷まないような包装をして送ることが重要 である。 3) 資料の納品時 ① 書店より納入された資料を保管しておく棚は、埃と紫外線防止のための扉付のものが 望ましい。なければ、比較的埃のつきにくい場所に置く。 ② マイクロ、CD などの非図書資料は、比較的高温多湿にならない場所に保管する。そ の他の資料に関する条件は、書庫内の保管環境条件の各要素と同じである。 (紫外線防止蛍光灯、温度、湿度、空気汚染防止など) ③ ブックトラックなどに積んで短期に作業する場合の事務室の条件は、人間主体にすべ きであって、必ずしも資料に適した環境にする必要はない。 4) 資料の受入時 ① 配本までの作業上で、資料に不都合が生じる力がかかることが想定できる場合は、必 要に応じて補強に必要な措置を講じるか、保護のための容器を作成する。 ② 古書を受け入れる際は、作業前に燻蒸を行うのが望ましい。 ただし、規模、必要度を考慮すると早期実施は難しいので、虫害のおそれのあるもの には必要に応じて防虫香を使用する。防虫香は化学薬剤使用のものより、和漢薬剤使用 のものが望ましい。 ③ 古書は受け入れ時にできるだけ手入れをする。埃を拭い、破損を繕う。汚損や、不要 と判定された書き込みは、消しゴムで消す。 上記の作業は、受入時ではなく、目録確定時、または装備時に行うことも考えられる。 5) 資料の装備・排架時 ① 蔵書印は、小型化するが、印は出来るだけ押さないのが望ましい。代替物として中性 紙の蔵書票を使用するなどを考慮する。 ② 葉書,広告,蔵書印の押え紙などの不要紙は抜き取る。 ③ 月報は抜き取らないで、背を表紙裏に中性糊で貼る。複数ページの束になったものは、 ホチキスで止めず、必ず糊を使用する。正誤表は、表紙裏に中性糊で貼る。 ④ ラベルは中性紙と中性糊を使用する。
⑤ 現行の無断持ち出し防止用磁気テープが、金属錆などによって資料に影響を与える材 質のものか否かは、使用期間が浅いため不明である。今後、観察・調査が必要である。 ⑥ デートスリップは中性紙と中性糊を使用する。ただし、今後このまま継続するか、代 替のものを使用するか、廃止するかは検討の余地がある。 ⑦ 装備に関係する用紙全部に中性紙を使用する。 ⑧ 作業関係用紙(請求書類など)で、複写の必要があるもの、長期の保存を必要とする もの、または資料に長期に挟んでおく必要のあるものは、化学変化を起こし難い薬品を 使用したものが望ましい。 ⑨ 配本時の取り扱いは丁寧を原則とする。 ⑩ ブックトラックは、安定性を考えると傾斜のついたスチール製のものが良い。他方、 平らに置くことは図書を痛めることが少ないため、どちらとも判断しがたい。継続して 観察・検討の必要がある。 6) 閲覧・貸出時 ① 書架に図書を詰めすぎない。 ② 書架などから図書を取り出す際は、図書の背から天小口に指を入れ、指で背を引っ掛 けて取り出さない。 ③ 図書の取り扱いはできるだけ両手を使用し、片手では行なわない。 ④ 書架から図書を取り出すときには、隣接する両側の図書の背を軽く後ろへ押し、それ によって現れた背の中央部分をしっかりと掴み、他の図書が落ちないように注意しなが らゆっくりと引き出す。 ⑤ 取り出した後の隙間は、右側の資料を順に左に移して埋める。この際、詰めすぎない ようにゆったりとした排架状態を維持する。 ⑥ 返却された図書に付箋や栞がついている場合は必ず取り外す。 ⑦ 可能な限り図書の劣化状況を確認するとともに、必要に応じて資料保存担当者へ連絡 する。 ⑧ 二つ折り判(folio)などのような大型図書は元々その大きさや重量から壊れやすいので 別置して水平に置くことが望ましい。その際、出来れば数冊を重ねて平積みをするので はなく、一冊ずつ別々に出し入れの容易な引き出し式の書架に排架するのがよい。 7) 複写時 ① 図書の劣化の原因は複写機の構造そのものにのみ帰せられるべきではなく、むしろ複 写機を操作するオペレーターの側に改善すべき点が多く見られる。 ② 図書の複写を行う際には、写りをよくするために開いたページを押さえつけたり図書 の背を強く押さえつけての複写は厳禁とする。 ③ 利用者が使用する複写機周辺にも同様の注意書きを張り、注意を喚起する。 ④ 壊れやすい資料や貴重な資料をやむを得ず電子複写機で複写する場合には、図書館員 の監督下で、あるいは利用者に代わって図書館員が複写をとることが望ましい。 8) 関連機器の改善・交換 ① 返却ポストについては、ポストへの投函の際、資料がポストの中で開いてしまうこと があり、その上に更に別の資料が投函されることがある。しかし、利用者からの要望が あり 24 時間開館・年中開館が実施できない以上、返却ポストの採用自体はやむを得ない。
ただし、ポストへの投函の際の衝撃を最小限に防止するために、投函口と内部の資料 を受けるテーブルとの間の落差を最短にするよう、ポストに内蔵されているスプリング の交換を頻繁に行うことが望ましい。当面、原則として資料の背から投函するような注 意書きをポストに張り付ける。 ② 複写機については、ほとんどの機種が図書の背をガラス面に押さえ付けて複写するタ イプであるため、現在出版されている図書のかなりのものがアジロ綴じである現状を考 慮すると、基本的に複写の度に図書を痛めてしまうことになる。従って、図書複写用と 一般複写用に区別し、図書複写用は全機種をフェイスアップタイプ(図書の背を押さえ 付けずに複写するタイプ)に交換することが望まれる。当面は、相互協力など業務にお いて図書の複写が必要な場合、フェイスアップタイプを使用する。 ③ マイクロリーダー・プリンターについては、機器へのセットの際、フィルムの陰画面 自体に直接触れなければならないうえにセットもしづらいため、フィルムを痛める恐れ がある。可能な限り早急に自動セット可能な機種に交換することが望ましい。 ④ ブックエンドは厚みのある頑丈なものを使用する。薄手のブックエンドは角で図書を 傷つけたり、目に付かずに誤ってページの間に押し込まれてページを破ったりする危険 があるので、使用を避けた方がよい。 ⑤ 虫害のおそれのあるものに対しては、必要に応じて防虫香を使用する。防虫香は化学 薬剤のものより、和漢薬剤のものが望ましい。 9) 酸性資料などの利用制限 利用を制限することは図書館としては本末転倒であるが、紙の酸化の進んだ資料(特に 明治期から昭和初期までの資料など)は、ページ送りを行うことですら資料を破損する危 険性が高い。これら劣化の激しい資料はある程度の利用制限を講ずる必要がでてくる。 当面これらの資料は、次のように取り扱う。 ① 資料保存委員会において保存の必要性と禁帯出(原則として貸出を行わない)扱いと するかどうかの判定を行う。 ② 保存の必要な資料は、保存箱などに収めるとともに保存箱などに取り扱い注意書(「酸 化・破損しています。取り扱いを丁寧にしてください」など)を貼付する。 ③ 閲覧・貸出時には、利用者へ取り扱いの注意を促す。 10) 非図書資料 ① マイクロ資料の取り扱いは、薄手の布手袋を使用する。 ② マイクロフィルム、CDなどの非図書資料は、比較的高温多湿にならない場所に保管 して置く。 その他の資料に関する条件は、書庫内の保管環境条件の各要素と同じである。(紫外線 防止蛍光灯、温度、湿度、空気汚染防止など) 11) 展示 展示資料は、ケース内の温湿度を管理することが難しいうえ、長時間にわたって照明が 当てられたり、同じページを開いたまま固定されたりするため、悪条件の下に置かれ、劣 化・損傷を受けやすい。展示を行う際には、保存の面にかなり注意を払う必要がある。 ① 照明レベルは閲覧室のレベルに比べて低く抑えた方が良い。 ② 温湿度計や光度計を備えて毎日点検を行うことが望ましい。
③ 資料を支える台やクッションを作り、展示資料に負担をかけないようにする。 ④ 定期的に、展示した図書を閉じて休めたり、ページをめくって別のページを展示する などの方法によって、長期間にわたる照明や図書を不自然な状態に固定することによる 損傷を少しでも減らすようにする。 ⑤ ページを固定するときには透明のポリエステルフィルムを用いるなど、資料を見やす く展示するために使用する用具類は、展示資料に悪影響を及ぼすことのない素材ででき ているものを使用する。 12) 貴重書・古文書 基本的事項 ① 貴重書庫入室前には、必ず手を洗う。手の油や汚れなどが文書に付着すると、それが 新しい栄養分となって、シミ、シバンムシ、ゴキブリ、カビなどの生物的劣化要因を発 生させる原因になる。その際、石鹸が残らないようによく洗い落とし、ハンドクリーム などを手や指に塗らない。 ② 入室にあたっては、貴重書庫内に用意されたスリッパに履きかえる。 ③ 筆記具の持込みは原則として行わない。(必要な場合は2Bの鉛筆に限定する。) ④ 書庫内での飲食・喫煙は厳禁であり、それらの持込みを行わない。 ⑤ 資料は丁寧に扱い、折りを変えたり、擦ったり、きつく巻いたり、紐をきつく締めた りしない。また、保存箱は重ねない。 ⑥ 取り出しや収納に際して手や指に汚れが付着した場合は、書庫内に用意してあるタオ ルを使用してこまめに拭き取り、汚れたままで資料を触らない。 ⑦ 室内清掃はこまめに行う。 ⑧ 資料の状態、温湿度の変化を定期的に点検・調査する。 ⑨ ブックエンド、ブックサポーターにはカバー(ビニールなど)をかける。 ⑩ 金属製のメジャーや、ストッパーつきのメジャーは使用しない。 ⑪ 輪ゴムや金属製のクリップは使わない。 13) 受入 ① 入力作業時は書見台などを利用する。 ② 必要に応じて手袋などを利用する。 ③ 図書IDラベルは、資料に添付しない。 ④ 納入された段階で、所定の保管場所に置く。 ⑤ 埃を払い、カビ・汚れを除去する。 ⑥ 虫害を発見した場合は、ビニール袋などに入れて隔離し、担当部署に連絡、協議する。 ⑦ 史料の断片、旧所蔵者のメモなど史料的価値のあると思われる紙片などについては極 力その状態を保存する。 ⑧ 修復が必要なものは、保存、修復担当部署に、連絡、協議する。 14) 整理・装備 ① 入力作業時は書見台などを利用する。 ② 新たに受け入れた図書への蔵書印の押印、登録番号の付番、ラベルの貼付の際は、書 誌的に重要な箇所を避け、かつ原形を損なうことのないように注意する。 ③ 図書IDラベルは、資料に添付しない。
④ 請求記号を中書きする場合は、硬度B以上の軟らかい鉛筆で記入する。 ⑤ 史料の断片、旧所蔵者のメモなど史料的価値のある紙片については、抜き取ったペー ジ・状態などを記録し、パーマネントペーパー封筒などに入れ保管する。 ⑥ 無断持ち出し防止用磁気テープは装着しない。 ⑦ 史料には原則として手を加えない。 ⑧ 古文書の折り方、包み方、紙と紙の重ね方などはそれぞれ意味があるので、みだりに 変更しない。これらのことから、どの時期にどのような人物に宛てた文書か判断できる 場合がある。 ⑨ 必要な場合、状態を記録する。 ⑩ 線装本、巻子本、一枚ものなどは、帙、袋、箱などを作成して収納し、洋装本は、必 要があれば、保護のための容器などを作成し収納する。 15) 貸出・閲覧 ① 貴重図書は、必要に応じ複製物(複製本、マイクロ・フィルム版など)を作成し、特 に理由がない場合は、複製物を利用に供するものとする。 ② 保存箱など保護のための措置があるものについては、その状態のまま閲覧する。 ③ 史料の取り扱いは両手を使用し、片手では行わない。 ④ 納架の際には室外で、塵埃などを払い落とす(化学雑巾のたぐいは使用しない)。 ⑤ 史料を取り出す際は、史料の背から天小口に指を入れ、指で背を引っ掛けて取り出さ ない。 ⑥ 対象史料の右側の全てを、同一棚の史料の右方向に両手を使用してこまめに移して、 取り出しや収納を行う。 ⑦ 取り出した後の隙間は、右側の史料を順に左に移して埋める。この際詰めすぎないよ うにゆったりとした排架状態を維持する。 ⑧ 史料を開く際は人差し指と中指の腹を使用し、史料の前小口の中央付近を(原則とし て和書の場合右から左へ、洋書の場合左から右へ)ゆっくりとずらしながら該当のペー ジを開く。 ⑨ 史料を開いたまま、閲覧机に伏せないこと。また開いた資料の上に別の資料を乗せな い。 ⑩ ページ押さえはペーパーウェイトを使用する。決して折り込んだり資料の間に鉛筆な どの物を挟んだりしない。 ⑪ 保存箱は、文書保護のため桐材など適当な柔らかさのある材質で作られているので、 丁寧に扱うこと。よく保存箱の箱蓋を文書の入れ物に利用したり、重ねておいたり、運 んだりする光景を見かけるが、そのような取り扱いをすると箱書きが段々と摩耗して字 や印が消えてしまうので慎まなければならない。また、取っ手や古い箱紐は壊れたり、 切れたりするおそれがあるので、持ち運びには十分注意する。 ⑫ 一紙のものは、必ず両手で持つか、台紙の上に置いて運ぶ。 ⑬ 一紙のもの、継紙、包紙、絵図など折り畳んであるものは、元の折り方を間違えない よう、その形状や折り山をよく確かめながら広げる。それと同時に、折り畳み方の記録、 雛形を作っておくと、あとで便利である。 ⑭ 糊つけ部分、紙縒、綴糸などに十分注意する。中でも、紙捻綴の冊子は、見えない部
分(図書の中)の紙捻が虫害のために損傷していることがよくあり、そのような状態に ある冊子を力任せに開くときの力で紙捻が切れることがあるので注意する。また、どの ような冊子を取り扱うときでも、継ぎ目に余計な力をかけないようにする。とりわけ、 虫損、欠損、劣化などで弱くなっていたり、裂けやすくなっているページは、丁寧にめ くる。 ⑮ 巻いてあるものは、開閉を丁寧にして、できるだけ摩擦のないように開いたり、巻き 戻したりする。掛け軸は巻緒や掛緒の損傷に、また、巻子本は巻鈕の損傷にそれぞれ注 意する。特に、掛軸の掛緒は、掛けたときに掛軸の重みを支えるのに十分な強度がある かよく確かめる。巻緒を解き、机上などの平らな場所で風帯を左右に整え、掛緒をフッ ク(自在掛・折釘・蛭釘)に掛け、軸先(外題側)と軸元(外題側の反対)の軸頭を持 つようにし、軸中を持つことはできるだけ避けて、静かに下ろす。巻き上げるときは、 その逆である。 ⑯ 巻紐をしばりまとめて、肩幅程度の長さずつに広げて見るのが適当である。掛軸や巻 子本を巻き戻すときは、小口がズレないようにする。巻子本の場合、広げる、巻く、浮 かす、広げるの順序で行い、決して机上などに擦るような広げ方、巻き戻し方をしては ならない。当然ながら、巻き戻しは、きつく巻かず、自然のままに巻くことが大切であ る。 掛軸の縦皺、巻子本の横皺は、きつく巻いたり、巻紐をきつく巻き締めたりすること が原因で、折損、剥落が進むので気をつける。 ⑰ 大きな屏風、重たい手鑑などは運搬に注意する。特に、屏風では蝶番が、手鑑ではつ なぎ部分が、それぞれ弱いので丁寧に開閉する。 ⑱ 史料は、布や紙に包んで保存箱に収められているのが一般的である。その場合は、布 や紙を直接手で掴み、取り出せば良い。また、古く破れやすいものや価値のあるものは、 布や紙で包んでいないものと同様、保存箱をゆっくりと逆さにして取り出す。間違って も、指などを小口に引っ掛けて、取り出すようなことがあってはならない。指を使って 取り出すと、史料を傷める原因となる。 3 保存 (1) 資料保存のための意思決定(保存方法の選択) 対象となる資料ごとに、現物保存の必要性・物理的状態・利用頻度・蔵書に対する重要性 ・経費の五つの要素を重ね合わせてどのような保存手段を適用するか決定する。 保存方法としては予防措置、保護・修復措置(容器の適用・簡易製本・補強など)、代 替保存(現物代替・媒体変換)が考えられる.また、汚損又は破損が甚だしい資料で複本 のあるもの、時日の経過により利用価値を失ったものについては廃棄を検討する。 保存方法の選択・決定については、別にこれを定める。 (2) 原形保存 1) 原形保存の原則 資料は出来る限り原形で保存すべきものであり、そのために劣化や破損を防ぐための予 防処置・保護処置を最優先する。 それ自体に物理的な価値がある資料、他館で所蔵していない資料、自機関による出版物 ・刊行物などは原形のまま保存しなければならない。
また、上記以外の資料についても、保存のための修復はあくまでも利用するためであり、 修復の際には下記の原則に従って極力原形を残し、可逆的な処置をすべきである。それに よって将来より良い修復技術・修復材料が現れたときにそれらを適用することができる。 ① 資料の現状及び処置の記録化をする。(記録の原則) ② 原形を尊重する。(原形保存の原則) ③ 資料に対して非破壊的である。(原形保存の原則) ④ 適用する処置が可逆的である。(可逆性の原則) ⑤ 修復素材には資料に影響が少なく長期的に安定したものを使用する。(安全性の原 則) 2) 保護(conservation) 保護の基本的な考え方を、劣化に対する予防的保存措置と位置づける。 個別的に専門的な処置(「修復」)を必要とするかどうかに至るまでの「段階的な保存 措置」として、「修復するよりも、資料の原状を尊重しこれ以上の劣化を防ぐ手立てを優 先する」ことを前提とする。 措置を必要とする資料群には、図書館における「保存の原則」にそった保存ニーズをつ かみ、保存措置を決定する。 なお、保存措置を行った資料に対しては、将来の資料保存方針の基礎情報となるよう記 録を取ることとする。 3) 修復(restoration) 「IFLA 資料保存の原則(1979)」において、「修復」とは「経年、利用などにより損傷 した図書館、文書館資料を技術系職員が修補する際に用いる技術と判断」と定義づけてい る。 修復は適切な道具や設備、知識と技術が求められる、より専門性が高いものであり、手 間やコストが非常にかかるものである。このことからも職員が行える修復には限界がある。 措置を必要とする資料は「保存の原則」にそった保存ニーズをつかみ、専門業者などに委 託するか、職員で実施するかを決定するが、ここでは職員が比較的簡便に措置できる修復 方法をとりあげる。修復を行った資料に対しては、将来の資料保存方針の基礎情報となる よう記録を取ることとする。 4) 脱酸処理 紙資料の中に含まれる酸性物質を取り除き、アルカリ性剤によって中和、さらに、紙の 中に残留させ、酸性への進行を予防かつ遅滞を図る処理である。 *液相法 *気相法 資料に対しダメージを与えず、均一に脱酸でき人体や環境への毒性がない処理方法を検 討する。 5) 紙力強化 紙力が著しく低下している場合薬品類に浸したり、傷みが激しい場合、裏打ちや表打ち などの処置を行う。 (3) 代替保存 (置き換え) 1) 買い換え・複本の購入
同一の資料を補充ないし予備として複数部揃える。そのうち汚損又は破損が甚だしい資 料ないし時日の経過により利用価値を失い余分になった資料については、廃棄・管理換の 対象とし、比較的劣化の度合いが少ない資料、分類や装備の面で管理しやすい資料を優先 的に保存する。 なお、高い利用頻度が見込まれる資料の場合は、あらかじめ複数部を購入しておくこと により、利用による損耗を軽減する。 2) 複製 オリジナルをコピーし、コピーしたものを利用に供することにより、オリジナルの利用 頻度を減らし、その劣化・損耗を防ぐ。媒体がマイクロフィルムや電子媒体の場合は、古 くなった媒体から新しい媒体にその内容を移し換えることにより、媒体の劣化からくる資 料内容の損失に備える。コピーの際には著作権に抵触することのないよう配慮し、場合に よっては市販の影印・翻刻・リプリント版などを別途購入する。また、コピーによりオリ ジナルを傷めることのないよう留意する。 3) 媒体変換 資料内容を、原形とは別種の媒体に記録し直す。単なる複製とは異なり、保存する媒体 固有の特性によって利用面・保存面で副次的な効果が生じる。媒体変換にともなって資料 の利用を高めたり、資料をより長期間保存したりすることが可能となる。 したがって、媒体変換については、原形保存ができない場合の次善の策としてではなく、 積極的にこれを実施する。 4) 媒体変換の種類 基本的に、マイクロフィルム、電子媒体、紙からなる三つの媒体を想定し、利用面と保 存面におけるそれぞれの特質を理解したうえで、必要に応じて相互に媒体変換を行う。 ① マイクロフィルム化 資料内容をより長く保存したいときに行う。マイクロフィルムは、記憶密度が高く収 納性の面で有用であるほか、化学的に安定しており、また読み取りのために独自の技術 を要しないことなどから、長期的な保存には最適な媒体とされる。ただし、資料内容の 閲覧には専用のリーダーが必要で、検索性も低いことから、利用には向かない。 ② 電子資料化 資料内容をより多様な利用形態で活用したいときに行う。電子資料は加工や複製が容 易で、大量のデータの処理に向き、応用性が高いため、資料内容の流通や再利用、利用 手段の高度化などが期待できる。逆に、資料内容が改竄される恐れがあり、短期間のう ちに媒体や技術が旧式化して利用できなくなる危険があるため、資料の電子化に際して は、媒体の保存、技術の保存、内容の保存のいずれもが保証されなければならず、保存 において不利な面がある。 ③ 紙への印刷 資料を手軽に利用・保存するために行う。媒体としての紙は、比較的安価で入手しや すいばかりか、マイクロフィルムより利用しやすく、しかも電子媒体より長期間の使用 に耐えうるため、資料内容を他の媒体から紙に印刷することにより、利用面、保存面の 双方で有効的に活用することができる。 5) 媒体変換の体制
媒体変換は計画的に遂行する。一般的に、媒体変換したあとの資料は複製しやすく、ま た他媒体への再変換も比較的容易であることから、全館ないし図書館間での協力体制を築 くことにより、媒体変換の対象資料を効率的に取捨選択し、媒体変換に要する時間的・経 費的コストを軽減する。そのために、あらかじめ媒体変換対象資料についての優先順位決 定に関する基準を策定し、媒体変換した資料については、所蔵箇所を問わない一元的な目 録を作成し、共有、公開する。 (3) 製本 1) 製本の原則 ここで言う製本とは、消耗品として受け入れた雑誌(逐次刊行物をも含める)のバック ナンバーを適当な厚さで1冊にまとめて本製本する「図書館製本」である。 表紙が痛んだものや、綴じの壊れたものを製本し直す「修理製本」とは区別して考える。 2) 製本することの意義 ① 保存面 破損や散逸による欠号を防ぐことができる。 ② 資産管理面 消耗品として受け入れた雑誌(特殊な参考資料を含む)を合冊製本することにより、 一冊の図書として受け入れされ登録される。 ③ 書架スペースの管理面 製本することで、ほぼ平均的な厚さにすることが出来るため、書庫スペースの残存年 数を算出するときなどに非常に便利である。 ④ 利用面 合冊製本することによって、卷号次・年次などが背に印字されるので、目的の雑誌を みつけやすくなると考えられる。 しかし、利用上からは必ずしも合冊製本した方が便利だとはいえない。ほんの二、三 ページのものを読む場合でも合冊した厚い雑誌を借りなければならないうえ、同時に合 冊されている他の多くの論文の利用が一時停止されることになるからである。 3) 製本すべき雑誌の選定 雑誌は一般に消耗品として取り扱われている場合が多く、学術雑誌はもちろんのこと、 一般誌でも掲載された論文・記事の内容などの文献的価値のある雑誌は保存しなければな らない。 保存の決定に際しては、書庫スペース、予算、手間、利用の予測など、慎重な検討と判 断が必要である。 新規に、雑誌を受け入れする場合には、あらかじめ選択した時点で保存するか、一定の 期間後廃棄するかなどの基準を決めておくと、事後の処理がやりやすくなる。 また、重複雑誌については製本保存は一部でよいと思われる。 4) 製本の時期 雑誌がもっとも利用されるのは、学術雑誌においては、その雑誌が刊行されて1年~2 年後位までであることが知られている。 製本のために、多くの数の雑誌を製本業者に発注することになるので、資料が図書館を 離れている期間をできるだけ短期間にして、利用者への影響を少なくするように努める。
5) 製本の規格 ① クロースの生地と色 ② 背文字 ③ 卷・号・年など数字の処理 ④ 標題紙、総目次、総索引の処理 6) その他の逐次刊行物の製本・保存 年鑑などは、通常図書に準ずる造本がされているので、原則として製本は不要である。 (4) 廃棄 資料保存スペースの有効活用を図るため、不要資料を管理換もしくは廃棄処理する。要 不要の判断は不要決定の基準にしたがって慎重に行い、管理換、廃棄についても資産に関 する所定の手続きに則って適切に処理する。 不要決定の基準 次の四つの要件のうち、いずれかに該当する資料を不要と認める。 ① 保存の必要がないと認められる複本、重複資料など。 ② 資料の内容が逐次改訂され、又は改版などにより利用価値を失い、かつ、保存の必要 がないと認められるもの。 ③ 一定期間の利用を目的として取得された資料で、時日の経過により利用価値を失い、 保存の必要がないと認められるもの。 ④ 長期間にわたる頻繁な使用などにより汚損又は破損が甚だしく、補修に要する費用が 該当資料の取得に要する費用より高価であり、又は補修が不可能であり、かつ、当該資 料の購入が可能であると認められるもの。 4 教育 (1) 職員 資料保存に関する意識向上のため、教育・研修・広報活動を行う。 1) 初任者研修 初任者については、着任後早い時期に資料保存の基礎知識を得るための研修を受けるこ とを義務とする。 2) 職員研修 職員の知識と技術の向上のため、最低でも年1回は研修の機会を持つようにする。ある いは、有益な情報や検討すべき課題がある場合には、随時研修会の機会を持つ。また、ヴ ァーチャルな研修活動としてメーリングリストやグループウェアなども積極的に利用す る。 3) 外部研修の積極的利用 外部機関主催の研修会などを積極的に利用する。職員は、研修に参加する者への理解と 支援につとめる。また、研修参加者は、修得した知識・技術の還元に努め、研修報告書の 作成あるいは研修報告会などを行う。 4) 資料保存マニュアル 資料保存研修会は、資料保存に関して取り扱いマニュアルを作成し、職員への広報に努 める。また、必要に応じて、随時改訂や増補を行う。 (2) 利用者
利用者へ資料保存に関する認識普及のため、教育・研修・広報活動を行う。 1) 利用者へのオリエンテーション 利用者へのオリエンテーションにあたっては、資料保存への基礎知識を積極的に盛り込 むこと。 2) 研修および広報活動 利用者に図書館とその資料保存への理解を深めてもらうために、広報も兼ねて基礎的か つ親しみやすい内容の研修活動を行う。この研修活動を図書館における活動の重要なもの として捉え、他の図書館広報活動との連携も図る。 3) パンフレットの作成 資料の保存と取り扱いに関して、親しみやすい簡便なパンフレットの作成を行う。 5 緊急時・災害時の対応 (1) 災害対策策定の意義 図書館は資料を収集、蓄積し、利用者の調査研究活動などを直接的に支援する施設であり、 図書館として独自の防災対策を定めることが必要である。そのために、平常時における防災 計画及び緊急時における対応体制を構築することにより、利用者と職員の安全の確保、資料 の保護をはかり、迅速に図書館機能を復旧、維持させることが重要である。 (2) 考えられる主な災害 1) 自然災害 ① 風雨 ② 洪水 ③ 地震 ④ 火山の噴火 2) 人為災害 ① 戦争やテロ行為 ② 火災 ③ 水害(雨漏り、パイプの破れ、排水のつまり、消火活動) ④ 液体化学薬品のこぼれ ⑤ 欠陥建築物(構造、デザイン、環境、保全) ⑥ 停電 (3) 災害対策 1) リスク評価 まずもっとも大きな脅威をもたらすと考えられる事象の評価を行い、リスクを確認する。 リスク評価は少なくとも一年に一度は行い、改築などにより環境の変化があった場合は直ち に再評価を行うべきである。 ① 建物外部から発生するもの 職員は図書館の立地する地域における地形、気候などの特性を把握し、起こりうる災害 を予測し地域で過去に発生した災害についての調査・検証を行う。また、他の施設での同 種の災害による被害状況についての情報を常に収集・蓄積することに努める。 ② 建物内の構造やサービスから引き起こされるもの ③ 人間が引き起こすもの
2) 防止対策 建築物および図書館を構成する書架などの設備、備品について平常より点検を定期的に行 い、起こりうる災害によりこれらの設備などが引き起こす被害を予測し適切な予防策を講じ るとともに、館内での防災訓練を行うことにより職員ならびに利用者の防災意識を高めるこ とに努める。 ・ 建物の周囲から危険を取り除く ・ 鍵の管理・人の入退出チェック・戸締りを確実に行う ・ 水周り・電気回線・電気器具を保守し、定期的に点検する ・ 防火扉や火災探知機、バケツや消火器を準備する ・ 所蔵する資料について、災害による全面的な損害の発生を避けるため資料の分散保管を 図る。 3) 事前準備 災害対処への準備計画を策定し、計画の責任者と災害に対処するチームのメンバーを任命 する。 災害発生時における資料救助の優先順位を蔵書構築方針、資料種別、他機関での所蔵状況、 利用状況などを考慮して決定しておく。また、災害によって被害を受けた資料の被害度を決 定する基準を策定する。 災害による被害からの復旧にあたっては、館内外の関係諸機関、施設との連携による作業 が不可欠であり、あらかじめ復旧作業に必要とされる関連施設、専門家、業者などにつき検 討ならびに選定を行い、災害の発生時において速やかに連絡をとり復旧作業を開始すること のできる体制を確立する。 4) 災害時の対応 自然災害、人為災害を問わず緊急時の対応手順については、想定される災害毎に具体的に 定める必要があり、別途詳細な「危機管理マニュアル」などを作成すべきであるので、ここ では一般的な対応手順を示す。 ① 通報 予め定めた担当者から館内の利用者、職員へ緊急通報するとともに、場合によっては館 外関係機関へ連絡する。 ② 初期対応 災害によっては初期対応して被害の拡大防止を行う(火災時の初期消火など)。 ③ 避難誘導・負傷者などへの応急処置と緊急連絡 マニュアルなどに規定される要員配置に従い、館内の利用者、職員を避難場所などへの 誘導や負傷者などについては応急処置を施すとともに関係機関へ緊急連絡を行う。 ④ 資料の持ち出し 災害現場での資料類の延焼、水濡れなどを防ぐ場合、持ちだしも考えられるが無理はし ない。 ⑤ 状況の記録 被害の状況を写真や映像として撮影しておく。 5) 災害後の対応 被災場所と被災資料を、一日も早く使用可能な状態に復旧させ、利用者に開放する必要が
あるが、そのためには復旧への優先順位を決め部分的開放も考える。また、復旧のための費 用算定や予算獲得も重要なファクターである。 場合によってはボランティアの活用なども考えられる。 災害などで使用できなくなった資料については基準に基づいて資料の廃棄も考慮する。 ここでも被害状況、復旧作業の記録などの分析、評価を行い、ガイドライン・マニュアル 類の更新を行う。 (4)個別の復旧対策 1) 水害 変形しやすいため、取り扱いには注意が必要。 汚染水が下水系の場合は資料の洗浄や消毒、取扱者の予防接種の必要も生じる。 ① 軽度の濡れの場合 自然吸水乾燥法で処理する。 ・ 長所―安価で簡便な乾燥法である。 ・ 短所―被災資料がごく少量(10点以内)またはかすかに湿っている場合以外は採用 できない。また、短時間に大量の人員を動員する必要がある。 ② 被害がひどい場合 資料を冷凍して被害の進行を止めてから乾燥させる i) 真空凍結乾燥法 水が 4 ミリ Hg 以下では液体として存在できないことを利用する。 ・ 長所―最も安全に、かつ短時間で大量に処理できる。 ・ 短所―現在の日本では利用できる機器があまりにも少ない。 ii) 凍結乾燥法 凍結し放置することによって乾燥させる。 ・ 長所―乾燥の際に特殊な機器を使用しない。 ・ 短所―時間がかかる(むしろ凍結して、処理可能な量だけ解凍しながら吸水乾燥さ せる方法の方が実用的である)。 2) 地震(落下) 施設の安全を確認後、落下資料を混ぜたり踏んだりしないように気を付けて、塊ごと搬出す る。 →資料の状態に応じて、個別に対応する 3) 火災(スス、高熱) コゲや熱で変色した部分は特にもろいため、取り扱う際はなるべく触れないようにする。 灰になってしまったものは復元不可能であるため、防火対策が重要である。 ① 消火用水をかぶっている場合 水損資料と同様に考える ② ススが付着している場合 少量であればエアーコンプレッサーでの吹き飛ばしや、消しゴムで落とすことも可能であ る。 以上