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Ⅶ ポートフォリオ・バランス・アプローチ
1.為替レート・モデルの分類と仮定
2.「資本の完全移動」と「資産の完全代替」
3.リスク・プレミアムを含む為替レート・モデル
4.ポートフォリオ・バランス・アプローチ
(付論) 不胎化介入について
Review
1.為替レート・モデルの分類と仮定
Exchange Rate Determination
Traditional Flow Approach Modern Asset ApproachPerfect capital mobility CIP (i - i*= d)
Portfolio-Balance Approach
Imperfect asset sustitutability (ρ≠0)
Monetary Approach
Perfect asset sustitutability (ρ=0) UIP (I - i* =μ)
Flexible-Price Monetary Model
(Monetarist model) Sticky-Price Monetary Model
Definitions
i - i* = interest differential d = forward discount
μ= expected depreciation ρ= risk premium (d - μ)
CIP = Covered Interest Parity UIP = Uncovered Interest Parity PPP = Purchasing Power Parity
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2.「資本の完全移動」の仮定とは?
(Perfect capital mobility)
● Traditional Flow Approach(例えば、MFモデル)
⇒
「小国の仮定」=「資本移動の利子弾力性が∞」 ● Modern Asset Approach1.価格面からの条件
⇒カバー付き金利平価(CIP)が成立
2.数量面からの条件
⇒Feldstein=Horiokaの条件[省略] 3. 制度的な条件
⇒capital account convertibility
(vs. current account convertibility) [後述]
*
i
i
S
S
F
−
=
−
「資本の完全移動」=CIPの成立の典型例(日米間のCIP)
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2.「資産の完全代替」仮定とは?
(Perfect asset sustitutability)
•カバーなし金利平価
では、自国資産と外国資産が、リスクの面において無差別
⇒期待収益率のみが異なる
完全に代替的な資産
を仮定。
•現実には、自国資産と外国資産を保有することに対するリ
スクが異なる⇒
不完全代替
•投資家が、危険資産を保有するためには、その期待収益
率だけでなく、安全資産を保有する場合より、
リスク・プレミ
アムρ
だけ高くなくてはならない
⇒リスク・プレミアムρは、自国通貨建て債券と外国通貨
建て債券の期待収益率の差と定義。
)
(
*S
S
E
i
i
−
+
−
=
ρ
S
S
E
i
i
=
*+
−
3.リスク・プレミアムを含む為替レート・モデル
• MFモデルでは、固定相場制の下での金融政策は、
金融緩和⇒貨幣供給増加(⇒LM曲線の右方シフト)
⇒金利下落圧力⇒資本流出(=資本収支の赤字)
⇒自国通貨減価圧力⇒外為市場で自国通貨買い介入
⇒貨幣供給減少(⇒ LM曲線の左方へシフト・バック)
⇒GDP不変
というメカニズムが働くため、有効には機能しなかった。
• したがって、「①為替レートの固定、②金融政策の独立
性、③資本移動の自由」という3つの政策目標のうち、
どれか1つは放棄しなければならない(トリレンマ命題)。
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3.リスク・プレミアムを含む為替レート・モデル
• しかし、自国債券と外国債券が不完全代替であるという仮定を導 入すると、「MFモデルの結論」および「トリレンマ命題」は修正され る。 • ここで、Bは自国通貨建ての国債発行残高、Aは中央銀行が保有 する自国国債、(B-A)は民間部門が保有する自国国債とする。こ の式は、投資家にとって自国債券と外国債券は完全な代替物では なく、自国債券を保有することに対するリスク・プレミアムρは、民 間部門が保有する自国国債 (B-A)が増加するほど上昇し、中央 銀行が保有する自国国債 (A)が増加するほど低下することを意味 している。
③
>
ただし、
②
①
0
),
(
)
,
(
' *ρ
ρ
ρ
ρ
A
B
S
S
E
i
i
Y
i
L
P
M
−
=
+
−
+
=
=
固定相場制の下での金融政策(リスク・プレミアムがある場合)
• 貨幣供給の増加による金融緩和を行った場合、中央銀
行が保有する資産構成についてみれば、「自国債券買
い」のオペレーションによって、自国債券(A)が増加する
ので、
リスク・プレミアムρは低下
(
ρ
1>ρ
2)。
• 外国資産の収益率は左方にシフトすることによって、外
国為替市場の均衡点は、1から3へ移り、
為替レートは
S
1で固定されたまま、金利をi
1からi
2へ下げることができ
る
。
• したがって、「為替レート政策」(固定相場制の維持)と
「金融政策」は独立に運用することができ、「①為替レー
トの固定、②金融政策の独立性、③資本移動の自由」
という3つの政策目標は全てが達成できる(
トリレンマ命
題の否定
)。
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4.ポートフォリオ・バランス・アプローチ
•投資家は、保有する金融資産の総額Wを、 自国通貨M 国内債券B(自国通貨建て) 外国債券F(外国通貨建て) の形で、分散して保有するものとする。 [注] •マネタリー・アプローチでは、自国資産と外国資産の完全代替 という暗黙の仮定があったので、貨幣市場の均衡条件(及び外 為市場の均衡条件[i=i*+μ])だけから分析。 •ポートフォリオ・バランス・アプローチでは、この仮定を緩めて、 自国資産と外国資産は完全には代替的ではないと考えるので、 貨幣市場・自国資産・外国資産それぞれに均衡条件を分析(各11
4.ポートフォリオ・バランス・アプローチ(cont.)
予算制約式 3つの資産市場の需給均衡条件 符号条件 貨幣需要(Md) : i↑⇒Md↓, i* +μ↑⇒Md↓, W↑⇒Md↑ 国内債券需要(Bd) : i↑⇒Bd↑, i* +μ↑⇒Bd↓, W↑⇒Bd↑ 外国債券需要(Fd) : i↑⇒Fd↓, i* +μ↑⇒Fd↑, W↑⇒Fd↑⑦
⑥
⑤
)
,
,
(
)
,
,
(
)
,
,
(
* * * + + − + − + + − −+
=
+
=
+
=
W
i
i
F
F
W
i
i
B
B
W
i
i
M
M
d d dμ
μ
μ
) (期待減価率 ただし、 S S E − = μ④
W
=
M
+
B
+
SF
4.ポートフォリオ・バランス・アプローチ(cont.)
④式は恒等的に成立 ⇒⑤~⑦式のうちの2つが成立すれば、残りの1つは自動的に成立(ワルラス法則) 外国利子率(i*)と期待為替レート(E)が与えられる ⇒独立した2つの式から、自国利子率(i)と為替レート(S)が決定。 MM曲線とBB曲線 MM曲線:貨幣市場を均衡させる自国利子率(i)と為替レート(S)の組み合わせ (右上がり) BB曲線:国内債券市場を均衡させる自国利子率(i)と為替レート(S)の組み合わせ (右下がり) 為替レート(S)↑(減価)⇒自国民の保有する外国債券の自国通貨建て価値 (SF)↑⇒総資産額(W)↑⇒貨幣需要(Md)↑・国内債券需要(Bd)↑(資産効果) ⇒貨幣市場の超過需要⇒利子率(i)↑⇒均衡回復(MM曲線右上がり) ⇒自国債券市場の超過需要⇒利子率(i)↓⇒均衡回復(BB曲線右下がり)13 固定相場制の下での金融政策(ポートフォリオ・バランス・モデル) B B M M M’ M’ B’ B’ S i S1 i1 i2 1 2
固定相場制の下での金融政策(ポートフォリオ・バランス・モデル)
•中央銀行による買いオペ
⇒貨幣供給量の増加(M↑)
⇒
MM曲線の左方シフト
(∵⑤式においてM↑⇒貨幣の超過供給
⇒一定のSに対してi↓⇒M
d↑)
•中央銀行による買いオペ
⇒自国債券の供給の減少(B↓)
⇒
BB曲線の左方シフト
(∵⑥式においてB↓⇒自国債券の超過需要
⇒一定のSに対してi↓⇒B
d↓)
•したがって、「為替レート政策」(固定相場制の維持)と「金融
政策」は独立に運用することができ、「①為替レートの固定、
②金融政策の独立性、③資本移動の自由」という3つの政
策目標は全てが達成できる(
トリレンマ命題の否定
)。
15 ま と め 1.資産の不完全代替を前提とする「ポートフォリオ・バランス・アプ ローチ」では、金融政策と為替政策を独立に運営されることが示さ れ、固定相場制下での不胎化介入や金融政策の有効性が結論づ けられる。 2.確かに、理論的に「資産の代替性」と「資本の移動性」とは異なる 概念であるが、多くの実証研究では、資本規制がない場合に内外 資産の代替性が高いこと、つまり資本移動が自由になるほど、内 外資産の代替性も高まることを示している。これが事実なら、分析 手段としてのポートフォリオ・バランス・アプローチは必要なく、より 単純なマネタリー・アプローチで十分なことになる(高木[2006],163 頁-167頁)。 3.他方、多くの実証研究では、マネタリー・モデルが依拠するUIP仮 説は必ずしも支持されず、それを棄却している。もしも、UIP仮説が 棄却されるべきであるという推論が、リスク・プレミアムの存在を反 映しているなら、資産の不完全代替に依拠するポートフォリオ・バラ ンス・モデルは支持されることになる。 4.要するに、「資本の移動性」と「資産の代替性」の区別や、両者を区 別した上で金融政策と為替政策の独立性は維持できるかという問 題は、理論的にも実証的にも解決がついていない問題である。
(付論)不胎化介入(sterilized intervention)
•中央銀行による外為市場への介入が貨幣市場
に及ぼす影響を相殺するため、
外国資産の売り
(
買い
)と
国内資産の買い
(
売り
)という反対取引
を同時に行う政策。
•例えば、
外貨売り(自国通貨買い)介入=買いオペレーション
外貨買い(自国通貨売り)介入=売りオペレーション
によって、
貨幣供給を一定
に保つ政策。
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• 固定相場制下の不胎化介入は効果がないとされるのは、自国通 貨の切下げを狙った中央銀行による「自国通貨売り」の市場介入 によって増加したマネー・サプライを相殺するため、「自国債券売 り」のオペレーションを行うと、結局マネー・サプライがもとの水準 にもどってしまうからである。 • しかし、不胎化によってマネー・サプライに変化がなくても、中央 銀行が保有する資産構成についてみれば、「自国債券売り」のオ ペレーションによって自国債券(A)が減少しているので、リスク・プ レミアムρが上昇している(ρ1<ρ3)。 • したがって、外国資産の収益率は右上方にシフトし、外国為替市 場の均衡点は1から2へ移り、為替レートはS1からS2へと切り下げ られる。 • すなわち、 「為替レート政策」(為替レートの切り下げ)と「金融政 策」(一定の貨幣供給量)は独立に運用することができ
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